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JP4178267B2 - 相変化型光ディスクの信号処理方法および相変化型光ディスク装置 - Google Patents

相変化型光ディスクの信号処理方法および相変化型光ディスク装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、書換型光ディスクを再生するための光ディスクの信号処理方法および光ディスク装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
書換型光ディスクは、高密度の情報記録再生が可能であるため、コンピュータの外部記憶装置や画像音声用のAVディスクとして開発および商品化が進められている。高密度の書換型光ディスクでは、光ビームのトラッキング制御のためグルーブ(案内溝)とランド(溝間)が設けてあり、ランドとグルーブの両方に情報を記録再生するランドグルーブ記録技術が知られている。
【0003】
光ディスクには、記録トラックを所定の情報量毎に区切ったセクタと呼ばれる記録単位がある。各セクタの先頭には、通常、そのセクタのアドレスや様々な属性を予め記録したID信号が設けられ、ランドグルーブ記録では、隣接するランドとグルーブの中間位置にID信号を設け、ランドとグルーブの両方からID信号を読む方法がとられる。そして、発明者らは、ID信号の位置とその極性を正確に検出することが出来る光ディスクのID検出回路を検討してきた(WO 97/39444)。
【0004】
また、光ディスクの信号再生は、光ディスク上に形成されたピットまたはマークと呼ばれる1ミクロン以下の微小信号に、レーザビームスポットを照射し、反射光の強弱変化を読み取る。記録されているデータがディジタルでも、再生系の光学的または電気的な低域通過型の周波数特性によって、再生波形は中間値を持ったアナログ信号となってしまう。
【0005】
従って、光ディスク再生装置では、このアナログ再生信号を元のディジタル信号に変換するA/D変換回路が必要となる。発明者らは、光ディスクの再生信号に振幅変動およびアシンメトリ変動があっても、常に正確なディジタル化が行えるA/D変換方法を既に提案した(特開平10−55621号)。
【0006】
ここで、光ディスクの再生信号をディジタル化する目的は大別して2つあり、アナログ信号として検出される信号を単に元の2値のディジタル信号に戻すためである場合と、再生信号の品質が不十分で再生中にエラーが発生したとしても、エラーの発生した前後の信号から真の値を推定する方法、即ち最尤複号などを用いるために、A/D変換器を用いてアナログ再生信号をそのまま多ビットのディジタル信号に変換してからディジタル信号処理する場合がある。
【0007】
後者の場合、通常、6ビット以上の分解能で、変換速度も再生チャネルレート程度の高速なA/D変換器が必要となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
光ディスク装置の中でも、光検出手段で検出された複数の電気信号の和信号と差信号を用いる光ディスク装置では、和信号と差信号それぞれにA/D変換器が必要となってしまう。
【0009】
和信号だけを用いる光ディスク装置であっても、ID信号部と記録信号部は信号の直流レベルのオフセットが発生し、また、特に差信号は両極性で検出されるので、これらの信号をそのままディジタル変換するためには、前段回路のダイナミックレンジが必要で、しかもA/D変換器のビット数も増やす必要がある。
【0010】
多ビットかつ高速のA/D変換器は、製造に特殊プロセスを必要とし、コストが高くなるばかりか消費電力も大きいという課題がある。
本発明は、上述の課題を解決するものであり、最小限のビット数の1個のA/D変換器で書換型光ディスクの再生信号をディジタル化するための光ディスクの信号処理方法およびこれを用いた光ディスク装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明の光ディスクの信号処理方法は、光検出手段で検出された複数の電気信号の和信号または差信号に含まれるID信号と記録信号を選択して時間多重し、前記ID信号の極性と前記記録信号の極性を揃え、この信号の直流レベルを一定に制御してからディジタル変換することを特徴とする。
【0012】
この本発明によると、多重された信号のダイナミックレンジが抑えられ、最小限のビット数の1個のA/D変換器で前記和信号と差信号の両方をディジタル化できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1記載の相変化型光ディスクの信号処理方法は、光検出手段で検出された複数の電気信号の和信号または差信号を用いる光ディスクの信号処理方法であって、前記和信号または差信号に含まれるID信号と前記和信号に含まれる記録信号を選択して時間多重し、前記ID信号の一部または全ての極性が前記記録信号と異なる場合において、前記ID信号の全ての極性を前記記録信号の極性に揃え、極性を揃えた前記ID信号と前記記録信号の直流レベルを一定に制御し、前記ID信号と前記記録信号を極性および直流レベルが揃った一連の信号に処理し、少なくともイコライザ処理を行った後、多ビットのディジタル信号に変換することを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項2記載の相変化型光ディスクの信号処理方法は、請求項1において、
差信号に含まれるID信号と、和信号に含まれる記録信号を選択して時間多重することを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項3記載の相変化型光ディスク装置は、光ディスクからの反射光を検出し複数の電気信号を出力する光検出手段と、前記複数の電気信号から和信号と差信号を生成する演算手段と、前記和信号または差信号からID信号と前記和信号から記録信号を選択して時間多重する信号多重手段と、前記ID信号の一部または全ての極性が前記記録信号と異なる場合において、前記ID信号の全ての極性を前記記録信号の極性に揃える極性切換手段と、極性を揃えた前記ID信号と前記記録信号の直流レベルを一定に制御するオフセット制御手段と、前記ID信号と前記記録信号を極性および直流レベルが揃った一連の信号に対し少なくともイコライザ処理を行う前段回路と、前記前段回路の出力から多ビットのディジタル信号に変換するA/D変換器とを備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項4記載の相変化型光ディスク装置は、請求項3において、信号多重手段は、差信号に含まれるID信号と、和信号に含まれる記録信号を選択して時間多重することを特徴とする。
【0019】
以下、本発明の光ディスクの信号処理方法を、具体的な各実施の形態に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1に本発明の光ディスクの信号処理方法を実現する(実施の形態1)の光ディスク装置を示し、図2にその信号波形図を示す。
【0020】
図1において、光検出手段4は、光ディスク1と、これを回転させるモータ2と、光ディスク1から信号を読み取るピックアップ3で構成される。
光ディスク1は、相変化膜を有するランドグルーブ記録方式の書換型光ディスクで、セクタ先頭に予めエンボスのピットとしてID信号をランドとグルーブの境界に配置し、ID信号の後方に、ランド上とグルーブ上の両方に結晶と非結晶のマークとして記録信号を有するものを用いる。
【0021】
ピックアップ3は、光ディスク1のランド上またはグルーブ上にフォーカスおよびトラッキング制御を行ったレーザスポットを照射し、光ディスク1からの反射光を複数のピンダイオードで受光し、それぞれを電気信号に変換して出力する。
【0022】
ピックアップ3から出力される複数の電気信号の内、トラッキング信号5を入力とする差動アンプ6により差信号7を生成する。
差信号7は、図2(c)に示すように先頭にID信号があり、後方には単一周波数のウオブル信号がある。ID信号は極性の異なる2つの部分からなり、それぞれ最初の部分が同期引き込み用のVFO信号が配置されている。図2ではVFO部分を斜線で、信号の極性を矢印で示している。
【0023】
差信号7は、IDエンベロープ信号9を出力するIDエンベロープ検出手段8に入力される。IDエンベロープ信号9は、図2(d)に示すように差信号7に含まれるID信号の部分だけでハイレベルとなる信号である。
【0024】
IDエンベロープ検出手段8の具体例を説明する。
差信号7は、IDエンベロープ検出手段8の第1ハイパスフィルタ10に入力され、高周波信号であるID信号は通過し、低周波信号であるウオブル信号は阻止される。
【0025】
次に、第1全波整流器11と第1ローパスフィルタ12によってID信号のエンベロープ電圧が検出される。エンベロープ電圧は第1コンパレータ13によって基準電圧と比較され、2値化された前記IDエンベロープ信号9を出力する。
【0026】
また、差動アンプ6からIDエンベロープ検出手段8に入力された前記差信号7は、極性信号15を出力する極性検出手段14にも入力される。極性信号15は、図2(e)に示すように差信号7に含まれるID信号部分ではID信号の極性をハイレベル/ローレベルで表し、ウオブル信号部分ではこれを2値化したパルスからなる信号である。
【0027】
この極性検出手段14の具体例を説明する。
差信号7は、第2ローパスフィルタ16に入力され、ID信号から高周波成分を除去し低周波成分の極性が抽出されるとともに、低周波のウオブル信号はノイズ成分が除去されて通過する。次に、これらの信号は第2コンパレータ17によって後述の追従スライス電圧19と比較され、2値化された極性信号15を出力する。
【0028】
極性信号15は積分器18に入力され、極性信号15のハイレベル/ローレベルの時間平均が一定となるように、追従スライス電圧19を第2コンパレータ17に出力する。
【0029】
ただし、ID信号の期間はウオブル信号の周期と比較して長いので、積分器18では、安定な制御のためにID信号期間を示すIDエンベロープ信号9を用いて積分動作をホールドする。
【0030】
前記ピックアップ3から出力される複数の電気信号のトラッキング信号5のすべてとフォーカス信号20とを入力とする加算アンプ21によって和信号22が生成される。
【0031】
和信号22は、図2(a)に示すように先頭にID信号があり、後方にはランドまたはグルーブの記録トラックに結晶/非結晶の状態で記録された記録データがある。記録信号には、最初の部分に同期引き込み用のVFO信号が配置されている。
【0032】
この和信号22は、RFエンベロープ信号23を出力するRFエンベロープ検出手段24に入力される。RFエンベロープ信号23は、図2(b)に示すように和信号22に含まれるID信号と記録信号が存在する部分だけでハイレベルとなる信号である。
【0033】
RFエンベロープ検出手段24の具体例を説明する。
RFエンベロープ検出手段24は、前述のIDエンベロープ検出手段8と同等であって、和信号22が第2ハイパスフィルタ25、第2全波整流器26、第3ローパスフィルタ27によってID信号および記録信号のエンベロープ信号を検出する。このエンベロープ信号は第3コンパレータ28によって基準電圧と比較され、2値化されたRFエンベロープ信号23を出力する。
【0034】
この(実施の形態1)の光ディスク装置では、光検出手段4、差動アンプ6で生成された差信号7から、IDエンベロープ検出手段8によってIDエンベロープ信号9が、極性検出手段14によって極性信号15が出力される。また、加算アンプ21で生成された和信号22から、RFエンベロープ検出手段24によってRFエンベロープ信号23が出力される。ここまでの実施の形態について、好ましいパラメータを数値を示して述べる。
【0035】
光ディスク1は、記録膜にテルル、ゲルマニウム、アンチモンなどの合金を用いた相変化型光ディスク、基材には0.6mm厚のポリカーボネートを用いた貼り合わせ構造で、トラックピッチ0.74μmのランドグルーブディスクを用いる。
【0036】
光ディスク1には、記録線密度0.41μm/bitで、セクタの先頭に予めID信号がランドとグルーブの境界にエンボスのピットとして、ID信号の後ろにランドまたはグルーブ上に記録信号が同じ密度で非結晶/結晶のマーク/スペースとして記録されている。
【0037】
この光ディスク1をモータ2で読み取り線速度が6m/sになるように回転させ、波長650nmのレーザを搭載したピックアップ3で読み取る。IDエンベロープ検出手段8における第1ハイパスフィルタ10はカットオフ周波数が1MHz、第1ローパスフィルタ12はカットオフ周波数が100KHzのものを用いる。
【0038】
前述のディスク記録再生パラメータでは差信号7のID信号の周波数帯域は約500KHz〜10MHz、ウオブル信号の周波数は約160KHzとなり、IDエンベロープ検出手段8では、ウオブル信号が除去されてID信号のエンベロープだけが良好に検出できる。
【0039】
極性検出手段14における第2ローパスフィルタ16はカットオフ周波数が300KHz、第2コンパレータ17と積分器18の閉ループのゲイン交点は約4KHzに設定する。
【0040】
これにより、極性検出手段14では、ID信号部ではID信号の極性が良好に検出でき、ウオブル信号部ではこれを2値化したパルスが極性信号15として良好に検出できる。
【0041】
更に、RFエンベロープ検出手段24における第2ハイパスフィルタ25はカットオフ周波数が1MHz、第3ローパスフィルタ27はカットオフ周波数が100KHzのものを用いる。
【0042】
前述のディスク記録再生パラメータでは和信号22のID信号および記録信号の周波数帯域は約500KHz〜10MHzとなり、ID信号と記録信号が存在する部分でRFエンベロープ信号23がハイレベルとなる。
【0043】
なお、ここで示したパラメータは、これだけに限るものではなく、ある程度の範囲でパラメータを変化させてもこの実施の形態は動作する。
更に、光ディスクの記録再生パラメータ、例えば、記録線密度や再生線速度が異なる場合は、これらに比例または反比例させて各フィルタのカットオフ周波数を変化させれば対応できることは明らかである。
【0044】
図1の極性切換手段29を説明する。
極性切換手段29は、差信号7を入力とし、前記極性信号15で信号の極性を切り換えて出力信号30を出力する。その結果、出力信号30は、図2(f)に示すように極性信号15がハイレベルのとき入力の差信号7を反転した信号となり、両極性であったID信号の極性の向きが一方向に揃えられる。ただ、信号の極性は揃っているが、信号の直流レベルは一致していない。
【0045】
この極性切換手段29の具体例を示す。図1では、差信号7は正転バッファ31と反転バッファ32に入力され、セレクタ33により極性信号15に基づいて選択されて出力される。
【0046】
次に、信号多重手段34を説明する。
信号多重手段34は、和信号22と極性切換手段29の出力信号30とを入力とし、IDエンベロープ信号9により選択して1つの信号に多重した出力信号35を出力する。
【0047】
その結果、出力信号35としては図2(g)に示すように、IDエンベロープ信号9がハイレベルの期間には出力信号30のID信号が出力され、IDエンベロープ信号9がローレベルの期間には入力の和信号22の記録信号が多重されて出力される。
【0048】
信号多重手段34の具体例は、図1ではセレクタ36で構成され、切り換え信号としてIDエンベロープ信号9を用いる。
次に、出力信号35を入力信号とするオフセット制御手段37を説明する。
【0049】
信号多重手段34の出力信号35を入力とたオフセット制御手段37は、後述のゲート信号38(図2(h))を用いて信号の有効データ部分の直流レベルを一定に制御した出力信号39を出力する。
【0050】
この出力信号39は、図2(i)に示すようにゲート信号38がローレベルの期間に、ID信号または記録信号の先頭にあるVFO部分で所定の直流レベルまでオフセットの高速な応答で引き込みを行い、ゲート信号38がハイレベルの期間に、ID信号または記録信号の有効データ部分で低速な応答で一定の直流レベルを保持する。
【0051】
オフセット制御手段37の具体例を示す。図1では、信号多重手段34の出力信号35はバッファ40に入力され低出力インピダンスに変換してから、コンデンサ41を通して高入力インピダンスのバッファ44に入力される。バッファ44の入力は、抵抗値の大きい抵抗器42と抵抗値の小さい抵抗器43の一端に接続され、2つ抵抗器42,43の他端はスイッチ45を通して基準電圧に接地されている。スイッチ45はゲート信号38で制御され、バッファ44の出力がオフセット制御手段37の出力となっている。
【0052】
ここで、ゲート信号38がローレベルの期間には、抵抗値の小さい方の抵抗器43が選択され、コンデンサ41と抵抗器43で決まる高速な時定数で入力信号の直流レベルの引き込みを行う。
【0053】
反対にゲート信号38がハイレベルの期間には、抵抗値の大きい方の抵抗器42が選択され、コンデンサ41と抵抗器42で決まる低速な時定数で入力信号の直流レベルの保持を行う。
【0054】
前記ゲート信号38を発生するゲート発生手段46は、次のように構成されている。
ゲート発生手段46は、前記IDエンベロープ信号9とRFエンベロープ信号23を入力とし、前記オフセット制御手段37で使用するゲート信号38を発生する。
【0055】
ゲート信号38は、図2(h)に示すように信号多重手段34の出力信号35のID信号または記録信号の先頭にあるVFO信号の前半部でローレベルとなり、後半部から有効データにかけてハイレベルとなる信号である。
【0056】
図3はゲート発生手段46の動作を表す信号波形図である。
図1においてゲート発生手段46は、第1〜第4ディレイ素子73〜76、第1〜第4ANDゲート50,52,54,57、ORゲート59で構成されている。
【0057】
図3(b)に示す前記IDエンベロープ信号9は、第1〜第3ディレイ素子73,74,75を通過して遅延時間t1,t2,t3だけ順に遅れた出力信号47,48,49が形成される。図3(c)(d)(e)に出力信号47,48,49を示すように、それぞれIDエンベロープ信号が順次遅延された波形となっている。
【0058】
第1ANDゲート50の出力信号51は図3(f)に示すようになり、第2ANDゲート52の出力信号53は図3(g)に示すようになる。第3ANDゲート54はIDエンベロープ信号9ともう一つの入力信号であるRFエンベロープ信号23に基づいて、図3(i)に示すようにRFエンベロープ信号23のID信号部分が除かれた出力信号55が得られる。
【0059】
第3ANDゲート54の出力信号55は、第4ディレイ素子76を介して図3(j)に示すように遅延時間t4だけ遅れた出力信号56が形成される。第4ANDゲート57の出力には、出力信号56と前記出力信号55に基づいて図3(k)に示す出力信号58が発生する。
【0060】
ORゲート59の入力には、出力信号51と出力信号53と出力信号58が入力されており、ORゲート59の出力には図3(l)に示す前記のゲート信号38を発生する。このゲート信号38が図2(h)に示したものである。
【0061】
このように、(実施の形態1)の光ディスク装置では、極性切換手段29により差信号7に含まれるID信号の極性を極性信号15に基づいて切り換えて出力し、信号多重手段34により極性切換手段29の出力信号30に含まれるID信号と和信号22に含まれる記録信号をIDエンベロープ信号9に基づいて選択して出力し、オフセット制御手段37によりゲート発生手段46の発生するゲート信号38を用いて信号多重手段37の出力信号35の直流レベルを一定に制御することができる。
【0062】
ここで、オフセット制御手段37およびゲート発生手段46の好ましいパラメータを数値を示して述べる。
前述の光ディスクの記録再生パラメータを用いた場合で、かつ、VFOの長さが18μsの場合について述べる。
【0063】
オフセット制御手段37の具体例は、コンデンサ41と抵抗器43で構成される高速応答のハイパスフィルタのカットオフ周波数を300KHz、コンデンサ41と抵抗器42で構成される低速応答のハイパスフィルタのカットオフ周波数を1KHzとする。ゲート発生手段46の具体例で示した遅延時間t1,t3,t4を5μs、遅延時間t2を28μsとする。
【0064】
これらのパラメータを用いた場合、オフセット制御手段37においてVFO先頭期間に高速な直流オフセットの引き込みが完了し、有効データを含む後半部分で安定した直流レベルの維持が可能となる。
【0065】
なお、ここで示したパラメータは、これだけに限るものではなく、ある程度の範囲でパラメータを変化させてもこの実施の形態は動作する。更に、光ディスクの記録再生パラメータ、例えば、記録線密度や再生線速度が異なる場合は、更にはVFOの長さが異なる場合には、これらに比例または反比例させて各フィルタのカットオフ周波数や遅延時間t1〜t4を変化させれば対応できることは明らかである。
【0066】
以上の構成と動作によって、書換型光ディスクから再生された和信号と差信号とから、ID信号と記録信号を多重し、図3(m)ならびに図2(i)に示すように直流レベルを揃えた出力信号39が得られる。
【0067】
このオフセット制御手段37の出力信号39は、図1において、自動振幅制御処理とイコライザ処理(以下の説明ではAGC/EQL処理と称す)とを行うAGC・EQL60を通して、A/D変換器62に入力される。A/D変換器62では、入力のダイナミックレンジを最大限に使用して多ビットのディジタル信号63に変換される。
【0068】
この(実施の形態1)ではディジタル変換前のアナログ信号系においてAGC/EQL処理する場合で説明したが、ディジタル変換後にディジタル信号処理でAGC/EQL処理を実現することも可能である。
【0069】
但し、A/D変換器62の必要ビット数を最小限にするためには、この(実施の形態1)のようにディジタル変換前にアナログ処理することが好ましい。
(実施の形態2)
図4はID信号を差信号から選択する場合の(実施の形態2)の光ディスク装置を示し、図5はその信号波形図を示す。
【0070】
ここでは(実施の形態2)の(実施の形態1)と共通の構成については説明を省略し、異なる部分について説明する。図4において図1と同じ符号を付けたブロックは(実施の形態1)と機能が同じである。
【0071】
図4において、光検出手段4は光ディスク1に記録された信号を複数の電気信号に変換して出力し、差動アンプ6により図5(c)に示すように差信号7を生成する。
【0072】
差信号7は先頭にID信号があり、後方には単一周波数のウオブル信号がある。ID信号は極性の異なる2つの部分からなり、(実施の形態1)とは極性が逆の場合を示している。
【0073】
この差信号7はIDエンベロープ検出手段8に入力され、図5(d)に示すIDエンベロープ信号9を出力する。また、差信号7とIDエンベロープ信号9は、極性検出手段14に入力され図5(f)に示す極性信号15を出力する。
【0074】
加算アンプ21では図5(a)に示す和信号22を生成する。和信号22は、先頭にID信号があり、後方にはランドまたはグルーブの記録トラックに結晶/非結晶の状態で記録された記録信号がある。
【0075】
この(実施の形態2)では、記録信号の極性が(実施の形態1)と逆の場合を示している。図4において和信号22は、RFエンベロープ検出手段24に入力され、図5(b)に示すRFエンベロープ信号23を出力する。
【0076】
同期信号発生手段64は、IDエンベロープ信号9、図5(f)に示す極性信号15、RFエンベロープ信号23を入力とし、信号多重手段34で使用するIDゲート信号67と、極性切換手段29で使用する極性ゲート信号68と、オフセット制御手段37で使用するリードゲート信号69とを発生する。
【0077】
具体的には、同期信号発生手段64はカウンタ65とデコーダ66とで構成されている。
カウンタ65は、IDエンベロープ信号9または極性信号15またはRFエンベロープ信号23の立ち上がりエッジをプリセット入力とし、1セクタを連続して計数する。
【0078】
デコーダ66はカウンタ56の出力をデコードしてカウンタに同期したゲート信号を発生する。IDゲート信号67は、図5(e)に示すように和信号(a)または差信号(c)のID信号を含む範囲でハイレベルとなる信号である。極性ゲート信号68は、図5(g)に示すようにID信号または記録信号の極性をハイレベル/ローレベルで表した信号である。図5(j)に示すリードゲート信号69は、図5(i)に示す極性切換手段29の出力信号71のID信号または記録信号の先頭にあるVFO信号の前半部でローレベルとなり、後半部から有効データにかけてハイレベルとなる信号である。
【0079】
ここで、IDエンベロープ信号9とIDゲート信号67、極性信号15と極性ゲート信号68、(実施の形態1)のゲート信号38とこの(実施の形態2)のリードゲート信号69が異なる点は、IDエンベロープ信号9と極性信号15とRFエンベロープ信号23とゲート信号38が、光ディスク1から検出された直接の信号あるいはこれらを組み合わせた信号であるのに対し、IDゲート信号67と極性ゲート信号68とリードゲート信号69は、カウンタを用いて同期再生して間接的に生成された信号である。
【0080】
すなわち、光ディスク1にディフェクト(傷などによる信号の欠落)があった場合、前者は正しい信号とはならないが、後者は補間機能が働いて常に正しい信号となる。
【0081】
図4の信号多重手段34は、差信号7と和信号22を入力とし、IDゲート信号67により選択して1つの信号に多重した出力信号70を出力する。その結果、出力信号70として図5(h)に示すように、IDゲート信号67がハイレベルの期間に、入力の差信号7のID信号が出力され、IDゲート信号67がローレベルの期間に、入力の和信号22の記録信号が多重されて出力される。
【0082】
極性切換手段29は、信号多重手段34の出力信号70を入力とし、極性ゲート信号68で信号の極性を切り換えて図5(i)に示す出力信号71を出力する。その結果、出力信号71は、極性ゲート信号68がハイレベルのときに入力される信号多重手段34の出力信号(h)を反転した信号となり、両極性であったID信号の極性の向きおよび記録信号の極性が一方向に揃えられる。
【0083】
オフセット制御手段37は、信号多重手段34の出力信号70の極性を一方向に揃えた信号71を入力とし、リードゲート信号69を用いて信号の有効データ部分の直流レベルを図5(k)に示すように一定に制御した出力信号72を出力する。その結果、出力信号72は、リードゲート信号69がローレベルの期間に、ID信号または記録信号の先頭にあるVFO部分で所定の直流レベルまでオフセットの高速な応答で引き込みを行い、リードゲート信号69がハイレベルの期間に、ID信号または記録信号の有効データ部分で低速な応答で一定の直流レベルを保持する。
【0084】
以上のように、この(実施の形態2)の光ディスク装置では、信号多重手段34により差信号7に含まれるID信号と和信号22に含まれる記録信号をIDゲート信号67に基づいて選択して出力し、極性切換手段29により信号多重手段34の出力信号70に含まれるID信号および記録信号の極性を極性ゲート信号68に基づいて切り換えて出力し、オフセット制御手段37によりリードゲート信号69を用いて極性切換手段29の出力信号71の直流レベルを一定に制御することができる。
【0085】
以上の構成と動作によって、光ディスク1から再生された和信号22と差信号7とから、ID信号と記録信号を多重し、直流レベルを揃えた出力信号72が得られる。このオフセット制御手段37の出力信号72は、AGC・EQL60を通して、A/D変換器62に入力される。
【0086】
A/D変換器62では、入力のダイナミックレンジを最大限に使用して多ビットのディジタル信号63に変換する。この(実施の形態2)でも(実施の形態1)と同じのようにディジタル変換前にAGC/EQL処理する場合で説明したが、これらの機能は、ディジタル変換後にディジタル信号処理で行うことも可能である。A/D変換器62のビット数を最小限にするためには、この実施の形態のようにディジタル変換前にアナログ処理した方が好ましい。
【0087】
なお、この(実施の形態2)で使用した同期信号発生手段64を(実施の形態1)に適用して、IDエンベロープ信号9,極性信号15,ゲート信号38を得るようにしてもよい。
【0088】
なお、(実施の形態2)では、ID信号を差信号7から得る場合で説明したが、ID信号は、和信号(トラッキング信号、全加算信号)にも含まれており、信号多重手段34でID期間にこれらを選択する構成としても良い。
【0089】
このうち、ID信号を和信号(全加算信号)から選択する場合には、図4に示す光ディスク装置と全く同じ構成のまま制御信号を変更すれば対応できる。図5(a)示す和信号が入力の場合、IDゲート信号67をローレベルに固定とすることによって、信号多重手段34において常に和信号22を選択する。ID信号と記録信号が同一極性なので、極性ゲート信号68をハイレベルに固定とすることによってID信号と記録信号の極性を共に反転させる動作にすればよい。
【0090】
また、和信号が後述の(実施の形態4)の説明で使用する図10(a)に示す和信号の場合も同様に、IDゲート信号67をローレベルに固定とすることによって、信号多重手段34において常に和信号22を選択する。ただし、ID信号と記録信号の極性が異なるので、極性ゲート信号68を、図10(b)に示すようにID期間でハイレベルとなる信号とすることによって、ID信号の極性を反転し記録信号と揃える動作とすればよい。すなわち、(実施の形態2)の光ディスク装置は、ID信号を差信号または和信号のどちらからでも選択できる構成となっている。
【0091】
以下には、別の構成により、ID信号をトラッキング信号から得る場合の(参考例)と、ID信号を全加算信号から得る場合の(実施の形態3)について説明する。
【0092】
(参考例)
図6に本発明の(参考例)の光ディスク装置を示し、図8にその信号波形図を示す。
【0093】
ここでは(参考例)の(実施の形態2)と共通な部分については説明を省略し、異なる部分について説明する。図6において図4と同じ符号を付けたブロックは(実施の形態2)と機能が同じである。
【0094】
図6において、光検出手段4は、光ディスク1に記録された信号を複数の電気信号に変換して出力する。このうち、トラッキング信号5は次のようにして検出される。
【0095】
ピックアップ3には、図7に示すように近接して配置されたディテクタ3a〜3dからなる分割ディテクタ94を使用し、その境界に受光ビーム95を配置する。4つの各ディテクタ3a〜3dは検出信号p1〜p4を出力する。
【0096】
図6において、ディテクタ3aの検出信号p1とディテクタ3dの検出信号p4を加算した信号がトラッキング信号(+)80であり、ディテクタ3bの検出信号p2とディテクタ3cの検出信号p3を加算した信号がトラッキング信号(−)81であり、それぞれ図8(a)(b)のような波形となる。
【0097】
同期信号発生手段84は、カウンタ77とデコーダ78で構成されており、IDエンベロープ信号9、極性信号15、RFエンベロープ信号23を入力とし、信号多重手段82で使用する第1,第2選択ゲート信号85,86、オフセット制御手段37で使用するリードゲート信号69を発生する。
【0098】
第1選択ゲート信号85は、図8(d)に示すようにトラッキング信号(+)80のID信号の前半部分でハイレベルとなる信号である。第2選択ゲート信号86は、図8(e)に示すようにトラッキング信号(−)81のID信号の後半部分でハイレベルとなる信号である。
【0099】
信号多重手段82は、和信号22と、トラッキング信号(+)80とトラッキング信号(−)81を入力とし、第1,第2選択ゲート信号85,86により入力信号を選択して1つの信号に多重した図8(f)に示す出力信号83を出力する。
【0100】
出力信号83は、第1選択ゲート信号85がハイレベルの期間に入力のトラッキング信号(+)80のID信号前半部が出力され、第2選択ゲート信号86がハイレベルの期間に入力のトラッキング信号(−)81のID信号後半部が出力され、第1,第2選択ゲート信号80,81がともにローレベルの期間に、入力の和信号22の記録信号が出力される。
【0101】
この(参考例)の光ディスク装置では、信号多重手段82により和信号の一種であるトラッキング信号に含まれるID信号と、和信号22(全加算信号)に含まれる記録信号を第1,第2選択ゲート信号85,86に基づいて選択して出力することによって、ID信号と記録信号を多重した出力信号83が得られる。
【0102】
この(参考例)は、光検出手段4における光ディスク1とピックアップ3の角度(チルト)が正規でない場合でも、ID信号の読み取りエラーを少なくさせる効果がある。
【0103】
(実施の形態3)
図9に本発明の(実施の形態3)の光ディスク装置を示し、図10にその信号波形図を示す。
【0104】
ここでは(実施の形態3)の(実施の形態2)と共通な部分については説明を省略し、異なる部分について説明する。図9において図4と同じ符号を付けたブロックは(実施の形態2)と機能が同じである。
【0105】
図9において、光検出手段4は、光ディスク1に記録された信号を複数の電気信号に変換して出力する。複数の電気信号は加算アンプ21により全加算されて和信号22を得る。これを図10(a)に示す。
【0106】
同期信号発生手段90は、カウンタ96とデコーダ97で構成されており、IDエンベロープ信号9、極性信号15、RFエンベロープ信号23を入力とし、極性切換手段91で使用する第2極性ゲート信号92、オフセット制御手段37で使用するリードゲート信号69を発生する。第2極性ゲート信号92は、図10(b)に示すように、和信号22のID信号部でハイレベルとなる信号である。
【0107】
極性切換手段91は、和信号22を入力とし、第2極性ゲート信号92により入力信号の極性を反転した出力信号93を出力する。図10(c)に示すように出力信号93は、第2極性ゲート信号92がハイレベルの期間に、入力の和信号22のID信号部の極性が反転され、ローレベルの期間には和信号22の記録信号部がそのままの極性で出力される。
【0108】
この(実施の形態3)の光ディスク装置では、極性切換手段91により和信号22(全加算信号)に含まれるID信号と記録信号の極性を揃えて出力することができる。
【0109】
この(実施の形態3)は、光検出手段4における光ディスク1とピックアップ3のフォーカス制御誤差が大きい場合でも、ID信号の読み取りエラーを少なくさせる効果がある。
【0110】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、光検出手段で検出された複数の電気信号の和信号と差信号を用いる光ディスク装置の再生信号を、多ビットのディジタル信号に変換する用途において、ディジタル変換の前段回路(例えば、AGCやイコライザ)のダイナミックレンジが少なくて済み、かつ、必要最小限のビット数の1個のA/D変換器でディジタル化することができる。
【0111】
従って、A/D変換器および装置設計が容易になり、装置全体のコストダウンに効果がある。本発明を用いることにより光ディスク装置に最尤複号などによる読出エラーの改善手法を導入することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の(実施の形態1)における光ディスク装置の構成図
【図2】本発明の(実施の形態1)における光ディスク装置の信号波形図
【図3】本発明の(実施の形態1)におけるゲート発生手段の信号波形図
【図4】本発明の(実施の形態2)における光ディスク装置の構成図
【図5】本発明の(実施の形態2)における光ディスク装置の信号波形図
【図6】(参考例)における光ディスク装置の構成図
【図7】(参考例)におけるピックアップの構成図
【図8】(参考例)における光ディスク装置の信号波形図
【図9】本発明の(実施の形態3)における光ディスク装置の構成図
【図10】本発明の(実施の形態3)における光ディスク装置の信号波形図
【符号の説明】
4 光検出手段
6 差動アンプ
7 差信号
8 IDエンベロープ検出手段
9 IDエンベロープ信号
14 極性検出手段
15 極性信号
21 加算アンプ
22 和信号
23 RFエンベロープ信号
24 RFエンベロープ検出手段
29 極性切換手段
34 信号多重手段
37 オフセット制御手段
38 ゲート信号
46 ゲート発生手段
64 同期信号発生手段
67 IDゲート信号
68 極性ゲート信号
69 リードゲート信号

Claims (4)

  1. 光検出手段で検出された複数の電気信号の和信号または差信号を用いる光ディスクの信号処理方法であって、
    前記和信号または差信号に含まれるID信号と前記和信号に含まれる記録信号を選択して時間多重し、
    前記ID信号の一部または全ての極性が前記記録信号と異なる場合において、前記ID信号の全ての極性を前記記録信号の極性に揃え、極性を揃えた前記ID信号と前記記録信号の直流レベルを一定に制御し、
    前記ID信号と前記記録信号を極性および直流レベルが揃った一連の信号に処理し、少なくともイコライザ処理を行った後、多ビットのディジタル信号に変換する
    相変化型光ディスクの信号処理方法。
  2. 差信号に含まれるID信号と、和信号に含まれる記録信号を選択して時間多重する
    請求項1記載の相変化型光ディスクの信号処理方法。
  3. 光ディスクからの反射光を検出し複数の電気信号を出力する光検出手段と、
    前記複数の電気信号から和信号と差信号を生成する演算手段と、
    前記和信号または差信号からID信号と前記和信号から記録信号を選択して時間多重する信号多重手段と、
    前記ID信号の一部または全ての極性が前記記録信号と異なる場合において、前記ID信号の全ての極性を前記記録信号の極性に揃える極性切換手段と、
    極性を揃えた前記ID信号と前記記録信号の直流レベルを一定に制御するオフセット制御手段と、
    前記ID信号と前記記録信号を極性および直流レベルが揃った一連の信号に対し少なくともイコライザ処理を行う前段回路と、
    前記前段回路の出力から多ビットのディジタル信号に変換するA/D変換器とを備えた
    相変化型光ディスク装置。
  4. 信号多重手段は、差信号に含まれるID信号と、和信号に含まれる記録信号を選択して時間多重する
    請求項3記載の相変化型光ディスク装置。
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