JP4177221B2 - 電子機器用銅合金 - Google Patents
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このような要求に応えるために、様々な銅合金が開発されたが、その多くは淘汰され現在では数種類が用いられているだけであり、その中でもCu−Cr系合金は高い導電性と強度を兼備する合金として、広く使用されている合金系の一つである(例えば、特許文献1、2、3参照)。
しかし、Cr化合物は粗大化し易いと共に、圧延加工により圧延方向に長く伸び易い性質があるため、ヒゲ状の形態となり、エッチング加工時に溶解されないヒゲ状のCr化合物がリード端面から突出し、リード間の短絡原因となると共にヒゲ状の化合物上のAgめっきがこぶ状になるめっき不良を発生させていた。
本発明者らはこのCrを含む銅合金系について研究を行い、CrSi化合物が打ち抜き加工性の改善に寄与しながら、展延性が低いために圧延加工時に圧延方向に伸び難く、ヒゲ状に変形しないことを新たに知見した。又、CrSi化合物以外のCr−Cu化合物、Cr−S化合物、Cr−P化合物などのCr化合物は、展延性が高く、圧延加工時に圧延方向に伸びてヒゲ状になることを見出した。即ち、このCrSi化合物を適正に生成させてプレス打抜き加工性を改善し、かつCrSi以外のCr化合物の大きさを制御することで、ヒゲ状化合物の生成を抑制し、エッチング加工性も満足する銅合金を見出したのである。
本発明に係る銅合金は、CrSi化合物を理想的に析出させ、且つ、CrSi以外のCr化合物の大きさを制御するために、熱間加工前に850℃から980℃の加熱処理を施し、又、リードフレーム材としてのバランスの取れた特性を満足させるために、熱間加工後に冷間加工と400℃から600℃の温度での熱処理の組み合わせによる工程を一回、若しくは、繰返し複数回施すことが必要である。
Crを0.1〜0.25wt%としたのは、Cr量が0.1wt%未満では熱間加工前に850℃〜980℃の温度での加熱処理を施しても、CrSi化合物の生成量が少なく、プレス打抜き加工性の改善効果が不十分であるためである。逆に、Cr量が0.25wt%を超えると、CrSi以外のCr化合物が10μmより粗大化するため、圧延加工後にヒゲ状になり、エッチング加工後のリード短絡の原因となったり、めっき性を低下させるためである。
更に、Cr/Siの成分比を3〜25とするのは、成分比が3未満では、Crが少ない場合にはCrSi化合物の生成量が少なくプレス打抜き加工性の改善効果が弱い。又、Si量が多い場合にはCrSi化合物が10μmを超えて粗大化するため、エッチング加工後のリード短絡の原因となると共に、導電率も低下するためである。成分比が25を超えるとCrSi化合物以外のCr化合物が10μmを超え粗大化するため、圧延加工により伸びてヒゲ状になり、エッチング加工後のリード短絡の原因となるためである。
更に、これらの化合物の分散密度が、1×103個/mm2未満ではプレス打抜き加工性の改善効果が少なく、5×105個/mm2を超えると打ち抜き加工性は良好であるが、強度特性および耐熱性が低下し、リードフレーム材としての機能を果たさない。
なお、本発明においては、Cu−Cr合金における前記CrSi化合物とCrSi化合物以外のCr化合物の役割と影響を分離したことが最重要ポイントであり、これらのサイズと分散密度を個別に制御する成分と製造方法を見いだしたことで、エッチング加工性とプレス打抜き加工性の双方を良好に満足させることを可能としたものである。
プレス打抜き加工性の改善にはCrSi化合物の生成が大きく寄与しているが、前記熱間加工前の加熱処理温度が980℃より高いと、最大径が0.05〜10μmのCrSi化合物の個数密度が低くなり、プレス打抜き加工性が改善されない。逆に加熱処理温度が850℃未満では、Cr化合物(CrSi化合物以外)の大きさが10μmを超えるか、その個数密度が1×103個/mm2以上となり、Cr化合物が圧延加工により圧延方向に長く伸びるか、又は隣接した化合物同士が断続的につながり易いため、エッチング加工時にリード短絡の原因となる。このような観点から、熱間加工前の加熱処理温度は850℃〜980℃とする。特に、880℃〜950℃が好ましい範囲である。
表1に示す本発明例合金を高周波溶解炉にて溶解し、厚さ30mm、幅100mm、長さ150mmの鋳塊を作製した。この鋳塊を940℃で2時間加熱後、厚さ11mmまで熱間圧延し、熱間圧延後、直ちに水中に浸漬して速やかに冷却した。次に両面を各1mmづつ面削した後、0.25mmまで冷間圧延し、この冷間圧延材を不活性ガス雰囲気中において530℃の温度で2時間の熱処理を施し、その後0.15mmまで仕上げ冷間圧延した後、350℃の温度で2時間の低温焼鈍処理を施し、表2に示す本発明例のNo.1からNo.9の銅合金板供試材を得た。
化合物の種類と大きさは、試験片を酸性水溶液(6体積%H2SO4+7体積%H2O2)中に30秒間浸漬してエッチングし、走査型電子顕微鏡(1000倍)にて無作為に選んだ10視野に存在する化合物全てをX線マイクロアナライザーにて分析して、各々の化合物の種類(CrSi化合物又はCr化合物)を決定した後、視野を写真撮影して、化合物の大きさの平均値を算出した。ここで大きさとは最大径であり、化合物が球形の場合はその径、楕円状の場合は長径、棒状の場合は最大長さと定義する。
個数密度は、化合物の大きさの測定と同様に10視野内のおける各々の化合物の個数を数え、その密度の平均値を算出した。
前記FARは角孔加工面を観察して破断部の厚さtを測定し、これをプレス打抜き加工前の試験片の厚さTで除した値(t/T)を各20箇所について求め、その平均値で評価した。FARは大きいほどプレス打抜き加工性に優れる。
バリ高さは、角孔縁部のバリ高さを接触式形状測定器で各20箇所測定し、その平均値で示した。
これに対し、Cr量が少なくCr/Siが小さい比較例のNo.21では、析出するCrSi化合物の個数密度が小さくプレス打抜き加工性に劣っている。又Si量が少なくCr/Siが大きい比較例のNo.22は、CrSi化合物が小さく、且つ個数密度も小さいためにプレス打抜き加工性に劣っている。Cr量の多い比較例のNo.23はCrSi化合物以外のCr化合物が粗大化しエッチング性に劣っている。Si量が多い比較例のNo.24はCr/Siが小さく、CrSi化合物が大きいためエッチング性に劣り、Sn量の多い比較例のNo.25は導電率が低く、Zn量の少ない比較例のNo.26ははんだ耐熱剥離性が劣った。
比較例として表1の本発明合金a、bを用い、熱間圧延前の加熱処理条件および仕上げ冷間圧延前の熱処理条件を本発明範囲外とした比較例のNo.27〜No.31の銅合金板供試材を作製した。なお、それ以外の条件は実施例1と同様に行っている。
これに対し、比較例のNo.27では、熱間圧延前の加熱温度が低いためにCrSi化合物が粗大化しエッチング性が劣った。一方、比較例のNo.28とNo.29は、熱間圧延前の加熱温度が高いために、CrSi化合物が小さく且つその個数密度が低いためにプレス打抜き加工性に劣っている。又、仕上げ圧延前の熱処理温度が低い比較例のNo.30及びNo.31では導電率が低下した。
Claims (1)
- Crを0.1〜0.25wt%、Siを0.005〜0.1wt%、Znを0.1〜0.5wt%、Snを0.05〜0.5wt%含み、CrとSiの重量比Cr/Siが3〜25の範囲で、残部銅及び不可避的不純物からなる銅合金において、銅母相中に、0.05μm〜10μmの大きさを有するCrSi化合物が1×103〜5×105個/mm2の個数密度で存在し、且つ、CrSi化合物以外のCr化合物の大きさが10μm以下であることを特徴とするエッチング加工性及び打ち抜き加工性の両方に優れた電子機器用銅合金。
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