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JP4171897B2 - 非水電解質二次電池用負極材及びその製造方法 - Google Patents

非水電解質二次電池用負極材及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウムイオン二次電池用負極活物質として用いた際に高い充放電容量及び良好なサイクル特性を有する非水電解質二次電池用負極材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯型の電子機器、通信機器等の著しい発展に伴い、経済性と機器の小型化、軽量化の観点から、高エネルギー密度の二次電池が強く要望されている。従来、この種の二次電池の高容量化策として、例えば、負極材料にV、Si、B、Zr、Snなどの酸化物及びそれらの複合酸化物を用いる方法(例えば、特許文献1:特開平5−174818号公報、特許文献2:特開平6−60867号公報参照)、溶融急冷した金属酸化物を負極材として適用する方法(例えば、特許文献3:特開平10−294112号公報参照)、負極材料に酸化珪素を用いる方法(例えば、特許文献4:特許第2997741号公報参照)、負極材料にSi22O及びGe22Oを用いる方法(例えば、特許文献5:特開平11−102705号公報参照)等が知られている。また、負極材に導電性を付与する目的として、SiOを黒鉛とメカニカルアロイング後、炭化処理する方法(例えば、特許文献6:特開2000−243396号公報参照)、珪素粒子表面に化学蒸着法により炭素層を被覆する方法(例えば、特許文献7:特開2000−215887号公報参照)、酸化珪素粒子表面に化学蒸着法により炭素層を被覆する方法(例えば、特許文献8:特開2002−42806号公報参照)がある。
【0003】
しかしながら、上記従来の方法では、充放電容量が上がり、エネルギー密度が高くなるものの、サイクル性が不十分であったり、市場の要求特性には未だ不十分であったりし、必ずしも満足でき得るものではなく、更なるエネルギー密度の向上が望まれていた。
【0004】
特に、特許第2997741号公報(特許文献4)では、酸化珪素をリチウムイオン二次電池負極材として用い、高容量の電極を得ているが、本発明者らがみる限りにおいては、未だ初回充放電時における不可逆容量が大きかったり、サイクル性が実用レベルに達していなかったりし、改良する余地がある。また、負極材に導電性を付与した技術についても、特開2000−243396号公報(特許文献6)では、固体と固体の融着であるため、均一な炭素皮膜が形成されず、導電性が不十分であるといった問題があるし、特開2000−215887号公報(特許文献7)の方法においては、均一な炭素皮膜の形成が可能となるものの、Siを負極材として用いているため、リチウムイオンの吸脱着時の膨張・収縮があまりにも大きすぎて、結果として実用に耐えられず、サイクル性が低下するためにこれを防止するべく充電量の制限を設けなくてはならず、特開2002−42806号公報(特許文献8)の方法においては、微細な珪素結晶の析出、炭素被覆の構造及び基材との融合が不十分であることより、サイクル性の向上は確認されるも、充放電のサイクル数を重ねると徐々に容量が低下し、一定回数後に急激に低下するという現象があり、二次電池用としてはまだ不十分であるといった問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−174818号公報
【特許文献2】
特開平6−60867号公報
【特許文献3】
特開平10−294112号公報
【特許文献4】
特許第2997741号公報
【特許文献5】
特開平11−102705号公報
【特許文献6】
特開2000−243396号公報
【特許文献7】
特開2000−215887号公報
【特許文献8】
特開2002−42806号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、よりサイクル性の高いリチウムイオン二次電池の負極の製造を可能とする非水電解質二次負極材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成するため種々検討を行った結果、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料の表面を黒鉛皮膜で被覆することで著しい電池特性の向上が見られることを確認すると同時に、単なる黒鉛被覆では市場の要求特性に応えられないことがわかった。そこで、本発明者らは更なる特性向上を目指し、詳細検討を行った結果、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料の表面に被覆する黒鉛皮膜の物性を特定範囲に制御することで、市場の要求する特性レベルに到達し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明者らは検討過程において、種々の条件にて得られたリチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料表面を黒鉛皮膜で覆った材料の電池特性評価を行った結果、各材料によって特性の相違があることを確認した。そこで、得られた各種材料の分析を行った結果、電池特性とラマン分光スペクトル、黒鉛被覆量、BET比表面積とは明らかなる相関が見られ、これら物性をある特定範囲にすることで、非常に特性の良好な非水電解質二次電池用負極材料が得られることを見出したものである。
【0009】
従って、本発明は、下記の非水電解質二次電池用負極材及びその製造方法を提供する。
(1)リチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料の表面を黒鉛皮膜で被覆した導電性粉末であり、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料が、珪素の微粒子が珪素系化合物に分散した複合構造を有する粒子、一般式SiOx(1.0≦x<1.6)で表される酸化珪素又はこれらの混合物であり、かつ黒鉛被覆量が3〜40重量%、BET比表面積が2〜30m2/gであって、該黒鉛皮膜が、ラマン分光スペクトルより、ラマンシフトが1330cm-1と1580cm-1付近にグラファイト構造特有のスペクトルを有することを特徴とする非水電解質二次電池用負極材。
(2)複合構造粒子における珪素の微粒子の大きさが1〜500nmであり、かつその表面が黒鉛と融合していることを特徴とする(1)記載の非水電解質二次電池用負極材。
(3)複合構造粒子における珪素系化合物が二酸化珪素であることを特徴とする(1)又は(2)記載の非水電解質二次電池用負極材。
(4)リチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料として、珪素の微粒子が珪素系化合物に分散した複合構造を有する粒子、一般式SiOx(1.0≦x<1.6)で表される酸化珪素又はこれらの混合物を用い、該材料をメタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、ブタン、ブテン、ペンタン、イソブタン、ヘキサン及びその混合物、1環乃至3環の芳香族炭化水素及びその混合物、ガス軽油、クレオソート油、アントラセン油、ナフサ分解タール油及びその混合物から選ばれる有機物ガス及び/又は蒸気中、1000〜1400℃で化学蒸着処理を行うことを特徴とする(1)記載の非水電解質二次電池用負極材の製造方法。
(5)リチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料として、珪素の微粒子が珪素系化合物に分散した複合構造を有する粒子、一般式SiOx(1.0≦x<1.6)で表される酸化珪素又はこれらの混合物を用い、該材料をメタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、ブタン、ブテン、ペンタン、イソブタン、ヘキサン及びその混合物、1環乃至3環の芳香族炭化水素及びその混合物、ガス軽油、クレオソート油、アントラセン油、ナフサ分解タール油及びその混合物から選ばれる有機物ガス及び/又は蒸気中、500〜1200℃で化学蒸着処理した後、不活性ガス雰囲気下1000〜1400℃で熱処理することを特徴とする(1)記載の非水電解質二次電池用負極材の製造方法。
(6)リチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料が、一般式SiOx(1.0≦x<1.3)で表される酸化珪素粉末であることを特徴とする(4)又は(5)記載の非水電解質二次電池用負極材の製造方法。
(7)リチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料の表面を黒鉛皮膜で被覆した導電性粉末のうち、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料が、珪素の微粒子が珪素系化合物に分散した複合構造を有する粒子、一般式SiOx(1.0≦x<1.6)で表される酸化珪素又はこれらの混合物であり、かつ黒鉛被覆量が3〜40重量%、BET比表面積が2〜30m2/gであって、該黒鉛皮膜がラマン分光スペクトルより、ラマンシフトが1330cm-1と1580cm-1付近にグラファイト構造特有のスペクトルを有する導電性粉末を高充放電容量及びサイクル特性を与えるリチウムイオン二次電池用負極活物質として選定することを特徴とする非水電解質二次電池用負極材の選定方法。
【0010】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明においてリチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料としては、Si、珪素(Si)と二酸化珪素(SiO2)との複合分散体、SiOx(1.0≦x<1.6、特に1.0≦x<1.3)といった金属珪素、珪素の微粒子が珪素系化合物に分散した微細な構造を有する粒子、珪素低級酸化物(いわゆる酸化珪素)等の珪素系物質の他に、下記式
MOa
(式中、MはGe,Sn,Pb,Bi,Sb,Zn,In,Mgから選ばれる少なくとも1種であり、a=0.1〜4の正数である。)
で表される珪素を含まない金属酸化物、もしくは、下記式
LiMbc
(式中、MはGe,Sn,Pb,Bi,Sb,Zn,In,Mg,Siから選ばれる少なくとも1種であり、b=0.1〜4の正数、c=0.1〜8の正数である。)
で表される(珪素を含んだものであってもよい)リチウム複合酸化物であり、具体的には、GeO,GeO2,SnO,SnO2,Sn23,Bi23,Bi25,Sb23,Sb24,Sb25,ZnO,In2O,InO,In23,MgO,Li2SiO3,Li4SiO4,Li2Si37,Li2Si25,Li8SiO6,Li6Si27,Li4Ge97,Li4Ge92,Li5Ge819,Li4Ge512,Li5Ge27,Li4GeO4,Li2Ge715,Li2GeO3,Li2Ge49,Li2SnO3,Li8SnO6,Li2PbO3,Li7SbO5,LiSbO3,Li3SbO4,Li3BiO5,Li6BiO6,LiBiO2,Li4Bi611,Li6ZnO4,Li4ZnO3,Li2ZnO2,LiInO2,Li3InO3、又はこれらの非量論的化合物等が挙げられるが、特に理論充放電容量の大きなSi(金属珪素)、珪素の微粒子が珪素系化合物に分散した微細な構造を有する粒子及び酸化珪素を用いた場合に本発明がより効果的である。
【0011】
この場合、Si及び珪素の微粒子が珪素系化合物に分散した微細な構造を有する粒子の物性については特に限定されるものではないが、平均粒子径は0.01〜50μm、特に0.1〜10μmが好ましい。平均粒子径が0.01μmより小さいと表面酸化の影響で純度が低下し、リチウムイオン二次電池負極材として用いた場合、充放電容量が低下したり、嵩密度が低下し、単位体積あたりの充放電容量が低下する場合がある。逆に50μmより大きいと化学蒸着処理における黒鉛析出量が減少し、結果としてリチウムイオン二次電池負極材として用いた場合にサイクル性能が低下するおそれがある。
なお、平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における重量平均粒子径で表すことができる。
【0012】
また、珪素の微粒子が珪素系化合物に分散した微細な構造を有する粒子において、珪素系化合物については、不活性なものが好ましく、製造しやすさの点において二酸化珪素が好ましい。またこの粒子は、下記性状を有していることが好ましい。
i.銅を対陰極としたX線回折(Cu−Kα)において、2θ=28.4°付近を中心としたSi(111)に帰属される回折ピークが観察され、その回折線の広がりをもとに、シェーラーの式によって求めた珪素の結晶の粒子径が好ましくは1〜500nm、より好ましくは2〜200nm、更に好ましくは2〜20nmである。珪素の微粒子の大きさが1nmより小さいと、充放電容量が小さくなる場合があるし、逆に500nmより大きいと充放電時の膨張収縮が大きくなり、サイクル性が低下するおそれがある。なお、珪素の微粒子の大きさは透過電子顕微鏡写真により測定することができる。
ii.固体NMR(29Si−DDMAS)測定において、そのスペクトルが−110ppm付近を中心とするブロードな二酸化珪素のピークとともに−84ppm付近にSiのダイヤモンド結晶の特徴であるピークが存在する。なお、このスペクトルは、通常の酸化珪素(SiOx:x=1.0+α)とは全く異なるもので、構造そのものが明らかに異なっているものである。また、透過電子顕微鏡によって、シリコンの結晶が無定形の二酸化珪素に分散していることが確認される。
【0013】
この珪素/二酸化珪素分散体(Si/SiO2)中における珪素微粒子(Si)の分散量は、2〜36重量%、特に10〜30重量%程度であることが好ましい。この分散珪素量が2重量%未満では、充放電容量が小さくなる場合があり、逆に36重量%を超えるとサイクル性が低下する場合がある。
【0014】
なお、上記珪素の微粒子が珪素系化合物に分散した微細な構造を有する粒子(珪素複合体粉末)は、珪素の微結晶が珪素系化合物に分散した構造を有する粒子であり、好ましくは0.01〜50μm程度の平均粒子径を有するものであれば、その製造方法は特に限定されるものではないが、例えば下記の方法を好適に採用することができる。
一般式SiOx(1.0≦x<1.6)で表される酸化珪素粉末を不活性ガス雰囲気下900〜1400℃の温度域で熱処理を施して不均化する方法。
【0015】
なお、本発明において酸化珪素とは、通常、二酸化珪素と金属珪素との混合物を加熱して生成した一酸化珪素ガスを冷却・析出して得られた非晶質の珪素酸化物の総称であり、本発明で用いられる酸化珪素粉末は一般式SiOxで表され、平均粒子径は0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.5μm以上で、上限として30μm以下、より好ましくは20μm以下が好ましい。BET比表面積は0.1m2/g以上、より好ましくは0.2m2/g以上で、上限として30m2/g以下、より好ましくは20m2/g以下が好ましい。xの範囲は1.0≦x<1.6、より好ましくは1.0≦x<1.3、更に好ましくは1.0≦x≦1.2であることが望ましい。酸化珪素粉末の平均粒子径及びBET比表面積が上記範囲外では所望の平均粒子径及びBET比表面積を有する珪素複合体粉末が得られないし、xの値が1.0より小さいSiOx粉末の製造は困難であるし、xの値が1.6以上のものは、熱処理を行い、不均化反応を行なった際に、不活性なSiO2の割合が大きく、リチウムイオン二次電池として使用した場合、充放電容量が低下するおそれがある。
【0016】
一方、酸化珪素の不均化において、熱処理温度が900℃より低いと、不均化が全く進行しないかシリコンの微細なセル(珪素の微結晶)の形成に極めて長時間を要し、効率的でなく、逆に1400℃より高いと、二酸化珪素部の構造化が進み、リチウムイオンの往来が阻害されるので、リチウムイオン二次電池としての機能が低下するおそれがある。より好ましくは熱処理温度は1000〜1300℃、特に1100〜1250℃である。なお、処理時間(不均化時間)は不均化処理温度に応じて10分〜20時間、特に30分〜12時間程度の範囲で適宜選定することができるが、例えば1100℃の処理温度においては5時間程度で所望の物性を有する珪素複合体(不均化物)が得られる。
【0017】
上記不均化処理は、不活性ガス雰囲気において、加熱機構を有する反応装置を用いればよく、特に限定されず、連続法、回分法での処理が可能で、具体的には流動層反応炉、回転炉、竪型移動層反応炉、トンネル炉、バッチ炉、ロータリーキルン等をその目的に応じ適宜選択することができる。この場合、(処理)ガスとしては、Ar、He、H2、N2等の上記処理温度にて不活性なガス単独もしくはそれらの混合ガスを用いることができる。
【0018】
本発明における非水電解質二次電池用負極材は、上記リチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料の表面を黒鉛皮膜で被覆したものであり、被覆方法としてはメカニカルアロイング法、化学蒸着法(CVD法)等が挙げられるが、黒鉛皮膜の均一形成の点で化学蒸着法が優れており、より好適に用いられる。
【0019】
次に本発明の特徴をなす黒鉛皮膜及び黒鉛被覆を施した導電性粉末の物性について説明する。
本発明におけるリチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料表面を被覆する黒鉛被覆量は3〜40重量%であり、特に5〜30重量%が好ましい。黒鉛被覆量が3重量%未満では、導電性膜形成といった点で不十分であり、十分な導電性を維持できなく、結果として非水電解質二次電池用負極材とした場合にサイクル性が低下する。逆に黒鉛被覆量が40重量%を超えても、効果の向上が見られないばかりか、負極材料に占める黒鉛の割合が多くなり、非水電解質二次電池用負極材として用いた場合、充放電容量が低下する。
【0020】
本発明におけるリチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料を黒鉛皮膜で被覆した導電性材料のBET比表面積は、2〜30m2/gであり、特に3〜25m2/gが好ましい。BET比表面積が2m2/g未満では、表面活性が小さくなり、結果として非水電解質二次電池用負極材とした場合に充放電容量が低下する。逆に、BET比表面積が30m2/gを超えると、電極作製時の結着剤量が多くなり、電極としての容量が低下するし、経済的にも不利となる。
【0021】
本発明におけるリチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料表面を被覆する黒鉛被覆膜は、ラマン分光スペクトルより、ラマンシフトが1330cm-1と1580cm-1付近にグラファイト特有のスペクトルを有することが必須である。この黒鉛皮膜を有する導電性材料を非水電解質二次電池用負極材として用いることで電池特性が飛躍的に向上する。この原因については、不明であるが、結果として、上記構造を有することにより、充放電時に伴う電極材料の膨張・収縮による電極破壊を防止できることで、黒鉛皮膜が、強度を維持する外殻の役割を果たしていることが推測できる。
【0022】
次に、本発明におけるリチウムイオン二次電池負極材の製造方法について説明する。
本発明のリチウムイオン二次電池負極材は、以下に示す2つの方法により製造することができる。第1の方法は、上記リチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料の表面を少なくとも有機物ガス又は蒸気(例えばCH4等)を含む雰囲気下、1000〜1400℃、より好ましくは1020〜1200℃の温度域で熱処理(CVD)する方法である。ここで、熱処理温度が1000℃より低いと、目的とするグラファイト構造を有する膜ができない場合があるし、逆に1400℃より高いと、化学蒸着処理により粒子同士が融着、凝集を起こす可能性があり、凝集面で導電性皮膜が形成されず、リチウムイオン二次電池負極材として用いた場合、サイクル性能が低下するおそれがあるためである。特に珪素を母材として用いた場合には珪素の融点に近い温度となるため、珪素が溶融し、粒子表面への導電性皮膜の被覆処理が困難となる。この第1の方法では、CVD処理条件によって、あるいは製造バッチによって所望とする結晶性の高い(即ち、特定のラマン分光スペクトルを有する)黒鉛皮膜で被覆された導電性粉末を定量的に確実に得ることが必ずしもできない場合がある。
【0023】
第2の方法は、上記リチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料の表面を少なくとも有機物ガス又は蒸気を含む雰囲気下、500〜1200℃、より好ましくは700〜1100℃の温度域で熱処理した処理物を再度不活性ガス雰囲気中1000〜1400℃、より好ましくは1020〜1200℃の温度域で熱処理する方法である。ここで、処理温度を限定した理由は上記1と同様である。なお、この第2の方法による導電性粉末製造は工程が増えるといった課題があるものの、第1の方法に比べ、より確実に、結晶性の高い(即ち、ラマン分光スペクトルを有する)黒鉛皮膜で被覆された導電性粉末を得ることができ、品質が安定するといった利点を有する。
【0024】
なお、処理時間は処理温度、CH4等の有機物ガスの濃度(流速)や導入量等によって適宜選定されるが、通常、第1の方法では、1〜10時間、特に2〜7時間程度が経済的にも効率的である。第2の方法では、炭素被覆処理(CVD処理)については、第1の方法と同様であり、不活性ガス中での再度の熱処理については再処理温度によって適宜選定されるが、通常1〜10時間、特に2〜5時間程度が経済的にも効率的である。
【0025】
本発明における有機物ガスを発生する原料として用いられる有機物としては、特に非酸性雰囲気下において、上記熱処理温度で熱分解して炭素(黒鉛)を生成し得るものが選択され、例えばメタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、ブタン、ブテン、ペンタン、イソブタン、ヘキサン等の炭化水素の単独もしくは混合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、エチルベンゼン、ジフェニルメタン、ナフタレン、フェノール、クレゾール、ニトロベンゼン、クロルベンゼン、インデン、クマロン、ピリジン、アントラセン、フェナントレン等の1環乃至3環の芳香族炭化水素もしくはこれらの混合物が挙げられる。また、タール蒸留工程で得られるガス軽油、クレオソート油、アントラセン油、ナフサ分解タール油も単独もしくは混合物として用いることができる。
【0026】
これらリチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料と有機ガスとの熱処理は、非酸化性雰囲気において、加熱機構を有する反応装置を用いればよく、特に限定されず、連続法、回分法での処理が可能で、具体的には流動層反応炉、回転炉、竪型移動層反応炉、トンネル炉、バッチ炉等をその目的に応じ適宜選択することができる。
【0027】
また、化学蒸着処理を行う原料については、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料単独、若しくはリチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料を有機珪素系表面処理剤で処理した処理物に黒鉛を添加した混合物が挙げられる。ここで、黒鉛を添加する理由はより導電性を向上させるためである。いずれにしても、本発明においては、表面の黒鉛皮膜がラマン分光スペクトルによりラマンシフトが1330cm-1と1580cm-1付近にグラファイト構造特有のスペクトルを有する結晶性の高い黒鉛皮膜で被覆されていることが必須であり、上記第1の方法あるいは第2の方法で製造されたもののうち、上記特性を満足するもののみを選定して負極材料に適用することが重要である。
【0028】
なお、有機珪素系表面処理剤としては、種類は特に限定されるものではないが、一般的にシランカップリング剤、その(部分)加水分解縮合物、シリル化剤、シリコーンレジンから選ばれる1種又は2種以上が用いられる。なお、(部分)加水分解縮合物とは、シランカップリング剤の部分加水分解縮合物でも全部を加水分解縮合したシランカップリング剤の加水分解縮合物でもよいことを意味する。
【0029】
この場合、シランカップリング剤としては、下記一般式(1)、シリル化剤としては下記一般式(2)で示されるものが挙げられる。
(4-n)Si(Y)n …(1)
(RmSi)L(Y)p …(2)
(但し、Rは一価の有機基、Yは加水分解性基又は水酸基、nは1〜4の整数、pは1〜3の整数、Lは2〜4の整数、mは1〜3の整数である。)
【0030】
ここで、Rとしては、炭素数1〜12、特に1〜10のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基などの非置換一価炭化水素基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子(塩素、フッ素、臭素原子等)、シアノ基、オキシエチレン基等のオキシアルキレン基、ポリオキシエチレン基等のポリオキシアルキレン基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、エポキシ基などの官能基で置換した置換一価炭化水素基、これら非置換又は置換一価炭化水素基において、酸素原子、NH基、NCH3基、NC65基、C65NH−基、H2NCH2CH2NH−基などが介在した基を挙げることができる。
【0031】
Rの具体例としては、CH3−、CH3CH2−、CH3CH2CH2−などのアルキル基、CH2=CH−、CH2=CHCH2−、CH2=C(CH3)−などのアルケニル基、C65−などのアリール基、ClCH2−、ClCH2CH2CH2−、CF3CH2CH2−、CNCH2CH2−、CH3−(CH2CH2O)s−CH2CH2CH2−、CH2(O)CHCH2OCH2CH2CH2−(但し、CH2(O)CHCH2はグリシジル基を示す)、CH2=CHCOOCH2−、
【化1】
Figure 0004171897
HSCH2CH2CH2−、NH2CH2CH2CH2−、NH2CH2CH2NHCH2CH2CH2−、NH2CONHCH2CH2CH2−などが挙げられる。好ましいRとしては、γ−グリシジルオキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ−アミノプロピル基、γ−シアノプロピル基、γ−アクリルオキシプロピル基、γ−メタクリルオキシプロピル基、γ−ウレイドプロピル基などである。
【0032】
Yの加水分解性基としては、−OCH3、−OCH2CH3などのアルコキシ基、−NH2、−NH−、−N=、−N(CH32などのアミノ基、−Cl、−ON=C(CH3)CH2CH3などのオキシミノ基、−ON(CH32などのアミノオキシ基、−OCOCH3などのカルボキシル基、−OC(CH3)=CH2などのアルケニルオキシ基、−CH(CH3)−COOCH3、−C(CH32−COOCH3などが挙げられる。これらはすべて同一の基であっても異なる基であってもよい。好ましいYとしては、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、イソプロペニルオキシ基等のアルケニルオキシ基、イミド残基(−NH−)、非置換又は置換のアセトアミド残基、ウレア残基、カーバメート残基、サルファメート残基、水酸基などである。
【0033】
sは1〜3の整数であり、好ましくは2又は3であり、より好ましくは3である。また、nは1〜4の整数、好ましくは3又は4である。
【0034】
シランカップリング剤の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−シアノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。シランカップリング剤は単独でもよいし、2種類以上を混合してもよい。又はその加水分解縮合物及び/又はその部分加水分解縮合物であってもよい。
【0035】
また、一般式(2)のシリル化剤の具体例としては、ヘキサメチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、テトラビニルジメチルジシラザン、オクタメチルトリシラザン等のオルガノシラザン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、N,O−ビス(トリメチルシリル)カーバメート、N,O−ビス(トリメチルシリル)サルファメート、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフロロアセトアミド、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア等が挙げられる。
【0036】
また、有機珪素系表面処理剤として、シリコーンレジン(即ち、直鎖状、環状、分岐状又は三次元網状構造の1分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上の(OR2)基(R2は後述するR2と同じ)を含有するオルガノポリシロキサン)を用いることもでき、この場合、下記一般式(3)のものが挙げられる。
1 q(R2O)rSiO(4-q-r)/2 …(3)
(但し、R1は水素原子又は炭素数が1〜10の置換もしくは非置換の一価炭化水素基、R2は水素原子又は炭素数が1〜6の置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、q,rはそれぞれ0≦q≦2.5、0.01≦r≦3、0.5≦q+r≦3を満足する0又は正数である。)
【0037】
ここで、R1,R2の一価炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基等、Rで例示したもののうち、炭素数が1〜10又は1〜6のものを挙げることができるが、R1はメチル基、エチル基、ビニル基、フェニル基、R2は水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基が好ましく用いられ、qは0≦q≦2、特に0.3≦q<1.5が好ましく、rは0.1≦r≦2、特に0.3≦r<1.2が好ましい。また、q+rは0.5≦q+r≦2.1、特に0.8≦q+r≦1.8が好ましい。
【0038】
本発明で得られた非水電解質二次電池負極材を用いて、リチウムイオン二次電池を製造することができる。
この場合、得られたリチウムイオン二次電池は、上記負極材を用いる点に特徴を有し、その他の正極、負極、電解質、セパレータなどの材料及び電池形状などは限定されない。例えば、正極活物質としてはLiCoO2、LiNiO2、LiMn24、V25、MnO2、TiS2、MoS2などの遷移金属の酸化物及びカルコゲン化合物などが用いられる。電解質としては、例えば、過塩素酸リチウムなどのリチウム塩を含む非水溶液が用いられ、非水溶媒としてはプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、2−メチルテトラヒドロフランなどの単体又は2種類以上を組み合わせて用いられる。また、それ以外の種々の非水系電解質や固体電解質も使用できる。
【0039】
なお、上記二次電池負極材を用いて負極を作製する場合、二次電池負極材に黒鉛等の導電剤を添加することができる。この場合においても導電剤の種類は特に限定されず、構成された電池において、分解や変質を起こさない電子伝導性の材料であればよく、具体的にはAl,Ti,Fe,Ni,Cu,Zn,Ag,Sn,Si等の金属粉末や金属繊維又は天然黒鉛、人造黒鉛、各種のコークス粉末、メソフェーズ炭素、気相成長炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、各種の樹脂焼成体等の黒鉛を用いることができる。
【0040】
【実施例】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0041】
[実施例1]
平均粒子径4μmの一般式SiOx(x=1.02)で表される酸化珪素粉末200gを流動層型処理装置内に仕込んだ。その後、Arガスを2NL/min流入しながら、300℃/hrの昇温速度で1150℃まで昇温、保持した。次に、CH4ガスを1NL/min追加流入し、5時間の黒鉛被覆処理を行った。処理後は降温し、約240gの黒色粉末を得た。得られた黒色粉末は、平均粒子径=4.2μm、BET比表面積=15.2m2/g、黒鉛被覆量22重量%の導電性粉末であった。なお、ラマン分光スペクトル(図1参照)により、ラマンシフトが1330cm-1と1580cm-1付近にグラファイト特有のスペクトルを有していた。
【0042】
○電池評価
次に、以下の方法で、得られた導電性粉末を負極活物質として用いた電池評価を行った。
まず、得られた導電性粉末に人造黒鉛(平均粒子径5μm)を炭素の割合が40重量%となるように加え、混合物を製造した。この混合物にポリフッ化ビニリデンを10重量%加え、更にN−メチルピロリドンを加えてスラリーとし、このスラリーを厚さ20μmの銅箔に塗布し、120℃で1時間乾燥後、ローラープレスにより電極を加圧成形し、最終的には20mmに打ち抜き、負極とした。
ここで、得られた負極の充放電特性を評価するために、対極にリチウム箔を使用し、非水電解質として六フッ化リンリチウムをエチレンカーボネートと1,2−ジメトキシシエタンの1/1(体積比)混合液に1モル/Lの濃度で溶解した非水電解質溶液を用い、セパレータに厚さ30μmのポリエチレン製微多孔質フィルムを用いた評価用リチウムイオン二次電池を作製した。
【0043】
作製したリチウムイオン二次電池は、一晩室温で放置した後、二次電池充放電試験装置((株)ナガノ製)を用い、テストセルの電圧が0Vに達するまで1mAの定電流で充電を行い、0Vに達した後は、セル電圧を0Vに保つように電流を減少させて充電を行った。そして、電流値が20μAを下回った時点で充電を終了した。放電は1mAの定電流で行い、セル電圧が1.8Vを上回った時点で放電を終了し、放電容量を求めた。
以上の充放電試験を繰り返し、評価用リチウムイオン二次電池の50サイクル後の充放電試験を行った。その結果、初回充電容量1380mAh/g、初回放電容量1180mAh/g、初回充放電効率85%、50サイクル目の放電容量1090mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率92%の高容量であり、かつ初回充放電効率及びサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であることが確認された。
【0044】
[比較例1、実施例2]
実施例1で用いた一般式SiOx(x=1.02)で示される酸化珪素粉末を処理温度950℃で7時間の黒鉛被覆処理した他は、実施例1と同様な方法で約240gの導電性粉末を製造した。得られた導電性粉末は、平均粒子径=4.5μm、BET比表面積=25.3m2/g、黒鉛被覆量=22重量%の導電性粉末であった。なお、ラマン分光スペクトル(図1参照)により、ラマンシフトが1330cm-1と1580cm-1付近にグラファイト特有のスペクトルは有していなかった。
この導電性粉末を用いて実施例1と同じ方法で試験用電池を作製し、同様な電池評価を行った結果、初回充放電容量1360mAh/g、初回放電容量1100mAh/g、初回充放電効率81%、50サイクル目の放電容量720mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率65%の実施例1に比べサイクル性の劣るリチウムイオン二次電池であった。
【0045】
次に、この上記導電性粉末を窒化珪素製トレイに100g仕込み、バッチ炉内に静置後、Ar雰囲気中1200℃にて3時間熱処理を行い、平均粒子径=4.3μm、BET比表面積=20.5m2/g、黒鉛被覆量=22重量%の熱処理品を製造し、この熱処理品についても実施例1と同様な電池評価を行った。
なお、この導電性粉末はラマン分光スペクトルにより、ラマンシフトが1330cm-1と1580cm-1付近にグラファイト特有のスペクトルを有していた。その結果、初回充放電容量1320mAh/g、初回放電容量1190mAh/g、初回充放電効率90%、50サイクル目の放電容量1120mAh/g、50サイクル後のサイクル保持率94%の高容量であり、かつ初回充放電効率及びサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池であった。
【0046】
[比較例2〜4]
黒鉛被覆処理温度、熱処理温度を変えた他は実施例1及び2と同様な方法で導電性粉末を製造した。導電性膜被覆条件及び導電性粉末物性を表1に示す。次に実施例1と同様な方法にて電池評価を行った。評価結果を表2に記す。
【0047】
【表1】
Figure 0004171897
【0048】
【表2】
Figure 0004171897
【0049】
【発明の効果】
本発明で得られた非水電解質二次電池用負極材をリチウムイオン二次電池負極材として用いることで、高容量でかつサイクル性に優れたリチウムイオン二次電池を得ることができる。また、製造方法についても簡便であり、工業的規模の生産にも十分耐え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1及び比較例1で得られた導電性粉末のラマン分光スペクトルである。

Claims (7)

  1. リチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料の表面を黒鉛皮膜で被覆した導電性粉末であり、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料が、珪素の微粒子が珪素系化合物に分散した複合構造を有する粒子、一般式SiOx(1.0≦x<1.6)で表される酸化珪素又はこれらの混合物であり、かつ黒鉛被覆量が3〜40重量%、BET比表面積が2〜30m2/gであって、該黒鉛皮膜が、ラマン分光スペクトルより、ラマンシフトが1330cm-1と1580cm-1付近にグラファイト構造特有のスペクトルを有することを特徴とする非水電解質二次電池用負極材。
  2. 複合構造粒子における珪素の微粒子の大きさが1〜500nmであり、かつその表面が黒鉛と融合していることを特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池用負極材。
  3. 複合構造粒子における珪素系化合物が二酸化珪素であることを特徴とする請求項1又は2記載の非水電解質二次電池用負極材。
  4. リチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料として、珪素の微粒子が珪素系化合物に分散した複合構造を有する粒子、一般式SiOx(1.0≦x<1.6)で表される酸化珪素又はこれらの混合物を用い、該材料をメタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、ブタン、ブテン、ペンタン、イソブタン、ヘキサン及びその混合物、1環乃至3環の芳香族炭化水素及びその混合物、ガス軽油、クレオソート油、アントラセン油、ナフサ分解タール油及びその混合物から選ばれる有機物ガス及び/又は蒸気中、1000〜1400℃で化学蒸着処理を行うことを特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池用負極材の製造方法。
  5. リチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料として、珪素の微粒子が珪素系化合物に分散した複合構造を有する粒子、一般式SiOx(1.0≦x<1.6)で表される酸化珪素又はこれらの混合物を用い、該材料をメタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、ブタン、ブテン、ペンタン、イソブタン、ヘキサン及びその混合物、1環乃至3環の芳香族炭化水素及びその混合物、ガス軽油、クレオソート油、アントラセン油、ナフサ分解タール油及びその混合物から選ばれる有機物ガス及び/又は蒸気中、500〜1200℃で化学蒸着処理した後、不活性ガス雰囲気下1000〜1400℃で熱処理することを特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池用負極材の製造方法。
  6. リチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料が、一般式SiOx(1.0≦x<1.3)で表される酸化珪素粉末であることを特徴とする請求項4又は5記載の非水電解質二次電池用負極材の製造方法。
  7. リチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料の表面を黒鉛皮膜で被覆した導電性粉末のうち、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る材料が、珪素の微粒子が珪素系化合物に分散した複合構造を有する粒子、一般式SiOx(1.0≦x<1.6)で表される酸化珪素又はこれらの混合物であり、かつ黒鉛被覆量が3〜40重量%、BET比表面積が2〜30m2/gであって、該黒鉛皮膜がラマン分光スペクトルより、ラマンシフトが1330cm-1と1580cm-1付近にグラファイト構造特有のスペクトルを有する導電性粉末を高充放電容量及びサイクル特性を与えるリチウムイオン二次電池用負極活物質として選定することを特徴とする非水電解質二次電池用負極材の選定方法。
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