JP4163772B2 - 合成樹脂成形品のスペーサー取付方法およびその構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、合成樹脂の成型品に形成された貫通穴に筒状のスペーサーを嵌着する方法およびその構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に、合成樹脂成形品をその成型品に形成された貫通穴にボルト等を通して強固に固定する場合、ボルトの締付と共に合成樹脂の座屈が発生するため、穴周りの保護、即ち、座屈防止として、図6に示すようにスペーサーを嵌着する構造が知られている。
このスペーサー26を成形品21の貫通穴に挿入する方法として、従来は、例えば以下のような構成を用いている。
(1) 上型31と下型35とによる成形品21の成形と同時にスペーサー26のインサートを完了する構成(図7参照)。
(2) 成形時に貫通穴28の穴明けのみ完了させ、成形品取出し後、後工程にてスペーサー26を挿入する構成(図8参照)。
(3) 成形品21の取出し後、後工程にて貫通穴28の穴明け、および貫通穴28へのスペーサー26の挿入を行う構成(図9参照)。
上記(1)の構成は生産数の多いものに有効であり、(2)(3)は生産数の少ないものに有効である。
しかしながら、(1)はウエルドラインが発生しやすく強度が低下する虞れがある。
また、(2)(3)については、スペーサー挿入の下穴径の管理が難しく、下穴径が大きければ保持力の低下が生じ、小さければ成形品の割れ等の不具合が生じる等の欠点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その主たる課題は、成形時には貫通穴の穴明けを行わず、スペーサーの挿入と同時に穴明け加工も行うようにした合成樹脂成形品のスペーサー取付方法およびその構造を提供することある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1の合成樹脂成形品のスペーサ取付工法の発明では、
合成樹脂の成形品に形成された貫通穴に筒状のスペーサーを嵌着させる工法において、
上記貫通穴形成相当個所の内周縁に対応する個所に環状溝を形成し、該環状溝の底壁を薄肉に設定すると共に、該環状溝で囲まれた部分をスペーサーの中空内に嵌込み可能な突部に形成した成形品を得る第1工程と、
得られた成形品の上記突部にスペーサーを嵌込む第2工程と、
上記スペーサーに打抜き方向の力を加えてスペーサーの先端のエッジ部で前記環状溝の底壁を破断し上記突部を抜き取る第3工程と、
成形品への穴明けと、この穴明けにより形成された貫通穴へのスペーサーの嵌着を同時に行う第4工程とからなることを特徴とする。
【0005】
また、請求項2の合成樹脂成形品のスペーサー取付構造では、
請求項1の合成樹脂成形品のスペーサ取付工法を用いて合成樹脂の成形品に形成された貫通穴に筒状のスペーサーを嵌着させる構造において、
貫通穴形成前の成型品が、貫通穴形成相当個所の内周縁に対応する個所に形成された環状溝と、筒状のスペーサの先端のエッジ部で打ち抜き可能な薄肉に設定された環状溝の底壁と、該環状溝で囲まれた部分を前記スペーサーの中空内に嵌込み可能な形状に設定された突部とからなっており、
前記成形品の前記突部に嵌め込んだ前記スペーサーのエッジ部で前記環状溝の底壁を破断して上記突部を打ち抜いて穴明けすると同時に、この穴明けにより形成された貫通穴へ前記スペーサーを嵌着してなることを特徴とする。
【0007】
また、請求項3の発明では、
前記貫通穴形成相当個所の一方の面側に前記環状溝と突部を形成し、他方の面側に厚み方向の中途位置まで窪み、その内周壁が前記環状溝の外周壁と略同一径に設定された凹部を形成してなることを特徴とする。
更に、請求項4の発明では、
前記環状溝の外周壁がその底壁に向かって漸次中心側へ隆起するテーパ面に形成され、凹部の内周壁が、前記環状溝の底壁に向かって漸次中心側へ隆起するテーパ面に形成されており、上記底壁をスペーサーで破断し突部を抜き取って貫通穴を形成してなることを特徴とする。
【0008】
これにより、合成樹脂の成型時には成型品に貫通穴が形成されておらず、貫通穴が形成される個所に環状溝と突部とが形成される。
そして、この突部にスペーサーを通して位置決めし、スペーサーに打ち抜き方向に力を加えれば、スペーサーの先端のエッジが環状溝の底壁の薄肉部分を打ち抜き突部を抜き取って貫通穴を形成すると同時に、この貫通穴にスペーサーを嵌め込むことができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の合成樹脂成形品のスペーサー取付方法およびその構造の好適実施例について図面を参照しながら説明する。
本実施例では、合成樹脂成形品にスペーサーを取付けるために、次の工程をとっている。
はじめに、図1に示すように、貫通穴形成相当個所7の内周縁に対応する個所に環状溝2を形成し、該環状溝2の底壁5を薄肉に設定すると共に、該環状溝2で囲まれた部分をスペーサー6の中空内に嵌込み可能なガイド用の突部3に形成した合成樹脂製の成形品1を成形する(第1工程)。
【0010】
即ち、成形型10は、上型11と下型15とからなっており、貫通穴形成相当個所7において上型11では、環状溝2を形成するための環状突片部12と、突部3を形成するための凹窩部13が形成されている。
一方、下型15には、凹部4を形成するための隆起部16が突設されている。
従って、図1に示す第1工程によって、前述のように表面側に環状溝2と突部3を設け、裏面側に凹部4を有する成型品1(図2参照)を得ることができる。
【0011】
ここで、上型11の環状突片部12は、その外周壁12aが先端(図中下方)に向かって漸次縮径となるテーパ面に形成されている。
また、環状突片部12の内周壁は凹窩部13の内周壁13aを兼ねており、該内周壁13aは開口側に向かって漸次拡径となるテーパ面に形成されている。
図示例では、この内周壁13aのテーパ面は傾斜角度が二段階となっており、開口側の傾斜角度が底部側の傾斜角度より小さく設定されている。
【0012】
一方、下型15の隆起部16は、外周壁16aの基端が漸次下向きに拡径するテーパ面に形成されており、その他の外周壁面は垂直に設定されている。
【0013】
上記のような上型11と下型15とを用いて、第1工程では図2に示すような成形品1を得ることができる。
この成形品1の貫通穴形成相当個所7の表面側は、環状溝2の外周壁2aが開口側(図中上方)へ向かって漸次拡径するテーパ面に形成されている。換言すれば、外周壁2aは環状溝の底壁5に向かって漸次中心側へ隆起するテーパ面に形成される。
【0014】
また、環状溝2で囲まれる突部3はスペーサー6を外嵌しやすいように略截頭円錐状からなっており、環状溝2の内周壁を兼ねる突部3の外周壁が、図示例では基端側を基端(図中下方)に向かって漸次縮径する第1テーパ面3aと、該第1テーパ面3aと連接する先端側で第1テーパ面より僅かに傾斜角を大きくして漸次縮径する第2テーパ面3bとに形成されている。
【0015】
貫通穴形成相当個所7の裏面側には、環状溝2に対峙すると共に、中心線を同じくし略同一の直径からなる凹部4が形成されている。
この凹部4は、内周壁が、前記環状溝2の底壁5に向かって漸次中心側へ隆起するテーパ面に形成されている。
図示例では、凹部4の内周壁は、底壁5から裏面開口に向かって漸次拡径する第1テーパ面4aと、開口縁で前記第1テーパ面4aより僅かに傾斜角を大きく設定して拡径する第2テーパ面4bとから形成されている。
【0016】
次に、図3に示すように、上記成形品1の突部3に筒状のスペーサー6を外嵌させてセットする(第2工程)。
このスペーサー6は、環状溝2の底壁5に嵌合可能な形状に形成されていればよいが、下端のエッジを用いて前記環状溝2の薄肉の底壁5を破断させるので、エッジ部分を尖鋭状に形成してもよい。
【0017】
そして図4に示すように、スペーサー6に対して打抜き方向(図示例では下方)へ均一の圧力を加えてスペーサー6を垂直に押し下げる(第3工程)。
これによりスペーサー6の先端のエッジで薄肉の底壁5を破断させ、スペーサーガイド用の突部3を打ち抜く。
【0018】
成形品1の凹部4の内周壁は拡径しているので、前記工程で打ち抜かれた突部3を成形品1から脱落させやすい。
そして、図5に示すように、突部3を打ち抜いて貫通穴8を形成すると同時にスペーサー6は自らが形成した貫通穴8に完全に没入させ、スペーサー6の貫通穴8への取付が完了する(第4工程)。
【0019】
ここで形成される貫通穴8の内周壁は、前記環状溝2の薄肉状の底壁5が破断されたもので、環状溝の外周壁2aのテーパ面と凹部4の第1テーパ面4aとが上記底壁5の破断個所5’に向かって上下方向からそれぞれ幅狭となるように傾斜した形状となるので、嵌着されたスペーサー6は上記破断個所5’で押圧された状態で取付られることができる。
【0020】
このスペーサー6の嵌着により、ボルト等の締付に際して合成樹脂への座屈の発生をおさえ貫通穴の穴周りの保護を図ることができる。
上記実施例では、突部の外周壁や凹部の内周壁のテーパ面を先端に向かって傾斜角が大きくなるよう二段に形成した場合を例示したが、同一角度で傾斜するものでもよい。
【0021】
また環状溝の外周壁や凹部の内周壁に形成されるテーパ面は、スペーサーの挿入を容易にしたり、突部の分離を容易にすると共にスペーサーの保持を確実に行うものであるから、上記外周壁や内周壁の全長に亘って形成されるものでなくてもよく、部分的に開口側に連なる壁面にだけ形成されるものであってもよい。
その他この発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
【0022】
【発明の効果】
この発明では、合成樹脂の成形時には穴明けを行わず、スペーサーの挿入と同時に穴明け加工も行うようにしたので、工程数の低減を図ることができると共にウエルドラインの発生を抑えることができる。
また、成形品に形成された貫通穴にはスペーサーが嵌着されるので穴周りの強度が低下する虞れもない。
更に一対の簡単な入れ子構造を有する成形型を用いるだけであるので、複雑な機構を有する成形型を用いる従来の方法に比べて成形型費の低減を図ることができる。
また、貫通穴を少なくともその開口側が拡径するようにテーパ面に形成して中途部分でスペーサーを保持するようにすれば、スペーサーの保持を簡便且つ確実に行うことができ、従来のような穴明け寸法管理を廃止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 合成樹脂成形品のスペーサー取付工法の第1工程を示す部分断面図である。
【図2】 第1工程で得られた成形品の貫通穴形成相当個所を示す断面図である。
【図3】 第2工程を示す断面図である。
【図4】 第3工程を示す断面図である。
【図5】 第4工程を示す断面図である。
【図6】 従来の合成樹脂成形品のスペーサー取付構造を示す断面図である。
【図7】 従来の合成樹脂成形品へのスペーサー挿入方法を示す断面図である。
【図8】 従来の別の合成樹脂成形品へのスペーサー挿入方法を示す断面図である。
【図9】 従来の異なる合成樹脂成形品へのスペーサー挿入方法を示す断面図である。
【符号の説明】
1…成形品
2…環状溝
2a…環状溝の外周壁
3…突部
4…凹部
4a…凹部の第1テーパ面
5…底壁
5’…底壁の破断個所
6…スペーサ
7…貫通穴形成相当個所
8…貫通穴
10…成形型
11…上型
12…環状突片部
13…凹窩部
15…下型
16…隆起部
Claims (4)
- 合成樹脂の成形品に形成された貫通穴に筒状のスペーサーを嵌着させる工法において、
上記貫通穴形成相当個所の内周縁に対応する個所に環状溝を形成し、該環状溝の底壁を薄肉に設定すると共に、該環状溝で囲まれた部分をスペーサーの中空内に嵌込み可能な突部に形成した成形品を得る第1工程と、
得られた成形品の上記突部にスペーサーを嵌込む第2工程と、
上記スペーサーに打抜き方向の力を加えてスペーサーの先端のエッジ部で前記環状溝の底壁を破断し上記突部を抜き取る第3工程と、
成形品への穴明けと、この穴明けにより形成された貫通穴へのスペーサーの嵌着を同時に行う第4工程とからなることを特徴とする合成樹脂成形品のスペーサ取付工法。 - 請求項1の合成樹脂成形品のスペーサ取付工法を用いて合成樹脂の成形品に形成された貫通穴に筒状のスペーサーを嵌着させる構造において、
貫通穴形成前の成型品が、貫通穴形成相当個所の内周縁に対応する個所に形成された環状溝と、筒状のスペーサの先端のエッジ部で打ち抜き可能な薄肉に設定された環状溝の底壁と、該環状溝で囲まれた部分を前記スペーサーの中空内に嵌込み可能な形状に設定された突部とからなっており、
前記成形品の前記突部に嵌め込んだ前記スペーサーのエッジ部で前記環状溝の底壁を破断して上記突部を打ち抜いて穴明けすると同時に、この穴明けにより形成された貫通穴へ前記スペーサーを嵌着してなることを特徴とする合成樹脂成形品のスペーサー取付構造。 - 貫通穴形成相当個所の一方の面側に前記環状溝と突部を形成し、他方の面側に厚み方向の中途位置まで窪み、その内周壁が前記環状溝の外周壁と略同一径に設定された凹部を形成してなることを特徴とする請求項2に記載の合成樹脂成形品のスペーサー取付構造。
- 環状溝の外周壁がその底壁に向かって漸次中心側へ隆起するテーパ面に形成され、凹部の内周壁が、前記環状溝の底壁に向かって漸次中心側へ隆起するテーパ面に形成されており、上記底壁をスペーサーで破断し突部を抜き取って貫通穴を形成してなることを特徴とする請求項3に記載の合成樹脂成形品のスペーサー取付構造。
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