JP4160175B2 - 冶金炉用ステーブ - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は高炉等の冶金炉に用いられるステーブに関する。
【0002】
【従来の技術】
高炉の炉壁構造は、鉄皮の内側に内部冷却機構を備えたステーブ(クーリングステーブ)を耐火物を介して設け、このステーブの内側に炉内耐火物が保持される構造となっている。従来、高炉用のステーブとしては鋳鉄製のものが広く用いられており、またその中でも冷却パイプを鋳鉄で鋳包んだ構造のものが一般的である。
【0003】
高炉を一定期間操業すると炉内耐火物が破損等によりステーブから脱落し、ステーブが炉内部に直接曝されるケースが多くなる。この状態になると、特に溶融スラグが存在する高炉下部(朝顔部、切立部、シャフト下部)の高熱負荷領域ではステーブ本体内に高い熱応力が発生して亀裂を生じ易く、この亀裂が冷却パイプに伝播して漏水事故を起こし易い。また、このような破損を生じなくても、炉内耐火物脱落後に高炉内部に晒されるステーブ本体は次第に損耗し、遂にはこの損耗が冷却パイプに達することになる。このため高炉の長期間の操業中には、上記破損や損耗を生じたステーブを新たなステーブと交換する必要がある。
【0004】
既設のステーブを新たなステーブと交換する場合、銅製(または銅合金製、以下同様)ステーブを用いることが好ましい。銅は鋳鉄に較べて熱伝導度が大きいため、銅製ステーブは本体内部の温度が常に低く維持される利点があるが、特に、その高い冷却能のために高炉下部の高熱負荷領域において以下のような作用が得られる。すなわち、高炉下部の高熱負荷領域においてステーブ本体から炉内側耐火物が脱落した場合でも、ステーブ表面に溶融スラグが接触するとすぐに凝固してステーブ表面に難剥離性の凝固スラグ層が生成する。この難剥離性の凝固スラグ層は熱伝導度が非常に小さいため、炉の高熱負荷から銅製ステーブを保護し、且つステーブによる炉内からの抜熱も適切に抑制される。
【0005】
したがって、高炉の長寿命化、高熱負荷領域での過冷却によるエネルギー損失の低減化、炉壁構造の簡素化とこれによるコスト低減を図るためには銅製ステーブが最適であると言え、このため破損し或は損耗した既設の鋳鉄製ステーブを新たなステーブを交換する場合にも、新たなステーブとしては銅製ステーブを用いることが好ましい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、銅製ステーブは鋳鉄製ステーブに較べて熱伝導度が大きいため、既設の鋳鉄製ステーブの一部を銅製ステーブと交換する場合、鋳鉄製ステーブよりも厚みが小さい銅製ステーブ(例えば、鋳鉄製ステーブの厚みが約200〜300mmであるとすると、銅製ステーブの厚みは約150mm)を用いることになる。しかし、このように厚みの小さい銅製ステーブを既設の鋳鉄製ステーブに隣接して設置した場合、炉内側のプロフィルが害されるため所謂裏風が発生し、この裏風がステーブの背面(鉄皮側)に回り込むことによりステーブ背面側の耐火物が損耗するという問題を生じる。
【0007】
一方、従来、高炉用に単体で使用される銅製ステーブとしては、圧延材または鍛造材を機械加工して得られるタイプのもの(例えば、特公昭63−56283号公報)と冷却パイプを鋳銅で鋳包んだタイプのものが知られ、また、鋳鉄製ステーブと組み合わせて使用される銅製ステーブとしてジャケット式のものも知られている。
【0008】
しかし、これら従来の銅製ステーブには以下のような問題がある。
まず、圧延材または鍛造材を機械加工して得られる銅製ステーブは、機械加工が複雑で製造コストが高く、しかも形状の自由度が小さい等の欠点がある。具体的には、例えば以下のような問題点を挙げることができる。
(1) ステーブ本体には炉内径に応じた曲率を付けることが必要であるが、圧延材等を機械加工してステーブを製造する際にこのような曲率を付けることは、製造コスト等の面で極めて難しい。このためにステーブ本体は平板状の設計にせざるを得ず、その結果、炉の稼動内容積が小さくなる。
【0009】
(2) ステーブの背面に鉄皮に固定するためのボスやリブを設ける必要があるが、これらは別部品を加工して溶接しなければならず、その分コスト高となる。
(3) ステーブの背面側にリブを設けたり、冷却稼働面側に耐火物や凝固スラグを保持するための突起や溝を設ける場合には、厚い板材から削り出す必要があるため製造コストが高くなる。
(4) ステーブを炉腹(切立)からシャフトにかけての部位に適用する場合、ステーブの形状を縦方向で“くの字”状とする必要があり、このための切削加工や曲げ加工が必要になり、製造コストが高くなる。
【0010】
さらに、圧延材または鍛造材を機械加工して得られる銅製ステーブでは、ステーブ内部の冷媒用通路は孔開け加工により形成する必要があり、この冷媒用通路のコーナー部を形成するには、通路を直交するように孔開け加工した後、それらの一端を栓溶接する必要があるが、このようにして設けられる通路のコーナー部はL型となるため、通路を流れる冷媒(通常、冷却水)の圧力損失が大きくなり、エネルギーロスが大きいという問題がある。また、このようなL型のコーナー部では冷却水の淀みを生じるため、この部分の通路内面に付着物が生じやすく、このような付着物が経時的に成長すると冷却水の圧力損失の原因となり、また冷却水とステーブ間での伝熱効率が低下し、冷却水による冷却作用が低下してしまう。さらに、上記のような冷却水の淀みを生じると冷却水流の乱れによって気泡が発生し、この気泡も冷却水による冷却作用を低下させる。そして、上記のような圧力損失が著しくなると冷却水流速にも影響を与え、この影響や上記冷却作用の低下はステーブの機能を低下させる原因にもなる。
【0011】
また、冷却パイプを鋳包む鋳銅製のステーブには以下のような問題があり、特に下記(1)〜(3)の問題を生じるため、その実際上の使用は困難である。
(1) 冷却パイプとこれを鋳包む鋳物部とは溶着せず、せいぜい密着程度の状態であるため、通常は両者間に隙間が形成される。この隙間の存在ために冷却パイプと鋳物部との間の熱伝導が十分でなく、炉内側からの熱負荷により鋳物部が破損を生じ易い。そして、この鋳物部の破損により剥き出しとなった冷却パイプが変形、摩耗を生じ、遂には破損して漏水を生じてしまう。
(2) 鋳込み時の熱により冷却パイプが再結晶し、冷却パイプの強度が低下して破損の原因となる場合がある。
【0012】
(3) 銅製の冷却パイプの融点と銅鋳物の融点が同じであるため、鋳込み温度によっては冷却パイプを溶損させてしまう場合がある。これを避けるために鋳込み温度を下げるとガス欠陥が生じ易い。また、こような問題を回避するために冷却パイプだけを鉄製にした場合には、鉄の熱伝導度が小さいためステーブ全体の冷却能が低下してしまう。
(4) ステーブ内部の冷媒用通路を形成するためには、冷却パイプを高精度に曲げ加工する必要があり、また時に複雑な形状に曲げ加工する必要もあることから、製造コストが高い。
(5) 冷却パイプを鋳包む際にパイプを正確に位置決めすることが難しく、設計通りの製品が得られない場合がある。特に、冷却パイプの曲げ部においては鋳込み前の曲率寸法が伸び、寸法精度が悪化する場合がある。
【0013】
また、鋳鉄製ステーブと組み合わせて使用されているジャケット式の鋳銅製ステーブを、仮に単体で用いた場合にも以下のような問題がある。
(1) 各ステーブに供給できる冷却水量にはポンプ能力の制約から一定の限度があるが、ジャケット式の鋳銅製ステーブは冷媒用通路の断面積が大きいため、必然的に冷却水流速が小さくなる。一般に炉内からの熱負荷に耐えるためには冷媒用通路内の冷却水は1〜3m/sec程度の流速が必要であるが、ジャケット式の鋳銅製ステーブでは1m/sec未満(一般に0.3m/sec以上、1m/sec未満)の冷却水流速しか得られず、このため炉内からの熱負荷により溶損する恐れがある。
【0014】
(2) ジャケット式の鋳銅製ステーブでは独立した冷媒用通路を多系統設けようとすると構造が複雑化し、また、上述したように冷媒用通路の1本当りの断面積が大きいため、通常は2系統程度の冷媒用通路しか設けることができない。このためステーブが部分的に溶損した場合でも冷媒用通路の機能が全面的に失われてしまう危険がある。また、部分的な溶損により冷媒用通路からの漏水を生じたような場合でも、点検や補修のために冷却水の供給を停止或いは減少させるとステーブが全面的に溶損してしまう恐れがあり、漏水の点検や補修さえも行うことができない。
【0015】
(3) ジャケット構造では、冷媒用通路のターン部が多くなるため冷却水の圧力損失が高くなり、エネルギーロスが大きい。また、ステーブの背面に鉄皮に固定するための取付用ボス(取付孔)を設ける必要があるが、ジャケット構造ではこのボスの一部が冷媒用流路に張り出し、これが冷却水の抵抗となるため、冷却水の圧力損失を生じる要因となる。さらに、ジャケット構造のコーナー部では冷却水の淀みを生じるため、この部分の通路内面に付着物が生じやすく、このような付着物が経時的に成長すると冷却水とステーブ間での伝熱効率が低下してしまう。また、上記のような冷却水の淀みを生じると冷却水流の乱れによって気泡が発生し、この気泡が冷却水による冷却作用を低下させる。そして、これらの問題はステーブの機能を低下させる原因にもなる。
【0016】
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、破損し或いは損耗した既設の鋳鉄製ステーブと交換して設置される場合にも、裏風の発生による鉄皮側耐火物の損耗が適切に防止できる銅または銅合金製の冶金炉用ステーブを提供することにある。
また本発明の他の目的は、特に高炉下部の高熱負荷領域に適用された場合でも長期間に亘って適正な機能を維持することができ、しかも上述したような従来の銅製ステーブの問題も生じない冶金炉用ステーブを提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決できる銅または銅合金製のステーブの構造について検討を重ね、その結果、ステーブ本体の鉄皮側となる面に所定の条件でリブを突設することにより、上述した裏風の発生を適切に防止でき、しかも、鉄皮側の耐火物の冷却や保持にも有効であることを見い出した。
【0018】
さらに、本発明者らは、高熱負荷領域に適用された銅製ステーブが、炉内側耐火物の脱落後でもステーブ表面に凝固スラグ層が生成されることにより適正な機能を維持することができ、特に高炉の高熱負荷領域に適用されるステーブとして最適であるという観点から、上記従来技術のような問題を生じない銅製ステーブを得るために種々の検討を重ねた結果、銅または銅合金製のステーブ本体を一体的に鋳造し、この鋳造時に中子によって冷媒用通路を同時形成して得られる鋳銅製ステーブが、従来技術のような問題を生じることなく、しかも予想を上回る極めて優れた性能を発揮できることを見い出した。
【0019】
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下の通りである。
[1]銅または銅合金製のステーブ本体の内部に冷媒用通路を有する冶金炉用ステーブにおいて、ステーブ本体の鉄皮側となる面に、ステーブ本体幅方向に沿ったリブを、ステーブ本体の上端及び下端位置と、その間の1箇所以上の位置に設けたことを特徴とする冶金炉用ステーブ。
【0020】
[ 2 ]上記[ 1 ]の冶金炉用ステーブにおいて、ステーブ本体が一体的に鋳造された銅または銅合金製の鋳造体で構成され、該ステーブ本体内部に鋳造時に形成された冷媒用通路を有することを特徴とする冶金炉用ステーブ。
[ 3 ]上記[ 2 ]の冶金炉用ステーブにおいて、冷媒用通路の屈曲部に曲率が付されていることを特徴とする冶金炉用ステーブ。
[ 4 ]上記[ 3 ]の冶金炉用ステーブにおいて、屈曲部の曲率が冷媒用通路の代表内径の3倍以上であることを特徴とする冶金炉用ステーブ。
【0021】
[ 5 ]上記[ 3 ]または[ 4 ]の冶金炉用ステーブにおいて、冷媒用通路が、主通路部と、この主通路部の各端部に曲率をもったコーナー部を介して連成され若しくは曲率をもって連成された入側通路部及び出側通路部とからなり、これら入側通路部及び出側通路部の各端部が冷媒の入口と出口をそれぞれ構成していることを特徴とする冶金炉用ステーブ。
[ 6 ]上記[ 2 ]〜[ 5 ]のいずれかの冶金炉用ステーブにおいて、ステーブ本体内部に、鋳造時に形成された2系統以上の独立した冷媒用通路を有することを特徴とする冶金炉用ステーブ。
【0022】
[ 7 ]上記[ 2 ]〜[ 6 ]のいずれかの冶金炉用ステーブにおいて、冷媒用通路の断面積が2500mm2以下であることを特徴とする冶金炉用ステーブ。
[ 8 ]上記[ 2 ]〜[ 7 ]のいずれかの冶金炉用ステーブにおいて、ステーブ本体の略中心またはその近傍を通る断面であって、冷媒用通路の複数の主通路部の軸方向と直交する方向でのステーブ本体の断面において、冷媒用通路の合計断面積sとステーブ本体(但し、リブを除いたステーブ本体部分であって、且つステーブ本体の冷却稼働面および/または鉄皮側となる面に突起および/または溝が形成されている場合には、当該突起および/または溝が形成された部分の厚みを除いたステーブ本体部分)の断面積Sとの比s/Sが、0.05〜0.15であることを特徴とする冶金炉用ステーブ。
【0023】
[ 9 ]上記[1]〜[ 8 ]のいずれかの冶金炉用ステーブにおいて、ステーブ本体の冷却稼働面の略全面に突起および/または溝が形成されていることを特徴とする冶金炉用ステーブ。
[ 10 ]上記[1]〜[ 9 ]のいずれかの冶金炉用ステーブにおいて、ステーブ本体の冷却稼働面に炉内側耐火物が固定されていることを特徴とする冶金炉用ステーブ。
[ 11 ]上記[1]〜[ 10 ]のいずれかの冶金炉用ステーブにおいて、リブが設けられたステーブ本体の鉄皮側となる面に、キャスタブルを施工することで耐火物層を設けたことを特徴とする冶金炉用ステーブ。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1〜図3は本発明の冶金炉用ステーブの一実施形態を示すもので、図1は背面図(鉄皮側から見た背面図)、図2は側面図、図3は図2中のIII−IIIに沿う断面図である。
図において、1は銅または銅合金製のステーブ本体(以下、銅製のステーブ本体を例に説明する)、2a〜2dはステーブ本体1の内部に形成された冷媒用通路であり、通常、ステーブ本体1の冷却稼動面aには、図2及び図3に仮想線で示すような炉内耐火物3が適宜な固定手段により固定される。この固定手段は任意であるが、例えば、ステーブ本体1の冷却稼動面aに複数の棒状の支持金具を突設し、この支持金具を炉内耐火物3を構成する各耐火物煉瓦に形成された取付孔に挿入することで、炉内耐火物3をステーブ本体1に支持、固定する構造等が採用できる。
【0025】
スーブ本体1の鉄皮側となる面(背面)には、ステーブ本体幅方向に沿ったリブ10がステーブ本体高さ方向で間隔をおいて複数条突設されている。
先に述べたように銅製ステーブは鋳鉄製ステーブに較べて熱伝導度が大きいため、これを既設の鋳鉄製ステーブの一部と交換する場合、鋳鉄製ステーブよりも厚みが小さいもの(例えば、鋳鉄製ステーブの厚みが約200〜300mmであるとすると、銅製ステーブの厚みは約150mm)を用いることになる。したがって、上記のようなリブ10を設けることにより、既設の鋳鉄製ステーブに隣接して設ける場合に、この既設の鋳鉄製ステーブと略同等の厚みを出すことができ、これにより炉内側のプロフィルを維持し、裏風の発生を防止できる。
【0026】
図4は、本発明のステーブを既設の鋳鉄用ステーブの一部と交換し、既設の鋳鉄用ステーブに隣接して設けた場合の構造を模式的に示しており、Aが本発明のステーブ、A′が既設の鋳鉄製ステーブ、Bは鉄皮、9はステーブ背面側の耐火物、11はステーブAを鉄皮Bに固定する固定金具である。
同図に示されるように、本発明の銅製ステーブAは背面側にリブ10を有するために隣接する鋳鉄製ステーブA′と略同等の厚みが確保され、このため炉内側のプロフィルに大きな段差は生じていない。
【0027】
また、本発明の銅製ステーブAと隣接する既設の鋳鉄製ステーブA′が図の仮想線a′に示すように損耗してきた場合にも、リブ10があるため裏風が銅製ステーブAの背面側に回り込むことが防止される。
さらに、これら複数条のリブ10はステーブ背面側の耐火物9を冷却し且つこれを保持する機能を有する。すなわち、耐火物9は上下のリブ10間で冷却され且つ保持されるため、損耗や脱落等を生じることなく長期間にわたって安定的に維持される。
また、本発明のステーブはステーブ本体1の厚みが小さく、リブ10により厚みを確保する構造であるため、ステーブ本体1の重量の軽減と製造コストの低減を図ることもできる。
【0028】
各リブ10の高さ(ステーブ厚み方向での高さ)は、既設の鋳鉄製ステーブと交換して使用する場合には、適用される箇所での隣接する既設の鋳鉄製ステーブの厚さを考慮し、炉内側のプロフィルが維持されるように選定される。
また、リブ10の形成数は任意であるが、ステーブ背面側の耐火物への裏風の回り込みを防止し、且つステーブ背面側の耐火物の冷却・保持機能を十分に得るためには、ステーブ本体1の上端及び下端に各1条と、それらの間に少なくとも1条、好ましくは2条以上設けることが好ましい。
【0029】
また、従来では既設のステーブを新たなステーブと交換する場合、新たなステーブを固定金具で鉄皮内側に固定した後、ステーブの背面側(すなわち、ステーブと鉄皮との間)にキャスタブルを注入する方法が採られている。このステーブの交換作業は炉の休風時間を利用して行っているが、キャスタブルの注入に比較的長い時間を要するため、限られた休風時間内ではステーブ背面側の隅々までキャスタブルが行渡らず、このためステーブ背面側の一部に空洞が生じるおそれがある。
【0030】
これに対して、本発明の冶金炉用ステーブを施工するに当っては、予め炉外においてステーブの鉄皮側となる面(背面)に直接キャスタブルを施工して耐火物層を設け、このキャスタブルが施工されたステーブを鉄皮内側に設置することができ、これによりステーブ設置後のキャスタブルの注入を省略し或いは注入する場合でも極く短時間で施工を完了することができる。すなわち、本発明のステーブは背面にリブ10を有するため、ステーブの背面に直接キャスタブルを施工しても、リブ10がキャスタブルで形成された耐火物層を保持することができ、このため予めキャスタブルを施工して耐火物層を設けておくことが可能である。そして、このような施工方法を採用できることにより、従来の施工法のようにステーブ背面側の耐火物層に空洞が生じるようなおそれはほとんどない。
【0031】
本発明の冶金炉用ステーブは、ステーブ本体が一体的に鋳造されたステーブ、圧延材または鋳造材を機械加工して得られたステーブ、冷却パイプを鋳銅で鋳包んだタイプのステーブ、ジャケットタイプのステーブ等のうちのいずれのタイプのものでもよいが、特にステーブとして最も優れた機能を有し、高炉下部の高熱負荷領域に適用された場合でも長期間に亘って適正な機能を維持することができるという点からは、ステーブ本体が一体的に鋳造されたタイプのものが最も好ましい。
図1〜図3に示す実施形態もこのタイプのステーブであり、ステーブ本体1が一体的に鋳造された銅または銅合金製の鋳造体で構成され、このステーブ本体1の内部に鋳造時に形成された冷媒用通路2a〜2dを有している。
【0032】
このような構造のステーブでは、ステーブ本体1の鋳造時において断面積の小さい中子を用いて冷媒用通路2を同時形成する。
先に述べたように従来の鋳銅製ステーブとしては、冷却パイプを鋳包んだ鋳銅製ステーブとジャケット式の鋳銅製ステーブが知られているだけであり、本実施形態のようにステーブ本体1が一体的に鋳造された鋳造体で構成され、且つ冷媒用通路2が断面積の小さい中子によってステーブ本体鋳造時に同時形成された構造のものは全く知られていない。
【0033】
ステーブ本体1の内部に形成する冷媒用通路2の本数は任意であるが、冷媒用通路の一部が損傷した場合でも冷却機能を維持することを考慮した場合、ステーブ本体1の内部には2系統以上の独立した冷媒用通路を形成することが好ましく、本実施形態では4系統の独立した冷媒用通路2a〜2dが形成されている。これらの冷媒用通路2にはその一端側から冷却水等の冷媒(以下、冷却水を例に説明する)が導入され、この冷却水はステーブ本体内部を冷却した後、冷媒用通路の他端側から排出される。
【0034】
冷媒用通路2は、冷却水の圧力損失をできるだけ少なくし且つ冷却水に淀みを生じることを防止するため、コーナー部等の屈曲部には全て曲率を持たせることが好ましい。
本実施形態の冷媒用通路2a〜2dは、ステーブ長手方向または幅方向に沿った直線状の主通路部20と、この主通路部20の各端部に所定の曲率をもったコーナー部23を介して連成され若しくは所定の曲率をもって連成された入側通路部21及び出側通路部22とからなり、これら入側通路部21及び出側通路部22の各端部が冷却水の入口4と出口5をそれぞれ構成している。これら入口4と出口5には、図示しない配管が溶接等により接続される。
【0035】
冷媒用通路2a〜2dの各コーナー部23や入側通路部21及び出側通路部22自体の曲率R(屈曲部の曲率R)は、冷却水の圧力損失を極力少なくし、且つ冷却水の淀みを生じさせないという観点から、代表内径の3倍以上とすることが好ましい。これらの曲率Rが代表内径の3倍未満では、通路を流れる冷却水の圧力損失によるエネルギーロスが大きくなるため好ましくない。また、屈曲部の曲率Rが小さいと冷却水の淀みを生じやすくなるため、この部分の通路内面に付着物が生じやすく、このような付着物が経時的に成長すると冷却水の圧力損失の原因となり、また冷却水とステーブ間での伝熱効率が低下し、冷却水による冷却作用が低下してしまう。さらに、上記のような冷却水の淀みを生じると冷却水流の乱れによって気泡が発生しやすくなり、この気泡も冷却水による冷却作用を低下させる。そして、上記のような圧力損失が著しくなると冷却水流速にも影響を与え、この影響や上記冷却作用の低下はステーブの機能を低下させる原因にもなる。
【0036】
なお、冷媒用通路2の主通路部20は本実施形態のような直線状以外に適宜な形態を採ることができ、例えば、湾曲状やS字状であってもよいし、また、途中のコーナー部に上記のような曲率を持たせることにより2以上の直線状を有する主通路部としてもよい。
冷媒用通路2a〜2dの断面形状に特別な制限はなく、円形、四角形、楕円形、多角形等、任意の断面形状を採用し得る。
【0037】
また、冷媒用通路2内での冷却水流速を確保するために、冷媒用通路2a〜2dの断面積(径方向断面積)は2500mm2以下(より望ましくは、2000mm2以下)とすることが好ましい。先に述べたように通路内での冷却水流速(冷却水線速度)が1m/sec未満であると、ステーブの冷却能が低下するため炉内からの熱負荷によりステーブが溶損する恐れがあるが、冷媒用通路2に冷却水を供給するための一般的なポンプ能力からして、冷媒用通路2の断面積が2500mm2を超えると冷却水流速1m/sec以上を確保できなくなる恐れがある。
【0038】
炉体に適用されるステーブは、ステーブ本体1から炉内側耐火物3が脱落した場合でも、その冷却能によって冷却稼働面に難剥離性で低熱伝導度の凝固スラグ層を生成させ、この凝固スラグ層によって炉内からの高熱負荷に耐え得るようにすることが必要であり、これによって高炉下部の高熱負荷領域に適用された場合でも溶損や割れ等を生じることなく長期間に亘って適正な機能を維持することができる。しかし、ステーブ本体1の冷却稼働面に生成した凝固スラグ層は、難剥離性ではあるものの、例えば突発的な熱衝撃が加えられたような場合には剥離を生じることがある。このような場合、ステーブ本体1の冷却稼働面にスラグを付着させて凝固スラグ層を速やかに再生成させる必要があり、この凝固スラグ層の再生成が遅れるとステーブ本体が炉内側からの高熱負荷に耐えることができなくなり、溶損や割れのを生じやすくなる。
【0039】
図5は、ステーブ本体1の冷却稼働面に形成された凝固スラグ層が剥離を生じた場合について、剥離前後におけるステーブ本体内部の温度の推移と、凝固スラグ層が剥離後、再生成(再付着)するまでの再生成時間tを示している。これによれば、凝固スラグ層の剥離が生じた直後にはステーブ本体1の温度は80℃前後から一挙に200℃まで上昇し、この温度からスラグが再付着し始めるに従って温度が徐々に低下し、一定時間(再生成時間t)が経過後、80℃前後の定常的な温度に戻る。
【0040】
そして、このように凝固スラグ層が剥離した際の炉内側からの高熱負荷によるステーブ本体の破損(溶損や割れ)を防止するためには、凝固スラグ層の再生成時間tをなるべく短くする必要があり、そのためには冷媒用通路2内を流れる冷却水流速を一定レベル以上に維持することが不可欠である。図6は、冷媒用通路2内を流れる冷却水流速と剥離を生じた後の凝固スラグ層の再生成時間tとの関係を示したもので、冷却水流速が1m/sec未満では、凝固スラグ層の再生成時間tが長すぎるためステーブ本体1に高熱負荷による破損を生じるケースがあることが判る。これに対して、冷却水流速が1m/sec以上ではステーブ本体1に高熱負荷による破損を生じることは殆どない。なお、冷却水流速が4m/secを超えてもそれ以上の効果は期待できないため、経済性の面から冷却水流速は4m/sec以下とすることが好ましい。
【0041】
また、ステーブ本体1の適正な冷却能を確保するためには、ステーブ本体の断面における冷媒用通路2の断面積(合計断面積)の割合を所定の範囲にすることが好ましい。すなわち、図7に示すようにステーブ本体1の略中心またはその近傍を通る断面であって、冷媒用通路2の複数の主通路部20の軸方向と直交する方向でのステーブ本体1の断面A−Aにおいて、冷媒用通路2の合計断面積sとステーブ本体1の断面積Sとの比s/Sが0.05〜0.15であることが好ましい。
【0042】
なお、図7に示すようにステーブ本体1の前記断面積Sは、リブ10を除いたステーブ本体部分の断面積であって、且つステーブ本体1の前面(冷却稼働面a)および/または背面(鉄皮側となる面)に突起および/または溝(図7の場合は溝6)が形成されている場合は、その突起および/または溝が形成された部分の厚みxを除いたステーブ本体部分の断面積とする。
上記の比s/Sが0.05未満では、ステーブの冷却能が低いため炉内側からの熱負荷によりステーブが溶損する恐れがある。一方、比s/Sが0.15を超えてもそれ以上の効果は期待できず、またステーブ本体の強度を低下させるおそれもある。
【0043】
ステーブ本体1の冷却稼働面aの略全面には、炉内側耐火物3が脱落した後の冷却稼働面aに先に述べたような凝固スラグ(冷却稼働面aに接触して凝固したスラグ)を付着させ、これを保持するための溝6が形成されている。この溝6の形成の態様(溝の深さや形成密度等)は任意であり、また、この溝6に代えて或いは溝6とともに突起を設けることもできる。
また、本実施形態では前記溝6の内部に耐火物7が充填されることにより冷却稼働面側が平坦化され、この面に炉内側耐火物2が取り付け固定されている。
【0044】
本実施形態のようにステーブ本体が一体的に鋳造された鋳造体により構成されたステーブは、ステーブ本体1の内部に形成された冷媒用通路2の内面が鋳造体としての比較的粗い表面(鋳肌面)を有している。そして、このように冷媒用通路2の内面が粗い表面を有することが、ステーブ本体が銅または銅合金製であることと相俟って、ステーブの冷却能の面で以下に述べるような大きな利点となることが判った。
【0045】
すなわち、先に述べたような圧延材または鍛造材を機械加工して得られる従来タイプのステーブは、機械加工による穿孔によって冷媒用通路を設けるものであるため、冷媒用通路の内面は粗さの小さい平滑な加工面となる。ところで、ステーブに対して非定常的な極めて高い熱負荷が作用した場合(例えば、先に述べたように冷却稼動面の凝固スラグ層が剥離した場合)には、冷媒用通路内を流れる冷却水の核沸騰現象を利用して熱を奪い、ステーブ本体1を速かに冷却することが好ましい。そして、この冷却水の核沸騰現象は、伝熱面(この場合は、冷媒用通路の内面)が粗であるほうが生じ易い。
【0046】
したがって、冷媒用通路の内面が平滑な加工面である上記従来タイプのステーブ本体では核沸騰現象が生じにくく、このため高い熱負荷が作用した場合にステーブ本体が高温になりやすく、また、温度の降下速度も小さい。これに対して、冷媒用通路2の内面が粗い鋳肌面である本発明のステーブ本体では、冷媒用通路内で核沸騰現象が容易に生じ、これにより瞬時に多量の熱を奪い、ステーブ本体1の温度を速かに低下させることができる。そして、このような作用効果の違いは、ステーブ本体の素材が熱伝導度が高い銅または銅合金である場合に特に顕著であり、したがって、本発明の一実施形態である一体鋳造型のステーブは圧延材または鍛造材を機械加工して得られる従来タイプのステーブに較べて、優れた冷却能を有していると言える。
【0047】
ステーブ本体1を銅合金により構成する場合、例えばJIS H 5100に規定されたCuC1、CuC2、CuC3等が用いられ、また、ステーブ本体1を銅合金により構成する場合、例えばクロームジルコン銅、ベリリウム銅等の低合金銅が用いられる。
その他図面において、8はステーブ本体1の背面の複数箇所に形成された取付孔であり、この取付孔8は鋳造時に或いは鋳造後の孔開け加工により形成することができる。
本発明のステーブAは、図4に示すように耐火物9を介して鉄皮Bの内側に配され、前記取付孔8に嵌挿される固定金具11により鉄皮Bに固定される。
【0048】
本発明の一実施形態である一体鋳造型のステーブは、銅または銅合金を素材としてステーブ本体1を一体的に鋳造し、この鋳造時に中子によって冷媒用通路2を同時形成することにより製造されるもので、一般には中子としては砂中子が用いられる。
また、一体鋳造型のステーブは冷却水の流速を高めるために冷媒用通路2の断面積を比較的小さくするため、鋳造の際に砂中子に熱が部分的に集中すると砂中子の形状が保てなくなる恐れがあり、従来からあるような中子砂(SiO2を主体とする砂)を用いる製造方法では、断面積の小さい冷媒用通路2を確実に形成することは殆ど不可能である。
【0049】
断面積の小さい冷媒用通路2を確実に形成するためには、高熱伝導率で且つ熱容量が大きく、しかも耐火性がある砂中子を用いる必要があり、これによってはじめて一体鋳造型のステーブを製造することが可能となる。そのような中子砂としては、熱伝導率:0.5〜1.5kcal/m・hr・℃、耐火度ゼーゲルコーン(SK):17〜37、熱膨張率(500℃):0.5〜1.5%、融解点1750〜2000℃程度の物性を有するZrO2を主体とした砂(所謂ジルコンサンド)を用いることが好ましい。また、鋳造方法としては、中子砂内に金属パイプを挿通させ、このパイプ内に空気等の冷媒を吹き込んで中子を冷却しつつ鋳造を行うことが好ましい。そして、このような特別な材質の砂中子を採用することと上記の特別な鋳造方式を採用することの組み合せにより、断面積:2500mm2以下という小断面積の冷媒用通路を有する一体鋳造型のステーブを製造することが可能となる。
【0050】
以上のような一体鋳造型の冶金炉用ステーブは、従来の銅製ステーブに較べて以下のような利点を有している。
(1) 高炉下部の高熱負荷領域に適用された場合でも溶損や割れ等を生じることなく長期間に亘って適正な機能を維持することができ、しかも炉内側耐火物3が脱落した場合でも、その優れた冷却能によって冷却稼働面に難剥離性で低熱伝導度の凝固スラグ層が形成されるため炉内からの高熱負荷に耐えることができ、且つ炉内からの抜熱も適切に抑制される。
【0051】
(2) ステーブ本体1の内部に形成された冷媒用通路2の内面が鋳造体としての比較的粗い表面(鋳肌面)を有しているため、非定常的に高い熱負荷が作用した場合でも冷媒用通路内で核沸騰現象が容易に生じ、これにより瞬時に多量の熱を奪い、ステーブ本体1の温度を速か低下させることができ、ステーブ本体の素材が熱伝導度が高い銅または銅合金であることと相俟って、優れた冷却効果を発揮できる。
【0052】
(3) ステーブ本体1が一体的に鋳造された鋳造体で構成され、その内部の冷媒用通路2もステーブ本体鋳造時に形成されものであるため、従来の圧延材または鍛造材を機械加工して得られる銅製ステーブのような複雑な機械加工を全く行う必要がなく、しかも鋳造体であるため機械加工により得られるステーブのように製造コスト上の問題を生じることなく、ステーブ本体1の形状、構造を任意に選択できる。また、冷媒用通路2のコーナー部23等の屈曲部にも任意の曲率Rを付けることができ、冷媒用通路2を流れる冷却水の圧力損失を適切に防止することができるとともに、通路内での冷却水の淀みの発生も防止できる。
【0053】
(4) 鋳造により冷媒用通路2がステーブ本体1の内部に直接形成されるため、冷却パイプを鋳包む従来の鋳銅製ステーブのような問題、すなわち、冷却パイプと鋳物部間の隙間に起因した鋳物部や冷却パイプの破損、冷却パイプを曲げ加工する際の加工精度の確保、鋳造時のパイプ曲げ部の伸びによる寸法精度の悪化、鋳造時の熱による冷却パイプの強度低下や溶損等の問題を全く生じる恐れがない。
【0054】
(5) 冷媒用通路2をステーブ本体1の鋳造により小断面積に構成するので、従来のジャケット式の鋳銅製ステーブに較べて冷媒用通路2内での冷却水流速を高めること(冷却水流速1m/s以上)ができ、炉内からの高熱負荷に耐えることができる高い冷却能が得られる。また、この高い冷却能によって、突発的な熱衝撃等によって冷却稼動面に付着していた凝固スラグ層が剥離した場合でも、凝固スラグ層を速かに再生成させることができ、炉内の高熱負荷によるステーブの破損を適切に防止できる。
【0055】
同じく冷媒用通路2をステーブ本体1の鋳造により小断面積に構成するので、独立した多系統の冷媒用通路を設けることができ、ステーブが部分的に溶損した場合でも冷媒用通路2の機能が全面的に失われてしまう危険が小さく、また、ステーブの部分的な溶損により冷媒用通路2からの漏水を生じたような場合でも、一部の冷媒用通路2での冷却水の供給を停止或いは減少させことにより、定常的な操業を継続しつつ容易に漏水等の点検・補修を行うことができる。
【0056】
(6) また、従来のジャケット式の鋳銅製ステーブのようなターン部の多い複雑な冷媒用通路ではなく、直線状の冷媒用通路2を形成することができ、且つ通路の途中に鉄皮取付用のボスの一部が張り出すようなこともないため、冷却水の圧力損失が少ない。
このように本発明の一実施形態である一体鋳造型の冶金炉用ステーブは優れた機能を有しているため、高炉において最も熱負荷の高い領域である溶融スラグ存在領域(通常、高炉の朝顔部、切立部、シャフト下部)に適用するステーブとして特に好適である。
【0057】
また、本発明の冶金炉用ステーブは、スクラップ溶解炉等の高炉以外のシャフト炉型冶金炉、さらには溶融還元炉、電気炉等の種々の冶金炉に適用することができる。
なお、本発明の冶金炉用ステーブは、先に説明したように既設の鋳鉄製ステーブとの交換用として特に好適なものであるが、その使用形態はこれに限定されるものではなく、新設の冶金炉に適用できることは言うまでもない。
【0058】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の冶金炉用ステーブは、破損し或いは損耗した既設の鋳鉄製ステーブと交換して設置される場合にも、裏風の発生によるステーブ背面側の耐火物の損耗を適切に防止できる。
また、本願の請求項3に係る発明では、高炉下部の高熱負荷領域に適用された場合でも溶損や割れ等を生じることなく長期間に亘って適正な機能を維持することができ、しかも炉内側耐火物が脱落した場合でも、その優れた冷却能により冷却稼働面に難剥離性で且つ低熱伝導度の凝固スラグ層が形成されるため、炉の高熱負荷に適切に耐えることができ、且つ炉内からの抜熱も適切に防止することできる。加えて、冷媒用通路を含めてステーブ本体が鋳造により一体的に製作されるものであるため、簡易且つ低コストに製造することができる利点がある。
【0059】
また、本願の請求項4、5に係る発明では、冷媒用通路の屈曲部に曲率が付されているため、通路内を流れる冷却水の圧力損失を最小限に抑えて冷却水の適正流速を確保することができ、しかも冷却水の淀みも生じないため、この淀みに起因した圧力損失や気泡発生による冷却作用の低下等を生じることがない。
【0060】
本願の請求項6に係る発明では、冷媒用通路が、主通路部と、この主通路部の各端部に曲率をもったコーナー部を介して連成され若しくは曲率をもって連成された入側通路部及び出側通路部とからなり、且つこれら入側通路部及び出側通路部の各端部が冷媒の入口と出口をそれぞれ構成しているため、冷却水によるステーブ内の冷却を効率的に行なうことができるとともに、冷媒用通路通路内を流れる冷却水の圧力損失を最小限に抑えて冷却水の適正流速を確保することができ、しかも冷却水の淀みも生じないため、この淀みに起因した圧力損失や気泡発生による冷却作用の低下等を生じることがない。
【0061】
本願の請求項7に係る発明では、ステーブ本体内部に鋳造時に形成された2系統以上の独立した冷媒用通路を有しているため、ステーブが部分的に溶損した場合でも冷媒用通路の機能が全面的に失われてしまう危険が小さく、また、部分的な溶損により冷媒用通路からの漏水を生じたような場合でも、一部の冷媒用通路の冷却水の供給を停止或いは減少させことにより、定常的な操業を継続しつつ容易に漏水等の点検・補修を行うことができる。
【0062】
本願の請求項8に係る発明では、冷媒用通路の断面積が2500mm2以下であため通路内を流れる冷却水の流速を高めることができ、これにより炉からの高熱負荷に耐えることができる高い冷却能が得られる。また、この高い冷却能によって、突発的な熱衝撃等によって冷却稼動面に付着していた凝固スラグ層が剥離した場合でも、凝固スラグ層を速かに再生成させることができ、炉内の高熱負荷によるステーブの破損を適切に防止できる。
本願の請求項9に係る発明では、ステーブ本体の断面における冷媒用通路の断面積の割合を所定の範囲にすることにより、ステーブ本体のより適正な冷却能を確保することができる。
【0063】
本願の請求項10に係る発明では、ステーブ本体の冷却稼働面に突起および/または溝が形成されているため、炉内側耐火物が脱落した場合でも冷却稼働面に凝固スラグ(冷却稼働面に接触して凝固したスラグ)を確実に付着、保持することができ、この低熱伝導度の凝固スラグ層によって高熱負荷に適切に耐えることができるとともに、炉内からの抜熱も適切に抑制することできる。
本願の請求項12に係る発明では、鉄皮内側にステーブを設置した後のキャスタブルの注入を省略し或いは注入する場合でも極く短時間で施工を完了することができるため、ステーブ背面側の耐火物層に空洞が生じることを適切に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の冶金炉用ステーブの一実施形態を示す背面図
【図2】図1に示す冶金炉用ステーブの側面図
【図3】図1中のIII−III線に沿う断面図
【図4】本発明の冶金炉用ステーブを炉の鉄皮の内側に取付けた状態で示す側面図
【図5】ステーブ本体の冷却稼働面に生成した凝固スラグ層が剥離を生じた場合において、剥離前後におけるステーブ本体内部の温度の推移と、凝固スラグ層が剥離後、再生成(再付着)するまでの再生成時間tを示すグラフ
【図6】冷媒用通路内を流れる冷却水流速と剥離を生じた後の凝固スラグ層の再生成時間tとの関係を示すグラフ
【図7】ステーブ本体の略中心またはその近傍を通る断面であって、冷媒用通路の複数の主通路部の軸方向と直交する方向でのステーブ本体の断面A−Aを示す説明図
【符号の説明】
1…ステーブ本体、2,2a〜2d…冷媒用通路、3…炉内側耐火物、4…入口、5…出口、6…溝、7…耐火物、8…取付孔、9…耐火物、10…リブ、11…固定金具、20…主通路部、21…入側通路部、22…出側通路部、23…コーナー部、A…ステーブ、B…鉄皮、a…冷却稼動面
Claims (11)
- 銅または銅合金製のステーブ本体の内部に冷媒用通路を有する冶金炉用ステーブにおいて、ステーブ本体の鉄皮側となる面に、ステーブ本体幅方向に沿ったリブを、ステーブ本体の上端及び下端位置と、その間の1箇所以上の位置に設けたことを特徴とする冶金炉用ステーブ。
- ステーブ本体が一体的に鋳造された銅または銅合金製の鋳造体で構成され、該ステーブ本体内部に鋳造時に形成された冷媒用通路を有することを特徴とする請求項1に記載の冶金炉用ステーブ。
- 冷媒用通路の屈曲部に曲率が付されていることを特徴とする請求項2に記載の冶金炉用ステーブ。
- 屈曲部の曲率が冷媒用通路の代表内径の3倍以上であることを特徴とする請求項3に記載の冶金炉用ステーブ。
- 冷媒用通路が、主通路部と、この主通路部の各端部に曲率をもったコーナー部を介して連成され若しくは曲率をもって連成された入側通路部及び出側通路部とからなり、これら入側通路部及び出側通路部の各端部が冷媒の入口と出口をそれぞれ構成していることを特徴とする請求項3または4に記載の冶金炉用ステーブ。
- ステーブ本体内部に、鋳造時に形成された2系統以上の独立した冷媒用通路を有することを特徴とする請求項2、3、4または5に記載の冶金炉用ステーブ。
- 冷媒用通路の断面積が2500mm2以下であることを特徴とする請求項2、3、4、5または6に記載の冶金炉用ステーブ。
- ステーブ本体の略中心またはその近傍を通る断面であって、冷媒用通路の複数の主通路部の軸方向と直交する方向でのステーブ本体の断面において、冷媒用通路の合計断面積sとステーブ本体(但し、リブを除いたステーブ本体部分であって、且つステーブ本体の冷却稼働面および/または鉄皮側となる面に突起および/または溝が形成されている場合には、当該突起および/または溝が形成された部分の厚みを除いたステーブ本体部分)の断面積Sとの比s/Sが、0.05〜0.15であることを特徴とする請求項2、3、4、5、6または7に記載の冶金炉用ステーブ。
- ステーブ本体の冷却稼働面の略全面に突起および/または溝が形成されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8に記載の冶金炉用ステーブ。
- ステーブ本体の冷却稼働面に炉内側耐火物が固定されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9に記載の冶金炉用ステーブ。
- リブが設けられたステーブ本体の鉄皮側となる面に、キャスタブルを施工することで耐火物層を設けたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10に記載の冶金炉用ステーブ。
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