JP4153229B2 - 蓄積性蛍光体シートおよび蓄積性蛍光体シートに記録された生化学解析用データの読み取り方法 - Google Patents
蓄積性蛍光体シートおよび蓄積性蛍光体シートに記録された生化学解析用データの読み取り方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蓄積性蛍光体シートおよび蓄積性蛍光体シートに記録された生化学解析用のデータの読み取り方法に関するものであり、さらに詳細には、生体由来の物質と特異的に結合可能で、かつ、塩基配列や塩基の長さ、組成などが既知の特異的結合物質を含む複数のスポット状領域を、担体表面に、高密度に形成し、複数のスポット状領域に含まれた特異的結合物質に、放射性標識物質によって標識された生体由来の物質を特異的に結合させて、複数のスポット状領域を選択的に標識した場合においても、高い分解能で、定量性に優れた生化学解析用のデータを生成することのできる蓄積性蛍光体シートおよび蓄積性蛍光体シートに記録された生化学解析用のデータの読み取り方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
放射線が照射されると、放射線のエネルギーを吸収して、蓄積、記録し、その後に、特定の波長域の電磁波を用いて励起すると、照射された放射線のエネルギーの量に応じた光量の輝尽光を発する特性を有する輝尽性蛍光体を、放射線の検出材料として用い、放射性標識を付与した物質を、生物体に投与した後、その生物体あるいはその生物体の組織の一部を試料とし、この試料を、輝尽性蛍光体層が設けられた蓄積性蛍光体シートと一定時間重ね合わせることにより、放射線エネルギーを輝尽性蛍光体に、蓄積、記録し、しかる後に、電磁波によって、輝尽性蛍光体層を走査して、輝尽性蛍光体を励起し、輝尽性蛍光体から放出された輝尽光を光電的に検出して、ディジタル画像信号を生成し、画像処理を施して、CRTなどの表示手段上あるいは写真フイルムなどの記録材料上に、画像を再生するように構成されたオートラジオグラフィ解析システムが知られている(たとえば、特公平1−70884号公報、特公平1−70882号公報、特公平4−3962号公報など)。
【0003】
蓄積性蛍光体シートを放射線の検出材料として使用するオートラジオグラフィ解析システムは、写真フイルムを用いる場合とは異なり、現像処理という化学的処理が不必要であるだけでなく、得られたディジタルデータにデータ処理を施すことにより、所望のように、解析用データを再生し、あるいは、コンピュータによる定量解析が可能になるという利点を有している。
【0004】
他方、オートラジオグラフィ解析システムにおける放射性標識物質に代えて、蛍光色素などの蛍光物質を標識物質として使用した蛍光(fluorescence)解析システムが知られている。この蛍光解析システムによれば、蛍光物質から放出された蛍光を検出することによって、遺伝子配列、遺伝子の発現レベル、実験用マウスにおける投与物質の代謝、吸収、排泄の経路、状態、蛋白質の分離、同定、あるいは、分子量、特性の評価などをおこなうことができ、たとえば、電気泳動されるべき複数種の蛋白質分子を含む溶液を、ゲル支持体上で、電気泳動させた後に、ゲル支持体を蛍光色素を含んだ溶液に浸すなどして、電気泳動された蛋白質を染色し、励起光によって、蛍光色素を励起して、生じた蛍光を検出することによって、画像を生成し、ゲル支持体上の蛋白質分子の位置および量的分布を検出したりすることができる。あるいは、ウェスタン・ブロッティング法により、ニトロセルロースなどの転写支持体上に、電気泳動された蛋白質分子の少なくとも一部を転写し、目的とする蛋白質に特異的に反応する抗体を蛍光色素で標識して調製したプローブと蛋白質分子とを会合させ、特異的に反応する抗体にのみ結合する蛋白質分子を選択的に標識し、励起光によって、蛍光色素を励起して、生じた蛍光を検出することにより、画像を生成し、転写支持体上の蛋白質分子の位置および量的分布を検出したりすることができる。また、電気泳動させるべき複数のDNA断片を含む溶液中に、蛍光色素を加えた後に、複数のDNA断片をゲル支持体上で電気泳動させ、あるいは、蛍光色素を含有させたゲル支持体上で、複数のDNA断片を電気泳動させ、あるいは、複数のDNA断片を、ゲル支持体上で、電気泳動させた後に、ゲル支持体を、蛍光色素を含んだ溶液に浸すなどして、電気泳動されたDNA断片を標識し、励起光により、蛍光色素を励起して、生じた蛍光を検出することにより、画像を生成し、ゲル支持体上のDNAを分布を検出したり、あるいは、複数のDNA断片を、ゲル支持体上で、電気泳動させた後に、DNAを変性(denaturation)し、次いで、サザン・ブロッティング法により、ニトロセルロースなどの転写支持体上に、変性DNA断片の少なくとも一部を転写し、目的とするDNAと相補的なDNAもしくはRNAを蛍光色素で標識して調製したプローブと変性DNA断片とをハイブリダイズさせ、プローブDNAもしくはプローブRNAと相補的なDNA断片のみを選択的に標識し、励起光によって、蛍光色素を励起して、生じた蛍光を検出することにより、画像を生成し、転写支持体上の目的とするDNAの分布を検出したりすることができる。さらに、標識物質によって標識した目的とする遺伝子を含むDNAと相補的なDNAプローブを調製して、転写支持体上のDNAとハイブリダイズさせ、酵素を、標識物質により標識された相補的なDNAと結合させた後、蛍光基質と接触させて、蛍光基質を蛍光を発する蛍光物質に変化させ、励起光によって、生成された蛍光物質を励起して、生じた蛍光を検出することにより、画像を生成し、転写支持体上の目的とするDNAの分布を検出したりすることもできる。この蛍光解析システムは、放射性物質を使用することなく、簡易に、遺伝子配列などを検出することができるという利点がある。
【0005】
また、同様に、蛋白質や核酸などの生体由来の物質を支持体に固定し、化学発光基質と接触させることによって化学発光を生じさせる標識物質により、選択的に標識し、標識物質によって選択的に標識された生体由来の物質と化学発光基質とを接触させて、化学発光基質と標識物質との接触によって生ずる可視光波長域の化学発光を、光電的に検出して、ディジタル画像信号を生成し、画像処理を施して、CRTなどの表示手段あるいは写真フィルムなどの記録材料上に、化学発光画像を再生して、遺伝子情報などの生体由来の物質に関する情報を得るようにした化学発光解析システムも知られている。
【0006】
さらに、近年、スライドガラス板やメンブレンフィルタなどの担体表面上の異なる位置に、細胞、ウィルス、ホルモン類、腫瘍マーカー、酵素、抗体、抗原、アブザイム、その他のタンパク質、核酸、cDNA、DNA、RNAなど、生体由来の物質と特異的に結合可能で、かつ、塩基配列や塩基の長さ、組成などが既知の特異的結合物質を、スポッター装置を用いて、滴下して、多数の独立したスポットを形成し、次いで、細胞、ウィルス、ホルモン類、腫瘍マーカー、酵素、抗体、抗原、アブザイム、その他のタンパク質、核酸、cDNA、DNA、mRNAなど、抽出、単離などによって、生体から採取され、あるいは、さらに、化学的処理、化学修飾などの処理が施された生体由来の物質であって、蛍光物質、色素などの標識物質によって標識された物質を、ハイブリダイゼーションなどによって、特異的結合物質に、特異的に結合させたマイクロアレイに、励起光を照射して、蛍光物質、色素などの標識物質から発せられた蛍光などの光を光電的に検出して、生体由来の物質を解析するマイクロアレイ解析システムが開発されている。このマイクロアレイ解析システムによれば、スライドガラス板やメンブレンフィルタなどの担体表面上の異なる位置に、数多くの特異的結合物質のスポットを高密度に形成して、標識物質によって標識された生体由来の物質をハイブリダイズさせることによって、短時間に、生体由来の物質を解析することが可能になるという利点がある。
【0007】
また、メンブレンフィルタなどの担体表面上の異なる位置に、細胞、ウィルス、ホルモン類、腫瘍マーカー、酵素、抗体、抗原、アブザイム、その他のタンパク質、核酸、cDNA、DNA、RNAなど、生体由来の物質と特異的に結合可能で、かつ、塩基配列や塩基の長さ、組成などが既知の特異的結合物質を、スポッター装置を用いて、滴下して、多数の独立したスポットを形成し、次いで、細胞、ウィルス、ホルモン類、腫瘍マーカー、酵素、抗体、抗原、アブザイム、その他のタンパク質、核酸、cDNA、DNA、mRNAなど、抽出、単離などによって、生体から採取され、あるいは、さらに、化学的処理、化学修飾などの処理が施された生体由来の物質であって、放射性標識物質によって標識された物質を、ハイブリダイゼーションなどによって、特異的結合物質に、特異的に結合させたマクロアレイを、輝尽性蛍光体を含む輝尽性蛍光体層が形成された蓄積性蛍光体シートと密着させて、輝尽性蛍光体層を露光し、しかる後に、輝尽性蛍光体層に励起光を照射し、輝尽性蛍光体層から発せられた輝尽光を光電的に検出して、生化学解析用データを生成し、生体由来の物質を解析する放射性標識物質を用いたマクロアレイ解析システムも開発されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、放射性標識物質を標識物質として用いたマクロアレイ解析システムにあっては、輝尽性蛍光体層を露光する際、メンブレンフィルタなどの担体表面上に形成されたスポット状領域に含まれた放射性標識物質の放射線エネルギーが非常に大きいため、放射性標識物質から発せられる電子線(β線)が散乱して、隣り合うスポット状領域に含まれた放射性標識物質によって露光されるべき輝尽性蛍光体層の領域に入射し、あるいは、隣り合うスポット状領域の間のメンブレンフィルタなどの担体表面上に付着した放射性標識物質から放出された電子線(β線)が、輝尽性蛍光体層に入射し、その結果、輝尽光を光電的に検出して生成された生化学解析用データ中にノイズが生成され、隣り合うスポット状領域間でのデータの分離が困難になって、分解能が低下するとともに、各スポット状領域の放射線量を定量して、生体由来の物質を解析する際、定量性が悪化するという問題があり、スポット状領域を近接して形成して、高密度化しようとする場合には、とくに、分解能が低下する著しく低下するとともに、定量性の著しい悪化が認められている。
【0009】
したがって、本発明は、生体由来の物質と特異的に結合可能で、かつ、塩基配列や塩基の長さ、組成などが既知の特異的結合物質を含む複数のスポット状領域を、担体表面に、高密度に形成し、複数のスポット状領域に含まれた特異的結合物質に、放射性標識物質によって標識された生体由来の物質を特異的に結合させて、複数のスポット状領域を選択的に標識した場合においても、高い分解能で、定量性に優れた生化学解析用のデータを生成することのできる蓄積性蛍光体シートおよび蓄積性蛍光体シートに記録された生化学解析用のデータの読み取り方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のかかる目的は、支持体を備え、前記支持体に、複数の輝尽性蛍光体層領域が互いに離間して、形成され、さらに、前記複数の輝尽性蛍光体層領域から離間して、少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域が形成されたことを特徴とする蓄積性蛍光体シートによって達成される。
【0011】
本発明によれば、生体由来の物質と特異的に結合可能で、かつ、塩基配列や塩基の長さ、組成などが既知の特異的結合物質を含む複数のスポット状領域を、メンブレンフィルタなどの担体表面に、高密度に形成し、複数のスポット状領域に含まれた特異的結合物質に、放射性標識物質によって標識された生体由来の物質を特異的に結合させて、複数のスポット状領域を選択的に標識した場合においても、担体に形成された複数のスポット状領域と同じパターンによって、複数の輝尽性蛍光体層領域を、支持体に形成することにより、担体と蓄積性蛍光体シートを重ね合わせて、複数のスポット状領域に選択的に含まれた放射性標識物質によって、複数の輝尽性蛍光体層領域を露光する際に、各スポット状領域に含まれている放射性標識物質から放出された電子線(β線)が、そのスポット状領域に含まれた放射性標識物質から放出された電子線(β線)によって露光されるべき輝尽性蛍光体層領域以外の輝尽性蛍光体層領域に入射することを効果的に防止することができ、したがって、露光された複数の輝尽性蛍光体層領域を励起光によって走査し、複数の輝尽性蛍光体層領域から放出された輝尽光を光電的に検出することによって、高い分解能で、定量性に優れた生化学解析用のデータを生成することが可能になる。
【0012】
さらに、放射性標識物質を選択的に含む複数のスポット状領域が形成されたメンブレンフィルタなどの担体と、複数の輝尽性蛍光体層領域が形成された蓄積性蛍光体シートとを重ね合わせて、複数のスポット状領域に選択的に含まれた放射性標識物質によって、複数の輝尽性蛍光体層領域を露光する際、蓄積性蛍光体シートの支持体に形成された複数の輝尽性蛍光体層領域には、担体に形成されたスポット状領域に選択的に含まれている放射性標識物質から放出された電子線(β線)のみならず、ハイブリダイゼーションなどによって、担体表面に付着し、洗浄後も残存している放射性標識物質から放出される電子線(β線)や、環境放射線なども入射するため、露光された蓄積性蛍光体シートの複数の輝尽性蛍光体層領域を励起光によって走査し、複数の輝尽性蛍光体層から放出された輝尽光を光電的に検出することにより生成した生化学解析用のデータには、ハイブリダイゼーションなどによって、担体表面に付着し、洗浄後も残存している放射性標識物質から放出される電子線(β線)や、環境放射線などが、蓄積性蛍光体シートの支持体に形成された複数の輝尽性蛍光体層領域に入射することに起因するバックグラウンドノイズが不可避的に含まれることになるが、本発明によれば、さらに、蓄積性蛍光体シートの支持体には、複数の輝尽性蛍光体層領域から離間して、少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域が形成されており、少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域には、担体に形成されたスポット状領域に選択的に含まれている放射性標識物質から放出された電子線(β線)は入射せず、もっぱら、ハイブリダイゼーションなどによって、担体表面に付着し、洗浄後も残存している放射性標識物質から放出される電子線(β線)や、環境放射線などが入射して、露光されるから、少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域を励起光によって走査し、少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域から放出された輝尽光を光電的に検出することにより生成した生化学解析用データは、バックグラウンドノイズに対応し、したがって、露光された蓄積性蛍光体シートの複数の輝尽性蛍光体層領域を励起光によって走査し、複数の輝尽性蛍光体層領域から放出された輝尽光を光電的に検出することにより生成した生化学解析用データから、少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域を励起光によって走査し、少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域から放出された輝尽光を光電的に検出することにより生成したデータを減算することによって、バックグラウンドノイズのない生化学解析用データを生成することが可能になる。
【0013】
本発明の前記目的はまた、支持体を備え、前記支持体に、複数の輝尽性蛍光体層領域が互いに離間して、形成され、さらに、前記複数の輝尽性蛍光体層領域から離間して、少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域が形成された蓄積性蛍光体シートと、構造または特性が既知の特異的結合物質が滴下され、前記特異的結合物質に、放射性標識物質によって標識された生体由来の物質が選択的に特異的に結合され、選択的に標識されて形成された複数のスポット状領域を有する生化学解析用ユニットとを重ね合わせて、前記複数のスポット状領域に選択的に含まれている前記放射性標識物質によって、前記蓄積性蛍光体シートの前記複数の輝尽性蛍光体層領域を露光した後、前記蓄積性蛍光体シートの前記複数の輝尽性蛍光体層領域および前記少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域に励起光を照射して、前記複数の輝尽性蛍光体層領域および前記少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域に含まれている輝尽性蛍光体を励起し、前記輝尽性蛍光体から放出された輝尽光を光電的に検出し、得られたアナログデータをディジタル化して、ディジタルデータを生成し、前記複数の輝尽性蛍光体層領域に励起光を照射して、輝尽性蛍光体から放出された輝尽光を光電的に検出して、得られたディジタルデータから、前記少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域に励起光を照射して、輝尽性蛍光体から放出された輝尽光を光電的に検出して、得られたディジタルデータを減算して、生化学解析用データを生成することを特徴とする蓄積性蛍光体シートに記録された生化学解析用のデータの読み取り方法によって達成される。
【0014】
構造または特性が既知の特異的結合物質を滴下し、特異的結合物質に、放射性標識物質によって標識された生体由来の物質を、ハイブリダイゼーションなどによって、選択的に特異的に結合させて、選択的に標識することによって、形成された複数のスポット状領域を有する生化学解析用ユニットと、支持体を備え、支持体に、複数の輝尽性蛍光体層領域が形成された蓄積性蛍光体シートとを重ね合わせて、生化学解析用ユニットに形成された複数のスポット状領域に選択的に含まれている放射性標識物質によって、蓄積性蛍光体シートに形成された副輝尽性蛍光体層領域を露光する際、蓄積性蛍光体シートの支持体に形成された複数の輝尽性蛍光体層領域には、生化学解析用ユニットに形成された複数のスポットに含まれている放射性標識物質から放出された電子線のみならず、ハイブリダイゼーションなどによって、生化学解析用ユニットの表面の複数のスポット状領域以外の領域に付着し、洗浄後も残存している放射性標識物質から放出される電子線や、環境放射線なども入射するため、蓄積性蛍光体シートの支持体に形成され、露光された複数の輝尽性蛍光体層領域を励起光によって走査し、複数の輝尽性蛍光体層領域から放出された輝尽光を光電的に検出することにより生成した生化学解析用のデータには、ハイブリダイゼーションなどによって、生化学解析用ユニットの表面の複数のスポット状領域以外の領域に付着し、洗浄後も残存している放射性標識物質から放出される電子線や、環境放射線などが、蓄積性蛍光体シートの支持体に形成された複数の輝尽性蛍光体層領域に入射することに起因するバックグラウンドノイズが不可避的に含まれることになるが、本発明によれば、蓄積性蛍光体シートの支持体には、さらに、複数の輝尽性蛍光体層領域から離間して、少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域が形成されており、少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域には、生化学解析用ユニットに形成された複数のスポットに含まれている放射性標識物質から放出された電子線は入射せず、もっぱら、生化学解析用ユニットの表面の複数のスポット以外の領域に付着し、洗浄後も残存している放射性標識物質から放出される電子線や、環境放射線などが入射して、露光されるから、少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域を励起光によって走査し、少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層から放出された輝尽光を光電的に検出することにより生成した生化学解析用のデータは、バックグラウンドノイズに対応し、したがって、支持体を備え、支持体に、複数の輝尽性蛍光体層領域が互いに離間して、形成され、さらに、複数の輝尽性蛍光体層領域から離間して、少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域が形成された蓄積性蛍光体シートと、構造または特性が既知の特異的結合物質を滴下し、特異的結合物質に、放射性標識物質によって標識された生体由来の物質を、ハイブリダイゼーションなどによって、選択的に特異的に結合させて、選択的に標識することによって、形成された複数のスポット状領域を有する生化学解析用ユニットとを重ね合わせて、生化学解析用ユニットに形成された複数のスポット状領域に選択的に含まれている放射性標識物質によって、蓄積性蛍光体シートに形成された複数の輝尽性蛍光体層領域を露光した後、複数の輝尽性蛍光体層領域および少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域に励起光を照射して、複数の輝尽性蛍光体層領域および少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域に含まれている輝尽性蛍光体を励起し、輝尽性蛍光体から放出された輝尽光を光電的に検出し、得られたアナログデータをディジタル化して、ディジタルデータを生成し、複数の輝尽性蛍光体層領域に励起光を照射して、輝尽性蛍光体から放出された輝尽光を光電的に検出して、得られたディジタルデータから、少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域に励起光を照射して、輝尽性蛍光体から放出された輝尽光を光電的に検出して、得られたディジタルデータを減算することによって、バックグラウンドノイズのない生化学解析用データを生成することが可能になる。
【0015】
本発明の好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体に、複数の孔が、互いに離間して、形成され、前記輝尽性蛍光体層領域が、前記複数の孔内に、輝尽性蛍光体を充填することによって、形成されている。
【0016】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体に、複数の貫通孔が、互いに離間して、形成され、前記輝尽性蛍光体層領域が、前記複数の貫通孔内に、輝尽性蛍光体を埋め込むことによって、形成されている。
【0017】
本発明の別の好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体に、複数の貫通孔が、互いに離間して、形成され、前記蓄積性蛍光体シートの前記複数の輝尽性蛍光体層領域が、前記複数の貫通孔内に、輝尽性蛍光体を含む輝尽性蛍光体膜が圧入されて、形成されている。
【0018】
本発明の別の好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体に、複数の凹部が、互いに離間して、形成され、前記輝尽性蛍光体層領域が、前記複数の凹部内に、輝尽性蛍光体を埋め込むことによって、形成されている。
【0019】
本発明の他の好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体の表面上に、前記複数の輝尽性蛍光体層領域が形成されている。
【0020】
本発明の好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記複数の輝尽性蛍光体層領域が、前記支持体に、ドット状に形成されている。
【0021】
本発明の好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記複数の輝尽性蛍光体層領域のそれぞれが、略円形に形成されている。
【0022】
本発明の好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体に、複数の付加的輝尽性蛍光体層領域が、ドット状に形成されている。
【0023】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記複数の輝尽性蛍光体領域の少なくとも一部の間の前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体に、複数の付加的輝尽性蛍光体層領域が、ドット状に形成されている。
【0024】
バックグラウンドノイズは、蓄積性蛍光体シートの表面上の位置、すなわち、複数の輝尽性蛍光体領域のそれぞれによって異なるが、本発明の好ましい実施態様によれば、複数の輝尽性蛍光体領域の少なくとも一部の間の支持体に、複数の付加的輝尽性蛍光体層領域が、ドット状に形成されているから、蓄積性蛍光体シートの表面上の位置によって、バックグラウンドノイズが変動しても、精度よく、バックグラウンドノイズを除去した生化学解析用データを生成することが可能になる。
【0025】
本発明の別の好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域が、前記支持体に、ストライプ状に形成されている。
【0026】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記複数の輝尽性蛍光体領域の少なくとも一部の間の前記支持体に、複数の付加的輝尽性蛍光体層領域が、ストライプ状に形成されている。
【0027】
バックグラウンドノイズは、蓄積性蛍光体シートの表面上の位置、すなわち、複数の輝尽性蛍光体領域のそれぞれによって異なるが、本発明のさらに好ましい実施態様によれば、複数の輝尽性蛍光体領域の少なくとも一部の間の支持体に、複数の付加的輝尽性蛍光体層領域が、ストライプ状に形成されているから、蓄積性蛍光体シートの表面上の位置によって、バックグラウンドノイズが変動しても、精度よく、バックグラウンドノイズを除去した生化学解析用のディジタルデータを生成することが可能になる。
【0028】
本発明の好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記付加的輝尽性蛍光体層領域が、前記支持体に、略円形に形成されている。
【0029】
本発明の好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記付加的輝尽性蛍光体層領域が、その面積が前記複数の輝尽性蛍光体層領域のそれぞれの面積よりも小さくなるように、前記支持体に形成されている。
【0030】
本発明の好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体が、放射線を減衰させる材料によって形成されている。
【0031】
本発明の好ましい実施態様によれば、生体由来の物質と特異的に結合可能で、かつ、塩基配列や塩基の長さ、組成などが既知の特異的結合物質を含む複数のスポット状領域を、メンブレンフィルタなどの担体表面に、高密度に形成し、複数のスポット状領域に含まれた特異的結合物質に、放射性標識物質によって標識された生体由来の物質を特異的に結合させて、複数のスポット状領域を選択的に標識した場合においても、担体に形成された複数のスポット状領域と同じパターンによって、複数の輝尽性蛍光体層領域を、支持体に形成することにより、担体と蓄積性蛍光体シートを重ね合わせて、複数のスポット状領域に選択的に含まれた放射性標識物質によって、複数の輝尽性蛍光体層領域を露光する際に、各スポット状領域に含まれている放射性標識物質から放出された電子線(β線)が、そのスポット状領域に含まれた放射性標識物質から放出された電子線(β線)によって露光されるべき輝尽性蛍光体層領域以外の輝尽性蛍光体層領域に入射することを効果的に防止することができ、したがって、露光された複数の輝尽性蛍光体層領域を励起光によって走査し、複数の輝尽性蛍光体層領域から放出された輝尽光を光電的に検出することによって、高い分解能で、定量性に優れた生化学解析用のデータを生成することが可能になる。
【0032】
本発明の好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体が、隣り合う輝尽性蛍光体層領域の間の距離に等しい距離だけ、放射線が前記支持体中を透過したときに、放射線のエネルギーを、1/5以下に減衰させる性質を有する材料によって形成されている。
【0033】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体が、隣り合う輝尽性蛍光体層領域の間の距離に等しい距離だけ、放射線が前記支持体中を透過したときに、放射線のエネルギーを、1/10以下に減衰させる性質を有する材料によって形成されている。
【0034】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体が、隣り合う輝尽性蛍光体層領域の間の距離に等しい距離だけ、放射線が前記支持体中を透過したときに、放射線のエネルギーを、1/50以下に減衰させる性質を有する材料によって形成されている。
【0035】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体が、隣り合う輝尽性蛍光体層領域の間の距離に等しい距離だけ、放射線が前記支持体中を透過したときに、放射線のエネルギーを、1/100以下に減衰させる性質を有する材料によって形成されている。
【0036】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体が、隣り合う輝尽性蛍光体層領域の間の距離に等しい距離だけ、放射線が前記支持体中を透過したときに、放射線のエネルギーを、1/500以下に減衰させる性質を有する材料によって形成されている。
【0037】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体が、隣り合う輝尽性蛍光体層領域の間の距離に等しい距離だけ、放射線が前記支持体中を透過したときに、放射線のエネルギーを、1/1000以下に減衰させる性質を有する材料によって形成されている。
【0038】
本発明において、蓄積性蛍光体シートの支持体を形成するための材料としては、放射線エネルギーを減衰させる性質を有するものが好ましいが、とくに限定されるものではなく、無機化合物材料、有機化合物材料のいずれをも使用することができ、金属材料、セラミック材料またはプラスチック材料が、とくに、好ましく使用される。
【0039】
本発明において、蓄積性蛍光体シートの支持体を形成するために好ましく使用可能で、放射線エネルギーを減衰させることのできる無機化合物材料としては、たとえば、金、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、チタン、タンタル、クロム、鉄、ニッケル、コバルト、鉛、錫、セレンなどの金属;真鍮、ステンレス、青銅などの合金;シリコン、アモルファスシリコン、ガラス、石英、炭化ケイ素、窒化ケイ素などの珪素材料;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物;タングステンカーバイト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、砒化ガリウムなどの無機塩を挙げることができる。これらは、単結晶、アモルファス、セラミックのような多結晶焼結体にいずれの構造を有していてもよい。
【0040】
本発明において、蓄積性蛍光体シートの支持体を形成するために使用可能で、放射線エネルギーを減衰させることのできる有機化合物材料としては、高分子化合物が好ましく用いられ、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート、ブチルアクリレート/メチルメタクリレート共重合体などのアクリル樹脂;ポリアクリロニトリル;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリフッ化ビニリデン;ポリテトラフルオロエチレン;ポリクロロトリフルオロエチレン;ポリカーボネート;ポリエチレンナフタレートやポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,10などのナイロン;ポリイミド;ポリスルホン;ポリフェニレンサルファイド;ポリジフェニルシロキサンなどのケイ素樹脂;ノボラックなどのフェノール樹脂;エポキシ樹脂;ポリウレタン;ポリスチレン;ブタジエン−スチレン共重合体;セルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、でん粉、アルギン酸カルシウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの多糖類;キチン;キトサン;ウルシ;ゼラチン、コラーゲン、ケラチンなどのポリアミドおよびこれら高分子化合物の共重合体などを挙げることができる。これらは、複合材料でもよく、必要に応じて、金属酸化物粒子やガラス繊維などを充填することもでき、また、有機化合物材料をブレンドして、使用することもできる。
【0041】
一般に、比重が大きいほど、放射線の減衰能が高くなるので、蓄積性蛍光体シートの支持体は、比重1.0g/cm3以上の化合物材料または複合材料によって形成されることが好ましく、比重が1.5g/cm3以上、23g/cm3以下の化合物材料または複合材料によって形成されることが、とくに好ましい。
【0042】
本発明の好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体に、10以上の前記輝尽性蛍光体層領域が形成されている。
【0043】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体に、50以上の前記輝尽性蛍光体層領域が形成されている。
【0044】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体に、100以上の前記輝尽性蛍光体層領域が形成されている。
【0045】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体に、500以上の前記輝尽性蛍光体層領域が形成されている。
【0046】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体に、1000以上の前記輝尽性蛍光体層領域が形成されている。
【0047】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体に、5000以上の前記輝尽性蛍光体層領域が形成されている。
【0048】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体に、10000以上の前記輝尽性蛍光体層領域が形成されている。
【0049】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体に、50000以上の前記輝尽性蛍光体層領域が形成されている。
【0050】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体に、100000以上の前記輝尽性蛍光体層領域が形成されている。
【0051】
本発明の好ましい実施態様においては、前記複数の輝尽性蛍光体層領域が、それぞれ、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体に、5平方ミリメートル未満のサイズに形成されている。
【0052】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記複数の輝尽性蛍光体層領域が、それぞれ、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体に、1平方ミリメートル未満のサイズに形成されている。
【0053】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記複数の輝尽性蛍光体層領域が、それぞれ、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体に、0.5平方ミリメートル未満のサイズに形成されている。
【0054】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記複数の輝尽性蛍光体層領域が、それぞれ、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体に、0.1平方ミリメートル未満のサイズに形成されている。
【0055】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記複数の輝尽性蛍光体層領域が、それぞれ、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体に、0.05平方ミリメートル未満のサイズに形成されている。
【0056】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記複数の輝尽性蛍光体層領域が、それぞれ、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体に、0.01平方ミリメートル未満のサイズに形成されている。
【0057】
本発明において、蓄積性蛍光体シートに形成される輝尽性蛍光体層領域の密度は、支持体の材料の種類、放射性標識物質から放出される電子線の種類などによって決定される。
【0058】
本発明の好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートに、前記複数の輝尽性蛍光体層領域が、10個/平方センチメートル以上の密度で、形成されている。
【0059】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートに、前記複数の輝尽性蛍光体層領域が、50個/平方センチメートル以上の密度で、形成されている。
【0060】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートに、前記複数の輝尽性蛍光体層領域が、100個/平方センチメートル以上の密度で、形成されている。
【0061】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートに、前記複数の輝尽性蛍光体層領域が、500個/平方センチメートル以上の密度で、形成されている。
【0062】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートに、前記複数の輝尽性蛍光体層領域が、1000個/平方センチメートル以上の密度で、形成されている。
【0063】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートに、前記複数の輝尽性蛍光体層領域が、5000個/平方センチメートル以上の密度で、形成されている。
【0064】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートに、前記複数の輝尽性蛍光体層領域が、10000個/平方センチメートル以上の密度で、形成されている。
【0065】
本発明の好ましい実施態様においては、前記蓄積性蛍光体シートの前記支持体に、前記複数の輝尽性蛍光体層領域が、規則的なパターンで形成されている。
【0066】
本発明の好ましい実施態様によれば、蓄積性蛍光体シートの支持体に、複数の輝尽性蛍光体層領域が、規則的なパターンで、形成されているから、メンブレンフィルタなどの担体表面に、同じ規則的なパターンで、特異的結合物質を含むスポット状領域を形成することによって、各スポット状領域に含まれている放射性標識物質によって、対応する輝尽性蛍光体層領域のみを露光することが可能になり、高い分解能で、定量性に優れた生化学解析用のデータを生成することが可能になる。
【0067】
本発明において、輝尽性蛍光体層に含まれる輝尽性蛍光体としては、放射線のエネルギーを蓄積可能で、電磁波によって励起され、蓄積している放射線のエネルギーを光の形で放出可能なものであればよく、とくに限定されるものではないが、可視光波長域の光により励起可能であるものが好ましい。具体的には、たとえば、米国特許第4,239,968号に開示されたアルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体(Ba1−xM2+x)FX:yA(ここに、M2+はMg、Ca、Sr、ZnおよびCdからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属元素、XはCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲン、AはEu、Tb、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、YbおよびErからなる群より選ばれる少なくとも一種の3価金属元素、xは0≦x≦0.6、yは0≦y≦0.2である。)、特開平2−276997号公報に開示されたアルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体SrFX:Z(ここに、XはCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲン、ZはEuまたはCeである。)、特開昭59−56479号公報に開示されたユーロピウム付活複合ハロゲン物系蛍光体BaFX・xNaX’:aEu2+(ここに、XおよびX’はいずれも、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり、xは0<x≦2、aは0<a≦0.2である。)、特開昭58−69281号公報に開示されたセリウム付活三価金属オキシハロゲン物系蛍光体であるMOX:xCe(ここに、MはPr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属元素、XはBrおよびIのうちの一方あるいは双方、xは、0<x<0.1である。)、米国特許第4,539,137号に開示されたセリウム付活希土類オキシハロゲン物系蛍光体であるLnOX:xCe(ここに、LnはY、La、GdおよびLuからなる群より選ばれる少なくとも一種の希土類元素、XはCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲン、xは、0<x≦0.1である。)および米国特許第4,962,047号に開示されたユーロピウム付活複合ハロゲン物系蛍光体MIIFX・aMIX’・bM’IIX''2・cMIII X'''3 ・xA:yEu2+(ここに、MIIはBa、SrおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属元素、MI はLi、Na、K、RbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属元素、M' IIはBeおよびMgからなる群より選ばれる少なくとも一種の二価金属元素、MIIIはAl、Ga、InおよびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属元素、Aは少なくとも一種の金属酸化物、XはCl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲン、X’、X''およびX''' はF、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり、aは、0≦a≦2、bは、0≦b≦10−2、cは、0≦c≦10−2で、かつ、a+b+c≧10−2であり、xは、0<x≦0.5で、yは、0<y≦0.2である。)が、好ましく使用し得る。
【0068】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
【0069】
図1は、生化学解析用ユニットの略斜視図である。
【0070】
図1に示されるように、生化学解析用ユニット1は、ナイロン6によって形成された吸着性基板2を備え、吸着性基板2の表面には、特異的結合物質、たとえば、cDNAを含む溶液が、一定間隔で、規則的に滴下され、特異的結合物質を含む多数の略円形のスポット状領域3が、吸着性基板2に形成されている。
【0071】
図1には正確に示されていないが、本実施態様においては、約0.07平方ミリメートルのサイズを有する略円形のスポット状領域3が、120列×160行のマトリックス状に、吸着性基板2に、規則的に形成され、したがって、合計19200のスポット状領域3が形成されている。
【0072】
図2は、スポッティング装置の略正面図である。
【0073】
生化学解析にあたっては、図2に示されるように、生化学解析用ユニット1の吸着性基板2に、たとえば、特異的結合物質として、塩基配列が既知の互いに異なった複数のcDNAを含む溶液が、スポッティング装置5を使用して、滴下され、多数のスポット状領域3が形成される。
【0074】
図2に示されるように、スポッティング装置5は、特異的結合物質の溶液を、生化学解析用ユニット1に向けて、噴射するインジェクタ6とCCDカメラ7を備え、CCDカメラ7によって、インジェクタ6の先端部と、cDNAなどの特異的結合物質を含む溶液を滴下すべき吸着性基板2の領域を観察しながら、インジェクタ6の先端部と、特異的結合物質の溶液を滴下すべきの吸着性基板2の領域の中心とが合致したときに、インジェクタ6から、特異的結合物質が滴下されるように構成され、生化学解析用ユニット1の吸着性基板2に、特異的結合物質の溶液を、正確に滴下して、所望のように、多数のスポット状領域3を形成することができるように保証されている。
【0075】
図3は、ハイブリダイゼーション反応容器の略縦断面図である。
【0076】
図3に示されるように、ハイブリダイゼーション反応容器8は矩形状断面を有し、内部に、標識物質によって標識されたプローブである生体由来の物質を含むハイブリダイゼーション反応溶液9が収容されている。
【0077】
本実施態様においては、放射性標識物質によって標識された生体由来の物質を含むハイブリダイゼーション反応溶液9が調製され、ハイブリダイゼーション反応容器8内に収容されている。
【0078】
ハイブリダイゼーションにあたって、吸着性基板2の表面に、cDNAなどの特異的結合物質が規則的に滴下されて、多数のスポット状領域3が形成された生化学解析用ユニット1が、ハイブリダイゼーション反応容器8内に挿入される。
【0079】
その結果、生化学解析用ユニット1の吸着性基板2に形成されている多数のスポット状領域3に含まれているcDNAなどの特異的結合物質に、放射性標識物質により標識され、ハイブリダイゼーション反応溶液に含まれた生体由来の物質が、選択的に、ハイブリダイズされる。
【0080】
こうして、放射性標識物質の放射線データが、生化学解析用ユニット1の多数のスポット状領域3に記録される。
【0081】
生化学解析用ユニット1の多数のスポット状領域3に記録された放射性標識物質の放射線データは、蓄積性蛍光体シートの輝尽性蛍光体層に転写され、後述するスキャナによって読み取られて、生化学解析用データが生成される。
【0082】
図4は、本発明の好ましい実施態様にかかる蓄積性蛍光体シートの略斜視図である。
【0083】
図4に示されるように、本実施態様にかかる蓄積性蛍光体シート10は、ステンレス鋼によって形成され、多数の凹部13および凹部14が規則的に形成された支持体11と、支持体11に形成された多数の凹部13に、輝尽性蛍光体が埋め込まれて形成された多数の輝尽性蛍光体層領域12と、多数の輝尽性蛍光体層領域12の間の支持体11に形成された多数の凹部14に、輝尽性蛍光体が埋め込まれて形成された多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15を備えている。
【0084】
本実施態様においては、多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15のそれぞれを形成するための凹部14の面積は、多数の輝尽性蛍光体層領域12のそれぞれを形成するための凹部13の面積よりも小さく、したがって、多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15は、それぞれ、多数の輝尽性蛍光体層領域12よりも面積が小さくなるように、形成されている。
【0085】
また、本実施態様においては、輝尽性蛍光体層領域14の表面が、支持体11の表面に一致するように、輝尽性蛍光体が多数の凹部13内に埋め込まれ、付加的輝尽性蛍光体層領域15の表面が、支持体11の表面に一致するように、輝尽性蛍光体が多数の凹部14内に埋め込まれている。
【0086】
ここに、多数の凹部13は、生化学解析用ユニット1の吸着性基板2に形成された多数のスポット状領域3と、同一の規則的パターンで、かつ、多数のスポット状領域3と等しいサイズで、略円形状に、支持体11に形成されている。
【0087】
したがって、図4には正確に示されていないが、約0.07平方ミリメートルのサイズを有する略円形の凹部13が、生化学解析用ユニット1の吸着性基板2に形成された多数のスポット状領域3と同一の規則的パターンで、120列×160行のマトリックス状に、支持体11に形成され、合計19200の凹部13が、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に、ドット状に形成されている。
【0088】
その結果、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された各輝尽性蛍光体層領域12が、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された対応するスポット状領域3とのみ、対向するように、蓄積性蛍光体シート10を生化学解析用ユニット1と重ね合わせて、生化学解析用ユニット1のスポット状領域3に含まれている放射性標識物質によって、蓄積性蛍光体シート10の対向する輝尽性蛍光体領域12を露光することができる。
【0089】
図5は、生化学解析用ユニット1の吸着性基板2に形成された多数のスポット状領域3内に含まれた放射性標識物質によって、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された多数の輝尽性蛍光体層領域12を露光する方法を示す略断面図である。
【0090】
図5に示されるように、生化学解析用ユニット1の吸着性基板2に形成された多数のスポット状領域3内に含まれた放射性標識物質によって、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された多数の輝尽性蛍光体層領域12を露光するにあたって、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された多数の凹部13内に、輝尽性蛍光体が埋め込まれて形成された多数の輝尽性蛍光体層領域12が、それぞれ、生化学解析用ユニット1の吸着性基板2に形成された多数のスポット状領域3に対向するように、蓄積性蛍光体シート10が生化学解析用ユニット1に重ね合わされる。
【0091】
露光に際し、生化学解析用ユニット1の多数のスポット状領域3に含まれた放射性標識物質から電子線(β線)が発せられるが、蓄積性蛍光体シート10の多数の輝尽性蛍光体層領域12は、生化学解析用ユニット1の吸着性基板2に形成された多数のスポット状領域3と、同一の規則的パターンで、支持体11に形成され、それぞれ、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された対応するスポット状領域3と対向するように、蓄積性蛍光体シート10が生化学解析用ユニット1に重ね合わされているから、生化学解析用ユニット1の吸着性基板2に形成されたスポット状領域3に含まれている放射性標識物質から放出される電子線(β線)は、それぞれ、対応する輝尽性蛍光体層領域12にのみ入射し、支持体11が放射線を実質的に透過しないステンレス鋼によって形成されているため、電子線(β線)が、蓄積性蛍光体シート10の支持体11内で散乱することも防止され、したがって、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された各スポット状領域3に含まれている放射性標識物質によって、対応する輝尽性蛍光体層領域12のみを選択的に露光することが可能になり、その一方で、蓄積性蛍光体シート10の多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15に、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された多数のスポット状領域3に含まれている放射性標識物質から放出された電子線(β線)が入射し、多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15が、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された各スポット状領域3に含まれている放射性標識物質によって、露光されることを効果的に防止することができる。
【0092】
しかしながら、スポット状領域3が形成されていない生化学解析用ユニット1の表面に、ハイブリダイゼーションに際して、付着した放射性標識物質を完全に洗浄することはきわめて困難であるので、スポット状領域3が形成されていない生化学解析用ユニット1の表面には、ハイブリダイゼーションに際して、付着した放射性標識物質が、洗浄後も残存し、残存した放射性標識物質から放出された電子線(β線)が、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された多数の輝尽性蛍光体層領域12に入射することは避け難く、また、環境放射線も、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された多数の輝尽性蛍光体層領域12に入射するため、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成され、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された多数のスポット状領域3に含まれている放射性標識物質によって露光された多数の輝尽性蛍光体層領域12を励起光によって走査し、多数の輝尽性蛍光体層領域12から放出された輝尽光を光電的に検出することにより生成した生化学解析用のデータには、ハイブリダイゼーションに際して、スポット状領域3が形成されていない生化学解析用ユニット1の表面に付着し、洗浄後も残存している放射性標識物質から放出される電子線(β線)や、環境放射線などが、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された多数の輝尽性蛍光体層領域12に入射することに起因するバックグラウンドノイズが不可避的に含まれている。
【0093】
一方、蓄積性蛍光体シート10の多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15には、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された多数のスポット状領域3に含まれている放射性標識物質から放出された電子線(β線)は入射せず、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された多数のスポット状領域3に含まれている放射性標識物質から放出された電子線(β線)によって、蓄積性蛍光体シート10の多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15が露光されることが防止されているから、蓄積性蛍光体シート10の多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15には、もっぱら、ハイブリダイゼーションに際して、スポット状領域3が形成されていない生化学解析用ユニット1の表面に付着し、洗浄後も残存している放射性標識物質から放出される電子線(β線)や、環境放射線などが入射し、蓄積性蛍光体シート10の多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15は、ハイブリダイゼーションに際して、スポット状領域3が形成されていない生化学解析用ユニット1の表面に付着し、洗浄後も残存している放射性標識物質から放出される電子線(β線)や、環境放射線などによってのみ露光される。したがって、蓄積性蛍光体シート10の多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15を励起光によって走査し、多数の付加的輝尽性蛍光体層15から放出された輝尽光を光電的に検出することにより生成したデータは、バックグラウンドノイズに対応するものとなる。
【0094】
こうして、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された多数の輝尽性蛍光体層領域12に、放射性標識物質の放射線データが記録される。
【0095】
図6は、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された多数の輝尽性蛍光体層領域12に記録された放射性標識物質の放射線データを読み取って、ディジタルデータを生成する本発明の好ましい実施態様にかかるスキャナの略斜視図であり、図7は、スキャナのフォトマルチプライア近傍の詳細を示す略斜視図である。
【0096】
図6に示されるスキャナは、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された多数の輝尽性蛍光体層領域12に記録された放射性標識物質の放射線データおよびゲル支持体あるいは転写支持体などに記録された蛍光色素などの蛍光物質によって標識された試料の生化学解析用のデータを読み取り可能に構成されており、640nmの波長のレーザ光24を発する第1のレーザ励起光源21と、532nmの波長のレーザ光24を発する第2のレーザ励起光源22と、473nmの波長のレーザ光24を発する第3のレーザ励起光源23とを備えている。
【0097】
本実施態様においては、第1のレーザ励起光源21は、半導体レーザ光源によって構成され、第2のレーザ励起光源22および第3のレーザ励起光源23は、第二高調波生成(Second Harmonic Generation)素子によって構成されている。
【0098】
第1のレーザ励起光源21により発生されたレーザ光24は、コリメータレンズ25によって、平行光とされた後、ミラー26によって反射される。第1のレーザ励起光源21から発せられ、ミラー26によって反射されたレーザ光24の光路には、640nmのレーザ光4を透過し、532nmの波長の光を反射する第1のダイクロイックミラー27および532nm以上の波長の光を透過し、473nmの波長の光を反射する第2のダイクロイックミラー28が設けられており、第1のレーザ励起光源21により発生されたレーザ光24は、第1のダイクロイックミラー27および第2のダイクロイックミラー28を透過して、ミラー29に入射する。
【0099】
他方、第2のレーザ励起光源22より発生されたレーザ光24は、コリメータレンズ30により、平行光とされた後、第1のダイクロイックミラー27によって反射されて、その向きが90度変えられて、第2のダイクロイックミラー28を透過し、ミラー29に入射する。
【0100】
また、第3のレーザ励起光源23から発生されたレーザ光24は、コリメータレンズ31によって、平行光とされた後、第2のダイクロイックミラー28により反射されて、その向きが90度変えられた後、ミラー29に入射する。
【0101】
ミラー29に入射したレーザ光24は、ミラー29によって反射され、さらに、ミラー32に入射して、反射される。
【0102】
ミラー32によって反射されたレーザ光24の光路には、中央部に穴33が形成された凹面ミラーによって形成された穴開きミラー34が配置されており、ミラー32によって反射されたレーザ光24は、穴開きミラー34の穴33を通過して、凹面ミラー38に入射する。
【0103】
凹面ミラー38に入射したレーザ光24は、凹面ミラー38によって反射されて、光学ヘッド35に入射する。
【0104】
光学ヘッド35は、ミラー36と、非球面レンズ37を備えており、光学ヘッド35に入射したレーザ光24は、ミラー36によって反射されて、非球面レンズ37によって、ステージ40のガラス板41上に載置された蓄積性蛍光体シート10あるいはゲル支持体や転写支持体に入射する。
【0105】
蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された輝尽性蛍光体層領域12に、レーザ光24が入射すると、輝尽性蛍光体層領域12に含まれている輝尽性蛍光体が励起されて、輝尽光45が発せられ、ゲル支持体や転写支持体に、レーザ光24が入射すると、蛍光色素などの蛍光物質が励起されて、蛍光45が発せられる。
【0106】
蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された輝尽性蛍光体層領域12から放出された輝尽光45あるいはゲル支持体や転写支持体から放出された蛍光45は、光学ヘッド35に設けられた非球面レンズ37によって、ミラー36に集光され、ミラー36によって、レーザ光24の光路と同じ側に反射され、平行な光とされて、凹面ミラー38に入射する。
【0107】
凹面ミラー38に入射した輝尽光45あるいは蛍光45は、凹面ミラー38によって反射されて、穴開きミラー34に入射する。
【0108】
穴開きミラー34に入射した輝尽光45あるいは蛍光45は、図7に示されるように、凹面ミラーによって形成された穴開きミラー34によって、下方に反射されて、フィルタユニット48に入射し、所定の波長の光がカットされて、フォトマルチプライア50に入射し、光電的に検出される。
【0109】
図7に示されるように、フィルタユニット48は、4つのフィルタ部材51a、51b、51c、51dを備えており、フィルタユニット48は、モータ(図示せず)によって、図7において、左右方向に移動可能に構成されている。
【0110】
図8は、図7のA−A線に沿った略断面図である。
【0111】
図8に示されるように、フィルタ部材51aはフィルタ52aを備え、フィルタ52aは、第1のレーザ励起光源21を用いて、ゲル支持体や転写支持体に含まれている蛍光色素などの蛍光物質を励起して、蛍光を読み取るときに使用されるフィルタ部材であり、640nmの波長の光をカットし、640nmよりも波長の長い光を透過する性質を有している。
【0112】
図9は、図7のB−B線に沿った断面図である。
【0113】
図9に示されるように、フィルタ部材51bはフィルタ52bを備え、フィルタ52bは、第2のレーザ励起光源22を用いて、ゲル支持体や転写支持体に含まれている蛍光色素などの蛍光物質を励起し、蛍光を読み取るときに使用されるフィルタ部材であり、532nmの波長の光をカットし、532nmよりも波長の長い光を透過する性質を有している。
【0114】
図10は、図7のC−C線に沿った断面図である。
【0115】
図10に示されるように、フィルタ部材51cはフィルタ52cを備え、フィルタ52cは、第3のレーザ励起光源23を用いて、ゲル支持体や転写支持体に含まれている蛍光色素などの蛍光物質を励起し、蛍光を読み取るときに使用されるフィルタ部材であり、473nmの波長の光をカットし、473nmよりも波長の長い光を透過する性質を有している。
【0116】
図11は、図7のD−D線に沿った断面図である。
【0117】
図11に示されるように、フィルタ部材51dはフィルタ52dを備え、フィルタ52dは、第1のレーザ励起光源21を用いて、蓄積性蛍光体シート10に形成された多数の輝尽性蛍光体層領域12を励起し、輝尽性蛍光体層領域12から発せられた輝尽光を読み取るときに使用されるフィルタであり、輝尽性蛍光体層領域12から放出される輝尽光の波長域の光のみを透過し、640nmの波長の光をカットする性質を有している。
【0118】
したがって、使用すべきレーザ励起光源に応じて、フィルタ部材51a、51b、51c、51dを選択的にフォトマルチプライア50の前面に位置させることによって、フォトマルチプライア50は、検出すべき光のみを光電的に検出することができる。
【0119】
フォトマルチプライア50によって光電的に検出されて、生成されたアナログデータは、A/D変換器53により、信号変動幅に適したスケールファクタで、ディジタルデータに変換され、ラインバッファ54に入力される。
【0120】
ラインバッファ54は、主走査線1ライン分のディジタルデータを一時的に記憶するものであり、以上のようにして、主走査線1ライン分のディジタルデータが記憶されると、そのディジタルデータを、ラインバッファ54の容量よりもより大きな容量を有する送信バッファ55に出力し、送信バッファ55は、所定の容量のディジタルデータが記憶されると、ディジタルデータを、データ処理装置56に出力するように構成されている。
【0121】
図6には図示されていないが、光学ヘッド35は、走査機構によって、図6において、矢印Xで示された主走査方向および矢印Yで示された副走査方向に移動可能に構成され、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成されたすべての輝尽性蛍光体層領域12またはゲル支持体もしくは転写支持体の全面が、レーザ光24によって走査されるように構成されている。
【0122】
図12は、光学ヘッド35の走査機構の略平面図である。
【0123】
図12においては、簡易化のため、光学ヘッド35を除く光学系ならびにレーザ光24および輝尽光45あるいは蛍光45の光路は省略されている。
【0124】
図12に示されるように、光学ヘッド35を走査する走査機構は、基板60を備え、基板60上には、副走査パルスモータ61と一対のレール62、62とが固定され、基板60上には、さらに、図12において、矢印Yで示された副走査方向に、移動可能な基板63とが設けられている。
【0125】
移動可能な基板63には、ねじが切られた穴(図示せず)が形成されており、この穴内には、副走査パルスモータ61によって回転されるねじが切られたロッド64が係合している。
【0126】
移動可能な基板63上には、主走査パルスモータ65が設けられ、主走査パルスモータ65は、エンドレスベルト66を駆動可能に構成されている。光学ヘッド35は、エンドレスベルト66に固定されており、主走査パルスモータ65によって、エンドレスベルト66が駆動されると、光学ヘッド35が、図12において、矢印Xで示された主走査方向に移動されるように構成されている。
【0127】
図12において、67は、光学ヘッド35の主走査方向における位置を検出するリニアエンコーダであり、68はリニアエンコーダ67のスリットである。
【0128】
したがって、主走査パルスモータ65によって、エンドレスベルト66が、主走査方向に駆動され、副走査パルスモータ61によって、移動可能な基板63が、副走査方向に間欠的に移動されることによって、光学ヘッド35は、図12において、矢印Xで示された主走査方向および矢印Yで示された副走査方向に移動され、レーザ光24によって、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成されたすべての輝尽性蛍光体層領域12またはゲル支持体もしくは転写支持体の全面が走査される。
【0129】
図13は、図6に示されたスキャナの制御系、入力系および駆動系を示すブロックダイアグラムである。
【0130】
図13に示されるように、スキャナの制御系は、スキャナ全体を制御するコントロールユニット70を備えており、また、スキャナの入力系は、オペレータによって操作され、種々の指示信号を入力可能なキーボード71を備えている。
【0131】
図13に示されるように、スキャナの駆動系は、光学ヘッド35を主走査方向に移動させる主走査パルスモータ65と、光学ヘッド35を副走査方向に移動させる副走査パルスモータ61と、4つのフィルタ部材51a、51b、51c、51dを備えたフィルタユニット48を移動させるフィルタユニットモータ72を備えている。
【0132】
コントロールユニット70は、第1のレーザ励起光源21、第2のレーザ励起光源22または第3のレーザ励起光源23に選択的に駆動信号を出力するとともに、フィルタユニットモータ72に駆動信号を出力可能に構成されている。
【0133】
図14は、データ処理装置56のブロックダイアグラムである。
【0134】
図14に示されるように、データ処理装置56は、送信バッファ14に、一時的に記憶されたディジタルデータを受信し、一時的に記憶するデータ一時記憶部75と、データ一時記憶部75に記憶されたディジタルデータに基づいて、バックグラウンドノイズ補正データを生成する補正データ生成部76と、データ一時記憶部75に記憶されたディジタルデータを読み出し、補正データ生成部76によって生成されたバックグラウンドノイズ補正データにしたがって、バックグラウンドノイズ補正を施すなど、ディジタルデータに所定のデータ処理を施すデータ処理部77と、データ処理部77によって、データ処理が施されたディジタルデータを記憶するデータ記憶部78を備えている。
【0135】
以上のように構成されたスキャナは、以下のようにして、生化学解析用ユニット1の吸着性基板2に形成された多数のスポット状領域3に含まれている放射性標識物質によって、多数の輝尽性蛍光体層領域12が露光されて、蓄積性蛍光体シート10に記録された放射性標識物質の放射線データを読み取って、生化学解析用データを生成する。
【0136】
まず、ユーザーによって、蓄積性蛍光体シート10が、ステージ40のガラス板41上に載置される。
【0137】
次いで、ユーザーによって、キーボード71に、蓄積性蛍光体シート10に形成された多数の輝尽性蛍光体層領域12に記録された放射線データを読み取るべき旨の指示信号が入力される。
【0138】
キーボード71に入力された指示信号は、コントロールユニット70に入力され、指示信号を受けると、コントロールユニット70は、指示信号にしたがって、フィルタユニットモータ72に駆動信号を出力し、フィルタユニット48を移動させ、輝尽性蛍光体から放出される輝尽光の波長域の光のみを透過し、640nmの波長の光をカットする性質を有するフィルタ52dを備えたフィルタ部材51dを、輝尽光45の光路内に位置させる。
【0139】
次いで、コントロールユニット70は、第1のレーザ励起光源21に駆動信号を出力し、第1のレーザ励起光源21を起動させ、640nmの波長のレーザ光24を発せさせる。
【0140】
第1のレーザ励起光源21から発せられたレーザ光24は、コリメータレンズ25によって、平行な光とされた後、ミラー26に入射して、反射される。
【0141】
ミラー26によって反射されたレーザ光24は、第1のダイクロイックミラー27および第2のダイクロイックミラー28を透過し、ミラー29に入射する。
【0142】
ミラー29に入射したレーザ光24は、ミラー29によって反射されて、さらに、ミラー32に入射して、反射される。
【0143】
ミラー32によって反射されたレーザ光24は、穴開きミラー34の穴33を通過して、凹面ミラー38に入射する。
【0144】
凹面ミラー38に入射したレーザ光24は、凹面ミラー38によって反射されて、光学ヘッド35に入射する。
【0145】
光学ヘッド35に入射したレーザ光24は、ミラー36によって反射され、非球面レンズ37によって、ステージ40ガラス板41上に載置された蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された輝尽性蛍光体層領域12に集光される。
【0146】
本実施態様においては、蓄積性蛍光体シート10の多数の輝尽性蛍光体層領域12は、放射線エネルギーを減衰させる性質を有するステンレス鋼によって形成された支持体11に、互いに離間して形成されているから、輝尽性蛍光体層領域12に入射したレーザ光24が、散乱して、隣り合う輝尽性蛍光体層領域12に含まれている輝尽性蛍光体を励起することを、効果的に防止することが可能になる。
【0147】
レーザ光24が、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された輝尽性蛍光体層領域12に入射すると、輝尽性蛍光体層領域12に含まれている輝尽性蛍光体が、レーザ光24によって励起されて、輝尽性蛍光体から輝尽光45が放出される。
【0148】
蓄積性蛍光体シート10の輝尽性蛍光体層領域12に含まれている輝尽性蛍光体から放出された輝尽光45は、光学ヘッド35に設けられた非球面レンズ37によって集光され、ミラー36によって、レーザ光24の光路と同じ側に反射され、平行な光とされて、凹面ミラー38に入射する。
【0149】
凹面ミラー38に入射したレーザ光24は、凹面ミラー38によって反射されて、穴開きミラー34に入射する。
【0150】
穴開きミラー34に入射した輝尽光45は、凹面ミラーによって形成された穴開きミラー34によって、図7に示されるように、下方に反射され、フィルタユニット48のフィルタ52dに入射する。
【0151】
フィルタ52dは、輝尽性蛍光体から放出される輝尽光の波長域の光のみを透過し、640nmの波長の光をカットする性質を有しているので、励起光である640nmの波長の光がカットされ、輝尽光の波長域の光のみがフィルタ52dを透過して、フォトマルチプライア50によって、光電的に検出される。
【0152】
前述のように、光学ヘッド35は、基板62に設けられた主走査パルスモータ65によって、基板62上を、図12において、矢印Xで示される主走査方向に移動されるとともに、副走査パルスモータ61によって、基板62が、図12において、矢印Yで示される副走査方向に移動されるため、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成されたすべての輝尽性蛍光体層領域12がレーザ光24によって走査され、蓄積性蛍光体シート10の輝尽性蛍光体層領域12に含まれている輝尽性蛍光体から放出された輝尽光45を、フォトマルチプライア50によって光電的に検出することによって、蓄積性蛍光体シート10の多数の輝尽性蛍光体層領域12に記録された放射性標識物質の放射線データを読み取って、生化学解析用のアナログデータを生成することができる。
【0153】
蓄積性蛍光体シート10は、多数の輝尽性蛍光体層領域12の間の支持体11に形成された多数の凹部14に、輝尽性蛍光体が埋め込まれて、形成された多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15を備えており、多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15は、ハイブリダイゼーションに際して、多数のスポット状領域3が形成されていない生化学解析用ユニット1の表面に付着し、洗浄後も残存している放射性標識物質から放出される電子線(β線)や、環境放射線などによって露光され、放射線エネルギーを蓄積しているため、レーザ光24によって、蓄積性蛍光体シート10が走査される際、多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15に含まれている輝尽性蛍光体が、レーザ光24によって励起されて、輝尽光45が放出され、多数の輝尽性蛍光体層領域12に含まれた輝尽性蛍光体から放出された輝尽光45と全く同様にして、多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15に含まれた輝尽性蛍光体から放出された輝尽光45も、フォトマルチプライア50によって、光電的に検出される。
【0154】
したがって、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成されたすべての輝尽性蛍光体層領域12を、レーザ光24によって走査して生成されたアナログデータには、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15に含まれている輝尽性蛍光体から放出された輝尽光45を検出して、生成されたアナログデータも含まれている。
【0155】
フォトマルチプライア50によって光電的に検出されて、生成されたアナログデータは、A/D変換器53により、信号変動幅に適したスケールファクタで、ディジタルデータに変換され、ラインバッファ54に入力される。
【0156】
ラインバッファ54に、主走査線1ライン分のディジタルデータが記憶されると、ディジタルデータは、ラインバッファ54の容量よりもより大きな容量を有する送信バッファ55に出力され、送信バッファ55に、所定の容量のディジタルデータが記憶されると、ディジタルデータは、データ処理装置56に出力される。
【0157】
データ処理装置56に出力されたディジタルデータは、データ一時記憶部75に一時的に記憶される。
【0158】
データ一時記憶部75に一時的に記憶されたディジタルデータは、補正データ生成部76に出力されるとともに、データ処理部77に出力される。
【0159】
ここに、上述のように、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15は、ハイブリダイゼーションに際して、多数のスポット状領域3が形成されていない生化学解析用ユニット1の表面に付着し、洗浄後も残存している放射性標識物質から放出される電子線(β線)や、環境放射線などによってのみ露光され、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された多数のスポット状領域3に選択的に含まれている放射性標識物質から放出された電子線(β線)によって露光されていない。したがって、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15をレーザ光によって走査し、多数の付加的輝尽性蛍光体層15から放出された輝尽光45を光電的に検出して、生成したディジタルデータは、バックグラウンドノイズに対応するものであるから、補正データ生成部76は、データ一時記憶部75から入力されたディジタルデータに基づいて、多数の付加的輝尽性蛍光体層15から放出された輝尽光45を光電的に検出することにより生成したディジタルデータから、バックグラウンドノイズ補正データを生成して、データ処理部77に出力する。
【0160】
データ処理部77は、データ一時記憶部75から入力されたディジタルデータから、補正データ生成部76から入力されたバックグラウンドノイズ補正データを減算して、バックグラウンドノイズを補正し、さらに、必要なデータ処理を実行して、データ処理後のディジタルデータをデータ記憶部78に記憶させとともに、データ一時記憶部75に記憶されていたディジタルデータを消去する。
【0161】
こうして、バックグラウンドノイズが補正され、必要に応じて、その他のデータ処理が施され、データ記憶部78に記憶されたディジタルデータに基づいて、所望のように、定量解析が実行される。
【0162】
一方、ゲル支持体あるいは転写支持体に記録された蛍光色素によって標識された変性DNAの電気泳動データなどの蛍光物質の蛍光データを読み取って、生化学解析用データを生成するときは、まず、ユーザーによって、蛍光データが記録されているゲル支持体あるいは転写支持体が、ステージ40のガラス板41上にセットされる。
【0163】
次いで、ユーザーによって、キーボード71に、蛍光物質の種類が入力されると、コントロールユニット70により、第1のレーザ励起光源21、第2のレーザ励起光源22および第3のレーザ励起光源23の中から、入力された蛍光物質を効率的に励起することのできる波長のレーザ光24を発するレーザ励起光源が選択されるとともに、3つのフィルタ部材51a、51b、51cの中から、入力された蛍光物質を励起するために用いるレーザ光24の波長の光をカットし、蛍光物質の励起に用いるレーザ光24の波長よりも波長の長い光を透過する性質を有するフィルタ部材が選択される。
【0164】
次いで、レーザ光24によって、ゲル支持体あるいは転写支持体の全面が走査され、蛍光物質から放出された蛍光45が、フォトマルチプライア50によって、光電的に検出されて、アナログデータが生成され、A/D変換器によって、ディジタル化されて、生化学解析用データが生成される。
【0165】
本実施態様によれば、生化学解析用ユニット1の吸着性基板2に形成された多数のスポット状領域3に選択的に含まれている放射性標識物質によって、蓄積性蛍光体シートの支持体11に形成された多数の輝尽性蛍光体層領域12を露光するに際し、生化学解析用ユニット1の多数のスポット状領域3に選択的に含まれた放射性標識物質から電子線(β線)が発せられるが、蓄積性蛍光体シート10の多数の輝尽性蛍光体層領域12は、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された多数のスポット状領域3と、同一の規則的パターンで、支持体11に形成され、それぞれ、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された対応するスポット状領域3と対向するように、蓄積性蛍光体シート10が生化学解析用ユニット1に重ね合わされているから、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された各スポット状領域3に含まれている放射性標識物質から放出される電子線(β線)は、対応する輝尽性蛍光体層領域12にのみ入射し、生化学解析用ユニット1の支持体11が放射線を実質的に透過しないステンレス鋼によって形成されているため、電子線(β線)が蓄積性蛍光体シート10の支持体11内で散乱することも防止され、したがって、生化学解析用ユニット1の基板2に形成されたスポット状領域3のそれぞれに含まれている放射性標識物質から放出された電子線(β線)によって、対向する輝尽性蛍光体層領域12のみを確実に露光することが可能になり、したがって、露光された多数の輝尽性蛍光体層領域12を励起光によって走査し、多数の輝尽性蛍光体層領域12から放出された輝尽光45を光電的に検出することによって、高い分解能で、定量性に優れた生化学解析用のデータを生成することが可能になる。
【0166】
しかしながら、多数のスポット状領域3が形成されていない生化学解析用ユニット1の表面に、ハイブリダイゼーションに際して、付着した放射性標識物質を完全に洗浄することはきわめて困難であるので、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に多数の輝尽性蛍光体層領域12を形成した場合でも、多数のスポット状領域3が形成されていない生化学解析用ユニット1の表面には、ハイブリダイゼーションに際して、付着した放射性標識物質が、洗浄後も残存し、残存した放射性標識物質から放出された電子線(β線)が、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された輝尽性蛍光体層領域12に入射することは避け難く、また、環境放射線も、蓄積性蛍光体シート10に形成された輝尽性蛍光体層領域12に入射するため、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成され、生化学解析用ユニット1の吸着性基板2に形成された多数のスポット状領域3に選択的に含まれている放射性標識物質によって露光された多数の輝尽性蛍光体層領域12を、レーザ光24によって走査し、多数の輝尽性蛍光体層領域12から放出された輝尽光を光電的に検出することにより生成した生化学解析用のディジタルデータは、ハイブリダイゼーションに際して、多数のスポット状領域3が形成されていない生化学解析用ユニット1の表面に付着し、洗浄後も残存している放射性標識物質から放出される電子線(β線)や、環境放射線などが、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された多数の輝尽性蛍光体層領域12に入射することに起因するバックグラウンドノイズを不可避的に含んでいる。
【0167】
しかるに、本実施態様によれば、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された各スポット状領域3に含まれている放射性標識物質によって、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された対応する輝尽性蛍光体層領域12を選択的に露光することが可能になる一方で、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15に、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された多数のスポット状領域3に選択的に含まれている放射性標識物質から放出された電子線(β線)が入射し、多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15が露光されることを効果的に防止することができるから、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15には、もっぱら、ハイブリダイゼーションに際して、多数のスポット状領域3が形成されていない生化学解析用ユニット1の表面に付着し、洗浄後も残存している放射性標識物質から放出される電子線(β線)や、環境放射線などが入射し、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15は、ハイブリダイゼーションに際して、多数のスポット状領域3が形成されていない生化学解析用ユニット1の表面に付着し、洗浄後も残存している放射性標識物質から放出される電子線(β線)や、環境放射線などによってのみ露光され、したがって、多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15をレーザ光によって走査し、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された多数の付加的輝尽性蛍光体層15から放出された輝尽光を光電的に検出することにより生成したディジタルデータは、バックグラウンドノイズに対応するものとなる。
【0168】
したがって、本実施態様によれば、データ処理装置56の補正データ生成部76が、蓄積性蛍光体シート10の支持体11に形成された多数の付加的輝尽性蛍光体層15から放出された輝尽光45を光電的に検出することによって生成したディジタルデータから、バックグラウンドノイズ補正データを生成し、データ処理部77が、蓄積性蛍光体シート10の全面を、レーザ光24によって走査して生成されたディジタルデータから、補正データ生成部76により生成されたバックグラウンドノイズ補正データを減算して、バックグラウンドノイズを補正するように構成しているから、精度よく、バックグラウンドノイズを除去した生化学解析用データを生成することが可能になる。
【0169】
さらに、本実施態様によれば、蓄積性蛍光体シート10の多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15が、多数の輝尽性蛍光体層領域12の間の支持体11に規則的に形成された多数の凹部14に、輝尽性蛍光体が埋め込まれて、形成されているから、蓄積性蛍光体シート10の表面上の位置によって、バックグラウンドノイズが変動しても、精度よく、バックグラウンドノイズを除去した生化学解析用データを生成することが可能になる。
【0170】
図15は、本発明の別の好ましい実施態様にかかる蓄積性蛍光体シートの略斜視図である。
【0171】
図15に示されるように、本実施態様にかかる蓄積性蛍光体シート80は、窒化ケイ素によって形成された支持体81と、支持体81に、互いに離間して形成された多数の貫通孔83に、輝尽性蛍光体が埋め込まれて、形成された多数の輝尽性蛍光体層領域82と、多数の輝尽性蛍光体層領域82の間の支持体81に形成された互いに直交する2本の溝84に、輝尽性蛍光体が埋め込まれて、形成されたストライプ状の付加的輝尽性蛍光体層領域85を備えている。
【0172】
ここに、多数の貫通孔83は、生化学解析用ユニット1の吸着性基板2に形成された多数のスポット状領域3と、同一の規則的パターンで、支持体81に形成され、したがって、蓄積性蛍光体シート80を生化学解析用ユニット1と重ね合わせたときに、各輝尽性蛍光体層領域82が、生化学解析用ユニット1の吸着性基板2に形成された対応するスポット状領域3とのみ、対向するように、蓄積性蛍光体シート80が構成されている。
【0173】
本実施態様においても、生化学解析用ユニット1の吸着性基板2に形成された多数のスポット状領域3に選択的に含まれている放射性標識物質によって、蓄積性蛍光体シート80の支持体81に形成された多数の輝尽性蛍光体層領域82を露光するときは、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された多数のスポット状領域3と、同一の規則的パターンで、蓄積性蛍光体シート80の支持体81に形成された多数の輝尽性蛍光体層領域82が、それぞれ、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された対応するスポット状領域3と対向するように、蓄積性蛍光体シート80が生化学解析用ユニット1に重ね合わされる。
【0174】
したがって、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された各スポット状領域3に含まれている放射性標識物質から放出される電子線(β線)は、蓄積性蛍光体シート80の対応する輝尽性蛍光体層領域82にのみ入射し、蓄積性蛍光体シート80の支持体81が放射線エネルギーを減衰させる性質を有する窒化ケイ素によって形成されているため、電子線(β線)が蓄積性蛍光体シート80の支持体81内で散乱することも防止されるから、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された各スポット状領域3に含まれている放射性標識物質によって、蓄積性蛍光体シート80の対応する輝尽性蛍光体層領域82のみを選択的に露光することが可能になり、したがって、露光された多数の輝尽性蛍光体層領域82を励起光によって走査し、多数の輝尽性蛍光体層領域82から放出された輝尽光45を光電的に検出することによって、高い分解能で、定量性に優れた生化学解析用のデータを生成することが可能になる。
【0175】
その一方で、蓄積性蛍光体シート80の支持体81に形成されたストライプ状の付加的輝尽性蛍光体層領域85に、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された多数のスポット状領域3に選択的に含まれている放射性標識物質から放出された電子線(β線)が入射し、多数の付加的輝尽性蛍光体層領域85が露光されることを効果的に防止することができるから、蓄積性蛍光体シート80の支持体81に形成されたストライプ状の付加的輝尽性蛍光体層領域85には、もっぱら、ハイブリダイゼーションに際して、多数のスポット状領域3が形成されていない生化学解析用ユニット1の表面に付着し、洗浄後も残存している放射性標識物質から放出される電子線(β線)や、環境放射線などが入射し、ストライプ状の付加的輝尽性蛍光体層領域85は、ハイブリダイゼーションに際して、多数のスポット状領域3が形成されていない生化学解析用ユニット1の表面に付着し、洗浄後も残存している放射性標識物質から放出される電子線(β線)や、環境放射線などによってのみ露光され、したがって、ストライプ状の付加的輝尽性蛍光体層領域85をレーザ光によって走査し、ストライプ状の付加的輝尽性蛍光体層85から放出された輝尽光を光電的に検出することにより生成したディジタルデータは、バックグラウンドノイズに対応するものとなるから、前記実施態様と同様にして、ストライプ状の付加的輝尽性蛍光体層85から放出された輝尽光45を光電的に検出することによって生成したディジタルデータから、バックグラウンドノイズ補正データを生成して、蓄積性蛍光体シート80の全面を、レーザ光24によって走査して生成されたディジタルデータから、バックグラウンドノイズ補正データを減算することによって、精度よく、バックグラウンドノイズを除去した生化学解析用データを生成することが可能になる。
【0176】
図16は、本発明の他の好ましい実施態様にかかる蓄積性蛍光体シートの略斜視図である。
【0177】
図16に示されるように、本実施態様にかかる蓄積性蛍光体シート90は、ポリエチレンテレフタレートによって形成された支持体91と、規則的なパターンで、支持体91の表面上に形成された多数の輝尽性蛍光体層領域92と、多数の輝尽性蛍光体層領域92の間の支持体91の表面上に、規則的に形成された多数の付加的輝尽性蛍光体層領域95を備えている。
【0178】
ここに、多数の輝尽性蛍光体層領域92は、生化学解析用ユニット1の吸着性基板2に形成された多数のスポット状領域3と、同一の規則的パターンで、かつ、多数のスポット状領域3と等しいサイズで、略円形状に、支持体91の表面上に形成されており、したがって、蓄積性蛍光体シート90と生化学解析用ユニット1とを重ね合わせて、露光するときに、各輝尽性蛍光体層領域92が、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された対応するスポット状領域3とのみ、対向し、当接するように、蓄積性蛍光体シート90が構成されている。
【0179】
本実施態様によれば、生化学解析用ユニット1の吸着性基板2に形成された多数のスポット状領域3に選択的に含まれている放射性標識物質によって、蓄積性蛍光体シートの支持体91の表面上に形成された多数の輝尽性蛍光体層領域82を露光するときに、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された多数のスポット状領域3と、同一の規則的パターンで、蓄積性蛍光体シート90の支持体91の表面上に形成された各輝尽性蛍光体層領域92が、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された対応するスポット状領域3とのみ、対向し、当接するように、蓄積性蛍光体シート90と生化学解析用ユニット1とが重ね合わされるから、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された各スポット状領域3に含まれている放射性標識物質から放出される電子線(β線)のほとんどは、対応する輝尽性蛍光体層領域12に入射し、したがって、生化学解析用ユニット1の基板2に形成されたスポット状領域3に選択的に含まれている放射性標識物質によって、蓄積性蛍光体シート90の対応する輝尽性蛍光体層領域82を選択的に露光することが可能になるから、露光された多数の輝尽性蛍光体層領域92を励起光によって走査し、多数の輝尽性蛍光体層領域92から放出された輝尽光45を光電的に検出することによって、高い分解能で、定量性に優れた生化学解析用のデータを生成することが可能になる。
【0180】
その一方で、蓄積性蛍光体シート90の支持体91の表面上に形成された多数の付加的輝尽性蛍光体層領域95に、生化学解析用ユニット1の基板2に形成された多数のスポット状領域3に含まれている放射性標識物質から放出された電子線(β線)が入射し、多数の付加的輝尽性蛍光体層領域95が露光されることを効果的に防止することができるから、蓄積性蛍光体シート90の支持体91の表面上に形成された多数の付加的輝尽性蛍光体層領域95には、もっぱら、ハイブリダイゼーションに際して、多数のスポット状領域3が形成されていない生化学解析用ユニット1の基板2の表面に付着し、洗浄後も残存している放射性標識物質から放出される電子線(β線)や、環境放射線などが入射し、蓄積性蛍光体シート90の支持体91の表面上に形成された多数の付加的輝尽性蛍光体層領域95は、ハイブリダイゼーションに際して、多数のスポット状領域3が形成されていない生化学解析用ユニット1の基板2の表面に付着し、洗浄後も残存している放射性標識物質から放出される電子線(β線)や、環境放射線などによってのみ露光され、したがって、多数の付加的輝尽性蛍光体層領域95をレーザ光によって走査し、多数の付加的輝尽性蛍光体層95から放出された輝尽光を光電的に検出することにより生成した生化学解析用のディジタルデータは、バックグラウンドノイズに対応するものとなるから、前記実施態様と同様にして、多数の付加的輝尽性蛍光体層95から放出された輝尽光45を光電的に検出することによって生成したディジタルデータから、バックグラウンドノイズ補正データを生成して、蓄積性蛍光体シート90の全面を、レーザ光24によって走査して生成されたディジタルデータから、バックグラウンドノイズ補正データを減算することによって、精度よく、バックグラウンドノイズを除去した生化学解析用のデータを生成することが可能になる。
【0181】
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0182】
たとえば、前記実施態様においては、特異的結合物質として、塩基配列が既知の互いに異なった複数のcDNAが用いられているが、本発明において使用可能な特異的結合物質はcDNAに限定されるものではなく、細胞、ウィルス、ホルモン類、腫瘍マーカー、酵素、抗体、抗原、アブザイム、その他のタンパク質、核酸、cDNA、DNA、RNAなど、生体由来の物質と特異的に結合可能で、かつ、塩基配列や塩基の長さ、組成などが既知の特異的結合物質はすべて、本発明の特異的結合物質として使用することができる。
【0183】
さらに、前記実施態様においては、放射性標識物質によって標識された生体由来の物質が、特異的結合物質にハイブリダイズされているが、生体由来の物質を、特異的結合物質にハイブリダイズさせることは必ずしも必要でなく、生体由来の物質を、ハイブリダイゼーションに代えて、抗原抗体反応、リセプター・リガンドなどの反応によって、特異的結合物質に特異的に結合させることもできる。
【0184】
さらに、前記実施態様においては、生化学解析用ユニット1は、吸着性基板2の表面上に、cDNAなどの特異的結合物質を含む溶液を滴下し、放射性標識物質によって標識された生体由来の物質を、特異的結合物質にハイブリダイズさせて、形成された多数のスポット状領域3を備えているが、基板に、多数の貫通孔あるいは凹部を形成し、基板に形成された多数の貫通孔あるいは凹部の内部に、ナイロン6などの吸着性材料を充填して、互いに離間した多数の吸着性領域を形成し、多数の吸着性領域に、cDNAなどの特異的結合物質を含む溶液を滴下し、放射性標識物質によって標識された生体由来の物質を、多数の吸着性領域に含まれた特異的結合物質に選択的にハイブリダイズさせて、生化学解析用ユニット1を形成するようにしてもよい。
【0185】
また、図1ないし図14に示された実施態様においては、蓄積性蛍光体シート10の支持体11が、ステンレス鋼によって形成され、図15に示された実施態様においては、蓄積性蛍光体シート80の支持体81が、窒化ケイ素によって形成され、図16に示された実施態様においては、蓄積性蛍光体シート90の支持体91が、ポリエチレンテレフタレートによって形成されているが、蓄積性蛍光体シート10、80、90の支持体11、81、91を、ステンレス鋼、窒化ケイ素あるいはポリエチレンテレフタレートによって形成することは必ずしも必要でなく、他の材料によって、蓄積性蛍光体シート10、80、90の支持体11、81、91を形成することもできる。蓄積性蛍光体シート10、80、90の支持体11、81、91は、放射線エネルギーを減衰させる性質を有する材料によって形成されていることが好ましいが、その材料はとくに限定されるものではない。蓄積性蛍光体シート10、80、90の支持体11、81、91は、無機化合物材料、有機化合物材料のいずれによって形成することもできるが、とくに好ましくは、金属材料、セラミック材料またはプラスチック材料によって形成される。無機化合物材料としては、たとえば、金、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、チタン、タンタル、クロム、鉄、ニッケル、コバルト、鉛、錫、セレンなどの金属;真鍮、ステンレス、青銅などの合金;シリコン、アモルファスシリコン、ガラス、石英、炭化ケイ素、窒化ケイ素などの珪素材料;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物;タングステンカーバイト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、砒化ガリウムなどの無機塩を挙げることができる。有機化合物材料としては、高分子化合物が好ましく用いられ、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート、ブチルアクリレート/メチルメタクリレート共重合体などのアクリル樹脂;ポリアクリロニトリル;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリフッ化ビニリデン;ポリテトラフルオロエチレン;ポリクロロトリフルオロエチレン;ポリカーボネート;ポリエチレンナフタレートやポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン4,10などのナイロン;ポリイミド;ポリスルホン;ポリフェニレンサルファイド;ポリジフェニルシロキサンなどのケイ素樹脂;ノボラックなどのフェノール樹脂;エポキシ樹脂;ポリウレタン;ポリスチレン;ブタジエン−スチレン共重合体;セルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、でん粉、アルギン酸カルシウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの多糖類;キチン;キトサン;ウルシ;ゼラチン、コラーゲン、ケラチンなどのポリアミドおよびこれら高分子化合物の共重合体などを挙げることができる。
【0186】
また、前記実施態様においては、蓄積性蛍光体シート10、80、90の輝尽性蛍光体層領域12、82、92は、いずれも、生化学解析用ユニット1の吸着性基板2に形成された多数のスポット状領域3と等しいサイズで、略円形状に形成されているが、蓄積性蛍光体シート10、80、90の輝尽性蛍光体層領域12、82、92が略円形状に形成されることは必ずしも必要でなく、略矩形状などの円形以外の形状に形成してもよく、また、蓄積性蛍光体シート10、80、90の輝尽性蛍光体層領域12、82、92を、そのサイズが、生化学解析用ユニット1のスポット状領域3のサイズと等しくなるように、形成することも必ずしも必要でない。
【0187】
さらに、前記実施態様においては、約0.07平方ミリメートルのサイズを有する略円形のスポット状領域3が、120列×160行のマトリックス状に、吸着性基板2に、規則的に形成され、したがって、合計19200のスポット状領域3が形成されており、したがって、蓄積性蛍光体シート10、80、90の支持体11、81、91には、約0.07平方ミリメートルのサイズを有する合計19200の円形の輝尽性蛍光体層領域12、82、92が、120列×160行のマトリックス状に形成されているが、スポット状領域3の数およびサイズは、目的に応じて、任意に選択をすることができ、したがって、蓄積性蛍光体シート10、80、90の支持体11、81、91に形成される輝尽性蛍光体層領域12、82、92の数およびサイズも、目的に応じて、任意に選択をすることができる。好ましくは、10以上の5平方ミリメートル未満のサイズを有するスポット状領域3が、10個/平方センチメートル以上の密度で、生化学解析用ユニット1の吸着性基板2に形成され、蓄積性蛍光体シート10、80、90の支持体11、81、91に、10以上の5平方ミリメートル未満のサイズを有する輝尽性蛍光体層領域12、82、92が、10個/平方センチメートル以上の密度で、形成される。
【0188】
また、前記実施態様においては、蓄積性蛍光体シート10、80、90の輝尽性蛍光体層領域12、82、92は、生化学解析用ユニット1の吸着性基板2に形成された多数のスポット状領域3と同一の規則的なパターンで、形成されているが、蓄積性蛍光体シート10、80、90の輝尽性蛍光体層領域12、82、92は、生化学解析用ユニット1の吸着性基板2に形成された多数のスポット状領域3と同一のパターンで、形成されていればよく、生化学解析用ユニット1の吸着性基板2に、規則的なパターンで、多数のスポット状領域3を形成することも、蓄積性蛍光体シート10、80、90の輝尽性蛍光体層領域12、82、92を、規則的なパターンで形成することも必ずしも必要でない。
【0189】
さらに、図1ないし図14に示された実施態様および図16に示された実施態様においては、多数の輝尽性蛍光体層領域12、92の間の支持体11、91に、多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15、95を形成しているが、多数の付加的輝尽性蛍光体層領域を、多数の輝尽性蛍光体層領域12、92の間に形成することは必ずしも必要ではなく、付加的輝尽性蛍光体層領域は、状況に応じて、支持体11、91の任意の位置に、任意の数だけ、設けることができる。
【0190】
また、図15に示された実施態様においては、多数の輝尽性蛍光体層領域82の間の支持体81に形成された互いに直交する2本の溝84に、輝尽性蛍光体が埋め込まれて、互いに直交する2本のストライプ状の付加的輝尽性蛍光体層領域85が形成されているが、ストライプ状付加的輝尽性蛍光体層領域が直交していることは必ずしも必要でなく、その数も、状況に応じて、任意に決定することができる。
【0191】
さらに、図1ないし図14に示された実施態様および図16に示された実施態様においては、多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15、95が、支持体11に形成された多数の凹部14内に、あるいは、支持体91の表面上に形成されているが、多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15、95に代えて、図15に示された実施態様と同様に、ストライプ状の付加的輝尽性蛍光体層領域を、支持体11に形成された凹部14内に、あるいは、支持体91の表面上に形成するようにしてもよい。
【0192】
また、図15に示された実施態様においては、2本の互いに直交するストライプ状の付加的輝尽性蛍光体層領域85が、支持体81の溝84内に形成されているが、2本の互いに直交するストライプ状の付加的輝尽性蛍光体層領域85に代えて、図1ないし図14および図16に示された実施態様と同様に、多数の付加的輝尽性蛍光体層領域を、支持体81に形成された多数の凹部内に、あるいは、支持体81の表面上に形成するようにしてもよい。
【0193】
さらに、図1ないし図14に示された実施態様および図16に示された実施態様においては、多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15、95は、その面積が、輝尽性蛍光体層領域12、92の面積よりも小さくなるように形成されているが、その面積が、輝尽性蛍光体層領域12、92の面積よりも小さくなるように多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15、95を形成することは必ずしも必要でなく、多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15、95の面積は、状況に応じて、任意に選択することができる。
【0194】
また、図1ないし図14に示された実施態様においては、輝尽性蛍光体層領域12の表面が、支持体11の表面に一致するように、輝尽性蛍光体が多数の凹部13内に埋め込まれて、多数の輝尽性蛍光体層領域12が形成されているが、輝尽性蛍光体層領域12の表面が、支持体11の表面に一致するように、多数の輝尽性蛍光体層領域12を形成することはかならずしも必要でなく、輝尽性蛍光体層領域12の表面が、支持体11の表面よりも下方に位置していても、あるいは、上方に位置していてもよい。
【0195】
さらに、図15に示された実施態様においては、ストライプ状の付加的輝尽性蛍光体層領域85は、支持体81に形成された溝84に、輝尽性蛍光体を充填して、形成されているが、支持体81にスロットを形成し、スロット内に、輝尽性蛍光体を埋め込んで、ストライプ状の付加的輝尽性蛍光体層領域85を形成するようにしてもよい。
【0196】
また、図1ないし図14に示された実施態様においては、多数の付加的輝尽性蛍光体層領域15は、支持体11に形成された多数の凹部14内に、輝尽性蛍光体を埋め込んで、形成されているが、凹部14に代えて、支持体11に多数の貫通孔を形成し、多数の貫通孔内に、輝尽性蛍光体を埋め込んで、多数の付加的輝尽性蛍光体層領域を形成することもできる。
【0197】
【発明の効果】
本発明によれば、生体由来の物質と特異的に結合可能で、かつ、塩基配列や塩基の長さ、組成などが既知の特異的結合物質を含む複数のスポット状領域を、担体表面に、高密度に形成し、複数のスポット状領域に含まれた特異的結合物質に、放射性標識物質によって標識された生体由来の物質を特異的に結合させて、複数のスポット状領域を選択的に標識した場合においても、高い分解能で、定量性に優れた生化学解析用のデータを生成することのできる蓄積性蛍光体シートおよび蓄積性蛍光体シートに記録された生化学解析用のデータの読み取り方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、生化学解析用ユニットの略斜視図である。
【図2】図2は、スポッティング装置の略正面図である。
【図3】図3は、ハイブリダイゼーション反応容器の略縦断面図である。
【図4】図4は、本発明の好ましい実施態様にかかる蓄積性蛍光体シートの略斜視図である。
【図5】図5は、生化学解析用ユニットの吸着性基板に形成された多数のスポット状領域内に含まれた放射性標識物質によって、蓄積性蛍光体シートの支持体に形成された多数の輝尽性蛍光体層領域を露光する方法を示す略断面図である。
【図6】図6は、蓄積性蛍光体シートの支持体に形成された多数の輝尽性蛍光体層領域に記録されている生化学解析用データを読み取る本発明の好ましい実施態様にかかるスキャナの示す略斜視図である。
【図7】図7は、図6に示されたスキャナのフォトマルチプライア近傍の詳細を示す略斜視図である。
【図8】図8は、図7のA−A線に沿った略断面図である。
【図9】図9は、図7のB−B線に沿った断面図である。
【図10】図10は、図7のC−C線に沿った断面図である。
【図11】図11は、図7のD−D線に沿った断面図である。
【図12】図12は、光学ヘッドの走査機構の略平面図である。
【図13】図13は、本発明の好ましい実施態様にかかるスキャナの制御系、入力系および駆動系を示すブロックダイアグラムである。
【図14】図14は、データ処理装置のブロックダイアグラムである。
【図15】図15は、本発明の別の好ましい実施態様にかかる蓄積性蛍光体シートの略斜視図である。
【図16】図16は、本発明の他の好ましい実施態様にかかる蓄積性蛍光体シートの略斜視図である。
【符号の説明】
1 生化学解析用ユニット
2 吸着性基板
3 スポット状領域
5 スポッティング装置
6 インジェクタ
7 CCDカメラ
8 ハイブリダイズ容器
9 ハイブリダイズ液
10 蓄積性蛍光体シート
11 支持体
12 輝尽性蛍光体層領域
13 凹部
14 凹部
15 付加的輝尽性蛍光体層領域
21 第1のレーザ励起光源
22 第2のレーザ励起光源
23 第3のレーザ励起光源
24 レーザ光
25 コリメータレンズ
26 ミラー
27 第1のダイクロイックミラー
28 第2のダイクロイックミラー
29 ミラー
30 コリメータレンズ
31 コリメータレンズ
32 ミラー
33 穴開きミラーの穴
34 穴開きミラー
35 光学ヘッド
36 ミラー
37 非球面レンズ
38 凹面ミラー
40 ステージ
41 ガラス板
45 蛍光あるいは輝尽光
48 フィルタユニット
50 フォトマルチプライア
51a、51b、51c、51d フィルタ部材
52a、52b、52c、52d フィルタ
53 A/D変換器
54 ラインバッファ
55 送信バッファ
56 データ処理装置
60 基板
61 副走査パルスモータ
62 一対のレール
63 移動可能な基板
64 ロッド
65 主走査パルスモータ
66 エンドレスベルト
67 リニアエンコーダ
68 リニアエンコーダのスリット
70 コントロールユニット
71 キーボード
72 フィルタユニットモータ
75 データ一時記憶部
76 補正データ生成部
77 データ処理部
78 データ記憶部
80 蓄積性蛍光体シート
81 支持体
82 輝尽性蛍光体層領域
83 孔
84 溝
85 ストライプ状の付加的輝尽性蛍光体層領域
90 蓄積性蛍光体シート
91 支持体
92 輝尽性蛍光体層領域
95 付加的輝尽性蛍光体層領域
Claims (28)
- 支持体を備え、前記支持体に、複数の輝尽性蛍光体層領域が互いに離間して、形成され、さらに、前記複数の輝尽性蛍光体層領域から離間して、少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域が形成されたことを特徴とする蓄積性蛍光体シート。
- 前記支持体に、複数の孔が、互いに離間して、形成され、前記輝尽性蛍光体層領域が、前記複数の孔内に、輝尽性蛍光体を充填することによって、形成されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄積性蛍光体シート。
- 前記支持体に、複数の貫通孔が、互いに離間して、形成され、前記複数の輝尽性蛍光体層領域が、前記複数の貫通孔内に、輝尽性蛍光体を充填することによって、形成されていることを特徴とする請求項2に記載の蓄積性蛍光体シート。
- 前記支持体に、複数の凹部が、互いに離間して、形成され、前記複数の輝尽性蛍光体層領域が、前記複数の凹部内に、輝尽性蛍光体を充填することによって、形成されていることを特徴とする請求項2に記載の蓄積性蛍光体シート。
- 前記複数の輝尽性蛍光体層領域が、前記支持体上に、形成されたことを特徴とする請求項1に記載の蓄積性蛍光体シート。
- 前記複数の輝尽性蛍光体層領域が、前記支持体に、ドット状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の蓄積性蛍光体シート。
- 前記支持体に、前記複数の付加的輝尽性蛍光体層領域が、ドット状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の蓄積性蛍光体シート。
- 前記複数の輝尽性蛍光体領域の少なくとも一部の間の前記支持体に、複数の付加的輝尽性蛍光体層領域が、ドット状に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の蓄積性蛍光体シート。
- 前記少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域が、前記支持体に、ストライプ状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の蓄積性蛍光体シート。
- 前記複数の輝尽性蛍光体領域の少なくとも一部の間の前記支持体に、前記少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域が、ストライプ状に形成されていることを特徴とする請求項9に記載の蓄積性蛍光体シート。
- 前記少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域が、その面積が、前記複数の輝尽性蛍光体層領域のそれぞれの面積よりも小さくなるように、前記支持体に形成されていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の蓄積性蛍光体シート。
- 前記支持体が、放射線を減衰させる材料によって形成されたことを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の蓄積性蛍光体シート。
- 前記支持体が、隣り合う輝尽性蛍光体層領域の間の距離に等しい距離だけ、放射線が前記支持体中を透過したときに、放射線のエネルギーを、1/5以下に減衰させる性質を有する材料によって形成されたことを特徴とする請求項12に記載の蓄積性蛍光体シート。
- 前記支持体が、隣り合う輝尽性蛍光体層領域の間の距離に等しい距離だけ、放射線が前記支持体中を透過したときに、放射線のエネルギーを、1/10以下に減衰させる性質を有する材料によって形成されたことを特徴とする請求項13に記載の蓄積性蛍光体シート。
- 前記支持体が、隣り合う輝尽性蛍光体層領域の間の距離に等しい距離だけ、放射線が前記支持体中を透過したときに、放射線のエネルギーを、1/100以下に減衰させる性質を有する材料によって形成されたことを特徴とする請求項14に記載の蓄積性蛍光体シート。
- 前記支持体が、金属材料、セラミック材料およびプラスチック材料よりなる群から選ばれる材料によって形成されたことを特徴とする請求項13ないし15のいずれか1項に記載の蓄積性蛍光体シート。
- 支持体を備え、前記支持体に、複数の輝尽性蛍光体層領域が互いに離間して、形成され、さらに、前記複数の輝尽性蛍光体層領域から離間して、少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域が形成された蓄積性蛍光体シートと、構造または特性が既知の特異的結合物質が滴下され、前記特異的結合物質に、放射性標識物質によって標識された生体由来の物質が選択的に特異的に結合され、選択的に標識されて形成された複数のスポット状領域を有する生化学解析用ユニットとを重ね合わせて、前記複数のスポット状領域に選択的に含まれている前記放射性標識物質によって、前記蓄積性蛍光体シートの前記複数の輝尽性蛍光体層領域を露光した後、前記蓄積性蛍光体シートの前記複数の輝尽性蛍光体層領域および前記少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域に励起光を照射して、前記複数の輝尽性蛍光体層領域および前記少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域に含まれている輝尽性蛍光体を励起し、前記輝尽性蛍光体から放出された輝尽光を光電的に検出し、得られたアナログデータをディジタル化して、ディジタルデータを生成し、前記複数の輝尽性蛍光体層領域に励起光を照射して、輝尽性蛍光体から放出された輝尽光を光電的に検出して、得られたディジタルデータから、前記少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域に励起光を照射して、輝尽性蛍光体から放出された輝尽光を光電的に検出して、得られたディジタルデータを減算して、生化学解析用データを生成することを特徴とする蓄積性蛍光体シートに記録された生化学解析用のデータの読み取り方法。
- 前記支持体に、複数の孔が、互いに離間して、形成され、前記複数の輝尽性蛍光体層領域が、前記複数の孔内に、輝尽性蛍光体を充填することによって、形成されていることを特徴とする請求項17に記載の蓄積性蛍光体シートに記録された生化学解析用のデータの読み取り方法。
- 前記複数の輝尽性蛍光体層領域が、前記支持体の表面上に形成されたことを特徴とする請求項17に記載の蓄積性蛍光体シートに記録された生化学解析用のデータの読み取り方法。
- 前記複数の輝尽性蛍光体層領域が、前記支持体に、ドット状に形成されたことを特徴とする請求項17ないし19のいずれか1項に記載の蓄積性蛍光体シートに記録された生化学解析用のデータの読み取り方法。
- 複数の付加的輝尽性蛍光体層領域が、前記支持体に、ドット状に形成されていることを特徴とする請求項17ないし20のいずれか1項に記載の蓄積性蛍光体シートに記録された生化学解析用のデータの読み取り方法。
- 前記複数の輝尽性蛍光体領域の少なくとも一部の間の前記支持体に、前記複数の付加的輝尽性蛍光体層領域が、ドット状に形成されていることを特徴とする請求項21に記載の蓄積性蛍光体シートに記録された生化学解析用のデータの読み取り方法。
- 前記少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域が、前記支持体に、ストライプ状に形成されていることを特徴とする請求項17ないし20のいずれか1項に記載の蓄積性蛍光体シートに記録された生化学解析用のデータの読み取り方法。
- 前記複数の輝尽性蛍光体領域の少なくとも一部の間の前記支持体に、前記少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域が、ストライプ状に形成されていることを特徴とする請求項23に記載の蓄積性蛍光体シートに記録された生化学解析用のデータの読み取り方法。
- 前記少なくとも1つの付加的輝尽性蛍光体層領域が、その面積が、前記複数の輝尽性蛍光体層領域のそれぞれの面積よりも小さくなるように、前記支持体に形成されていることを特徴とする請求項17ないし24のいずれか1項に記載の蓄積性蛍光体シートに記録された生化学解析用のデータの読み取り方法。
- 前記支持体が、放射線を減衰させる材料によって形成されたことを特徴とする請求項17ないし25のいずれか1項に記載の蓄積性蛍光体シートに記録された生化学解析用のデータの読み取り方法。
- 前記支持体が、隣り合う輝尽性蛍光体層領域の間の距離に等しい距離だけ、放射線が前記支持体中を透過したときに、放射線のエネルギーを、1/5以下に減衰させる性質を有する材料によって形成されたことを特徴とする請求項26に記載の蓄積性蛍光体シートに記録された生化学解析用のデータの読み取り方法。
- 前記支持体が、金属材料、セラミック材料およびプラスチック材料よりなる群から選ばれる材料によって形成されたことを特徴とする請求項27に記載の蓄積性蛍光体シートに記録された生化学解析用のデータの読み取り方法。
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