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JP4148379B2 - パルスレーザの発光タイミング信号制御装置 - Google Patents

パルスレーザの発光タイミング信号制御装置 Download PDF

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JP4148379B2
JP4148379B2 JP36474698A JP36474698A JP4148379B2 JP 4148379 B2 JP4148379 B2 JP 4148379B2 JP 36474698 A JP36474698 A JP 36474698A JP 36474698 A JP36474698 A JP 36474698A JP 4148379 B2 JP4148379 B2 JP 4148379B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、磁気パルス圧縮回路を用いて所定の繰り返し周波数でパルス放電を行うことでレーザ媒質を励起してパルスレーザ発振を行うパルスレーザにおいて、パルスレーザの発光タイミングと半導体露光装置側での制御タイミングとの同期精度を向上させるようにしたパルスレーザの発光タイミング信号制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、半導体装置製造用の縮小投影露光装置(以下、ステッパ装置という)の光源としてエキシマレ―ザの利用が注目されている。これはエキシマレ―ザの波長が短い(KrFの波長は約248.4nm)ことから光露光の限界を0.5μm以下に延ばせる可能性があること、同じ解像度なら従来用いていた水銀ランプのg線やi線に比較して焦点深度が深いこと、レンズの開口数(NA)が小さくて済み、露光領域を大きくできること、大きなパワ―が得られること等の多くの優れた利点が期待できるからである。
【0003】
図37に、エキシマレーザ1とステッパ装置10の制御系の一般的な構成を示す。
【0004】
エキシマレーザ1は、放電電極等が内蔵されるレーザチャンバ2、放電電極間にパルス放電の繰り返し周波数に同期した高周波電圧を印加するパルス電源装置3、レーザチャンバ2から出射されたレーザ光のエネルギーをモニタするエネルギーモニタ4、ステッパ装置10側からのエネルギー指令およびエネルギーモニタ4のモニタ値等に基づいてパルス電源装置3の電源電圧制御,レーザ発振波長制御、レーザガスの供給制御などを実行するレーザコントローラ5などを有している。、
ステッパ装置10は、繰り返しパルス発振のトリガ信号となるパルス発振同期信号TR、レーザ発振の目標エネルギー指令等をエキシマレーザ側に送信するステッパコントローラ11と、ウェハを載置した移動可能なウェハテーブル12などを有しており、エキシマレーザ1から入射されたレーザ光を用いてウェハテーブル12上のウェハを縮小投影露光する。
【0005】
図37のパルス電源装置3としては、 近年、サイラトロン、GTOなどの主スイッチの耐久性の向上のために磁気パルス圧縮回路を使用したものが用いられることが多く、図38に一般的な容量移行型の磁気パルス圧縮放電装置の等価回路を示す。また、図39図38の回路各部における電圧および電流の波形を示す。
【0006】
この図38の放電回路は、可飽和リアクトルから成る3個の磁気スイッチAL0〜AL2の飽和現象を利用した2段の磁気パルス圧縮回路である。
【0007】
まず、1発目のレーザ発振トリガ信号が受信される前にステッパ装置10側からエネルギー指令値が入力されるので、レーザコントローラ5はこのエネルギーを出すのに必要な電源電圧値を計算し、この計算値に基づき高電圧電源HVの電圧V0を調整する。そして、この時点でコンデンサC0に、磁気スイッチAL0、コイルL1を介して高電圧電源HVからの電荷をプリチャージしておく。
【0008】
その後、ステッパ装置10側からの1発目のレーザ発振同期信号(トリガ信号)TRが受信されると、この受信時点で主スイッチSWがオンにされる(図39、時刻t0)。主スイッチSWがオンになった後、コンデンサC0の電圧VC0の時間積(電圧VC0の時間積分値)が磁気スイッチAL0の設定特性で決まる限界値に達すると、この時点t1において磁気スイッチAL0は飽和し、コンデンサC0、磁気スイッチAL0、主スイッチSW、コンデンサC1のループに電流パルスi0が流れる。この電流パルスi0が流れ始めてから0になる(時刻t2)までの時間τ0、即ちコンデンサC0からコンデンサC1に電荷が完全に移行されるまでの電荷転送時間τ0は、主スイッチSWなどによる損失を無視すれば、コンデンサC0、磁気スイッチAL0、コンデンサC1の各容量、インダクタンスによって決まる。
【0009】
この後、コンデンサC1の電圧VC1の時間積が磁気スイッチAL1の設定特性で決まる限界値に達すると、この時点t3において磁気スイッチAL1は飽和し、低インピーダンスとなる。これにより、コンデンサC1、コンデンサC2、磁気スイッチAL1のループに電流パルスi1が流れる。この電流パルスi1は、コンデンサC1、C2および磁気スイッチAL1の容量、インダクタンスによって決定される所定の転送時間τ1を経由した後、時刻t4で0になる。
【0010】
さらにこの後、コンデンサC2の電圧VC2の時間積が磁気スイッチAL2の設定特性で決まる限界値に達すると、この時点t5において磁気スイッチAL2は飽和し、これにより、コンデンサC2、ピーキングコンデンサCP、磁気スイッチAL2のループに電流パルスi2が流れる。
【0011】
その後、ピーキングコンデンサCpの電圧VCpは充電の進展とともに上昇し、この電圧VCpが所定の主放電開始電圧に達すると、この時点t6において主電極6間のレーザガスが絶縁破壊されて主放電が開始される。この主放電によってレーザ媒質が励起され、数nsec後にレーザ光が発生される。
【0012】
この後、主放電によってピーキングコンデンサCpの電圧は急速に低下し、所定時間経過後に充電開始前の状態に戻る。
【0013】
このような放電動作が、トリガ信号TRに同期した主スイッチ5のスイッチング動作によって繰り返し行われることにより、所定の繰り返し周波数(パルス発振周波数)でのパルスレーザ発振が行われる。
【0014】
図38の磁気圧縮回路によれば、磁気スイッチおよびコンデンサで構成される各段の電荷転送回路のインダクタンスが後段にいくにつれ小さくなるように設定されているので、電流パルスi0〜i2のピーク値が順次高くなりかつその通電幅も順次狭くなるようなパルス圧縮動作が行われ、この結果主電極6間に短時間での強い放電が得られることになる。
【0015】
ところで、ステッパ装置10側での露光方式は、近年、ステージを停止させて露光を行う一括露光方式からステージを移動させながら露光を行うステップ&スキャン方式に移行しつつある。このステップ&スキャン方式の利点は、大面積を露光できる点にあり、今後、集積度が増すに従ってチップサイズは大きくなる傾向にあり、ステップ&スキャン方式が主流となっていくであろう。
【0016】
このステップ&スキャン方式では、図40に示すように、ウェハ上のICチップ7に対しシートビームと呼ばれるレーザ光を照射した状態でレーザ光またはウェハを所定のピッチΔPで移動させながら露光処理を行うようにしており、この際、ICチップ7上の全ての点の移動積算露光量(例えば図40ではA点の移動積算露光量はP1+P2+P3+P4)が等しくなるように走査ピッチΔPやシートビームの照射面積を設定することで、ICチップ7上の各点で均一な露光が行われるようにする。
【0017】
このように、ステップ&スキャン方式では、ステージ(またはレーザ光)を移動させながら露光を行う。このため、エキシマレーザ側での各パルスレーザの実際の発光タイミングとステッパ側でのウェハ(またはレーザ光)の移動制御のタイミングが完全に同期していないと、すなわちパルスレーザ光が発光していない期間中にステージの移動が行われないと、レーザ照射中にステージの移動が行われることになり、各位置での露光量に大きなばらつきが発生することになる。
【0018】
このように、ステップ&スキャン方式の露光を行う場合は、実際にレーザの発光が起こるタイミングを正確に把握する必要があり、このため従来においては、ステッパ装置側はレーザ発振同期信号TRを出力してから実際にレーザ発振が行われるまでの時間を経験や実測データ等を用いて予測し、この予測に基づきステッパ装置内の各種制御の同期をとるようにしていた。
【0019】
また、ウェハを載せたステージを停止させてひとつのチップ全体を一括レーザ照射する一括露光方式のステッパにおいても、従来は、レーザ照射位置を露光の終了したICチップ位置から次のICチップへと移動させるタイミングや作業開始のタイミングを前述のレーザ発振同期信号TRを用いて前記と同様にして推定するようにしていた。
【0020】
しかしながら、先の図38に示した磁気圧縮回路において、トリガ信号TRが入力されて主スイッチSWが点呼される時点t0から実際にレーザ光が発生する時点t6までの時間td(以下これを発光遅延時間という)は、電流パルスi0、i1、i2の通電幅τ0、τ1、τ2と各磁気スイッチAL0〜AL2の飽和時間σ0、(τ0+σ1)、(τ1+σ2)によって左右される。
【0021】
通電幅(電荷転送時間)τ0、τ1、τ2は、前述したように、各段の電荷転送回路に含まれるコンデンサや磁気スイッチの容量およびインダクタンスによって決定されるので、これは磁気圧縮回路内の雰囲気温度によって大きく影響を受ける。
【0022】
また、飽和時間のばらつきσ0、σ1、σ2は、各磁気スイッチAL0〜AL2に加わる電圧の時間積によって決定されるので、これらは高電圧電源HVの電圧V0によって大きく影響をうける。
【0023】
ここで、エキシマレーザにおいては、前述したように、電源電圧V0は一定に制御されるのではなく、レーザ出力を一定に制御するための制御パラメータの1つとなっており、レーザ運転中は可変制御されている。すなわち、ハロゲンガスの減少によるレーザ出力の低下を考慮して電源電圧を制御するパワーロック制御、連続パルス発振の最初の数パルスが含まれるスパイク領域が他の領域に比べレーザ出力が大きくなるスパイキング現象を解消するために電源電圧を制御するスパイクキラー制御などの各種の要因を考慮して電源電圧V0は可変制御されている。
【0024】
このように、エキシマレーザにおいては、電源電圧V0は制御パラメータの1つであるので、これを一定にしておくことは不可能であり、このため、上記磁気スイッチの飽和時間のばらつきσ0、σ1、σ2は、上記電源電圧の可変制御によって大きく変化することになる。
【0025】
ところで、上記飽和時間のばらつきσ0、σ1、σ2および電荷転送時間τ0、τ1、τ2のばらつきを実験によって調べたところ次のように結果を得た。
【0026】
電源電圧V0が最大電圧のとき、
σ0≒0
σ1≒0
σ2≒0
電源電圧V0が最小電圧のとき
σ0≒800nsec
σ1≒500nsec
σ2≒200nsec
始動時(低温時)
τ0≒1.65μsec
τ1≒550nsec
τ2≒150nsec
連続運転時(高温時)
τ0≒1.5μsec
τ1≒500nsec
τ2≒130nsec
したがって、上記実験によれば、発光遅延時間tdは、電源電圧V0によって最大1.5μsec変化し、また温度ドリフトによって最大220nsec変化することになる。
【0027】
なお、電源電圧V0が最大電圧のとき、飽和時間σ0、σ1、σ2がほぼ0になっているのは、コンデンサ間の電荷転送時間と磁気スイッチの飽和時間が一致するように、すなわちσ0〜σ2が0になるように、電源電圧V0の最大値を設定し、この最大電圧値を超えない範囲で電源電圧制御を行っているからである。このため、この場合には、コンデンサ間の電荷転送の途中に磁気スイッチが飽和する、すなわちσ1、σ2が負の値をとる事態は発生せず、これにより電流パルスのピーク値が低下し、通電幅が増大することは確実に防止される
【0028】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来技術においては、実際の発光タイミングをレーザ発振同期信号TRに基づきステッパ装置側で予測するようにしていたが、実際の発光タイミングは電源電圧や温度によってばらつくため、予測した発光タイミングが実際の発光タイミングからずれ、レーザの発光タイミングとステッパ側での制御タイミングとの間にうまく同期がとれないという問題があった。
【0029】
一方、ステッパ装置10側から送られてきたパルス発振同期信号TRに対応して常に一定間隔の連続パルス発振をさせたい場合があり、このような要求を満足させる場合にも、依然として、レーザの発光タイミングとステッパ側での制御タイミングとの間にうまく同期がとれないという問題があった。
【0030】
この発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、実際のレーザ発光タイミングより前であってかつ半導体露光装置から送られてくるレーザ発振同期信号よりも実際のレーザ発光タイミングに近い物理量のタイミングをレーザ側で捉え、これに基づく発光タイミング信号を半導体露光装置側へ送出することにより、レーザの発光タイミングと半導体露光装置側での制御タイミングとの同期精度を向上させるパルスレーザの発光タイミング信号制御装置を提供することを目的とする。
【0031】
また、この発明では、電源電圧および環境温度の変化を補償することにより電源電圧および環境温度の変化が発生しても常に各パルスレーザの実発光時点より予め設定された所定時間だけ前の時点で発生される発光タイミング信号を半導体露光装置側へ送信するようにして、レーザの発光タイミングと半導体露光装置側での制御タイミングとの同期精度をさらに向上させるパルスレーザの発光タイミング信号制御装置を提供することを目的とする。
【0032】
さらに、この発明では、パルス発振同期信号が受信されてから実際にレーザが発光されるまでの時間を各パルスに亘って常に一定になるようにして、レーザの発光タイミングと半導体露光装置側での制御タイミングとの同期精度を向上させるパルスレーザの発光タイミング信号制御装置を提供することを目的とする。
【0033】
【課題を解決するための手段および効果】
請求項1の発明に係るパルスレーザの発光タイミング信号制御装置は、充電電源に対し直列に接続された複数の磁気スイッチとそれぞれが前記充電電源に対し並列に接続された複数のコンデンサとによって複数段の電荷転送回路を構成し、この複数段の電荷転送回路によって電流パルスを複数段に圧縮する磁気パルス圧縮回路と、この磁気パルス圧縮回路に前記充電電源を断続するスイッチング動作を行うスイッチング手段と、前記磁気パルス圧縮回路の出力端に接続されたレーザ放電電極と、を有し、半導体露光装置側より受信した所定の繰り返し周波数を有するレーザ発振同期信号をトリガとして前記スイッチング手段をオンすることにより、所定の繰り返し周波数のパルスレーザ発振を実行するパルスレーザにおいて、前記磁気パルス圧縮回路における予め設定された所定の段の電荷転送回路を流れる電流パルスの立上がり時点を検出する電流検出手段と、前記充電電源に対する電圧指令値と前記電流検出手段が検出した時点からパルスレーザの実発光時点までの遅延時間との双曲線近似関係式を用いて、前記電圧指令値に応じた前記遅延時間から予め設定された所定時間を減算した待ち遅延時間を算出し、前記電流検出手段から出力される検出信号を該待ち遅延時間遅延した遅延信号を各パルスレーザ発振の発光タイミング信号として前記半導体露光装置側に出力する出力制御手段と、を具備したことを特徴とする。
【0034】
請求項1の発明では、予め設定された所定の段の電荷転送回路を流れる電流パルスの立上がり時点を検出し、この検出信号を常にパルスレーザの実発光から所定時間前に発光タイミング信号として前記半導体露光装置側へ出力するようにしているので、半導体露光装置側では入力された発光タイミング信号に基づき実際のレーザ発光タイミングを予測し、この予測タイミングに基づいてウェハ移動などの各種制御の同期をとることができるという作用効果を奏する。
【0035】
また、請求項1の発明では、前記電流検出手段によって検出した電流パルスの立上がり時点からレーザの実際の発光時点までの時間間隔の電源電圧の変動によるばらつきを吸収し、当該パルスレーザの実発光時点より予め設定された所定時間だけ前の時点で前記発光タイミング信号が常に発せられるようにタイミング調整を行うようにしたので、レーザの実発光タイミングと半導体露光装置側での制御タイミングとの同期精度をさらに向上させることができるという作用効果を奏する。
【0036】
しかも、請求項1の発明では、双曲線近似式を用いて待ち遅延時間を算出するようにしているので、簡易な構成によって遅延時間を迅速に出力することができるという作用効果を奏する。
【0037】
請求項2の発明に係るパルスレーザの発光タイミング信号制御装置は、充電電源に対し直列に接続された複数の磁気スイッチとそれぞれが前記充電電源に対し並列に接続された複数のコンデンサとによって複数段の電荷転送回路を構成し、この複数段の電荷転送回路によって電流パルスを複数段に圧縮する磁気パルス圧縮回路と、この磁気パルス圧縮回路に前記充電電源を断続するスイッチング動作を行うスイッチング手段と、前記磁気パルス圧縮回路の出力端に接続されたレーザ放電電極と、前記充電電源に対する電圧指令値を出力する制御手段と、を有し、半導体露光装置側より受信した所定の繰り返し周波数を有するパルス発振同期信号をトリガとして前記スイッチング手段をオンすることにより、所定の繰り返し周波数のパルスレーザ発振を実行するパルスレーザにおいて、前記スイッチグ手段がオンされてからレーザ発振が開始されるまでの実発光遅延時間の変動範囲の最大値以上である所定の基準遅延時間が予め設定される基準遅延時間設定手段と、前記設定された基準遅延時間と前記制御手段から出力される電圧指令値に対応する当該パルス発振の前記実発光遅延時間との差を各パルス発振毎に求める遅延時間演算手段と、前記半導体露光装置から受信されるパルス発振同期信号を前記遅延時間演算手段で演算された差時間分だけ遅延して前記スイッチング手段に出力する遅延手段と、前記磁気パルス圧縮回路における予め設定された所定の段の電荷転送回路を流れる電流パルスの立上がり時点を検出する電流検出手段と、前記充電電源に対する電圧指令値と前記電流検出手段が検出した時点からパルスレーザの実発光時点までの遅延時間との双曲線近似関係式を用いて、前記電圧指令値に応じた前記遅延時間から予め設定された所定時間を減算した待ち遅延時間を算出し、前記電流検出手段から出力される検出信号を該待ち遅延時間遅延した遅延信号を各パルスレーザ発振の発光タイミング信号として前記半導体露光装置側に出力する出力制御手段と、を具備したことを特徴とする。
【0038】
請求項2の発明では、スイッチグ手段がオンされてからレーザ発振が開始されるまでの実発光遅延時間の変動範囲の最大値以上である所定の基準遅延時間を予め設定する。この基準遅延時間としては、例えば、電圧指令値の下限値以下の所定の電圧値をもってレーザ発振を行わせたときの前記スイッチグ手段がオンされてからレーザ発振が開始されるまでの時間とする。そして、この基準遅延時間と前記当該パルス発振の実発光遅延時間との差を各パルス発振毎に求め、この差だけ半導体露光装置から受信されるパルス発振同期信号を遅延させてスイッチング手段に出力することで、レーザ発振パルス同期信号が受信された時点からレーザが実際に発光するまでの時間を前記設定された基準遅延時間に各パルスに亘って常に一致させるようにしているので、レーザ発振パルス同期信号が受信された時点からレーザが実際に発光するまでの時間が各パルスに亘って常に一定になるので、半導体装置側では、特に難しい予測制御などを行うことなく、レーザの発光タイミングと半導体露光装置側での制御タイミングとを完全に同期させることができる作用効果を奏する。
【0039】
また、請求項2の発明では、予め設定された所定の段の電荷転送回路を流れる電流パルスの立上がり時点を検出し、この検出信号を常にパルスレーザの実発光から所定時間前に発光タイミング信号として前記半導体露光装置側へ出力するようにしているので、半導体露光装置側では入力された発光タイミング信号に基づき実際のレーザ発光タイミングを予測し、この予測タイミングに基づいてウェハ移動などの各種制御の同期をとることができるという作用効果を奏する。
【0040】
また、請求項2の発明では、前記電流検出手段によって検出した電流パルスの立上がり時点からレーザの実際の発光時点までの時間間隔の電源電圧の変動によるばらつきを吸収し、当該パルスレーザの実発光時点より予め設定された所定時間だけ前の時点で前記発光タイミング信号が常に発せられるようにタイミング調整を行うようにしたので、レーザの実発光タイミングと半導体露光装置側での制御タイミングとの同期精度をさらに向上させることができるという作用効果を奏する。
【0041】
しかも、請求項1の発明では、双曲線近似式を用いて待ち遅延時間を算出するようにしているので、簡易な構成によって遅延時間を迅速に出力することができるという作用効果を奏する。
【0042】
請求項3の発明に係るパルスレーザの発光タイミング信号制御装置は、請求項2の発明において、前記出力制御手段は、前記遅延時間演算手段が求めた差を前記待ち遅延時間の最大値に正規化し、この差とこの正規化した待ち遅延時間との双曲線近似関係を用いて前記待ち遅延時間を計測するカウンタを具備したことを特徴とする。
【0043】
請求項3の発明では、既に遅延時間演算手段が求めた差を用いて待ち遅延時間を計測するようにしているので、簡易な構成によって請求項2の発明と同様な作用効果を奏する
また、請求項3の発明では、カウンタによってまち遅延時間を計測するようにしているので、迅速に待ち遅延時間を計測出力することができ、これによって検出信号を得てから実発光までの非常に短い時間であっても確実に計測できるという作用効果を奏する。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1にこの発明の第1の実施形態を示す。この第1の実施形態においては、先の図38に示したものと同様の2段の磁気パルス圧縮回路を用いており、各部での電圧VC0,VC1,VC2,VCpおよび電流パルス波形i0,i1,i2も図39に示したものと同様である。
【0045】
すなわち、この実施例回路では、高電圧電源1、主スイッチSW、3個の磁気スイッチAL0〜AL2、コイルL1、4個のコンデンサC0,C1,C2,Cp、および放電電極6を有しており、コンデンサC0から磁気スイッチAL0、主スイッチSWを介してコンデンサC1に至る電流ループi0を形成する第1段の電荷転送回路、コンデンサC1から磁気スイッチAL1を介してコンデンサC2に至る電流ループi1を形成する第2段の電荷転送回路、コンデンサC2から磁気スイッチAL2を介してピーキングコンデンサCpに至る電流ループi2を形成する第3段の電荷転送回路が形成されている。
【0046】
磁気スイッチAL0〜AL2の飽和時および非飽和時のインダクタンスは順に小さくなるように設定され、また各段のコンデンサ容量は等しくなるように設定されているため、先の図39に示したように、各段の電荷転送回路を流れる電流パルスの波高値が順次増幅され、そのパルス幅が順次圧縮されることになる。
【0047】
なお、この図1の放電回路においても、コンデンサ間の電荷転送時間と磁気スイッチの飽和時間が一致する、即ちσ1〜σ2が0になる電源電圧を最大電源電圧V0とし、この最大電圧値V0を超えない範囲で電源電圧制御を行っている。
【0048】
ここで、この図1の実施形態においては、最終段の1つ前の段の電荷転送回路、即ち第2段の電荷転送回路を流れる電流パルスi1の立上がり時点t3(図39参照)を検出する電流パルス検出センサ20を設け、この電流パルス検出センサ20の検出信号Saを信号出力部21を介して発光タイミング信号Htとしてステッパ装置10に送信するようにしている。
【0049】
図2は、エキシマレーザ1とステッパ装置10の制御系の構成を示すものであり、先の図37に示した構成に対し、パルス電源装置3からステッパ装置10に出力される発光タイミング信号Htが追加されている。
【0050】
この発光タイミング信号は図39に示すようにt3時点で発生される。したがって、発光タイミング信号が発生されてからレーザが発光するまでの遅延時間のばらつきは、従来技術の箇所で述べた実験結果によれば、
電源電圧V0が最大電圧のとき、
σ2≒0
電源電圧V0が最小電圧のとき
σ2≒200nsec
始動時(低温時)
τ1≒550nsec
τ2≒150nsec
連続運転時(高温時)
τ1≒500nsec
τ2≒130nsec
となる。
【0051】
発光タイミング信号が発生される時点t3からレーザが発光する時点t6までの期間を発光遅延時間td´とすると、このtd´は電源電圧によって最大200nsec変化し、また温度ドリフトによって最大70nsec変化することになる。
【0052】
したがって、電流パルス検出センサ20によって電流パルスi1の立上がりを検出し、この検出信号Saを発光タイミング信号Htとしてステッパ装置10側に出力するようにすれば、この発光タイミング信号Htが出力されてから実際にレーザが発光するまでの発光遅延時間td´のばらつき(電圧で200nsec、温度で70nsec)は、従来方式における発光遅延時間tdのばらつき(電圧で1.5μsec、温度で220nsec)に比べ、大幅に小さくなる。
【0053】
したがって、半導体露光装置側では実際のレーザ発光タイミングを知るのに、このレーザ側から送られてきた発光タイミング信号Htを基準にするようにすれば、従来に比べ、より正確に発光タイミングを知ることができ、レーザの発光タイミングとステッパ装置側での制御タイミングとの同期精度を向上させることができる。
【0054】
つぎに、図3〜図7に電流パルス検出センサ20の具体例を示す。
【0055】
図3においては、磁気スイッチAL1に直列にインダクタンス手段としての磁心(またはコイル)22を接続するようにしている。図3(b)に示すように、電流パルスi1の電流変化による自己誘導により磁心22には誘導電圧vsが発生するので、この誘導電圧vsを検出することで、電流パルスi1の立上がり時点t3を検出することができる。
【0056】
図4においては、磁気スイッチAL1の2次巻線23に誘導される誘導起電圧vs(図4(b)参照)を検出し、この電圧検出に基づいて電流パルスi1の立上がり時点t3を検出するようにしている。
【0057】
図5においては、磁気スイッチAL1に直列に1次コイル24を接続し、この1次コイル24を流れる電流パルスi0の電流変化によって発生する2次コイル25の誘導電圧vs(図5(b)参照)を検出し、この電圧検出に基づいて電流パルスi1の立上がり時点t3を検出するようにしている。
【0058】
図6においては、磁気スイッチAL1のリセット回路26(磁気スイッチのB−H特性を所定の初期状態にする回路)中に空心コイル27を接続し、この空心コイル27の誘導電圧vsを検出し、この電圧検出に基づいて電流パルスi1の立上がり時点t3を検出するようにしている。
【0059】
図7においては、コンデンサC1と並列に抵抗r1、r2を接続し、その分圧vs(図7(b)参照)を検出することに基づいて電流パルスi1の立上がり時点t3を検出するようにしている。
【0060】
図8にこの発明の第2の実施形態を示す。この第2の実施形態においては、前記と同様の2段の磁気パルス圧縮回路を用いており、各部での電圧VC0,VC1,VC2,VCpおよび電流パルス波形i0,i1,i2も図14に示したものと同様である。
【0061】
先の第1の実施形態においては、電流パルスi0の立上がり時点t3を検出し、この検出信号を発光タイミング信号とするようにしたので、この発光タイミング信号には、時点t3から発光時点t6までの期間td´における電源電圧および温度によるばらつきによる誤差分が含まれている。
【0062】
そこで、この実施形態では、この発光遅延時間td´中の電源電圧および温度によるばらつき分を吸収し、発光タイミング信号が常に実発光時点から一定の時間だけ前の時点に発せられるように、電流パルス検出センサ20の検出信号Saをタイミング調整した後、ステッパ装置10側に出力するようにしている。
【0063】
例えば、ステッパ装置側に対する発光タイミング信号Htの送出時点は、発光遅延時間td´が最も短くなる状態のときの、電流パルス検出センサ20の検出時点t3とする。発光遅延時間td´の最小値が例えば500nsecであるとすると、常に実際にレーザ発光が行われる時点t6から常に500nsec前に発光タイミング信号Htが送出されるように、電流パルス検出センサ20の検出信号をタイミング調整するのである。
【0064】
したがって、電流パルス検出センサ20の検出信号が出力された時点が発光前の550nsecであると判断された場合は、この検出信号を50nsecだけ遅延させてから発光タイミング信号としてステッパ装置10側に送信する。
【0065】
図8の実施形態では、このような制御を行うようにしており、以下その構成及び作用について説明する。
【0066】
電流パルス検出センサ20は、先の第1の実施形態と同様、電流パルスi1の立上がり時点t3を検出する。この電流パルス検出センサ20の検出信号Saは電圧補償部40および温度補償部50に入力されている。
【0067】
電流パルス検出センサ30は、第1段目の電荷転送回路を流れる電流パルスi0の立上がり時点t1を検出する。その具体的な構成は図3〜図7に示した電流パルスセンサと同様である。電流パルス検出センサ30の検出信号Sbは温度補償部50に入力されている。
【0068】
なお、上記電流パルス検出センサ20、30の出力Sa,Sbをそのまま通常の電気ケーブルを介して電圧補償部40および温度補償部50に入力するようにした場合、磁気パルス圧縮回路から発生される高速、高電圧パルスと電磁結合して前記検出出力Sa,Sbに多大なノイズが混入し、その後の信号処理が非常に困難になる。そこで、この場合は、上記電流パルス検出センサ20、30の出力Sa,Sbを発光ダイオードなどを用いて光信号に変換し、該変換した光信号を光ファイバを介して電圧補償部40及び温度補償部50に入力するようにしている。
【0069】
電圧補償部40は、電源電圧の変動による発光遅延時間td´のばらつきを補償するものであり、この場合は電源電圧変動による磁気スイッチAL2の飽和時間(τ1+σ2)のばらつきσ2を補償する。
【0070】
図9は、電圧補償部40の一例を示すもので、遅延時間変換部41および遅延部42で構成されている。遅延時間変換部41は、電源電圧指令値を電圧補償用の遅延時間Tdyに変換するもので、例えば、最小電圧から最大電圧までの範囲内での各種電源電圧値と、電圧補償用の遅延時間Tdyとの関係が設定記憶されたメモリテーブルで構成されている。
【0071】
前述したように、ステッパ装置側に対する発光タイミング信号Htの送出時点を発光遅延時間td´が最も短くなる状態のときの、電流パルス検出センサ20の検出時点t3とするようにした場合は、各種電源電圧に応じた磁気スイッチAL2の飽和時間ばらつきσ2を計測または計算によって求め、このσ2と電源電圧との対応関係をそのままメモリテーブルに記憶するようにすればよい。
【0072】
遅延部42では、図10にその入出力のタイムチャートを示すように、遅延時間変換部41から出力される遅延時間Tdy分だけ電流パルス検出センサ20の検出信号Saを遅延することにより、発光タイミング信号Htの電源電圧補償を実行する。
【0073】
ここで、さらに遅延時間変換部41の詳細構成について説明する。
【0077】
図11は、遅延時間変換部41の詳細構成の具体例を示し、この場合は、電源電圧V0に対応する遅延時間Tdyを実際に双曲線近似演算を行うことで求めるようにしている。すなわち、遅延時間変換部41は、Tdy演算部41cを有し、このTdy演算部41cが、入力された電圧指令値V0に対応する遅延時間Tdyを双曲線近似演算を行って出力するようにしている。
【0078】
図12は、Tdy演算部41cによる演算内容を説明する図である。まず、外部トリガ信号TRから実発光開始の時点t6までの実発光遅延時間td(図39参照)は、
td=(a/V0)+b …(1)
なる双曲線近似を行うことができる(図12参照)。
【0079】
一方、外部トリガ信号TRから時点t3(電流パルス検出センサ20の出力Sa)までの期間は(td−td’)も、次式(2)に示す双曲線近似を行うことができる。すなわち、
td−td’=(c/V0)+d …(2)
である。ここで、a〜dは、定数である。従って、遅延時間td’は、
td’=td−(td−td’)
=(a−c)/V0+(b−d) …(3)
となり、遅延時間td’も双曲線近似することができる。但し、この遅延時間td’は、雰囲気温度等の環境が同じであるとした前提のもとに得られるもので、電圧補償部40によって電圧補償される部分のみの遅延時間Tdyに相当する。従って、遅延時間Tdyは、電圧指令値V0に対応して、直ちに双曲線近似演算によって出力することができることになる。
【0080】
なお、上記式におけるパラメータa〜dは、2つの異なる電源電圧V01、V02を用いてレーザ発振を行わせた際の、実発光遅延時間をtd1、td2、および(td1−td1’)、(td2−td2’)を計測し、これらの計測値と電源電圧V01、V02を用いて、予め計算しておく。
【0081】
図13は、上記双曲線近似式(1)〜(3)のパラメータa〜dを自動生成するための構成を示すものである。
【0082】
発光タイミング検出部62は、出射されたレーザ光の一部を適宜サンプリングすることで、実際のレーザ光の発光時点を示す発光タイミング信号(t6)を出力する。計測部63は、パルス発振同期信号TRと、発光タイミング信号とに基づいて、パルス発振同期信号TRが主スイッチSWに印加された時点からレーザが実際に発光するまでの実発光遅延時間tdを計測し、さらに、パルス発振同期信号TRと、出力信号Saとに基づいて、パルス発振同期信号TRが主スイッチSWに印加された時点から出力Saが得られる時点までの遅延時間(td−td’)を計測し、記憶部64に出力する。
【0083】
記憶部64は、計測部63で計測された各種計測値td1、td2、td3、…,(td1−td1’)、(td2−td2’)、(td3−td3’)、…をそのときの電源電圧指令値V0(V01、V02、V03、…)に対応付けて記憶する。計算部65は、記憶部64に記憶された複数組のtd値,(td−td’)値およびV0値を用いてパラメータa〜dを複数回計算し、それらの平均値を求めることで最終的なパラメータ値a〜dを求める。そして、このようにして求めたパラメータ値a〜dをTdy演算部41cに設定させ、上記双曲線近似式のパラメータa〜dを定期的に更新するようにする。
【0084】
このようにして、双曲線近似式を用いて直接に演算出力することによっても、遅延時間Tdyを出力することができる。
【0085】
ここで、温度補償を行わない場合で、発光前の一定時間前に発光タイミング信号Htを送出する場合には、図14に示すように、さらに、一定時間tconstを減算した遅延時間twaitを出力するようにすればよい。
【0086】
すなわち、
twait=td’−tconst
=(a−c)/V0+(b−d−tconst) …(5)
であり、この遅延時間twaitも、双曲線近似式となり、上述したように、双曲線近似演算を行うことによって、一定時間tconst前に発光タイミング信号Htをステッパ装置10側に送出することができる。
【0087】
このようにして、図8の電圧補償部40からは電源電圧に起因する発光タイミングの変動が補償されたタイミング信号Sa´が出力される。
【0088】
次に、図8の温度補償部50は、磁気パルス回路内の温度の変動による発光遅延時間td´のばらつきを補償する。すなわち、この場合は、電流パルスi1が流れる第2段の電荷転送回路の電荷転送時間τ1および電流パルスi2が流れる第3段の電荷転送回路の電荷転送時間τ2の温度ばらつきを補償する。
【0089】
図15は、温度補償部50の内部構成の一例を示すもので、この場合は、温度を実際に検出することなく温度補償を行うようにしている。
【0090】
時間差カウンタ51では、電流パルス検出センサ20の検出信号Saと電流パルス検出センサ30の検出信号Sbの時間差をカウントすることで、電流パルスi0の立上がり時点t1から電流パルスi1の立上がり時点t3までの経過時間(τ0+σ1)を求め、この時間差データをτ0算出部52に出力する(図16(a)〜(c)参照)。
【0091】
τ0算出部52では、電圧指令値によって電流パルスi0の立下がり時点t2から電流パルスi1の立上がり時点t3までの経過時間σ1を推定し、時間差カウンタ51から入力され時間差データ(τ0+σ1)から前記推定した時間データσ1を減算することにより、電流パルスi0のパルス幅τ0を求める。したがって、τ0算出部52内には、例えば電源電圧とσ1との対応関係が記憶されたメモリテーブルを有している。
【0092】
遅延時間算出部53は、τ0に関して磁気パルス圧縮回路の雰囲気温度の変化に対応してとり得る各種値と、発光タイミング信号Htを実発光時点から一定の時間だけ前の時点に常に発生させるための温度補償用の遅延時間Tdy´との対応関係が記憶されたメモリテーブルを有している。上記遅延時間Tdy´には、温度の変動に応じたτ1、τ2の変動分が考慮されており、該遅延時間Tdy´をτ0値と対応付けられるように設定している。すなわち、τ0が決まれば、τ1、τ2との各値は予測できるので、これらτ1およびτ2を用いれば、実際の発光時点t6が電流パルスi1の立上がり時点t3から何nsec後であるか(この場合は、温度補償だけであるのでσ2=0とする)を予測することができる。そして、この予測した実発光時点までの時間τ1+τ2に基づき、発光タイミング信号Htを常に実発光時点から一定の時間だけ前の時点に発生させるためには、電流パルス検出センサ20の検出信号Saをどのくらい遅延させればよいかを計算することで、上記遅延時間Tdy´を求めることができる。
【0093】
遅延時間算出部53では、メモリテーブルからτ0 算出部52から出力されるτ0値に対応する遅延時間Tdy´値を選択し、該選択した遅延時間Tdy´値を遅延部54に出力する。
【0094】
遅延部54では、図16(d)にそのタイムチャートを示すように、遅延時間算出部53から出力される遅延時間Tdy´分だけ電流パルス検出センサ20の検出信号Sa(この場合は電圧補償部40の出力信号Sa´)を遅延することにより、発光タイミング信号Htの温度補償を実行する。
【0095】
このようにして、図8の温度補償部50からは雰囲気温度の変動分が補償された発光タイミング信号Htが出力される。
【0096】
もちろん、図17に示すように、電流パルス検出センサ20および30とから等価的に求められる環境パラメータの一つとしての温度データを温度センサ70から取得するようにしてもよい。この温度センサ70は、例えば、可飽和リアクトルAL0〜AL2等で用いる絶縁油の温度を検出する。その他、パルスレーザ側における環境を検出するようにして補償するようにしてもよいのは、言うまでもない。
【0097】
このようにこの第2の実施形態では、電源電圧および環境温度の変化を補償することにより電源電圧および環境温度の変化が発生しても常に各パルスレーザの実発光時点より予め設定された所定時間だけ前の時点で発生される発光タイミング信号Htを半導体露光装置側へ送信するようにしているので、レーザの発光タイミングと半導体露光装置側での制御タイミングとの同期精度をさらに向上させることができる。
【0098】
なお、上記実施形態においては、2段の磁気パルス圧縮回路に本発明を適用するようにしたが、3段以上磁気パルス圧縮回路に本発明を適用するようにしてもよい。また、本発明では、前記磁気パルス圧縮回路の最終段の1つ前の段の電荷転送回路を流れる電流パルスの立上がり時点を検出するようにしたが、レーザ同期トリガ信号TRより後の磁気パルス圧縮途中のタイミングを検出できるものであれば、電流パルスの立上がり時点を検出する電荷転送回路の段数は任意に設定するようにすればよい。
【0099】
また、上記実施形態では、コンデンサ間の電荷転送時間と磁気スイッチの飽和時間が一致するように、すなわちσ0〜σ2が0になるように、電源電圧V0の最大値を設定し、この最大電圧値を超えない範囲で電源電圧制御を行うようにしているが、このような電源電圧制御を行わない装置に対しても本発明を適用することができる。
【0100】
また、上記実施形態では、温度補償および電圧補償はレーザ側で行うようにしたが、これら補償のために必要なデータを発光タイミング信号とともにレーザ側からステッパ側に送信し、温度補償および電圧補償をステッパ側で行わせるようにしてもよい。また、上記実施例では、発光タイミング信号が常に実発光時点から所定時間前に発せられるようにレーザ側で温度補償および電圧補償を行うようにしたが、電流パルス検出センサ20の検出信号を発光タイミング信号としてステッパ側に送出するとともに、この発光タイミング信号から何nsec後に実発光が発生することを示す数値データをステッパ側に送出するようにしてもよい。
【0101】
さらに、上記実施形態では、レーザ装置をステップスキャン方式の露光制御を行う半導体露光装置に接続し、レーザ装置から発生された発光タイミング信号をステップスキャン方式の半導体露光装置に入力するようにしたが、レーザ装置が一括露光方式の半導体露光装置に接続されるような場合であっても上記発光タイミング信号を一括照射方式の半導体露光装置に入力するようにしてもよい。一括露光方式においては、ウェハが載置されたステージを停止させてひとつのICチップ全体を一括レーザ照射して露光を行うが、レーザ照射位置を露光の終了したICチップ位置から次のICチップへと移動させる際にはステージの移動制御を行わなくてはならない。そこで、一括照射方式の半導体露光装置においても、レーザ装置側から送られてくる上記発光タイミング信号を利用して、ステージ移動開始のタイミングや作業開始のタイミングを決定するようにすれば、レーザの発光タイミングと半導体露光装置側での制御タイミングとの同期精度を向上させることが可能になる。
【0102】
また、上記実施形態では、電圧指令値の値および雰囲気温度による電圧補償および温度補償を行うようにしているが、これに限らず、遅延時間に影響を及ぼす他の要因がある場合には、その要因による影響を考慮した補償を行うようにすればよい。例えば、温度は磁気パルス圧縮回路における可飽和リアクトルの絶縁油の温度変化や磁気パルス圧縮回路の近傍の雰囲気温度の双方を取得してその影響を補償するようにしてもよい。またレーザ発振機構自体から生ずる影響を加味して補償するようにしてもよい。
【0103】
次に、第3の実施形態について説明する。
【0104】
図19は、この発明の第3の実施形態に関し、エキシマレーザ1とステッパ装置10の制御系の構成を示すものであり、先の図2に示した構成との違いは、レーザコントローラ5が、ステッパ装置10側から受信したパルス発振同期信号TRを電源電圧指令V0に応じて遅延し(詳細は後述する)、その遅延信号TRLをパルス電源回路3に入力するようにしている点である。
【0105】
図18にパルス電源回路3およびレーザコントローラ5の内部構成例を示す。
【0106】
パルス電源回路3は、先の図38に示したものと同様の2段の磁気パルス圧縮回路を用いている。
【0107】
レーザコントローラ5の電圧指令演算部80は、エネルギーモニタ4から入力されたエネルギーモニタ値Eaをフィードバック信号として、ステッパ装置10側から入力されたエネルギー指令値Eどおりのエネルギーを出すのに必要な電圧指令値V0を計算し、この計算値V0を高電圧電源HVおよび遅延時間演算部82に出力する。
【0108】
この場合、電圧指令値V0の調整範囲は、Vmin≦V0≦Vmaxであるとする。
【0109】
なお、この場合、コンデンサC0〜C2、Cp間の電荷転送時間と磁気スイッチAL0〜AL2の飽和時間が一致するように、すなわち図39のσ0〜σ2が0になるように電源電圧V0の最大値Vmaxを設定し、この最大電圧値Vmaxを超えない範囲で電源電圧制御を行うようにしている。このため、コンデンサ間の電荷転送の途中に磁気スイッチが飽和する、すなわちσ1、σ2が負の値をとるような事態は発生せず、これにより電流パルスのピーク値が低下し、通電幅が増大することは確実に防止される。
【0110】
基準遅延時間設定部81、遅延時間演算部82および遅延部83による構成は、レーザ発振パルス同期信号TRがエキシマレーザ1側で受信された時点からレーザが実際に発光するまでの時間を各パルスに亘って常に一致させるためのものである。
【0111】
基準遅延時間設定部81には、主スイッチSWがオンされてからレーザ発振が実際に開始されるまでの発光遅延時間の変動範囲の最大値以上である所定の基準遅延時間Tdsが予め設定される。例えば、電圧指令値V0の調整範囲Vmin≦V0≦Vmaxにおける最低電圧Vminに等しいかあるいはそれより小さな所定の電圧値Vs(≦Vmin)を決定し、この電圧Vsでレーザ発振を行わせた際の主スイッチSWがオンされてからレーザ発振が実際に開始されるまでの発振遅延時間を基準遅延時間Tdsとして設定する。基準遅延時間設定部21の設定基準時間Tdsは遅延時間演算部82に入力される。
【0112】
遅延時間演算部82は、入力された電圧指令値V0に基づいて、当該電圧指令値V0でレーザ発振を行ったときの実発光遅延時間tdを予測演算するとともに、前記基準遅延時間Tdsと実発光遅延時間tdとの差を求め、この求めた差を遅延時間τ(=Tds−td)として遅延部83に出力する。すなわち、電圧指令値演算部80から出力される電圧指令V0は、基準遅延時間Tdsを求めるために使われた電源電圧Vsよりも常に大きい値であるので(V0≧Vs)、遅延時間演算部82で予測演算される実発光遅延時間tdは常に基準遅延時間Tdsよりも小さな値となり、その差が遅延時間τとして演算されるのである。すなわち、電源電圧V0が大きいほど、各磁気スイッチAL0〜AL2の飽和時間が短縮されるので、これに伴って実発光遅延時間tdも短くなる。
【0113】
遅延部83は、受信したパルス発振同期信号TRを遅延時間演算部82から入力された遅延時間τだけ遅延し、この遅延した信号TRLを主スイッチSWに出力する。
【0114】
この結果、各パルス発振の際、パルス発振同期信号TRが遅延部83で受信された時点から実際にレーザ発光が発生するまでの時間は、実発光遅延時間td+遅延時間τ(=基準遅延時間Tds)となり、一定値である基準遅延時間Tdsに常に一致することになる。
【0115】
図20(a)は電源電圧V0を前記基準遅延時間Tds設定用の電圧Vsとしてレーザ発振させた際の図18の磁気パルス圧縮回路の各部での電圧波形を示すもので、また図20(d)は電源電圧V0を前記電圧Vsより大きな所定の電圧Vaでレーザ発振させた際の磁気パルス圧縮回路の各部での電圧波形を示すものであり、これらの時間軸は共通としている。
【0116】
これらの電圧波形の比較から明らかなように、初期充電電圧(指令電圧)V0が大きくなると、電圧時間積の部分(S0、S1、S2)が時間軸方向に縮まり、各磁気スイッチAL0〜AL1の各飽和時間が短くなる。
【0117】
したがって、図20(a)に示すように、初期充電電圧V0が小さいVsの場合は、パルス発振同期信号TRが主スイッチSWに印加されてから実際にレーザが発光するまでに基準遅延時間Tdsを要しているが、図20(b)に示すように、初期充電電圧V0が大きいVaの場合は、パルス発振同期信号TRが主スイッチSWに印加されてから実際にレーザが発光するまでに時間td(<Tds)しか要してはいない。
【0118】
図18の遅延時間演算部82では、この実発光遅延時間tdを予測演算し、基準遅延時間Tdsからこの演算した実発光遅延時間tdを差し引き、その差(Tds−td)を遅延時間τとして遅延部83に出力する。遅延部83では、受信したパルス発振同期信号TRをこの遅延時間τ分だけ遅延した信号TRLを形成し、この遅延信号TRLを主スイッチSWに出力することで、図20に示すように、パルス発振同期信号TRがレーザコントローラ5で(遅延部83に)受信された時点から実際にレーザ発光が発生するまでの時間を、基準遅延時間Tdsに常に一致させる。
【0120】
したがって、実際にレーザ発振を行う際には、各パルス発振の毎に、読出し部91で、当該電源電圧V0に対応する遅延時間τを読み出し、これを遅延部83に出力することで、パルス発振同期信号TRを遅延時間τだけ遅延させる。なお、読出し部91は、メモリテーブル90にない電源電圧値V0が入力された場合は、この電源電圧V0に近い2つの電源電圧V01、V02(V01<V0<V02)に対応する遅延時間τ1、τ2をメモリテーブル90から読み出し、これら用いて直線補間を行うことで、V0に対応する遅延時間τを求めるようにする。
【0121】
図21は、遅延時間演算部82の具体例を示すもので、この場合は、電源電圧V0に対応する遅延時間τを実際に双曲線近似演算を行うことで求めるようにしている。
【0122】
td演算部100は当該電源電圧指令に対応する実発光遅延時間tdを予測演算するもので、上述した双曲線近似式(1)に対応するプログラムまたは回路が設定されている。すなわち、
td=(a/V0)+b …(1)
である。
【0123】
なお、上記式におけるパラメータa,bは、2つの異なる電源電圧V01、V02を用いてレーザ発振を行わせた際の、実発光遅延時間をtd1、td2を計測し、これらの計測値と電源電圧V01、V02を用いて、予め計算しておく。
【0124】
td演算部100は、上記(1)式に基づいて、入力された電源電圧指令V0に対応する実発光遅延時間tdを各パルス発振毎に計算し、この計算値tdをτ演算部101に出力する。τ演算部101では、設定されている基準遅延時間Tdsから入力された実発光遅延時間tdを減算し、この減算結果τ(=Tds−td)を遅延部83に出力する。
【0125】
図22は、上記双曲線近似式(1)のパラメータa,bを自動生成するための構成を示すものである。
【0126】
発光タイミング検出部102は、出射されたレーザ光の一部を適宜サンプリングすることで、実際のレーザ光の発光時点を示す発光タイミング信号を出力する。td計測部103は、図23に示すように、パルス発振同期同期信号TRと、発光タイミング信号とに基づいて、パルス発振同期信号TRが主スイッチSWに印加された時点からレーザが実際に発光するまでの実発光遅延時間tdを計測し、それらの計測値をV0−td記憶部104に出力する。
【0127】
V0−td記憶部104は、td計測部103で計測された各種計測値td1、td2、td3、…をそのときの電源電圧指令値V0(V01、V02、V03、…)に対応付けて記憶する。ab計算部105は、V0−td記憶部104に記憶された複数組のtd値およびV0値を用いてパラメータa、bを複数回計算し、それらの平均値を求めることで最終的なパラメータ値a,bを求める。そして、このようにして求めたパラメータ値a,bを図21に示したtd演算部100に入力することで、上記双曲線近似式(1)のパラメータa,bを定期的に更新するようにする。
【0128】
図24は、この発明の第4の実施形態を示すもので、この場合は電源電圧V0の他に、磁気圧縮回路の雰囲気温度による実発光遅延時間tdのばらつきを考慮して前述した遅延時間τ´を決定し、この決定した遅延時間τ´だけパルス発振同期信号TRを遅延させるようにしている。
【0129】
すなわち、発光遅延時間は、磁気スイッチAL0〜AL2の飽和時間のみならず電流パルスi0、i1、i2の通電幅δ0、δ1、δ2(図39参照)によっても左右されるが、通電幅(電荷転送時間)δ0、δ1、δ2は、各段の電荷転送回路に含まれるコンデンサや磁気スイッチの容量およびインダクタンスによって決定されるので、これは磁気圧縮回路内の雰囲気温度によって影響を受ける。
【0130】
図24の基準遅延時間設定部81に設定記憶される基準遅延時間Tdsは、この場合、温度が所定の基準温度u0であってかつ前述したように電源電圧V0が最低電圧Vmin以下の所定の電圧値Vsであるときの値が設定されている。遅延時間演算部81は、前述したように、入力された電圧指令値V0に基づいて当該電圧指令値V0でレーザ発振を行ったときの実発光遅延時間tdを演算し、この演算値tdと前記基準遅延時間Tdsとの差を求め、この求めた差を遅延時間τ(=Tds−td)として温度補償部111に出力する。
【0131】
温度センサ110は、磁気圧縮回路の雰囲気温度uを検出するもので、その検出温度uを温度補償部111に出力する。
【0132】
温度補償部111は、複数の雰囲気温度uと、これら雰囲気温度uに対応する遅延時間ε(この遅延時間εは温度変化のみを考慮したもの)との対応関係を記憶するメモリテーブルを有している。すなわち、電源電圧V0を前記基準遅延時間Tds設定用の電圧Vsとした状態で、温度uを各種変化させて実発光遅延時間tdを実測し、これらの実測値tdと、電源電圧V0を前記電圧Vsとした状態でかつ温度が所定の基準温度u0であるときの基準遅延時間Tdsとの差ε(=Tds−td)をそれぞれ求め、これらの差εを雰囲気温度uに対応付けて記憶するようにしている。
【0133】
そして、温度制御部111は、温度センサの検出値uに対応する遅延時間εを前記メモリテーブルから読み出し、遅延時間演算部21から入力された電源電圧のみを考慮した遅延時間τに対し、温度を考慮した遅延時間εを加え、この加算結果 τ´(=τ+ε)を最終的な遅延時間τ´として遅延部83に出力する。
【0134】
遅延部83では、パルス発振同期信号TRを遅延時間τ´分だけ遅延して主スイッチSWに印加するようにしている。したがって、この実施形態では、電源電圧および雰囲気温度の変化が補償されることになり、パルス発振同期信号TRがエキシマレーザ側で受信された時点(またはパルス発振同期信号がステッパ装置10で送信された時点)から実際にレーザ発光が起こるまでの時間間隔を各パルスに亘って常に一定にすることができる。
【0135】
次に第5の実施形態について説明する。
【0136】
第5の実施形態では、第3および第4の実施形態で示したように、レーザコントローラ5がステッパ装置10側からパルス発振同期信号TRを受信した後に基準遅延時間Tds後にレーザ発光するように制御するとともに、第1および第2の実施形態で示したように一定時間tconst前にレーザ発光することをステッパ装置10側に通知する発光タイミング信号Htをステッパ装置10側に送出するようにしたものである。
【0137】
図25は、この発明の第5の実施形態であるパルス電源回路3およびレーザコントローラ5の内部構成を示す。図25において、このパルス電源回路3およびレーザコントローラ5では、第1の実施形態に示した電流パルス検出センサ20と同一の電流パルス検出センサ85を設け、電流パルス検出センサ85は磁気スイッチAL1がオンになる電流パルスi1の立ち上がり時点t3を検出し、検出信号Saを出力する。
【0138】
また、遅延部83には、さらに信号遅延部84が設けられ、信号遅延部84は、遅延時間演算部82が演算した遅延時間τをもとに、実発光の一定時間tconst前に発光タイミング信号Htがステッパ装置10側に送出するように、検出信号Saを遅延させた発光タイミング信号Htをステッパ装置10側に出力する。
【0139】
図26は、信号遅延部84の詳細構成を示す。図26において、twait算出部86は後述するτ/Nカウンタ87を有し、遅延時間演算部82から入力される遅延時間τをもとに時間twaitを算出し、Ht出力遅延部88に出力する。Ht出力遅延部88は、電流パルス検出センサ85から入力される検出信号Saを時間twaitだけ遅延した発光タイミング信号Htをステッパ装置10側に送出する。
【0140】
図27は、図14と同様な電圧指令値V0と時間tとの関係を示す図である。この図27に示すように、パルス発振同期信号TRから基準遅延時間Tds経過後に実発光をさせるために、パルス発振同期信号TRの受信から遅延時間τだけ遅らせた信号TRLを主スイッチSWに出力するが、さらに発光タイミング信号Htを生成してステッパ装置10側に一定時間tconst前に出力するため、時点t3からの時間twaitを算出しなければならない。この時間twaitを算出するのが、twait算出部86であるが、twait算出部86は次のようにして遅延時間τからこの時間twaitを算出する。
【0141】
すなわち、図28に示すように、遅延時間τは、最小の電圧指令値Vminから最大の電圧指令値Vmaxまでの間で双曲線近似で増大し、時間twaitは、逆に双曲線近似で減少する。
【0142】
そこで、遅延時間τの最大値τmaxを時間twaitの最大値twait(max)に正規化すると、図29に示すように、時間twaitと正規化された遅延時間τ/Nとは、それぞれの値を加算した値が常に時間twaitとなる関係になる。この場合、正規化された遅延時間τ/Nも双曲線近似した特性を有することは言うまでもない。ここで、
N=twait(max)/τmax
である。この結果、
twait=twait(max)−τ/N
となり、最小の電圧指令値Vminのときの時間twait(max)と、最大の電圧指令値Vmaxのときの遅延時間τmaxとを予め求めておけば、時間wait(max)と正規化値Nとが定まり、これにより、任意の遅延時間τから、この遅延時間τに対応する時間twaitが求まることになる。
【0143】
例えば、図29において、電圧指令値Vxに対応する遅延時間τxが遅延時間演算部82から入力されると、時間twait(max)から正規化遅延時間τx/Nが減算され、この電圧指令値Vxのときの時間twait(x)が求まる。この場合、twait算出部86は、電圧指令値Vxの値を知る必要はなく、入力された遅延時間τxのみから、これに対応する時間twait(x)を直ちに算出することができる。
【0144】
なお、ここでは遅延時間τを時間twaitに正規化するようにしたが、逆に時間twaitを遅延時間τに正規化するようにしてもよい。さらには、遅延時間τmaxと時間twaitとの中間の所定時間にお互いを正規化するようにしてもよい。
【0145】
このようにして、第5の実施形態では、遅延時間演算部82が演算した遅延時間τを有効活用して発光タイミング信号Htを効率的に出力するようにしている。
【0146】
次に、このtwait算出部86のτ/Nカウンタ87の具体的な構成について説明する。
【0147】
まず、図30および図31を参照してtwait算出部86のτ/Nカウンタ87の第1の具体的構成について説明する。図30において、遅延時間τがイネーブル信号としてタイマ121に入力される(図31(a)参照)と、タイマ121は、イネーブルされた期間におけるクロック信号をカウントし、遅延時間τのディスエーブルによって、このカウントされた値をホールドする(図31(c)参照)。このカウントされた値は除算器122に出力され、除算器122は、このカウントされた値(τ相当量)を正規化値Nで除算し、その値が確定した段階でτ/Nが出力される。その後、twait算出部86は、twait(max)からτ/Nを減算し、この減算した結果をtwaitとしてHt出力遅延部88に出力することになる。
【0148】
次に、図32および図33を参照してtwait算出部86のτ/Nカウンタ87の第2の具体的構成について説明する。図32において、遅延時間τはm進カウンタ131に入力され、m進カウンタ131は、入力されるクロック信号をもとに1/m倍に相当するイネーブル信号を生成し(図33(c)参照)、n倍カウンタ132に出力する。n倍カウンタ132は、クロック信号をn倍したn倍クロック信号を生成しており、入力されるイネーブル信号によってn倍クロックをカウントし(図33(e)参照)、n倍カウンタ132からは結果的にτ/Nが出力される。その後、twait算出部86は、twait(max)からτ/Nを減算し、この減算した結果をtwaitとしてHt出力遅延部88に出力することになる。
【0149】
この第2の具体的構成では、除算する演算時間がないため、迅速にτ/Nを出力することができる。
【0150】
次に、図34および図35を参照してtwait算出部86のτ/Nカウンタ87の第3の具体的構成について説明する。図34において、遅延時間τはアンド回路141の一端に入力される(図35(a)参照)。一方、シフトレジスタ142は、均等に正論理を1/Nで巡回して生成する論理信号を生成し、アンド回路141の他端に入力する(図35(b)参照)。例えば10段のシフトレジスタで1/5の正論理を生成する場合には、「0010000100」を繰り返し出力することになる。アンド回路141は、遅延時間τとシフトレジスタ142からの信号との論理積をとり(図35(c)参照)、この論理積をイネーブル信号としてタイマ143に出力する。タイマ143は、イネーブル信号によってイネーブルされた期間をクロック信号をもとに計時し、この計時された時間データを出力する。この結果、タイマから出力される時間データは、τ/Nに相当し、その後、twait算出部86は、twait(max)からτ/Nを減算し、この減算した結果をtwaitとしてHt出力遅延部88に出力することになる。
【0151】
この第3の具体的構成では、シフトレジスタ142から出力される1/Nによってクロック信号を間引くことによってτ/Nを得ることができ、シフトレジスタ142の値を変更するのみで、迅速にτ/Nを出力することができる。
【0152】
次に、図36を参照してtwait算出部86のτ/Nカウンタ87の第4の具体的構成について説明する。図36において、この第4の具体的構成は、第3の具体的構成と同様に、遅延時間τはアンド回路151の一端に入力される。一方、シフトレジスタ152は、均等に正論理を1/Nで巡回して生成する論理信号を生成し、アンド回路151の他端に入力する。アンド回路151は、遅延時間τとシフトレジスタ152からの信号との論理積をとり、この論理積をイネーブル信号としてタイマ153に出力する。タイマ153は、イネーブル信号によってイネーブルされた期間をクロック信号をもとに計時し、この計時された時間データを出力する。
【0153】
この第4の具体的構成ではさらに、シフトレジスタ152に設定される複数の論理パターンPT1〜PTnがメモリ154に格納されている。制御部157は、セレクタ156によって所望の論理パターンPT1〜PTnを選択させ、シフトレジスタ152にロードさせる。このロードが終了すると、制御部157は、シフトレジスタ152に対してシフト動作を実行させて、第3の具体的構成と同様に論理パターンをアンド回路151に出力する。
【0154】
従って、タイマから出力される時間データは、シフトレジスタ152にロードされた所望の1/Nの論理パターンに対応したτ/Nに相当し、その後、twait算出部86は、twait(max)からτ/Nを減算し、この減算した結果をtwaitとしてHt出力遅延部88に出力することになる。
【0155】
この結果、第3の具体的構成では、例えば1/Nが1/100である場合、100段のシフトレジスタを必要とするが、第4の具体的構成では、「0000000000」の論理パターンの9回繰り返しと「1000000000」の論理パターンの1回繰り返しとを切換選択させて用いればよいので、10段のシフトレジスタで実現することができ、小型軽量化と柔軟な拡張性を持たせることができる。
【0156】
なお、上述した第5の実施形態には、τ/Nの演算時間の少ない第2〜第4の具体的構成が好ましく、さらに、Nの変更設定が容易である第3および第4の具体的構成が好ましい。
【0157】
なお、上記実施形態において、遅延部83はパルス発振同期信号TRが入力された時点でタイムカウントを開始し、前記遅延時間τが経過した時点でパルス発振同期信号TRを出力するためのトリガ信号を発生する適宜のタイマー手段で構成することができる。また、この遅延部83を、パルス発振同期信号TRが入力された時点で積分動作を開始する積分器と、この積分器の出力と遅延時間に対応する出力τを比較し、その比較結果が一致したときにパルス発振同期信号TRを出力するためのトリガ信号を発生するコンパレータとから構成するようにしてもよい。
【0158】
なお、上記実施形態においては、2段の磁気パルス圧縮回路に本発明を適用するようにしたが、3段以上磁気パルス圧縮回路に本発明を適用するようにしてもよい。
【0159】
また、上記実施形態では、コンデンサ間の電荷転送時間と磁気スイッチの飽和時間が一致するように、すなわちσ0〜σ2が0になるように、電源電圧V0の最大値を設定し、この最大電圧値を超えない範囲で電源電圧制御を行うようにしているが、このような電源電圧制御を行わない装置に対しても本発明を適用することができる。
【0160】
また、この発明は、ステップスキャン方式および一括露光方式の何れの露光制御を行う半導体露光装置に対して適用可能である。
【0161】
また、上記実施形態では、電圧指令値の値および雰囲気温度による電圧補償および温度補償を行うようにしているが、これに限らず、遅延時間に影響を及ぼす他の要因がある場合には、その要因による影響を考慮した補償を行うようにすればよい。例えば、温度は磁気パルス圧縮回路における可飽和リアクトルの絶縁油の温度変化や磁気パルス圧縮回路の近傍の雰囲気温度の双方を取得してその影響を補償するようにしてもよい。またレーザ発振機構自体から生ずる影響を加味して補償するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す回路ブロック図である。
【図2】本発明を適用したエキシマレーザ及びステッパの制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】電流パルス検出センサの具体的構成およびその場合の電流および電圧波形を示す図である。
【図4】電流パルス検出センサの他の具体的構成およびその場合の電流および電圧波形を示す図である。
【図5】電流パルス検出センサの他の具体的構成およびその場合の電流および電圧波形を示す図である。
【図6】電流パルス検出センサの他の具体的構成を示す図である。
【図7】電流パルス検出センサの他の具体的構成およびその場合の電流および電圧波形を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態を示す回路ブロック図である。
【図9】電圧補償部の内部構成例を示す図である。
【図10】図9の遅延部の入出力信号のタイムチャートである。
図11】電圧補償部の具体的詳細構成を示す図である。
図12】電圧指令値と遅延時間との関係が双曲線近似曲線となることを説明する説明図である。
図13】双曲線近似曲線のパラメータ取得のための構成を示す図である。
図14】発光前、一定時間前に発光タイミング信号を送出する場合における双曲線近似曲線と一定時間との関係を示す図である。
図15】温度補償部の内部構成例を示す図である。
図16図15の各部の信号のタイムチャートである。
図17】温度センサを用いて温度補償を行う場合で本発明の第2の実施形態における変形例を示す回路ブロック図である。
図18】本発明の第3の実施形態を示す回路ブロック図である。
図19】本発明を適用したエキシマレーザ及びステッパの制御系の構成を示すブロック図である。
図20】本発明の作用を示すための磁気圧縮回路の各部の電圧波形、パルス発振同期信号等の信号を示すタイムチャートである。
図21】遅延時間演算部の他の内部構成例を示す図である。
図22】双曲線近似曲線のパラメータを自動生成するための構成を示す図である。
図23図22の作用を説明するタイムチャートである。
図24】本発明の第4の実施形態を示す回路ブロック図である。
図25】本発明の第5の実施形態を示す回路ブロック図である。
図26】出力信号遅延部84の詳細構成を示す図である。
図27】基準遅延時間Tdsを設定した場合における電圧指令値V0に対する各時間の関係を示す図である。
図28】電圧指令値V0に対する時間τと時間twaitとの関係を示す図である。
図29図28において時間τを時間twaitに対して正規化した場合の図である。
図30】twait算出部86のτ/Nカウンタ87の第1の具体的構成を示す図である。
図31図30の各部の信号を示すタイミングチャートである。
図32】twait算出部86のτ/Nカウンタ87の第2の具体的構成を示す図である。
図33図32の各部の信号を示すタイミングチャートである。
図34】twait算出部86のτ/Nカウンタ87の第3の具体的構成を示す図である。
図35図34の各部の信号を示すタイミングチャートである。
図36】twait算出部86のτ/Nカウンタ87の第4の具体的構成を示す図である。
図37】従来のエキシマレーザ及びステッパの制御系の構成を示す図である。
図38】一般的な磁気圧縮回路を示す図である。
図39】磁気圧縮回路の各部の電圧および電流波形を示す図である。
図40】ステップスキャン方式の縮小投影露光を説明する説明図である。
【符号の説明】
1…エキシマレーザ 2…レーザチャンバ 3…パルス電源装置
4…エネルギーモニタ 5…レーザコントローラ 6…主放電電極
7…IC 10…ステッパ装置 11…ステッパコントローラ
12…ウェハテーブル 20,30…電流パルス検出センサ 22…コア
40…電圧補償部 41…遅延時間変換部 41a,90…メモリテーブル
41b,91…読出し部 41c…Tdy演算部 42,54,83…遅延部
50,111…温度補償部 51…時間差カウンタ 52…τ0算出部
53…遅延時間算出部 80…電圧指令値演算部
81…基準遅延時間設定部 82…遅延時間演算部 84…出力信号遅延部
86…twait算出部 87…τ/Nカウンタ 100…td演算部
101…τ演算部 110…温度センサ AL0〜AL2…磁気スイッチ
HV…高電圧電源 SW…主スイッチ C0〜C2a…コンデンサ
Cp…ピーキングコンデンサ

Claims (3)

  1. 充電電源に対し直列に接続された複数の磁気スイッチとそれぞれが前記充電電源に対し並列に接続された複数のコンデンサとによって複数段の電荷転送回路を構成し、この複数段の電荷転送回路によって電流パルスを複数段に圧縮する磁気パルス圧縮回路と、
    この磁気パルス圧縮回路に前記充電電源を断続するスイッチング動作を行うスイッチング手段と、
    前記磁気パルス圧縮回路の出力端に接続されたレーザ放電電極と、
    を有し、
    半導体露光装置側より受信した所定の繰り返し周波数を有するレーザ発振同期信号をトリガとして前記スイッチング手段をオンすることにより、所定の繰り返し周波数のパルスレーザ発振を実行するパルスレーザにおいて、
    前記磁気パルス圧縮回路における予め設定された所定の段の電荷転送回路を流れる電流パルスの立上がり時点を検出する電流検出手段と、
    前記充電電源に対する電圧指令値と前記電流検出手段が検出した時点からパルスレーザの実発光時点までの遅延時間との双曲線近似関係式を用いて、前記電圧指令値に応じた前記遅延時間から予め設定された所定時間を減算した待ち遅延時間を算出し、前記電流検出手段から出力される検出信号を該待ち遅延時間遅延した遅延信号を各パルスレーザ発振の発光タイミング信号として前記半導体露光装置側に出力する出力制御手段と、
    を具備したことを特徴とするパルスレーザの発光タイミング信号制御装置。
  2. 充電電源に対し直列に接続された複数の磁気スイッチとそれぞれが前記充電電源に対し並列に接続された複数のコンデンサとによって複数段の電荷転送回路を構成し、この複数段の電荷転送回路によって電流パルスを複数段に圧縮する磁気パルス圧縮回路と、
    この磁気パルス圧縮回路に前記充電電源を断続するスイッチング動作を行うスイッチング手段と、
    前記磁気パルス圧縮回路の出力端に接続されたレーザ放電電極と、
    前記充電電源に対する電圧指令値を出力する制御手段と、
    を有し、
    半導体露光装置側より受信した所定の繰り返し周波数を有するパルス発振同期信号をトリガとして前記スイッチング手段をオンすることにより、所定の繰り返し周波数のパルスレーザ発振を実行するパルスレーザにおいて、
    前記スイッチグ手段がオンされてからレーザ発振が開始されるまでの実発光遅延時間の変動範囲の最大値以上である所定の基準遅延時間が予め設定される基準遅延時間設定手段と、
    前記設定された基準遅延時間と前記制御手段から出力される電圧指令値に対応する当該パルス発振の前記実発光遅延時間との差を各パルス発振毎に求める遅延時間演算手段と、
    前記半導体露光装置から受信されるパルス発振同期信号を前記遅延時間演算手段で演算された差時間分だけ遅延して前記スイッチング手段に出力する遅延手段と、
    前記磁気パルス圧縮回路における予め設定された所定の段の電荷転送回路を流れる電流パルスの立上がり時点を検出する電流検出手段と、
    前記充電電源に対する電圧指令値と前記電流検出手段が検出した時点からパルスレーザの実発光時点までの遅延時間との双曲線近似関係式を用いて、前記電圧指令値に応じた前記遅延時間から予め設定された所定時間を減算した待ち遅延時間を算出し、前記電流検出手段から出力される検出信号を該待ち遅延時間遅延した遅延信号を各パルスレーザ発振の発光タイミング信号として前記半導体露光装置側に出力する出力制御手段と、
    を具備したことを特徴とするパルスレーザの発光タイミング信号制御装置。
  3. 前記出力制御手段は、
    前記遅延時間演算手段が求めた差を前記待ち遅延時間の最大値に正規化し、この差とこの正規化した待ち遅延時間との双曲線近似関係を用いて前記待ち遅延時間を計測するカウンタ
    を具備したことを特徴とする請求項2に記載のパルスレーザの発光タイミング信号制御装置。
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