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JP4144099B2 - ポリプロピレン系組成物およびその製造方法 - Google Patents

ポリプロピレン系組成物およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリプロピレン系組成物に関し、さらに詳しくは、結晶性ポリプロピレン成分と結晶性エチレン/プロピレン共重合体成分とからなるポリプロピレン系組成物およびその製造方法に関する。
このポリプロピレン系組成物は、透明性、剛性、耐熱性、耐衝撃性などに優れ、かつ表面にベタツキないポリプロピレン成形体のベース樹脂として好適に使用することができる。
【0002】
【従来技術】
ポリプロピレンは、透明性、剛性、耐熱性などに優れた成形品を製造するための熱可塑性成形材料のベース樹脂として広く使用されている。またポリプロピレン成分に、本質的に非結晶性であるエチレン/プロピレン共重合体ゴム(EPR)成分をブレンドしたポリプロピレン系組成物をベース樹脂とした成形品は、低温耐衝撃性が優れることが知られている。
【0003】
しかしながら、ポリプロピレン成分へのエチレン/プロピレン共重合体ゴム(EPR)成分の配合は、成形品の低温耐衝撃性を向上させる一方で、透明性の著しい低下、折り曲げ白化性の低下、ベタツキの発生など負の性質が助長される。また、ポリプロピレンへのエチレン/プロピレン共重合体ゴム(EPR)成分のブレンドは、包装分野において要求されるヒートシール性の付与には寄与しないことも公知である。
【0004】
特開平7−278377号公報は、メタロセン系触媒を使用して製造したエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの低結晶性共重合体をプロピレン系重合体にブレンドした樹脂組成物を開示し、この樹脂組成物から成形されたフィルムは透明性、低温ヒートシール性、耐衝撃性、引裂強度などのフィルム特性が優れていることを記載している。
【0005】
Polyolefin Modification with EXACTTM Plastomers, SPERETEC(Polyolefins VIII, 539, Houston, TX, 1933)には、エチレン/ブテン、エチレン/ヘキセン、エチレン/オクテン、エチレン/デセンおよびエチレン/4−メチルペンテン共重合体が、種々のグレードのポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンの改質剤として使用できることが記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記したようなエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体は、触媒および製造条件の選択によりそれらの結晶性を比較的容易に制御することが可能である。したがって、これらの共重合体を、ポリオレフィンの要求特性に対応したポリオレフィン改質剤として製造することができる。
【0007】
一方、エチレンとプロピレンとの共重合体は、その結晶性の制御が困難であることから、実質的に非結晶性のエチレン/プロピレン共重合体ゴム(EPR)のみがポリオレフィンの改質に使用されている。
【0008】
本発明は、結晶性の制御された結晶性エチレン/プロピレン共重合体成分を結晶性ポリプロピレン成分に配合したポリプロピレン系組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は上記ポリプロピレン系組成物の製造方法を提供することを別の目的とする。
【0009】
【発明を解決するための手段】
本発明者等は、前記目的を達成すべく鋭意研究した結果、結晶性ポリプレンの製造に適したメタロセン系オレフィン重合触媒の存在下にプロピレンを重合させて結晶性ポリプロピレンを生成させ、引き続き生成した結晶性ポリプロピレンとその製造に使用した各触媒成分の存在下にエチレンとプロピレンとをさらに共重合させて得られた、結晶性プロピレン重合体と結晶性エチレン/プロピレン共重合体とからなるポリマーブレンドをベース樹脂とした成形品の透明性が極めて優れており、かつ剛性、耐衝撃性などの機械的特性とのバランスが良好であることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
【発明の概要】
本発明は、
プロピレンから誘導される重合単位を90モル%以上含有し、プロピレン重合単位中に2,1−結合および1,3−結合単位が0.05モル%以上存在する結晶性プロピレン重合体(PP)成分5〜95重量%、および
エチレンから誘導される重合単位を70〜95モル%含有するエチレンとプロピレンとの結晶性エチレン/プロピレン共重合体(EP)成分95〜5重量%、からなり、前記EP成分は、オルソジクロルベンゼンを溶媒として用いるCFC分析において、EP成分の溶出ピーク温度が前記PP成分の溶出ピーク温度よりも低く、かつ、EP成分の重量基準の溶出量が、溶出ピーク温度±15℃の範囲内で50〜90重量%であり、かつ0℃以下で1重量%以下の溶出特性を有することを特徴とするポリプロピレン系組成物を提供する。
【0011】
別の本発明は、
メタロセン化合物、アルミノキサンおよび微粒子状担体から形成されるメタロセン系オレフィン重合触媒、ならびに有機アルミニウム化合物の存在下に、プロピレンを重合させて前記結晶性プロピレン重合体(PP)成分を生成させる第1重合工程、および
第1重合工程で生成したPP成分および第1重合工程で使用したままの各触媒成分の存在下に、エチレンとプロピレンとを共重合させて前記結晶性エチレン/プロピレン共重合体(EP)成分を生成させる第2重合工程、
を順次連続して実施し、第1重合工程において全量基準で5〜95重量%のPP成分を、第2重合工程において残部のEP成分を生成させることを特徴とするポリプロピレン系組成物の製造方法を提供する。
【0012】
【発明を実施するための形態】
本明細書において、用語「重合」は、「共重合」と特定した場合を除き、「単独重合」および「共重合」の双方を包含する意味で使用される。したがって、「プロピレン重合体」は、プロピレン単独重合体およびプロピレンとプロピレン以外のコモノマーとの共重合体の双方を、また「プロピレンを重合」はプロピレンの単独重合およびプロピレンとプロピレン以外のコモノマーとの共重合の双方を意味する。
【0013】
さらに、「α−オレフィン」は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどの直鎖モノオレフィン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ペンテンなどの分岐鎖モノオレフィン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボネン、5−メチル−2−ノルボネン、5−エチル−2−ノルボネン、フェニルノルボネン、インダニルノルボネンなどの環状オレフィン、スチレン、ビニルナフタレン、α−メチルスチレンなどのスチレン類、5−(N,N−ジイソプロピルアミノ)−1−ペンテンなどの誘導体類およびビニルシクロヘキサン、塩化ビニル、メチルメタクリレート、エチルアクリレートなどのビニル化合物等、C2〜C20のオレフィンを包含して使用される。
【0014】
本発明のポリプロピレン系組成物において、結晶性プロピレン重合体(PP)成分は、13C核磁気共鳴スペクトルに基くプロピレンから誘導された重合単位、すなわちプロピレン含有量が90モル%以上であり、プロピレン重合単位中に2,1−結合および1,3−結合単位が0.05モル%以上、好ましくは0.1モル%以上、2モル%未満の範囲で存在する重合体、すなわち特定のメタロセン系オレフィン重合用触媒の存在下に得られるプロピレン単独重合体またはプロピレンから誘導された重合単位と10モル%までのプロピレン以外の前記α−オレフィンから誘導された重合単位とからなるプロピレン/α−オレフィンランダム共重合体であり、好ましくはプロピレン単独重合体、プロピレン/エチレンランダム共重合体、プロピレン/1−ブテンランダム共重合体およびプロピレン/1−ヘキセンランダム共重合体である。
【0015】
このPP成分は、示差走査熱量分析計(DSC)で測定した融点(TmPP)が80〜160℃、好ましくは100〜155℃、さらに好ましくは110〜150℃の範囲にある。
【0016】
一方、結晶性エチレン/プロピレン共重合体(EP)成分は、エチレンから誘導された重合単位を70〜95モル%、好ましくは75〜90モル%含有し、プロピレンから誘導された重合単位を含み、かつプロピレン重合単位中に2,1−結合および1,3−結合単位が存在する結晶性エチレン/プロピレンランダム共重合体である。
【0017】
EP成分中のエチレンから誘導された重合単位、すなわちエチレン含有量が大きすぎる場合、EP成分と前記PP成分との相溶性が低下するので、最終的な成形品の透明性および耐衝撃性が低下する。一方、エチレン含有率が小さすぎる場合、EP成分の結晶性を維持できなくなり非晶性のEP成分となる。非晶性のEP成分はPP成分との屈折率差が大きいことから、最終的な成形品の透明性を低下させるばかりでなく、その表面にベタツキを発生させる怖れがある。
【0018】
上記EP成分は、GPCによる重量平均分子量(MwEP)が50,000〜1,000,000、好ましくは100,000〜1,000,000の範囲にあり、かつ1.5〜3.5の分子量分布幅(MwEP/MnEP)を有する。
【0019】
さらに、EP成分は、CFC分析においてオルソジクロルベンゼンへの溶出ピーク温度が前記PP成分の溶出ピーク温度よりも低く、10〜70℃の範囲、好ましくは20〜50℃の範囲にある。また、EP成分を基準とした溶出量が、溶出ピーク温度±15℃の範囲内で50〜90重量%、好ましくは50〜85重量%の範囲にあり、かつ0℃以下で1重量%以下、好ましくは0.7重量%以下の溶出特性を有する。EP成分の溶出ピーク温度がPP成分の溶出ピーク温度よりも高くなると、EP成分の結晶性が高くなりすぎ、最終的な成形品の透明性および耐衝撃性を低下させる。
【0020】
本発明のプロピレン系組成物は、前記特性を有するPP成分5〜95重量%と前記特性を有するEP成分95〜5重量%、好ましくは前記PP成分40〜95重量%と前記EP成分60〜5重量%、特に好ましくは前記PP成分50〜95重量%と前記EP成分50〜5重量%とからなる。EP成分比率が小さすぎる場合、最終的な成形品への耐衝撃性の付与が不十分となり、一方大きすぎる場合、ポリプロピレン系組成物全体の結晶性が低下する結果、最終的な成形品に要求される耐熱性が低下する。
【0021】
本発明における上記諸特性は、下記測定条件に基く値である。
PP成分中のプロピレン含有量およびEP成分中のエチレン含有量:
オルソジクロルベンゼン/臭化ベンゼン=8/2の混合溶剤中、ポリマー濃度20重量%の溶液について、NMR測定装置、たとえばJEPL−GX270(日本電子(株)製)を使用し、130℃、67.2MHzの条件で測定した13C核磁気共鳴スペクトルに基き、G. Joseph Ray等(Macromolecules, 10, 773(1977))により提案された方法により算出する。具体的には、PP成分がプロピレン単独重合体である場合のEP成分中のエチレン含有量(重量%)は、13C核磁気共鳴スペクトルに基き測定したプロピレン系組成物中のエチレン含有量(重量%)を、後述するCFC分析により測定されるEP成分の重量組成比で除することにより算出される。また、PP成分がプロピレン/エチレン共重合体の場合のEP成分中のエチレン含有量(重量%)は、PP成分の重合後、サンプリングしたPP成分試料のIRスペクトルから算出したエチレン含有量(重量%)で、13C核磁気共鳴スペクトルに基き測定したプロピレン系組成物中のエチレン含有量(重量%)の値を補正することにより算出される。
【0022】
プロピレン重合単位中の2,1−結合および1,3−結合単位:
プロピレン重合単位、すなわちプロピレン連鎖中の2,1−結合および1,3−結合単位の存在割合(モル%)は、13C核磁気共鳴スペクトルに基きPOLYNMER Vol.3, 30,1350-1356 (1989)に記載された筒井等により提案された方法により算出される。
【0023】
CFC分析による各成分の溶出ピーク温度および溶出量:
内径0.46cm、長さ15cmのステンレス鋼管に、0.1mm径のガラスビーズを充填した分別カラム(充填高さ:15cm)を140℃に保持し、オルトジクロルベンゼンに約140℃でポリマーを溶解させたポリマー濃度2mg/mlの試料0.5mlを供給して滞留させる。次いで、分別カラムの温度を1℃/分の速度で0℃まで降下させ、試料中のポリマーをガラスビーズの表面に析出させる。
次いで、分別カラム温度0℃に保持したまま、0℃のオルソジクロルベンゼンを1ml/分の速度で2分間分別カラム内に流通させて、その温度でオルソジクロルベンゼンに可溶なポリマー成分を溶解させた抽出液を得る。その後、分別カラム温度および溶剤としてのオルソジクロルベンゼンの温度を、0〜50℃の温度範囲では10℃づつ、50〜90℃温度範囲では5℃づつ、90〜130℃の温度範囲では3℃づつ上昇させて同様の操作を繰り返し、各温度における抽出液を得る。各温度で得られた抽出液中に溶出したポリマー成分量およびポリマーの分子量分布を波長3.42μmの赤外検出器を用いて測定し、各フラクションのポリマー重量分率と分子量を算出して描いた抽出温度(℃)対重量分率(重量%)の溶出曲線に基いて算出される。
前記溶出ピーク温度は、上記溶出曲線において各成分の溶出量が最大値となる温度(℃)を意味する。
実施例1で製造した本発明のポリプロピレン系組成物の溶出曲線を、添付図1に示す。
【0024】
GPCによる重量平均分子量(Mw)および分子量分布幅(Mw/Mn):
ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置、たとえばGPC−150C(ウォーターズ社製)に混合ポリスチレンカラム、たとえばPSKgel(東ソー(株)製)をセットし、ポリマー濃度0.05重量%のオルソジクロルベンゼン溶液を使用し、135℃において測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィーに基き算出。
【0025】
PP成分の融点(TmPP):
示差走査熱量分析計、たとえばDSC7型(パーキン・エルマー社製)を用い、ポリマーを室温から230℃まで30℃/分の速度で昇温し、同温度に10分間保持後、−20℃まで−20℃/分の速度で降温してその温度に10分間保持する。次いで、同温度から20℃/分の速度で再昇温し、融解時のピーク温度を融点(TmPP)とする。
【0026】
本発明の前記諸特性を有するポリプロピレン系組成物は、
メタロセン化合物、アルミノキサンおよび微粒子状担体から形成されるメタロセン系オレフィン重合触媒、ならびに有機アルミニウム化合物の存在下に、プロピレンを重合させて前記結晶性プロピレン重合体(PP)成分を生成させる第1重合工程、および
第1重合工程で生成したPP成分および第1重合工程で使用したままの各触媒成分の存在下に、エチレンとプロピレンとを共重合させて前記結晶性エチレン/プロピレン共重合体(EP)成分を生成させる第2重合工程、
を順次連続して実施し、第1重合工程において全量基準で5〜95重量%のPP成分を、第2重合工程において残部のEP成分を生成させることにより製造することができる。
【0027】
上記のポリプロピレン系組成物の製造方法において、メタロセン系オレフィン重合触媒は、メタロセン化合物、アルミノキサンおよび微粒子状担体から形成されたものであれば、それらの単純な混合物、または微粒子状担体にメタロセン化合物、アルミノキサン、それらの混合物またはそれらの反応生成物が担持された担持型触媒のいずれであってもよい。好適には微粒子状担体にメタロセン化合物とアルミノキサンとの反応生成物が担持されたメタロセン担持型固体触媒が使用される。
【0028】
メタロセン化合物として、結晶性ポリプロピレンの製造に適した、下記一般式(1)で表される遷移金属錯体を使用する。
【0029】
【化2】
Figure 0004144099
【0030】
一般式(1)中、MはTi、ZrおよびHfよりなる群から選択された遷移金属を表す。
Xは、それぞれ独立して水素、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子、C1〜C20の炭化水素基、たとえば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、オクタデシルなどのC1〜C20の鎖状アルキル基、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどおよびさらに前記鎖状アルキル基などで置換されたC3〜C20のシクロアルキル基、フェニル、ナフチルなどおよびさらに前記アルキル基などで置換されたC6〜C20アリール基、ベンジルなどおよびさらに前記アルキル基などで置換されたC7〜C20のアラルキル基、アルコキシ、アルコキシアルキル、アリールオキシ、アラルキルオキシなどのC1〜C20の酸素含有炭化水素基、またはトリアルキルシリル、トリフェニルシリル、トリアルキルシリルアルキルなどの前記C1〜C20の炭化水素基で置換されたケイ素含有基を表す。好ましくはハロゲン原子またはC1〜C20の鎖状アルキル基、さらに好ましくはClまたはC1〜C4の鎖状アルキル基である。
【0031】
(C54-m1 m)および(C54-n2 n)は、置換シクロペンタジエニル基を表し、ここに、mおよびnは1〜3の整数であり、R1のそれぞれおよびR2のそれぞれは独立して前記C1〜C20の炭化水素基または前記C1〜C20の炭化水素基で置換されたケイ素含有基を表すか、もしくはR1の2つおよび/またはR2の2つが一緒になってシクロペンタジエニル環上の隣接する2個の炭素と結合して環炭素数が4〜12の飽和または不飽和の単環または複環を形成し得る2価の炭化水素基を表し、形成された環は前記R1およびR2でさらに置換されていてもよい。
【0032】
好ましいR1およびR2はC1〜C4の鎖状アルキル基、フェニル基、ナフチル基、およびシクロペンタジエニル環上の隣接する2個の炭素と結合してインデニル基またはフルオレニル基を形成し得る2価の基であり、形成されたインデニル基またはフルオレニル基はC1〜C4の鎖状アルキル基、フェニル基、ナフチル基などでさらに置換されていてもよい。
【0033】
Qは前記2個の置換シクロペンタジエニル基を連結し得る2価の結合基、たとえばメチレン、ジメチルメチレン、ジクロルメチレン、エチレン、テトラメチルエチレン、非置換または置換シクロヘキシレン、非置換または置換フェニレンなどの2価の炭化水素基、ジメチルシリレン、ジクロルシリレンなどのシリレン基、ジメチルゲルミレン、ジクロルゲルミレンなどの2価の含ゲルマニウム基(ゲルミレン基)、ジメチルスタニレンなどの2価の含スズ基(スタニレン基)などを表し、好ましくは2価の炭化水素基、シリレン基またはゲルミレン基であり、さらに好ましくはジメチルシリレン基またはジメチルゲルミレン基である。
【0034】
好ましいメタロセン化合物は、前記一般式(1)において、2個のシクロペンタジエニル環上の、R1およびR2の置換位が相互にMを含む対称面が存在しない配置をとり、さらに好ましくはR1およびR2の少なくとも1つがシクロペンタジエニル環のQに連結している炭素に隣接する炭素上に存在する、立体構造的にMに関して非対称な化合物である。
【0035】
前記一般式(1)で表されるメタロセン化合物として、たとえば、ジメチルシリレン(3−t−ブチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレン(3−t−ブチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス(2−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−ナフチルインデニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルゲルミレンビス(2−メチル−4−ナフチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス(2−エチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3′,5′−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリレン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3′,5′−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレン(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(3′,5′−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2′,4′,5′−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ジメチルシリレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2′,4′,5′−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2′,4′,5′−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド等、および前記例示化合物のジルコニウムをチタニウムまたはハフニウムに置き換えた化合物が挙げられる。
【0036】
これらのメタロセン化合物は、dl体100%のキラルな化合物であることが最も好ましいが、50%以下の範囲のmeso体を含むdl体とmeso体との混合物もそれを使用して得られるオレフィン重合体の物性に大きな影響を及ぼさない限り使用することができる。
【0037】
本発明において、好ましいメタロセン化合物はジメチルシリレン(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)(2′,4′,5′−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリドおよびジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドであり、特にrac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリドが好ましい。
【0038】
メタロセン系オレフィン重合触媒を構成するアルミノキサンは、下記一般式(2) および/または下記一般式(3)で表されるで表される有機アルミニウム化合物ポリマーである。
【0039】
【化3】
Figure 0004144099
【0040】
上記一般式(2)および(3)中、R3はそれぞれが独立してC1〜C6、好ましくはC1〜C4の炭化水素基、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、アリル基、2−メチルアリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基およびフェニル等のアリール基などを表し、好ましくはアルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
qは、4〜30の整数であり、好ましくは6〜30、さらに好ましくは8〜30である。
【0041】
アルミノキサンとして市販品を使用することができ、また公知の様々な条件下、たとえば下記の方法により調製したものを使用してもよい。
1) トリアルキルアルミニウム、たとえば、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムまたはそれらの混合物を、トルエン、エーテル等の有機溶剤中において、酸またはアルカリ触媒の存在下に直接水と反応させる方法。
2) トリアルキルアルミニウム、たとえば、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムまたはそれらの混合物を、結晶水を有する塩類、例えば硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物と反応させる方法。
3) シリカゲル等に含浸させた水分と、トリアルキルアルミニウム、たとえばトリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムとを、それぞれ単独にまたは同時にあるいは逐次的に反応させる方法。
【0042】
前記メタロセン系オレフィン重合触媒を構成する微粒子状担体は、粒子径が1〜500μm、好ましくは5〜300μmの顆粒状ないしは球状の無機または有機微粒子である。これらの微粒子状担体は、比表面積が50〜1,000m2/g、好ましくは100〜700m2/gの範囲にあり、かつ細孔容積が0.3〜2.5m3/gの範囲にある多孔性微粒子であることが好ましい。
【0043】
前記無機微粒子担体として、金属酸化物、たとえばSiO2、Al23、MgO、ZrO2、TiO2、これらの複合酸化物またはこれらの混合物、たとえば、SiO2−Al23、SiO2−MgO、SiO2−TiO2、SiO2−Al23−MgO等の微粒子が挙げられる。好ましい担体は、SiO2、Al23およびMgOからなる群から選ばれた少なくとも1種を主成分として含有する微粒子、さらに好ましくはSiO2またはAl23を主成分とする微粒子である。特にシリカ(SiO2)が好ましい。
【0044】
これらの無機微粒子担体は、使用に先立って、通常100〜1,000℃、好ましくは300〜900℃、特に好ましくは400〜900℃で1〜40時間焼成される。焼成後の無機微粒子担体は、表面吸着水量が0.1重量%以下、好ましくは0.01重量%以下であり、表面水酸基含量が1.0重量%以上、好ましくは1.5〜4.0重量%、さらに好ましくは2.0〜3.5重量%の範囲にある。また、焼成する代わりに、たとえば、有機アルミニウム化合物、SiCl4、クロロシラン等により化学的に処理して使用してもよい。
【0045】
前記有機微粒子担体として、有機重合体微粒子、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンなどのポリオレフィン微粒子およびポリスチレン微粒子などが挙げられる。
【0046】
メタロセン担持型固体触媒は、微粒子状担体、好ましくは無機微粒子状担体、さらに好ましくはシリカ上に、前記メタロセン化合物およびメタロセン化合物1モル(遷移金属1モル)当たりアルミニウム原子として10〜1,000モル、好ましくは20〜500モルの前記アルミノキサン、またはメタロセン化合物とアルミノキサンとの反応生成物が担持された固体微粒子からなるものであればよく、公知のメタロセン担持型固体触媒のいずれをも使用することができる。
【0047】
たとえば、シリカ/不活性溶媒スラリーにメタロセン化合物、アルミノキサンの順に、あるいはその逆の順に添加して接触させて得られたシリカ上にメタロセン化合物およびアルミノキサンが担持された固体微粒子、シリカ/不活性スラリーにメタロセン化合物とアルミノキサンとの混合溶液を加えて接触させて得られたシリカ上にメタロセン化合物およびアルミノキサンが担持された固体微粒子、不活性溶媒中でシリカの存在下にメタロセン化合物とアルミノキサンとを反応させて得られたシリカ上にメタロセン化合物とアルミノキサンとの反応生成物が担持された固体微粒子、不活性溶媒中でメタロセン化合物とアルミノキサンとを反応させた中にシリカを添加して接触させ、次いで不活性溶媒を蒸発除去するか、または不活性溶媒を脂肪族炭化水素溶媒で置換洗浄して得られたシリカ上にメタロセン化合物とアルミノキサンとの反応生成物が担持された固体微粒子などのメタロセン担持型固体触媒が挙げられる。
【0048】
さらに、脂肪族炭化水素溶媒中で前記メタロセン担持型固体触媒の存在下に少量のオレフィンを予備重合させ、得られた予備活性化されたメタロセン担持型固体触媒を前記第1重合工程に使用することが好ましい。予備重合させるオレフィンは、前記例示したオレフィンのいずれでもよいが、好ましくはエチレン、プロピレン、1−ブテンおよびそれらの2種以上の混合オレフィンである。
【0049】
前記メタロセン化合物とアルミノキサンとの反応および微粒子状担体との接触に使用される不活性溶媒は、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族炭化水素溶媒であり、通常、市販のアルミノキサン溶媒として使用されているトルエンなどをそのまま使用するか、もしくはそれにトルエンなどの芳香族炭化水素溶媒をさらに追加して使用する。
【0050】
また、前記芳香族炭化水素溶媒に代えて、メタロセン化合物、アルミノキサンおよびそれらの反応生成物に不活性な溶媒、たとえばシクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素、前記芳香族炭化水素および脂環族炭化水素がハロゲンで置換されたハロゲン化芳香族炭化水素、ハロゲン化脂環族炭化水素、それらの混合溶媒およびそれらと芳香族炭化水素との混合溶媒、エチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類を使用してもよい。
【0051】
メタロセン担持型固体触媒中の不活性溶媒の置換洗浄、およびオレフィンの予備重合に使用される脂肪族炭化水素溶媒は、たとえばブタン、テトラメチルブタン、ペンタン、エチルペンタン、トリメチルペンタン、ヘキサン、メチルヘキサン、エチルヘキサン、ジメチルヘキサン、ヘプタン、メチルヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ヘキサデカン、オクタデカン等およびそれらの混合溶媒などであり、好ましくはn−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタンおよびそれらの混合溶媒である。
【0052】
微粒子状担体とメタロセン化合物およびアルミノキサンとの接触反応は、前記不活性溶媒中において、通常、−20〜100℃、好ましくは0℃〜100℃の温度条件下に、0.1分以上、好ましくは1〜20分間撹拌保持することにより行う。溶媒の使用は、反応を均一かつ効率的に進める上で好ましい。溶媒の使用量には特に制限はないが、通常、メタロセン化合物1モル当たり10〜10,000リットル、好ましくは10〜1,000リットル程度である。
【0053】
第1重合工程において、プロピレンの重合にオレフィン重合用触媒と共に使用される有機アルミニウム化合物は、たとえば、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリドなどおよびそれらの2種以上の混合物であり、トリエチルアルミニウムまたはトリイソブチルアルミニウムが好ましく使用される。
【0054】
第1工程におけるプロピレンの重合方法および第2重合工程におけるエチレンとプロピレンとの共重合方法として、公知のオレフィン重合方法を採用することができる。たとえば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ガソリン留分、水素化ジーゼル油留分などの不活性溶媒中で重合を実施するスラリー重合法、α−オレフィンモノマー自体を溶媒として使用するバルク重合法、重合を気相中で実施する気相重合法、ポリマーを液状で生成させる溶液重合法、およびこれらの2以上を組合せた方法のいずれを採用してもよい。
【0055】
本発明において、第1重合工程と第2重合工程の重合方法は、同一であっても異なっていてもよい。好ましくは、第1重合工程が、前記重合方法のいずれか、たとえばスラリー重合法、バルク重合法または気相重合法、第2重合工程が気相重合法であり、さらに好ましくは、第1重合工程および第2重合工程が共に気相重合法である。
【0056】
第1重合工程および第2重合工程における重合条件として、従来のチーグラー・ナッタ系触媒によるオレフィン重合と同様の条件、すなわち、−50〜150℃、好ましくは−10〜100℃、さらに好ましくは40〜80℃の範囲の重合温度、大気圧〜7MPa、好ましくは0.2〜7MPaの範囲の重合圧力で、通常1分〜20時間の反応時間が採用される。また、これらの重合条件の選択および分子量調節剤、たとえば水素の重合系への導入により、生成するPP成分およびEP成分の分子量を調節することができる。
【0057】
本発明において、先ず第1重合工程において、前記オレフィン重合用触媒、好ましくはメタロセン担持型固体触媒、さらに好ましくは予備活性化されたメタロセン担持型固体触媒および前記有機アルミニウム化合物の存在下に、プロピレンを重合させて所定量の前記PP成分を生成させ、次いで、第2重合工程において、第1重合工程の反応混合物から要すれば反応溶媒のみを分離し、生成したPP成分および触媒成分は分離せずに、それらの存在下に引き続きエチレンとプロピレンとを共重合させて所定量のEP成分を生成させる。
【0058】
第1重合工程と第2重合工程とは、同一の重合器を用いて回分操作で実施してもよく、また、それぞれに別の重合器を用いて回分、半連続または連続操作で実施してもよい。
次いで、第2重合工程における生成物について、必要に応じて触媒失活処理、触媒残さ除去処理、乾燥処理など公知の後処理を実施することにより、目的とするポリプロピレン系組成物が得られる。
【0059】
本発明のポリプロピレン系組成物は、それをベース樹脂とする成形品および成形方法に応じた各種の添加剤を添加して成形材料として提供される。これらの添加剤として、結晶性プロピレン重合体に通常に添加される、たとえば、フェノール系、チオエーテル系、リン系などの酸化防止剤、光安定剤、重金属不活性化剤(銅害防止剤)、透明化剤、β晶造核剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、無滴剤、過酸化物のようなラジカル発生剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、ハロゲン捕捉剤、金属石鹸類などの分散剤または中和剤、有機または無機系抗菌剤、無機また有機充填剤、カップリング剤などが挙げられる。
【0060】
無機充填剤として、たとえば、タルク、マイカ、クレー、ウォラストナイト、ゼオライト、カオリン、ベントナイト、パーライト、ケイソウ土、アスベスト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、塩基性アルミニウム・リチウム・ヒドロキシ・カーボネート・ハイドレート、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、硫化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ガラス繊維、チタン酸カリウム、炭素繊維、カーボンブラック、グラファイト、金属繊維などが挙げられる。
【0061】
有機充填剤として、たとえば、木粉、パルプ、故紙、合成繊維、天然繊維などが挙げられ、カップリング剤として、たとえば、シラン系、チタネート系、ボロン系、アルミネート系、ジルコアルミネート系などが挙げられる。前記無機および有機充填剤は、これらのカップリング剤で予め表面処理されていてもよい。
【0062】
成形材料は、前記ポリプロピレン系組成物に前記添加剤のそれぞれの所定量を添加し、通常の混合装置、たとえばヘンシェルミキサー(商品名)、スーパーミキサー(商品名)、リボンブレンダー、バンバリミキサー(商品名)などを用いて混合し、単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダー、ロールなどを用いて溶融混練温度170〜300℃、好ましくは200〜270℃で溶融混練し、さらにペレタイズすることにより調製される。
この成形材料は、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法などによる各種の成形品の製造に提供される。
【0063】
本発明のポリプロピレン系組成物は、特に成形品に透明性の高さが要求される分野でのベース樹脂として好適である。また、PP成分の結晶性を制御することにより、さらに各種の用途へ展開することができる。たとえば、PP成分の結晶性を下げてフィルムに低温ヒートシール性を、逆に結晶性を上げて成形品に耐熱性を付与することができる。
【0064】
【実施例】
本発明を実施例および比較例により、さらに詳細に説明する。
実施例 1
メタロセン担持型固体触媒の調製
十分に乾燥し、窒素置換した500mlのフラスコに、0.39g(0.889mmol)のrac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリドおよびAl原子換算で267mmolのメチルアルミノキサン/トルエン溶液を入れ、23℃で10分間反応させた。この反応液に800℃で8時間焼成したシリカ(グレース・デビソン)10gを添加して、23℃で10分間攪拌して接触させた。次いで反応フラスコの頂部に真空を適用し、底部から窒素ガスのわずかの流れを供給しながら、70℃に加熱して9時間かけて溶媒を蒸発させ、得られた乾燥固体を室温下に一晩冷却してメタロセン担持型固体触媒を得た。
【0065】
予備活性化されたメタロセン担持型固体触媒の調製
十分に乾燥し、窒素置換した500mlのフラスコに、上記調製したメタロセン担持型固体触媒の全量および250mlのイソペンタンを入れ0℃に冷却し、次いで、エチレンを80ml/分の流量で4時間供給して予備重合させた。上澄み液をデカントして除去し、残留物を100mlのイソペンタンにより4回デカント洗浄し、次いで室温下に2時間真空乾燥させて35gの予備活性化されたメタロセン担持型固体触媒を得た。
【0066】
ポリプロピレン系組成物の製造
第1重合工程:PP成分の生成
3リットルのオートクレーブに、液化プロピレン1600mlおよびトリエチルアルミニウム2mmolを入れ、50℃に加温した。この中に、前記調製した予備活性化されたメタロセン担持型固体触媒300mgを含むヘキサン懸濁液をプロピレン400mlと共に添加し、50℃に60分間攪拌保持してプロピレンを重合させ、結晶性プロピレン単独重合体(PP)成分を生成させた。
【0067】
第2重合工程:EP成分の生成
第1重合工程終了後、オートクレーブの全圧が0.1MPaになるまでパージし、未反応プロピレンを除去した。オートクレーブの温度を50℃に回復させた後、エチレン/プロピレンが9/1(モル比)の混合ガスを圧入して全圧を1.5MPaに、温度を50℃に保持し、60分間エチレンとプロピレンとを共重合させ、結晶性エチレン/プロピレンランダム共重合体(EP)成分を生成させ、ポリプロピレン系組成物238gを得た。
【0068】
得られたポリプロピレン系組成物の嵩密度(BD)は0.40であり、良好なパウダー性状を有していた。
ポリプロピレン系組成物の前記した方法で測定した諸特性、PP/EP成分重量比、EP成分中のエチレン含有量(モル%)、PP成分の融点(TmPP)、PP成分のプロピレン重合単位中に存在する2,1−結合および1,3−結合単位量(モル%)、PP成分およびEP成分のCFC分析における溶出ピーク温度ならびに分子量分布幅(Mw/Mn)、EP成分の重量平均分子量(MwEP)、溶出ピーク温度±15℃の範囲内における溶出量(重量%、EP成分基準)および0℃以下での溶出量(重量%、EP成分基準)、ならびにJIS K7210に準拠し、表1の条件14(荷重:21.18N、温度230℃)で測定したポリプロピレン系組成物およびPP成分のメルトフローレート(MFR)を、第2重合工程におけるエチレン/プロピレン反応モル比と共に表1に示す。
またCFC分析による溶出曲線を図1にtanδ曲線を図2に示す。
【0069】
【表1】
Figure 0004144099
【0070】
比較例 1
比較用ポリプロピレン系組成物の製造
前記実施例1において、第2重合工程におけるエチレン/プロピレン反応モル比9/1を7/3に代えた以外には、実施例1と同一の条件でポリプロピレン系組成物を製造し、上記表1中に示す諸特性を有するポリプロピレン系組成物216gを得た。得られたパウダーはベタツキがあり嵩密度(BD)は測定不能であった。
【0071】
表1に示したように、実施例1で調製されたポリプロピレン系組成物は、EP成分が結晶性であることから明確な溶出ピーク温度を有するのに対して、比較例1で調製されたエチレン含有率が70%より小さいEP成分は非晶性であることから溶出ピーク温度が測定不能であった。そしてこの非晶性のEP成分の大部分は0℃以下の温度でオルソジクロルベンゼンに溶解した。
【0072】
参考例 1
結晶性プロピレン単独重合体の製造
3リットルのオートクレーブに液化プロピレン1600mlおよびトリエチルアルミニウム2mmolを注入し、50℃まで昇温した。次いで、このオートクレーブに実施例1で用いたものと同一の触媒をプロピレン400mlと共に注加し、50℃において1時間重合させてMFRが19g/10min のプロピレン単独重合体を得た。
【0073】
参考例 2
エチレン/プロピレンランダム共重合体の製造
3リットルのオートクレーブに液化プロピレン1600mlおよびトリエチルアルミニウム2mmolを注入し、50℃まで昇温した。次いで、このオートクレーブにエチレンを圧入し全圧を2.1MPaに調節した。さらに、この中に実施例1で用いたものと同一の触媒をプロピレン400mlと共に注加し、50℃においてエチレンとプロピレンとを1時間重合させて融点が139℃、およびMFRが41g/10minのエチレン/プロピレンランダム共重合体を得た。
【0074】
実施例 2
ポリプロピレン系組成物ベース成形用ペレットの調製
前記実施例1および比較例1で調製したポリプロピレン系組成物、参考例1および2で調製したPP成分に相当する結晶性プロピレン単独重合体およびEP成分に相当するエチレン/プロピレンランダム共重合体それぞれの100重量部に、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシル−ハイドロシンナメート)]メタン0.03重量部、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト0.03重量部およびステアリン酸カルシウム0.09重量部を混合し、押出温度を190℃に設定したスクリュー径40mmの単軸押出造粒機を用いて押出したストランドを裁断して成形用ペレット:試料1〜4を調製した。
【0075】
試験片の成形および特性評価
下記の諸特性を評価するための試験片を、上記調製した各試料の成形用ペレットを用いて射出成形法により作製した。
曲げ弾性率(MPa):厚さ4mm×幅10mm×長さ10mmの試験片を用い、JIS K7203に準拠して測定した。
アイゾット衝撃強度(J/cm):JIS K7110に準拠したノッチ付き試験片を用い23℃で測定した。
全光線透過率(%):厚さ2mmの試験片を用い、JIS K7105に準拠して測定した。
測定した特性を表2に示す。
【0076】
【表2】
Figure 0004144099
【0077】
表2に示したように、試料1の実施例1のポリプロピレン系組成物をベース樹脂とした成形品の全光線透過率は、試料3および試料4の結晶性プロピレン単独重合体(PP成分)および結晶性エチレン/プロピレンランダム共重合体(EP成分)のそれぞれをベース樹脂とした成形品それに匹敵し、試料2の比較例1のポリプロピレン系組成物をベース樹脂とした成形品の全光線透過率に比較して極めて大きい値を示す。
また、試料1のアイゾット衝撃強度は、試料3および試料4のそれぞれの値からは予測できない大きな値を示し、試料2にほぼ匹敵する。
【0078】
上記本発明のポリプロピレン系組成物をベース樹脂とする成形品の特性は、第1重合工程において結晶性プロピレン重合体(PP)成分を生成させ、連続して第2重合工程において結晶性エチレン/プロピレンランダム共重合体(EP)成分を生成させる2段重合法を採用したことにより、マトリックスのPP成分中に、微細なEP成分が均一に分散することにより発現したもの推定される。
【0079】
【発明の効果】
前記実施例に示したように、本発明のポリプロピレン系組成物は、それをベース樹脂とする成形品に高い透明性および耐衝撃性を付与することができるだけでなく、それらの特性と曲げ弾性率、曲げ強度、引張強度などの剛性や低温ヒートシール性とのバランスを要求に応じて調整することができる。
また、本発明のポリプロピレン系組成物の製造方法により得られるパウダーはベタツキがないことから、反応溶媒を使用しない気相重合法の実質的な安定運転を可能とする。
【0080】
本発明は、透明性、耐衝撃性、剛性、低温ヒートシール性などの諸特性のバランスがとれた成形品のベース樹脂として好適なポリプロピレン系組成物およびその製造方法を提供するものであり、その産業的意義は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたリプロピレン系組成物のCFC分析による溶出曲線。
【図2】実施例1および比較例1で得られたポリプロピレン系組成物のtanδ曲線。
【図3】本発明のポリプロピレン系組成物の製造方法を示すフローシート。

Claims (7)

  1. メタロセン化合物、アルミノキサンおよび微粒子状担体から形成されるメタロセン系オレフィン重合触媒、ならびに有機アルミニウム化合物の存在下に、プロピレンを重合させて結晶性プロピレン重合体(PP)成分を生成させる第1重合工程、および第1重合工程で生成したPP成分および第1重合工程で使用したままの各触媒成分の存在下に、エチレンとプロピレンとを共重合させて結晶性エチレン/プロピレン共重合体(EP)成分を生成させる第2重合工程を順次連続して実施し、製造されるポリプロピレン系組成物であって、
    プロピレンから誘導される重合単位を90モル%以上含有し、プロピレン重合単位中に2,1−結合および1,3−結合単位が0.1モル%以上、2モル%未満の範囲で存在するPP成分40〜95重量%、および
    エチレンから誘導される重合単位を75〜90モル%含有するEP成分60〜5重量%、からなり、前記EP成分は、オルソジクロルベンゼンを溶媒として用いるCFC分析において、EP成分の溶出ピーク温度が前記PP成分の溶出ピーク温度よりも低く、かつ、EP成分の重量基準の溶出量が、溶出ピーク温度±15℃の範囲内で50〜85重量%であり、かつ0℃以下で1重量%以下の溶出特性を有することを特徴とするポリプロピレン系組成物。
  2. PP成分がプロピレン単独重合体またはプロピレン/α−オレフィン共重合体である請求項1記載のポリプロピレン系組成物。
  3. PP成分が、80〜110℃の範囲の溶出ピーク温度を有する請求項1または2記載のポリプロピレン系組成物。
  4. EP成分が、10〜70℃の範囲の溶出ピーク温度、50,000〜1,000,000の範囲の重量平均分子量(MwEP)および1.5〜3.5の分子量分布幅(MwEP/MnEP)を有する請求項1記載のポリプロピレン系組成物。
  5. メタロセン化合物、アルミノキサンおよび微粒子状担体から形成されるメタロセン系オレフィン重合触媒、ならびに有機アルミニウム化合物の存在下に、プロピレンを重合させて結晶性プロピレン重合体(PP)成分を生成させる第1重合工程、および第1重合工程で生成したPP成分および第1重合工程で使用したままの各触媒成分の存在下に、エチレンとプロピレンとを共重合させて結晶性エチレン/プロピレン共重合体(EP)成分を生成させる第2重合工程を順次連続して実施する請求項1記載のポリプロピレン系組成物の製造方法において、メタロセン化合物が、下記一般式(1)
    Figure 0004144099
    (式中、MはTi、ZrおよびHfよりなる群から選択された遷移金属を表し、
    Xは、それぞれ独立して水素、ハロゲン原子、C1〜C20の炭化水素基またはC1〜C20の炭化水素基で置換されたケイ素含有基を表し、
    (C54-m1 m)および(C54-n2 n)は、置換シクロペンタジエニル基であり、
    mおよびnは、独立して1〜3の整数であり、
    1のそれぞれおよびR2のそれぞれは独立してC1〜C20の炭化水素基またはC1〜C20の炭化水素基で置換されたケイ素含有基を表すか、もしくはR1の2つおよび/またはR2の2つが一緒になってシクロペンタジエニル環上の隣接する2個の炭素と結合して環炭素数が4〜12の飽和または不飽和の単環または複環を形成し得る2価の炭化水素基を表し、
    Qは、2価の炭化水素基、シリレン基、ゲルミレン基およびスタニル基よりなる群から選択される前記置換シクロペンタジエニル基を連結する2価の結合基を表す)
    で表される遷移金属錯体化合物であることを特徴とするポリプロピレン系組成物の製造方法。
  6. メタロセン化合物が、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリドである請求項5記載のポリプロピレン系組成物の製造方法。
  7. 第2重合工程が、気相重合工程である請求項5記載のポリプロピレン系組成物の製造方法。
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