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JP4020692B2 - 針送りミシン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、針が縫製物に刺さったまま縫製物を送る所謂針送りミシンに関し、特に、縫製物の裏面に残る糸端を短くするものである。
【0002】
【従来の技術】
従来ミシンによって縫製された糸端を短くさせる技術には、特開平11−192393公報が存在している。かかるミシンによれば、縫製物糸端を短くするために、糸捕捉部材と刃部材ともに移動可能とした構成において、▲1▼.針が下部位置にあるときにミシンを停止させた後、天びんがその上死点に達するまでミシンを短時間再駆動させる過程と、▲2▼.ミシンがこの運動段階にあるときに糸捕捉体をその分離位置または捕捉位置へ移動させ、少なくとも一つの送り要素の送り方向を後退方向へ切換える過程と、▲3▼.天びんがその上死点に位置し、且つ少なくとも一つの送り要素が少なくとも送りステップの半分に相当する距離だけ正規の送り方向とは逆の方向へ縫製物と共に、移動した時点で、糸を切断する過程とを含むものである。かかるミシンによれば、縫製物の下糸端を短くして縫製物の見栄えが良くなる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような技術的手段は、縫製物の糸端を切断する前に、送り歯を逆の方向へ縫製物と共に、移動させなければならないので、縫製物に傷がつくおそれがあるという問題点があった。
【0004】
しかも、縫製側側に残る糸を短くするためには、針孔の至近に糸切断点を設定すればよい、すなわち、固定された糸切断用の固定刃を、針孔の至近に配置すればよい。ところが、針送りミシンにおいては、針孔が送り歯に設けられており、送り歯が針と協働して縫製物を送っているので、固定刃を針孔の至近に配置することは困難である。従って、固定刃を移動可能にしなければ成らず機構が複雑になるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、縫製物を傷つけることなく縫製物の糸端部を短くする針送りミシンを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係る針送りミシンは、ミシンの主軸に連結されると共に、縫製物を縫う針と、前記縫製物を載せると共に、開口を有する針板と、前記針と協働して前記縫製物を所定の縫いピッチにより縫製すると共に、回転しながら前記針板の開口内を上下及び水平移動して前記縫製物を送る針孔を有する送り歯と、固定された固定刃部材と、前記糸を捕捉すると共に、移動可能な糸捕捉部材からなる糸切断手段と、前記縫製物を縫製した糸端部を切断する工程において、前記針が上死点にあるときの前記主軸の角度を0°としたときに、前記針が前記縫製物よりも上方に離れて位置し、前記主軸がほぼ250°〜360°或いは0°〜50°の角度である状態で、前記送り歯が前記縫製物よりも下方に離れた位置から、前記送り歯の前記回転を逆にすることにより前記送り歯を、前記縫製物よりも下方に離れた状態を維持しながら前記縫いピッチの3/4の距離逆方向に移動させると共に送り歯に設けられた針孔を前記固定刃部材の至近に移動させる送り歯逆転手段と、この送り歯逆転手段が動作した後に前記縫製物を縫製した糸端部を切断する糸切断手段とを備えたことを特徴とするものである。
ここで、糸端部を切断する工程において、針が縫製物よりも上に位置した状態にするには、ミシンの主軸を所定角度正回転することにより得られる。
かかる針送りミシンによれば、前記糸端部を切断する工程において、送り歯逆転手段は、送り歯が針板の水平面よりも下にもぐり込んだ位置から送り歯の回転を逆にすることにより送り歯を、針板の水平面よりも下にもぐり込んだ状態を維持しながら縫いピッチよりも狭い距離を移動する。その後、糸切り切断手段が糸端部を切断する。したがって、糸端部を切断する工程において、送り歯が逆回転して逆方向に移動しても縫製物と接触しないので、縫製物に傷がつきにくいという効果がある。
例えば、上記送り歯の逆転を開始するタイミングは、針の上死点を主軸の角度を0°とすると、主軸2の角度でほぼ250°〜50°の間が適当な針送りミシンがあり、さらに、送り歯を逆方向に縫いピッチよりも狭い距離とは、縫いピッチの3/4が好ましい針送りミシンがある。
また、かかる針送りミシンによれば、糸捕捉部材のみが移動可能で固定刃部材が固定されているので、従来のように糸捕捉部材と刃体ともに移動可能な複雑な機構を必要としないという効果もある。
【0008】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
本発明を針送りミシンに適用した一実施の形態を図1乃至図6によって説明する。図1は、本発明の一実施の形態を示す針送りミシンの機構図、図2は、図1に示す針送りミシンの糸切断機構の縦断面図、図3は、図1に示すミシンの各部の動作を示す作動線図、図4は、図1に示すミシンの針と送り歯との関係を示す正面図である。
【0009】
図1及び図2において、針送りミシンは、縫製物としての布61を縫う針3と針棒20に上下動可能に挿通させた針棒支枠19とを備えた針部100と、針部100を上下方向に往復運動可能な針上下運動機構150と、針部100を水平方向に往復運動可能な針水平運動機構200と、針孔51を有する送り歯11を上下方向に往復運動可能な送り歯上下運動機構250と、送り歯11を水平方向に往復運動可能な送り歯水平運動機構300と、針部100及び送り歯11の水平方向の往復運動量を調整する水平方向調整機構350と、送り歯11の送り方向を逆転させる送り歯逆転機構400と、布61に縫製された糸端(以下、布糸端という)を切断させる糸切断機構450とを備えている。なお、針3と共に、布61に縫目を形成するカマ4が主軸2及びベルト5を介して連動回転する下軸6に連結されてベッド(図示せず)内に収納されている。
【0010】
針上下運動機構150は、モータ軸(図示せず)に連結されたプーリー1及び主軸2を介してクランク機構25により針部100を上下方向に往復運動するように形成されている。
針水平運動機構200は、プーリー1及びベルト5を介して下軸6に固着された偏心カム26と、偏心カム26に一端が挿嵌されると共に、他端が水平方向に延びる連杆12と、連杆12の他端とリンク14の先端に結合された角駒15と、角駒15を摺動案内する摺動溝18を有すると共に、両端に軸部17,17が回転可能に支承された水平送り調節部材16と、リンク14を介して一端が連結されると共に、他端が揺動軸10に連結された腕杆13と、揺動軸10に固着された腕杆24に連結されリンク22、23を介して固定されると共に、針部100を固定した水平軸21とを備え、針部100を水平方向に往復運動するように形成されている。
【0011】
送り歯上下運動機構250は、下軸6に固着された上下送りカム7が、二叉リンク8を介して送り台9に固定された送り歯11を上下方向の往復運動するように形成されており、送り歯水平運動機構300は、送り歯11に連結された揺動軸10により送り歯11を水平方向に往復運動するように形成されている。
【0012】
水平方向調整機構350は、ミシンアーム(図示せず)に軸架された操作軸32と、操作軸32に固着された突腕34と、突腕34の下方に弾撥するコイルバネ35と、操作軸32に軸支されると共に、正送り用傾斜カム面28と逆送り用傾斜カム面29とが形成されたV字状腕杆27と、V字状腕杆27を軸部17、水平送り調節部材16と連結されたリンク30,31とを備え、正送り用傾斜カム面28が、送り調節ダイヤル36の操作軸37の先端に常に圧接されており、送り調節ダイヤル36を回転することによりV字状腕杆27が回転してリンク30,31を介して軸部17に連結された水平送り調節部材16の摺動溝18の傾斜角度が変更されることにより送り歯11及び針部100の水平方向の往復移動量が調整されるように形成されている。
【0013】
上記のように構成された送り歯11、針3の運動を針3の上死点を主軸2の角度0°とし作動線図に表したものを図3に示す。送り歯11及び針3は、水平位置が主軸2の中心を原点とし、通常の布送り方向を正とし、垂直位置を針板50の天面(上面)を原点としている。このような針3及び送り歯11の運動は、図3(a)〜(f)に示すようになる。すなわち、送り歯11は、時計方向に回る楕円状の運動を成し、針3は、水平方向の運動が送り歯11と同期し、上下方向の運動が送り歯11とほぼ反転するため反時計方向に回る楕円状の運動軌跡となるように形成されている。
【0014】
送り歯逆転機構400は、手動と自動とを有しており、手動は、操作軸32の一端に連結された逆転レバー33をコイルバネ35の作用に抗して図1の下方に押圧すればV字状腕杆27が回転し、送り調節ダイヤル36の操作軸37が腕杆27の逆送り用傾斜カム面29に当接するまで調節部材16が回転し、送り歯11は前記正送り時の送り量と等しい送り量の逆送り運動をするように形成されている。
【0015】
自動は、送り歯逆転手段を成しており、回転型ソレノイド38が通電されると、回転型ソレノイド38の軸に固着された腕杆39が回転しリンク40を介して操作軸33に固着されている腕杆41を図1の下方に引き下げ、逆転レバー34を操作した時と同様に送り歯11の送り方向を逆転させるように形成されている。布61の縫い工程では、送り歯11の移動量は縫いピッチとなるが、糸端部を切断する工程においては、縫いピッチのほぼ3/4となる。
【0016】
転型ソレノイド38の動作を開始するタイミングは、糸端部の切断工程において、すなわち、針3が下位置(主軸2の角度で140°)において、主軸送り歯11を正方向に回転移動して、図3の作動線図より針3が針板50の天面(上面)よりも上昇し、送り歯11が針板50の天面よりも下の位置に達した後、回転型ソレノイド38の動作を開始させるので、主軸2の角度でほぼ250°〜50°の間となる。
なお、便宜上、針3が針板50の天面(上面)よりも上昇したことを布61よりも上に上昇したとみなしている。
【0017】
図2において、糸切り切断機構450は、送り歯11を挿入可能にした開口52を有すると共に、布61が載せられた針板50と、布61を押えこむ押え足53と、刃面55を有すると共に、固定された固定刃部材としての固定刃54と、糸捕捉用フック部57を形成すると共に、矢印方向に往復運動可能な糸捕捉部材としての可動刃56とを備え、足踏みペダル(図示せず)をけり返すと、すなわち、布61の糸端部を切断する工程に移行すると、主軸2が回転することにより針3が、下位置から上位置まで低速度で駆動され、同時に、糸切り用ソレノイド64を通電し、可動刃56が駆動され縫糸を切断する。固定刃54と可動刃56と協動して捕捉された上糸58と下糸59とを同時に切断するように構成されている。
【0018】
次に、上記のように構成されたミシンの動作を図1乃至図4によって説明する。いま、水平方向調整機構350の送り調節ダイヤル36を適宜回転して針3及び送り歯11の水平方向の往復運動量を調整する。ミシンを動作するためにモータ(図示せず)が駆動されると、針上下運動機構150、針水平運動機構200により針3を上下、水平方向に往復運動すると共に、送り歯上下運動機構250、送り歯水平運動機構300により、送り歯11を上下、水平方向に往復運動しながらカマ4との協働により布61に所定ピッチの布送りをするので、図2に示すように布61が縫製される。
【0019】
布61の縫製が終了すると、針3は、主軸2の角度140°となるように設定されているので、図2に示すように針3が針板50の開口52に挿入されている。この状態から、糸切り切断工程に移行するために、作業者が足踏み用ペダル(図示せず)を蹴り返すと、主軸2が極めて低速で回転して主軸2の角度140°〜60°まで移動して針3が布61から所定距離上、に移動する。すなわち、カマ4が一回転し、天秤(図示せず)が運動軌跡の上死点に達し、送り歯11と針3は、針3が布61から出て、同時に送り歯11が布61から下方へ離れるまで、布61をさらに布61の縫いピッチの3/4分だけ矢印Aの方向へ移動する。ここで、主軸2の角度60°に設定されているのは、針3の上位置は布糸端を切断する時に針3から上糸59が抜けて、次に縫製ができなくなることを防止するために、天秤上死点に選択されている。
【0020】
かかる主軸2の回転において、例えば主軸2が260°に達した時点で、回転型ソレノイド38に通電すると、針3が上方に移動すると共に、送り歯11が逆回転しながら、矢印A方向と反対方向に移動した後、矢印A方向に送り歯11が、針板50の水平面よりも下にもぐり込んだ状態を維持しながら縫いピッチの3/4分のみ移動し、可動刃56の糸捕捉部57が上糸糸環60および下糸59を捕捉する。
その後、可動刃56が下軸6に固着された糸切りカム(図示せず)によって矢印A方向に後退移動し固定刃54の刃面55によって上糸59及び下糸58を切断する。
【0021】
上記に説明したように糸切り切断工程において、針3が布61よりも上の位置に移動し、同時に送り歯11が布61から下方へ離れてから、すなわち、送り歯11が針板50の上面より下方へ下がった後に、回転型ソレノイド38を駆動して、送り歯11を逆回転し、送り歯11を針板50の水平面よりも下にもぐり込んだ状態を維持しながら移動させる。その際、布61は押え足53と針板50に挟持されたまま、移動されない。したがって、布61と接触することなく、送り歯11を逆方向に移動するので、布61に傷がつきにくい。
【0022】
しかも、可動刃(糸捕捉部材)56と固定刃(固定刃部材)54とにより糸を切断するので、従来のミシンのように糸捕捉部材及び刃部材ともに移動可能な複雑な機構を要しないものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態を示す針送りミシンの機構図である。
【図2】 図1に示す針送りミシンの糸切断機構の縦断面図である。
【図3】 図1に示すミシンの各部の動作を示す作動線図である。
【図4】 図1に示すミシンの針と送り歯との関係を示す正面図である。

Claims (1)

  1. ミシンの主軸に連結されると共に、縫製物を縫う針と、
    前記縫製物を載せると共に、開口を有する針板と、
    前記針と協働して前記縫製物を所定の縫いピッチにより縫製すると共に、回転しながら前記針板の開口内を上下及び水平移動して前記縫製物を送る針孔を有する送り歯と、
    固定された固定刃部材と、
    前記糸を捕捉すると共に、移動可能な糸捕捉部材からなる糸切断手段と、
    前記縫製物を縫製した糸端部を切断する工程において、前記針が上死点にあるときの前記主軸の角度を0°としたときに、前記針が前記縫製物よりも上方に離れて位置し、前記主軸が250°〜360°或いは0°〜50°の角度である状態で、前記送り歯が前記縫製物よりも下方に離れた位置から、前記送り歯の前記回転を逆にすることにより前記送り歯を、前記縫製物よりも下方に離れた状態を維持しながら前記縫いピッチの3/4の距離逆方向に移動させると共に送り歯に設けられた針孔を前記固定刃部材の至近に移動させる送り歯逆転手段と、
    この送り歯逆転手段が動作した後に前記縫製物を縫製した糸端部を切断する糸切断手段とを備えたことを特徴とする針送りミシン。
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