JP4013662B2 - 木質樹脂成形体及び化粧材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、床材、壁材、天井材等の建築内装材、建具、家電品の表面材等に用いられる木質樹脂成形体及びそれを用いた化粧材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記用途に供される化粧材の基材としては従来、例えば合板や繊維板、パーティクルボード等の木質系基材が最も広く使用されていた。しかし、係る木質系基材は、吸放湿に由来する反りや、虫食い、腐蝕等を発生するほか、リサイクルが困難である等の問題がある。
【0003】
一方、金属や無機材質、合成樹脂等、木質以外の素材からなる基材は、重量が嵩んだり、硬く冷たい感触であったり、鋸挽き又は穴開け等の切削や、螺子止め又は釘打ち等による接合などの加工が困難であったり、外観が人工的で無機的であったりするので、木質系基材の代替品として必ずしも満足できるものではない。
【0004】
そこで、木質系基材に近似した外観や感触、加工性を有しながら、耐水性や耐湿性が強く、虫食いや腐蝕の心配もなく、リサイクルも容易な素材として、木材を粉砕して得た木粉等の木質系充填剤を、適当な熱可塑性樹脂中に分散して、通常の樹脂成形法により成形してなる木質樹脂成形体を、上記用途に供する試みもなされている。
【0005】
この木質樹脂成形体に使用する熱可塑性樹脂としては、当初は安価で汎用性があり成形性にも優れたポリ塩化ビニル樹脂が主に採用されていたが、ポリ塩化ビニル樹脂は燃焼時に塩化水素やダイオキシン等の有害物質を発生する場合があることが嫌われ、近年ではポリ塩化ビニル樹脂に代わる安価な汎用性樹脂として、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を採用する試みが盛んになされている。
【0006】
ところが、ポリオレフィン系樹脂は疎水性の強い樹脂であり、親水性の強いセルロースを主成分とする木質系充填剤との親和性はあまり良くない。従って、ポリオレフィン系樹脂中に木質系充填剤を均一に分散させることが難しく、両者間の接着性にも乏しいこともあって、得られる成形体は機械的強度の著しく弱いものとなったり、表面の凹凸や肉厚ムラのあるものとなったりし易い。
【0007】
そこで、ポリオレフィン系樹脂と木質系充填剤との親和性を高め、木質系充填剤の分散性や成形体の機械的強度を高めるために、ポリオレフィン系樹脂とよく相溶すると共に木質系充填剤とよく接着する性質を有する物質からなる相溶化剤を配合することが試みられている。この相溶化剤としては各種のものが提案されているが、分散性や強度の向上効果の最も高いものとして、ポリプロピレン樹脂を基本骨格とし、マレイン酸又はその無水物をグラフト重合させてなる、マレイン酸変性ポリプロピレン系相溶化剤が、最も広く用いられている(特開平10−71636号公報等参照)。
【0008】
しかるに、上記マレイン酸変性ポリプロピレン系相溶化剤は、グラフト重合したマレイン酸のカルボキシル基に由来して、金属に対する極めて強い接着性を示すので、木質樹脂成形体の成形時に、例えば押出成形機や射出成形機等における樹脂供給用のスクリューに強く接着し、樹脂がスクリューにこびりついて流れないため、成形不可能になってしまう場合があるという問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術における上記の問題を解決するためになされたものであり、ポリオレフィン系樹脂及び木質系充填剤を主成分とする木質樹脂成形体において、木質系充填剤の分散性が良好であり、ポリオレフィン系樹脂との接着性も良く十分な機械的強度を発現し、しかも、成形時に樹脂がスクリューにこびりつくことなく良好に成形可能な木質樹脂成形体と、それを用いた化粧材とを提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、ポリオレフィン系樹脂及び木質系充填剤を主成分とする木質樹脂成形体において、ポリプロピレン樹脂67重量部、平均粒径100μmの木粉30重量部、及びマレイン酸変性率1重量%のマレイン酸変性ポリプロピレン系相溶化剤3重量部を含有し、初期曲げ弾性率1580MPa、アイゾット衝撃試験による耐衝撃性が2.3kJ/m 2 であることを特徴とする木質樹脂成形体を提供する。
【0011】
併せて本発明は、上記木質樹脂成形体の表面の少なくとも一部にポリプロピレン樹脂系化粧シートが積層されてなることを特徴とする化粧材を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の木質樹脂成形体1は、図1に示す様に、ポリオレフィン系樹脂11中に木粉等の木質系充填剤12が分散された組成物によって構成された成形体であって、該ポリオレフィン系樹脂11と木質系充填剤12とをよく接着させ、分散性を高めるために、相溶化剤としてマレイン酸変性ポリプロピレン系相溶化剤が配合されている。
【0013】
そして、本発明においては、該マレイン酸変性ポリプロピレン系相溶化剤の配合量を、上記ポリオレフィン系樹脂80〜15重量%と木質系充填剤20〜85重量%とからなる配合物100重量部当たり、0.5〜5重量部の範囲内とすると共に、該マレイン酸変性ポリプロピレン系相溶化剤のマレイン酸変性率を4重量%未満としたことを特徴としている。
【0014】
マレイン酸変性ポリプロピレン系相溶化剤の配合量が5重量部を越えたり、マレイン酸変性率が4重量%以上であったりすると、木質樹脂組成物の金属に対する接着性が強くなり、成形機の内部におけるスクリュー等の金属製部品にこびりついて流動せず、成形不可能となったり、成形機の内部での流動状態が不安定となって吐出量が安定せず、成形品の寸法の不安定や表面の凹凸ムラ等の原因となるからである。
【0015】
一方、マレイン酸変性ポリプロピレン系相溶化剤の配合量が極端に少なくても、ポリオレフィン系樹脂と木質系充填剤との接着性や分散性の改善効果が不十分となるので、配合量は0.5重量部以上とすることが望ましい。また、マレイン酸変性率が極端に低くても、同様に接着性や分散性の改善効果が不十分となるので、マレイン酸変性率は0.3重量%以上とすることが望ましい。
【0016】
本発明において用いられるマレイン酸変性ポリプロピレン系相溶化剤は、従来公知の如く、ポリプロピレン系樹脂にマレイン酸又はその無水物を所定量添加してグラフト重合させてなるものであり、その骨格であるポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン樹脂であっても良いし、その他例えばランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン−α−オレフィン共重合体等、プロピレンを主たる単量体成分とするオレフィン系共重合体であっても良い。
【0017】
本発明において、木質樹脂成形体1に使用するポリオレフィン系樹脂11としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等、或いはそれらの2種以上の混合物等から適宜選択して使用することができる。
【0018】
中でも、化粧材用基材等として要求される剛性や表面硬度、寸法安定性(線膨張係数が小さいこと)などの面で、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂が最も適している。
【0019】
本発明において、木質樹脂成形体1に使用する木質系充填剤12としては、特に制限されることなく適宜選択が可能であるが、一般的には、木材をカッターミルなどによって破断し、これをボールミルやインペラーミルなどによって粉砕して、微粉状にしたもの(木粉)などを用いる。
【0020】
木質系充填剤12の平均粒径は、1〜200μm程度、中でも10〜150μm程度とすることが好ましい。平均粒径が1μm未満のものは、取り扱いが困難であるうえに、特に木質系充填剤12の配合量が多い場合は、樹脂への分散が悪いと、製造される木質樹脂成形体1に機械強度の低下が発生する。また、200μmより大きいと、製造される木質樹脂成形体1の均質性、平面性、機械的強度等が悪化するからである。
【0021】
本発明の木質樹脂成形体1は、必要に応じて発泡させても良い。発泡の手法としては、公知の手法がいずれも利用できる。一般的には、熱分解や化学反応によってガスを発生する化学発泡と、低沸点の液体に熱をかけて気化させる物理発泡とに分類でき、化学発泡剤としては無機系の重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、ホウ化水素ナトリウム、軽金属、アジド化合物等、また有機発泡剤としてアゾ系、ニトロソ系、ヒドラジド系等が、任意の組合せで使用できる。また、特に2倍を越える高発泡倍率での発泡には主に物理発泡が用いられ、発泡剤としては炭酸ガスや脂肪族炭化水素が主に用いられる。また、物理発泡に際しても発泡体のセル形状を整えるため化学発泡剤を併用することが多い。
【0022】
本発明の木質樹脂成形体1には、上述した相溶化剤や発泡剤の他、必要に応じて例えば熱安定剤、酸中和剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料又は染料等の着色剤、充填剤、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤、滑剤、造核剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、脱水剤、艶調整剤等を添加することもできる。
【0023】
これらの添加剤のうち熱安定剤としてはヒンダードフェノール系、硫黄系、リン系等、酸中和剤としてはステアリン酸金属塩、ハイドロタルサイト等、紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等、光安定剤としてはヒンダードアミン系等がある。
【0024】
難燃剤としてはハロゲン系、リン系、塩素系等、充填剤としては炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、アルミナ、タルク、マイカ、珪酸マグネシウム、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化鉄、カーボンブラック、金属粉等がある。
【0025】
滑剤としては炭化水素系、脂肪酸系、高級アルコール系、脂肪酸アマイド系、金属石鹸系、エステル系、シリコーン系、フッ素系等、造核剤としてはカルボン酸金属塩系、ソルビトール系、リン酸エステル金属塩系等、顔料としては縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリノン、アンスラキノン、イミダゾロン、フタロシアニン、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、コバルトブルー、雲母等のパール顔料等があり、これらの添加剤を任意の組合せで用いることができる。
【0026】
本発明において、木質樹脂成形体1の原料であるポリオレフィン系樹脂11、木質系充填剤12、相溶化剤及びその他の添加物の混練については、特に方法を問わないが、バンバリーミキサーによって混練し、ペレタイザーでペレット化する方法や、2軸押出混練機によって混合、ペレット化する方法などが一般的である。また、木質系充填剤12は、含水率が多いと、ペレタイズ時に発泡の原因となるので、混練前に予め乾燥機やホッパードライヤーで含水率が8重量%以下程度にまで乾燥させておくことが望ましい。
【0027】
本発明の木質樹脂成形体1は、そのまま建築用又は家具用等の構造材として使用される場合もあれば、そのまま又は表面に型押しや絵柄印刷等の装飾加工を施して、建築用又は家具用等の化粧材として使用される場合もある。後者における装飾加工としては、木質樹脂成形体1の表面に直接絵柄印刷等を施すことは一般に困難であるから、図2に示す様に、予め別途用意した熱可塑性樹脂フィルム等の支持体に絵柄印刷等の装飾加工を施した化粧シート2を、木質樹脂成形体1の表面の少なくとも一部(装飾加工を必要とする箇所)に積層して化粧材3とする手法によるのが、最も好適である。
【0028】
その際、化粧シート2として、木質樹脂成形体1に含有されるポリオレフィン系樹脂11と同系の熱可塑性樹脂であるポリオレフィン系樹脂を主体とするものを使用すると、使用後の化粧材3をリサイクルする際に、木質樹脂成形体1と化粧シート2とを分離することなく、そのまま木質樹脂成形体1の材料として再利用することが可能であり、リサイクル時の成形時には成形不良を発生することがなく、リサイクル品は木質感を損なったり強度が低下していたりすることがない等の利点がある。
【0029】
化粧シート2を構成するポリオレフィン系樹脂として具体的には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体や、これらを接着性の向上を目的として酸変性したもの、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等、或いはそれらの2種以上の混合物、共重合体等、各種のポリオレフィン系樹脂の中から適宜選択が可能であり、また、これらの中から選ばれる同種又は異種のポリオレフィン系樹脂からなる複数層の積層体を使用することもできる。
【0030】
積層される化粧シート2について重要な点は、上記した通り主に木質樹脂成形体1に含有されるポリオレフィン系樹脂11と同系の熱可塑性樹脂であるポリオレフィン系樹脂を用いることと、木目、石目、布目、抽象柄などの任意の意匠の絵柄印刷やエンボス加工等による装飾加工が施されていることで、化粧シート2自体の構成については何ら制約を受けるものではない。
【0031】
この化粧シート2は、例えば着色シートに絵柄印刷を施した単層化粧シート、着色シートに絵柄印刷を施したシートに、透明シートをドライラミネート法、エクストルージョンラミネート法、熱ラミネート法などによって貼り合わせた複層の化粧シートや、透明シートの裏面に印刷を施したバック刷りの単層の化粧シートなどから用途に応じて適宜選択が可能である。
【0032】
このとき化粧シート2に十分な隠蔽性があれば安定した意匠の再現が達成され、逆に化粧シート2が透明性を有する場合は木質樹脂成形体1の木質感を活かした意匠表現が可能になる。
【0033】
化粧シート2の木目柄等のパターン、絵柄、色彩等の印刷に用いるインキは、バインダーとしては硝化綿、セルロース、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル等の単独もしくは各変性物の中から適宜選択すればよい。これらは、水性、溶剤系、エマルジョンタイプのいずれでも問題なく、また1液タイプでも硬化剤を使用した2液タイプでも任意に選定可能である。さらに紫外線や電子線等の照射によりインキを硬化させることも可能である。
【0034】
中でも最も一般的な方法は、ウレタン系のインキでイソシアネートで硬化させる方法である。これらバインダー以外には通常のインキに含まれている顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、各種添加剤が添加されている。特によく用いられる顔料には縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリノン、アンスラキノン、イミダゾロン、フタロシアニン、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、コバルトブルー、雲母等のパール顔料等がある。
【0035】
また、いずれの化粧シート2においても、木質樹脂成形体1への貼り合わせのためのプライマーコートや、表面保護や艶調整のためのトップコート、エンボス法やグロスマット法等による導管表現等が施されていても構わない。また、化粧シート2におけるポリオレフィン系樹脂層に用いる添加剤も、木質樹脂成形体1におけると同様なものが適宜使用可能である。
【0036】
化粧シート2の厚さは特に問わないが、0.05〜0.3mm程度の範囲内とされるのが通例である。化粧シート2と木質樹脂成形体1との積層方法は特に問わず、例えば接着剤を介したドライラミネート法又はウェットラミネート法や、接着剤を介した又は介さない熱ラミネート法、超音波融着法や高周波融着法、木質樹脂成形体1の成形時に金型内に化粧シート2を導入して貼り合わせる成形同時ラミネート法等、従来公知の方法を任意に用いることができる。
【0037】
本発明の化粧材3の基材としての木質樹脂成形体1の側面には、化粧材3同士を相互に連結するための雄雌実などの嵌合構造が設けられていてもよい。木質樹脂成形体1を発泡させる場合には、嵌合構造部分の強度及び寸法精度を確保するために、嵌合構造部分を非発泡若しくは低発泡状態とすることが望ましい。側面に嵌合構造部分を設けた場合には、該嵌合構造部分にあっても、少なくとも嵌合連結状態において化粧面(外部に露出する表面)側から見える部分の木質樹脂成形体の表面にかけて、化粧面から連続して化粧シート2を積層しておくことが望ましい。
【0038】
本発明の化粧材3をリサイクルする場合には、表面に積層された化粧シート2を剥離除去することなく、化粧材3全体をそのまま粉砕し、必要に応じて木質系充填剤12、ポリオレフィン系樹脂11、各種添加剤等を適宜添加して、再度ペレット化し、これを木質樹脂成形体1の成形用材料として再利用することができる。この場合も、破砕物の混練方法やペレット化方法、成形方法等については、特に方法は問わない。また、再ペレット化する代わりに、破砕物をそのまま木質樹脂成形体1の成形材料として成形機に投入したり、木質樹脂成形体1の成形時に破砕物と共に木質系充填剤12やポリオレフィン系樹脂11、各種添加剤等を同時に成形機に投入し、成形機内で混練しつつ成形したりしても、勿論かまわない。
【0039】
【実施例】
以下に、本発明の具体的な実施例及び比較例を示して説明する。
【0040】
実施例1
平均粒径100μmの木粉30重量部、ポリプロピレン樹脂67重量部、及びマレイン酸変性率1重量%のマレイン酸変性ポリプロピレン系相溶化剤3重量部からなる配合組成物を、1軸押出機により厚さ5mm、幅300mmの断面長方形状の平板状に押出し成形し、本発明の木質樹脂成形体を作製した。
【0041】
上記木質樹脂成形体の成形中には特に大きな問題はなく、得られた木質樹脂成形体の厚みムラは最大0.2mm(厚み変動範囲4.8〜5mm)、初期曲げ弾性率は1580MPa、アイゾット衝撃試験による耐衝撃性は2.3kJ/m2であった。
【0042】
上記木質樹脂発泡成形体の表面にコロナ放電処理を施した後、その上面及び両側面に、木目印刷が施されたポリプロピレン樹脂系化粧シートを、ラッピング加工法にて積層して、本発明の化粧材を作製した。得られた化粧材は、表面の大きな歪みもなく良好な意匠性を示し、床材等として好適に使用可能な強度を有するものであった。
【0043】
比較例1
上記実施例1において、上記マレイン酸変性ポリプロピレン系相溶化剤を、マレイン酸変性率10重量%のものに変更し、その他は上記実施例1と同一の条件にて成形しようとしたところ、木粉及び樹脂が押出成形機のスクリューにこびりついて流動しないため、成形不可能であった。
【0044】
比較例2
上記実施例1において、上記ポリプロピレン樹脂及び上記マレイン酸変性ポリプロピレン系相溶化剤の配合量を、それぞれ60重量部及び10重量部に変更し、その他は上記実施例1と同一の条件にて成形しようとしたところ、木粉及び樹脂が押出成形機のスクリューにこびりついて流動しないため、成形不可能であった。
【0045】
比較例3
上記実施例1において、ポリプロピレン樹脂の配合量を70重量部に変更すると共に、マレイン酸変性ポリプロピレン系相溶化剤を配合せず、その他は上記実施例1と同一の条件にて木質樹脂成形体を成形した。
【0046】
上記成形中は、樹脂配合物の流動性が悪いために、成形体の寸法が安定せず、得られた木質樹脂成形体の厚みムラは最大0.8mm(厚み変動範囲4.2〜5mm)、初期曲げ弾性率は1220MPa、アイゾット衝撃試験による耐衝撃性は1.8kJ/m2であった。
【0047】
上記木質樹脂発泡成形体の表面にコロナ放電処理を施した後、その上面及び両側面に、木目印刷が施されたポリプロピレン樹脂系化粧シートを、ラッピング加工法にて積層して、化粧材を作製した。得られた化粧材は、斜光観察にて明らかに表面の大きなうねり状の歪みが認められ、外観意匠性に問題があったほか、落下物等の衝撃により割れや易く、床材等として使用するには問題のあるものであった。
【0048】
【発明の効果】
以上詳細に説明した様に、本発明の木質樹脂成形体及び化粧材は、ポリオレフィン系樹脂及び木質系充填剤を主成分とする木質樹脂成形体において、ポリプロピレン樹脂67重量部、平均粒径100μmの木粉30重量部、及びマレイン酸変性率1重量%のマレイン酸変性ポリプロピレン系相溶化剤3重量部を含有としたことにより、金属等との接着性が抑えられ、成形過程において押出機のスクリューにこびりつくことによる成形不能事故の防止が可能になり、寸法精度の良い成形体が得られ、しかも、ポリオレフィン系樹脂と木質系充填剤との接着性や分散性は十分であり、強度的にも問題のない木質樹脂成形体及び化粧材を得ることができるという顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の木質樹脂成形体の実施の形態を示す模式断面図。
【図2】本発明の化粧材の実施の形態を示す模式断面図。
【符号の説明】
1 木質樹脂成形体
11 ポリオレフィン系樹脂
12 木質系充填剤
2 化粧シート
3 化粧材
Claims (2)
- ポリオレフィン系樹脂及び木質系充填剤を主成分とする木質樹脂成形体において、ポリプロピレン樹脂67重量部、平均粒径100μmの木粉30重量部、及びマレイン酸変性率1重量%のマレイン酸変性ポリプロピレン系相溶化剤3重量部を含有し、初期曲げ弾性率1580MPa、アイゾット衝撃試験による耐衝撃性が2.3kJ/m 2 であることを特徴とする木質樹脂成形体。
- 請求項1に記載の木質樹脂成形体の表面の少なくとも一部にポリプロピレン樹脂系化粧シートが積層されてなることを特徴とする化粧材。
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