JP4009847B2 - 熱処理異常検知方法及び温度調節器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱処理における異常を検知する熱処理異常検知方法、それを用いた温度調節器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、拡散炉などにおける熱処理の異常を検知する方法として、時間に対する温度変化の正常な波形を基準波形として予め記憶しておき、時間に対する実際の温度変化の波形と前記基準波形とを比較し、その差が許容値を越えたときに、警報信号を発生するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−152441号公報(第2頁、図2)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる従来例では、実際に測定される温度変化の波形と、予め記憶されている固定的な基準波形との比較であり、実際に測定される温度変化の波形は、周囲温度などの各種の変動に応じて揺れが生じるのに対して、基準波形は固定である。
【0005】
このため、上述の許容値を小さくして検出感度を高めようとすると、実際に測定される温度変化の波形の揺れなどによって誤検知が発生し易いという難点がある。
【0006】
本発明は、以上のような点に鑑みて為されたものであって、熱処理における異常を高い精度で検知できる方法を提供するとともに、かかる熱処理異常検知方法を用いた温度調節器を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明では、上記目的を達成するために、次のように構成している。
【0008】
すなわち、本発明の熱処理異常検知方法は、温度制御手段によって温度制御される熱処理手段における熱処理の異常を検知する方法であって、温度制御ループ内の信号の実際値と、モデルを用いて予測した前記信号の予測値とに基づいて、前記熱処理の異常を検知するものであり、前記実際値が、温度検出手段によって検出される前記熱処理手段の検出温度であり、前記モデルが、少なくとも前記温度制御手段からの操作量を入力として正常な熱処理状態における前記熱処理手段の温度を前記予測値として出力する第1のモデルと、少なくとも前記温度制御手段からの操作量を入力として異常な熱処理状態における前記熱処理手段の温度を前記予測値として出力する第2のモデルとからなり、前記温度検出手段によって検出される前記熱処理手段の検出温度と前記第1のモデルを用いて予測される前記熱処理手段の温度との差を求めるステップと、前記第1のモデルを用いて予測される前記熱処理手段の温度と前記第2のモデルを用いて予測された前記熱処理手段の温度との差を求めるステップと、 前記両ステップでそれぞれ求められた差を乗算するステップと、 前記乗算するステップで乗算された値を累積するステップと、前記累積した値と閾値とを比較するステップとを備えるものである。
【0009】
ここで、熱処理手段とは、熱処理盤、熱処理炉、成形機のシリンダ部、包装機の熱圧着部などの被処理物を熱処理するものをいい、加熱処理に限らず、冷却処理であってもよい。
【0010】
また、温度制御ループ内の信号とは、温度制御手段に入力される制御偏差、温度制御手段から出力される操作量、制御対象からフィードバックされるフィードバック量などの温度制御ループの各部の信号をいい、また、実際値とは、予測値に対する実際の値をいい、例えば、温度制御手段に入力される制御偏差の値、温度制御手段から出力される操作量の値、制御対象からフィードバックされるフィードバック量の値などをいう。
【0011】
本発明によると、温度制御ループ内の信号の実際値と、モデルを用いて予測した予測値とに基づいて、熱処理の異常を検知するので、例えば、周囲温度などの変動を、モデルを用いて予測値に反映させることができ、実際に検出された温度変化の波形と固定的な基準波形とに基づいて、異常を検知する従来例に比べて、変動を考慮した異常の検知が可能となる。
【0012】
更に、第1のモデルによって予測される正常な熱処理状態における熱処理手段の温度と、第2のモデルによって予測される異常な熱処理状態における熱処理手段の温度とを用いているので、一つのモデルを用いる場合に比べて、より精度の高い異常の検知が行えることになり、また、前記両ステップでそれぞれ求められた差を乗算して累積しているので、熱処理期間中において、差の正負が逆転しても累積値が減少して閾値に近づくようなことがなく、熱処理がほぼ終了して温度が安定した時点で前記比較を行っても誤検知することがない。
【0013】
また、本発明の熱処理異常検知方法は、温度制御手段によって温度制御される熱処理手段における熱処理の異常を検知する方法であって、温度制御ループ内の信号の実際の波形と予め格納されている前記信号の基準波形との差を求めるステップと、求めた差の極性を無くすステップと、極性を無くした差を累積するステップと、累積した値と閾値とを比較するステップとを備え、前記実際の波形が、温度検出手段によって検出される前記熱処理手段の検出温度変化の波形であり、前記基準波形が、前記熱処理手段の温度変化の波形であって、正常な熱処理状態に対応する第1の基準波形および異常な熱処理状態に対応する第2の基準波形からなり、前記差を求めるステップは、前記熱処理手段の検出温度変化の波形と前記第1の基準波形との差を求める処理と、前記第1の基準波形と前記第2の基準波形との差を求める処理とを含み、前記求めた差の極性を無くすステップは、前記差を求めるステップの各処理でそれぞれ求めた二つの差を乗算する処理を含むものである。
【0014】
ここで、差の極性を無くすとは、正または負の値として得られる差の正負を無くすことをいい、例えば、2乗したり、絶対値をとったり、あるいは、乗算または除算して一方の符号の値、好ましくは正の値にすることをいう。また、極性を無くす処理には、差の値が、時間的に正の値から負の値に変化する場合に、一方の符号の値、例えば、正の値とする処理、また、差の値が、時間的に負の値から正の値に変化する場合に、他方の符号の値、例えば、負の値とする処理を含むものである。
【0015】
本発明によると、温度制御ループ内の信号の実際の波形と、予め格納されている基準波形との差をとって累積し、累積した値と閾値とを比較して異常を検知するのであるが、差を累積する前に、差の極性を無くしているので、例えば、熱処理期間中において、前記差の正負が逆転しても累積値が減少して閾値に近づくようなことがなく、累積値が増大することになり、熱処理がほぼ終了して温度が安定した時点で前記比較を行っても誤検知することがない。
【0016】
更に、正常な熱処理状態に対応する第1の基準波形と、異常な熱処理状態に対応する第2の基準波形とを用いているので、一つの基準波形を用いる場合に比べて、より精度の高い異常の検知が行えることになり、また、前記差を求めるステップの各処理でそれぞれ求められた差を乗算して累積しているので、熱処理期間中において、差の正負が逆転しても累積値が減少するようなことがなく、熱処理がほぼ終了して温度が安定した時点で前記比 較を行っても誤検知することがない。
【0017】
本発明の温度調節器は、熱処理手段の温度を検出する温度検出手段からの検出温度に基づいて、前記熱処理手段の温度が目標温度になるように操作量を出力する温度制御手段と、前記熱処理手段における熱処理の異常を検知する熱処理異常検知手段とを備え、前記熱処理異常検知手段は、少なくとも前記操作量を入力として温度制御ループ内の信号の予測値を出力するモデルと、前記予測値と前記温度制御ループ内の前記信号の実際値とに基づいて前記熱処理の異常を検知する検知部とを有し、前記モデルが、正常な熱処理状態における前記熱処理手段の温度を前記予測値として出力する第1のモデルと、異常な熱処理状態における前記熱処理手段の温度を前記予測値として出力する第2のモデルとからなり、前記実際値が、前記温度検出手段によって検出される前記熱処理手段の検出温度であり、 前記検知部は、前記第1のモデルを用いて予測される前記熱処理手段の温度と前記温度検出手段によって検出される前記熱処理手段の検出温度との差を算出するとともに、前記第1のモデルを用いて予測される前記熱処理手段の温度と前記第2のモデルを用いて予測される前記熱処理手段の温度との差を算出し、前記二つの差を乗算して累積する演算部と、この演算部で演算された累積値と閾値とを比較する比較部とを有している。
【0018】
本発明によると、温度制御ループ内の信号の実際値と、少なくとも操作量を入力とするモデルを用いて予測した予測値とに基づいて、熱処理の異常を検知するので、周囲温度などの変動を予測値に反映させることができ、実際に検出された温度変化の波形と固定的な基準波形とに基づいて、異常を検知する従来例に比べて、変動を考慮した異常の検知が可能となる。
【0019】
更に、第1のモデルによって予測される正常な熱処理状態における熱処理手段の温度と、第2のモデルによって予測される異常な熱処理状態における熱処理手段の温度とを用いているので、一つのモデルを用いる場合に比べて、より精度の高い異常の検知が行えることになり、また、演算部では、二つの差を乗算して累積しているので、熱処理期間中において、差の正負が逆転しても累積値が減少するようなことがなく、熱処理がほぼ終了して温度が安定した時点で前記比較を行っても誤検知することがない。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面によって本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
ここで、実施の形態の説明に先立って、その前提あるいは参考となる構成について、参考例として説明する。
【0022】
(参考例1)
この参考例では、ウェハを熱処理盤(加熱プレート)によって熱処理する熱処理装置に適用して説明する。
【0023】
図1は、この熱処理装置の概略構成図である。ウェハを熱処理する熱処理盤5の温度を、該熱処理盤5の内部に設けられた温度センサ6で検出して温度調節器7に入力し、温度調節器7では、設定されている目標温度SPと検出温度PVとの偏差に基づいて、温度制御手段としてのPIDコントローラ8でPID演算等を行って操作量MVを電磁開閉器等の操作器9に出力し、熱処理盤5に配設されているヒータ10の通電を制御して熱処理盤5の温度を目標温度になるように制御している。なお、熱処理盤5には、ヒータ10および温度センサ6は、それぞれ複数配設されて各チャンネル毎に制御されるが、以下の説明では、1チャンネルのみについて代表的に行う。
【0024】
図2は、熱処理盤5にウェハ11を載置した状態を示す図であり、同図(a)は平面図であり、同図(b)は側面図である。
【0025】
熱処理盤5の中央のウェハ11の載置領域の外周部には、ウェハ6を、熱処理盤5から離間して支持するための複数のプロキシミティシート12が配置されるとともに、前記載置領域の中央には、プロキシミティピン13が配置されている。さらに、プロキシミティシート12の前記載置領域外には、ウェハ11を載置領域に案内するためのガイドピン14が突設されている。
【0026】
熱処理盤5には、該熱処理盤5の表面から出退自在に昇降する図示しない複数の昇降ピンが配設されており、図示しない搬送アームによって熱処理盤5の載置領域の上方に搬送されたウェハ11を、熱処理盤5の表面より上昇に突出させた複数の昇降ピンで支持した後、これら昇降ピンを降下させて熱処理盤5の表面より内部に退入させてウェハ11を載置領域に載置するように構成されている。
【0027】
このような熱処理盤5よるウェハ11の熱処理では、ウェハ11の均一な熱処理が必要であるが、次のような熱処理異常が生じる場合がある。
【0028】
すなわち、上述の搬送アームと昇降ピンとの間のウェハ11の受け渡しの僅かな位置ずれが集積されてウェハ11の載置位置が大きくずれると、図3(a)に示されるようにウェハ11がガイドピン14に乗り上げて均一な熱処理が行われなかったり、あるいは、ウェハ11と熱処理盤5の表面との間に、パーティクル等の異物が介在してウェハ11が傾斜した状態で均一な熱処理が行われなかったり、さらには、多くのプロセスを経たウェハ11自体が変形して例えば、図3(b)に示されるように反りが生じて均一な熱処理が行われなかったりする場合があり、このような場合には、製品不良となる。
【0029】
このような熱処理の異常の検知に、正常な熱処理の温度変化の波形を基準波形とし、実際の温度変化の波形と比較してその差が許容値を越えたときに、異常であると検知する上述の従来例を適用しようとすると、許容値を小さくして検出感度を高める必要があり、上述のように誤検知が発生し易いという難点がある。
【0030】
そこで、この参考例では、以上のような熱処理の異常を次のようにして検知するようにしている。
【0031】
すなわち、図1に示されるように、温度調節器7は、熱処理の異常を検知する熱処理異常検知手段15を備えており、この熱処理異常検知手段15は、PIDコントローラ8からの操作量MVを入力として熱処理盤5の温度を予測値として出力するモデル16と、このモデル16を用いた予測値と温度センサ6によって検出される熱処理盤5の実際の検出温度とに基づいて熱処理の異常を検知する検知部としての比較部17とを有している。
【0032】
PIDコントローラ8および熱処理異常検知手段15などは、例えば、マイクロコンピュータによって構成される。
【0033】
この参考例のモデル16は、ウェハ11が正規の載置領域に載置されて正常に熱処理されているとした場合の正常なモデルであり、図4に示される構造を有する。
【0034】
この参考例では、かかるモデル構造にも特徴を有するものであり、このモデル構造について、詳細に説明する。
【0035】
入出力が複数点の干渉のある制御対象、すなわち、制御対象に入力される操作量と制御対象からの制御量とを複数備えるとともに、操作量と制御量との間に相互干渉が存在する制御対象を、非干渉化制御する公知技術として、図5に示される非干渉化PID制御(「PID制御」システム制御情報学会編、須田信英著者代表、朝倉書店、p62)がある。
【0036】
この例の制御対象30は、2入力(u1,u2)2出力(z1,z2)の2chの干渉のある制御対象であり、P11,P21,P12,P22は、伝達関数、C11,C22は、制御対象30からの制御量z1,z2と目標値r1,r2との偏差に基づいて、操作量u1’,u2’を、それぞれ出力する主補償器であり、C12(s)とC21(s)は、非干渉化のためのクロスコントローラである。
【0037】
この従来例は、制御対象の干渉の関係を行列として考えるものであり、干渉を打ち消すように、調節部31における非干渉化のためのクロスコントローラC12(s)とC21(s)の大きさを決めるものである。
【0038】
制御量z1が操作量u2’の影響を受けず、制御量z2が操作量u1’の影響を受けないようにクロスコントローラC12(s)とC21(s)を設計すれば、非干渉化を達成することができる。このような影響の排除手段として逆行列を用いる方法もある。
【0039】
しかしながら、前提となっている制御対象の干渉の関係は、単純な低次の行列関係ではない。そのため、上述の従来例の1次のモデルでは、理想的な非干渉化を実現することはできない。例えば、熱干渉のある制御対象に、従来の非干渉化PID制御を適用すると、図6および図7に示されるようになる。これらの図において、太い実線がu1,z1に対応するch1、細い実線がu2,z2に対応するch2をそれぞれ示している。
【0040】
図6は、1次モデルで非干渉化した制御対象の特性である。1000秒で制御対象のch1にステップ状のヒータ出力(操作量)を入力した場合の温度(制御量)である。定常的には、非干渉化は充分に実現できているが、過渡的には問題である。ch1の温度が上昇しているのと反対にch2の温度は低下している。
【0041】
図7は、その制御対象をCHR調整則で制御したときの目標値応答である。190℃の状態からch1だけ目標値を10℃上昇させたステップ応答である。過渡的な非干渉化が実現できていないため、ch1の目標値だけを変更したにもかかわらず、ch2の温度も大きく変化していることが分かる。
【0042】
このような過渡的な非干渉化を実現できない原因は、制御対象の干渉の関係は、図5で示される操作量uから制御量zへの単純で一方的な関係ではないからである。
【0043】
干渉よる熱量の移動は、温度差に起因している。複数点の制御対象の各点間の温度差が大きいときには、干渉による熱の移動は大きく、各点間の温度差が小さいときには、干渉による熱の移動は小さい。このような関係が考慮されていないために、想定する制御対象モデルの誤差が大きく、そのために、非干渉化制御の逆行列により打ち消せる要因も限界があるからである。このため、従来の非干渉化制御は、実用に耐える場合が少なかった。
【0044】
そこで、本件出願人は、平成14年8月9日提出の特願2002−23276「制御対象モデル、制御装置および温度調節器」において、非干渉化制御などに好適な制御対象モデルを提案している。
【0045】
図8は、この先に提案している制御対象モデル(以下、「温度差モデル」ともいう)のブロック線図であり、上述の図5の従来例の制御対象30に対応するものである。
【0046】
この制御対象モデル1は、2入力(u1,u2)2出力(z1,z2)の熱干渉系の制御対象の熱モデルであり、2chの制御対象モデルである。
【0047】
入力u1,u2としては、例えば、熱処理盤や熱処理炉などの制御対象をそれぞれ加熱する二つのヒータ出力である操作量を、また、出力z1,z2としては、例えば、制御対象の温度をそれぞれ検出する二つの温度センサからの検出温度である制御量を想定することができる。
【0048】
この制御対象モデル1は、2出力z1,z2の差を、減算部2で算出し、フィードバック要素Pfを介して2入力u1,u2に、減算部3および加算部4を介して正負を異ならせてそれぞれフィードバックするものである。なお、P11,P22は、各入力u1,u2から各出力z1,z2への伝達関数である。
【0049】
この制御対象モデル1は、熱干渉系の熱モデルであり、温度差があるときに、熱量の移動が生じ、この熱量の移動は、温度差に比例するというフーリエの法則の意味するところと等価である。
【0050】
フーリエの法則は、例えば、「伝熱工学」、田坂英紀著、森北出版株式会社のp6より、熱移動量を決める重要な因子は、空間的な温度勾配であり、2点間の距離をΔx、2点間の温度差をΔTとすると、熱流束q(単位面積当たりの熱移動量)は、λを熱伝導率として、
q=−λ(dT/dx)
となる。
【0051】
図8のフィードバック要素Pfがフーリエの法則の熱伝導率λに対応する。
【0052】
この制御対象モデルは、2出力z1,z2の差、すなわち、温度差を、干渉の度合い等に対応するフィードバック要素Pfを介して2入力u1,u2、すなわち、熱量に対応する操作量に、正負を異ならせてそれぞれフィードバックするものであり、温度差によって、一方のchから他方のchへ熱量の移動が生じ、一方のchは熱量が奪われ(負)、他方のchには熱量が足される(正)という熱干渉の現象をブロック線図で表したものである。
【0053】
すなわち、この制御対象モデル1は、熱系の制御対象の干渉は、二つの温度があって、温度の差ができたときに、その温度差に比例した熱量の移動が起こるというフーリエの法則を意味している。
【0054】
フィードバック要素pfは、温度差によってどれだけ熱量が移動するかの比率であって、係数値であってもよいし、一次遅れ要素であってもよい。
【0055】
次に、この制御対象モデル1と図5の従来例の制御対象モデルとの特性の違いについて説明する。
【0056】
図9は、この制御対象モデル1に仮のパラメータを設定した構成を示している。この制御対象モデル1の定常特性が、図10である。制御対象の入力である操作量u1のch1だけに1000秒の時点に0から2のステップを入力したときの制御量を示しており、ch2の操作量u2は、常に0であり、太い実線がch1を、細い実線がch2をそれぞれ示している。
【0057】
この図10定常特性に一致するように従来の制御対象モデルのパラメータを設定した結果の定常特性が図11であり、従来例の制御対象モデルのパラメータが図12である。
【0058】
定常特性は、良く一致させることができても、過渡特性は、一致させることができない。
【0059】
この制御対象モデル1と従来例の制御対象モデルとの過渡特性を拡大したものが、図13および図14である。この制御対象モデル1では、図13に示されるように、温度差が発生し、熱の移動が始まるために遅れが発生しているのに対して、従来例の制御対象モデルでは、図14に示されるように、遅れなくch2の温度は上昇している。この違いが、制御性能の違いとして現れるのである。
【0060】
従来例の制御対象モデルの干渉の要素を高次にすれば、この制御対象モデル1に近い状態にすることができるが、パラメータの数が増大して複雑になるという欠点が発生する。
【0061】
先に提案している上記出願で明らかにしているように、従来の非干渉化制御では、過渡的な非干渉化は実現できないのに対して、温度差モデルを用いた非干渉化制御では、過渡的な非干渉化の効果が得られるものである。
【0062】
図4に示されるモデル16は、以上説明した温度差モデルであり、Lはむだ時間要素、P11は熱処理盤5の伝達関数、P22はウェハ11の伝達関数、Pfは熱処理盤5とウェハ11との間の熱伝導率であるフィードバック要素である。
【0063】
この参考例では、ウェハ11が熱処理盤5に載置される前には、図4のスイッチ手段18がオフして熱処理盤5とウェハ11との温度差は、入力側にフィードバックされることなく、実質的に、熱処理盤5単独の温度制御がなされることになる。ウェハ11が熱処理盤5に載置されて熱処理が終了される間、ウェハの全体的な熱処理動作を制御する上位のコントローラから外乱タイミング信号が入力され、この外乱タイミング信号の入力に応答して、ウェハ11が熱処理盤5に載置されると、スイッチ手段18がオンして熱処理盤5とウェハ11との温度差が、フィードバック要素Pfを介して入力側にフィードバックされ、ウェハ11の熱処理が終了すると、スイッチ手段18が再びオフされるように構成されている。
【0064】
この温度差モデル16は、上述のように、熱処理が正常に行われているとした場合の正常なモデルであって、フィードバック要素Pfである熱処理盤5とウェハ11との間の熱伝導率は、正常に載置された状態の熱伝導率に設定される。
【0065】
図15は、この温度差モデル16に仮のパラメータを設定した構成を示しており、熱処理盤5の伝達関数P11は、一次遅れの例を示しており、ウェハ11の伝達関数P22は、ウェハ11の熱容量(または、熱容量と放熱抵抗からなる1次遅れ伝達関数でもよいし、スイッチ手段18がオフした時には熱容量の積算値を室温に変更する手段を有した熱容量でもよい)に対応している。
【0066】
熱処理盤5の伝達関数P11は、例えば、オートチューニグによる最大傾きから求めることができ、むだ時間Lも同様にオートチューニングによって求めることができる。また、ウェハ11の伝達関数P22である熱容量は、例えば、ウェハの材質と大きさから求めることができる。フィードバック要素Pfである熱伝導率は、調整によって合わせ込むことができる。
【0067】
ウェハ11の伝達関数P22を、熱容量と放熱抵抗とからなる1次遅れの伝達関数、あるいは、熱容量の積算値を室温に変更する手段(例えば、ソフト的にデータの書き換え処理を行う手段)を有する熱容量の伝達関数とすることによって、熱容量にたまった熱量を減らして2回目以降のウェハの載置時に室温から開始することができる。
【0068】
この温度差モデル16では、PIDコントローラ8からの操作量MVを入力として熱処理盤5の温度を予測値として出力している。
【0069】
この参考例では、図1に示されるように、温度センサ6によって実際に検出される熱処理盤5の検出温度PVと温度差モデル16を用いて予測される熱処理盤5の温度とを比較し、例えば、その差が閾値を越えた場合に、熱処理に異常が生じたとして検知信号を、例えば、上位のコントローラに出力するものであり、上位のコントローラは、警報表示等の適宜の処理を行うものである。
【0070】
ウェハ11が上述のガイドピン14や異物に乗り上げたり、反ったりした異常な熱処理状態では、その位置によって熱処理盤5とウェハ11との間隔が正常な間隔よりも広くなり、あるいは、逆に正常な間隔より狭くなることになる。したがって、正常な熱処理状態に比べて、熱処理盤5からウェハ11への熱量の移動が少なくなり、あるいは、逆に熱処理盤5からウェハ11への熱量の移動が多くなり、したがって、図16の実線で示される正常な状態の熱処理盤5の温度低下に比べて、破線あるいは一点鎖線で示されるように、熱処理盤5の温度低下が少なくなり、あるいは、多くなる。
【0071】
そこで、正常な状態で予測される熱処理盤5の温度と実際に温度センサ6で検出された熱処理盤5の検出温度とを比較することによって、熱処理の異常を検知できるものである。
【0072】
しかも、この参考例では、正常な熱処理状態における熱処理盤5の温度を、PIDコントローラ8からの操作量MVを入力として温度差モデル16を用いて予測しているので、この予測された温度は、周囲温度などの変動に応じて変動することになり、上述の従来例のような固定された基準波形とは異なり、前記変動などによる誤検知を低減できることになる。特に、スイッチ手段18がオフの時の熱容量の積算値を実際の室温に設定することで、周囲温度などの変動を、予測される熱処理盤5の温度に精度よく反映させることができる。
【0073】
この参考例では、操作量のみを入力として熱処理盤5の温度を予測したけれども、本発明の他の実施の形態として、操作量に加えて、周囲温度やヒータの電源電圧などを入力して熱処理盤の温度をより精度良く予測するようにしてもよい。
【0074】
また、温度差モデルに代えて、従来のモデル、例えば、図17に示されるような従来のモデルを用いて熱処理盤5の温度を予測するようにしてもよい。なお、この従来のモデルは、一次遅れ(あるいは一次遅れ+むだ時間)のモデルの出力に、ウェハの載置による外乱分を加算して熱処理盤5の温度とするものである。
【0075】
(参考例2)
図18は、他の参考例の概略構成図であり、上述の参考例に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0076】
この参考例では、上述と同様の温度差モデル16を用いて予測した熱処理盤5の温度と温度センサ6によって検出された熱処理盤5の実際の検出温度とに基づいて熱処理の異常を検知する検知部19の構成に特徴を有しており、その他の構成は、上述の参考例と同様である。
【0077】
検知部としては、例えば、モデルを用いて予測した熱処理盤5の温度と温度センサ6で検出された実際の熱処理盤5の検出温度との差を求め、それを累積して閾値と比較して判定するという構成も考えられるが、本件発明者は、かかる構成では、次のような不具合があることを見出し、これに基づいて、この参考例の検知部19の構成を創案したものである。
【0078】
すなわち、上述の図16に示されるように、ウェハ11を熱処理盤5に載置した場合において、ウェハ11と熱処理盤5との間隔が正常な状態、前記間隔が広い状態、あるいは、前記間隔が狭い状態では、熱処理盤5の温度低下は、異なるのであるが、ある時点t1を境界にしてその大小関係が逆転してしまう。例えば、実線で示される正常な状態と破線で示される異常な状態とでは、前記ある時点t1までは、破線の方が温度が高いのであるが、前記ある時点t1以降は、実線の方が温度が高くなる。
【0079】
したがって、上述のようにモデルで予測した熱処理盤5の温度と実際に検出される熱処理盤5の検出温度との差をとってそれを累積(積分)して閾値と比較して異常を判定する構成では、前記ある時点t1までは、累積値が増大していくものの、前記ある時点t1以降では、累積値が減少していくことになる。このため、温度が安定した状態、すなわち、ある時点t1以降で異常の判定を行うとすると、前記累積値が小さくなって閾値に近づくために、誤検知する虞がある。
【0080】
そこで、この参考例では、図18に示されるように、検知部19は、モデル16を用いて予測された熱処理盤5の温度と温度センサ6によって検出された熱処理盤6の検出温度と差を算出するととともに、前記差の極性(正負)を無くして累積(積分)する演算部20と、この演算部20で演算された累積値と閾値22とを比較する比較部21とを備えている。
【0081】
演算部20は、予測された熱処理盤5の温度と熱処理盤5の検出温度と差をとる減算部23と、この減算部23の出力を2乗して正負を無くす乗算部24と、この乗算部24の出力を積分する積分部25とを備えている。
【0082】
この参考例によれば、モデル16を用いて予測された熱処理盤5の温度と熱処理盤5の検出温度との差をとり、その差を2乗して極性を無くした後に積分しているので、上述のように、ある時点t1を境界にして温度の大小関係が逆転しても、積分値が減少することはなく、安定した状態で異常の判定を行えることになる。
【0083】
(実施の形態1)
図19は、本発明の実施の形態の概略構成図であり、上述の参考例に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0084】
上述の各参考例では、正常な熱処理状態の温度差モデル16を用いて正常な熱処理状態における熱処理盤5の温度を予測したのに対して、この実施の形態では、正常な熱処理状態の温度差モデル16(以下、「第1のモデル」ともいう)に加えて、例えば、ウェハ11がガイドピン14に乗り上げてウェハ11と熱処理盤5との間隔が、検知したい最小の間隔、例えば、200μmになったとした異常な熱処理状態の温度差モデル26(以下、「第2のモデル」ともいう)を備えており、これら両モデル16,26は、ウェハ11と熱処理盤5との間隔の相違に対応して図4におけるフィードバック要素Pfである熱伝導率が相違しているのみである。
【0085】
第1のモデル16では、上述の各参考例と同様に、正常な熱処理状態における熱処理盤5の温度を予測値として出力し、第2のモデル26では、ウェハ11がガイドピン14などに乗り上げてウェハ11と熱処理盤5との間隔が200μmである異常な熱処理状態における熱処理盤5の温度を予測値として出力する。
【0086】
この実施の形態では、検知部19−2は、第1のモデル16を用いて予測された熱処理盤5の温度と温度センサ6によって検出された熱処理盤5の検出温度との差を算出するととともに、第1のモデル16を用いて予測される熱処理盤5の温度と第2のモデル26を用いて予測される熱処理盤5の温度との差を算出し、前記二つの差を乗算して累積(積分)する演算部20−2と、この演算部20−2で演算された累積値と閾値27とを比較する比較部28とを備えている。
【0087】
演算部20−2は、第1のモデル16を用いて予測された熱処理盤5の温度と温度センサ6によって検出された熱処理盤5の検出温度との差を算出する第1の減算部29と、第1のモデル16を用いて予測された熱処理盤5の温度と第2のモデル26を用いて予測された熱処理盤5の温度との差を算出する第2の減算部32と、両減算部29,32の二つの差を乗算する乗算部33と、この乗算部33の出力を累積(積分)する積分部34とを備えている。
【0088】
この実施の形態では、比較部28における閾値27として、第2の減算部32の出力を二乗して積分した値を用いている。
【0089】
図20は、この実施の形態の動作説明に供する各部の概略信号波形図であり、
この図20では、周囲温度などの変動がない状態を示している。
【0090】
同図(a)は第1のモデル16で予測される熱処理盤5の温度S1(一点鎖線)、第2のモデル26で予測される熱処理盤5の温度S2(破線)および温度センサ6で実際に検出される熱処理盤5の検出温度S3(実線)を示し、同図(b)は第1の減算部29の出力S4(実線)および第2の減算部32の出力S5(破線)を示し、同図(c)は乗算部33の出力S6(実線)を示し、同図(d)は積分部34の出力S7(実線)をそれぞれ示している。なお、同図(c)には、第2の減算部32の出力の2乗の値を、同図(d)は、その2乗の値を積分した値を破線で併せて示している。
【0091】
この図20においては、温度センサ6で検出される熱処理盤5の検出温度S3は、ウェハ11がガイドピン14などに乗り上がって、ウェハ11と熱処理盤5との間隔が、200μmを越えている状態を示している。
【0092】
同図(a)に示されるように、t0において、ウェハ11が熱処理盤5に載置されると、熱処理盤5の温度は低下するのであるが、上述のある時点t1を境界にして大小関係が逆転し、したがって、同図(b)に示されるように、前記ある時点t1を境界に、両減算部29,32の出力S4,S5の正負がそれぞれ反転している。
【0093】
この実施の形態では、両減算部29,32の出力S4,S5を乗算することによって同図(c)に示される値とし、この値を累積し、同図(d)に示されるように、安定した時点t2において破線で示される閾値S8と比較して200μm以上の乗り上げによる熱処理異常を検知するようにしている。
【0094】
このように第2のモデル26で設定した、例えば、200μm以上の乗り上げによる熱処理異常を精度よく検知できることになる。
【0095】
また、この実施の形態の構成によれば、ウェハ11が傾斜して熱処理盤5との間隔が正常な間隔よりも狭くなった場合にも、同様に異常を検知できることになる。この場合には、図20(b)において、第1の減算部29の出力S4が、前記ある時点t1を境界にして負から正に反転し、それに応じて、図20(c),(d)の値が、負の値となるものであり、適当な負の閾値を設定することにより、
ウェハ11が熱処理盤5に近接し過ぎた異常な熱処理を検知できることになる。
【0096】
(参考例3)
図21は、更に他の参考例の概略構成図であり、上述の図18の実施の形態に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0097】
上述の例では、温度差モデル16,26を用いて熱処理盤5の温度を予測したのに対して、この参考例では、正常な熱処理状態における熱処理盤5の温度変化の波形(PV波形)を基準波形として記憶部35に予め記憶しておき、演算部20−3では、この正常なPV波形と温度センサ6で実際に検出された熱処理盤5の検出温度変化の波形との差を算出するととともに、その差を2乗して極性を無くして累積し、この累積値と閾値22とを比較部21で比較して異常を検知するようにしている。
【0098】
演算部20−3は、予め記憶されている正常なPV波形と熱処理盤5の検出温度の波形との差をとる減算部23と、この減算部23の出力を2乗して正負を無くす乗算部24と、この乗算部24の出力を積分する積分部25とを備えている。
【0099】
この参考例によれば、ウェハ11が熱処理盤5に載置されたことを示す上位コントローラからの外乱タイミング信号に応答して、記憶部35から読み出した正常な温度変化の波形と熱処理盤5の検出温度の温度変化の波形との差をとり、その差を2乗して極性を無くした後に積分しているので、上述の実施の形態2と同様に、ある時点t1を境界にして温度の大小関係が逆転しても、積分値が減少することはなく、安定した状態で異常の判定を行えることになる。
【0100】
(実施の形態2)
図22は、本発明の更に他の実施の形態の概略構成図であり、上述の図19の実施の形態に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0101】
上述の実施の形態1では、温度差モデル16,26を用いて正常および異常状態の熱処理盤5の温度をそれぞれ予測したのに対して、この実施の形態では、正常な熱処理状態における熱処理盤5の温度変化の波形(正常PV波形)および異常な熱処理状態の熱処理盤5の温度変化の波形(異常PV波形)を基準波形としてそれぞれ記憶部35,36に予め記憶しておき、基本的に上述の実施の形態1と同様の処理を行って異常を検知するものである。
【0102】
すなわち、この実施の形態では、検知部19−4は、正常なPV波形と温度センサ6によって検出された熱処理盤5の検出温度の波形との差を算出するととともに、正常なPV波形と異常なPV波形との差を算出し、前記二つの差を乗算して累積(積分)する演算部20−4と、この演算部20−4で演算された累積値と閾値37とを比較する比較部38とを備えている。
【0103】
演算部20−4は、正常なPV波形と温度センサ6によって検出された熱処理盤5の検出温度の波形との差を算出する第1の減算部39と、正常なPV波形と異常なPV波形との差を算出する第2の減算部40と、両減算部39,40の二つの差を乗算する乗算部41と、この乗算部41の出力を累積(積分)する積分部42とを備えている。
【0104】
なお、異常なPV波形は、上述の実施の形態1同様に、例えば、ウェハ11がガイドピン14などに乗り上げてウェハ11と熱処理盤5との間隔が例えば、200μmである熱処理状態における熱処理盤5の温度変化の波形である。
【0105】
(実施の形態3)
図23は、本発明の更に他の実施の形態の概略構成図であり、上述の図19の実施の形態1に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0106】
上述の実施の形態1における図20(d)に示される積分部34の積分値は、乗り上げ量、すなわち、ウェハ11と熱処理盤5との間隔に対応したものとなる。そこで、この実施の形態では、この乗り上げ量に応じて、目標値変更手段43によって目標温度を変更するようにしている。
【0107】
すなわち、ウェハ11と熱処理盤5との間隔が正常な間隔よりも広くなれば、その度合いに応じて熱処理盤5の目標温度SPを高めに変更し、逆にウェハ11と熱処理盤5との間隔が正常な間隔よりも狭くなれば、その度合いに応じて熱処理盤5の目標温度SPを低めに変更してウェハ11の温度が均一になるように補償するものである。
【0108】
その他の構成は、上述の実施の形態1同様である。
【0109】
(その他の実施の形態)
上述の各実施の形態では、制御対象からのフィードバック量である熱処理盤の温度に基づいて、熱処理の異常を検知したけれども、本発明は、熱処理盤の温度に代えて、制御偏差や操作量に基づいて熱処理の異常を検知するようにしてもよい。
【0110】
上述の各実施の形態では、熱処理異常検知手段は、温度調節器に内蔵させたけれども、他の実施の形態として、温度調節器とは別の装置、すなわち、熱処理異常検知装置としてもよい。
【0111】
上述の実施の形態では、ヒータなどを用いた温度制御に適用して説明したけれども、ペルチェ素子や冷却器を用いた温度制御に適用してもよいのは勿論であり、さらに、加熱と冷却とを併用する温度制御に適用してもよい。
【0112】
上述の実施の形態では、PID制御に適用して説明したけれども、本発明はPID制御に限らず、オンオフ制御、比例制御、積分制御などの他の制御方式に適用できるものである。
【0113】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、温度制御ループ内の信号の実際値、例えば、熱処理手段の検出温度と、モデルを用いて予測した予測値とに基づいて、熱処理の異常を検知するので、例えば、周囲温度などの変動を、モデルを用いて予測値に反映させることができ、実際に検出された温度変化の波形と固定的な基準波形とに基づいて、異常を検知する従来例に比べて、変動を考慮した異常の検知が可能となる。
【0114】
また、本発明によれば、温度制御ループ内の信号の実際の波形、例えば、熱処理手段の検出温度変化の波形と、予め格納されている基準波形との差をとって極性を無くした上で累積し、累積した値と閾値とを比較して異常を検知するので、例えば、熱処理期間中において、前記差の正負が逆転しても累積値が減少するようなことがなく、累積値が増大することになり、熱処理がほぼ終了して温度が安定した時点で前記比較を行っても誤検知することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例の熱処理装置の概略構成図である。
【図2】 熱処理盤にウェハを載置した状態を示す図である。
【図3】 熱処理の異常を説明するための図である。
【図4】 図1のモデル構造を示す図である。
【図5】 従来例のモデル構造を説明するための図である。
【図6】 従来例の制御対象の特性図である。
【図7】 従来例の目標値応答を示す図である。
【図8】 本件出願人が先に提案しているモデル構造を示す図である。
【図9】 図8のモデルに仮のパラメータを設定した構成図である。
【図10】 図9のモデルの定常特性を示す図である。
【図11】 従来のモデルの定常特性を示す図である。
【図12】 従来のモデルのパラメータを設定した構成図である。
【図13】 図9のモデルの過渡特性を示す図である。
【図14】 従来のモデルの過渡特性を示す図である。
【図15】 図4のモデルにパラメータを設定した構成図である。
【図16】 熱処理盤の温度変化を示す図である。
【図17】 他のモデル構造を示す図である。
【図18】 他の参考例の概略構成図である。
【図19】 本発明の実施の形態の概略構成図である。
【図20】 図19の各部の信号波形図である。
【図21】 他の参考例の概略構成図である。
【図22】 本発明の他の実施の形態の概略構成図である。
【図23】 本発明の更に他の実施の形態の構成図である。
【符号の説明】
5 熱処理盤
6 温度センサ
7,7−1〜5 温度調節器
8 PIDコントローラ
10 ヒータ
11 ウェハ
16,26 モデル
20 演算部
21 比較部
35,36 記憶部
43 目標値変更手段
Claims (3)
- 温度制御手段によって温度制御される熱処理手段における熱処理の異常を検知する方法であって、
温度制御ループ内の信号の実際値と、モデルを用いて予測した前記信号の予測値とに基づいて、前記熱処理の異常を検知するものであり、
前記実際値が、温度検出手段によって検出される前記熱処理手段の検出温度であり、前記モデルが、少なくとも前記温度制御手段からの操作量を入力として正常な熱処理状態における前記熱処理手段の温度を前記予測値として出力する第1のモデルと、少なくとも前記温度制御手段からの操作量を入力として異常な熱処理状態における前記熱処理手段の温度を前記予測値として出力する第2のモデルとからなり、
前記温度検出手段によって検出される前記熱処理手段の検出温度と前記第1のモデルを用いて予測される前記熱処理手段の温度との差を求めるステップと、
前記第1のモデルを用いて予測される前記熱処理手段の温度と前記第2のモデルを用いて予測された前記熱処理手段の温度との差を求めるステップと、
前記両ステップでそれぞれ求められた差を乗算するステップと、
前記乗算するステップで乗算された値を累積するステップと、
前記累積した値と閾値とを比較するステップとを備えることを特徴とする熱処理異常検知方法。 - 温度制御手段によって温度制御される熱処理手段における熱処理の異常を検知する方法であって、
温度制御ループ内の信号の実際の波形と予め格納されている前記信号の基準波形との差を求めるステップと、求めた差の極性を無くすステップと、極性を無くした差を累積するステップと、累積した値と閾値とを比較するステップとを備え、
前記実際の波形が、温度検出手段によって検出される前記熱処理手段の検出温度変化の波形であり、前記基準波形が、前記熱処理手段の温度変化の波形であって、正常な熱処理状態に対応する第1の基準波形および異常な熱処理状態に対応する第2の基準波形からなり、
前記差を求めるステップは、前記熱処理手段の検出温度変化の波形と前記第1の基準波形との差を求める処理と、前記第1の基準波形と前記第2の基準波形との差を求める処理とを含み、
前記求めた差の極性を無くすステップは、前記差を求めるステップの各処理でそれぞれ求めた二つの差を乗算する処理を含むことを特徴とする熱処理異常検知方法。 - 熱処理手段の温度を検出する温度検出手段からの検出温度に基づいて、前記熱処理手段の温度が目標温度になるように操作量を出力する温度制御手段と、前記熱処理手段における熱処理の異常を検知する熱処理異常検知手段とを備え、
前記熱処理異常検知手段は、少なくとも前記操作量を入力として温度制御ループ内の信号の予測値を出力するモデルと、前記予測値と前記温度制御ループ内の前記信号の実際値とに基づいて前記熱処理の異常を検知する検知部とを有し、
前記モデルが、正常な熱処理状態における前記熱処理手段の温度を前記予測値として出力する第1のモデルと、異常な熱処理状態における前記熱処理手段の温度を前記予測値として出力する第2のモデルとからなり、前記実際値が、前記温度検出手段によって検出される前記熱処理手段の検出温度であり、
前記検知部は、前記第1のモデルを用いて予測される前記熱処理手段の温度と前記温度検出手段によって検出される前記熱処理手段の検出温度との差を算出するとともに、前記第1のモデルを用いて予測される前記熱処理手段の温度と前記第2のモデルを用いて予測される前記熱処理手段の温度との差を算出し、前記二つの差を乗算して累積する演算部と、この演算部で演算された累積値と閾値とを比較する比較部とを有することを特徴とする温度調節器。
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