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JP4009035B2 - 静止型混合攪拌装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は静止型混合攪拌装置の改良に関するものであり、化学関係や薬品関係、食品関係、塗料関係、製紙関係等のプラントに於いて主に利用されるものである。
【0002】
【従来技術】
静止型混合攪拌装置は、機械的動力を用いることなく流体を混合攪拌することができ、(1)流体・気体・固体の何れの組み合せについても適用できること、(2)所要動力は混合攪拌装置の圧力損失を補償するだけの動力でよく、大幅な省エネルギーが達成できること、(3)可動部が無いため、構造が簡素化できると共に騒音や故障等の発生が少ないこと、(4)混合攪拌装置の小型化が図れること等の優れた実用的効用を備えたものである。
【0003】
図22は、実用化されているケニックス型静止混合攪拌装置の一例を示すものである。
当該静止型混合攪拌装置は、円筒型ケース本体Aの内部へケース本体Aの内径の1.5倍程度の長さを有する180°左捻りの螺旋状混合エレメントBと、180°右捻りの螺旋状混合エレメントCを互がいに直角に交又せしめた状態で順に挿着することにより構成されており、ケース本体A内へ矢印方向に流入して来た流体Dは、第1右捻り螺旋状混合エレメントC1 によって2分割されたあと、第1左捻り螺旋状混合エレメントB1 により更に2分割され、最終的に流体は、S=2n (nは混合エレメントの数)に分割され、ケース本体Aから押し出されて行く。
【0004】
また、前記分割された流体は、各エレメントB・Cが右捻りと左捻りの交互配列になっているため、各エレメントB・Cを通過する度に、その流れが各エレメントB・Cの境界面に於いては図23に示すように反転されると共に、各エレメントB・Cのねじれ面に沿って中心部より壁部へ(図24、左捻り螺旋状混合エレメントBの場合)及び壁部より中心部(図25、右捻り螺旋状混合エレメントCの場合)へと、連続的にその流れ方向を転換され乍ら前進し、各エレメントB・Cにより流体Dの流れに上記の如き分割・反転・転換の各作用が連続的に賦与されることにより、流体Dは効率的に混合攪拌され、圧力損失がない。
【0005】
前記図22に示した従前の静止型混合攪拌装置は、段落番号0002項に記したような優れた実用的効用を具備するものであるが、しかし図22の静止型混合攪拌装置を含めて従前の静止型混合攪拌装置には、まだまだ解決すべき多くの問題点が残されている。その中でも特に、(1)構造のより一層の簡素化と大幅な製造コストの引下げを可能にすること、及び(2)構造の簡素化された小型の装置でもって混合攪拌効果をより一層高め得るようにすることが、今後解決すべき重要な課題として残されている。
【0006】
即ち、図22の静止型混合攪拌装置では、極めて複雑な形態の180°左捻りの螺旋型混合攪拌エレメントBと180°右捻りの螺旋型混合攪拌エレメントCとを用いているため、各エレメントB・Cの製作に手数がかかり、混合攪拌装置の製造コストの大幅な引下げを図り難いと云う問題がある。
【0007】
また、混合攪拌装置の圧力損失を減少させ、無理なく混合させるためには、各エレメントB・Cの長さをケース本体Aの内径の約1.5倍位いの長さにする必要があるうえ、混合攪拌性能を高めようとすれば多数のエレメントB・Cを使用する必要があり、必然的に静止型混合装置が大形になると云う問題がある。
【0008】
更に、図22の装置で用いられている各エレメントB・Cでは、各エレメントの流体分割数が2に限定されてしまうため、混合装置の流体分割数SはS=2n (nは使用するエレメントの数)となり、例えば10個のエレメントB・Cを使用しても分割数Sは約1×106 回にしかならない。その結果、分割数Sを増して混合攪拌性能を高めようとすれば、必然的に使用するエレメントB・Cの数を増す必要があり、装置の大型化が避けられないと云う難点がある。また、このことから流体間の速度差、即ち剪断力が低く、充分な混合力が望めない。
【0009】
尚、上述した各種の問題点は、図22の静止型混合攪拌装置について述べたものであるが、図22の静止型混合攪拌装置に関するこれ等の問題点は、従前の他の型式の静止型混合攪拌装置にも当然に当てはまる問題であり、比較的構造の簡単な静止型混合攪拌装置では十分な混合効果が得られず、また高い混合効果を有するものでは、構造が複雑となって高価となるばかりではなく、装置全体を大型化しなければならないと言う欠陥が、残されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本件発明は従前の静止型混合攪拌装置に於ける上述の如き問題、即ち(1)混合攪拌装置を形成するエレメントの構造が複雑で、その製作に手数がかかって製造コストの引下げを図り難いこと、(2)混合攪拌性能を高めるためには、使用するエレメント数を増加する必要があり、装置の大型化と圧力損失の増大を招くこと、(3)エレメント1個当りの流体の分割数が少ないため、分割数を増して混合攪拌性能を高めるには多数のエレメントの使用が必要となり、装置の大型化及び高コスト化を招くこと、等の問題を解決せんとするものであり、構造が簡単で比較的安価に製造することができ、しかもエレメント1個当りの流体分割数Sを大きくすることにより、少ないエレメントの使用数でもって大きな流体分割数が得られると共に、混合攪拌性能を高めるために必須な剪断力(流体間速度差)及びキャビティション(流体間の急激な圧力差)との相乗効果を具備した装置全体の小型化と混合攪拌性能の大幅な向上を可能とした静止型混合攪拌装置を提供せんとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本件請求項1に記載の発明は、筒状のケース本体と;ケース本体内へ順に組み合せ挿着され、厚みの方向に所定の間隔で複数の孔部を穿設して成る複数種のディスク形のエレメントと;ケース本体の出入口端部に着脱自在に固定した接続金具とより構成した静止型混合攪拌装置に於いて、前記エレメントを第1エレメントと第2エレメントの二種類のエレメントとすると共に、第1エレメントには正方形配置で複数の多角錐台形孔部又は円錐台形孔部を、当該多角錐台形孔部又は円錐台形孔部の中心Qをディスク体の中心Oと異なる点に位置せしめて穿設し、また、第2エレメントには、正方形配置で複数の多角錐台形孔部又は円錐台形孔部を、当該多角錐台形孔部又は円錐台形孔部の中心Qをディスク体の中心Oと重なる点に位置せしめて穿設し、各第1エレメント及び第2エレメントをその多角錐台形孔部又は円錐台形孔部の大開口側を流体の上流側に位置せしめて交互に組み付けするようにしたことを発明の基本構成とするものである。
【0012】
請求項2に記載の発明は、中央孔部の奥部に収納腔部を形成した第1フランジと;前記第1フランジと対向状に組付けられ、中央孔部の奥部に収納腔部を形成した第2フランジと;前記両フランジの収納腔部内へ順に組み合せ挿着され、厚みの方向に所定の間隔で複数の孔部を穿設して成る複数種のディスク形のエレメントと;前記両フランジを組み付け固定する固定具とより構成した静止型混合攪拌装置に於いて、前記エレメントを第1エレ メントと第2エレメントの二種類のエレメントとすると共に、第1エレメントには正方形配置で複数の多角錐台形孔部又は円錐台形孔部を、当該多角錐台形孔部又は円錐台形孔部の中心Qをディスク体の中心Oと異なる点に位置せしめて穿設し、また、第2エレメントには、正方形配置で複数の多角錐台形孔部又は円錐台形孔部を、当該多角錐台形孔部又は円錐台形孔部の中心Qをディスク体の中心Oと重なる点に位置せしめて穿設し、各第1エレメント及び第2エレメントをその多角錐台形孔部又は円錐台形孔部の大開口側を流体の上流側に位置せしめて交互に組み付けするようにしたことを発明の基本構成とするものである。
【0013】
請求項3に記載の発明は、バルブ本体内に回動自在に配設した流体通路を備えた弁体と;前記弁体の流体通路の内部に形成した収納腔部と;前記収納腔部内へ順に組み合せ挿着され、厚みの方向に所定の間隔で複数の孔部を穿設して成る複数種のディスク形のエレメントとより構成され、バルブに内蔵した静止型混合攪拌装置に於いて、前記エレメントを第1エレメントと第2エレメントの二種類のエレメントとすると共に、第1エレメントには正方形配置で複数の多角錐台形孔部又は円錐台形孔部を、当該多角錐台形孔部又は円錐台形孔部の中心Qをディスク体の中心Oと異なる点に位置せしめて穿設し、また、第2エレメントには、正方形配置で複数の多角錐台形孔部又は円錐台形孔部を、当該多角錐台形孔部又は円錐台形孔部の中心Qをディスク体の中心Oと重なる点に位置せしめて穿設し、各第1エレメント及び第2エレメントをその多角錐台形孔部又は円錐台形孔部の大開口側を流体の上流側に位置せしめて交互に組み付けするようにしたことを発明の基本構成とするものである。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1、請求項2又は請求項3の発明に於いて、第1エレメントの多角錐台形孔部又は円錐台形孔部を複数個とすると共に第2エレメントの多角錐台形孔部又は円錐台形孔部を複数個とし、且つ第1エレメントと第2エレメントの各孔部を同一寸法の孔部とすると共に、両エレメントに両者の組付け位置を規制する手段を設ける構成としたものである。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4の発明に於いて、多角錐台形孔部又は円錐台形孔部を正四角錐台形孔部とするようにしたものである。
【0016】
請求項6の発明は、請求項1の発明に於いて、接続金具を、ケース本体の両端に着脱自在に固定したフランジとすると共に、両フランジ及びケース本体を連結ボルト及びナットを介して着脱自在に一体化するようにしたものである。
【0017】
請求項7の発明は、請求項2の発明に於いて、固定具を、両フランジを直接締付けるボルトナット又は半割型の締付金具及び両締付金具を締付け固定するボルトナットとするようにしたものである。
【0018】
請求項8の発明は、請求項3の発明に於いて、弁体を、ボールバルブの球形弁体又はバタフライバルブの平盤形弁体若くはゲートバルブの平盤形弁体とするようにしたものである。
0019
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る静止型混合攪拌装置の縦断面図を示すものであり、図1に於いて1は円筒状のケース本体、2はフランジ、3は第1エレメント、4は第2エレメント、5はガスケット、6はOリング、7は短管、8は連結ボルト、9はナットである。
0020
前記ケース本体1はステンレス鋼により円筒形に形成されており、その前端面及び後端面には、ガスケット5を介してフランジ2が気密状に且つ着脱自在に組付け固定されている。
また、前記上・下流側の各フランジ2・2には、Oリング6・6を介して短管7・7(フェルールフランジ)が接当されており、連結ボルト8に螺合せしめたナット9の締め込みにより、ケース本体1と両フランジ2・2と短管7・7が、夫々分解・組立自在に一体化されている。
0021
尚、本実施形態に於いては前述のようにケース本体1がステンレス鋼により、また、フランジ2、短管7・7(フェルールフランジ)、ナット7・7等がステンレス鋼(SUS304)により夫々形成されているが、ケース本体1やフランジ2等の材質は取り扱う流体の種類に応じて適宜に選定することができ、セラミック製、全ての合金製や合成樹脂製であってもよいことは勿論である。
また、本実施形態では、Oリング6としてNBRが、更にガスケット5としてNBR80°が夫々使用されているが、Oリング6及びガスケット5の材質も流体の種類に応じて適宜に選定されるものである。
0022
更に、図1の実施形態に於いては、所定数の第1エレメント3及び第2エレメント4を交互に挿着したケース本体1とフランジ2・2と短管7・7とを、複数本の連結ボルト8・8とこれに螺着したナット9・9により一体的に組付ける構成としているが、前記組付け機構は連結ボルト8・8とナット9・9を用いた機構だけでなく、ケース本体1とフランジ2・2と短管7・7の三者を気密状に且つ分解組立可能に組付け一体化できるものであれば、如何なる組付け機構であってもよいことは勿論である。
0023
また、図1の実施形態では、フランジ2・2を短管7・7との接続金具として使用しているが、フランジ2・2に代えてねじ込み式のソケット等を使用することも可能である。
【0024】
加えて、図1の実施形態に於いては、ケース本体1を断面が円形状の円筒体としているが、ケース本体1の断面形状は円形のみに限定されるものではなく、楕円形であっても或いは多角形であってもよいことは勿論である。
0025
図1に於いて、流体10が上流側から矢印方向にケース本体1内へ圧入されると、後述する如くケース本体1内に挿着された複数の第1エレメント3及び第2エレメント4の孔部を流体10が通過する間に流体10の混合攪拌が行なわれ、混合された流体10はケース本体1の下流側より矢印方向に押し出されて行く。
0026
前記流体10としては、同種或いは異種の液−液、気−液、固−液、固−気、液−気−固の何れの組み合せであってもよく、例えば高粘度であっても、或いは粉体であっても、流動化が可能な物質である限り全ての物質を、本発明に係る静止型混合攪拌装置は攪拌混合することができる。
0027
図2及び図3は、本発明の第2実施形態に係る静止型混合攪拌装置の正面図及び縦断面図である。
当該第2実施形態に係る静止型混合攪拌装置は、第1フランジ15と、第2フランジ16と、第1エレメント3及び第2エレメント4から成るディスク形エレメントと、両フランジ15・16を気密状に締め込み固定するボルトナットから成る固定具17とから構成されている。
即ち、第1フランジ15及び第2フランジ16の中央孔部15a・16aの奥部には、やや拡径した断面円形のディスク形エレメントの収納腔部15b・16bが形成されており、前記両収納腔部15b・16bの内部へ所定数の第1エレメント3及び第2エレメント4を所定の順序で挿着したあと、両フランジ15・16を締付け固定することにより、第1エレメント3及び第2エレメント4が所定位置に規制された状態で、収納腔部15b・16b内に挿着固定されている。
0028
図4及び図5は、本発明の第3実施形態に係る静止型混合攪拌装置の正面図及び縦断面図である。
当該第3実施形態に於いては、第2実施形態に於ける第1フランジ15及び第2フランジ16が若干長目に形成されており、且つ両フランジ15・16の対向面側に設けた外方への突出縁部15c・16cの外周面がテーパー面15d・16dに夫々形成されている。
0029
第1エレメント3及び第2エレメント4を所定の順序で収納腔部15b・16b内へ組付け挿着したあと、前記両フランジ15・16の突出縁部15c・16cを対接させ、半割り状の締付け金具18a・18bを前記突出縁部15c・16cの外周面に挿着する。そして、両締付け金具18a・18bの両端部をボルトナット19により締め付けることにより、前記テーパー面15d・16dを介して両フランジの対接面が気密状に固定され、静止型混合攪拌装置が組立て形成されている。
0030
図6は本発明の第4実施形態に係る静止型混合攪拌装置の断面図であり、バルブの弁体20に設けた収納腔部20b内に第1エレメント3及び第2エレメント4の組み合せから成るディスク形エレメントを組付け挿着したものである。
即ち、図6に於いて、21は弁本体、21aは流体通路、20aは弁体に孔設した流体通路、20bは収納腔部であり、当該収納腔部20b内に所定数の両エレメント3・4が位置規制をされた状態で装着固定されている。
0031
尚、図6では、ボールバルブの球形の弁体20にディスク型エレメントを組付け挿着する構成としているが、弁体20の種類としては、例えばバタフライバルブの平盤形弁体であっても、或いはゲートバルブの平盤形弁体であってもよいことは勿論である。
また、前記図2乃至図6に示した第2、第3及び第4実施態様に於ける各構成部材の材質は、図1の第1実施態様の場合と同一である。従って、ここではその詳細な説明は省略されている。
0032
図7乃至図9は前記第1エレメント3の第1実施例(角形エレメント)を示すものであり、図7は第1エレメント3の平面図、図8は図7のイーイ視断面図、図9は第1エレメント3の裏面図である。
図7乃至図9を参照して、当該第1エレメント3はステンレス鋼により厚さ5mm、外径27.5mmφのディスク形(円盤)に形成されており、ディスク(円盤)には、その肉厚方向に正方形状に配列された正四角錐台形の孔部11が複数個(4個)設けられている。
0033
即ち、正四角錐台形孔部11の上表面側は四角形の大きな開口11aに、また孔部11の下表面側(裏面側)は四角形の小さな開口11bになっており、隣接する各仕切体11c・11cにより囲繞された部分が孔部(通孔)11となっている。そして流体10は、四角錐台形孔部11の内壁面に沿って流通する。
0034
当該第1エレメント3は、ディスク体の中心Oに前記正四角錐台形孔部11を形成する仕切体11cの中心Pが位置するように、4個の完全な正四角錐台形孔部11と8ケの半欠け状の孔部11′が夫々形成されている。
換言すれば、第1エレメント3の孔部11の中心Qの位置は、ディスク体の中心Oと重ならない位置に設定されている。
0035
図10乃至図12は、前記第2エレメント4の第1実施例(角形エレメント)を示すものであり、図10は第2エレメント4の平面図、図11は図10のイーイ視断面図、図12は第2エレメント4の裏面図である。
図10乃至図12を参照して、当該第2エレメント4はステンレス鋼により厚さ5mm、外形27.5mmφのディスク形(円盤)に形成されており、ディスク体の肉厚方向には、正方形状に配列された正四角錐台形孔部11が複数個(5個)設けられている。
0036
また、前記正四角錐台形孔部11の上表面側は四角形の大きな開口11aに、また、下表面側は四角形の小さな開口11bに夫々形成されていることは、前記第1エレメント3の場合と全く同様である。
これに対して、半欠け状の孔部11′の数が4個である点、及びディスク体の中心Oの位置に開口11aの中心Qが位置している点が、前記第1エレメント3の場合と夫々異なっている。
0037
前記第1エレメント3と第2エレメント4は、図1に示すように正四角錐台形孔部11の上表面側の開口11aを流体流入口側(上流側)に位置せしめて、予かじめ定めた所定枚数だけケース本体1内へ交又に積層状に挿着されており、連結ボルト8及びナット9から成る組み付け機構により、相互に密着状に圧接固定されている。
0038
図13は、第1実施例に係る第1エレメント3と第2エレメント4との組立状態を示す部分断面図であり、図8からも明らかなように上流側から正四角錐台形孔部11の開口11a内へ流入した流体10は、各エレメント3・4を通過する毎に4分割されることになる。その結果、例えば10組(第1エレメント3が10枚、第2エレメント4が10枚、計20枚)のエレメント3・4を本体ケース1内へ挿着した場合には、流体10の分割数はS=4n (n=10)≒1.1×1012となり、極めて大きな分割数Sが得られることになる。
また、流体10は、各エレメント3・4の境界面に於いて急激な拡大・縮小を20回に亘って繰り返し受けることになる。
0039
尚、図1乃至図13に於いては、各第1エレメント3及び第2エレメント4を組み付けする際の位置決め機構に関する記載を省略しているが、第1エレメント3及び第2エレメント4が所定の相対位置関係を保持して組付けされるように、両者の所定個所に適宜の大きさの位置規制用の嵌合部が設けられていることは勿論である。
0040
また、図1及び図13に於いては、第1エレメント3と第2エレメント4と云う二種類の異なったエレメント3・4を交互に組み付けする構成としているが、二種類以上の、例えば3種類の夫々異なった正四角錐台形孔部11の配列を有するエレメントを組み付けするようにしてもよいことは勿論である。
0041
更に、図1に示した実施形態に於いては、第1エレメント3及び第2エレメント4の厚さを同一(5mm)とし、且つ孔部11も同一形態としているが、エレメント3・4の変形例として孔部の大きさを変えた物、正四角錐台の上底と下底の面積比を変化させた物、孔部の配列を変化させた物、エレメントの円盤の直径、厚みを変化させた物が含まれることは勿論である。また、エレメント自体の並べ方、即ち各エレメントの組み付け順序も種々変形が可能であり、図1乃至図13に示したものだけに限定されるものでないことは勿論のことである。
0042
次に、本発明の第1実施形態に係る静止型混合攪拌装置の作動について説明をする。
図1及び図13を参照して、混合攪拌すべき流体10は、上流側より矢印方向に短管7を通してケース本体1内へ送入され、第1エレメント3及び第2エレメント4から成る複数組のエレメントの組み合せ体を通過する間に、流入した流体10の所謂スタティックな混合攪拌が行なわれる。そして、混合攪拌された流体10は、本体ケース1の下流側から順次押し出されて行く。
0043
即ち、前記流体10の混合・攪拌及び分散は、前記孔部11の群を通過する際に起こる流体10の分割と集合、孔部11の断面の拡大と縮小による渦及び乱れの発生、流速の変化を伴って間隙を通過する際のせん断応力等によってひき起こされると想定されており、各エレメント3・4は、流体10の混合、分散を効率よく起こさせるように、その孔部11の形態や孔部11の大きさ等が選定されている。
また、流体10は分割、拡大、縮小等を繰り返す際に相当のせん断応力を受けることになるが、流体10が各エレメント3・4とぶつかる際には、適当な角度を持ってぶつかるように仕切体11cの形状や孔部11の形状に工夫が加えられており、これによって、圧力損失が増大することが防止されている。
0044
図14及び図15は第1エレメント3の第2実施例を示す平面図及び縦断面図であり、また、図16及び図17は、前記第1エレメント3と組み合せ使用をする第2エレメント4の第2実施例を示す平面図及び縦断面図である。
当該第2実施例に係る第1エレメント3が、前記第1実施例(図7乃至図12)の場合と異なる点は、ケース本体1内へ挿着した際に両エレメント3・4を所定の相互位置関係で正確に組み合せするための嵌合孔12及び嵌合ピン13を設けた点、及び仕切体11cの先端部11c′を平面状にした点のみであり、その他の構成は前記第1実施例の場合と全く同様である。
0045
図18及び図19は、第1エレメント3の第3実施例を示す平面図及び縦断面図であり、また、図20及び図21は前記第1エレメント3と組み合せ使用をする第2エレメント4の第3実施例を示す平面図及び縦断面図である。
前記第2実施例(図14乃至図17)の場合と異なる点は、正四角錐台形通孔11の数が増加されている点だけであり、その他のエレメント構成は第2実施例の場合とほぼ同一である。
0046
前記第1乃至第3実施例の角形エレメント3・4に於いては孔部11の形状を正四角錐台形としているが、当該孔部11の形状は三角錐台形や五角錐台形であってもよく、所謂多角錐台形の孔部11であればよい。
0047
上記各実施例に示した第1エレメント3及び第2エレメント4等は、鋳造や焼結成型、切削加工等により形成することができ、その成形方法は如何なる方法であってもよい。
尚、本実施形態に於いては、所謂ロストワックス法によって製作した各エレメント3・4を用い、静止型混合攪拌装置を形成している。
0048
【発明の効果】
本発明の請求項1の発明に於いては、円筒状のケース本体と、ケース本体内へ順に組み合せ挿着され、厚みの方向に所定の間隔で複数の孔部を穿設して成る複数種のディスク形エレメントと、本体ケースの出入口端部に着脱自在に固定した接続金具とから静止型混合攪拌装置を構成するようにしている。
その結果、従前の極めて複雑な構造の捻りエレメント等を用いた静止型混合攪拌装置に比較して、装置の小形化と製造原価の大幅な引下げを図ることができる。尚、このことは、請求項2の発明に於いても同様である。
また、請求項3の発明では、静止型混合攪拌装置がバルブと一体となっているため、既設のバルブと交換するだけで静止型混合撹拌装置を取り付けすることができ、結果として、静止型混合攪拌装置を取り付けるための配管スペースが不要となる。
更に、本発明では多角錐台形孔部を夫々重ならないように配列穿設したディスク形の複数種のエレメントを、筒状ケース本体内へ順に組み合せ挿着するようにしているため、流体の分割数が大幅に増大すると共に、孔部の通路面積の拡大・縮小による流速の変化によって流体に作用するせん断力が大となる。その結果、流体の混合攪拌性能が従前の装置に比較して大幅に向上することになる。
0049
混合を目的とした場合には、本発明品はエレメント孔部の孔径を大きくし、孔部の位置関係を壁面との摩擦を少なくなるような配置とし、さらに孔部の形状をゆるやかな形状にすることにより、従来の静止型混合器(ケニックス・タイプ)に比較して圧力損失の面では多少大きくなる程度で、しかも混合に関しては格段によく混ざるという高い効果を得ることができる。さらに乳化・分散までを目的とした場合にも適応することができる。
又、乳化・分散を目的とした場合には、本発明品はエレメントの孔部の孔径を小さくし、孔部の上下の孔部の位置関係を工夫し、さらに孔部の形状を急激な変化をもたらすような形状にすることにより、流体混合をさらに激しくよく混合させ、溶け合わない物質を乳化・分散にまで至らしめることができる。その場合は圧力損失はケニックス・タイプに比較して相当大きくなる欠点はあるがケニックス・タイプでは実現できない乳化・分散までの混合・分散を可能にすることができる。
0050
上述のように、本件発明に係る静止型混合攪拌装置は、流体混合の基本になる流体の分割数と流速の変化によるせん断力とその方向性を最大に生かし、圧力損失を可能な限り小さくすることを可能にした経済的な装置であり、簡単な攪拌から分散乳化にいたる各種の操作・処理に対して、エレメントの枚数を変えてその混合程度を調整することにより、容易に適応することができると云う高い実用的効用を備えている。
また、本発明の静止型混合攪拌装置は、従来の静止型混合装置よりもさらに効率が良く、かつ従来の装置と圧力損失がそれほど変わらないため、従来の装置と簡単に置き換えすることができ、装置がコンパクトになるだけでなく、場合によっては混合タンクのないタンクレスのシステムを形成することが可能となる。
本発明は上述の通り、優れた実用的効用を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係る静止型混合攪拌装置の縦断面図である。
【図2】 本発明の第2実施形態に係る静止型混合攪拌装置の正面図である。
【図3】 本発明の第2実施形態に係る静止型混合攪拌装置の縦断面図である。
【図4】 本発明の第3実施形態に係る静止型混合攪拌装置の正面図である。
【図5】 本発明の第3実施形態に係る静止型混合攪拌装置の縦断面図である。
【図6】 本発明の第4実施形態に係る静止型混合攪拌装置の縦断面図である。
【図7】 第1実施例に係る第1エレメント3の平面図である。
【図8】 図7のイーイ視断面図である。
【図9】 第1実施例に係る第1エレメント3の裏面図である。
【図10】 第1実施例に係る第2エレメント4の平面図である。
【図11】 図10のイーイ視断面図である。
【図12】 第1実施例に係る第2エレメント4の裏面図である。
【図13】 第1実施例に係る第1エレメントと第2エレメントの組み付け状態を示す部分縦断面図である。
【図14】 第2実施例に係る第1エレメント3の平面図である。
【図15】 第2実施例に係る第1エレメント3の縦断面図である。
【図16】 第2実施例に係る第2エレメント4の平面図である。
【図17】 第2実施例に係る第2エレメント4の縦断面図である。
【図18】 第3実施例に係る第1エレメント3の平面図である。
【図19】 第3実施例に係る第1エレメント3の縦断面図である。
【図20】 第3実施例に係る第2エレメント4の平面図である。
【図21】 第3実施例に係る第2エレメント4の縦断面図である。
図22】 従前の静止型混合攪拌装置の縦断面概要図である。
図23】 左捻り螺旋状混合エレメントBと右捻り螺旋状混合エレメントCとの境界面に於ける流体の反転状況の説明図。
図24】 左捻り螺旋状混合エレメントBのねじれ面に沿う流体の流れの説明図(図Dの状態から図Cの状態へ流体の流れが転換する)。
図25】 右捻り螺旋状混合エレメントCのねじれ面に沿う流体の流れの説明図(図Cの状態から図Dの状態へ流体の流れが転換する)。
【符号の説明】
Oはディスク体の中心、Pは仕切体の中心、Qは孔部の中心、1は本体ケース、2はフランジ、3は第1エレメント、4は第2エレメント、5はガスケット、6はOリング、7は短管(フェルールフランジ)、8は連結ボルト、9はナット、10は流体、11は正四角錐台形孔部、11′は半欠け状の孔部、11aは正四角錐台形孔部の上表面側の開口、11bは正四角錐台形孔部の下表面側(裏面側)の開口、11cは仕切体、11dは仕切体の先端面、12は嵌合孔、13は嵌合ピン、15は第1フランジ、15aは中央孔部、15bは収納腔部、16は第2フランジ、16aは中央孔部、16bは収納腔部、17は固定具、18は半割型締付金具、19はボルトナット、20は弁体、20aは流体通路、20bは収納腔部、21はバルブ本体。

Claims (8)

  1. 筒状のケース本体と;ケース本体内へ順に組み合せ挿着され、厚みの方向に所定の間隔で複数の孔部を穿設して成る複数種のディスク形のエレメントと;ケース本体の出入口端部に着脱自在に固定した接続金具とより構成した静止型混合攪拌装置に於いて、前記エレメントを第1エレメントと第2エレメントの二種類のエレメントとすると共に、第1エレメントには正方形配置で複数の多角錐台形孔部又は円錐台形孔部を、当該多角錐台形孔部又は円錐台形孔部の中心Qをディスク体の中心Oと異なる点に位置せしめて穿設し、また、第2エレメントには、正方形配置で複数の多角錐台形孔部又は円錐台形孔部を、当該多角錐台形孔部又は円錐台形孔部の中心Qをディスク体の中心Oと重なる点に位置せしめて穿設し、各第1エレメント及び第2エレメントをその多角錐台形孔部又は円錐台形孔部の大開口側を流体の上流側に位置せしめて交互に組み付けするようにしたことを特徴とする静止型混合攪拌装置。
  2. 中央孔部の奥部に収納腔部を形成した第1フランジと;前記第1フランジと対向状に組付けられ、中央孔部の奥部に収納腔部を形成した第2フランジと;前記両フランジの収納腔部内へ順に組み合せ挿着され、厚みの方向に所定の間隔で複数の孔部を穿設して成る複数種のディスク形のエレメントと;前記両フランジを組み付け固定する固定具とより構成した静止型混合攪拌装置に於いて、前記エレメントを第1エレメントと第2エレメントの二種類のエレメントとすると共に、第1エレメントには正方形配置で複数の多角錐台形孔部又は円錐台形孔部を、当該多角錐台形孔部又は円錐台形孔部の中心Qをディスク体の中心Oと異なる点に位置せしめて穿設し、また、第2エレメントには、正方形配置で複数の多角錐台形孔部又は円錐台形孔部を、当該多角錐台形孔部又は円錐台形孔部の中心Qをディスク体の中心Oと重なる点に位置せしめて穿設し、各第1エレメント及び第2エレメントをその多角錐台形孔部又は円錐台形孔部の大開口側を流体の上流側に位置せしめて交互に組み付けするようにしたことを特徴とする静止型混合攪拌装置。
  3. バルブ本体内に回動自在に配設した流体通路を備えた弁体と;前記弁体の流体通路の内部に形成した収納腔部と;前記収納腔部内へ順に組み合せ挿着され、厚みの方向に所定の間隔で複数の孔部を穿設して成る複数種のディスク形のエレメントとより構成され、バルブに内蔵した静止型混合攪拌装置に於いて、前記エレメントを第1エレメントと第2エレメントの二種類のエレメントとすると共に、第1エレメントには正方形配置で複数の多角錐台形孔部又は円錐台形孔部を、当該多角錐台形孔部又は円錐台形孔部の中心Qをディスク体の中心Oと異なる点に位置せしめて穿設し、また、第2エレメントには、正方形配置で複数の多角錐台形孔部又は円錐台形孔部を、当該多角錐台形孔部又は円錐台形孔部の中心Qをディスク体の中心Oと重なる点に位置せしめて穿設し、各第1エレメント及び第2エレメントをその多角錐台形孔部又は円錐台形孔部の大開口側を流体の上流側に位置せしめて交互に組み付けするようにしたことを特徴とする静止型混合攪拌装置。
  4. 第1エレメントの多角錐台形孔部又は円錐台形孔部を複数個とすると共に第2エレメントの多角錐台形孔部又は円錐台形孔部を複数個とし、且つ第1エレメントと第2エレメントの各孔部を同一寸法の孔部とすると共に、両エレメントに両者の組付け位置を規制する手段を設ける構成とした請求項1、請求項2又は請求項3に記載の静止型混合攪拌装置。
  5. 多角錐台形孔部又は円錐台形孔部を正四角錐台形孔部とするようにした請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載の静止型混合攪拌装置。
  6. 接続金具を、ケース本体の両端に着脱自在に固定したフランジとすると共に、両フランジ及びケース本体を連結ボルト及びナットを介して着脱自在に一体化するようにした請求項1に記載の静止型混合攪拌装置。
  7. 固定具を、両フランジを直接締付けるボルトナット又は半割型の締付金具及び両締付金具を締付け固定するボルトナットとするようにした請求項2に記載の静止型混合攪拌装置。
  8. 弁体を、ボールバルブの球形弁体又はバタフライバルブの平盤形弁体若くはゲートバルブの平盤形弁体とするようにした請求項3に記載の静止型混合攪拌装置。
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