JP4008120B2 - 車両盗難防止装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、常用ブレーキ装置と駐車ブレーキ装置と補助ブレーキ装置とを有する車両の盗難防止装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、車両は、油圧を用いて通常の走行時に随時使用される主制動装置である常用ブレーキ装置と、駐車時に使用される機械式の駐車ブレーキ装置とを備えている。ところが、中型車両や大型車両には、傾斜路での停止時や、車両の停車状態において荷物の積み卸し等各種作業を行う場合に、駐車ブレーキ装置と併用して作動させることにより直接全車輪に制動力を発生させる第三ブレーキと言われる補助ブレーキ装置が備えられている。これは、作業の安全性を向上させるために車両が移動してしまうことがないように備えられているものである。
【0003】
この補助ブレーキ装置は、前記常用ブレーキ装置のブレーキパイプ内の流体圧を、より高圧とし、かつその高圧状態を維持させて、車輪を確実に不動状態とし、車輪のブレーキ状態をより強化するものである。また、この中・大型車両では、停車状態から走行を開始させるには、前記補助ブレーキ装置を解除し、かつ駐車ブレーキ装置を解除させることで行うようになっている。
【0004】
そして、この中・大型車両においても盗難に遭うことがあり、従来では、上記のような中・大型車両の盗難対策として、例えば特開昭61−229645号公報に開示されるエンジン始動制御装置等を備えさせ、特定の暗証番号を入力しないと作動できないように盗難の防止を行っていた。
【0005】
このエンジン始動制御装置は、エンジンに燃料を供給する燃料供給手段と、この燃料供給手段に通電する電気ドライバと、特定の電子的コードを保持し入力コードをこの特定コードと比較し、合致している場合に電気ドライバに通電を指示する制御手段と、この制御手段へ入力コードを入力するコード入力手段とを備えてなる。
【0006】
このエンジン始動制御装置によれば、イグニッションスイッチの操作に加え、特定のコードがコード入力手段から入力されないと、制御手段が電気ドライバに通電を指示せず、その結果、燃料供給手段が駆動しないため、エンジンに燃料が供給されない。これにより、駆動電源配線を短絡することによるエンジンの駆動が防止でき、車両の盗難を防止することができた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来のエンジン始動制御装置は、イグニッションスイッチに加えて、特定コードが入力された場合に、エンジンの始動を可能にするものであるが、駆動制御対象が旧態依然としてエンジンのみであるため、イグニッションスイッチのみを不正結線するのに比べて時間はかかるものの、燃料供給手段への不正結線を行えばエンジンを駆動可能な状態にすることができ、盗難を確実に防止するには不十分であった。
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、駐停車状態の補助ブレーキを有する中・大型の車両に対し、特定のコード入力手段を、従来のエンジン始動制御装置側から補助ブレーキ装置側に設け、仮にエンジンの始動が行われてしまっても、補助ブレーキ装置が解除しないと、車両の走行が阻止され、盗難が確実に防止される車両盗難防止装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
この発明に係る請求項1の車両盗難防止装置は、フートペダルを作動させブレーキパイプ内の流体圧にて全車輪を制御する常用ブレーキ装置と、
手又は足による操作力にてケーブルやリンク等を介し駆動車輪又は推進軸を機械的に制御する駐車ブレーキ装置と、
前記駐車ブレーキと連動又は独立して備えられ、該駐車ブレーキによるブレーキ作動状態のときにのみ操作可能となるスイッチ手段の操作にて、前記ブレーキパイプ内の流体圧を高圧で維持し、前記常用ブレーキ装置による流体圧ブレーキ状態を解除不能とし、前記全車輪を制動する補助ブレーキ装置と、
の3つのブレーキ装置を備える車両の盗難防止装置であって、
電子的コードを入力する入力手段と、
イグニッションスイッチに連接され前記補助ブレーキ装置を作動させるための信号線の中途に設けられ、前記入力手段による電子的コードを入力情報として予め設定された照合用の固有情報との照合により、その照合結果が適合と判断したときに、前記補助ブレーキ装置の前記スイッチ手段の操作を有効とし前記車輪の制動の解除を可能とする制御手段と、
を具備したことを特徴としている。
【0010】
この車両盗難防止装置では、制御手段が補助ブレーキ装置のスイッチ手段を有効な状態としなければ、車輪のブレーキが解除されない。すなわち、スイッチ手段が有効に働かなければ、エンジンの駆動を可能としても、補助ブレーキ装置によるブレーキ状態が解除されず、車両は走行が不可能となり、盗難が防止される。そして、スイッチ手段の操作を有効とするためには、入力手段に電子的コードを入力しなければならず、この入力される電子的コードが照合結果で固有情報と一致しなければ、車輪のブレーキ状態の解除が行われず、走行が規制されることから、車両の盗難が確実に防止される。
【0011】
請求項2記載の車両盗難防止装置は、補助ブレーキ装置を解除させる前記入力手段が、暗証番号を入力するキー入力手段であることを特徴としている。
【0012】
この車両盗難防止装置では、キー入力手段、例えばテンキーなどにより、暗証番号を入力することで、その入力される暗証番号が制御手段に読み込まれる。
【0013】
請求項3記載の車両盗難防止装置では、前記入力手段が、ネームカードホルダーであることを特徴としている。
【0014】
この車両盗難防止装置では、ネームカードホルダーに、固有のネームカードが挿入されると、例えば磁気情報等の形式でネームカードに書き込まれている固有の電子的コードが、ネームカードホルダーを介して制御手段に読み込み可能になる。
【0015】
請求項4記載の車両盗難防止装置では、前記入力手段が、非接触カードであることを特徴としている。
【0016】
この車両盗難防止装置では、非接触カードに書き込まれている固有の電子的コードが、非接触で制御手段に読み込まれる。従って、接触式のネームカードを用いる場合に比べて、磨耗によるコード読み取り性能の劣化が防止される。
【0017】
請求項5記載の車両盗難防止装置では、前記入力手段が、電波式又は赤外線式のリモートコントロールキーであることを特徴としている。
【0018】
この車両盗難防止装置では、リモートコントロールキーによって固有の電子的コードが、電波式又は赤外線によって送信され、非接触で制御手段に読み込まれる。従って、接触式のネームカードの場合と同様、磨耗によるコード読み取り性能の劣化が防止されるとともに、コード信号送信可能距離も大きくなる。
【0019】
請求項6記載の車両盗難防止装置は、前記入力手段が、暗証番号を入力するキー入力手段と、IDコードを入力する補助入力手段とで構成されていることを特徴としている。
【0020】
この車両盗難防止装置では、暗証番号の入力と、この暗証番号とは別のIDコードを入力し、それらの入力情報を、固有情報と照合して、適合したときのみ補助ブレーキ装置のスイッチ手段の操作を有効とすることから、盗難防止装置として、二段階の盗難防止を図ることが可能となる。
【0021】
請求項7記載の車両盗難防止装置は、前記補助入力手段が、ネームカードホルダーであることを特徴としている。
【0022】
この車両盗難防止装置では、ネームカードホルダーに、固有のネームカードが挿入されると、例えば磁気情報等の形式でネームカードに書き込まれている固有のIDコードが、ネームカードホルダーを介して制御手段に読み込み可能になり、前記キー入力手段による暗証番号の入力とで、二段階の盗難防止を図ることが可能となる。
【0023】
請求項8記載の車両盗難防止装置は、前記補助入力手段が、非接触カードであることを特徴としている。
【0024】
この車両盗難防止装置では、非接触カードに書き込まれている固有のIDコードが、非接触で制御手段に読み込まれる。従って、接触式のネームカードを用いる場合に比べて、磨耗によるコード読み取り性能の劣化が防止される。そして、前記キー入力手段による暗証番号の入力とで、二段階の盗難防止を図ることが可能となる。
【0025】
請求項9記載の車両盗難防止装置は、前記補助入力手段が、電波式又は赤外線式のリモートコントロールキーであることを特徴としている。
【0026】
この車両盗難防止装置では、リモートコントロールキーによって固有のIDコードが、電波式又は赤外線によって送信され、非接触で制御手段に読み込まれる。従って、接触式のネームカードの場合と同様、磨耗によるコード読み取り性能の劣化が防止されるとともに、コード信号送信可能距離も大きくなる。そして、前記キー入力手段による暗証番号の入力とで、二段階の盗難防止を図ることが可能となる。
【0027】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る車両盗難防止装置の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下に説明する本発明の車両盗難防止装置が備えられる車両は、従来の技術でも述べたように、中型,大型車両であり、常用ブレーキ装置と、駐車ブレーキ装置と、補助ブレーキ装置とを備えている。
【0028】
そして、常用ブレーキ装置は、運転席内のフートペダルを踏むことでブレーキパイプ内の油圧にて、各車輪のブレーキを作動させる装置であり、通常の走行時に随時使用される主制動装置であり、駐車ブレーキ装置は、駐車時に使用されるブレーキ装置で、車輪に回転駆動を伝達する推進軸(プロペラシャフト)を、運転席内のハンドレバーや前記フートペダルと別に設けられるフートペダルを作動させて、ケーブルやリンクなどを介して機械的機構にて推進軸をブレーキさせるものである。また、この推進軸以外に、駆動輪をブレーキさせるものもある。この駆動輪としては後輪とされることが多い。
【0029】
また、補助ブレーキ装置は、長い降坂路や雨天積雪時に、フートブレーキを利かせたままの状態を保持させる装置で第三ブレーキと呼ばれ、駐車ブレーキ装置だけでは車両の動きを抑制できないときに使うもので、別名、作業補助制動装置と言われる。この補助ブレーキ装置は、走行中の安全機構、誤作動の防止のため、駐車ブレーキ装置が作動していないときは作動しない。また、ブレーキ機器の安全性のため、減圧弁を用いて作動エア圧を低くしている。
そして、この補助ブレーキ装置は2種類あり、1つは油圧などを用いる液圧ブレーキとされ、他の1つは油圧と空気圧とを複合的に用いる複合式ブレーキである。
以下、これら液圧ブレーキよりなる補助ブレーキ装置と、複合式ブレーキよりなる補助ブレーキ装置とをそれぞれ備えた車両の盗難防止装置について説明する。
【0030】
第一の実施の形態
図1は本発明の車両盗難防止装置の第一の実施の形態の構成を示すブロック図、図2は同車両盗難防止装置を構成する一部拡大ブロック図である。
【0031】
第一の実施の形態の車両盗難防止装置3は、油圧式ブレーキよりなる常用ブレーキ装置5と、駐車ブレーキ装置11と、液圧ブレーキよりなる補助ブレーキ装置14と、入力手段22と、制御手段26とを主要構成に備えてなる。
【0032】
常用ブレーキ装置5は、所謂フートブレーキ装置であり、各車輪2に設けられているディスクブレーキ機構或いはドラムブレーキ機構と、フートペダル6との間をブレーキオイルが充填されるブレーキパイプ7で接続され、このブレーキパイプ7の中途に、マスターシリンダ8,制動倍力装置9、及び前後車輪2の近傍にセーフティシリンダ10が配置される。そして、フートペダル6を踏むことで、その操作力がリンク機構によってマスターシリンダ8に伝えられ、油圧に変換され、制動倍力装置9にてこのマスターシリンダ8で発生した制動力を高め、セーフティシリンダ10を介して全車輪2のブレーキ機構に伝達されブレーキを作用させる。なお、この例では、常用エア圧を8kg/cm2 とされている。
【0033】
駐車ブレーキ装置11は、駐車時に使用され手動で操作を行うハンドブレーキ装置で、トランスミッションのメインシャフト或いはプロペラシャフトである推進軸4をドラムブレーキ機構で制動する所謂センターブレーキ式ブレーキ装置である。そして、運転席内に設置されるハンドレバー12を作動させて、ケーブル12aやリンクなどを介し推進軸を機械的機構にてブレーキを作動させるものである。
なお、推進軸4をブレーキさせるのではなく、駆動輪をブレーキする駐車ブレーキ装置11の場合は、この駆動輪のみをロックさせるもので、大型車の場合では後輪であることが多い。
【0034】
本実施の形態のハンドレバー12は、基端が軸支されて揺動する構成であり、ブレーキを作動させる際には、横臥状態のレバー12を引き上げる構成とされ、このレバー12により発生する引張力がテコ,ロッド,ケーブルなどによってブレーキ本体に伝わり、カムなどの機構でブレーキライニングが推進軸4を締め付けブレーキさせる。また、ハンドレバー12を引いた状態では内蔵するラチェット機構によりブレーキ状態を保持できるようになっているとともに、このラチェット機構に連動連結されるハンドレバーの端部のボタンを押下することでブレーキ機構の保持状態を解除できるようになっている。
【0035】
また、この駐車ブレーキ装置11には、ハンドレバー12を作動する際、すなわち、ブレーキを作動させる際に連動する駐車ブレーキスイッチ13が設けられている。この駐車ブレーキスイッチ13は、後述するイグニッションスイッチ17とは並列に電源バッテリー19に接続され、ハンドレバー12にてブレーキを作動させた際にはオン、すなわち通電状態となり、運転席内に設けられるインジケーターランプ(図示せず)の点灯などを行い、ブレーキを解除した状態では開放しオフとなる。なお、このスイッチ13の状態は検知手段27が検出するようになっており、この検出信号は後述する制御手段26に送られるようになっている。
【0036】
次に、補助ブレーキ装置14は、前述した駐車ブレーキ装置11を構成するハンドレバー12に近接して配設されるスイッチ手段としてのスイッチ15と、前述した常用ブレーキ装置5を構成するブレーキパイプ7の中途位置、好ましくは図1に示すように前部と後部の各セーフティシリンダ10と車輪2との間の位置に配設される圧力維持手段としての電磁ソレノイドバルブ16とで構成されている。
【0037】
スイッチ15は、例えば押下ボタンスイッチやトグルスイッチなどより構成され、ハンドレバー12の下方に配設されて、このハンドレバー12をブレーキ作動状態とする引き上げ状態のときにのみ、すなわち駐車状態のときにのみ操作できるようになっている。従って、車両の走行中にはこのスイッチ15が操作不可能であり、誤操作してもスイッチとしての機能が働かないようになっている。
またこのスイッチ15は前記イグニッションスイッチ17及び駐車ブレーキスイッチ13とは並列に電源バッテリー19に接続されている(図1参照)。
【0038】
また、電磁ソレノイドバルブ16は、ブレーキパイプ7内に位置する弁体(図示せず)を有し、この弁体がブレーキパイプ7内を閉塞した際にブレーキパイプ7内におけるブレーキオイルの圧力、本実施の形態では、常用ブレーキ装置5による車輪2に対するブレーキを作動させる際の油圧の解除を阻止、すなわちブレーキを作動させる油圧の低下を阻止してその圧力を維持し、この車輪2に対するブレーキ状態を維持するようになっている。
【0039】
そして、補助ブレーキ装置14を作動させるには、スイッチ15を操作してオンとすることで、電磁ソレノイドバルブ16が、電源バッテリー19より電源を供給されて通電状態となって励磁状態となり、弁体がブレーキパイプ7内を閉鎖し圧力を維持するよう構成され、また、スイッチ15を操作してオフとすると、電源の供給が断たれて、電磁ソレノイドバルブ16は、内蔵する付勢手段、例えば圧縮コイルバネ(図示せず)などの付勢力により弁体がブレーキパイプ7内を開放し圧力を開放するようになっている。
すなわち、この補助ブレーキ装置14は、上記スイッチ15と電磁ソレノイドバルブ16とにより、ブレーキ作動時においては、常に電源バッテリー19からの電源が供給されることで、ブレーキ状態が維持されるようになっている。
【0040】
次に、イグニッションスイッチ17は、機械的シリンダー錠からなり、このイグニッションスイッチ17は、固有のシリンダーキー17aのみにより操作されることで、電源バッテリー19を電源として、各車載装備機器、例えばランプや空調装置などへの電源供給を行ってその作動を可能とし、かつスターターモータを作動させてエンジンの始動が行われる。
また、このイグニッションスイッチ17が操作されて電源バッテリー19の電源供給が行われる状態、すなわちこのイグニッションスイッチ17がオンの状態、及び、電源バッテリー19の電源供給を断つイグニッションスイッチ17のオフの状態のそれぞれの状態を信号として出力するように構成されており、このオンオフ信号は後述する制御手段26に送られる。
【0041】
次に、入力手段22は、本実施の形態では、補助入力手段としてのカードホルダー23と、キー入力手段としての暗証番号入力機器24とで構成される。
カードホルダー23は、例えば暗証番号入力機器24を介して制御手段26を構成するメイン基板21に電気的に接続されている。またカードホルダー23には、固有のネームカード23aが挿入されるようになっている。このネームカード23aには、固有の電子的コードとしてのIDコードが、例えば磁気情報等の形式で書き込まれている。
【0042】
暗証番号入力機器24は、テンキー24aを有し、押下されたテンキー24aに対応した番号情報が入力されるようになっている。
そして、カードホルダー23、暗証番号入力機器24により入力された入力情報は、制御手段26を構成するメイン基板21へ出力される。
【0043】
次に、制御手段26は、入力機器信号処理メイン基板(メイン基板)21と継電器25とで構成されるとともに、駆動電源回路18とDCコンバータ20とを備えている。
駆動電源回路18は、車両に搭載される電源バッテリー19に接続され、DCコンバータ20は、駆動電源回路18を介する電源バッテリー19からの電源電圧を、所定の電圧に変えてメイン基板21へ供給する。
【0044】
メイン基板21は、イグニッションスイッチ17の操作により出力されるオン・オフ信号が入力され、すなわちこのイグニッションスイッチ17の状態を監視するとともに、駐車ブレーキスイッチ13の状態を検知する検知手段27の信号が入力される。また、このメイン基板21は、カードホルダー23に挿入されるネームカード23aのIDコード、及び暗証番号入力機器24から入力される暗証番号とが入力される。
そして、このメイン基板21は、照合用の固有情報が予め入力されて記憶されており、IDコードと固有情報との照合及び暗証番号との照合を行うようになっている。
また、メイン基板21は、イグニッションスイッチ17のオン信号の入力がある場合に、カードホルダー23,暗証番号入力機器24に対し、動作電圧を印加する。
【0045】
このメイン基板21に接続された継電器25は、前述した補助ブレーキ装置14のスイッチ15と、電磁ソレノイドバルブ16との間に位置して直列接続されており、電源バッテリー19からスイッチ15を介した電磁ソレノイドバルブ16への電源の供給及び切断を行うとともに、メイン基板21から電磁ソレノイドバルブ16への電源の供給及び切断も行われるようになっている。
【0046】
すなわち、この継電器25は、スイッチ15による電源供給、または、メイン基板21からの電源供給のいずれかがあれば、その通電状態が保たれ、電磁ソレノイドバルブ16を励磁状態としてブレーキを作動状態とし、また、スイッチ15による電源の切断、及び、メイン基板21からの電源の切断によって、継電器25は通電状態が解かれ、電磁ソレノイドバルブ16への電源の供給が切断され、励磁を解除されてブレーキ状態を開放する。
【0047】
そして、この電磁ソレノイドバルブ16へのメイン基板21からの電源の供給及び切断は、イグニッションスイッチ17からオフ信号がメイン基板21に入力された場合に、メイン基板21から電磁ソレノイドバルブ16へ電源の供給が行われ、また、上述したIDコードと固有情報との照合及び暗証番号との照合の結果が共に適合した場合であって、かつイグニッションスイッチ17からオン信号がメイン基板21に入力された場合に、メイン基板21から電磁ソレノイドバルブ16への電源の切断が行われる。
【0048】
次に、このように構成される車両盗難防止装置の作用を説明する。
図3は本発明に係る車両盗難防止装置の動作手順を表したフローチャートである。
なお、駐停車状態のこの車両1は、駐車ブレーキ装置11のハンドレバー12が引き上げられ、機械的にブレーキが作動し、駐車ブレーキスイッチ13がオンとなり検知手段27がメイン基板21にオン信号を送出しており、補助ブレーキ装置14のスイッチ15もオンとされ、かつ、イグニッションスイッチ17がオフとされて、すなわち電磁ソレノイドバルブ16には電源バッテリー19より電源が常に供給されて励磁状態であり、油圧によって車輪2はブレーキが作動している。
【0049】
車両1を走行可能な状態にするには、先ず、操縦者が、車両1に取り付けられているイグニッションスイッチ17に対応した固有のシリンダーキー17aを用いて、イグニッションスイッチ17をオンにする(st1)。
これにより、先ず第一段階として、固有のシリンダーキー17aを持たない者による車両1の駆動が禁止され盗難が防止されることとなる。
【0050】
次に、イグニッションスイッチ17が正常にオンされると、電源バッテリー19を電源としてスターターモータが駆動しエンジンが始動される(st2)。またこのイグニッションスイッチ17からのオン信号が、メイン基板21に入力される(st3)。この結果、カードホルダー23は、ネームカード23aの挿入待ち状態となる(st4)。
【0051】
次に、操縦者によって、カードホルダー23にネームカード23aが挿入されると、補助入力機器であるカードホルダー23がオンされる(st5)。
ここで、第二段階としての、ネームカード23aを持たない者による盗難が防止される。
【0052】
挿入されたネームカード23aは、カードホルダー23にて、磁気情報等の形式で書き込まれているIDコードが読み取られ、メイン基板21がこのカードホルダー23を介してIDコードを電気信号として読み取る(st6)。
【0053】
メイン基板21は、ネームカード23aから読み取ったIDコードに対応する予め記憶させておいた固有情報としての「格納暗証番号」を取り出す(st7)。
【0054】
操縦者は、次いで、暗証番号入力機器24によって、固有の「暗証番号」をテンキー24aにて入力する(st8)。
この「暗証番号」は、例えば操縦者本人が定めた固有のものであり、操縦者の所持するネームカード23aのIDコードに対応されてメイン基板21に予め記憶されるもので、このメイン基板21に予め記憶される暗証番号が「格納暗証番号」である。
【0055】
「暗証番号」がテンキー24aより入力されたなら、メイン基板21は、ネームカード23aのIDコードに対応して取り出された「格納暗証番号」との照会を行う(st9)。これらの「暗証番号」と「格納暗証番号」とが一致したなら、ネームカード23a及び操縦者が真正のものであると判断する。
これにより、第三段階として、「暗証番号」を知らない者による車両1の駆動が禁止され、ネームカード23aを所持し使用しても盗難が防止されることとなる。
【0056】
なお、入力された「暗証番号」が「格納暗証番号」と一致しない場合には、「暗証番号」の入力手順st8へ戻す。例えばこの再入力回数は、3回程度に限定するようカウントを行い、それ以上の入力があった場合には、「暗証番号」の入力を拒否する。従って、この場合には、この時点で車両の駆動が不能となる。
【0057】
そして、以上の操作、すなわち、イグニッションスイッチ17のオン、及びネームカード23aによる操作、暗証番号の入力により、メイン基板21からの継電器25を介する電磁ソレノイドバルブ16への通電状態が切断される(st10)。
【0058】
次に、操縦者は、補助ブレーキ装置14のスイッチ15を操作し、このスイッチ15をオフとする(st11)。
【0059】
これにより、継電器25に対する電源の供給が断たれ(st12)、電磁ソレノイドバルブ16への電源の供給が行われなくなり、この電磁ソレノイドバルブ16は励磁状態が解かれ(st13)、この電磁ソレノイドバルブ16が作動して、弁体が内蔵する付勢手段にてブレーキパイプ7内の閉鎖状態を解き圧力を開放する。そして、車輪2に対する油圧によるブレーキ状態が解除される(st14)。
すなわち、上述したイグニッションスイッチ17によるオン信号と、ネームカード23aのIDコード,テンキー24aによる暗証番号の入力の照合結果の適合によって、補助ブレーキ装置14のスイッチ15の操作が有効となり、油圧によるブレーキ状態を解除することが可能となる。
【0060】
その後、操縦者はハンドレバー12のラチェットを解除し、駐車ブレーキ装置11による機械的なブレーキ状態を解除し(st15)、これにより車両は、走行可能となる。
【0061】
このように、上述の車両盗難防止装置3によれば、車輪2に対するブレーキ状態を、イグニッションスイッチ17の操作、ネームカード23aの操作、暗証番号の入力のそれぞれを行い、それぞれが確実に行われないと、継電器25への通電状態が解かれず、また、この通電状態が解かれた状態でないと、補助ブレーキ装置14のスイッチ15操作が有効にならないことから、これら操作によって継電器25への通電状態を解除しなければ電磁ソレノイドバルブ16の励磁状態を解除できず、エンジン側への電源を不正に供給させて、このエンジンを駆動させたとしても、車輪2はブレーキ状態であり、走行が不可能であることから盗難を防止できる。
【0062】
すなわち、従来の車両盗難防止装置では、駆動制御対象がエンジンのみであるため、イグニッションスイッチと燃料供給手段への不正結線を行えば、エンジンの駆動が可能となり、そのため、走行に何ら支障を与えることがない。これに対し、本発明に係る車両盗難防止装置3では、車輪2に対するブレーキ状態を解除しなければ動作可能にならず、ブレーキを解除するためには不正な結線を行うとともに、ブレーキ状態を解除させるための油圧の解除を行う作業等が必要であり、極めて煩雑な作業が伴うため、事実上、不正結線などによる車両1の走行が不可能になる。この結果、仮にエンジンのみが駆動可能状態となったとしても、車輪2はブレーキ状態のままとなるため、走行が規制され、この車両1の盗難を確実に防止することができる。
【0063】
また、上述した車両盗難防止装置1によれば、車輪2のブレーキ状態を解除するために、イグニッションキー17aと、暗証番号と、ネームカード23aとが必要であり、多重な盗難防止装置となっているとともに、これらが全て揃わない場合には、この盗難防止装置3を解除できず、車両1の盗難防止の確実性が向上する。
【0064】
また、上述した実施の形態では、盗難防止装置が働いている状態では、電磁ソレノイドバルブ16が、電源バッテリー19を電源として通電され励磁状態となって弁体が圧力を維持する構造としていることから、盗難防止として働いている最中は電源バッテリー19を常に使用することとなる。
【0065】
なお、上述した実施の形態では、圧力維持手段として電磁ソレノイドバルブ17を用い、その弁体にてブレーキパイプ7の流路に対して閉鎖を行う構造の例として述べたが、この圧力維持手段の構造については限定されるものではなく、ブレーキ状態を維持する構造であれば他の構造としてもよく、例えば上記同様の電磁ソレノイド構造と、逆止弁を併用する構造などとしてもよい。この場合、フートペダル6を踏み込むことでブレーキ状態とすることができ、予め常用ブレーキ装置5で車輪2をブレーキ状態にした後に補助ブレーキ装置14を作動させる手順ではなくても補助ブレーキ装置14のスイッチ15の操作をオフとした後に車輪2のブレーキ状態を油圧にて作動でき、車両1の盗難防止装置として作動させることが可能となる。
【0066】
第二の実施の形態
図4は本発明の車両盗難防止装置の第二の実施の形態の構成を示すブロック図、図5はコントロールボックス及び3ウェイバルブの斜視図である。
【0067】
第二の実施の形態の車両盗難防止装置3は、常用ブレーキ装置5と、駐車ブレーキ装置11と、複合式ブレーキよりなる補助ブレーキ装置34と、入力手段22と、制御手段26を構成する入力機器信号処理メイン基板(メイン基板)21と継電器25とを主要構成に備えてなる。
【0068】
なお、以下に説明する第二の実施の形態において、前述した第一の実施の形態と同等の構成部分については、同一の符号を付し主なものの説明を省略する。
【0069】
この第二の実施の形態の常用ブレーキ装置5は、運転席内のフートペダル6を踏むことで、圧縮空気をエアマスタ(倍力装置)41に送り、このエアマスタ41が油圧を高め、その高めた油圧とで全車輪2をブレーキさせる空気・油圧式ブレーキよりなる。
【0070】
この常用ブレーキ装置5では、圧縮空気はエンジンによって駆動されるコンプレッサー42で作りだされ、エアタンク43に蓄えられる。コンプレッサー42からエアタンク43への配管の途中には、チェックバルブ44が配設されるとともに、図示しないドライヤーが設けられる。またコンプレッサー42とエアタンク43との間の配管の途中にはガバナ49が配設され、エアタンク43内の空気圧が変動しないよう調整される。
【0071】
フートペダル6にはブレーキバルブ(図示せず)が連動し、ペダルの踏力に応じてバルブの開度が調整できるようにされている。このブレーキバルブにはプライマリーとセカンダリーがありデュアルブレーキバルブを構成し、空気圧系統が2系統に分けられている。また、油圧系統も2系統とされ、空気圧で油圧を発生させるエアマスタ41も図4に示すように対をなし、2軸車の場合の前輪と後輪とを担当させている。
【0072】
このような構造により、エアタンク43の空気圧は、デュアルブレーキバルブを経て、エアマスタ41に導かれる。エアマスタ41にはシリンダが備えられ、導かれた空気圧によってピストンが押される。ピストンのロッドはオイルで満たされたハイドロリックシリンダのピストンを押し、油圧を発生させて、この油圧によって各車輪2のブレーキを作動させる。
【0073】
次に、この第二の実施の形態の補助ブレーキ装置34は、空気・油圧式ブレーキやエアオーバーブレーキ等と呼ばれる複合式ブレーキよりなる。
この補助ブレーキ装置34は、運転席のインストルメントパネル或いはコンソールボックスに配設されるスイッチ手段としてのノブ35を備え、前記常用ブレーキ装置5を構成するエアマスタ41にチェックバルブを介して接続される。
【0074】
補助ブレーキ装置34は、上記常用ブレーキ装置5のエアタンク43に接続され、主に、スイッチ手段としてのノブ35と、ノブ35にピストン36を介して連結される3ウェイバルブ45と、ピストン36の動きを阻止する圧力維持手段としてのソレノイド47とで構成され、その他に、レジューシングバルブ50と、圧力スイッチ51と、ダブルチェックバルブ52と、コントロールボックス54とを備える。
【0075】
3ウェイバルブ45は、エアタンク43より延びる配管が接続され、圧縮空気(エア)が送られている。また、この3ウェイバルブ45には、前記ノブ35に連結されるピストン36が挿着され、ノブ35の進退操作によって、ピストン先端にてエアタンク43からのエアの送出及び遮断を行う。本実施の形態では、ピストン36が押し込まれると、エアタンク43からのエアを通過させ、ピストン36が引き戻されるとエアを遮断する。さらに、この3ウェイバルブ45にはポジションスイッチ46が備えられ、バルブ内に配設されるプランジャを介してピストン36の状態を検知するようになっている。
【0076】
ソレノイド47は、進退自在なロックプランジャ48を備え、ノブ35に連結されるピストン36の中途に係合されるようになっている。すなわちピストン36の中途には、係合溝36aが形成され、ピストン36が3ウェイバルブ45内に進出した際に、ロックプランジャ48の先端がピストン36の係合溝36aに係合できるようになっている。
なお、このソレノイド47は、後述する制御手段26により、ロックプランジャ48の進退動作が制御されるようになっており、本実施の形態では、進出及び後退の両方向の動作を通電によって制御され、すなわち、この通電によりソレノイド47は励磁状態となって、ロックプランジャ48を進出及び後退させ、かつその励磁が継続することでロックプランジャ48の進出状態若しくは後退状態を維持するようになっている。
【0077】
レジューシングバルブ50は、3ウェイバルブ45に配管を介して接続され、この3ウェイバルブ45からのエアが送られ、後段のエアマスタ41へとエアを供給する。このレジューシングバルブ50は、インレット・アンド・エキゾーストバルブを内蔵し、3ウェイバルブ45から供給されるエアマスタ41へのエアの圧力を規定圧、この例では、エアの圧力が、常時フートブレーキと同じ圧力が掛かるとシール部に悪い影響を与えるので、常用ブレーキ圧(8kg/cm2 )より低い圧(3kg/cm2 )の規定圧に保ち、すなわち、供給されるエアマスタ41へのエアが規定の圧力になると、インレット・アンド・エキゾーストバルブが閉じ供給エアを遮断するとともに、余分なエア圧は排出し、さらにエアマスタ41側のエア圧が低下するとインレット・アンド・エキゾーストバルブが開き、エアを供給させ、これを繰り返してエアマスタ41へ供給されるエア圧を常に一定に保つようになっている。
【0078】
圧力スイッチ51は、レジューシングバルブ50のエアマスタ41供給側出口に接続され、3ウェイバルブ45及びレジューシングバルブ50をエアが通過する状態、及びそのエアが規定圧に達しているか否かを検知する。
なお、この圧力スイッチ51は、3ウェイバルブ45のポジションスイッチ46に直列接続される。
【0079】
ダブルチェックバルブ52は、常用ブレーキ装置5を構成するエアマスタ41に接続されているとともに、デュアルブレーキバルブからの配管に接続されている。本実施の形態では、各エアマスタ41にそれぞれ配設される。
なお、これらエアマスタ41には、ストロークスイッチ53が配設され、このエアマスタ41の状態を検出するようになっている。
【0080】
コントロールボックス54は、表示ランプが備えられており、本実施の形態では、作業準備ランプ55と圧力保持ランプ56が配設され、前述した3ウェイバルブ45のポジションスイッチ46、圧力スイッチ51、エアマスタ41のストロークスイッチ53及び、エアタンク43の圧力状態を検知するローエアプレッシャスイッチ57、駐車ブレーキ装置11の駐車ブレーキスイッチ13、駐車ブレーキロードセンサ58などの各センサ及びスイッチからの信号が送られ、これら信号に対してランプ55,56の点灯を行うようになっている。
【0081】
また、このコントロールボックス54には、警報ホーン59が接続され、例えばスタータスイッチ回路のヒューズ切れ、エア圧の低下、制動用液圧(油圧)の低下、駐車ブレーキ制動力の低下などに対する警告を警報音にて知らせるようになっている。
なお、このコントロールボックス54は、図5に示すように、3ウェイバルブ45とともにコンパクトに構成され、上記ノブ35とともに運転席のインストルメントパネル或いはコンソールボックスに配設される。
【0082】
次に、イグニッションスイッチ17は、この第二の実施の形態では、電源バッテリー19からの電源の供給を駐車ブレーキスイッチ13,駐車ブレーキロードセンサ58を介してソレノイド47に供給する。
【0083】
また、この第二の実施の形態では、制御手段26を構成するメイン基板21は電源バッテリー19に直接接続され、常時電源を供給される。
制御手段26を構成する継電器25は、駐車ブレーキロードセンサ58とソレノイド47との間に直列接続される。すなわち、ソレノイド47は、電源バッテリー19を電源として駆動する回路として、イグニッションスイッチ17,駐車ブレーキスイッチ13,駐車ブレーキロードセンサ58,継電器25が直列に接続される構成とされ、これらスイッチ17,13が全て閉じたオン状態で継電器25は通電されソレノイド47に制御電源を送り励磁させロックプランジャ48を後退方向とする。また、これらスイッチのイグニッションスイッチ17がオフとなった場合には、このイグニッションスイッチ17からメイン基板21に送られるオフ信号により、継電器25はメイン基板21から電源を供給され、ソレノイド47が励磁してロックプランジャ48を進出方向とする制御電源が送られる。
【0084】
さらに、この制御手段26では、入力手段22の状態がメイン基板21に入力されており、この入力手段22、すなわち固有のネームカード23aが挿入されるカードホルダー23と、暗証番号が入力される暗証番号入力機器24とによるIDコードと暗証番号の照合結果が適合されて入力されている場合に、イグニッションスイッチ17がオン状態であってこのオン信号がメイン基板21に入力され、駐車ブレーキ装置11が作動されていない場合、すなわち駐車ブレーキスイッチ13がオフの場合は、メイン基板21は継電器25を介してソレノイド47へロックプランジャ48を後退させるように励磁を行う制御電源を送る。また、入力手段22による照合結果の適合が入力されずに、イグニッションスイッチ17がオンである場合には、駐車ブレーキスイッチ13の状態に関わらず、ソレノイド47にはロックプランジャ48が進出し、それを維持するように励磁を行う制御電源が送られる。
【0085】
次に、この第二の実施の形態の車両盗難防止装置の作用を説明する。
図6は、第二の実施の形態の車両盗難防止装置の動作手順を表したフローチャートである。
【0086】
まず、停車時、すなわち、盗難防止装置を作動させる際について説明する。
駐車ブレーキ装置11のハンドレバー12を引くと、ケーブル12aと連動して駐車ブレーキスイッチ13の可動接点が移動し、オンとなる。
また、駐車ブレーキロードセンサ58は、駐車ブレーキ装置11のハンドレバー12が規定の駐車制動力に引かれているかチェックを行い、規定の駐車制動力に達していればこの駐車ブレーキロードセンサ58がオンとなる。
【0087】
そして、コントロールボックス54では、駐車ブレーキスイッチ13の状態、すなわち駐車ブレーキ装置11のハンドレバー12を引いた状態、及び、駐車ブレーキロードセンサのオン状態が入力され、作業準備ランプ55が点灯(橙色)する。
なお、この作業準備ランプ55(橙色)の点灯は、駐車ブレーキを戻し、非通電になるまで維持する。
【0088】
次に、補助ブレーキ装置34のノブ35を押し込むと、ノブ35のピストン36に形成された係合溝36aがロックプランジャ48に係合する位置となる。
なお、この状態では、ロックプランジャ48が係合溝36aには係合されていないことから、ノブ35の上下動が任意に可能である。
【0089】
ノブ35が押し込まれることで、3ウェイバルブ45はエアタンク43からのエアをダブルチェックバルブ52を介してエアマスタ41に送出となる。同時にポジションスイッチ46がオンとなり、コントロールボックス54にその状態が送られる。
【0090】
コントロールボックス54では、このポジションスイッチ46の状態と、3ウェイバルブ45からエアが送られることによる、圧力スイッチ51のオンにより、コントロールボックス54に対し通電状態となり、圧力保持ランプ56が点灯する(緑色)。
【0091】
そして、この3ウェイバルブ45からのエアはダブルチェックバルブ52を介しエアマスタ41に送られ、このエアの圧力が油圧に変換されて、各車輪2に対してブレーキ状態とする。
【0092】
次に、イグニッションスイッチ17をオフとする。これにより、このイグニッションスイッチ17のオフ信号がメイン基板21に入力され、継電器25へはこのメイン基板21からの電源の供給に切り替わり、ソレノイド47が励磁されてロックプランジャ48が進出方向に付勢され、このロックプランジャ48がノブ35のピストン36に形成された係合溝36aに係合し、この状態、すなわち係合状態を維持する。
【0093】
なお、イグニッションスイッチ17をオフとすることで、エンジンが停止し、同時にコンプレッサー42も停止するが、エアタンク43と3ウェイバルブ45とにわたる油圧回路内の油圧ブレーキ状態が維持されていることから、圧力保持ランプ56が消灯するまでは制動力を維持する。なお、この例では、ブレーキとしての圧力保持は2.2kg/cm2 以上である。
【0094】
そして、このロックプランジャ48と係合溝36aとの係合により、このノブ35が引き戻せなくなる。すなわち、補助ブレーキ装置34のノブ35の操作が無効となり、ブレーキ解除不能となって、従って、盗難防止状態となる。
【0095】
次に、車両1を走行可能な状態にするには、先ず、操縦者が、車両1に取り付けられているイグニッションスイッチ17に対応した固有のシリンダーキー17aを用いて、イグニッションスイッチ17をオンにする(st31)。
これにより、先ず第一段階として、固有のシリンダーキー17aを持たない者による車両1の駆動が禁止され盗難が防止されることとなる。
【0096】
次に、イグニッションスイッチ17が正常にオンされると、電源バッテリー19からDCコンバータ20を介してメイン基板21へ電源が供給される(st32)。この電源は、カードホルダー23が、ネームカード23aの挿入待ち状態となるための電源である(st33)。
【0097】
次に、操縦者によって、カードホルダー23にネームカード23aが挿入されると、補助入力機器であるカードホルダー23がオンされる(st34)。
ここで、第二段階としての、ネームカード23aを持たない者による盗難が防止される。
【0098】
挿入されたネームカード23aは、カードホルダー23にて、磁気情報等の形式で書き込まれているIDコードが読み取られ、メイン基板21がこのカードホルダー23を介してIDコードを電気信号として読み取る(st35)。
【0099】
メイン基板21は、ネームカード23aから読み取ったIDコードに対応する予め記憶させておいた固有情報としての「格納暗証番号」を取り出す(st36)。
【0100】
操縦者は、次いで、暗証番号入力機器24によって、固有の「暗証番号」をテンキー24aにて入力する(st37)。
この「暗証番号」は、例えば操縦者本人が定めた固有のものであり、操縦者の所持するネームカード23aのIDコードに対応されてメイン基板21に予め記憶されるもので、このメイン基板21に予め記憶される暗証番号が「格納暗証番号」である。
【0101】
「暗証番号」がテンキー24aより入力されたなら、メイン基板21は、ネームカード23aのIDコードに対応して取り出された「格納暗証番号」との照会を行う(st38)。これらの「暗証番号」と「格納暗証番号」とが一致したなら、ネームカード23a及び操縦者が真正のものであると判断し、メイン基板21は駆動許可信号を継電器25へ出力し(st39)、継電器25の回路を切り換え、すなわちメイン基板21からの電源供給状態から、各スイッチ17,13,58からの電源供給状態とする。
これにより、第三段階として、「暗証番号」を知らない者による車両1の駆動が禁止され、ネームカード23aを所持し使用しても盗難が防止されることとなる。
【0102】
なお、入力された「暗証番号」が「格納暗証番号」と一致しない場合には、「暗証番号」の入力手順st37へ戻す。例えばこの再入力回数は、3回程度に限定するようカウントを行い、それ以上の入力があった場合には、「暗証番号」の入力を拒否する。従って、この場合には、この時点で車両の駆動が不能となる。
【0103】
そして、以上の操作、すなわち、イグニッションスイッチ17のオン状態,駐車ブレーキスイッチ13のオン状態,およびネームカード23aのIDコードとテンキー24aによる暗証番号の入力の照合結果の適合により、継電器25に対して通電が行われることとなり、ソレノイド47は、ロックプランジャ48を後退させ(st40)、これにより、補助ブレーキ装置34のノブ3の操作が可能となり、油圧によるブレーキ状態を解除することが可能となる。
【0104】
次に、補助ブレーキ装置34のノブ35を引き戻し操作を行う(st41)。すると、ピストン36が後退されることから、3ウェイバルブ45は、エアタンク43からのエアを遮断し(st42)、エアマスタ41に送出せず、排気してしまう。これによりエアマスタ41はエアによる圧力が開放され、車輪2に対する油圧ブレーキ状態が解除される(st43)。
【0105】
次に、操縦者は、ハンドレバー12をラチェットを解除して操作し、駐車ブレーキ装置11による機械的なブレーキ状態を解除し(st44)、これにより車両は、走行可能となる。
【0106】
このように、上述の車両盗難防止装置3によれば、車輪2に対するブレーキ状態を、補助ブレーキ装置34のノブ35が操作できなければ解除できず、このノブ35の操作を行うために、ネームカード,暗証番号及びイグニッションキーが揃わないと、その解除が行えないこととなり、たとえエンジン側への電源を不正に供給させて、このエンジンを駆動させたとしても、車輪2はブレーキ状態であり、また、駐車ブレーキ装置11を操作し、ハンドレバー12を戻しても、補助ブレーキ装置34が解除できず、走行が不可能であることから盗難を防止できる。
【0107】
すなわち、従来の車両盗難防止装置では、駆動制御対象がエンジンのみであるため、イグニッションスイッチと燃料供給手段への不正結線を行えば、エンジンの駆動が可能となり、そのため、走行に何ら支障を与えることがない。これに対し、本発明に係る車両盗難防止装置3では、車輪2に対するブレーキ状態を解除しなければ動作可能にならず、ブレーキを解除するためには不正な結線を行うとともに、ブレーキ状態を解除させるための空気圧・油圧の解除を行う作業が必要であり、極めて煩雑な作業が伴うため、事実上、不正結線などによる車両1の走行が不可能になる。この結果、仮にエンジンのみが駆動可能状態となったとしても、車輪2はブレーキ状態のままとなるため、走行が規制され、この車両1の盗難を確実に防止することができる。
【0108】
また、上述した車両盗難防止装置1によれば、車輪2のブレーキ状態を解除するために、イグニッションキー17aと、暗証番号と、ネームカード23aとが必要であり、多重な盗難防止装置となっているとともに、これらが全て揃わない場合には、この盗難防止装置3を解除できず、ノブ35の操作を有効にできないことから、車両1の盗難防止の確実性が向上する。
【0109】
なお、上述した各実施の形態では、補助入力機器としてカードホルダー23を用いる場合を例に説明したが、補助入力機器は、この他、電磁誘導式の非接触カード(IDカード)や、電波式又は赤外線式のリモートコントロールキーであってもよい。
これらの補助入力機器を用いる場合には、IDカード又はリモートコントロールキーからのコード信号を受信するための補助入力機器信号処理基板をメイン基板21に接続する。
【0110】
このようなIDカードを用いれば、接触式のネームカード23aを用いる場合に比べて、磨耗によるIDコード読み取り性能の劣化を防止することができる。
また、リモートコントロールキーを用いれば、IDカードの場合と同様、IDコード読み取り性能の劣化を防止することができるとともに、非接触式のIDカードに比べてコード信号送信可能距離を大きくすることができ、離れた場所からのコード信号送出も可能になり、例えば身体に装着したままIDコードの送出を行え、利便性を向上させることができる。
【0111】
また、上記した各実施の形態では、補助入力手段であるネームカード23aのIDコードにて照合用の固有情報としての「格納暗証番号」を取り出し、その「格納暗証番号」とキー入力手段24による「暗証番号」とを照合して判断する例として説明したが、入力されるIDコードと暗証番号と、予め記憶される格納暗証番号とのそれぞれを同時に比較し判断する構成や、固有情報を、IDコードに対応するものと暗証番号とに対応するものとで複数持ち、それぞれに判断する構成など、継電器に駆動許可信号を出力する制御を行う制御手段は、補助入力手段23とキー入力手段24のそれぞれから入力情報を得る構成であれば、限定されるものではない。
【0112】
さらに、上述した実施の形態では、入力手段22を、キー入力手段24と、補助入力手段23とで構成させ、二重の照合を行う構成であるが、いずれか一方のみの構成としてもよく、例えばテンキーによる暗証番号の入力を行うことで、入力手段を構成してもよく、さらにはこの入力手段を、ネームカードホルダーのみや非接触カードのみ、リモートコントロールキーのみなどの単体で構成させてもよい。
【0113】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係る車両盗難防止装置は、車輪に対するブレーキ状態を、制御手段が補助ブレーキ装置のスイッチ手段の操作を有効な状態としなければ解除できず、エンジン側への電源を不正に供給させて、このエンジンを駆動させたとしても、スイッチ手段が有効に働かなければ、車輪はブレーキ状態であり、走行が不可能であることから盗難を防止できる。
【0114】
そして、スイッチ手段の操作を有効とするためには、入力手段に電子的コードを入力、例えばキー入力手段による暗証番号の入力をしなければならず、この入力される電子的コードが照合結果で予め設定されている照合用の固有情報と適合しなければスイッチ手段の操作が有効とならず、車輪のブレーキ状態は解除されず走行を不能にすることができる。
【0115】
すなわち、この車両盗難防止装置では、イグニッションスイッチのみではなく、入力手段を備えた構成であることから、多重の盗難防止が図られることとなり、この入力手段について正当な操作が行われない場合には、その車両を扱うことが不可能となり、仮に、スイッチ手段の操作を不正に有効な状態とすることとなれば、極めて煩雑な作業が伴い、このため、事実上、ブレーキの解除が不可能となり、また、エンジンのみが駆動可能状態となったとしても、車輪がブレーキ状態であり動作不能状態のままとなるため、走行が規制されることとなって、車両の盗難が確実に防止される。
【0116】
また、入力手段を、ネームカードホルダーとした構成では、固有のネームカードが挿入されることで、例えば磁気情報等の形式でネームカードに書き込まれている固有の電子的コードが、ネームカードホルダーを介して制御手段に読み込み可能となり、すなわち、車両の操縦者を特定させることが可能となる。
【0117】
さらに、入力手段を、非接触カードとした構成では、その非接触カードに書き込まれている固有の電子的コードが、非接触で制御手段に読み込まれ、従って、接触式の前記ネームカードを用いる場合に比べて、磨耗によるコード読み取り性能の劣化が防止される。
【0118】
また、入力手段を、電波式又は赤外線式のリモートコントロールキーとした構成では、このリモートコントロールキーによって固有の電子的コードが、電波式又は赤外線によって送信され、非接触で制御手段に読み込まれ、従って、接触式のネームカードの場合と同様、磨耗によるコード読み取り性能の劣化が防止されるとともに、コード信号送信可能距離も大きくなる。
【0119】
さらに、入力手段を、暗証番号を入力するキー入力手段と、補助入力手段とで構成することで、暗証番号の入力と、この暗証番号とは別のIDコードの入力を必要とすることとなり、それらの入力情報を、固有情報と照合して、適合したときのみ補助ブレーキ装置のスイッチ手段の操作を有効とすることから、盗難防止装置として、二段階の盗難防止を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の車両盗難防止装置の第一の実施の形態の構成を示すブロック図
【図2】同車両盗難防止装置を構成する一部拡大ブロック図
【図3】同車両盗難防止装置の動作手順を表したフローチャート
【図4】本発明の車両盗難防止装置の第二の実施の形態の構成を示すブロック図
【図5】同車両盗難防止装置が備えられる車両の補助ブレーキ装置を構成する3ウェイバルブとコントロールボックスを示す斜視図
【図6】同車両盗難防止装置の動作手順を表したフローチャート
【符号の説明】
1…車両
2…車輪
3…車両盗難防止装置
4…推進軸
5…常用ブレーキ装置
6…フートペダル
7…ブレーキパイプ
11…駐車ブレーキ装置
12…ハンドレバー
14,34…補助ブレーキ装置
15…スイッチ手段(スイッチ)
17…イグニッションスイッチ
22…入力手段
23…補助入力手段(カードホルダー)
24…キー入力手段(暗証番号入力機器)
35…スイッチ手段(ノブ)
Claims (9)
- フートペダルを作動させブレーキパイプ内の流体圧にて全車輪を制御する常用ブレーキ装置と、
手又は足による操作力にてケーブルやリンク等を介し駆動車輪又は推進軸を機械的に制御する駐車ブレーキ装置と、
前記駐車ブレーキと連動又は独立して備えられ、該駐車ブレーキによるブレーキ作動状態のときにのみ操作可能となるスイッチ手段の操作にて、前記ブレーキパイプ内の流体圧を高圧で維持し、前記常用ブレーキ装置による流体圧ブレーキ状態を解除不能とし、前記全車輪を制動する補助ブレーキ装置と、
の3つのブレーキ装置を備える車両の盗難防止装置であって、
電子的コードを入力する入力手段と、
イグニッションスイッチに連接され前記補助ブレーキ装置を作動させるための信号線の中途に設けられ、前記入力手段による電子的コードを入力情報として予め設定された照合用の固有情報との照合により、その照合結果が適合と判断したときに、前記補助ブレーキ装置の前記スイッチ手段の操作を有効とし前記車輪の制動の解除を可能とする制御手段と、
を具備したことを特徴とする車両盗難防止装置。 - 前記入力手段が、暗証番号を入力するキー入力手段であることを特徴とする請求項1記載の車両盗難防止装置。
- 前記入力手段が、ネームカードホルダーであることを特徴とする請求項1記載の車両盗難防止装置。
- 前記入力手段が、非接触カードであることを特徴とする請求項1記載の車両盗難防止装置。
- 前記入力手段が、電波式又は赤外線式のリモートコントロールキーであることを特徴とする請求項1記載の車両盗難防止装置。
- 前記入力手段が、暗証番号を入力するキー入力手段と、IDコードを入力する補助入力手段とで構成されることを特徴とする請求項1記載の車両盗難防止装置。
- 前記補助入力手段が、ネームカードホルダーであることを特徴とする請求項6記載の車両盗難防止装置。
- 前記補助入力手段が、非接触カードであることを特徴とする請求項6記載の車両盗難防止装置。
- 前記補助入力手段が、電波式又は赤外線式のリモートコントロールキーであることを特徴とする請求項6記載の車両盗難防止装置。
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