JP4092825B2 - アレイ型検出装置、およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、放射線または光を直接にキャリア(電子−正孔対)に変換する半導体多結晶膜を有する直接変換タイプのアレイ型検出装置、およびその製造方法に係り、特に半導体多結晶膜の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、医療用あるいは工業用において、放射線(例えばX線など)を検出するための2次元アレイ型検出装置が知られている。図7に示すように、従来の2次元アレイ型検出装置51の場合、多数個の検出素子51aが2次元アレイ配列に対応して縦横に整列配置されているとともに、検出対象の放射線によって検出素子51aに生成したキャリアの蓄積・読み出し用の素子(図示省略)が検出素子51aの2次元アレイ配列に対応する配列で設けられていて、素子別に収集された生成キャリアが電気信号として読み出されるという構成となっている。
【0003】
放射線検出用の2次元アレイ型検出装置51として、検出対象の放射線に感応してキャリアを生成する半導体膜としてアモルファスセレン(a−Se)膜が用いられている装置がある。この装置は、検出対象の放射線を直接キャリアに変換する直接変換タイプである。しかしながら、a−Se膜は放射線に対する吸収能力が低く、キャリア輸送特性が劣るので、十分な感度を得るためには1mm以上の厚い膜と10V/μmを越える高電界が必要である。
【0004】
一方、放射線検出用の2次元アレイ型検出装置51として、a−Se膜の代わりにCdTe系半導体多結晶膜を用いる装置がある。CdTe系半導体多結晶膜は、アモルファス半導体膜と比べると感度が良好である。また、このCdTe系半導体多結晶膜は、放射線だけでなく、光にも感応するので光検出装置の構成も可能である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の半導体多結晶膜を用いた2次元アレイ型検出装置でも、膜質によって検出特性が大きく変わるという難点がある。具体的には、素子間の感度のバラツキが大きかったり、電極形成が困難であったり、或いは、感度や応答性が不足したり、リーク電流が大きかったりするのである。
【0006】
この発明は、上記の事情に鑑み、各種性能が揃って良好なものとなっているアレイ型検出装置、およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1の発明に係るアレイ型検出装置は、共通電極と、検出素子アレイ配列に対応して形成された個別電極との間に、検出対象の放射線または光に感応してキャリアを生成する半導体多結晶膜が設けられている検出基板を備えたアレイ型検出装置において、前記半導体多結晶膜では個別電極の側に粒径が小さい小粒径多結晶域が形成されているとともに、小粒径多結晶域からみて共通電極の側に粒径が大きい大粒径多結晶域が形成されている。
【0008】
また請求項2の発明は、請求項1に記載のアレイ型検出装置において、半導体多結晶膜は厚み方向に粒径が連続的に変化している。
【0009】
さらに、請求項3の発明に係るアレイ型検出装置の製造方法は、請求項1または2に記載のアレイ型検出装置の製造方法であって、検出対象の放射線または光に感応してキャリアを生成する半導体多結晶膜の形成工程において、成膜温度を高くして粒径が大きい大粒径多結晶域を形成する高温成膜過程と、成膜温度を低くして粒径が小さい小粒径多結晶域を形成する低温成膜過程を備えている。
【0010】
また、請求項4の発明は、請求項3に記載のアレイ型検出装置の製造方法において、半導体多結晶膜の形成工程での成膜温度を連続的に変化させるようにする。
【0011】
〔作用〕
次に、この発明における作用を説明する。
この発明のアレイ型検出装置の場合、共通電極と検出素子アレイ配列の個別電極との間に形成された半導体多結晶膜に放射線(または光)が入射すると、半導体多結晶膜の内にキャリアが生成するとともに、生成キャリアはキャリア収集電極である個別電極へ素子別に収集される。
【0012】
この発明のアレイ型検出装置の場合、放射線または光に感応する半導体多結晶膜では個別電極の側に粒径が小さい小粒径多結晶域が形成されている。小粒径多結晶域の場合、膜の表面形状が平坦であるので、個別電極の形成は容易である上に、個別電極のサイズに比べ十分に粒径が小さくて粒径の不揃いの影響が出難くなるので素子間の感度のバラツキが少なくなる。
また、この発明のアレイ型検出装置の場合、放射線または光に感応する半導体多結晶膜では小粒径多結晶域から見て共通電極の側に粒径が大きい大粒径多結晶域が形成されている。この大粒径多結晶域の場合、単結晶に近い膜質であって検出感度は良好である上、小粒径多結晶域に比べ粒界が少なくて、キャリアが速やかに移動できるので応答性が良好であるとともに、バイアス電圧に対する絶縁抵抗が十分であるので、リーク電流が少ない。
すなわち、この発明のアレイ型検出装置の場合、半導体多結晶膜に粒径が小さい小粒径多結晶域と粒径が大きい大粒径多結晶域を適当な位置に配することにより、各種性能を揃って良好なものとしているのである。
【0013】
また、請求項2の発明のアレイ型検出装置の場合、半導体多結晶膜は厚み方向に粒径が連続的に変化しており、キャアリの進行方向に粒径の段差がなくて、キャリアがスムースに移動できることから、応答性あるいは感度等がより良好となる。また、膜中の応力を緩和できるので、基板のそり、膜のクラック等のない信頼性の高い膜が得られる。
【0014】
なお、半導体多結晶膜が放射線ないし光に対する吸収能力の高いCdTe系半導体である場合は、感度が十分である。また、半導体多結晶膜が放射線ないし光に対する吸収能力の高いCdZnTe系半導体である場合、漏れ電流が小さい。
【0015】
また、請求項3の発明のアレイ型検出装置の製造方法の場合、成膜温度の調整により、粒径が小さい小粒径多結晶域と粒径が大きい大粒径多結晶域が適当な位置に配された半導体多結晶膜を有する請求項1または2に記載のアレイ型検出装置を得ることができる。
【0016】
また、請求項4の発明のアレイ型検出装置の製造方法の場合、成膜温度を連続的に変化させることにより、厚み方向に粒径が連続的に変化している半導体多結晶膜を有するアレイ型検出装置を得ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
続いて、この発明の一実施例を図面を参照しながら説明する。図1は実施例に係る2次元アレイ型検出装置の検出基板の構成を示す断面図、図2は実施例の2次元アレイ型検出装置の等価回路を示す電気回路図、図3は実施例装置における検出・読み出しの両基板の合体状況を示す概略正面図、図4は実施例装置の検出素子1個当たりの構成を示す断面図である。
【0018】
実施例の2次元アレイ型検出装置では、図3に示すように、放射線(または光)を検出する検出基板(センサマトリックス基板)1と、生成キャリアの蓄積・読み出しを行う読み出し基板(アクティブマトリックス基板)2とが厚み方向に接合合体されており、検出基板1においては入射した検出対象の放射線によってキャリアが直接変換方式で生成されるとともに、読み出し基板2により素子別に収集された生成キャリアが各素子毎に蓄積されて電気信号として読み出されるよう構成されている。以下、実施例装置の各部の構成をより具体的に説明する。
【0019】
検出基板1は、無色透明のガラス基板(支持基板)3の表面(図1では下面)に形成されたバイアス電圧印加用の共通電極4と、共通電極4の表面側(図1では下面側)に形成された電子阻止用半導体膜5と、検出対象の放射線(例えばX線)に感応してキャリアを生成する半導体多結晶膜6と、この半導体多結晶膜6の表面(図1では下面)に2次元検出素子アレイ配列に対応して区画形成されて正孔阻止用半導体膜7と、各正孔阻止用半導体膜7の表面(図1では下面)にそれぞれ形成されたキャリア収集用の個別電極(画素電極)8が順に積層形成されており、実施例の装置の場合、検出対象の放射線はガラス基板3の共通電極非形成側(図1では上面側)から入射する構成となっている。なお、共通電極4に負のバイアス電圧が印加されるものとする。
【0020】
したがって、検出基板1では、図1および図2に示すように、共通電極4と電子阻止用半導体膜5と半導体多結晶膜6の各一部と正孔阻止用半導体膜7と個別電極(画素電極)8とによって1個分の検出素子1aが構成されていることになる。
【0021】
共通電極4や個別電極8は、例えばITO(インジウム錫酸化物)や、AuあるいはPtなどの導電材料からなる。電子阻止用半導体膜5としては、p型CdZnTe膜やヘテロ接合を形成するZnTe膜、又はZnSe膜などが挙げられる。正孔阻止用半導体膜7としては、n型CdS膜、InをドープしたCdZnTe膜などが挙げられる。
【0022】
そして、実施例の場合、半導体多結晶膜6が、共通電極4の側に形成された粒径が大きい大粒径多結晶域6aと、個別電極8の側に形成された粒径が小さい小粒径多結晶域6bとの積層膜構成となっている。大粒径多結晶域6aの場合、厚みは例えば200μm前後、(平均)粒子径は例えば10〜20μm程度であり、小粒径多結晶域6bの場合、厚みは例えば100μm前後、(平均)粒子径は例えば3〜5μm程度である。したがって、半導体多結晶膜6の全体の厚みは300μm前後である。
【0023】
大粒径多結晶域6aと小粒径多結晶域6bからなる半導体多結晶膜6は、昇華法、スパッタリング、CVD、化学堆積法などの成膜方法により形成することができる。特に半導体多結晶膜6がCdTeあるいはCdX (Zn)1-X Teなどの放射線に対する吸収能力が高い膜の場合、放射線の検出感度は良好なものとなる。なお、CdX (Zn)1-X Teの場合、xは、通常、0.05〜0.2程度の範囲である。
【0024】
一方、読み出し基板2には、図2に示すように、全検出素子1aの各々に対して電荷蓄積用(容量)の素子としてのコンデンサ10と読み出し用の素子としての薄膜トランジスタ(TFT)11が各1個ずつ設けられている。なお、コンデンサ9は各検出素子1aにおける共通・個別の両電極4,8間の等価容量(寄生容量)である。
なお、図2では、説明の便宜上、縦3×横3の(画素)マトリックス構成で合計9個分のマトリックス構成が示されているだけであるが、実施例の場合、普通、検出基板1においては、必要画素数に応じて縦1000〜2000×横1000〜2000程度のマトリックス構成で検出素子1aが2次元アレイ配列されており、また読み出し基板2においても、画素数と同じ数のコンデンサ10および薄膜トランジスタ11が、同様のマトリックス構成で2次元アレイ配列されている。
【0025】
読み出し基板2におけるコンデンサ10および薄膜トランジスタ11の具体的構成は、図4に示す通りである。すなわち、絶縁性支持基板(回路基板)12の表面に形成されたコンデンサ10の接地側電極10aと薄膜トランジスタ11のゲート電極11aの上に絶縁膜13を介してコンデンサ10の接続側電極10bと薄膜トランジスタ11のソース電極11bおよびドレイン電極11cが積層形成されているのに加え、最表面側が保護用の絶縁膜で覆われた状態となっている。また接続側電極10bとソース電極11bはひとつに繋がっており同時形成されている他、コンデンサ10の容量絶縁膜および薄膜トランジスタ11のゲート絶縁膜の両方を構成している絶縁膜13としては、例えばプラズマSiN膜が用いられる。この読み出し基板2は液晶表示用アクティブマトリックス基板の作製に用いられるような薄膜形成技術や微細加工技術を用いて製造される。
【0026】
また、個別電極8とコンデンサ10の接続側電極10bを位置合わせした状態で両基板1,2を銀粒子等の導電性粒子を含み厚み方向にのみ導電性を有する異方導電性フィルム(ACF)を間にして加熱・加圧接着して貼り合わせることで両基板1,2が機械的に合体されていると同時に、個別電極8と接続側電極10bが介在導体部14によって電気的に接続されている。なお、異方導電性フィルムの代わりに、異方導電性ペースト(ACP)、ドライフィルムレジスト(DFR)を用いてもよい。
【0027】
さらに、読み出し基板2には、読み出し駆動用回路としてのプリアンプ(電荷−電圧変換器)群15およびマルチプレクサ16とゲートドライバ17が設けられている。これら読み出し駆動用回路はシリコン半導体等のIC(集積回路)が用いられる。プリアンプ群15は、列が同一の薄膜トランジスタ11のドレイン電極を結ぶ縦(Y)方向の読出し配線(読み出しアドレス線)18に接続されており、ゲートドライバ17は行が同一の薄膜トランジスタ11のゲート電極を結ぶ横(X)方向の読出し配線(ゲートアドレス線)19に接続されている。なお、プリアンプ群15の内では、1本の読出し配線18に対してプリアンプが1個それぞれ接続されている。また、各読み出し駆動用回路は異方導電性フィルム(ACF)等を介して読出し配線18,19に接続されている。
このように、読み出し基板2にあっては、読み出し駆動用回路も一体的に設置されて一段と集積化が図られた構成となっている。しかし、読み出し駆動用回路の全部または一部が別体設置である構成でもかまわない。
【0028】
続いて、以上の構成を有する実施例の2次元アレイ型検出装置による放射線の検出動作を説明する。
実施例装置の場合、共通電極4には負(マイナス)のバイアス電圧が印加される。検出対象の放射線がガラス基板3の上側から半導体多結晶膜6に入射するのに伴って半導体多結晶膜6ではキャリアが生成する。次の読み出しタイミングが来るまでは薄膜トランジスタ11がオフ(遮断)となっているので、生成キャリアはコンデンサ10に電荷として蓄積され続ける。
【0029】
読み出し基板2の場合、マルチプレクサ16およびゲートドライバ17へ信号読み出し用の走査信号が送り込まれることになる。各検出素子1aの特定は、X方向・Y方向の配列に沿って各検出素子1aに順番に割り付けられているアドレス(例えば0〜1023)に基づいて行われるので、取り出し用の走査信号は、それぞれX方向アドレスまたはY方向アドレスを指定する信号となる。
【0030】
Y方向の走査信号に従ってゲートドライバ17からY方向の読出し配線19に読み出し用の電圧が印加されるのに伴い、各検出素子1aが行単位で選択される。そして、X方向の走査信号に従ってマルチプレクサ16が切替えられることにより、選択された行・列に合致する検出素子(画素)1aに対応する薄膜トランジスタ11がオン(導通)となると同時にコンデンサ10に蓄積された電荷が、プリアンプ群15およびマルチプレクサ16を順に経由して電気信号(画素信号)として読み出される。読み出された画素信号は、適当な画像処理が施された後、CRTや液晶あるいはPDP等の表示装置に送られて2次元画像として表示される。
【0031】
実施例の装置の場合、半導体多結晶膜6では個別電極8の側に粒径が小さい小粒径多結晶域6bが形成されている。小粒径多結晶域6bの場合、膜の表面形状が平坦であるので、個別電極8の形成は容易である上に、個別電極8のサイズに比べ粒径が十分に小さくて粒径の不揃いの影響が出難くなるので素子間の感度のバラツキが少ない。
また、実施例装置の場合、半導体多結晶膜6の共通電極4の側に粒径が大きい大粒径多結晶域6aが形成されている。この大粒径多結晶域6aの場合、単結晶に近い膜質であって検出感度は良好であるのに加え、小粒径多結晶域6bに比べて粒界が少なくて、キャリアが速やかに移動できるので応答性がよいとともに、バイアス電圧に対する絶縁抵抗が十分であるので、リーク電流も少ない。
【0032】
続いて、実施例の2次元アレイ型検出装置を製造する方法の一例を、本願発明の特徴である半導体多結晶膜6の成膜を中心に説明する。
先ず無色透明のガラス基板(支持基板)3の表面に、スパッタリング・蒸着等により共通電極4および電子阻止用半導体膜5を積層形成する。なお、支持基板としては検出対象の放射線の吸収の少ない基板が好ましい。
【0033】
次に、半導体多結晶膜6として近接昇華法によりCdTeを積層形成する。近接昇華法による成膜の場合、図5に示すように、真空ポンプ31により室内が排気されて減圧雰囲気になるとともに、流路32からキャリアガスが室内に供給される蒸着チャンバー30の内に、半導体多結晶膜6用の原材料である板状のCdTe焼結体33と、共通電極4および電子阻止用半導体膜5が積層形成されたガラス基板3を面同士が対面するようにして設置する。板状のCdTe焼結体33は、下部サセプタ34に置かれ、その上にスペーサ35を介してガラス基板3が蒸着面を下に向けて置かれることになる。
【0034】
そして、上下のヒータ36,37によりCdTe焼結体33を加熱すると、CdTe焼結体33は液体を経ないで直に気体になる(昇華する)とともに、ガラス基板3の表面に付着して半導体多結晶膜6を形成する。なお、CdTeは特に昇華し易くて近接昇華法による成膜に対する適性が高い。
【0035】
実施例の場合、半導体多結晶膜6を形成する際、成膜温度を高くして粒径が大きい大粒径多結晶域6aを電子阻止用半導体膜5に積層形成する高温成膜過程を先に行い、次に成膜温度を低くして粒径が小さい小粒径多結晶域6bを積層形成する低温成膜過程を行う。
【0036】
高温成膜過程では、650〜700℃の範囲の高い成膜温度で膜付けを行うので、ガラス基板3の電子阻止用半導体膜5の上に大粒径多結晶域6aが積層形成される。低温成膜過程では、600〜650℃の範囲の低い成膜温度で膜付けを行うので、大粒径多結晶域6aの上に小粒径多結晶域6bが積層形成される。すなわち、近接昇華法の場合、主として成膜温度のコントロールにより半導体多結晶膜6における(多結晶の)粒径の調整が可能であることから、大粒径多結晶域6aと小粒径多結晶域6bが積層された半導体多結晶膜6を容易に形成することができる。
【0037】
ついで、ガラス基板3の表面の半導体多結晶膜6の上にスパッタリング・蒸着等により、正孔阻止用半導体膜用の半導体膜を積層した後、パターンニングすることにより、正孔阻止用半導体膜7を形成する。その後、引き続きスパッタリング・蒸着等により、個別電極用の金属膜を積層した後、パターンニングすることにより、個別電極8を形成して検出基板1を得る。
そして、さらに得られた検出基板1と別途作製の読み出し基板2とを異方導電性フィルムを用いて接合合体すれば、2次元アレイ型検出装置が完成する。
【0038】
この発明は、上記実施の形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0039】
(1)実施例では、半導体多結晶膜6が大粒径多結晶域6aおよび小粒径多結晶域6bの積層構成であったが、半導体多結晶膜6は厚み方向に粒径が連続的に変化している構成のものが変形例として挙げられる。この変形例の場合、半導体多結晶膜6にはキャリアの進行方向に粒径の段差がなくて、キャリアがスムースに移動することができるので、応答性あるいは感度等がより良好となる。また、膜中の応力を緩和できるので、基板のそり、膜のクラック等のない信頼性の高い膜が得られる。変形例の検出基板における放射線感応性の半導体多結晶膜を形成するには、例えば、上記の近接昇華法を用いた成膜工程において、成膜温度を連続的に変化させるようにすればよい。
【0040】
(2)実施例では、半導体多結晶膜6が大粒径多結晶域6aおよび小粒径多結晶膜6bがCdTe系半導体またはCdZnTe系半導体からなる半導体多結晶膜であったが、この発明の放射線に感応する半導体多結晶膜は、CdTe系半導体またはCdZnTe系半導体以外の半導体材料からなるものであってもよい。
【0041】
(3)実施例の場合、共通電極4の側には半導体多結晶膜6の大粒径多結晶域6aが存在する構成であったが、図6に示すように、共通電極4の側でも個別電極8の側と同様、半導体多結晶膜6の小粒径多結晶域6bが存在していて、大粒径多結晶域6aは二つの小粒径多結晶域6bに挟まれて存在する構成のものが、変形例として挙げられる。この変形例の場合、共通電極4に対する半導体多結晶膜6の接合性の向上等が期待できる。
【0042】
(4)この発明の検出対象の放射線としてX線が例示されていたが、この発明が検出対象とする放射線は、X線に限らず例えばガンマー線であってもよい。
【0043】
(5)この発明の装置は、放射線の他に光(例えば可視光や紫外線または赤外線)が検出対象であってもよい。また、実施例装置は、放射線と光の両方を検出することが可能であったが、この発明の装置は放射線と光の一方だけを検出する構成であってもよい。
【0044】
(6)実施例は2次元アレイ型検出装置であったが、この発明は検出素子が1列に並ぶだけの1次元アレイ型の構成であってもよい。
【0045】
【発明の効果】
以上に詳述したように、請求項1の発明のアレイ型検出装置によれば、放射線または光に感応する半導体多結晶膜は個別電極の側に粒径が小さい小粒径多結晶域が形成されているとともに、小粒径多結晶域から見て共通電極の側に粒径が大きい大粒径多結晶域が形成されてなる構成を備えていて、小粒径多結晶域の場合は、膜の表面形状が平坦であるので、個別電極の形成は容易である上、個別電極のサイズに比べ粒径が十分に小さくて粒径の不揃いの影響が出難くなるので素子間の感度のバラツキが少なくなるのに加え、大粒径多結晶域の場合は、単結晶に近い膜質であるので検出感度は良好となり、また小粒径多結晶域に比べ粒界が少なくてキャリアが速やかに移動できるので応答性がよいとともに、バイアス電圧に対する絶縁抵抗が十分であるので、リーク電流が少ない。
すなわち、請求項1の発明のアレイ型検出装置の場合、半導体多結晶膜に小粒径多結晶域と大粒径多結晶域を適当な位置に配することによって、各種性能が揃って良好なものとなっているのである。
【0046】
また、請求項2の発明のアレイ型検出装置によれば、半導体多結晶膜は厚み方向に粒径が連続的に変化しており、キャリアの進行方向に粒径の段差がない構成であるので、キャリアがスムースに移動することができる結果、応答性あるいは感度等がより良好となる。
【0047】
なお、半導体多結晶膜が放射線ないし光に対する吸収能力の高いCdTe系半導体である場合、感度が十分である。また、半導体多結晶膜がバンドギャップのより大きいCdZnTe系半導体である場合、漏れ電流が低減できる。
【0048】
さらに、請求項3の発明のアレイ型検出装置の製造方法によれば、成膜温度を調整する程度のことにより、粒径が小さい小粒径多結晶域と粒径が大きい大粒径多結晶域が適当な位置に配された半導体多結晶膜を有するアレイ型検出装置を容易に得ることができる。
【0049】
また、請求項4の発明のアレイ型検出装置の製造方法によれば、半導体多結晶膜の形成工程での成膜温度を連続的に変化させる構成であるので、半導体多結晶膜は厚み方向に粒径が連続的に変化しているアレイ型検出装置を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の2次元アレイ型検出装置の検出基板の構成を示す断面図である。
【図2】実施例装置の等価回路を示す電気回路図である。
【図3】実施例装置での検出・読み出しの両基板の合体状況を示す概略正面図である。
【図4】実施例の装置の検出素子の1個分の構成を示す断面図である。
【図5】実施例の装置の検出基板に半導体多結晶膜を近接昇華法により成膜する時の様子を示す模式図である。
【図6】変形例の検出基板の構成を示す断面図である。
【図7】従来の2次元アレイ型検出装置における検出素子アレイ配列を示す平面図である。
【符号の説明】
1 …検出基板
1a …検出素子
2 …読み出し基板
4 …共通電極
6 …半導体多結晶膜
6a …大粒径多結晶域
6b …小粒径多結晶域
8 …個別電極
10 …コンデンサ
11 …薄膜トランジスタ
Claims (4)
- 共通電極と、検出素子アレイ配列に対応して形成された個別電極との間に、検出対象の放射線または光に感応してキャリアを生成する半導体多結晶膜が設けられている検出基板を備えたアレイ型検出装置において、前記半導体多結晶膜では個別電極の側に粒径が小さい小粒径多結晶域が形成されているとともに、小粒径多結晶域からみて共通電極の側に粒径が大きい大粒径多結晶域が形成されていることを特徴とするアレイ型検出装置。
- 請求項1に記載のアレイ型検出装置において、半導体多結晶膜は厚み方向に粒径が連続的に変化しているアレイ型検出装置。
- 請求項1または2に記載のアレイ型検出装置の製造方法であって、検出対象の放射線または光に感応してキャリアを生成する半導体多結晶膜の形成工程において、成膜温度を高くして粒径が大きい大粒径多結晶域を形成する高温成膜過程と、成膜温度を低くして粒径が小さい小粒径多結晶域を形成する低温成膜過程を備えていることを特徴とするアレイ型検出装置の製造方法。
- 請求項3に記載のアレイ型検出装置の製造方法において、半導体多結晶膜の形成工程での成膜温度を連続的に変化させるようにするアレイ型検出装置の製造方法。
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1999
- 1999-09-30 JP JP27854699A patent/JP4092825B2/ja not_active Expired - Lifetime
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