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JP4083777B2 - 低アーク性端子を含む端子対 - Google Patents

低アーク性端子を含む端子対 Download PDF

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Description

本発明は自動車用ワイヤーハーネスなどに有用なコネクタに利用するための端子対に関するものである。
自動車等に用いられるコネクタは、当該自動車等の保守・点検のため、数ヶ月〜数年に1度程度の頻度で外される場合がある。しかし、コネクタの端子同士が離れる瞬間に当該端子間にアーク放電が発生するおそれがある。特に近年はバッテリー電圧の高圧化のため、かなり大きなアークがとぶおそれがあり、これに起因して端子を傷めることが考えられる。例えば雄端子は、通常、棒状又は板状の形状を有しており、雌端子への挿入を容易にするためにその先端部は若干尖った形状となっているが、前記の着脱及びそれに伴うアーク放電の発生の繰り返しによって、尖っていた先端部は溶融し、根元方向に若干移動して冷えて固まるため、先端部は丸くなりかつ膨出してくる。すなわち、端子が著しく変形する虞があり、これによる接触不良や、最悪の場合には雌端子に挿入すること自体できなくなる虞がある。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、端子離脱時におけるアーク放電の発生を有効に抑え、そのアーク放電に起因する変形や破損を抑止することができる端子対を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、雄端子が雌端子から離脱するときに最後に離れる部分(例えば先端部)の少なくとも外側部分を絶縁体で構成してその表面を導電層で被覆するようにすると、この導電層から前記雌端子が離れる直前まで端子間で電気を導通可能であり、かつ、端子が離れる際には前記導電層の内側にある絶縁体によってアークの発生量を著しく低減でき、端子の変形を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、雌端子と、この雌端子と嵌合することによって当該雌端子と通電可能な雄端子とからなる端子対であって、前記雄端子は、全体が導体で構成された端子本体部分と、この雄端子のうち前記雌端子から離脱するときに最後に離れる部位である最終接触部を含む領域の少なくとも外側部分を構成する絶縁体と、この絶縁体の表面を覆い、かつ前記端子本体部分と電気的につながる導電層とを有していて、この導電層が前記最終接触部で前記雌端子と最後に離れるように構成されている低アーク性端子であり、前記雌端子は、前記雄端子と完全に嵌合した状態で、前記導電層が設けられていない前記端子本体部分直接接触する電気接触部と、この電気接触部よりも先端側の位置で前記雄端子と接触し、かつ、両端子が離脱する際に前記電気接触部よりも後に前記雄端子の最終接触部で前記導電層から離れるアーク放電用接触部とを有するものである。
この構成によれば、端子嵌合状態での当該端子間の導通は、雄端子の導電層を通じてではなくそれ以外の端子本体部分(全体が導体で構成された部分)と雌端子の電気接触部との間で直接行われるので、雌端子が導電層にのみ接触して接続が行われる場合よりも信頼性が高まる。
また、雌端子のうち雄端子の最終接触部で導電層から離れることによりアーク放電が行われる接触部が電気接触部とは別の部位のアーク放電用接触部であるため、当該電気接触部を有効に保護して端子対の寿命を延ばし、また端子間の接続信頼性をより高めることができる。
より具体的には、前記雌端子の前端部に、前端が撓み変形可能なアーク放電用ばね接触片が形成され、このアーク放電用ばね接触片の前端が撓み変形した状態で前記雄端子の導電層に接触するように構成されているものが、好適である。この構成によれば、アーク放電を雌端子の本体部分よりも前方に離れた位置で行わせることができ、当該雌端子の保護をより確実に行うことができるとともに、前記アーク放電用ばね接触片の弾性変形による弾発力を利用して当該ばね接触片と導電層との接触をより確実にすることができる。
以上のように本発明は、端子対を構成する雄端子の最終接触部の少なくとも外側部分を絶縁体で構成し、さらにその表面を端子本体部分と電気的につながる導電層で被覆したものであるため、端子間にアークが発生してもそのアークの発生量を著しく低減でき、端子の変形を抑制できる。また、端子嵌合状態での当該端子間の導通は、導電層を通じてではなくそれ以外の端子本体部分(全体が導体で構成された部分)と雌端子の電気接触部との間で直接行われるので、雌端子が導電層にのみ接触して接続が行われる場合よりも信頼性が高まる。しかも、アーク放電が行われるアーク放電用接触部が前記電気接触部とは別の部位であるため、当該電気接触部を有効に保護して端子対の寿命を延ばし、また端子間の接続信頼性をより高めることができる。
以下、本発明に係る端子対に関して、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は本発明の端子を説明するための概略側面図であり、図2は雄端子の部分拡大断面図であり、図3は雄端子と雌端子との嵌合状態を示す部分拡大断面図であり、図4は雄端子と雌端子とが離脱するときの拡大断面図である。
図1(a)に示すように、雄端子1は、端子本体を構成する箱型部1bと、この箱型部1bから前方に延出する雄型電気接触部(雄タブ)1aとを有し、その端子本体全体が例えば銅系金属といった高い導電性を有する材料で形成されており、この雄端子1は樹脂製のハウジング3と共に、雄型コネクタを形成している。一方、雌端子2は、箱型部2bを有し、その内側に接触用バネ片2aと、このバネ片2aと対向して前記雄タブ1bを挟持可能な第2の接触片2a’とが形成されており、この雌端子2も、前記雄端子1と同様に、樹脂製のハウジング4に収容され、雌型コネクタを形成している。そして、図1(b)及び図3に示すように両端子1,2を嵌合することによって前記雄タブ1aと前記接触用バネ片2a及び第2接触片2a’からなる雌型電気接触部2Aとが互いに接触し、その接触によって端子1,2間での電気的導通が行われる。
ところで、このように嵌合している雄端子1と雌端子2とを離脱すると、雄タブ1aと雌型接触部2A間にアークが発生する虞がある。例えば、図4に示すように、雄端子1を雌端子2から後方に離脱させようとするとき、まず雄タブ1aと接触用バネ片2aとが離れ、次いで雄タブ1aと第2接触片2a’とが離れる。そして雄端子1と雌端子2とが最終的に離れるとき、すなわち図4の例では雄タブ1aと第2接触片2a’とが離れるとき、両端子間にアークが発生して、両端子を損傷する虞がある。
そこでこの端子対では、雄端子1において、端子が離脱するときに最後に離れる部分(以下、最終接触部と称する場合がある)1eを含む領域を絶縁層1cで被覆しており(図2、図4参照)、さらに、この絶縁層1cを、雄端子1の本体部分(導体部分)と電気的に接続される導電層(この例では、導電性金属層)1dによって被覆している。このように最終接触部1eを絶縁層1c及び導電層1dで被覆すると、雌端子2から雄端子1が離れる直前までは導電層1dを媒介として雌端子2と雄端子1とを通電できると共に、両端子1,2が離れる時にアークが発生した場合には、前記導電層1dの内側に位置する絶縁層1cによってアークの発生量を著しく低減でき、雄端子1及び雌端子2の変形を抑制できる。
アーク低減の理由及び端子変形を抑制できる理由としては次のことが考えられる。
[第1の理由]
従来のように裸の端子間で一旦アークが発生すると、タブから次々と金属蒸気が供給されるため、さらにアークが強くなるのに対して、端子(図では雄タブ1a)が絶縁層で被覆されていると、タブ母体からの金属蒸気が遮断される。従って、金属蒸気の供給源はタブ母体に比べて厚みの小さな導電層だけに限られ、金属蒸気の供給がすぐにストップしてアークが小さくなる。
[第2の理由]
裸の端子間で一旦アークが発生すると、アークによってタブが溶融して変形するのに対して、端子が絶縁層及び導電層で被覆されていると、アークが発生しても損傷は表面の導電層にとどめられ、絶縁層より内側のタブ母体の形状は保持されるため、良好な嵌合性能を維持できる。
なお、絶縁層1cは少なくとも前記最終接触部1eに形成されていればよく、その具体的な形成部位は特に限定されない。ただし、嵌合状態で相手方の端子と接触する部分のうち、少なくとも一部には絶縁層を形成しないのが望ましい。例えば、図3に示す例では、雄端子1と雌端子2とがしっかりと嵌合した状態において、雄タブ1aは接触用バネ片2a及び第2接触片2a’と接触している(以下、雄端子1aのうち、接触用バネ片2aとの接触部を接触部1fと称し、第2接触片2a’との接触部を接触部1f’と称する)。そして前記接触部1f、1f’のうちの一部(図3の例では、接触部1fの全領域、及び接触部1f’のうち根元側の領域)には絶縁層1cが形成されていない。嵌合状態での接触部に絶縁層1cを形成しないことにより、雄端子1は雌端子2と直接又は導電層1dを挟んで接触可能であり、嵌合状態での導電性を低下させる虞がない。
また前記絶縁層1cは、通常、前記最終接触部1eを含む所定の領域に形成されているが、少なくとも以下の領域に形成されているのが好ましい。
最終接触部1eから距離1mm以内の領域
好ましくは最終接触部1eから距離3mm以内の領域
さらに好ましくは最終接触部1eから5mm以内の領域
前記領域を絶縁層1cで被覆することにより、アークが絶縁層1cを超えて直接端子1に走るのを確実に防止できる。
なお雄端子1の場合、通常、先端部1g又はその近傍(図の例では、部位1e)が最終接触部になることが多い。そのため、雄端子1aに絶縁層を形成する場合には、先端部1gから根元方向に向けて長さ1mm以上、好ましくは長さ3mm以上の領域を絶縁層1cで被覆するのが簡便である。
絶縁層1cの種類はアークを低減できる限り特に限定されないが、例えば、金属蒸着層[Al(アルマイト)層、SiO層、Si層、TiO層など]、黒色処理層(CuO層)、クロメート処理層などの金属系絶縁層;絶縁性樹脂などの樹脂系絶縁層が挙げられる。
なお前記金属層は、必ずしも蒸着等によって形成する必要はなく、金属めっきによる方法、金属箔化した後に端子に貼り付ける方法等により形成してもよい。
また前記絶縁性樹脂は溶媒と共に塗料(ペイント系塗料、エナメル系塗料、ワニス系塗料など)とし、種々のコーティング方法(スプレーコーティング、ディッピングなど)によって端子に塗布し、必要に応じて焼き付け処理してもよい。さらに絶縁性樹脂は粉末塗装してもよく、フィルム成形後、端子に貼り付けてもよい。
絶縁層1cの厚みは、通常、0.5〜500μm程度、好ましくは5〜50μm程度である。
また絶縁層の電気抵抗は、通常、1×1016Ω以上であるが、タブに用いる金属(銅系金属)よりも電気抵抗が高ければ、アークを低減できる。すなわち絶縁層はアークを低減できる限り若干電気を通してもよく、その場合絶縁層の電気抵抗は、例えば、1Ω以上、好ましくは20Ω以上である。
一方、導電層1dは前記絶縁層1cを被覆している限り形成部位は特に限定されないが、導電層1dを端子1と確実に電気的に接続するためには、通常、絶縁層1cの表面のみならず、絶縁層1cの外縁部から少なくとも長さ0.1mm(好ましくは、少なくとも長さ1mm)の領域を被覆するのがより好ましい。また、端子1(又はタブ1a)全体を導電層1dで被覆してもよいが、全体を被覆しない場合は、導電層1dによる被覆領域は、通常、前記絶縁層1cの外縁部から長さ3mm以内程度が好適である。
導電層の種類としては、例えば、導電性金属(Sn、Ni、Al、Ag、Auなど)のめっき層、導電性ポリマー層(アルカリ金属をドープしたポリアニリン層など)などが挙げられる。なお、金属めっきによって金属層を形成する場合、無電解めっきでは金属層の強度が弱い場合がある。そのため、無電解めっきする場合には、その表面をさらに他のめっき法(電解めっき法、溶融めっき法)によって被覆してもよい。
導電層は薄膜(例えば、厚み500μm以下、好ましくは100μm以下、さらに好ましくは35μm以下)であるのが好ましい。導電層の厚みが薄いほど、アークが発生したときの金属蒸気の供給量を低減でき、アークの発生量自体を低減できる。なお導電層は、通常、0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上である。
絶縁層1cと導電層1dとの組合わせは特に限定されず、絶縁層1cの表面を導電層1dで直接被覆可能な組合わせのみならず、絶縁層1cの表面を導電層1dで直接被覆できない組合わせであってもよい。直接被覆できない場合は、絶縁層1cと導電層1dとの間に中間層を介在させて、絶縁層1cを導電層1dで被覆する。以下、組合わせについて例示する。
[絶縁層1cの表面を導電層1dで直接被覆可能な組合わせ]
絶縁層1c:樹脂系絶縁層(エナメル層など)
導電層1d:導電性樹脂層
[中間層を介在させる組合わせ]
絶縁層1c:黒色処理層、クロメート処理層、樹脂系絶縁層(エナメル層など)など
導電層1d:導電性金属のめっき層(電解めっき層など)
前記中間層としては、無電解めっき層(例えば、Ni、Sn、Alなどの無電解めっき層)が挙げられる。
なお、絶縁層及び導電層は、雄端子に代えて雌端子に形成してもよく、雄端子及び雌端子の両方に形成してもよい。例えば、上記図示の例において雌端子に導電層を形成する場合、第2接触片2a’が最終接触部2eを有するため、この部位2eを含む領域に絶縁層及び導電層を形成してもよい。なお端子の形状によっては、バネ片2aが最終接触部を有する場合もある。その場合は、バネ片2aに絶縁層及び導電層を形成してもよい。
本発明の端子は、最終接触部が絶縁層で被覆されているため、たとえアークが発生してもすぐに消失し、アークによる損傷は導電層で止まり、端子自体は損傷しない。そして導電層の一部が損傷して絶縁層が露出しても、残存している導電層部分で通電し(すなわち別の箇所からアークがとび)かつそのアークを低減できるため、導電層が略完全に剥離するまでは複数回(例えば、3〜200回程度)繰り返して使用できる。そのため、この端子を例えば自動車用のワイヤーハーネスに使用すると、高電圧が負荷されているにも拘わらず、保守、整備程度の取り外しでは導電層が略完全に剥離する可能性が低く、有利である。
前記雄端子1は、それ全体を単一の材料で一体に形成することも可能であるが、例えば前記図1に示すように雄タブ1aの先端側特定部位の限られた領域のみに絶縁層1cを局所的に施すには、予め面倒なマスキング処理をしておく手間が必要となる。また、当該絶縁層1cの上に良好な導電層1d(めっき層)を施すには、当該絶縁層1cの表面をエッチング処理することがきわめて好ましいが、全体が一体に形成された雄端子1に絶縁層1cが設けられている場合、当該雄端子1の本体部分は腐食させずに絶縁層1cの表面のみを十分にエッチング処理することは非常に難しい。
そこで、本発明にかかる端子においては、例えば図5に示す雄端子1のように、端子本体部12と端子先端部11とを各々別々に製造してから両者を合体させるようにすることが、より好ましい。
図示の端子本体部12は、通常の端子と同様に単一の金属板で構成されているが、その前端には端子先端部嵌合用の電気接触部12bが形成されている。この電気接触部12bは、図例では偏平な矩形状の断面を有し、その両側面には係止孔12dが形成されている。
一方、端子先端部11は、前記雄タブ1aに相当する形状のタブ部11aを有し、このタブ部11aの後端面中央から後方に嵌合部11bが突出するとともに、同後端面の左右両側部から後方に被係止腕11cが延び、両被係止腕11cの後端外側面に被係止突起11dが形成されている。嵌合部11b及び被係止腕11cは前記電気接触部12b内にほぼ隙間なく嵌入される厚み寸法を有しており、その嵌入状態で図6に示すように前記各被係止突起11dが電気接触部12bの係止孔12dに嵌まり込むことにより、端子先端部11が端子本体部12の前側に係止されて雄端子1全体が組み上げられるようになっている。
ここで、前記端子先端部11は、図6に示すように、絶縁材料からなる母体の表面に導電層1dが設けられた構成となっており、例えば当該母体を一体成形した後、その表面をエッチング処理してからその上に導電層1dを形成することにより、(マスキング処理をすることなく)簡単に製造することが可能となっている。
前記母体を構成する材料は、耐熱性の高いものが好ましく、アルミナや窒化アルミニウム等のセラミック系材料、エポキシ系やフェノール系等の熱硬化性樹脂、PEEK、PPS等の熱可塑性樹脂が好適である。金属めっきとしては、上述と同様、例えば銅やニッケルによる無電解めっきや、当該無電解めっきとスズ等による電解めっきまたは溶融めっきとの組み合わせを採用することができる。また、当該金属めっきに代え、蒸着、導電性塗料の塗布、金属箔や導電性フィルムの貼着、金属コーティングや焼き付け、等の手段をとることも可能である。
前記導電性塗料としては、例えばグリースやオイル等の比較的粘度の高い媒体にCu,Al,Ag,Auといった金属粉体を混入させたものが、好適である。その他、流動性を有する導電材料として、室温近傍で液相をなす金属(例えばHg,K,Cs)や、電解性水溶液(例えば塩化ニッケル、塩化コバルト、塩化マンガンの水溶液)を絶縁材料からなる母体の表面に塗布するようにしてもよい。塗布後の端子使用時にも流動性を保ち得る塗料を塗布するようにすれば、仮に端子先端部でアーク放電が発生してそのアーク放電発生部分の塗料が飛んでしまっても、その欠損個所を補うように当該個所に対して周囲から塗料が流れ込むため、長期にわたって良好なアーク防止効果を維持することが期待できる。
また、前記母体は必ずしも全体が絶縁材料で成形されていなくてもよく、例えばアルミニウムや銅からなる母体の表面に酸化皮膜を形成して絶縁層を構築するようにしてもよい。その他、樹脂コーティングやエナメルの焼き付けといった手段をとることも可能である。ただし、前記のように端子先端部11の母体全体を絶縁材料で成形するようにすると、何らかの要因で絶縁層が破断されてしまうといったおそれがなく、より確実にアーク抑止機能を維持することができるとともに、改めて絶縁層を形成する必要がなくなり、工数を削減できる利点が得られる。
また、本発明にかかる端子は、前記のようなタブ状のものに限られず、その具体的な形状及び構造は種々設定が可能である。その一例として、図7及び図8は、円筒状の電気接触面をもつ雄端子1及び雌端子2を示したものである。
図において、雄端子1は端子先端部11と端子本体部12とに分割されている。
端子先端部11は、円柱状の電気接触部11fと、この電気接触部11fから後方に延びる小径の連結軸11eとを一体に有し、電気接触部11fの先端11gは先尖り状(円錐台状)に形成されている。
端子本体部12は、円筒状の電気接触部12eを有し、その後方に連結軸バレル12f及び電線バレル12gを有している。電気接触部12eは、前記連結軸11eが挿入可能な内径と、前記電気接触部11fの外径に等しい外径とを有し、この電気接触部12eに前側から挿入された連結軸11eが前記連結軸バレル12fによって把持されることにより、端子本体部12と端子先端部11とが一体化されるとともに、前記電線バレル12gによって電線が保持された状態で当該電線と雄端子1とが電気的に接続されるようになっている。
雌端子2は、前記電気接触部11f,12eが隙間なく嵌入される円筒状の電気接触部2dを有し、その後方に導線バレル2f及びインシュレーションバレル2gが形成されている。
このような構造においても、前記端子先端部11の母体の少なくとも表面部分を絶縁材料で構成し、その外側に導電層を形成することにより、前記と同様のアーク抑止効果を得ることができる。すなわち、電気接触部11f,12eが電気接触部2dに嵌入されている完全嵌合状態から離脱する際、薄い導電層が形成された電気接触部11fの先端部分が最後に電気接触部2dから離れるようにすることにより、その離れた瞬間に発生するアークを有効に抑止して雄端子1を保護することができる。
前記端子先端部11の成形方法は、母体を成形してからその表面に導電層を配するものに限られない。例えば、図21(a)に示すように、導電層を構成する筒体(一般には薄肉の金属筒)15の内側にアルミナや窒化ケイ素といったセラミックの粉末16を充填しておき、これをプレスによる延伸等で端子本体部の目標形状(例えば図21(b)に示すような形状)に成形し、かつ、当該セラミック粉末16を焼結して前記筒体15と一体化させることによっても、絶縁材料製の母体の表面に導電層をもつ端子先端部を簡単に製造することが可能である。かかる成形法は、前記絶縁材料として、セラミックの他、ナイロンABS等の合成樹脂を用いる場合にも適用が可能である。
なお、前記雄端子1における端子先端部11と端子本体部12との連結構造は図示のものに限られない。例えば図9に示すように、端子先端部11の連結軸11eの外周面に凹部11hを形成しておき、この凹部11hに対して端子本体部12の円筒状電気接触部12eの外周壁から内側へ係止爪12hを食い込ませるようにしてもよい。
前記図7及び図8と同様にして雄端子1を端子先端部13と端子本体部14とに分割した別の例を図10〜図20に示す。
ここに開示する雄端子1は、図10〜図13に示すように、その端子先端部13が合成樹脂等の絶縁材料により母体が一体成形され、その表面にめっき等による導電層1dが設けられたものであり、略直方体状の頭部13aと、この頭部13aから後方に延びる嵌入部13bとを一体に有する全体形状を有し、嵌入部13bの断面形状は頭部13aの断面形状よりも一回り小さくなっている。さらに、頭部13aの後半部から嵌入部13bにかけて、その上面には、軸方向に延びる凹溝13cが形成されている。
端子本体部14は、高い導電性をもつ金属板を折り曲げることにより全体が形成されたもので、箱状に形成された本体部分14aから前方に筒状(図例では略角筒状)の電気接触部14bが延び、この電気接触部14b内に前記端子先端部13の嵌入部13bが嵌入された状態で固定されている。詳しくは、当該嵌入部13bの後部底面に凹部13dが形成される一方、電気接触部14bの底壁後部に上方に突出する係止爪14dが形成され、この係止爪14dが前記凹部13dに嵌まり込むことにより端子先端部14が端子本体部13に係止されるようになっている。
さらに、前記電気接触部14bの底壁からは前記端子先端部13の頭部13aを下から支持するための舌片14tが延長される一方、同電気接触部14bの天壁からは前方にばね接触片14cが延長されている。このばね接触片14cの前端部は撓み変形(弾性変形)可能であり、当該先端部下面には下方に突出する接点用突起14pが形成されている。そして、この電気接触部14b内に前記端子先端部13の嵌入部13bが嵌入される際にこの端子先端部13の凹溝13c内に前記ばね接触片14cが侵入し、かつ、このばね接触片14cの先端部が上方に撓み変形した状態で当該先端部に設けられた接点用突起14cが凹溝13cの前部底面上の導電層1dに圧接するように構成されている。
端子本体部14は、その本体部分14aよりも後方の位置に導線バレル14e及びインシュレーションバレル14fを順に有している。導線バレル14eは、絶縁電線30の先端に露出した中心導線31を抱き込むように当該中心導線31と圧着され、これにより当該中心導線31と端子本体部14とが電気的に接続される。インシュレーションバレル14fは、前記中心導線31よりも後方の位置で絶縁電線30の絶縁被覆32を抱き込むように保持する。
この雄端子1と対をなす雌端子2を図14〜図16に示す。この雌端子2は、前記雄端子1の端子本体部14と同様、高い導電性をもつ金属板を折り曲げることにより全体が形成されたもので、箱状の電気接続部20と、その後方に形成された導線バレル2e及びインシュレーションバレル2fとを一体に有している。これら導線バレル2e及びインシュレーションバレル2fは、前記雄端子1の導線バレル14e及びインシュレーションバレル14fと同様、接続すべき絶縁電線40の中心導線41及び絶縁被覆42をそれぞれ抱き込むように保持するものである。
前記電気接続部20には、前記雄端子1に対する電気接触部として、電気接続部20の天壁下面に軸方向に延びる突条21が形成される一方、底壁前端から上側に略180°曲げ返されたばね接触片22が形成され、このばね接触片22の後端部(撓み可能な自由端部)の上面に接点用突起22aが突設されている。そして、この接点用突起22aと前記突条21とで上下から挟まれるようにしながら前記雄端子1が電気接続部20内に嵌入されるようになっている。
さらに、この雌端子2の特徴として、前記電気接続部20の左右側壁から前方にアーク放電用接触部である固定接触片24及びばね接触片26が延びている。
固定接触片24は、電気接触部20の左側側壁からそのまま前方に延長されたもので、その前端には内側に突出する接点用突出部24aが形成されている。ばね接触片26は、その上下及び前側がスリット25で囲まれ、かつ、前端部が若干内側寄りに傾斜されており、当該前端部が左右方向に撓み変形可能となっている。さらに、前記スリット25よりも前側の金属板部分は外向きに略180°折り返され、前記ばね接触片26を外側から保護する保護板部27を形成している。そして、前記ばね接触片26と固定接触片24とで前記雄端子1が左右両側から挟み込まれるようになっている。
次に、この端子対の作用を説明する。
まず、図17及び図18に示すように両端子1,2同士が完全に嵌合された状態では、雌端子2の電気接続部20におけるばね接触片22が下方に撓み変形した状態で当該ばね接触片22の接点用突起22aと突条21とで雄端子1の電気接触部14が上下から挟み込まれ、前記ばね接触片22の弾発力によってその接点用突起22aと突条21とがそれぞれ電気接触部14の底壁及び天壁に圧接している。この圧接部分を通じて端子1,2間の電気的導通が確保される。
なお、雄端子1においては、端子本体部14のばね接触片14cが撓み変形しながらその弾発力で当該ばね接触片14cの接点用突起14pが端子先端部13の表面の導電層1dに圧接しているため、この圧接によって当該導電層1dと端子本体部14との導通も確保されている。また、図示の端子本体部14においては、端子先端部13との電気的導通を確保するためのばね接触片14cと、端子先端部13を機械的に係止するための係止部(係止爪14d)とが別部位となっており、前記ばね接触部14cに強度的負担がかからないので、その変形等を抑制して接続信頼性を高めることが可能となっている。
次に、この完全嵌合状態から端子1,2同士の離脱作業が開始されると、まず、突条21と電気接触部14の天壁との接触が解除され(図19)、次いで、電気接触部14における舌片14tとばね接触片22の接点用突起22aとの接触も解除されるが、その時点でもまだ、雌端子2の固定接触片24及びばね接触片26と端子先端部頭部13aの表面に設けられた導電層1dとの接触は保たれており、かつ、この導電層1dと端子本体部14との導通が確保されているので、前記の接触が解除された接点同士の間にアーク放電は発生しない。
そして、前記固定接触片24及びばね接触片26と導電層1dとが離れる瞬間(図20)に、その導電層1dと固定接触片24またはばね接触片26との間にアーク放電が発生する可能性があるが、前記導電層1dは金属めっき等で構成された極めて薄い膜であるため、前記アーク放電が生じたとしても軽微であり、端子は有効に保護される。しかも、前記導電層1dに端子本体部14が接触する部位は、当該端子本体部14に後端がつながっているばね接触片14cの前端部に形成された接点用突起14pであり、この接触部位と前記導電層1dが雌端子2から最後に離れる部位(先端部)との距離が短いので、前記雌端子2と離れる直前に導電層1dを電流が流れる径路が短く、当該電流による発熱が有効に抑止される。
以上示した構造のように、アーク放電を雌端子2における正規の電気接触部(図例では突条21及びばね接触片22)とは別のアーク放電用接触部(図例では固定接触片24及びばね接触片26)で発生させるようにすれば、前記正規の電気接触部をアークから有効に保護することができ、端子間の接続信頼性をより高めることが可能になる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1
図1〜4の雄コネクタ及び雌コネクタを形成した。ただし、絶縁層としてポリイミド層(厚み=10μm、電気抵抗=1×1016Ω以上)を、中間層(図示せず)として無電解めっきしたNi層を、導電層として電解めっきしたSn層(厚み=10μm)を形成した。
雄コネクタ1及び雌コネクタ2を接続し、42Vの電圧を負荷した状態で、雌コネクタ2から雄コネクタ1を抜いた。アークの放電時間は正確な計測ができない程短く、約0.1秒程度であった。放電後、雄端子の先端の導電層は若干破壊していたが、端子形状自体には異常は認められなかった。
比較例1
導電層、中間層及び絶縁層を形成しない以外は、実施例1と同様にした。
実施例1と同様にしてアークの放電時間を調べたところ、約1秒であった。放電後、雄端子の先端は丸くなっていた。
本発明の端子及びコネクタの概略側面図である。 図1の雄端子の部分拡大断面図である。 図1の雄端子及び雌端子の嵌合状態を示す部分拡大断面図である。 雄端子と雌端子とが離脱する状態を示す部分拡大断面図である。 端子本体部と先端部とが別々に製造される雄端子の例を示す分解斜視図である。 図5の雄端子の組み上げ状態を示す一部断面平面図である。 円筒状の電気接触面をもつ雄端子の例を示す分解斜視図である。 図7の雄端子とこれに嵌合される雌端子とを示す斜視図である。 端子本体部への端子先端部の係止構造例を示す一部断面正面図である。 端子本体部と先端部とが別々に製造される雄端子とこれに嵌合される雌端子の他の例を示す分解斜視図である。 図10に示す雄端子の端子本体部と先端部とが合体された状態を示す斜視図である。 図11に示す雄端子の断面正面図である。 図11に示す雄端子の断面平面図である。 図10に示す雌端子を前方から見た斜視図である。 図14に示す雌端子の断面正面図である。 図14に示す雌端子の断面平面図である。 図10に示す端子対の完全嵌合状態を示す断面正面図である。 前記端子対の完全嵌合状態を示す断面平面図である。 前記端子対の離脱作業が開始された状態を示す断面正面図である。 前記端子対が完全に離脱される直前の状態を示す断面平面図である。 (a)は雄端子の端子本体部を製造するにあたって筒体の内側にセラミック粉末を充填した状態を示す断面図、(b)はその充填物を端子本体部の目標形状に変形した状態を示す断面図である。
符号の説明
1 雄端子
1c 絶縁層
1d 導電層
1e,2e 最終接触部
1f 先端部
11,13 端子先端部
12,14 端子本体部
14c ばね接触片(ばね接触部)
14d 係止爪(係止部)
15 筒体
16 セラミック粉末
2 雌端子
21 突条(電気接触部)
22a 接点用突起(電気接触部)
24 固定接触片(アーク放電用接触部)
26 ばね接触片(アーク放電用接触部)
3,4 ハウジング

Claims (2)

  1. 雌端子と、この雌端子と嵌合することによって当該雌端子と通電可能な雄端子とからなる端子対であって、
    前記雄端子は、全体が導体で構成された端子本体部分と、この雄端子のうち前記雌端子から離脱するときに最後に離れる部位である最終接触部を含む領域の少なくとも外側部分を構成する絶縁体と、この絶縁体の表面を覆い、かつ前記端子本体部分と電気的につながる導電層とを有していて、この導電層が前記最終接触部で前記雌端子と最後に離れるように構成されている低アーク性端子であり、
    前記雌端子は、前記雄端子と完全に嵌合した状態で、前記導電層が設けられていない前記端子本体部分直接接触する電気接触部と、この電気接触部よりも先端側の位置で前記雄端子と接触し、かつ、両端子が離脱する際に前記電気接触部よりも後に前記雄端子の最終接触部で前記導電層から離れるアーク放電用接触部とを有することを特徴とする低アーク性端子を含む端子対。
  2. 請求項1記載の低アーク性端子を含む端子対において、前記雌端子の前端部に、前端が撓み変形可能なアーク放電用ばね接触片が形成され、このばね接触片の前端が撓み変形した状態で前記雄端子の導電層に接触するように構成されていることを特徴とする低アーク性端子を含む端子対。
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