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JP4082729B2 - 眼の眼内圧を低下させるための装置 - Google Patents

眼の眼内圧を低下させるための装置 Download PDF

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Description

関連出願へのクロスリファレンス
本出願は同時係属出願第08/279,506号(1994年7月22日出願)の一部継続である。
発明の背景
技術分野
本発明は眼インプラント及び眼の眼内圧の処置に関し、さらに詳しくは、眼の前房から房水を排出し、外科手術部位における創傷治癒を機械的に抑制することによって眼内圧を低下させるための新規で、有用な方法及び装置に関する。
背景
米国、ヨーロッパ及び大抵の先進工業諸国を通して、緑内障は最も一般的な視力を脅かす疾患であり、世界的な規模で、全ての失明の約10%の原因である。緑内障は、眼房水(ocular fluid)が眼中に蓄積して、視神経に非常に大きな圧力を及ぼし、緑内障性視神経病の結果として回復不能な損傷を徐々に生じる。
緑内障は、肉体的及び財政上の両方の即座の及び長期間の面(ramification)を有する重大なヘルスケア問題である。緑内障は米国における失明の主要な原因であり、米国では毎年300,000件を越える新たな症例が報告されている。米国では、毎年95,000人を越える緑内障患者がこの疾患のためにある程度の視力を失っており、5,500人を越える人が完全な失明を経験している。1年間基準の治療費は年間200万回を越える通院に基づいて$15億であると推定されるので、緑内障の社会−経済的な影響は重大である。
緑内障の原因は充分に解明されていない;しかし、認識された素因要素には、血管運動的及び情緒的不安定性、遠視、及び特に遺伝がある。家族歴のために緑内障の素因を有する人々と共に、緑内障を発症する高い危険状態にある個人は35歳以上の人々、又は糖尿病を有する人々、又は糖耐性試験に陽性である人々である。この疾患はまたアフリカ系アメリカ人を不釣り合いな数で襲う。彼らは緑内障を4〜5倍発症しやすく、視力の完全な喪失に6倍まで罹りやすい。
緑内障に付随する眼内圧上昇は、眼の前房と後房とを満たす水性流体である房水の産生量と流出量との不均衡に関係する。房水は眼の毛様体突起によって分泌され、後房と瞳孔とを通って前房に入り、そこでこれは虹彩角膜角においてシュレンム管(Schlemm管)とも呼ばれる静脈洞によって静脈系に再吸収される。房水流出の障害が眼内圧上昇の主要な原因であるように思われる。
現在の緑内障治療の目的は、眼内圧を低下させることによる視神経損傷と視力低下との予防である。より良好な治療方法の模索は治療の最前線として薬剤学的方法と外科手術的方法の間であらゆる努力をしてきた。
米国では、初期応答として薬剤が伝統的に用いられている。緑内障に対する一般的な薬剤学的治療は、炭酸脱水酵素(カーボニックアンヒドラーゼ)阻害薬の全身的使用又はピロカルピン、チモロールマレイン酸、ベータキソロールHCl、レボブノロール、メチプラノロール、エピネフリン、ジピベフリン、臭化デメカリウム及びヨウ化エコチオフェートの局所塗布を包含する。しかし、大抵の重要な化学療法の場合と同様に、これらの薬剤の副作用は重度である可能性があり、治療の効力は変動する。薬剤の一部は心血管系機能及び血圧に好ましくない全身効果を及ぼし、頭痛若しくは悪心、又は眼の灼熱感(ocular berning)と刺激状態を生じる。しかし、薬物療法の最も頻繁におこる、恐らく最も重大な欠点は、患者、特に老齢の患者はしばしば正確に自己投薬することができないことである。かれらは適時にかれらの薬物を服用することを忘れる、さもなくば点眼薬を不適当に投与して、不充分な又は過剰な投与量(dosing)を生じる。緑内障の影響は不可逆的であるので、患者が不適当に服薬する−−眼濃度を適当な治療レベル未満に低下させる−−場合には、さらなる永久的な視覚損傷が生ずる。
多年にわたって費用抑制に強く重点がおかれているヨーロッパでは、外科手術が好まれているアプローチである。このことは、米国においても投薬が眼内圧を抑制することができない又は視野が漸進的に欠損を示す場合に該当する。米国のみにおいても1993年に1,152,000件を越える手術が眼内圧の調節のためにおこなわれたことが記録されている。
緑内障濾過手術は歴史的に、重度な緑内障症例に用いられる、最も広範囲に実施される方法であった。この外科手術の基本原理は、眼の縁領域(limbal region)に開孔、又は瘻管を形成して、房水の流出を促進し、前房角における病的な遮断をバイパスすることである。現在用いられている2種類の基本的アプローチが存在する。全層濾過方法(full-thickness filtration procedure)では、全層強膜切開をおこなって、前房を結膜下腔に直接結合する。この方法の主要な利点は手術後に得られる眼内圧の有意な低下である。しかし、この外科手術は、その複雑さのために、第2の型の外科手術、線維柱帯切除術よりも頻繁に用いられない。線維柱帯切除術では、強膜切開が強膜フラップ(scleral flap)下でおこなわれる。次に、房水流出減少(aqueous outflow runoff)を最小にしようと試みて、このフラップをその本来の床に再び縫合する。強膜フラップ下での線維柱帯切除術の利点は、再縫合強膜によってタンポン挿入(tamponate)効果が与えられ、結果として房水流動(aqueous flow-through)を減少させることである。残念ながら、この方法は短期間の術後安定性を与えるが、最終的な眼内圧レベルは通常、全層濾過後に見られるよりも高く、長期的な成功率は低い。
これらのアプローチと、緑内障濾過手術の両方に伴う主要な問題は、一般に、身体の自然の治癒プロセスである。緑内障濾過手術は、外科手術を成功させるために創傷治癒の抑制が望ましいことで、大抵の手術方法とは異なる。正常な創傷治癒が生ずると、濾過速度が低下して、眼内圧が上昇するので、治癒反応の抑制が必要になる。手術の失敗は抗し難い創傷治癒反応と濾過部位における瘢痕形成のために最も頻繁に起こる。ヒトの手術と実験室動物の手術との組織学的研究は、緑内障濾過手術の失敗が手術部位周囲の濃密な線維性血管(fibro-vascular)結合組織の存在に関係することを示唆している。このことは、結膜下腔からの房水の拡散を妨害する。
今世紀の初めから、外科手術による瘻管中にデバイスを挿入することによって、房水流出を促進し、治癒プロセスを無効にするために多くの努力がなされている。これらのデバイスはサイズ、材料組成及びデザインにおいて広範囲に変化しており、最初のデバイスの1つはRabbettとMoreauの1906年の馬の毛のデバイスである。時間が経過するうちに、房水シャント(aqueous shunt)が眼内圧を下げるためのますますポピュラーで、有効な手段になってきた。さらに最近のデバイスのなかでは、経周辺赤道シャント(translimbal equatorial shunt)が最も有効であると実証されている。このようなデバイスの例はMoltenoに付与された米国特許(4,457,757と4,750,901)、Odrichに付与された米国特許(5,041,081と5,127,901)、及びBaerveldt等に付与された米国特許(5,178,604)に開示されているデバイスを包含する。Moltenoのデバイスは一般的に、眼の前房中に挿入するためのドレナージ管(drainage tube)を有する畝つきプレート(ridged plate)から成る。Odrichの特許は前房の圧力を弛緩させるための2種類の眼インプラントを開示しており、両方は流れ抵抗逆止め弁(one-way flow resisting valve)を有し、結膜下に存在する。Baerveldtの装置はTenon嚢と角膜とを貫通して、前房中に挿入されるドレナージ管を有する弾性プレートを含む。実際に慣用的な緑内障房水ドレナージインプラントの全てが、それらの表面の周囲に房水を流動させるか、又は房水を中空管に通して直接、静脈若しくはブレブ(bleb)中に導くか、又は大きな上強膜プレート(episcleral plate)に導いて、後方結膜中の筋肉間に房水を注入するように設計される。
しかし、慣用的な房水シャントは異物反応と炎症、並びに閉塞と感染を包含する幾つかの特殊性(peculiarity)によって困難を有している(be plagued)。現在の開放管房水ドレナージデバイスの主な欠点は、手術直後の期間における過度の房水ドレナージであり、この結果、平たい前房と可能な絨毛膜様剥離(choroidaldetachment)とが生ずることである。恐らく眼球ろうを招来する、重大な低圧も実質的な危険性である。過度な術後房水流量は眼の直筋下方の線維嚢(fibrous capsule)の膨張をも惹起する。これの質量効果(mass effect)が筋肉を引き伸ばしたり、引き締めたりして、斜視やインプラント四分円への運動能力制限(motility restriction)を誘導する。
質量効果は筋肉下方のデバイス自体の嵩ばる存在によっても単純に及ぼされて、眼の運動の制限強膜侵食、眼曲率(eye curvature)の変化、又は隣接血管系及び組織への損傷を招来する。このことは特に、弁を有する硬質のプラスチック又は金属インプラントに該当する。これらは大きくて、複雑な設計になる傾向がある。他の問題は、移植されたデバイスによって強膜フラップに与えられる摩擦と摩耗、前房へのインプラント挿入によって惹起される虹彩内皮(iris endothelium)の刺激状態、及びインプラントの慢性的前後運動によって生ずる悪化を含む。一部の緑内障濾過手術は、虹彩の線維の一部の横方向分割をおこなって、前房と後房の間の連絡を形成する周辺虹彩切開術の実施をも必要とする。
これらの短所にも拘わらず、房水ドレナージデバイス(aqueous drainage device)は多くの症例において成功しているが、この手術方法はまだ依然としてチャレンジであり、重大な併発症が稀ではない。
したがって、異物反応、炎症、閉塞又は感染を生じることなく、眼の眼内圧を低下させ、手術部位における創傷治癒を機械的に抑制するための方法及び装置を提供することが本発明の目的である。
本発明の他の目的は、眼の輪郭に適合するために柔軟であり、強膜侵食、眼曲率の好ましくない変化の誘導又は隣接血管系及び組織への損傷を避けるために充分に軟質であり、その形状及び厚さを維持するために充分に弾性である眼内インプラントを設計し、構成することである。同じ目的は、インプラントの構成が強膜フラップに与えられる摩擦と摩耗、インプラントの運動によって生ずる虹彩内皮の刺激状態と悪化の問題を解決することである。
本発明の他の目的は、小柱網を模倣することによって房水の流動を自然に調節するデバイスであって、中空管デバイスによって見られるような手術後低圧を決してもたらさずにドレナージを可能にする微少構造を有するデバイスを提供することである。
本発明のさらに他の目的は、機械的な失敗を避けて、妨害されない眼の運動を可能にするために、小さくかつシンプルであり、弁、管又は圧力感知機構を有さない眼内インプラントを供給することである。
本発明のさらに他の目的は、眼内濾過デバイスを外科手術によって移植する方法であって、比較的簡単で、殆ど併発症を有さない方法を完成することである。
発明の概要
上記その他の目的及び利点は本発明によって達成される。本発明の装置は、眼の前房から角膜縁中の開孔を通って強膜フラップ下方のドレナージ部分(drainage area)に達するために適合したセルロース膜を含む濾過インプラントである。本発明の最も好ましい実施態様では、セルロース膜は1,4’−β結合で結合したグルコース単位のホモポリマーから本質的に成る。このインプラントは平らな、一般に長方形の形状である。
本発明の1態様によると、このインプラントは近位端部と遠位端部とを有し、近位端部の縁が、眼の前房に挿入するためのフット部分と、強膜フラップ下方に埋封する(burial)ためのボディ部分とを形成するように変えられる。2つの対立する長方形ノッチを用いて、ボディ部分からフット部分を区分けするように近位端部の縁を変えることが好ましい。インプラントの寸法は個々の患者の変数を考慮して変えられることができるが、好ましいインプラントは約50μ厚であり、8〜10mmの全長と、約6mmの全幅とを有する。中央のカットが軸方向にインプラントの近位端部からデバイスのフット部分を通って遠位端部方向に伸びて、縁開孔からのインプラントの挿入を容易にする。
本発明の他の態様によると、インプラントの手術後の位置を維持するために少なくとも1個の弯曲した弾性アーム要素を用いることができる。1実施態様では、デバイスのフット部分にこのようなアーム部分を備える。他の実施態様では、平らで一般に長方形の形状のインプラントの近位端部は、縁開孔から前房中へ挿入するためにそれから突出した一体成形キー(key)を有する。このキーは、インプラントの手術後位置を維持するようにインプラント後の角膜縁の内面に隣接するために、それから半径方向に伸びる少なくとも1個の弯曲した弾性アーム要素を有する。このアーム要素はキーに接着したポリプロピレン物質又は、キーに一体的に重合したポリメチルアクリレート物質を含むことができる。
本発明の方法は、デバイスが眼の前房から角膜縁の開孔を通って強膜フラップ下方のドレナージ部分に達するように、上述し、以下でさらに詳述するデバイスを製造し、眼内に移植することを含む。インプラントはセルロース膜ストックから、末端がフット部分又はキーで終わる近位端部と、遠位ボディ部分とを有する平らで、一般に長方形の形状にダイカットされる又は打ち抜かれる。このインプラントを蒸留水中で完全にすすぎ洗いする。次に、デバイスを2%炭酸水素ナトリウムと1%エチレンジアミン四酢酸との溶液中で100℃に30分間加熱した後に、平衡生理的食塩水(balanced saline solution)中で4℃に冷却する。平衡生理的食塩水中で再びすすぎ洗いした後に、インプラントを滅菌脱イオン水の容器中に入れ、使用するまで貯蔵するためにオートクレーブ(autoclave)によって滅菌することができる。手術時に、インプラントを貯蔵から回収し、眼内に適当に移植する。
デバイスの移植は、強膜と角膜縁とに接近することができるように結膜を開くことを含む。強膜の一部を切開して、強膜フラップを得て、角膜縁を通して前房中に縁開孔を形成する。インプラントを中央カットに沿って折り畳み、フット部分が縁開孔を通って前房の虹彩角膜角中に容易に挿入可能であるようにする。インプラントのボディ部分を強膜フラップの完全に下方の手術床(surgical bed)中に入れ、その後に、強膜フラップを閉じるように縫合する。結膜も同様に閉じるように縫合する。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の好ましいインプラントの正面立面図である。
図2は好ましいインプラントの側面立面図である。
図3は図1と同様な形状のダイカットインプラントを示す。
図4は第1代替えインプラント(alternative implant)の正面立面図である。
図5は第2代替えインプラントの正面立面図である。
図6は、本発明の方法によって眼中に移植された、好ましいインプラントの透視図である。
図7は移植後の好ましいインプラントの断面図である。
図8は強膜床に収容された好ましいインプラントの平面透視図である(強膜フラップ示さず)。
図9は移植後の好ましいインプラントの断面端面図である。
図10は第3代替えインプラントの正面立面図である。
好ましい実施態様の詳細な説明
インプラント
本発明は、セルロース膜から製造された、眼の眼内圧を下げるためのインプラントを含む。このインプラントは眼の前房から角膜縁の開孔を通って、強膜フラップ下方のドレナージ部分に達するために形成され、適合する。
事実上、セルロースは秩序づけられた状態で共に結合する、一連の極めて高分子量のポリマーとして存在する。ネイティブの(native)セルロースは水並びに大抵の有機溶媒に顕著に不溶性である。現在までに、セルロース膜の主要な用途は薬理学、臨床化学、生物化学及び食品化学の分野であった。セルロース膜はそれ自体で透析の分野で特に有用であることが示されている。本発明に関連して用いられるセルロース膜ストックは1,4’−β結合で結合したグルコース単位のホモポリマーから本質的に成る。本発明に関連して用いるための受容される、商業的に入手可能なセルロース膜はLos AngelesのSpectrum Medical Industries Inc.によって製造されたSPECTRA/PORである。
インプラントがセルロース物質から構成されることは重要である。このことはインプラントを眼組織の損傷を避けるほど軟質に、強膜床に容易に収容されて、手術による視覚の屈折(curvature of the surgical sight)に順応するほど弛緩性に、及び手術による瘻管を永久に開放維持するほど丈夫にする。さらに、このインプラントは、その組成のために、インプラント移植(implant procedure)後に外因的な眼の運動(extrinsic ocular motility)が妨げられないように、容易にサイズを定められ、調節される。さらに、このインプラントはセルロース物質から構成されるので、その表面は細胞付着と侵入に耐えるほど平滑である。このインプラントはその組成のために体温において非吸収性かつ安定である。
次に、図1と図2に関しては、インプラントの好ましい実施態様を示す。参照番号10によって示すインプラントは平らで、一般に長方形の形状である。インプラント10は、近位端部12及び遠位端部14と呼ばれることができるものを有する。近位端部12に接近する、インプラント10の縁(又は周辺)は、眼の前房に挿入するためのフット部分16と、強膜フラップ下方に埋封するためのボディ部分18とを形成又は区分けするように変えられる。図1に示すように、近位端部12方向のインプラント10の縁は、インプラント10の長軸方向に内側にギザギザを付けられ(indented)、フット部分16をボディ部分18から画定する。フット部分16が眼内に容易に挿入されるために折り畳められることができるように、インプラント10の近位端部12から軸方向に遠位端部14方向に伸びる中央カット20が存在する。
インプラント10は、セルロース膜ストックを図3に示すような形状にダイカッティングすることによって、好ましく構成される。フット部分16とボディ部分18とを形成するように、縁をインプラント10の近位端部12方向に変えるために用いられる、2個の対立する長方形ノッチ22、24は図3に明らかである。図3に示すファントムライン26は中央カット20を形成する箇所を示す。水和時に、図3に示すインプラント10は図1に示す形状と同様な形状になる。
インプラント10をセルロース膜ストックからその好ましい形状に形成した後に、インプラント10は使用の準備ができる。インプラント10の使用の準備をする1方法は、インプラントを蒸留水中で最初にすすぎ洗いすることを包含する。これを次に2%炭酸水素ナトリウムと1%エチレンジアミン四酢酸との溶液中で100℃に30分間加熱した後に、平衡生理的食塩水中で4℃に冷却する。平衡生理的食塩水中で再びすすぎ洗いした後に、インプラントを滅菌脱イオン水の容器中に入れ、使用するまで貯蔵するためにオートクレーブによって滅菌することができる。手術時に、フット部分16が角膜縁の開孔を通って眼の前房中に達し、ボディ部分18が強膜フラップ下方に埋封されるように(全て、以下で説明するように)、インプラント10を眼内に移植する。セルロース膜をダイカッティングして成形する前に処理することは受容され、報告される実験研究に関連して以下で考察されるが、この膜を処理する前にカットすることが現在好ましい。
インプラント10の好ましい寸法を考察する前に、例えば眼の大きさ、眼内圧の程度、及び患者の年齢のような個々の患者の変数によって必要とされる程度に合わせて寸法を変更可能であることを理解すべきである。インプラント10は25μ〜150μ厚であり、約50μ(0.05mm)の厚さが好ましい。インプラント10の全長は約8〜10mmであり、全幅は約6mmである。図3に示す長方形ノッチ22、24は好ましくは幅約1.5mm、長さ1mmである。好ましい実施態様のフット部分16は約1mmの長さと、約6mmの幅とを有する。好ましい実施態様では、インプラント10のボディ部分18は約8mmの長さと、約6mmの幅とを有する。
図4と5は本発明の2種類の代替え実施態様を示す。両方の代替え実施態様は、本質的に1,4’−β結合で結合したグルコース単位のホモポリマーから成るセルロース膜から同様に構成され、なお、両方とも平らで、一般に長方形の形状であり、近位端部と遠位端部とを有するといわれることができる。次に図4を注目すると、縁開孔から眼の前房に挿入されるためにデバイスの近位端部30から突出する一体成形されたキー(又はタブ)28が示される。キー28はそれから半径方向に伸びる弯曲した弾性アーム要素34を有する。キー28の形状と寸法は虹彩接触を防止する。アーム要素34の機能は、インプラントの手術後位置を維持することである。
図5は、キーを容易な挿入のために折り畳むことができるように中央カットがキーを第1ピース36と第2ピースとに分割すること以外は、図4に示すインプラントと同様なインプラントを示す。第1弯曲弾性アーム要素40は第1ピース36から半径方向に伸び、第2弯曲弾性アーム要素42は第2ピース38から半径方向に伸びる。アーム要素40、42は、一緒に、インプラントの手術後の位置を維持するように機能する。
図4と5のアーム要素34、40、42は、外科手術用接着剤若しくはポリメチルアクリレート物質によってキーに接着することができるポリプロピレン物質、又はキーと一体に重合することができる他の物質から製造されることができる。外科手術用接着剤の適当な種類は、シアノアクリレート組成物である。或いは、フット部分16又はキー28に、例えば熱ワイヤとの接触によって、目穴(eyelet)又は孔を与えて、これにアーム要素34、40、42を通すことができる。アーム要素34、40、42は移植中に外科医によって縁開孔に通って嵌合するように操作され、次にこれらは縁開孔から出て、角膜縁の内面に隣接して、インプラントが後方に移動するのを防止する。
図10は、ALK(前方層状角膜切除術(anterior lamellar keratotectomy))屈折処置(refractive procedure)に用いられる周知のミクロ角膜切開刀によって形成される手術床に完全に嵌合するように成形された、本発明の組成物を有するインプラントを示す。フット部分16は約1mmの長さと、約6mmの幅とを有する。デバイスのネック(neck)は幅約3mm、長さ1mmである。環状ボディ18は直径約6mmである。このインプラントは、それが現在ラウンド サクション リング(round suction ring)と共に存在するようにALK装置によるか、又は弯曲して、眼の曲率に適合するように設計された改良装置によるかのいずれかによって用いられることができる。
処置
移植処置は最初に図6に関連して説明し、図6では眼44が手術の濾過処置中に作成された透視図として示され、図7は移植処置の実施後の眼44の断面を示す。
強膜46と角膜48とは、眼の外膜(external tunic)を形成する。これらは構造において本質的に線維質であり、強膜46は不透明であり、眼球の後方5/6を形成し、角膜48は透明であり、残りの1/6を形成する。強膜46は眼球44の形を維持するのに役立ち、強膜48は眼内部(inner eye)への光の伝達を促進し、カバーとして、眼内部の構造を保護する。強膜46の外面は白色であり、直筋50a−bの挿入点を除いて、極めて平滑である。強膜46の前部は結膜(conjunctiva)とも呼ばれる結膜(conjunctival membrane)52によって覆われる。結膜52は眼の粘膜である。これは瞼の内面を裏打ちし、瞼の内面においてこれは厚く、不透明であり、高度な血管分布を有し(highly vascular)、強膜46と角膜48との前部(fore part)上に折り返される。強膜46上では、結膜52は眼球44にゆるく結合し、この場合に結膜は薄く、透明になり、ごく僅かな血管分布を有する(slightly vascular)。角膜48上では、結膜52は、角膜上皮として知られる、角膜の前部層(anterior layer)を構成する上皮のみから成る。強膜角膜接合部は角膜縁54として知られる。これは、角膜48の縁が強膜46によってオーバーラップされる箇所である。前房56は前方を角膜48によって境界を付けられ、後方を虹彩58によって境界を付けられた空間である。後房60は虹彩58の周辺部と、水晶体64の懸垂靭帯62と、毛様体突起66との間の狭い隙間である。房水は前房56と後房60の両方を完全に満たす。房水は、その重量の1/50未満が主として塩化ナトリウムである固体物質であるので、組成において水と殆ど変わらない。
次に、図6〜9に注目すると、本発明の好ましい方法では、眼44を1.5〜2.0mlのリドカイン若しくはプロカイン又は有効量の他の適当な薬剤の眼球後注射(retrobulbar injection)によって麻酔する。手術中の眼44の安定化が必要である場合には、このような安定化は上位直筋(superior rectus)上での4/0シルクを用いるブライドル縫合(bridle suture)によって達成される。一般的にいえば、強膜46と角膜縁54とに接近することができるように結膜52を開く。強膜46の一部を切開して、強膜フラップ68を得て、角膜縁54を通して前房56中に縁開孔を形成する。インプラント10をその中央カット20に沿って折り畳み、フット部分16が縁開孔を通って前房56の虹彩角膜角中に容易に挿入可能であるようにする。インプラント10のボディ部分18を強膜フラップ68の完全に下方の手術床70中に入れ、その後に、強膜フラップ68を閉じるように縫合する。結膜52も同様に縫合して閉じる。
さらに詳しくは、好ましい方法は所望の四分円内の手術縁(surgical limbus)から8〜10mm後方に8mmコード長の結膜切開をおこなうことを包含する。Tenon嚢から結膜を切開することによって、結膜フラップを形成する。結膜切開の部位から切開を開始して、Tenon嚢を上強膜から離断する。次に、この切開を角膜縁54の非常に近くまで前方に延長する。
次に、所定強膜フラップ68の周界(perimeter)を焼灼する(cauterize)。所定強膜フラップ68は長さ約6〜8mm、幅6mmの大きさであるべきである。部分的な厚さの切開によって、強膜フラップ68の縁の輪郭を描く。後方から開始して、強膜フラップ68の50〜70%厚さを前方に切開し、透明な角膜48中約2mmに達する。この場合も、強膜フラップ68は一般に長方形の形状であり、長さ6〜8mmx幅6mmの大きさであるべきである。
前房56は強膜フラップ68の直後に入る。この深い辺縁切開(limbic incision)の前方縁と後方縁の形成を完成することによって、瘻管が形成される。インプラント10のフット部分16を挿入する窓を形成するために、瘻管が高さ約0.5.〜1mmx幅3mmの大きさであることが好ましい。
次に、インプラント10のフット部分16又はキー28を瘻管に通して、前房56の虹彩角膜角中に入れる。インプラント10のボディ部分18は強膜床70内の強膜フラップ68の完全に下方に埋められる。強膜フラップ68とインプラント10とを強膜床70に2〜4本の8/0クロミックコラーゲン縫合糸(chromic collagen suture)72、74によって(図7〜9に示すように)きつく縫合する。Tenon嚢と結膜52とを別々に単一6/0ナイロン又はシルク縫合糸によって閉じる。
インプラント10の移植の結果として、結膜52下の空間にフィルターブレブ(filter bleb)76が形成される。インプラント10は固体であるが、前房56中の房水がインプラント10を通過してフィルターブレブ76中に入り、強膜46中に散布されて、身体によって吸収されるように、インプラント10が水を拡散する。少量の房水は結膜52をも通過することができる。透析膜と同様に、インプラント10は房水からのタンパク質又は他の粒状物の浸出(leaching)を許さずに流体を通過させるように機能する。
図10インプラントのALK適用処置(ALK adapted procedure)は次のようにおこなわれる:フラップの所定ヒンジが縁(limbus)に存在するように、ALKリングを位置決めする。一般的にいうと、このフラップは150〜200μ厚であるべきである。リングを位置決めし、ミクロ角膜切開刀をセットした後に、ミクロ角膜切開刀を強膜と結膜とを横切って駆動して、フラップ形成処置(flap procedure)をおこなう。フラップの完成後に、1x3mm窓が縁に小柱網を通って前房に達するように形成される。この時点で、インプラントを線維柱帯切除術(trabeculectomy)に入れて、円形ボデイをフラップと手術床との間の適所に入れる。次に、強膜を8.0溶解性縫合糸によって閉じ、結膜を6.0除去可能な縫合糸によって閉じる。
動物試験
本発明に関して、その効力を試験するために実験をおこなった。本発明が好結果のものであることが証明された。最初のウサギ試験、ウサギ試験No.1は、通常の濾過手術によって処置した対照眼を、本発明によって処置した実験眼と70日間通して比較した。実験は10匹の動物によって開始した。4匹は組織学サンプルのために試験中に屠殺し(terminate)、他の6匹は実験の完全70日間を完了した。手術後最初の4日間後に、対照群と実験群との差はp値にして0.01であり、この差は時間と共にさらにいっそう顕著になった。
ウサギ試験No.2は本発明によって処置した眼と通常の非処置対照眼との1年間の比較であった。最初の1週間後に、処置群と対照群との間の差は非常に十分(sound)であり、多くの間隔が<0.00000までの有意差を有するほどであった。最小有効期間(least significant period)は、0.00018のp値まで有意であった読取り値の最後の週であった。
ネコの1つの緑内障眼に本発明によって移植し、非処置対照と共に29週間追跡した、簡単なネコ実験もおこなった。この時間後に、第2眼に移植し、両方の眼を眼内圧と透明度とに関してモニターし続けた。この場合にも、手術は成功した。
ウサギ試験No.1
予備試験において6匹のウサギに本発明のインプラントを用いて、提案する緑内障濾過方法をおこなった。インプラントのフットを縁開孔に通して眼の前房に入れ、ボディ部分を強膜フラップの下方に埋めた。この新しい方法は以下の表1に示すように全ての実験ウサギの眼内圧を低下させた。表2は表1に示したデータに関する反復測定の分散解析を示す。
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試験のプロトコールによると、セルロース膜ソースを蒸留水中で完全にすすぎ洗いし、2%炭酸水素ナトリウムと1%エチレンジアミン四酢酸との溶液中で100℃に30分間加熱した後に、冷却し、2%ホルムアルデヒド中で4℃において貯蔵した。処理したセルロース膜を平衡生理的食塩水中で2回すすぎ洗いした後に、適当な形にカットした。デバイスをNew Zealand白ウサギの片方の眼に入れ、他方の眼は緑内障濾過手術のみの対照として用いた。前房に挿入するために1:00時位置において強膜壁の2〜3mm(幅)x0.5mm(高さ)切片の切除によって形成された縁の孔に、フット部分を通した。デバイスのボディ部分を強膜フラップ下の手術床中に入れた。強膜フラップを1本又は2本の8/0クロミックコラーゲン縫合糸によって縫合した。結膜を6/0ナイロン又はシルク縫合糸を用いて閉じた。周辺虹彩切開術は不必要であった。手術操作は典型的に20〜30分間続き、試験の過程で数回の精製(refinement)をおこなった。ウサギNo.1を除いた全てのウサギにおいてデバイスのフットを前房の角に深く埋封した。ウサギNo.1におけるデバイスのフットはこの角の丁度内側に位置したが、前房中に突出しなかった。局部麻酔下で気体眼圧測定法(pneumotonometry)によって測定された各動物の眼の眼内圧を毎日同じ時間に記録した。2人の研究者が独立的に圧力を記録して、2つの値を平均した。各動物の実験眼と対照眼との圧力を記録した。移植前の3日間、ウサギの基底眼内圧を測定した。試験の終了時にウサギを安楽死させ、眼球を摘出した。眼球をホルムアルデヒド中に固定し、ルーチンに(routinely)処理し、ヘマトキシリンとエオジンとによって染色した。
70日間試験期間中に、手術をブレブ形成に関して、角膜と前房に対する手術の影響に関して、及び眼内圧の測定に関して直接の観察によって追跡した。ウサギのいずれも移植の結果として角膜代償不全(corneal decompensation)、結膜侵食又はブドウ膜炎を発症しなかった。術後1日目に、眼は移植部位に結膜の軽度〜中程度の炎症を示した。しかし、7日間以内に、結膜の炎症は徐々に沈静した。手術の直後には、前房は平たいか又は正常であった。24時間以内に、全てのケースにおいて正常な前房が形成された。前房水は全てのウサギにおいて術後3日間において非常に透明であった。
70日間にわたる6匹のウサギの各々の実験眼と対照眼との眼内圧の差は表1に示す。実験眼群では、毎日の眼内圧は対照眼の毎日の眼内圧よりも有意に低かった。毎日の実験眼圧力測定値の4%のみが19mmHgよりも高いが、対照眼測定値の70%が19mmHgよりも高かった。毎日の実験眼圧力測定値の80%が12〜16mmHgの範囲内であったが、これとは対照的に、対照眼測定値の僅か4%がこの範囲内に入るにすぎなかった。全ての対照眼ブレブは14日間以内に破壊したが、6実験眼の5個が実験の終了時に機能的濾過ブレブをまだ維持した。眼球を光学顕微鏡検査によって試験した。これらの観察は、フットが小柱網の前で前房に入っていることを示した。眼球のいずれにおいても角膜内皮損傷の徴候はなかった。さらに術後に、ボディが50〜60%の深さで強膜内に存在した。全ての6実験眼ではフットの虹彩接触が存在したが、壊死、萎縮又は肥大は見られなかった。
ウサギ試験No.2
本発明を10匹のウサギの片眼に移植して、1年間追跡した。この試験の目的は(1)インプラントの形状と材料とが使用に好都合であり、生活する正常な眼(normal eye)に適合するかどうか;(2)インプラントが、即座の低圧を避けながら、開放瘻管を維持することができるかどうか;及び(3)反対側の非手術眼(unoperated eye)に比べて、正常な眼において眼内圧をデバイスによって下げることができるかどうかを判定することであった。
全ての眼がインプラントに非常に良好に耐え、手術は事故を伴わなかった(without incident)。前房は迅速に再形成され(reform)、異常な反応は認められなかった。インプラントを1年間追跡し、この時点において眼を摘出し、組織学的処理のために組織を採取した。
この試験のために、インプラントをセルロース透析膜ストックから構成した。膜ストックを脱水しながら、6mm幅x8mm長さx0.05mm厚さの寸法を有する平らな、一般に長方形の形状にダイカットした。
完成したインプラントを蒸留水中ですすぎ洗いし、次に、2%炭酸水素ナトリウムと1%エチレンジアミン四酢酸との溶液中で100℃に30分間加熱した後に、平衡生理的食塩水中で4℃に冷却した。
このデバイスを強膜フラップ(約6x8mm)下方に移植し、フット部分を1:00位置ODと11:00位置OSにおける縁の強膜壁中の0.5mmx3.0mm窓に通した。フット部分を前房中に折り畳み、角中に小柱網に対して入れた。
挿入後に、インプラントのボディを強膜フラップで覆って、1本又は2本の8/0クロミックコラーゲン縫合糸で縫合した。結膜を6/0ナイロン又はシルク縫合糸によって閉じた。全ての眼の眼内圧を局部麻酔下で気体眼圧測定法によって測定した。対照眼と実験眼との測定を毎日同じ時間に6か月間おこない、次に毎週、1年間までおこなった。2人の研究者が独立的に圧力を測定し、平均値を用いた。
屠殺時に、眼を摘出し、10%中性緩衝化ホルムアルデヒド中に又はカコジレート緩衝剤中の2%パラホルムアルデヒドと2%グルタルアルデヒド中に固定した。24時間固定した後に、組織をルーチンに処理し、切片を形成し、ヘマトキシリンとエオジンとによって染色した。或いは、眼を脱水させ、臨界点乾燥させ(critical point dried)、走査電子顕微鏡検査のために金で被覆した。
手術操作は30分間続き、10匹のウサギの全てにおいて事故を伴わなわずにおこなわれた。手術後に、前房が迅速に形成され、24時間以内に全ての前房は深く、透明になった。術後第1日に、眼は手術部位において結膜の軽度〜中程度の炎症を示した。4週間以内に、炎症は沈静した。デバイスは試験を通して安定に適所に留まり、インプラントのフットを隅角鏡検査によって定期的に可視化した。全てのケースにおいて濾過ブレブの形成が認められた。眼のいずれもこの操作の結果として、角膜代償不全、結膜侵食又はブドウ膜炎を示さなかった。
移植した眼を非処置眼と比較すると、最初の1週間は、対照眼内の25mmHgに比較して、移植した眼は14mmHgの平均IOPを有した。13か月中に実験眼のIOP測定値が対照眼IOPと決して等しくなく、又は対照眼IOPを越えないことを認めることができた。個々の毎週平均値と平均値の標準誤差とを表3A−Bに示す。表4は表3A−Bに示したデータの反復測定分散解析を示す。
Figure 0004082729
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実験群が低い眼内圧に永久的に変化したことが明確に示される。実験の終了時に、全ての眼は機能的濾過部位(functionla filtering site)を維持し、隅角鏡検査(gonioscopy)によって示されるように瘻管は充分に開放していた。
インプラント部位の走査電子顕微鏡評価は、デバイスのフット部分が小柱網の前の縁において前房に入っていることを示した。しかし、角膜内皮損傷の徴候はなかった。フット部分は虹彩に接触したが、壊死、萎縮又は肥大の徴候はなかった。デバイスのボディは組織の薄い線維−血管層下の上強膜空間中に存在した。他の種類のデバイス、標準濾過手術又はレーザー強膜切開術によって見られるような薄壁の流体含有ブレブの徴候は存在しなかった。
ネコ試験
両眼が約33mmHgの圧力まで緑内障である対象に対してネコ試験をおこなった。片眼に本発明によって移植し、非処置対照と共に29週間追跡した。この時間後に、第2眼に移植し、両眼をIOPと透明度とに関してモニターし続けた。最初に処置した眼のIOPが約15mgに低下し、この値は29週間保たれることが明確に見られた。残りの眼にインプラント手術をおこなった後に、IOPの同じ低下が見られた。
ヒト試験
デバイスが動物においてこのように一貫して効果的であり、併発症を有さないので、中国においてヒト実験研究がおこなわれた。平均してIOPが60mmを越える23人の患者に本発明によって移植した。平均して50歳以下である患者は全ての他の慣用的医療処置に反応することができず、有効な代替え手段を有したとしても殆ど無いに等しいので、実際に全てのケースが重度な症例であった。表5は手術前と、手術後60日間までの個々の患者のデータを詳細に示す。2人の患者がデバイス又は手術に関係の無い外傷のために試験から落後した。21人の患者をモニターし続けた。全ての手術は成功であった。
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平均IOPは第3日までに12mmHgに低下し(n=23)、60日間を通して低く維持された。この時点で3か月後及び4か月後のフォローアップに役立つと期待された18人の患者について、IOPは60日の値に、併発症なく維持された。他のデバイスで見られた即座の絶対低圧の徴候は無く、併発症も存在せず、全ての患者は非常に増大した快適さを経験した。全てのケースにおいて、前房は7日間試験(the seven day exam)によって充満し、深かった。
考察
これらの試験の目的は、本発明の安全性と効力とを調べることであった。先行技術のデバイスは間違った論理で構成され、移植されていたと考えられた。本発明の目的は、薄いブレブとして留まる必要がない線維血管嚢(fibrovascular capsule)を誘導することによって、自然の濾過系を拡大するインプラント及び方法を創出することであった。大抵の先行技術デバイスは、房水を前房から直接、結膜下空間に自由流動式に放出するという原理に基づいていた。これは排出部位における大きく、薄いブレブと、この瘻管の管サイズへの閉塞とをもたらす。術後の低圧と、ブレブ周囲及び房水排出口(aqueous egress port)周囲の二次的瘢痕形成とによる頻繁な失敗のために、デバイスのボディ並びにその表面を通して拡散を生じるインプラントを構成することが必要であった。数人の研究者は、術後の低圧を緩和するために現在利用可能な方法とデバイスを改良している。主な改良はMoltenoデバイスを用いることであった。これらは、(1)前房に粘弾性物質を用いる;(2)2回の別々の手術で管とボディとを外科手術によって配置する;(3)管の周囲に吸収性縫合糸を結び付け、これが溶解すると管が弛緩して、房水の流動が徐々に進行するようにする;(4)管の内腔に縫合糸を入れ、次にこれを第2手術で取り出す;及び(5)標準線維柱帯切除術フラップの強膜床に管の遠位端部を埋封することである。一般的にいうと、これらのデバイス及び改良の大部分は、結膜下ブレブを瘢痕化する(scar down)創傷治癒反応のために失敗した。この問題は、創傷治癒反応を刺激するのみでなく、眼の運動及び筋肉伸張の妨害によって絶えず刺激される大きいインプラントを配置するために必要な、組織の広範囲な切開によって悪化する。
上記試験は、セルロース透析膜ストックから構成されたインプラントが正常な眼においても房水の濾過速度を高めることを実証する。この手術は簡単であり、セルロースデバイスは有害性又は炎症性を有さなかった。デバイスは小さく、眼の運動を妨害せず、その結果、筋肉伸張からの刺激状態を生じなかった。動物試験はさらに、このインプラントが眼内圧を有意に低下させ、この低下が1年間を通して維持され、しかも眼が依然として平穏にかつ正常な様相(appearing)であることを示した。
本発明の方法及び装置の使用によって、多くの利益が得られる。このインプラントはそれを通る流体の制御された流動を可能にするように設計されるので、房水ドレナージが一貫した、予測可能な形式で達成される。さらに、縁開孔へのデバイスの挿入は即座の及び長期間の(chronic)両方の組織反応による閉塞を実際に排除する。さらに、周辺虹彩切開術の必要性はなくなり、それによって硝子体損傷の危険性は低下する。
インプラントの組成及び形状によって、さらに大きい利益が得られる。インプラントはセルロース膜から構成されるので、このインプラントは形成が容易であり、低コストで種々な寸法に予め製造することができる。これはまた、眼組織に無害であり、煮沸又はオートクレーブによって滅菌することができる。デバイスの平たいプロフィルと、弛緩性(flaccid)の性質とは強膜フラップ上の摩擦と摩耗を減ずるように作用し、眼の自然の曲率にデバイスが順応することを促進し、強膜侵食又は眼曲率の変化をもたらしうるような機械的抵抗を与えない。デバイスは、その形状によっても、瘻管を形成するように機能し、インプラントのボディは濾過領域を形成する。インプラントのフット部分は前房に入るため、瘻管への入口を開放維持するように作用する。さらに、インプラントの設計は前後動を抑制する。さらにまた、インプラントの近位端部は中央カットされているので、縁開孔の必要なサイズが縮小する。この特徴は、手術後低圧の発生と、インプラントのフット部分の前房挿入時の虹彩内皮刺激の機会とを減ずるためにも役立つ。
本発明をある程度特殊に説明したが、構成の詳細と要素の配置とにおいて多くの変更が、この開示の要旨及び範囲から逸脱せずに、なされうることは明らかである。本発明が、例示のために本明細書に述べた実施態様に限定されず、その各要素が権利を与えられる同等性の全範囲を含む添付請求の範囲によってのみ限定されるべきであることが理解される。

Claims (33)

  1. 眼の眼内圧を低下させるためのインプラントであって、眼の前房から角膜縁中の開孔を通って強膜フラップ下方のドレナージ部分まで伸びるように成形され、適合した平らなセルロース膜を含む、インプラント。
  2. 前記セルロース膜が1,4’−β結合で結合したグルコース単位のホモポリマーから本質的に成る、請求項1記載のインプラント。
  3. 前記インプラントが、近位端部と、遠位端部と、外側縁とを有する、平らで、一般に長方形の形状である、請求項1記載のインプラント。
  4. 前記近位端部方向の前記インプラントの前記縁が、眼の前房に挿入するためのフット部分と、強膜フラップの下方に埋封するための前記ボディ部分とを形成するように変えられる、請求項3記載のインプラント。
  5. 前記フット部分が角膜縁の開孔に容易に挿入されるために折り畳まれることができるように、前記インプラントが前記近位端部から前記遠位部分へ軸方向に伸びる中央カットを有する、請求項4記載のインプラント。
  6. 前記フット部分を形成するように前記近位端部方向の前記縁を変えるために、2つの対立する長方形ノッチが用いられる、請求項4記載のインプラント。
  7. 前記インプラントが約25〜150ミクロンの厚さである、請求項4記載のインプラント。
  8. 前記インプラントの全長が約8〜10mm、全幅が約6mmである、請求項7記載のインプラント。
  9. 眼の前房から角膜縁中の開孔を通って強膜フラップ下方のドレナージ部分に達するために適合した、1,4’−β結合で結合したグルコース単位のホモポリマーから本質的に成るセルロース膜を含む、眼の眼内圧を低下させるためのインプラントであって、
    前記インプラントは平らで、一般に長方形の形状であり、そして近位端部と、遠位端部と、外側縁とを有し、前記近位端部方向の前記縁が前房に挿入するためのフット部分と、強膜フラップ下方に埋封するためのボディ部分とを形成するように変えられるものであり、
    前記フット部分が角膜縁の開孔に容易に挿入されるために折り畳まれることができるように、前記インプラントが前記近位端部から前記遠位部分へ軸方向に伸びる中央カットを有するインプラント。
  10. 前記インプラントが約25〜150ミクロンの厚さである、請求項9記載のインプラント。
  11. 前記インプラントの全長が約8〜10mm、全幅が約6mmである、請求項10記載のインプラント。
  12. 前記フット部分を形成するように前記近位端部方向の前記縁を変えるために、2つの対立する長方形ノッチが用いられる、請求項9記載のインプラント。
  13. 前記フット部分が約1mmの長さと約6mmの幅とを有し、前記2つの対立する長方形ノッチが長さ約1mm、幅1.5mmであり、前記ボディ部分が約8mmの長さと約6mmの幅とを有する、請求項12記載のインプラント。
  14. 前記フット部分が、移植後に前記インプラントの手術後位置を維持するために、角膜縁の内面に隣接するように、それから半径方向に伸びて少なくとも1個の弯曲弾性アーム要素を備えている、請求項9記載のインプラント。
  15. 前記アーム要素がポリプロピレンから形成され、シアノアクリレート手術用接着剤によって前記フット部分に接着される、請求項14記載のインプラント。
  16. 前記アーム要素がポリメチルアクリレートから形成され、前記フット部分と一体的に重合される、請求項14記載のインプラント。
  17. 眼の前房から角膜縁中の開孔を通って強膜フラップ下方のドレナージ部分に達するために適合した、1,4’−β結合で結合したグルコース単位のホモポリマーから本質的に成るセルロース膜を含む、眼の眼内圧を低下させるためのインプラントであって、
    前記インプラントが平らで、一般に長方形の形状であり、近位端部と遠位端部とを有し、
    前記近位端部が、前記開孔を通って前記前房中に挿入されるために、それから突出する一体的に形成されたキーを有し、
    前記キーが、移植後に前記インプラントの手術後位置を維持するように、角膜縁の内面に隣接するために、それから半径方向に伸びて、少なくとも1個の弯曲弾性アーム要素を有するインプラント。
  18. 前記キーが角膜縁の開孔に容易に挿入されるために折り畳まれることができるように、前記キーを第1ピースと第2ピースとに分割するために、前記キーが中央カットされる請求項17記載のインプラント。
  19. 前記キーが2個の弯曲弾性アーム要素を有し、第1アーム要素が前記第1ピースから半径方向に伸び、第2アーム要素が前記第2ピースから半径方向に伸びる、請求項18記載のインプラント。
  20. 前記アーム要素がポリプロピレンから形成され、シアノアクリレート手術用接着剤によって前記キーに接着される、請求項17記載のインプラント。
  21. 前記アーム要素がポリメチルアクリレートから形成され、前記キーと一体的に重合される、請求項17記載のインプラント。
  22. 眼の前房から角膜縁中の開孔を通って強膜フラップ下方のドレナージ部分に達するために適合した、1,4’−β結合で結合したグルコース単位のホモポリマーから本質的に成る、平らなセルロース膜を含む、眼の眼内圧を低下させるためのインプラントであって、
    前記インプラントが前房中に挿入するためのフット部分と、強膜フラップ下方に埋封するための円形ボディ部分とを有し、
    強膜フラップとドレナージ部分とがミクロ強膜切開刀のカットによって形成されており、
    前記フット部分が角膜縁の開孔に容易に挿入されるために折り畳まれることができるように、前記インプラントが前記フット部分を通って軸方向に伸びる中央カットを有するインプラント。
  23. 眼の前房から角膜縁中の開孔を通って強膜フラップ下方のドレナージ部分に伸びるように成形され、適合した平らな、均一の厚さのインプラントを含む、眼の眼内圧を低下させるための装置。
  24. 前記インプラントが約25〜150ミクロンの厚さである、請求項23記載の装置。
  25. 前記インプラントの全長が約8〜10mm、全幅が約6mmである、請求項24記載の装置。
  26. 前記インプラントが、眼の前房に挿入するためのフット部分;
    強膜フラップ下方に埋封するためのボディー部分;および
    前記フット部分と前記ボディー部分の間のネック部分;
    とを含む、請求項23記載の装置。
  27. 前記ネック部分が流体経路を構成し、そして、前記装置を眼の中に移植するときに、前記ネック部分の経路が急性のおよび慢性の組織反応の結果閉じることがなく、そしてその結果角膜縁を通って恒久的な瘻管として機能するように形成される、請求項26記載の装置。
  28. 前記インプラントが外部表面を有し、そして前記インプラントが眼の中に移植されるときに、前記外部表面上よりもむしろ、主として前記フット部分、ネック部分およびボディー部分を通って、房水のドレナージを生成するように前記インプラントが形成される、請求項26記載の装置。
  29. 前記インプラントを通じて伸びる流出通路を形成するチューブまたはその他の機械的な部分を有さない、請求項28記載の装置。
  30. 前記インプラントが、眼の小柱網が房水の流れを制御しているのと実質的に同様の方法により房水の流れを制御する、請求項26記載の装置。
  31. 前記インプラントが、前記フット部分、ボディー部分およびネック部分を通って房水の制御されたドレナージを提供することができる微少構造を有する、請求項26記載の装置。
  32. 前記インプラントが濾過インプラントである、請求項26記載の装置。
  33. 前記インプラントが房水由来のタンパク質および微少粒子を実質的に吸着させることなく前記インプラントを通じて房水のドレナージを提供することができる、請求項32記載の装置。
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