JP4070674B2 - リラクタンス型回転電機の回転子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スキューの効果と類似する効果を得るようにしたリラクタンス型回転電機の回転子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リラクタンス型回転電機例えば永久磁石式リラクタンス型回転電機は、磁束が通り易い磁気的凸部(d軸と称する)と磁束が通り難い磁気的凹部(q軸と称する)とが形成され、且つ、永久磁石を有する回転子を備えており、回転子は、固定子巻線が施された固定子内に配置されている。そして、回転子においては、磁気的凸部(d軸)では空隙磁束密度が高く、磁気抵抗の大きい磁気的凹部(q軸)では空隙磁束密度が低くなり、この磁束密度の変化によってリラクタンストルクが発生し、又、永久磁石と固定子の磁極との間の磁気吸引力および磁気反発力によってもトルクが発生する。
【0003】
図6および図7は従来のリラクタンス型回転電機の回転子を示すもので、8極の場合である。ここで、図6は端板および回転軸を省略して示す側面図、図7は図6のA−A線に沿う断面図である。即ち、図6において、回転子100は、円環状の多数の珪素鋼板を積層してなる回転子鉄心101を有する。回転子鉄心101の外周部には、図7に示すように、略長方形の一対の磁石挿入孔部102、102が形成されており、この一対の磁石挿入孔部102、102に永久磁石103、103が挿入固定されている。更に、回転子鉄心101の外周部には、図7に示すように、一対の永久磁石103、103間に位置して空洞部104が形成されており、この空洞部104は、略三角形状をなしている。そして、回転子100において、一対の磁石挿入孔部102、102および永久磁石103、103並びに空洞部104が設けられた部分が磁束の通り難い磁気的凹部(q軸)105であり、磁気的凹部105、105間の部分が磁束の通り易い磁気的凸部(d軸)106であり、これらの磁気的凹部105、磁気的凸部106は所定の角度を存して交互に形成されている(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
回転子鉄心101の内周部には、回転軸のキー溝と係合するキー107が形成されており、このキー107を通る中心線Loが磁気的凸部106の中心を通るようになっている。そして、中心線Loに隣接する磁気的凹部105の中心を通る中心線Laとその中心線Loとは所定の角度θをなすようになっている。なお、8極の回転子100の場合は、角度θは22.5度である。この回転子100は、固定子巻線が施された図示しない固定子内に配置されるようになっている。
【特許文献1】
特開2001−339922号公報(図1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
かご型誘導電動機においては、高調波成分によるトルクに起因するクローリング現象が発生することが知られているが、リラクタンス型回転電機においても、かご型誘導電動機と同様のクローリング現象を生じると考えられ、トルクリップル、振動、騒音が発生する不具合がある。
【0006】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、スキューと類似する効果を得るようにしてトルクリップル、振動、騒音を減少させることができるリラクタンス型回転電機の回転子を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載のリラクタンス型回転電機の回転子は、外周部に磁気的凹凸部が交互に形成された円環状の鉄心材を多数積層して形成され、内周部に軸方向に延びるキーを有する回転子鉄心と、この回転子鉄心の内周部に挿通され、外周部に前記キーと係合するキー溝を有する回転軸とを備え、前記回転子鉄心は、複数のブロックに分割されていて、少なくとも三つのブロックにおいて、一つのブロックを構成する鉄心材は、キーを通る中心線を基準として磁気的凹凸部が回転方向及び反回転方向のうちの一方向に所定角度ずれるように形成され、このブロックの両端に位置するブロックを構成する鉄心材は、キーを通る中心線を基準として磁気的凹凸部が回転方向及び反回転方向のうちの他方向に所定角度ずれるように形成されていることを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、少なくとも一つのブロックにおける磁気的凹部の中心を通る中心線の軌跡は、その両端のブロックのそれとはずれるようになるので、かご型誘導電動機の回転子のスキューの効果と類似した効果を得ることができ、従って、トルクリップル、振動、騒音を減少させることができる。
【0009】
請求項2記載のリラクタンス型回転電機の回転子は、回転子鉄心の各ブロックの磁気的凹部には、外周に向かうに従って対向距離が順次大となる一対の磁石挿入孔部が設けられ、これらの一対の磁石挿入孔部にそれぞれ永久磁石が挿入固定されていることを特徴とする。
このような構成によれば、リラクタンストルクに加えて永久磁石による磁気的なトルクも得ることができ、また、スキューの効果と類似した効果により逆起電力の波高値を低減することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
(第1の実施例)
以下、本発明の第1の実施例について、図1ないし図4を参照しながら説明する。
図3および図4は、永久磁石式リラクタンス型回転電機の回転子の一例を示すもので、8極の場合である。ここで、図3(a)および(b)は径方向断面図 (具体的には、図2のB−B線およびC−C線に沿う断面図)、図4は縦断面図である。
【0011】
回転子1は、円環状の多数の鉄心材たる珪素鋼板を積層してなる回転子鉄心2を有する。回転子鉄心2は、図2に示すように、等しい厚み寸法の4個(四つ)のブロック3、3および4、4に分割されており、左側からブロック3、4、4、3の順に積層されている。
【0012】
まず、ブロック3(換言すれば、ブロック3を構成する珪素鋼板)について図3(a)を参照して述べる。ブロック3の外周部には、外周に向かうに従って対向距離が順次大となる略長方形の一対の磁石挿入孔部5、5が形成されており (従って、一対の磁石挿入孔部5、5は、外周側からみてハ字形になっている。)、この一対の磁石挿入孔部5、5に永久磁石6、6が挿入されて接着、充填材などにより固定されている。更に、ブロック3の外周部には、一対の永久磁石6、6間に位置して空洞部7が形成されており、この空洞部7は、一対の永久磁石6、6に平行な二辺部と外周に沿う辺部とを有する略三角形状をなしている。この場合、空洞部7の二辺部は、必ずしも永久磁石6、6に平行でなくてもよい。
【0013】
そして、ブロック3において、一対の磁石挿入孔部5、5及び永久磁石6、6並びに空洞部7が設けられた部分が磁束の通り難い磁気的凹部(q軸)8であり、磁気的凹部8、8間の部分が磁束の通り易い磁気的凸部(d軸)9であり、これらの磁気的凹部8、磁気的凸部9は所定の角度を存して交互に形成されている。更に、ブロック3の内周には、180度の間隔を存して2個のキー10、11が軸方向に延びるようにして形成されている。
【0014】
ここで、ブロック3において、キー10、11の中心を通る中心線Loは磁気的凸部9を通るようになっているが、この中心線Loより回転方向Xと反対方向(時計方向)に角度Δθだけずれた中心線Loaを想定した場合、この中心線Loaに隣接する磁気的凹部8の中心を通る中心線Lbとその中心線Loaとは所定の角度θをなすようになっている。従って、中心線Loaは磁気的凸部9の中心を通るようになる。なお、n極の場合は、角度θは180/n度である。
【0015】
また、図示しない固定子が6×nスロットの場合には、aスロットピッチ分だけブロック3の磁極位置たる磁気的凹部8、磁気的凸部9を中心線Loを基準としてずらすものであり、従って、角度Δθは、
Δθ=(360×a)/(6×n)=(60×a)/n
のように−(60×a)/n度になる。なお、−は回転方向Xと反対方向(時計方向)にずれていることを示す。
【0016】
次に、ブロック4(換言すれば、ブロック4を構成する珪素鋼板)について図3(b)を参照して述べる。ブロック4の外周部には、石挿入孔部5、5と同様の一対の磁石挿入孔部12、12が形成されており、この一対の磁石挿入孔部12、12に永久磁石13、13が挿入されて接着、充填材などにより固定されている。更に、ブロック4の外周部には、一対の永久磁石13、13間に位置して空洞部7と同様の空洞部14が形成されている。
【0017】
そして、ブロック4において、一対の磁石挿入孔部12、12及び永久磁石13、13並びに空洞部14が設けられた部分が磁束の通り難い磁気的凹部(q軸)15であり、磁気的凹部15、15間の部分が磁束の通り易い磁気的凸部(d軸)16であり、これらの磁気的凹部15、磁気的凸部16は所定の角度を存して交互に形成されている。更に、ブロック4の内周には、180度の間隔を存して2個のキー10、11が軸方向に延びるようにして形成されている。
【0018】
ここで、ブロック4において、キー10、11の中心を通る中心線Loは磁気的凸部16を通るようになっているが、この中心線Loより回転方向X(反時計方向)に角度Δθだけずれた中心線Lobを想定した場合、この中心線Lobに隣接する磁気的凹部15の中心を通る中心線Lcとその中心線Lobとは所定の角度θをなすようになっている。従って、中心線Lobは磁気的凸部16の中心を通るようになる。なお、角度θは180/n度であり、角度Δθは+(60×a)/n度であり、+は回転方向X(反時計方向)にずれていることを示す。
【0019】
この場合、図3(a)および(b)から明らかなように、この実施例では、ブロック4は、ブロック3を構成する珪素鋼板を表裏反転して積層した形態になっており、従って、一種類の珪素鋼板でブロック3、4を構成することができるようになっている。なお、回転子鉄心2の両端部には円環状をなす端板17、18(図4参照)が配置されている。
【0020】
さて、回転軸19と回転子鉄心2、端板17および18とは、焼きばめにより一体化されて組立てられる。この場合、図4に示すように、固定子鉄心2のキー10、11(端板17、18のキーも含む)は回転軸19のキー溝20(一方のみ図示)に合致するようになっている。なお、回転軸19には、回転子鉄心2、端板17および18の位置決め用の鍔部21が形成されている。
【0021】
このように回転子1の組立てが完了した状態では、ブロック3は中心線Loを基準として磁気的凹部8、磁気的凸部9を角度Δθだけ回転方向Xと反対方向 (時計方向)にずらし、ブロック4は中心線Loを基準として磁気的凹部15、磁気的凸部16を角度Δθだけ回転方向X(反時計方向)にずらすようにしているので、図1に示すように、ブロック3、4、4、3の中心線Lb、Lc、Lc、Lbの直線状をなす軌跡は、一直線(従来)にはならずジグザグ状になるものであり、従って、回転子1としては、かご型誘導電動機の回転子のスキューの効果と類似した効果を得ることができる。この場合、中心線Lb、Lbと中心線Lc、Lcとのずれ量が±0(具体的には、中心線Lb、Lbのずれ角度Δθ(−)と中心線Lc、Lcのずれ角度Δθ(+)との総和が±0で、且つ、中心線Lb、Lbの軌跡の総和長(ブロック3の総厚み寸法)と中心線Lc、Lcの軌跡の総和長(ブロック4の総厚み寸法)とが等しい(両者の差が±0)こと。)である必要がある。
【0022】
しかして、回転子1は、固定子巻線が施された図示しない固定子内に配置されるようになっている。回転子1には、磁束が通り難い磁気的凹部(q軸)8、15と磁束が通り易い磁気的凸部(d軸)9、16とが形成されているので、これらの磁気的凹部8、15および磁気的凸部9、16上の空隙部分で、固定子巻線に電流を流すことにより蓄えられる磁気エネルギーが異なり、この磁気エネルギーの変化によりリラクタンストルクが発生する。また、回転子1には、永久磁石6、6および13、13も設けられているので、永久磁石6、6および13、13と固定子の磁極との間の磁気吸引力及び磁気反発力によってもトルクが発生する。これにより、回転子1が回転するようになる。
【0023】
このとき、回転子1に埋め込まれた永久磁石の固定子コイルに対する磁束が両端で同じように作用し、固定子コイルに流れる電流に対して永久磁石の漏れ磁束の作用を両端で相殺する方向に同じ量け働いて打ち消し合い、軸方向の振動を抑制する。
【0024】
このように本実施例によれば、回転子1のブロック3は中心線Loを基準として磁気的凹部8、磁気的凸部9を角度Δθだけ回転方向Xと反対方向(時計方向)にずらし、ブロック4は中心線Loを基準として磁気的凹部15、磁気的凸部16を角度Δθだけ回転方向X(反時計方向)にずらすようにしているので、ブロック3、4、4、3の中心線Lb、Lc、Lc、Lbの直線状をなす軌跡は、ジグザグ状になるものであり、従って、回転子1としては、かご型誘導電動機の回転子のスキューの効果と類似した効果を得ることができる。これにより、トルクリップル、振動、騒音を減少させることができるとともに、固定子巻線の逆起電力の波高値の低減を図ることができる。
【0025】
そして、中心線Lb、Lbと中心線Lc、Lcとのずれ量が±0となるように設定したので、かご型誘導電動機の回転子のスキューと類似した効果を得るようにしても、磁気的に支障が生じることはない。
【0026】
(第2の実施例)
図5は本発明の第2の実施例であり、前記第1の実施例(図1)と異なるところは、回転子鉄心2に代わる回転子鉄心22は、回転子鉄心2に更に四つのブロック3、4、4、3を同順に積層してなる形態に構成したものである。その他の構成は、前記第1の実施例と同様である。
この第2の実施例は、特に大形の回転子に適するもので、このような構成によっても、前記第1の実施例同様の効果を得ることができる。
【0027】
なお、上記第2の実施例において、ブロック3、4の厚み寸法を第1の実施例の半分に設定するようにしてもよい。要するに、少なくとも四つのブロック3、4、4、3において、隣接する二つのブロック4、4を構成する鉄心材は、キーを通る中心線を基準として磁気的凹凸部15、16が回転方向及び反回転方向のうちの一方向に所定角度ずれるように形成され、この二つのブロック4、4の両端に位置するブロック3、3を構成する鉄心材は、キーを通る中心線を基準として磁気的凹凸部8、9が回転方向及び反回転方向のうちの他方向に所定角度ずれるように形成されるようにすればよい。
【0028】
(その他の実施例)
なお、本発明は、上記し且つ図面に示す実施例にのみ限定されるものではなく、次のような拡張、変形が可能である。
上記各実施例においては、回転子鉄心に永久磁石を設けるようにしたが、これは必要に応じて設けるようにすればよい。
【0029】
また、上記各実施例において、中央部の二つのブロック4、4を、一つのブロックとして想定してその両端のブロック3、3とともに基本的に三つのブロックを構成するとしてもよく、或いは、一つのブロック4とその両端に位置させるブロック3、3とともに基本的に三つのブロックを構成するとしてもよい。
【0030】
上記各実施例においては、回転子鉄心に略三角形状の空洞部を設けることにより磁気的凹凸部を構成するようにしたが、代わりに、円形状、楕円状、四角形状或いは菱形状の空洞部を設けることにより磁気的凹凸部を構成するようにしてもよく、更には、回転子鉄心に機械的な凹凸部を形成することにより磁気的凹凸部を構成するようにしてもよい。
回転子の極数は、8極に限らず、他の極数でも同様の効果が得られるものであり、また、固定子のスロット数も適宜設定すればよい。
【発明の効果】
本発明のリラクタンス型回転電機の回転子は、以上説明したように、スキューの効果と類似する効果を得るようにしてトルクリップル、振動、騒音を減少させることができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施例を示す回転子の部分上面図
【図2】 回転子鉄心の側面図
【図3】 (a)および(b)は図2のB−B線およびC−C線に沿う断面図
【図4】 回転子の縦断面図
【図5】 本発明の第2の実施例を示す図1相当図
【図6】 従来例を示す回転子の側面図
【図7】 図6のA−A線に沿う断面図
【符号の説明】
図面中、1は回転子、2は回転子鉄心、3および4はブロック、5および12は磁石挿入孔部、6および13は永久磁石、7および14は空洞部、8および15は磁気的凹部、9および16は磁気的凸部、10および11はキー、17および18は端板、19は回転軸、21はキー溝、22は回転子鉄心を示す。
Claims (2)
- 外周部に磁気的凹凸部が交互に形成された円環状の鉄心材を多数積層して形成され、内周部に軸方向に延びるキーを有する回転子鉄心と、
この回転子鉄心の内周部に挿通され、外周部に前記キーと係合するキー溝を有する回転軸とを備え、
前記回転子鉄心は、複数のブロックに分割されていて、少なくとも三つのブロックにおいて、一つのブロックを構成する鉄心材は、キーを通る中心線を基準として磁気的凹凸部が回転方向及び反回転方向のうちの一方向に所定角度ずれるように形成され、このブロックの両端に位置するブロックを構成する鉄心材は、キーを通る中心線を基準として磁気的凹凸部が回転方向及び反回転方向のうちの他方向に所定角度ずれるように形成されていることを特徴とするリラクタンス型回転電機の回転子。 - 回転子鉄心の各ブロックの磁気的凹部には、外周に向かうに従って対向距離が順次大となる一対の磁石挿入孔部が設けられ、これらの一対の磁石挿入孔部にそれぞれ永久磁石が挿入固定されていることを特徴とする請求項1に記載のリラクタンス型回転電機の回転子。
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