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JP4061909B2 - 光ディスク原盤の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスク及びその原盤の製造方法に関するものである。光ディスクはピットと呼ばれる情報を荷担する凹凸が螺旋状に形成されている。そのピットは成形によってスタンパーと呼ばれる原盤から作られるが、本発明は、成形のし易いピット構造を有するディスク及びその原盤の製造方法を提供する。
【0002】
【従来の技術】
従来の光ディスクの製造工程を図7に示す。図7(a)は表面が鏡面に研磨されたガラスからなる盤31を示す図である。図7(b)はその上にポジ型のフォトレジストが塗布されたレジスト層32を有する盤31を示す。図7(c)はレーザビームレコーダを示す概略図で、上記盤に信号を記録しているところを模式的に示している。7は盤31を搭載して回転させる回転駆動部材、4は光学系の一部でレーザビーム5とレーザビーム5をサブミクロンの大きさに絞る記録レンズ6のみを示している。レーザビーム5は図示されない光変調器により記録すべき信号で変調されており、回転する盤31の上を半径方向に移動しながら選択的に露光する。それによりレジスト層32は螺旋状に潜像として信号が記録される。図7(d)は上記露光後の盤31を現像した状態を示す断面図である。現像後のレジスト層33には、露光された部分のレジストが溶解してピット34が形成されている。
【0003】
ポジ型のレジストを現像した場合、ピットの開口部のエッジが溶解しやすくダレやすいため、上面の縁の曲率半径R4が大きくなり、一方ピットの底は現像の進行に伴いエッチングが進み、底辺の角の曲率半径R3が小さくなる傾向がある。図7(e)は、現像後のレジスト層33の上にニッケルの導電性膜35をスパッタリング等で付着させ、その導電性膜35を電極として電気メッキでニッケル層36を形成したところを示している。図は模式的に描かれているが実際の大きさは、レジスト層33の厚さは約0.1μm、導電性膜35は数十ナノメータ、ニッケル層36は約0.3mmである。
【0004】
図7(f)は上記のニッケル層36をガラス盤31から剥離した後、裏面を研磨し、成形機の金型に合うように内外径を加工したもので、スタンパー37として完成した概略の構成を示す図で、38はピット34に対応する突起である。
【0005】
図では、簡単のために突起38を一つしか図示していないが、実際は無数の突起38が螺旋状に形成されている。図7(g)は上記スタンパー37から射出成形によって作られたレプリカディスク39で、図7(d)のピット34と相似形のピット40が形成される。ここでもピット底辺の角の曲率半径R3は小さく、レプリカディスク39の上面の縁の曲率半径R4が大きく、R4>R3の関係にある。
【0006】
図8(a)〜(c)は図7(f)に示すスタンパー37による成形を模式的に示している。図8(b)に示すスタンパー37の突起38が樹脂に転写されてピット40が形成される。レプリカディスク39がスタンパー37から離型する時、レプリカディスク39の熱収縮のために突起38とピット40の位置関係はずれる。その時ピット40の外周側の縁がスタンパーの突起38の角と接触を起こす。レプリカディスク39が収縮を起こす前に、全面が均一にスタンパー37から離型すると上記トラブルは起こらないが、現実には離型が不均一になり、上記トラブルを多発しやすい。離型時にスタンパーの突起38と接触したピットはエッジが変形し図8(c)のようになる。この変形したピット部分は目視では雲状に見えるためクラウドと一般に呼ばれる。このディスクは外観不良として排除される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の欠点を無くし、成形において離型性のよいピット形状を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
また、本発明の光ディスク原盤の製造方法は、基板上架橋性物質からなるアンカーコートを塗布した後、前記アンカーコートを架橋し、その後、前記架橋されたアンカーコートの上にネガ型レジストを塗布し、前記基板を回転させながら記録すべき信号で変調されたレーザビームにより前記ネガ型レジストを選択的に露光し、現像によって前記レジストからなる突起を前記アンカーコート上に形成することにより光ディスクの原盤を作製する光ディスク原盤の製造方法において、前記アンカーコートの架橋を進行させ、かつ、現像前のレジストの厚さをH1,現像後の突起の高さをH2とした時、残膜率をH2/H1の百分率で定義し、前記レーザビームが前記レジストに与える露光エネルギーを、前記残膜率85〜95%に相当するエネルギーとすることによって前記レジストの露光を行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の光ディスク原盤の製造方法は、上記構成においてアンカーコートレジストと同じ材料であることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1〜図6に本発明の実施の形態を示す。
【0013】
図1に本発明の一実施形態の光ディスクの原盤の製造方法における工程順序を示す。図1は、基盤上にレジストの突起を形成して直接スタンパーとするいわゆるダイレクトマスタリングと呼ばれる工法の工程を示す図である。またこれは、特に、基盤上に直接レジストの突起を形成するのではなく、基盤上に形成したアンカーコートと呼ばれる架橋性物質からなる層の上にレジスト突起をさらに形成し、両者を架橋結合で一体化し、突起の欠落を防止した新規な工法における実施形態を示すものである。
【0014】
図1(a)は基盤1に架橋性物質であるアンカーコート2とネガ型レジスト3が塗布されたブランク盤12である。基盤1にはニッケルなどの金属盤が用いられる。アンカーコート2はレジスト3が塗布される前にある程度架橋されている。アンカーコート2がある程度架橋されているため、レジスト3がその上に塗布される時、レジスト3の溶剤によって溶けることはない。レジスト3は塗布後プリベークされ、溶剤を揮発させて安定な状態になる。通常この状態でブランク盤12として保管される。図は模式的に描かれているが、実際の大きさは、基盤1の厚みが約0.3mm、直径は約160〜200mmの範囲である。またアンカーコート2の厚み、およびレジスト3の厚みは1μm以下の範囲である。
【0015】
図1(b)は上記のブランク盤12にレーザビームレコーダと呼ばれる装置によって信号を記録する状態を示す概略図である。
【0016】
図にはレーザビームレコーダの光学系4の一部が示されていて、5は図示されない光変調器で変調されたレーザビーム、6は前記レーザビームをサブミクロンの大きさに絞りレジスト3の表面を露光する記録レンズである。7はブランク盤を載置して回転させる回転駆動部材である。記録レンズ6は回転する基盤1の半径方向に沿って移動するので、レジスト3の表面には螺旋状のトラックに沿って露光マークが潜像として記録される。
【0017】
図1(c)は露光後に行われるベーキング処理で、PEB(Post Exposure Bake)と呼ばれる。レジスト3が化学増幅型レジストの場合、レーザ露光後のベーキングは不可欠である。ネガ型化学増幅型レジストでは露光部に生じた酸が触媒となり、加熱により露光部のレジストが架橋反応を起こすのである。加熱温度は100〜140℃の範囲である。
【0018】
図1(d)は現像後に形成されたレジスト3の突起8を示している。図1(c)のPEBにより架橋された部分が突起8として残るのである。ここでは簡単のために突起8は一つしか図示していないが、実際は螺旋状のトラックに沿って無数にある。図1(d)の突起8はアンカーコート層2の上に形成されている。今、図1(d)は前記螺旋状のトラックに直角な方向の断面であり、この突起8の角の曲率をR2、底辺の角の曲率をR1としておく。
【0019】
次の図1(e)では現像後の基盤1に遠紫外線を照射して高温で加熱するところを示している。一般にディープUVキュアと呼ばれる方法で、アンカーコート2およびレジスト突起8をさらに架橋させ、より機械的強度および耐熱性を向上させる工程である。図では遠紫外線照射と高温加熱が同時に行われているが、実際は遠紫外線照射後に高温で加熱し、熱架橋を起こさせる。ここでは突起8を焼き固めると同時に、アンカーコート2と一体に架橋反応を起こさせる。このように形成された突起8はアンカーコート2と強固に結びつき剥がれない状態になる。
【0020】
アンカーコート2としては架橋性のポリマーでディープUVキュア後の耐熱温度が250℃以上あるものであればよい。一例としては、熱硬化性のフェノール樹脂を含むものなどである。またレジストにはフェノール樹脂をベースにしたものが多いが、レジスト3と同じ材料を用いると製造面で有利である。このようにして作られた基盤は成形機の金型に取り付けられるように内外径を加工すればスタンパーとして用いることが出来る。図1(f)はそのように加工されたスタンパー9で、図1(g)はスタンパー9を用いて成形されたレプリカディスク10を示している。この時、レプリカディスク10には突起8に対応したピット11が形成される。ピット11の底の角の曲率半径は突起8の凸状角部の曲率半径と同じR2になる。また、ピット11の上縁の曲率半径は突起8の凹状角部の曲率半径と同じR1になる。
【0021】
次に図1(d)に示す工程において突起8の大きさが決定されるメカニズムを説明する。図2はネガレジスト3の残膜特性を表している。横軸は露光エネルギーで、縦軸が残膜率を示す。残膜率とは、塗布時の膜厚に対する、露光・現像後の膜厚の百分率である。
【0022】
この場合の露光エネルギーは図1(b)において、レジスト3に照射されるレーザビームの累積エネルギーに相当する。露光エネルギーが大きいほど現像後に残る突起の高さが大きくなる。縦軸の100%が塗布時の膜厚になる。
【0023】
図3にネガレジスト3の現像前後の状態を模式的に示す。図3(a)は現像前のネガレジスト3を表す。レジスト3の厚さをH1で示す。図3(b)は現像後の突起8でその高さをH2で示している。ここでH2/H1が残膜率になる。図1で説明したように、突起8の形状は最終的にレプリカディスク12に形成されるピット11の形状となる。従って、信号の再生特性上において突起8の形状は重要であり、再生レーザの波長をλ、レプリカディスク12の屈折率をnとすると、H2=λ/(4n)が最適値となる。H2は図2に示すように露光量によって変化するが、残膜率が100%より少し下になるように露光量を設定すると、図3において、H1>H2となる。この時突起8の角が残膜率100%の時より、より丸みを帯びる。残膜率が85〜95%の範囲に設定すると図1(d)また図1(g)において、曲率R2は、ピット深さの1/3以上の値をとる。残膜率を85%以下にしてもR2はピット深さの1/3以上の値をとるが、突起8の傾斜角が小さくなり良好な再生特性が得られなかった。
【0024】
図2の残膜率のグラフにおいて、理想的には露光エネルギーが大きくなると、残膜率は100%になるが、実際はそれ以下で飽和することが多い。その差は膜べりと呼ばれる。膜べりを起こすレジストの場合は、飽和点を100%と見なして、上記と同様に、85〜95%の範囲で露光量を設定するとよい。
【0025】
一般に現像時間を長くすると、突起の角は丸みを帯びるが、現像あれを起こし、面精度が悪くなるので好ましくない。
【0026】
曲率R2が決定される要因を上述したが、曲率R1は主にアンカーコート2の架橋の程度によって決定される。アンカーコート2の事前の架橋が十分でないと、レーザ露光によってアンカーコート2とレジスト3の露光部との境界部に架橋結合が起こる。その場合、現像時に突起8の底辺の角付近のレジストがアンカーコート2に引っ張られ、曲率R1が大きくなるのである。
【0027】
事前の架橋はアンカーコート2に紫外線を照射し、その後PEBすることによって行われる。図4に紫外線照射量に対する架橋の程度の1例を示す。横軸は紫外線照射時間を表し、縦軸はアンカーコート2をレジスト3の溶剤に浸した時の溶融厚み(膜べり量)を示す。照射強度とPEBの条件は一定にしている。このグラフでは紫外線照射時間が60秒を越えたあたりで溶融厚みはゼロになっていて、架橋が満足できる程度に進行しているのが分かる。このように、レジスト溶剤によって溶融される量がゼロになる程度まで架橋を進行させると、前述したような曲率R2がピット深さの1/3以上になる条件下では、曲率R2とR1の関係はR2>R1となっている。
【0028】
図5に上記のピット形状を有するディスクの成形時の離型状態を模式的に示す。スタンパー9の突起8は角が丸みを帯びているため、図8で説明した突起38のように、突起8はレプリカディスク10のピット11のエッジに接触することはない。従って、レプリカディスク10のピット11は形状が崩れることがなく、クラウド不良が起こらない。
【0029】
図6は上記した図1(g)に示すレプリカディスク10のような、ピットの底辺のエッジR2が、上面のエッジR1より大きな曲率を有し、かつ曲率R2の値がピット深さの1/3以上であるレプリカより作られたディスクの一例を示す。図6は両面再生が可能なDVDの例であるが、20Aおよび20Bは上記したピット形状を有するレプリカディスク、21A、21Bはアルミなどの反射膜、22は接着層である。本発明は両面再生が可能なDVDに限られる事は無く、ピット形状を有する光ディスクのフォーマットすべてに適応できる。
【0030】
前記したように本発明のピット形状を有するレプリカディスクはピット形状が崩れることがないため、再生時にジッターなどの特性を悪化させたり、再生波形を変形させたりすることがなく、良好な再生が行える。
【0031】
図9に図1(a)〜(g)に示す一連の工程で作成した成形光ディスクの電子顕微鏡写真を示す。この光ディスクは離型性に優れていたのみならず、再生信号のジッターも6.5%であった。DVDの規格ではジッターは8%以下であるので、本発明によるディスクは再生信号特性においても十分な品質を有している。また上面の縁に比べ、ピット底の曲率が大きくなっていることがわかる。
【0033】
【発明の効果】
発明の光ディスクの原盤の製造方法により製作されるスタンパは、突起8がアンカーコート2と架橋結合で一体化されており、成形時に突起8が欠落することがなく、成形ショット数は2万回以上が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の一実施形態の光ディスクの原盤の製造工程におけるブランク盤を示す図
(b)はブランク盤に信号を記録する状態を示す図
(c)はブランク盤に信号を記録する状態を示す図
(d)は現像後に形成されたレジストの突起を示す図
(e)は現像後の基盤を高温で加熱する状態を示す図
(f)は基盤を加工して得られるスタンパーの断面図
(g)はスタンパーにより成形されたレプリカディスクを示す図
【図2】ネガレジストの残膜特性を示す図
【図3】(a)は現像前のネガレジストの厚さを示す図
(b)は現像後のネガレジストの突起の高さを示す図
【図4】紫外線照射量に対する架橋の程度を示す図
【図5】(a)はディスクのピットを成形する状態を示す図
(b)はディスクの離型状態を示す図
【図6】レプリカディスクにより作られた光ディスクを示す図
【図7】(a)は従来の光ディスクの製造工程における盤を示す図
(b)は盤にフォトレジストを塗布した状態を示す図
(c)は盤に信号を記録する状態を示す図
(d)は露光後の盤を現像した状態を示す図
(e)現像後のレジスト層の上にニッケル層を形成した状態を示す図
(f)ニッケル層を加工して得られるスタンパーの断面図
(g)スタンパーを用いて射出成形されたレプリカディスクの断面図
【図8】(a)はスタンパーによるピットの成形状態を示す図
(b)はレプリカディスクがスタンパーから離型する状態を示す図
(c)はピット外周縁の変形を示す図
【図9】レプリカディスクの電子顕微鏡写真を示す図
【符号の説明】
1 基盤
2 アンカーコート
3 ネガ型レジスト
5 レーザビーム
8 突起
9 スタンパ
11 ピット

Claims (2)

  1. 基板上架橋性物質からなるアンカーコートを塗布した後、前記アンカーコートを架橋し、その後、前記架橋されたアンカーコートの上にネガ型レジストを塗布し、前記基板を回転させながら記録すべき信号で変調されたレーザビームにより前記ネガ型レジストを選択的に露光し、現像によって前記レジストからなる突起を前記アンカーコート上に形成することにより光ディスクの原盤を作製する光ディスク原盤の製造方法において
    前記アンカーコートの架橋を進行させ、かつ、現像前のレジストの厚さをH1,現像後の突起の高さをH2とした時、残膜率をH2/H1の百分率で定義し、前記レーザビームが前記レジストに与える露光エネルギーを、前記残膜率85〜95%に相当するエネルギーとすることによって前記レジストの露光を行うこと
    を特徴とする光ディスク原盤の製造方法。
  2. アンカーコートレジストと同じ材料であることを特徴とする請求項記載の光ディスク原盤の製造方法。
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