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JP3938105B2 - 車両用シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば老人や身体障害者(以下、単に乗員とも言う)が車両への乗降を楽に行えるようにした福祉車両用のシート装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、助手席用の3点式シートベルトは、着座者から見て右側(室内側)においてバックルが車両フロアに取り付けられ、左側(室外側)においてショルダアンカがピラー上部に取り付けられ、リトラクタ(巻き取り装置)がショルダアンカの下方であってピラー下部に取り付けられ、リトラクタとショルダアンカとの間においてウエビングに装着したタングプレートをバックルに係止して着座者を拘束するようになっている。従って、車両前突時等の急減速時において、着座者を介してシートベルトに瞬間的に付加される大きな引っ張り力(以下「シートベルト荷重」という)は、全てボディ側の3箇所(バックル取り付け部とアンカ取り付け部とリトラクタ取り付け部)で強固に受けられる。
【0003】
ところが、この3点式シートベルトを、シート本体が車両正面向きの着座位置と車両側面のドア開口部を向いた乗降位置との間で水平方向に回転することができ、これにより乗員が車両への乗降を楽に行えるようにした福祉車両用の回転シートに適用した場合、回転するシート本体との干渉を避けるためにバックルは車両フロアではなく通常シートクッションの室内側側部に取り付けられる。従って、この場合には、バックル取り付け部を経てシートベルト荷重がシート本体に入力され、ひいてはシート本体を車両フロアに対して回転支持する回転機構にこのシートベルト荷重が付加されることになる。シート本体に入力されたシートベルト荷重は、シート本体を車両フロアから浮き上がらせる方向の大きな外力となって作用する。このため、このシートベルト荷重を従前の回転機構のみで強固に受けることは困難になる。
【0004】
ここで、シート本体に入力されたシートベルト荷重を強固に受けるためには、回転機構およびその周辺を構成する部材の板厚を厚くしたり材質を変更等することにより支持機構自体の支持剛性を高めることが考えられるが、これでは当該シート装置の重量アップおよびコストアップを招いてしまう。そこで、シート本体の支持機構部(主として回転機構)ではなく別の手段を介在させて最終的に車両フロアでこのシートベルト荷重を受けることが望ましい。
シート本体に入力されたシートベルト荷重を上記回転機構等の支持剛性の低い部位を回避して他の手段により受ける技術として、従来例えば特開平9−286263号公報に開示されたものがあった。この従来の技術によれば、バックル取り付け部(ベルトアンカ)の近傍において、シート本体側の回転ベースに設けたフックと車両フロア側のスライドベースに設けたフックを一定の遊びを持たせて配置し、シートベルト荷重付加時に相互に係合させることにより回転機構を迂回した経路でこのシートベルト荷重をスライドベースおよびそのスライド機構で間接的に受ける構成となっていた。この構成によれば、シート本体の回転機構を構成する各部材の板厚を厚くしたり、高剛性の素材を用いて各部材を製作する等することなく、バックル取り付け部を経てシート本体の室内側に入力されるシートベルト荷重を支持剛性の低い部位を回避して受けることができた。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−286263号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記したようにシートベルト荷重は、最終的に車両フロア(車両ボディ)で受けることが望ましい。従って上記従来のシートにおいては、シート本体を単に回転させるだけでなく、主として車室内における前後方向の位置(いわゆるシートポジション)を調整するための前後スライド機構を備えており、この前後スライド機構をも迂回してシートベルト荷重を最終的に車両フロアで受ける必要がある。
本発明は、シート本体を、車両正面向きの着座位置とドア開口部側へ回転させた乗降位置との間を回転させる機能と、車両前後方向にスライドさせる機能を併せ持った主として福祉目的の車両用シートであって、シートベルトを介して大きなシートベルト荷重がシート本体に入力された場合にはこれを最終的に車両ボディで強固に受けることができる一方、このシートベルト荷重が付加されない通常の状態では何ら解除操作をすることなく上記各機構を作動させることができる操作性をも兼ね備えた車両用シートを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明は、前記請求項に記載した構成の車両用シートとした。
請求項1記載の車両用シートによれば、車両正面向きの着座位置に位置するシート本体にシートベルト荷重が入力(付加)されると、第1スライドベースに設けた回転ロック用フックが第2スライドベースに設けた回転係合部に係合して、シート本体と第1スライドベースとの間が剛体結合される。また、シートベルト荷重が入力されると、同じく第1スライドベースに設けたスライドロック用フックがスライド係合に係合して第1スライドベースが車両フロア側と剛体結合される。以上により、シート本体にシートベルト荷重が付加されると、シート本体と車両フロア側との間が剛体結合され、その結果シートベルト荷重が車両フロア側で受けられる。
このことから、シート本体に入力されたシートベルト荷重は、シート本体と第1スライドベースとの間の昇降機構及び回転機構を迂回して第1スライドベースに受けられ、かつ第1スライドベースと車両フロアとの間の第1スライド機構を迂回して最終的に車両フロアに受けられるので、昇降機構、回転機構および第1スライド機構にはシートベルト荷重が付加されず、従ってこれら各機構の剛性を高めることなく、シートベルト荷重を車両フロアで強固に受けることができる。
【0008】
シート本体にシートベルト荷重が入力されていない状態では、回転ロック用フックと回転係合部、スライドロック用フックとスライド係合部がそれぞれ相互に係合しない非係合状態に保持されるので、着座者若しくはその介護者は何ら特別のロック解除操作をすることなく昇降機構、回転機構および第1スライド機構を作動させることができ、これによりシート本体をスムーズに回転させることができ、また車両前後方向にスムーズに移動させることができる。
この明細書において、シートベルト荷重は、着座者がシートベルトを装着した状態で、車両前突等によりシートベルトに付加される荷重であって通常走行時には発生しないような大きな衝撃的荷重(主として引っ張り力)をいうものとする。
また、シート前後方向というときは、シート本体若しくは着座者から見て前方または後方をいうものとする。従って、シート本体が車両正面を向いた状態では、シート前後方向は車両前後方向に一致し、シート本体がドア開口部側を向いた状態ではシート前後方向は車両幅方向に一致する。
【0009】
請求項2記載の車両用シートによれば、シートベルトのバックルとショルダアンカとリトラクタの3点を介してシートベルト荷重が全てシート本体に入力される。
ここで、近年シート本体の室外側側方(運転席であれば右側方、助手席であれば左側方)に位置するセンタピラーを廃止して、ドア開口部を大きく設定した車両が提供されている。この車両の場合、シートベルトのショルダアンカおよびリトラクタをボディ側(ピラー側)に取り付けることが困難であるため、一般にこの種の車両では、これらをもシート本体に取り付ける構成が採用されている(ベルトインシート)。従って、このベルトインシートの場合は、シートベルトの3点(バックル取り付け部、ショルダアンカ取り付け部、リトラクタ取り付け部)を経てシートベルト荷重が全てシート本体に付加される。このことから、従来のようにシート本体の室内側(バックル取り付け部)のみならず室外側(ショルダアンカ取り付け部およびリトラクタ取り付け部)においても入力されるシートベルト荷重を最終的に車両フロア側で強固に受けることができるようにする必要がある。
請求項2記載の構成は、上記ベルトインシートに特に好適に適用することができる。
【0010】
請求項3記載の車両用シートによれば、シート本体は、回転機構により車両正面向きの着座位置とドア開口部側に向いた横向き位置との間を回転させることができるとともに、第1スライド機構により車両前後方向にスライドさせることができる。しかも、シート本体は、昇降機構および第3スライド機構によりドア開口部側に向いた横向き位置から車室外方へ移動させつつ昇降させることができ、この点で乗員の車両への乗降を一層楽に行うことができるようになる。
このようにシート本体の種々方向への移動の自由度を有する車両用シートにおいて、シート本体が車室内において車両正面向きに位置し、この状態でシート本体にシートベルト荷重が入力されると、回転ロック用フックが回転係合部に係合し、第1スライドロック用フックが第1スライド係合部に係合し、かつ第3スライドロック用フックが第3スライド係合部に係合することにより、シート本体と車両フロアとの間が剛体結合され、これによりシートベルト荷重のすべてが最終的に車両フロア側(車両ボディ)で受けられる。
これに対して、シート本体にシートベルト荷重が入力されない通常の状態では、回転ロック用フックと回転係合部、第1スライドロック用フックと第1スライド係合部、および第3スライドロック用フックと第3スライド係合部がそれぞれ相互に係合しない非係合状態に保持されるので、着座者若しくはその介護者が何ら特別の解除操作をすることなくシート本体の車両前後方向のスライド動作、回転動作、室内外間のスライド動作、および昇降動作をスムーズに行うことができる。
【0011】
【発明の実施形態】
次に、本発明の実施の形態を図1〜図11に基づいて説明する。図1は、本実施形態の車両用シート1を助手席に適用した車両Mを示している。図1では、車両左側(図1において下側)の助手席用のドアDが開放されて、シート本体10が車室内の着座位置からドア開口部Kを経て室外側へ移動される状態が示されている。
本例の車両用シート1は、シート本体10を車両前後方向に移動可能であり、かつ車両正面向きの着座位置とドア開口部K側に向いた横向き位置との間で約90度水平方向に回転させることができる。また、本例の車両用シート1は、シート本体10をドア開口部K側に向いた横向きの状態で室内と室外との間で車幅方向(図1において上下方向)に水平にスライドさせることができ、かつ車幅方向に移動させつつ昇降させることができる。
図1では、着座位置に位置するシート本体10が実線で示され、ドア開口部K側に向いた横向き位置および室外側へ移動した状態のシート本体10がそれぞれ二点鎖線で示されている。
図2および図5〜図7に示すように、車両用シート1は、シート本体10と、このシート本体10を車両前後方向(図2および図5〜図7において紙面に直交する方向)に移動させるための第1スライド機構20と、シート本体10を車両正面向きの着座位置とドア開口部K側に向いた横向き位置との間で回転させる回転機構30と、ドア開口部K側に向いた状態のシート本体10をドア開口部Kを経て室内と室外との間で車幅方向に水平にスライドさせるための第3スライド機構50と、この第3スライド機構50により車室外側へ移動したシート本体10をさらに車幅方向に移動させつつ昇降させる昇降機構80を備えている。
【0012】
図12には、シート本体10が単体で示されている。このシート本体10は、シートクッション11とシートバック12を備えている。このシート本体10には、3点式のシートベルト90が取り付けられている。
このシートベルト90は、シートクッション11の左側部(着座者の左側、図12では右側部)に取り付けたアンカ91とシートバック12の背面左側に取り付けたリトラクタ92と、シートクッション11の右側部(着座者の右側、図12では左側)に取り付けたバックル93と、前記リトラクタ92から繰り出されるウエビング94と、このウエビング94に取り付けられて、装着時には前記バックル93に係止されるタングプレート95を備えている。
このため、シートベルト荷重は、アンカ91の取り付け部(アンカ取り付け部)と、リトラクタ92の取り付け部(アンカ取り付け部)と、バックル93の取り付け部(バックル取り付け部)の3箇所から入力される。
第1スライド機構20は、車両MのフロアF上に固定された固定ベース21上に設けられている。この固定ベース21の上面には、車両前後方向に相互に平行に取り付けた断面コ字形のガイドレール22を介して第1スライドベース23が車両Mの前後方向にスライド可能に設けられている。固定ベース21と第1スライドベース23との間には、駆動モータ24aとこの駆動モータ24aにより回転するねじ軸24bとこのねじ軸24bに噛み合わされたナット24cを有する前後駆動装置24が取り付けられている。この前後駆動装置24によれば、駆動モータ24aが起動してねじ軸24bが回転するとこのねじ軸24bに噛み合わされたナット24cがねじ軸24bの軸方向に移動し、これにより第1スライドベース23が車両前後方向へ移動する
【0013】
図2〜図4に示すように、第1スライドベース23の車室外側の端部には、回転ロック用フック100とスライドロック用フック101が取り付けられている。第1スライドベース23の車室外側端部には、水平支持板部102が室外側へ張り出すように取り付けられている。この水平支持板部102の先端には、上方へ延びる上支持板部103と下方へ延びる下支持板部104が設けられている。上支持板部103の上端部に、L字形に屈曲する回転ロック用フック100が設けられている。また、下支持板部104の下端部に、断面コ字形をなすスライドロック用フック101が設けられている。
上記回転ロック用フック100に対応して、後述する第2スライドベース41の側部には回転係合部110が下方へ張り出すように取り付けられている。この回転係合部110には、係合孔110aが形成されている。図2〜図4に示すようにシート本体10が車両正面向きの着座位置に至ると、回転ロック用フック100が回転係合部110の係合孔110aに進入される。シート本体10にシートベルト荷重が付加されない状態では、回転ロック用フック100は回転係合部110に対して係合(干渉)しないように設定されている。従って、シート本体10に対してシートベルト荷重が付加されない状態では、回転ベース31ひいてはシート本体10のスムーズな回転が許容されるようになっている。
【0014】
また、上記スライドロック用フック101に対応して、前記車両フロア側にはスライド係合部120が取り付けられている。このスライド係合部120は断面コ字形をなし、シート本体10の車両前後方向への移動に伴うスライドロック用フック101の移動範囲に対応して、車両前後方向の一定範囲に長く形成されている。このスライド係合部120の下方に上記スライドロック用フック101が進入して常時相互に対向した状態に保持される。但し、シート本体10に対してシートベル荷重が付加されない通常の状態では、スライドロック用フック101とスライド係合部120は相互に係合しないように設定されており、これにより当該第1スライド機構の機能が損なわれない(シート本体10を車両前後方向にスムーズにスライドさせることができる)ようになっている。
このように、シート本体10が車両正面向きの着座位置に位置する状態(車両走行時)では、第1スライドベース23に設けた回転ロック用フック100が第2スライドベース41に取り付けた回転係合部110の係合孔110a内に進入し、かつ同じく第1スライドベース23に設けたスライドロック用フック101が車両フロアFに設けたスライド係合部120の下側に進入した状態に保持される。シート本体10にシートベルト荷重が付加されない通常状態では、回転ロック用フック100と回転係合部110、およびスライドロック用フック101とスライド係合部120は、それぞれ相互に係合せず、従って、シート本体10のスムーズな回転および車両前後方向のスライド動作が許容された状態となっている。シート本体10にシートベルト荷重が付加されると、これらは相互に係合し、これよりシート本体10の回転動作および車両前後方向のスライド動作が禁止された状態となる。これについては、後述する。
【0015】
次に、回転機構30は、第1スライドベース23の上面に設置されている。この回転機構30は、相互に同軸で回転可能に組み合わされた外輪30aと内輪30bを主体とするもので、外輪30aが第1スライドベース23の上面に固定され、内輪30bが回転ベース31の下面に固定されている。また、第1スライドベース23の上面には回転モータ32が取り付けられている。この回転モータ32の回転出力は、図示省略した歯車伝達機構を介して内輪30bに伝達され、これにより回転ベース31およびその上面に設置された昇降機構80、第3スライド機構50およびシート本体10が一体で回転する。
昇降機構80は、ドア開口部K側へ向けた状態のシート本体10を車幅方向(図5において左右方向)に移動させつつフロアFよりも高い位置(車室内における着座高さ)とこれよりも低くより路面に近い高さとの間で昇降させる機能を有している。この昇降機構80は、上記回転ベース31の上面に設置した第2スライド機構40によりシート前後方向に移動する第2スライドベース41と、この第2スライドベース41の左右両側部に上下に傾動可能に支持された左右一対の四節リンク機構44,44を備えている。
この第2スライドベース41の室外側(シート本体10を着座位置に位置させて状態で室外側)の側面に、前記回転係合部110が取り付けられている。この回転係合部120は、上記四節リンク機構44,44の上下傾動動作を阻害しない位置に取り付けられている。
【0016】
第2スライド機構40およびこれによりスライドする第2スライドベース41の詳細が図8および図9に示されている。図示するように、第2スライドベース41は、上記回転ベース31の両端縁に沿って相互に平行に取り付けた断面コ字形のガイドレール41b,41bを介してスライド可能に支持されている。第2スライドベース41は、両ガイドレール41b,41bのそれぞれに対して2個のガイドローラ41a,41aを介してスライド可能に支持されている。
第2スライドベース41と回転ベース31との間に、上記駆動装置70が設けられている。この駆動装置70によって第2スライドベース41が回転ベース31に対してシート前後方向に移動する。この駆動装置70は、駆動モータ71とねじ軸72とナット73を備えている。駆動モータ71は、モータ本体71aとこのモータ本体71aの出力を減速するための減速装置71bを備えている。減速装置71bの入力側にモータ本体71aが連結され、出力側にねじ軸72が連結されている。
この減速装置71bひいては当該駆動モータ71は、緩衝部材81,85を介在させた状態でブラケット83,86により回転ベース31上に支持されている。このように駆動モータ71が緩衝部材81,85を介して回転ベース31上に支持されていることにより、ねじ軸72の回転抵抗の反力として駆動モータ71に付加されるねじ軸72回りの回転トルクおよびねじ軸72方向(特に引っ張り方向)の軸力により発生する駆動モータ71の振動を効率よく吸収して騒音(振動音、唸り音等)を低減することができる。
ねじ軸72に噛み合わされたナット73は、第2スライドベース41の下面に固定されている。
この駆動装置70によれば、駆動モータ71を起動してねじ軸72を回転させることにより、第2スライドベース41をドア開口部Kから離間した後退位置(図5および図6に示す位置)とドア開口部Kに接近した前進位置(図7に示す位置)との間で移動させることができる。
【0017】
この第2スライドベース41の両側部に、左右一対の四節リンク機構44,44が設けられている。この両四節リンク機構44,44は、それぞれ内側リンクアーム44aと外側リンクアーム44bを備えている。両リンクアーム44a,44bの一端側は、それぞれ第2スライドベース41の側部に支軸44c,44dを介して上下方向に回動可能に支持されている。図5〜図8に示すようにこの両支軸44c,44dは、シート本体10の前後方向にずれている。
左右の外側リンクアーム44b,44bの回動基部側(支軸44d側)には、それぞれコ字形をなす第3スライド係合部130が設けられている。この第3スライド係合部130に対して第3スライドベース51の左右両側部には、それぞれ第3スライドロック用フック140が取り付けられている。後述するように、第3スライド機構50によりシート本体10が室内側の後端位置に至ると、第3スライドロック用フック140が第3スライド係合部130に対してシート本体10の前側(図3において左側)から進入し、これによりシート本体10の上方および斜め上方への変位が規制された状態となる。従って、シート本体10が車室内において車両正面向きの着座位置に位置する状態では、両第3スライド係合部130,130にそれぞれ第3スライドロック用フック140が進入した状態とされる。このことから、車両走行時等において、シート本体10に対してシートベルト荷重が付加されると、これが外側リンクアーム44b,44bひいては第2スライド機構40側に強固に受けられ、ひいては後述するようにこのシートベルト荷重が車両フロアFで受けられる。
【0018】
両リンクアーム44a,44bの他端側は、図10および図11に示すように昇降ベース45の側部に支軸44e,44fを介してそれぞれ上下に回動可能に連結されている。図示するようにこの両支軸44e,44fもシート本体10の前後方向(図10では左右方向)にずれている。
また、図9に示すように内側リンクアーム44aと外側リンクアーム44bは、相互に干渉しないようにシート本体10の幅方向(両リンクアーム44a,44bの板厚方向)に相互にずれて支持されている。
両リンクアーム44a,44bが上下に傾動することにより昇降ベース45が車幅方向に移動しつつ上下に変位し、これによりシート本体10が車幅方向に移動しつつ昇降する。昇降ベース45およびシート本体10は、その前後左右に傾くことなく常時一定の着座姿勢を保持しつつ変位するように、両リンクアーム44a,44bの長さおよび支軸44c,44d,44e,44f間の距離が適切に設定されている(四節平行リンク機構)。
図9に示すように回転ベース31の前端部には、左右の外側リンクアーム44b,44bに対応して左右一対のアーム受け部材47,47が取り付けられている。このアーム受け部材47,47に上記左右の外側リンクアーム44b,44bがそれぞれ乗せ掛けられている。
【0019】
駆動装置70の作動により第2スライドベース41がシート前後方向(車幅方向、図9において紙面に直交する方向)へ移動すると、左右の外側リンクアーム44b,44bはそれぞれ常時アーム受け部材47に下方から受けられた状態で第2スライドベース41と一体で移動する。このため、第2スライドベース41が車室外側へ移動して両四節リンク機構44,44の車室外側へ移動距離が大きくなるほど外側リンクアーム44bの支軸44dとアーム受け部材47との間隔が小さくなり、その結果図7に示すように内側リンクアーム44aは支軸44cを中心にして、また外側リンクアーム44bは支軸44dを中心にしてそれぞれ下方(図7において反時計回り方向)へ回動する。
こうして両四節リンク機構44,44が下方へ回動すると、昇降ベース45およびシート本体10が車室外側へ移動しつつ下方へ変位する。図7は、第2スライドベース41がドア開口部K側に最も接近した前進位置に移動することにより、両四節リンク機構44,44が最も下方まで傾動し、これによりシート本体10が最も車室外側へ移動し、かつ最も低い位置(路面に近い高さ)まで下降した状態を示している。
逆に、第2スライドベース41が車室内側へ移動して両四節リンク機構44,44が車室内側へ移動されるほど、外側リンクアーム44bの支軸44dとアーム受け部材47との距離が大きくなり、その結果内側リンクアーム44aは支軸44cを中心にして、また外側リンクアーム44bは支軸44dを中心にしてそれぞれ上方(図7において時計回り方向)へ回動する。
こうして両四節リンク機構44,44が上方へ回動することにより、昇降ベース45およびシート本体10が車室内側へ移動しつつ上方へ変位する。図6は、第2スライドベース41がドア開口部Kから最も離間した後退位置まで移動して、両四節リンク機構44,44がほぼ水平位置まで戻され、これによりシート本体10が上昇端に戻された状態を示している。
以上のように構成された昇降機構80により、シート本体10が車幅方向へ移動しつつ昇降する。
【0020】
次に、図10および図11に示すように昇降ベース45の上面側には、第3スライド機構50を介してシート本体10が支持されている。この第3スライド機構50によってシート本体10は昇降ベース45に対してシート前後方向(車幅方向)へスライド可能に支持されている。
この第3スライド機構50は、上面にシート本体10が取り付られ、昇降ベース45に対してスライドする第3スライドベース51を備えている。この第3スライドベース51のスライド方向は、上記第2スライドベース41と同じくシート前後方向であり、シート本体10がドア開口部K側に向けられた状態で車幅方向となる。
第3スライドベース51の下面側の左右両側部には、断面コ字形の2本のガイドレール51a,51aが相互に平行に取り付けられている。この両ガイドレール51a,51aには、昇降ベース45の左右側部に回転可能に取り付けた複数個のガイドローラ45a〜45aが転動可能に支持されており、これにより第3スライドベース51が昇降ベース45に対してスライド可能に支持されている。
昇降ベース45と第3スライドベース51との間には、駆動モータ52aと、この駆動モータ52aにより回転するねじ軸52bと、このねじ軸52bに噛み合わされたナット52cを有する駆動装置52が設けられている。駆動モータ52aはブラケット52eを介して第3スライドベース51の下面に取り付けられている。ねじ軸52bの先端部は、第3スライドベース51の下面に取り付けた保持ブロック52dに回転可能に支持されている。ナット52cは、昇降ベース45の上面に固定されている。
【0021】
シート本体10がドア開口部K側に向けられた状態で、駆動モータ52aを起動してねじ軸52bを回転させると、ねじ軸52bがナット52cとの噛み合い作用によりその軸方向へ移動し、これによりシート本体10が昇降ベース45に対して車幅方向へ移動する。上記第3スライドベース51、駆動装置52および左右のガイドレール51a,51a等により、特許請求の範囲に記載した第3スライド機構が構成されている。
第3スライド機構50により第3スライドベース51およびシート本体10が昇降ベース45に対して車室外側へスライドすると、左右の第3スライドロック用フック140,140がそれぞれ第3スライド係合部130から抜き出される。図6および図7は、この状態を示している。
このようにシート本体10は、昇降機構80と第3スライド機構50により2段階で車幅方向に移動する。但し、第3スライド機構50によるシート本体10の移動は車幅方向の水平移動であって上下には変位しない。これに対して、昇降機構80によるシート本体10の移動は、前述したように車幅方向の移動に加えて上下方向の移動を伴い、結果的にシート本体10は上側に膨らんだ円弧形状の軌跡に沿って移動する。すなわち、第2スライドベース41を図6に示す後退位置から図7に示す前進位置へ移動させたときは、両四節リンク機構44,44が車室外側へ移動しつつ下方(その先端側を下方へ変位させる方向)に回動し、これにより昇降ベース45ひいてはシート本体10が円弧状の軌跡に沿って上昇位置から下降位置へ移動(下降)する。逆に、第2スライドベース41を前進位置から後退位置へ移動させたときは、両四節リンク機構44,44が車室内側へ移動しつつ上方(その先端側を上方へ変位させる方向)へ回動し、これによりシート本体10が円弧状の軌跡に沿って下降位置から上昇位置へ戻される。
【0022】
次に、図6〜図8に示すように、シート本体10と昇降機構80との間には、シート本体10の移動経路を覆うためのカバー体60と、これを巻き取るための巻き取り装置65が配置されている。
カバー体60は、巻き取り可能な可撓性を有する合成皮革地(レザー表皮)を素材として、回転ベース31とほぼ同じ幅で製作されている。このカバー体60の先端は、シート本体10の後部すなわちシートクッション11の後面に沿ってその幅方向で張った状態で固定されている。
巻き取り装置65は、回転ベース31の後端部に取り付けた箱形の固定カバー68の内側上部に取り付けられている。この固定カバー68は、図8中二点鎖線で示すように後退位置に至った第2スライドベース41および駆動装置70のそれぞれの後部側を内側に収容できるように凹凸形状を有している。これらが固定カバー68内に収容されることにより、これらの車室内での露出を避け、これにより当該車両用シート1の車室内での見栄えをよくすることができる。また、この固定カバー68により上記駆動装置70等が乗員の衣服等に触れることが防止される。
巻き取り装置65は、カバー体60を巻き取るための巻き取りロール65aを内蔵している。この巻き取りロール65aは、ねじりばね65bによりカバー体60を巻き取る方向に付勢されている。このため、カバー体60は、巻き取りロール65aの巻き取り方向の付勢力に抗して繰り出される。
【0023】
また、カバー体60の長手方向(巻き取り、繰り出し方向)のほぼ中央裏面側(図8において下面側)には、1本の補強バー61がその幅方向両端部間にわたって取り付けられている。この補強バー61は、カバー体60の幅と同じ長さを有している。この補強バー61は、カバー体60と一緒に巻き取られる。この補強バー61により、カバー体60の展張状態が保持される。
第3スライド機構50によりシート本体10が車室外側へ移動すると、シート本体10の移動に伴ってカバー体60が巻き取り装置65から繰り出される。すなわち、シート本体10は、カバー体60を引っ張って繰り出しながらシート前方(車室外側)へ移動する。カバー体60が、シート本体10の移動経路を覆いながら繰り出されていくことにより、昇降機構80を構成する駆動装置70、ガイドレール41b,41b、ねじ軸72、第2スライドベース41および両四節リンク機構44,44等が覆われていくので、シート本体10を乗降位置に取り出した状態における当該車両用シート1の見栄えを向上させることができるとともに、これら各部材が乗員の衣服等に触れることを防止することができる。
乗降位置に位置するシート本体10を車室内側へ戻す際には、シート本体10の車室内側への移動に伴って、カバー体60が巻き取り装置65の巻き取り力により自動的に巻き取られていく。図5は、カバー体60が完全に巻き取られた状態を示している。
【0024】
以上のように構成した車両用シート1は以下のように動作し、これによりシート本体10が車室内から車室外へ移動されて着座者は車室内から車室外へ降車することができ、また逆にシート本体10が車室外から車室内へ戻されて着座者は車室内の着座位置(助手席)に乗り込むことができる。
先ず、図1において実線で示すように着座者が車両正面向きに位置する着座位置では、図3および図4に示すように、第1スライドベース23に設けた回転ロック用フック100が第2スライドベース41に設けた回転係合部110の係合孔110aに進入した状態となっている。
また、この状態では、同じく第1スライドベース23に設けたスライドロック用フック101がスライド係合部120の下側に進入した状態となっている。スライド係合部120は、シート本体10の車両前後方向への移動可能な範囲に対応して、車両前後方向に長く形成されている。このため、スライドロック用フック101は、シート本体10の車両前後方向の位置(シートポジション)に関係なく、常時スライド係合部120の下側に進入した状態となっている。シート本体10にシートベルト荷重が付加されない通常の状態では、回転ロック用フック100は係合孔110aの縁部に対して係合せず、かつスライドロック用フック101はスライド係合部120に対して係合しない。このため、通常時におけるシート本体10の回転機構30による回転動作および第1スライド機構20による車両前後方向のスライド動作がなんら支障なくスムーズになされる。
【0025】
シート本体10が着座位置に位置する状態において、シート本体10にシートベルト荷重が付加されると、この荷重がシート本体10を例えば前方斜め上方へ変位させる外力として作用する。しかしながら、この場合には、第3スライドロック用フック140が第3スライド係合部材130に進入しており、また、回転ロック用フック100が回転係合部100の係合孔100aに進入しており、さらに第1スライドロック用フック101がスライド係合部120の下側に進入している。
第3スライドロック用フック140は、シート本体10がドア開口部K側に向けられた状態(この時車両は停止しているため、シートベルト荷重は付加されない)で、第3スライド機構50の作動により室外側へ移動する通常操作時には、第3スライド係合部130に対して係合することなく変位するように設定されている。
また、回転ロック用フック100は、回転機構30の作動によりシート本体10を着座位置から横向き位置に向けて回転させ、あるいはその逆方向に回転させる通常操作時には、回転係合部110に対して係合することなく変位するように設定されている。
さらに、第1スライドロック用フック101は、第1スライド機構20によりシート本体10を車両前方へ移動させる通常操作時には、第1スライド係合部120に対して係合することなく変位するように設定されている。
【0026】
これに対して、シートベルト荷重によりシート本体10がその前方斜め上方へ変位しようとすると、第3スライドロック用フック140が第3スライド係合部130に対して係合し、回転ロック用フック100が回転係合部110に対して係合し、第1スライドロック用フック101が第1スライド係合部120に係合する。
第3スライドロック用フック140が第3スライド係合部130に係合することにより、シート本体10と外側リンクアーム44b間が剛体結合されるため、シート本体10に付加されたシートベルト荷重は第3スライド機構50ではなく外側リンクアーム44bひいては第2スライドベース41側で受けられる。
また、第2スライドベース41と第1スライドベース23との間は、回転ロック用フック103が回転係合部材110に対して係合されることにより剛体結合され、第1スライドベース23と車両フロアFとの間は、第1スライドロック用フック140が第1スライド係合部120に対して係合されることにより剛体結合される。以上のことから、シート本体10にシートベルト荷重が付加されると、シート本体10と車両フロアFとの間が剛体結合されるので、このシートベルト荷重は第3スライド機構50、昇降機構80、回転機構30および第1スライド機構20を回避して車両フロアFで受けられる。
【0027】
次に、車両停車時において、着座者(シート本体10)が車両正面向きの位置から車室外へ降車する場合(この段階では、シートベルト荷重は付加されていない)には、先ず第1スライド機構20の駆動モータ24aが正転側に起動することにより、シート本体10が車両前方へスライドする。また、これに伴って回転機構30の回転モータ32が正転側に起動することにより、シート本体10は車両前方へスライドしつつドア開口部K側へ向けて約90度回転する。シート本体10が約90度回転してドア開口部K側へ向けられた状態となると、昇降機構80と第3スライド機構50のスライド方向が車幅方向に沿った方向(シート前後方向)となる。図5は、この段階の様子を示している。
この段階では、シート本体10に対してシートベルト荷重が付加されていないので、回転ロック用フック100は回転係合部110の係合孔110aに係合されず、かつ第1スライドロック用フック101は第1スライド係合部120に係合されない。従って、前記したようにシート本体10の車両前方へのスライド動作およびドア開口部K側への回転動作はスムーズになされる。
シート本体10がドア開口部K側に向けられた状態において、第3スライド機構50の駆動モータ52aが正転側に起動することによりシート本体10がドア開口部Kを経て車室外側に水平移動される。第3スライド機構50によるスライド範囲の前端までシート本体10がスライドした状態が図6に示されている。
この段階においても、シート本体10に対してシートベルト荷重が付加されていないので、第3スライドロック用フック140は第3スライド係合部130に対して係合することなくスムーズに抜き出される。このため、シート本体10は第3スライド機構50によって車室外側へスムーズにスライドする。
【0028】
次に、昇降機構構80の駆動モータ71が起動して、第2スライドベース41が図6に示す後退位置からドア開口部Kに向かって移動する。これによりシート本体10が四節リンク機構44,44とともに車室外側へ移動する。前記したように四節リンク機構44,44が車室外側へ移動すると、その内側リンクアーム44a,44aと外側リンクアーム44b,44bはそれぞれ支軸44c,44dを中心にして下方へ回動する。このため、シート本体10は、車室外側へ移動しつつ、より路面に近い高さへ下降する。
図7に示すように第2スライドベース41が、昇降機構80による移動範囲の前端位置まで移動した状態になると、シート本体10は車室外側へ十分な距離だけ移動し、かつ路面に近い高さまで下降される。従って、着座者は例えばシート本体10に横付けした車椅子へ楽に乗り移ることができる。車椅子への乗り移りが完了してシート本体10に着座者がいなくなった後、上記とは逆の動作により当該シート本体10が車室内に戻される。
【0029】
次に、乗車時には、上記のようにして車室外に移動されたシート本体10に着座者が車椅子から乗り移って着座した後、昇降機構80の駆動モータ71を逆転側に起動させると、第2スライドベース41の室内側への移動によりシート本体10が上昇しつつ室内側へ戻される。
第2スライドベース41が車室内側の後退端位置まで戻された後、第3スライド機構50の駆動モータ52aを逆転方向に起動してシート本体10を車室内側へ戻す。第3スライド機構50によりシート本体10が車室内側へ戻されると、これに伴って第3スライドロック用フック140が第3スライド係合部130の内側へ進入する。
その後、回転機構30の回転モータ32および第1スライド機構20の駆動モータ24aをそれぞれ逆転側に起動してシート本体10を車両正面向き側に約90度回転させつつ後方へスライドさせることにより、着座者は所定の着座位置(助手席位置)に乗り込むことができる。この間、着座者はシート本体10に着座した状態のままでよいので、着座者および介護者の労力が大幅に低減される。
回転機構30によりシート本体10がドア開口部K側を向いた横向き位置から車両正面向き位置に戻されると、回転ロック用フック100に対して回転係合部110が接近し、最終的にこの回転係合部110の係合孔110a内に回転ロック用フック100が進入した状態となる。
なお、第1スライド機構20によるシート本体10の車両前後方向へのスライド範囲のいずれの位置においても、第1スライドロック用フック101は、第1スライド係合部101の下側に位置している。すなわち、第1スライドロック用フック101は、シート本体10の位置に関係なく、常時第1スライド係合部120の下側に位置している。
【0030】
以上のように構成した本実施形態の車両用シート1によれば、シート本体10は、第1スライド機構20により車両前後方向へスライド可能であるとともに、回転機構30により車両正面向きの位置とドア開口部K側に向いた横向き位置との間で回転可能となっている。また、シート本体10は、回転機構30によりドア開口部K側に向いた横向き状態で第3スライド機構50により車両幅方向にスライド可能であるとともに、第2スライド機構40を備えた昇降機構80によって昇降しつつ車室内外間を移動可能となっている。
このような各種の移動機構20,30,40,50,80を備えた構成に加えて、シート本体10には3点式のシートベルト90が装備されている。このため、車両前突等によりシートベルト90を介してシート本体10に衝撃的なシートベルト荷重が付加されると、このシートベルト荷重はシート本体10を前方斜め上方へ変位させる外力として作用する。
【0031】
しかしながら、本実施形態の車両用シート1によれば、シート本体10に上記シートベルト荷重が付加されると、第3スライドロック用フック140が第3スライド係合部140に係合し、回転ロック用フック100が回転係合部110に係合し、かつ第1スライドロック用フック101が第1スライド係合部120に係合し、これによりシート本体10と車両フロアFとの間が剛体結合される。このため、シートベルト荷重は、第3スライド機構50、第2スライド機構40、回転機構30および第1スライド機構20等の機構部には付加されず、これらを回避して直接車両フロアFで強固に受けられる。
これに対して、シートベルト荷重が付加されない通常の状態では、第1スライドロック用フック101と第1スライド係合部120との間、回転ロック用フック100と回転係合部110との間、第3スライドロック用フック140と第3スライド係合部130との間に対して、何ら解除操作をすることなく上記各機構20,30,40,50,80を作動させることができるので、これら各機構20,30,40,50,80操作性が損なわれることがない。
【0032】
以上説明した実施形態には種々変更を加えて実施することができる。例えば、回転ロック用フック100と第1スライドロック用フック101とが、上支持板部103および下支持板部104を介して一体に設けられた構成を例示したが、それぞれ別体で用意したものを結合してもよいし、第1スライドベース23の異なる部位に取り付ける構成としてもよい。
また、シート本体10を車両前後方向にスライドさせる第1スライド機構20と車両正面向きの着座位置とドア開口部側へ向いた横向き位置との間で回転させるための回転機構30のみを備え、シート本体10を車両幅方向へ移動させる昇降機構80および第3スライド機構50を備えていない構成の場合には、第3スライドロック用フック140および第3スライド係合部130を省略することができる。
さらに、第1スライド機構20、回転機構30、第2スライド機構40、第3スライド機構50について、それぞれ駆動モータ24a,32,71,52aを駆動源として作動する構成(電動式)を例示したが、これら特別の駆動源を有しない手動式の場合にも同様の各フック100,101,140およびこれらに対応して各係合部110,120,130を設けることにより同様の作用効果を得ることができる。
さらに、車両Mの第2列席左側のシートに適用した車両用シート1を例示したが、助手席、運転席等その他のポジションのシートに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の実施形態に係る車両用シートを助手席に適用した車両の平面図である。
【図2】車両用シートを車両後ろ側(図1中矢印(2)方向、以下同じ)から見た図である。本図は、シート本体が車両正面向きの着座位置に位置する状態を示している。
【図3】シート本体が車両正面向きに位置する状態における車両用シートを車室外側から見た側面図である。
【図4】シート本体が車両正面向きに位置する状態において、回転ロック用フックが回転係合部の係合孔内に進入し、第1スライドロック用フック101が第1スライド係合部120の下側に位置する状態を示す斜視図である。
【図5】車両用シートを車両後ろ側から見た図である。本図は、シート本体がドア開口部側に向けられた状態を示している。
【図6】車両用シートを車両後ろ側から見た図である。本図は、シート本体が第3スライド機構により車室外側にスライドした状態を示している。
【図7】車両用シートを車両後ろ側から見た図である。本図は、シート本体が昇降機構により車室外側へ移動し、かつ路面に近い高さまで下降した状態を示している。
【図8】昇降機構および第2スライド機構の側面図である。
【図9】図8における(9)−(9)線矢視図であって、昇降機構の縦断面図である。
【図10】第3スライド機構およびシート本体の側面図である。
【図11】第3スライド機構を図10中矢印(11)方向から見た前面図である。
【図12】3点式シートベルトを備えたシート本体の正面図である。
【符号の説明】
M…車両
K…ドア開口部
1…車両用シート
10…シート本体
20…第1スライド機構
23…第1スライドベース
30…回転機構
31…回転ベース
40…第2スライド機構
41…第2スライドベース
44…四節リンク機構、44b…外側リンクアーム
50…第3スライド機構
70…駆動装置
80…昇降機構
90…シートベルト
100…回転ロック用フック
101…第1スライドロック用フック
110…回転係合部
120…第1スライド係合部
130…第3スライド係合部
140…第3スライドロック用フック

Claims (3)

  1. シートベルトを取り付けたシート本体と、車両フロア上に設置され、前記シート本体を車両前後方向に移動させる第1スライド機構と、該第1スライド機構により車両前後方向に移動する第1スライドベース上に設置され、前記シート本体を水平方向に回転させる回転機構と、該回転機構により回転する回転ベース上に設置され、該回転機構により前記ドア開口部側に向けられた状態のシート本体を第2スライド機構によりシート前後方向へ移動させつつ昇降させる昇降機構を備えた車両用シートであって、
    前記第1スライドベースに水平支持板部を側方へ張り出して設け、該水平支持板部に、上方に延びる上支持板部と下方に延びる下支持板部を相互に一体に設け、前記上支持板部の上端部に、前記第2スライド機構によりシート前後方向へ移動する第2スライドベースに設けた回転係合部に係合可能である回転ロック用フックを設け、前記下支持板部の下端部に、前記車両フロア側に設けたスライド係合部に係合可能であるスライドロック用フックを設け、
    前記シート本体にシートベルト荷重が入力されない状態では、前記回転係合部に前記回転ロック用フックが係合されず、かつ前記スライド係合部に前記スライドロック用フックが係合されない非係合状態に保持されて、前記回転機構および前記第1スライド機構の各機能が確保される一方、前記シート本体にシートベルト荷重が入力されると、前記回転ロック用フックが前記回転係合部に係合するとともに、前記スライドロック用フックが前記スライド係合部に係合して、前記シート本体と前記車両フロアとの間が剛体結合されることにより前記シートベルト荷重が前記車両フロアで受けられる構成とした車両用シート。
  2. 請求項1記載の車両用シートであって、シートベルトのバックルがシート本体の室内側の側部に取り付けられ、前記シートベルトのアンカとリトラクタがシート本体の室外側の側部に取り付けられており、これに対応して回転ロック用フックとスライドロック用フックを室外側の側部に配置して、前記回転ロック用フックと回転係合部との係合、および前記スライドロック用フックとスライド係合部との係合をシート本体の室外側の側部について行う構成とした車両用シート。
  3. シートベルトを取り付けたシート本体と、車両フロア上に設置され、前記シート本体を車両前後方向に移動させる第1スライド機構と、該第1スライド機構により車両前後方向に移動する第1スライドベース上に設置され、前記シート本体を車両正面向きの着座位置とドア開口部側に向いた横向き位置との間で水平方向に回転させる回転機構と、該回転機構により回転する回転ベース上に設置され、該回転機構により前記ドア開口部側に向けられた状態のシート本体を第2スライド機構によりシート前後方向へ移動させつつ昇降させる昇降機構と、該昇降機構と前記シート本体との間に設置され、該シート本体をシート前後方向にスライドさせる第3スライド機構を備え、
    前記昇降機構は、前記第2スライド機構によりシート前後方向へ移動する第2スライドベースと、該第2スライドベースに基端部が上下に傾動可能に支持され、先端部に前記第3スライド機構を介してシート本体を支持し、前記第2スライドベースの移動により上下に傾動して前記シート本体を昇降させるリンクアームを備えた車両用シートであって、
    前記第1スライドベースに、前記第2スライドベースに設けた回転係合部に係合可能である回転ロック用フックと、前記車両フロア側に設けた第1スライド係合部に係合可能である第1スライドロック用フックを設けるとともに、前記第3スライド機構によりシート前後方向に移動する第3スライドベースに、前記リンクアームに設けた第3スライド係合部に係合可能である第3スライドロック用フックを設け、
    前記シート本体にシートベルト荷重が入力されない状態では、前記回転係合部に前記回転ロック用フックが係合されず、かつ前記第1スライド係合部に前記第1スライドロック用フックが係合されず、かつ前記第3スライド係合部に前記第3スライドロック用フックが係合されない非係合状態に保持されて、前記回転機構、前記昇降機構および前記第1〜第3スライド機構の各機能が確保される一方、前記シート本体にシートベルト荷重が入力されると、前記回転ロック用フックが前記回転係合部に係合し、前記第1スライドロック用フックが前記第1スライド係合部に係合し、前記第3スライドロック用フックが前記第3スライド係合部に係合して、前記シート本体と前記車両フロア間が剛体結合されることにより前記シートベルト荷重が前記車両フロアで受けられる構成とした車両用シート。
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