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JP3933264B2 - 除湿空調システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、除湿空調システム、特に室内プール施設などのように高湿度の空間を除湿するための除湿空調システムに係り、ヒートポンプによる冷却除湿とデシカントによる吸着除湿を併せて行い、かつヒートポンプからの放熱によってデシカントの再生処理を連続的に行えるようにした空調システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
図7は、室内プール施設の内部空間用の除湿装置として米国で普及している従来技術であり、これは、圧縮機260と凝縮器220と蒸発器240と膨張弁250を主な構成機器として蒸気圧縮式冷凍サイクルをなす冷媒経路Aと、蒸発器240で前記冷媒経路Aと熱交換し送風機101と顕熱交換器150を主な構成機器として室内空気を取り入れて冷却除湿して室内に戻す処理空気経路Bと、凝縮器220で前記冷媒経路Aと熱交換しプール水を取り入れて加熱してプールに戻す水経路Cとによって構成されている。
【0003】
これにより、プール室内の高湿度の空気を取り入れて処理空気とし、顕熱交換器150で除湿後の処理空気と熱交換して予冷却したのち蒸発器240で露点温度以下に冷却して除湿し、除湿後の処理空気を前記顕熱交換器150で除湿前の処理空気と熱交換してレヒート加熱して室内に供給するとともに、凝縮器220において処理空気の冷却によって生じる蒸気圧縮式冷凍サイクルの放熱でプール水を加熱してプールに戻すことによって、室内の除湿と、プール水の加熱を同時に行っていた。そして、除湿した処理空気は主に、ペリメータ部分の窓や壁が結露しないように窓や壁に沿って、スリットダクトから室内に還流させていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の技術においては、処理空気の状態変化は図8の湿り空気線図に示すようになる。すなわち、平均的なプール室内の環境である気温28〜30℃、相対湿度80〜90%の高湿度の室内から取り入れた処理空気(状態K)は、顕熱交換器150で除湿後の処理空気(状態M)と熱交換して予冷却(状態L)されたのち蒸発器240で露点温度以下に冷却除湿され(状態M)、除湿後の処理空気は前記顕熱交換器150で除湿前の処理空気と熱交換しレヒート加熱されて(状態N)室内に供給されている。従って、室内空気(状態K)と給気(状態N)との間には、ヒートバランスから、冷凍サイクルによって蒸発器240で状態Lから状態Mに冷却されるエンタルピ落差ΔQに等しいエンタルピ落差が生じる。すなわちエンタルピ落差ΔQだけ室内空間は冷房される。従って、ペリメータ部分のスリットダクトからは室内気温よりも低い気温の空気が供給されることになり、この部分にプールから上がった人が入ると肌寒く感じる問題があった。
【0005】
また、給気(状態N)によってペリメータの窓や壁の結露を防止するためには、外気の気温が低下するほど給気の露点温度(T1)を下げる必要があり、そのためには蒸発器240の冷却能力ΔQを外気温が低下するほど増加させることが必要になる。従って、外気温が下がるほど、室内(状態K)と給気(状態N)のエンタルピ落差即ち冷房効果が大きくなってペリメータ部分の肌寒く感じる不快感がさらに増す欠点があった。さらに、厳冬季に外気温が特に低くて露点温度を0℃近くまで下げる必要がある場合には、冷凍サイクルの蒸発温度が氷点下まで下がって、蒸発器240の伝熱面に霜が付いて連続運転が不能になる欠点があった。
【0006】
この発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、冷房が不適当な状況下では、高湿度の室内から取り入れた空気を、処理空気と再生空気とに分岐し、処理空気はヒートポンプで冷却除湿したのちデシカントでさらに吸着除湿を行って乾球温度を室温よりも上げ、露点温度をさらに低下させた後、室内に供給するとともに、冷房が適当な状況下では、デシカントの作用を弱めるか、停止させつつ、冷房効果と除湿効果を発生させることによって、年間を通じて快適な環境を提供することができ、かつペリメータゾーンの結露防止能力が高く、かつ省エネルギな除湿空調システムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するためになされたもので、処理空気中の水分を吸着し再生空気によって再生されるデシカントと、処理空気を低熱源、再生空気を高熱源として動作するヒートポンプとを備え、室内空気を取り入れて、処理空気と再生空気とに分岐し、処理空気をヒートポンプの低熱源によって冷却除湿したのちデシカントで吸着除湿して室内に供給するとともに、再生空気をヒートポンプの高熱源で加熱したのちデシカントを通過させてデシカントを再生することを特徴とする除湿空調システムである。
【0008】
このように、高湿度の室内から取り入れた空気を、処理空気と再生空気とに分岐し、処理空気はヒートポンプで冷却除湿したのちデシカントでさらに吸着除湿を行って乾球温度を室温よりも上げた後、室内に供給することによって冷房作用による不快感がなくなり、かつ除湿能力が高くなり、かつ再生空気をヒートポンプからの放熱を再利用して加熱してデシカントを再生することによって省エネルギ効果が得られる。
【0009】
また、デシカント再生後の再生空気を乾燥用の温風として特定の箇所に供給することを特徴とする除湿空調システムである。このように、デシカント再生後であっても相対湿度が高くなく、しかも乾球温度が高い再生空気を温風として特定の箇所に供給することによって、乾燥用途に有効に活用できる。
【0010】
また、デシカント再生後の再生空気を屋外に排気することを特徴とする除湿空調システムである。このように、絶対湿度が室内及び室外よりも高いデシカント再生後の再生空気を屋外に排気することによって、室内の除湿作用を高くすることができる。
【0011】
また、本発明は、処理空気中の水分を吸着し再生空気によって再生されるデシカントと、圧縮機と、処理空気と熱交換する蒸発器と、デシカント再生前の再生空気と熱交換する第1の凝縮器と、再生空気以外の熱媒体と熱交換する第2の凝縮器とを有するヒートポンプとを備え、室内空気を取り入れて、少なくともその一部を処理空気として蒸発器で冷却除湿したのちデシカントを通過させて室内に供給するとともに、ヒートポンプの圧縮機によって圧縮した冷媒の一部を前記第1の凝縮器に導いて再生空気を加熱するとともに、圧縮した冷媒の他の一部を前記第2の凝縮器に導いて再生空気以外の熱媒体を加熱することを特徴とする除湿空調システムである。
【0012】
また、本発明は、処理空気中の水分を吸着し再生空気によって再生されるデシカントと、圧縮機と、処理空気と熱交換する蒸発器と、デシカント再生前の再生空気と熱交換する第1の凝縮器と、再生空気以外の熱媒体と熱交換する第2の凝縮器とを有するヒートポンプとを備え、室内空気を取り入れて、少なくともその一部を処理空気として蒸発器で冷却除湿するとともに、ヒートポンプの圧縮機によって圧縮した冷媒を前記第1の凝縮器に導いて再生空気を加熱してデシカントを再生し、冷却除湿した処理空気をデシカントで除湿したのち室内に供給する第1の運転形態と、圧縮した冷媒を前記第2の凝縮器に導いて再生空気以外の熱媒体を加熱することによって再生空気を加熱せず、冷却除湿した処理空気をデシカントで除湿せずに室内に供給する第2の運転形態と、ヒートポンプの圧縮機によって圧縮した冷媒の一部を前記第1の凝縮器に導いて再生空気を加熱して冷却除湿した処理空気をデシカントで除湿したのち室内に供給するとともに、圧縮した冷媒の他の一部を前記第2の凝縮器にも導いて再生空気以外の熱媒体を加熱する第3の運転形態とを選択的に運転可能であることを特徴とする除湿空調システムである。
【0013】
また、前記第2の運転形態の際に、再生空気の送風機を停止することを特徴とする除湿空調システムである。このように、冷房運転の際には再生空気の送風機を停止することによって省エネルギな運転ができる。
【0014】
また、前記室内空気は室内プールの空間内の空気であり、前記第2の凝縮器で熱交換する再生空気以外の熱媒体はプール水であることを特徴とする除湿空調システムである。このように、ヒートポンプからの放熱をプール水などの加熱にも用いることによって、デシカントの除湿能力を調節して処理空気の吸着熱による温度上昇を変化させ、必要に応じて冷房効果を発生させることができ、夏期においても空調空間を快適に保つことができる。
【0015】
また、デシカントで除湿後の処理空気を建物のペリメータゾーンに供給することを特徴とする除湿空調システムである。このように、最も湿度が下がりかつ乾球温度が高くなった処理空気をペリメータゾーンに送ることで、ペリメータゾーンの結露防止と不快感を防止することができる。
【0016】
また、ヒートポンプとして蒸気圧縮式ヒートポンプを用いることを特徴とする除湿空調システムである。また、ヒートポンプとして吸収式ヒートポンプを用いてもよい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る除湿空調システムの実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の参考例に係る除湿空調システムの設置状況を示す図である。図1において、室内プール40を囲む空調空間1には、図2に基本構成を示すような内部にデシカントを有する除湿空調機10を設置し、該除湿空調機10は空気取り入れ口12から室内空気を取り入れるようになっている。取り入れられた室内空気は、この除湿空調機10の内部では、処理空気と再生空気に分岐し、処理空気をデシカントで除湿し、除湿を行った処理空気の出口はダクト50を介して、窓20,25に隣接するペリメータに設置されたスリットダクト30,35に接続している。一方、該除湿空調機10のデシカントの再生を行った再生空気の出口14は、乾燥用の温風として空調空間に局所的に吹き出すよう構成している。また、該除湿空調機10の内部で冷却除湿によって発生するドレンは経路16を介して、排水溝60に接続するよう構成している。
【0018】
図2は図1に示した除湿空調機10の基本構成を示す説明図である。図2において、除湿空調機10は蒸気圧縮式ヒートポンプ及び処理空気と再生空気の2種類の空気系統とから構成されている。このうち蒸気圧縮式ヒートポンプの部分は、圧縮機260、低熱源熱交換器(蒸発器)240、高熱源熱交換器(凝縮器)220、膨張弁250を構成機器として蒸気圧縮式冷凍サイクルを構成したものである。そして低熱源熱交換器(蒸発器)240において低圧の冷媒蒸気がデシカント102通過前の処理空気と熱交換関係をなし、かつ高熱源熱交換器(凝縮器)220において高圧の冷媒蒸気がデシカント通過前の再生空気と熱交換関係をなすよう構成したものである。
【0019】
また、空気系統は次のように構成されている。デシカントロータ102は、デシカントが、処理空気経路Aと再生空気経路Bの双方に跨がってアクチュエータ103の作用によって所定のサイクルで回転するよう構成されている。処理空気経路Aは、空調空間1と低熱源熱交換器(蒸発器)240と経路110を介して接続し、低熱源熱交換器(蒸発器)240の処理空気の出口は室内空気導入用の送風機101の吸い込み口と経路111を介して接続し、送風機102の吐出口はデシカントロータ102の水分吸着工程を行う第1の区画と経路112を介して接続し、デシカントロータ102の処理空気の出口は給気口(図1中の符号50で示す)となる処理空気出口と経路113を介して接続して形成する。
【0020】
一方、再生空気経路Bは、空調空間1と高熱源熱交換器(凝縮器)220とを経路120を介して接続し、再生空気の高熱源熱交換器(凝縮器)220の出口は室内空気導入用の送風機140の吸い込み口と経路121を介して接続し、送風機140の吐出口はデシカントロータ102の再生空気の再生工程を行う第2の区画と経路122を介して接続し、デシカントロータ102の再生空気の再生工程を行う第2の区画の再生空気の出口は室内空間の局所的吹き出し口(図1中の符号14で示す)と経路123を介して接続して再生空気の経路を形成する。なお図中、丸で囲ったアルファベットK〜Sは、図3と対応する空気の状態を示す記号である。
【0021】
上述のように構成された除湿空調機10の蒸気圧縮式冷凍サイクル部分のサイクルを次に説明する。冷媒は低熱源熱交換器(蒸発器)240で処理空気から蒸発潜熱を奪って蒸発し(状態a:約10℃、4.2kg/cm2)、経路206を経て圧縮機260に吸引され圧縮される。圧縮された冷媒(状態b:約80℃、19.3kg/cm2)は経路202を経て高熱源熱交換器(凝縮器)220に流入し冷媒の過熱蒸気の顕熱および凝縮潜熱をデシカント102に流入前の再生空気に放出して凝縮した(状態c:約65℃、19.3kg/cm2)のち経路203を経て膨張弁250に至りそこで減圧膨張した(状態d:約10℃、4.2kg/cm2)後、経路205を経て低熱源熱交換器(蒸発器)240に還流する。このように蒸気圧縮式冷凍サイクル部分のサイクルは、従来ルームエアコン等の空調分野で通常行われているものと技術上大きな差異はなく、作用温度と圧力のみが異なる。
【0022】
次に、前述のように構成されたヒートポンプを熱源とする除湿空調機10の動作を図3の湿り空気線図を参照して説明する。室内空気から導入され分岐された処理空気(状態K)は経路110を経て低熱源熱交換器(蒸発器)240に至り、ヒートポンプの作用により冷却除湿され乾球温度および絶対湿度が低下する(状態L)。冷却除湿された処理空気は送風機101に吸引され昇圧され、経路112 を経てデシカントロータ102の水分吸着工程を行う第1の区画 に送られ、デシカントロータ102の吸湿剤で空気中の水分を吸着されて更に絶対湿度が低下するとともに吸着熱によって空気は温度上昇する(状態M)。絶対湿度が下がり温度が上昇した空気は、経路113を経て給気として空調空間のペリメータに送られる。なお、低熱源熱交換器(蒸発器)で冷却除湿される際に処理空気から分離された結露水(ドレン)は、ドレンパン245に集められ、図1に示した経路16を経て、排水溝60に捨てられる。
【0023】
一方、デシカントロータ102の再生は次のように行われる。室内空気から導入され分岐された再生空気(状態K)は経路120を経て高熱源熱交換器(凝縮器)220に至り、ここで冷媒蒸気によって加熱されて温度上昇し(状態R)、経路121を経て送風機140 に吸引され昇圧され、経路122を経てデシカントロータ102の再生工程を行う第2の区画を通過してデシカントロータ102の水分を除去し再生作用を行い(状態S)、経路123を経て、室内空間1の局所的吹き出し口(図1中の符号14で示す)から室内に戻される。
【0024】
このようにして、処理空気の冷却除湿およびデシカントによる吸着除湿とデシカントの再生をくりかえし行うことによって、除湿運転を行うことができるが、この際、室内に供給される空気の状態は、従来技術と比べて大きく異なる。この点について以下に説明する。
【0025】
平均的なプール室内の環境である気温28〜30℃、相対湿度80〜90%の高湿度の室内から取り入れた処理空気(状態K)は、蒸発器240で露点温度(24〜28℃)以下に冷却除湿され(状態L)、乾球温度が低下し(15〜20℃)、絶対湿度が低下する(11〜15 g/kg)。この状態では処理空気の露点温度はヒートポンプの低熱源温度(蒸発温度)よりも高くなるが、さらにデシカントロータ102の除湿剤によって吸着除湿することにより、湿り空気線図では、ほぼ等エンタルピ線上を移動して乾球温度が上昇する(35〜40℃)とともに、絶対湿度も低下(3.5〜6g/kg)する。
【0026】
このようにして得られる処理空気は気温が室内よりも高く、また露点温度は蒸発温度より大幅に低くなり(0〜6℃)かつ露点と乾球温度との温度差が大きい。従って、このように除湿された空気を、図1に示すようなペリメータのスリットダクトから吹き出すことによって、外気温度が低くても、窓等の外壁部に結露を生じにくくなり、また、スリットダクトから吹き出す空気の噴流内にプールから上がった人が入っても、乾球温度が高いため肌寒く感じないで済む。また、厳冬季に外気温が特に低くて露点温度を0℃近くまで下げる必要がある場合でも、冷凍サイクルの蒸発温度を氷点下まで下げる必要がなく、従って蒸発器240の伝熱面に霜が付かず連続運転が可能になる。
【0027】
さらに、デシカント再生後の再生空気は、絶対湿度は上昇する(25〜30g/kg)ものの、乾球温度が高い(40〜45℃)ため、相対湿度が50%前後となり、乾燥用の温風としても利用できるので、プールから上がった人のためにスポット風として、局所的に供給してもよく、また室内からの除湿能力を高めたい場合には外部に排気し、代りに絶対湿度の低い外気を取り入れても差し支えない。また図4の設置形態のように、デシカントを出た再生空気をダクト14、給気口71を介して、乾燥用の部屋70に供給したのち、排気口72から外部に排気しても差し支えない。また、排気と取り入れる外気との間に顕熱熱交換器を用いても差し支えない。このように再生空気も乾燥用として利用することができる。
【0028】
次に、本実施の形態のエネルギ効率について説明する。本実施の形態では、図3において、冷却除湿して処理空気から取り出した熱量(ΔQ)は外部にそのまま捨てずに、ヒートポンプで昇温して再生空気の加熱に用いるため、熱の多重効用化が図れる。すなわち、ヒートポンプの駆動エネルギ(圧縮機入力)はまず冷却除湿効果を発生させ、その時取り出した熱とヒートポンプの駆動エネルギ(圧縮機入力)は熱エネルギとして再生空気の加熱に再度用いられて、デシカントによる吸着除湿効果を発生する。従って、ヒートポンプの駆動エネルギ(圧縮機入力)が少なくて済み、省エネルギ効果がある。本実施の形態ではヒートポンプとして蒸気圧縮式ヒートポンプを事例として示したが、吸収ヒートポンプを用いても同様の省エネルギ効果が得られる。
【0029】
図5は本発明に係る除湿空調システムの設置形態を示す図であり、図6は図5中に示した除湿空調機10の基本構成を示す説明図である。この実施の形態では、除湿空調機10は、圧縮機260と、処理空気と熱交換する蒸発器240と、デシカント再生前の再生空気と熱交換する第1の凝縮器220と、プール水と熱交換する第2の凝縮器230とを有するヒートポンプとを備えている。これにより、室内空気を取り入れて、少なくともその一部を処理空気として蒸発器240で冷却除湿したのちデシカントを通過させて室内に供給するとともに、ヒートポンプの圧縮機260によって圧縮した冷媒の一部を前記第1の凝縮器220に導いて再生空気を加熱するとともに、圧縮した冷媒の他の一部を前記第2の凝縮器230にも導いてプール水を加熱するようにしている。そして、図5に示すように、除湿空調機10の第2の凝縮器230には経路17,18を介してプール水が流動して冷媒と熱交換するようになっている。
【0030】
また、本実施の形態では、制御機器としてコントローラ301を設け、該コントローラ301は、室内空間の温度湿度の状態や外気温度を検出して、冷房または暖房の負荷状況を判断している。これにより、冷媒の流量調節用の3方弁270及びデシカントロータ102のアクチュエータ103及び各送風機101、140を制御して、参考例に係る実施の形態で示した、冷房効果がなく肌寒さを感じない運転形態のみでなく、状況に応じて、適度な冷房効果を発生させることができるようになっている。
【0031】
以下に、上記の実施の形態の除湿空調システムの作用について説明する。まず、第1の運転形態においては、冷媒の流量調節用の3方弁270の経路207側を閉じて、全ての冷媒を第1の凝縮器220に導くようにするが、この場合には、参考例に係る実施の形態と同じになるので、説明を省略する。
【0032】
次に、冷媒の流量調節用の3方弁270の経路202側を閉じて、全ての冷媒を第2の凝縮器20に導く第2の運転形態について説明する。この場合、第1の凝縮器220は作用せず、従って再生空気が加熱されないので、デシカントを再生することができないため、デシカントの除湿作用がなくなり、処理空気は吸着除湿されない。従って、図3の湿り空気線図の状態Mと状態Lが等しくなって、給気が室温よりも低くなり、図7に示した従来例と同様に冷房作用が得られる。このような第2の運転形態は、夏期など冷房することが適当な時期に用いる。なお、プール水の温度が上昇して好ましくない場合には、冷却水を用いて外部のクーリングタワーに第2の凝縮器20の熱を排出しても差し支えなく、また第2の凝縮器を空冷式として、外部に設置しても差し支えない。また、再生空気を流動させる必要がない場合には、省エネルギのためコントローラ301によって、送風機140およびデシカントロータ102のアクチュエータ103を停止させても差し支えない。
【0033】
次に、冷媒の流量調節用の3方弁270の経路202側および経路207側を両方開けて、第1の凝縮器220および第2の凝縮器20を共に作用させる第3の運転形態について説明する。この場合、第1の凝縮器220における再生空気への加熱作用が弱くなり、従ってデシカントの除湿能力が低下し、処理空気の吸着除湿作用が低下して図3における状態Mが状態Lに近づき、処理空気の出口の乾球温度が第1の運転形態よりも低くなる。従って、第1の運転形態と第2の運転形態の中間的な冷房効果を抑制した運転が可能である。従って、中間期にも、快適な室内環境が得られる。
【0034】
このように、暖房が必要な時期にはデシカントを作動させて乾球温度を室温よりも上げた後、室内に供給することによって冷房作用を防止しかつ省エネルギな運転形態ができるほか、冷房が必要な時期にはヒートポンプからの放熱をプール水の加熱に用いることによって、デシカントの除湿能力を停止して処理空気の吸着熱による温度上昇を止め、冷房効果を発生させる運転形態を採ることができ、またその中間的運転形態も採ることができるので、年間を通じて室内プール施設の空調空間を快適に保つことができる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、冷房が不適当な状況下では、高湿度の室内から取り入れた空気を、処理空気と再生空気とに分岐し、処理空気はヒートポンプで冷却除湿したのちデシカントでさらに吸着除湿を行って乾球温度を室温よりも上げ、露点温度をさらに低下させた後、室内に供給するとともに、冷房が適当な状況下では、デシカントの作用を弱めるか、停止させつつ、冷房効果と除湿効果を発生させることによって、年間を通じて、快適で、かつペリメータゾーンの結露防止能力が高く、かつ省エネルギな除湿空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の参考例に係る除湿空調システムの基本構成を示す説明図である。
【図2】図1に示した除湿空調機の基本構成を示す説明図である。
【図3】ヒートポンプを熱源とする除湿空調機の動作を説明する湿り空気線図である。
【図4】図1に示す除湿空調システムの変形例を示す説明図である。
【図5】 本発明に係る除湿空調システムの実施の形態を示す説明図である。
【図6】図5に示した除湿空調機の基本構成を示す説明図である。
【図7】従来の除湿空調機を示す説明図である。
【図8】図7に示す除湿空調機の動作を説明する湿り空気線図である。
【符号の説明】
1 空調空間
10 除湿空調機
12 空気取り入れ口
30,35 スリットダクト
40 室内プール
101 送風機
102 デシカントロータ
220 高熱源熱交換器(凝縮器)
240 低熱源熱交換器(蒸発器)
250 膨張弁
260 圧縮機
A 処理空気経路
B 再生空気経路

Claims (4)

  1. 処理空気中の水分を吸着し再生空気によって再生されるデシカントと、圧縮機と、処理空気と熱交換する蒸発器と、デシカント再生前の再生空気と熱交換する第1の凝縮器と、再生空気以外の熱媒体と熱交換する第2の凝縮器とを有するヒートポンプとを備え、
    室内空気を取り入れて、少なくともその一部を処理空気として蒸発器で冷却除湿したのちデシカントを通過させて室内に供給するとともに、ヒートポンプの圧縮機によって圧縮した冷媒の一部を前記第1の凝縮器に導いて再生空気を加熱するとともに、圧縮した冷媒の他の一部を前記第2の凝縮器に導いて再生空気以外の熱媒体を加熱することを特徴とする除湿空調システム。
  2. 処理空気中の水分を吸着し再生空気によって再生されるデシカントと、圧縮機と、処理空気と熱交換する蒸発器と、デシカント再生前の再生空気と熱交換する第1の凝縮器と、再生空気以外の熱媒体と熱交換する第2の凝縮器とを有するヒートポンプとを備え、
    室内空気を取り入れて、少なくともその一部を処理空気として蒸発器で冷却除湿するとともに、ヒートポンプの圧縮機によって圧縮した冷媒を前記第1の凝縮器に導いて再生空気を加熱してデシカントを再生し、冷却除湿した処理空気をデシカントで除湿したのち室内に供給する第1の運転形態と、
    圧縮した冷媒を前記第2の凝縮器に導いて再生空気以外の熱媒体を加熱することによって再生空気を加熱せず、冷却除湿した処理空気をデシカントで除湿せずに室内に供給する第2の運転形態と、
    ヒートポンプの圧縮機によって圧縮した冷媒の一部を前記第1の凝縮器に導いて再生空気を加熱して冷却除湿した処理空気をデシカントで除湿したのち室内に供給するとともに、圧縮した冷媒の他の一部を前記第2の凝縮器にも導いて再生空気以外の熱媒体を加熱する第3の運転形態とを選択的に運転可能であることを特徴とする除湿空調システム。
  3. 前記第2の運転形態の際に、再生空気の送風機を停止することを特徴とする請求項に記載の除湿空調システム。
  4. 前記室内空気は室内プールの空間内の空気であり、前記第2の凝縮器で熱交換する再生空気以外の熱媒体はプール水であることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の除湿空調システム。
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