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JP3933064B2 - ハイブリッド変速機の変速制御装置 - Google Patents

ハイブリッド変速機の変速制御装置 Download PDF

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JP3933064B2
JP3933064B2 JP2003061558A JP2003061558A JP3933064B2 JP 3933064 B2 JP3933064 B2 JP 3933064B2 JP 2003061558 A JP2003061558 A JP 2003061558A JP 2003061558 A JP2003061558 A JP 2003061558A JP 3933064 B2 JP3933064 B2 JP 3933064B2
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  • Hybrid Electric Vehicles (AREA)
  • Hydraulic Clutches, Magnetic Clutches, Fluid Clutches, And Fluid Joints (AREA)
  • Structure Of Transmissions (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジン等の主動力源とモータ/ジェネレータとを搭載したハイブリッド車両に有用なハイブリッド変速機、特に、これら主動力源とモータ/ジェネレータとの間における差動装置により無段変速動作を行わせることが可能なハイブリッド変速機の変速制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種ハイブリッド変速機としては、例えば特許文献1に記載のように、遊星歯車組により構成した2自由度の差動装置を具え、該差動装置における回転メンバにそれぞれ主動力源であるエンジンからの入力、駆動系への出力、および2個のモータ/ジェネレータを結合して無段変速を可能とし、更に、所定の回転メンバをローブレーキにより適宜固定可能として駆動力発生源である主動力源やモータ/ジェネレータからのトルクを増幅し得るようにしたものが知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−094973号公報
【0004】
このようなハイブリッド変速機においては、主動力源からの動力を用いず両モータ/ジェネレータからの動力のみにより駆動系への出力を決定するEVモードと、ローブレーキを締結した状態で両モータ/ジェネレータからの動力のみにより駆動系への出力を決定するEV-LBモードと、主動力源からの動力および両モータ/ジェネレータからの動力により駆動系への出力を決定するEIVTモードと、ローブレーキを締結した状態で主動力源からの動力および両モータ/ジェネレータからの動力により駆動系への出力を決定するEIVT-LBモードとの4動作モードが考えられる。
【0005】
各動作モードは、全ての領域で有用であるという訳ではなく、各々得意な領域があり、車速VSP、要求駆動力F、およびモータ/ジェネレータ用バッテリの蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)に応じて得意な領域が定められる。
例えば、EVモード領域は車速VSPおよび要求駆動力Fの二次元座標上に示すと図9のごときものとなり、また、EV-LBモード領域は車速VSPおよび要求駆動力Fの二次元座標上に示すと図10のごときものとなり、EIVTモード領域は車速VSPおよび要求駆動力Fの二次元座標上に示すと図11のごときものとなり、EIVT-LBモード領域は車速VSPおよび要求駆動力Fの二次元座標上に示すと図12のごときものとなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで上記の4動作モード領域を、車速VSPおよび要求駆動力Fの同じ二次元座標上にまとめて示すと図14のごときものとなり、EV-LBモード領域およびEIVT-LBモード領域間、つまり、車速VSPがVSP2未満で、且つ、要求駆動力FがF1以上の箇所に、どの動作モードにも属さない空白領域EMが発生することがある。
この空白領域EMは概念的に示すと図16または図17のごとくに表され、図16は、バッテリ蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)が大きい時の空白領域EMを示し、図17は、バッテリ蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)が小さい時の空白領域EMを示す。
【0007】
バッテリ蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)が大きい場合は図16に示すように、モータ/ジェネレータのみによる電気走行を行うEV-LBモードがVSP=0〜VSP1まで採用可能であるから、空白領域EMはEIVT-LBモード可能下限車速VSP2とVSP1との間における小さな領域となる。
しかし、バッテリ蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)が小さい場合は図17に示すように、モータ/ジェネレータのみによる電気走行を行うEV-LBモードを採用不能となり、空白領域EMはVSP=0〜VSP2間の大きな領域となる。
【0008】
しかして、車速VSPがVSP2未満で、且つ、要求駆動力FがF1以上である低車速、大駆動力の領域は、VSP=0から大きな駆動力で車両を速やかに発進させる場合や、高速道路への進入を速やかに完了させる必要がある場合などを含む重要な領域であり、
かかる領域がどの動作モードにも属さない空白領域となる可能性があるのでは、車速VSPがVSP2に上昇するまでの間、要求通りに車両を加速させることができなくし、速やかな発進や高速度路への進入を妨げるという問題を生ずる。
【0009】
なお、EIVT-LBモード領域の下限車速VSP2を低下させて空白領域EMを小さくすることが考えられるが、このEIVT-LBモードでは車速VSPとエンジン回転数とが比例関係にあり、また、エンジン回転数には下限値(例えば800rpm)および上限値(例えば8000rpm)が存在して、エンジンは下限回転数(例えば800rpm)よりも低い回転数で運転させることができないことから、EIVT-LBモード領域の下限車速VSP2を低下させることができない。
【0010】
本発明は、上記の空白領域EMに図13(図12に対応)、図15(図14に対応)、図18,19(図16,17に対応)のごとくEIVT-LBモード領域を拡張して拡張EIVT-LBモード領域を設定し、これにより空白領域EMをなくして加速性能の低下に関する問題を解消することを主たる目的とし、この拡張EIVT-LBモード領域でエンジン回転数を下限回転数よりも低くする必要なしにEIVT-LBモードでの動作が可能となるよう構成して上記の目的を実現可能にしたハイブリッド変速機の変速制御装置を提案しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的のため本発明によるハイブリッド変速機の変速制御装置は、請求項1に記載のごとくに構成する。
ハイブリッド変速機は、2自由度の差動装置を構成する回転メンバのうち、共線図上の内側に位置する2個の回転メンバの一方にクラッチを介して主動力源からの入力、他方に駆動系への出力をそれぞれ結合し、共線図上の外側に位置する2個の回転メンバにそれぞれ2個のモータ/ジェネレータを結合する。
そして、共線図上において、上記出力を結合した回転メンバと、共線図上でこの出力に近い出力側のモータ/ジェネレータを結合した回転メンバとの間における回転メンバにローブレーキを結合する。
【0012】
ハイブリッド変速機の変速制御装置は、ローブレーキを締結した状態で上記クラッチを介した主動力源からの動力および両モータ/ジェネレータからの動力を用い上記出力への動力を決定するEIVT-LBモード領域を有するが、
このEIVT-LBモード領域を低車速側に拡張して拡張EIVT-LBモード領域を設定し、この拡張EIVT-LBモード領域で上記低車速に符合するよう前記のクラッチをスリップ結合させるよう構成したものである。
【0013】
【発明の効果】
上記の構成になる本発明の変速制御装置によれば、EIVT-LBモード領域を低車速側に拡張して拡張EIVT-LBモード領域を設定するから、どの動作モードにも属さない前記した空白領域をなくすことができ、空白領域において生ずる加速性能の低下に関した前記の問題を解消することができる。
なお、当該拡張EIVT-LBモード領域の低車速では本来なら、主動力源の回転数が下限値よりも低くないとEIVT-LBモードでの動作が不可能であるが、
本発明の変速制御装置によれば、拡張EIVT-LBモード領域で当該領域の低車速に符合するよう主動力源および対応する回転メンバ間のクラッチをスリップ結合させることから、
主動力源の回転数が下限回転数以上であってもEIVT-LBモードでの動作が可能となり、拡張EIVT-LBモード領域による上記の作用効果を保証することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1(a)は、本発明の一実施の形態になる変速制御装置を適用可能なハイブリッド変速機を例示し、これを本実施の形態においては前輪駆動車(FF車)用のトランスアクスルとして構成する。
図において1は変速機ケースを示し、該変速機ケース1の軸線方向(図の左右方向)左側にラビニョオ型プラネタリギヤセット2を、また図の右側に複合電流2層モータ3を内蔵させる。
ラビニョオ型プラネタリギヤセット2の更に左側には、変速機ケース1の外側であるが、エンジン(主動力源)ENGを配置する。
【0015】
ラビニョオ型プラネタリギヤセット2、エンジンENG、および複合電流2層モータ3は、ハイブリッド変速機の主軸線上に同軸に配置して変速機ケース1内に取り付けるが、変速機ケース1内には更に、上記の主軸線からオフセットさせて平行に配置したカウンターシャフト6およびディファレンシャルギヤ装置7をも内蔵させ、
ディファレンシャルギヤ装置7に左右駆動車輪8を駆動結合する。
【0016】
ラビニョオ型プラネタリギヤセット2は、ロングピニオンP2およびリングギヤR2を共有するシングルピニオン遊星歯車組4およびダブルピニオン遊星歯車組5の組み合わせになり、シングルピニオン遊星歯車組4をダブルピニオン遊星歯車組5に対しエンジンENGに近い側に配置する。
シングルピニオン遊星歯車組4はサンギヤS2およびリングギヤR2にそれぞれロングピニオンP2を噛合させた構造とし、
ダブルピニオン遊星歯車組5は共有ピニオンP2の他に、サンギヤS1およびリングギヤR1と、これらに噛合した大径のショートピニオンP1を有し、当該ショートピニオンP1を共有ピニオンP2に噛合させた構造とする。
そして遊星歯車組4,5のピニオンP1,P2を全て、共通なキャリアCにより回転自在に支持する。
【0017】
以上の構成になるラビニョオ型プラネタリギヤセット2は、サンギヤS1、サンギヤS2、リングギヤR1、リングギヤR2、およびキャリアCの5個の回転メンバを主たる要素とし、これら5個のメンバのうち2個のメンバの回転速度を決定すると他のメンバの回転速度が決まる2自由度の差動装置を構成する。
そして5個の回転メンバの回転速度順は、図1(b)の共線図に示すごとく、サンギヤS1、リングギヤR2、キャリアC、リングギヤR1、サンギヤS2の順番である。
【0018】
複合電流2層モータ3は、内側ロータ3riと、これを包囲する環状の外側ロータ3roとを、変速機ケース1内に同軸に回転自在に支持して具え、これら内側ロータ3riおよび外側ロータ3ro間における環状空間に同軸に配置した環状ステータ3sを変速機ケース1に固設して構成する。
環状コイル3sと内側ロータ3riとで内側のモータ/ジェネレータである第1のモータ/ジェネレータMG1を構成し、環状コイル3sと外側ロータ3roとで外側のモータ/ジェネレータである第2のモータ/ジェネレータMG2を構成する。
ここでモータ/ジェネレータMG1,MG2はそれぞれ、 複合電流をモータ側が負荷として供給される時は供給電流に応じた個々の方向の、また供給電流に応じた個々の速度(停止を含む)の回転を出力するモータとして機能し、複合電流を発電機側が負荷として印加した時は外力による回転に応じた電力を発生する発電機として機能する。
【0019】
ラビニョオ型プラネタリギヤセット2の上記した5個の回転メンバには、回転速度順に、つまり図1(b)の共線図にも示したが、サンギヤS1、リングギヤR2、キャリアC、リングギヤR1、サンギヤS2の順に、第1のモータ/ジェネレータMG1、主動力源であるエンジンENGからの入力、車輪駆動系への出力(Out)、ローブレーキL/B、第2のモータ/ジェネレータMG2を結合する。
【0020】
この結合を図1(a)に基づき以下に詳述するに、リングギヤR2を上記の通りエンジン回転が入力される入力要素とするため、このリングギヤR2にエンジンクラッチ9を介してエンジンENGのクランクシャフトを結合する。
サンギヤS1は、これからエンジンENGと反対の後方へ延在する中空軸11を介して第1のモータ/ジェネレータMG1(ロータ4ri)に結合し、このモータ/ジェネレータMG1および中空軸11を遊嵌する中心軸12を介してサンギヤS2を第2のモータ/ジェネレータMG2(ロータ4ro)に結合する。
そして、リングギヤR1と変速機ケース1との間にローブレーキL/Bを設け、このローブレーキL/BによりリングギヤR1を固定可能とする。
【0021】
キャリアCを前記のごとく、車輪駆動系へ回転を出力する出力要素とするため、このキャリアCに中空のコネクティングメンバ(出力軸)13を介して出力歯車14を結合し、これをラビニョオ型プラネタリギヤセット2および複合電流2層モータ3間に配置して変速機ケース1内に回転自在に支持する。
出力歯車14は、カウンターシャフト6上のカウンター歯車15に噛合させ、出力歯車14からの変速機出力回転が、カウンター歯車15を経由し、その後、カウンターシャフト6を経てディファレンシャルギヤ装置7に至り、このディファレンシャルギヤ装置により左右駆動車輪8に分配されるものとし、これらで車輪駆動系を構成する。
【0022】
上記の構成になるハイブリッド変速機は図1(b)に示すような共線図により表すことができ、この共線図の横軸は遊星歯車組4,5のギヤ比により決まる回転メンバ間の距離の比、つまりリングギヤR2およびキャリアC間の距離を1とした時のサンギヤS1およびリングギヤR2間の距離の比をαで示し、キャリアCおよびサンギヤS2間の距離をβで示し、キャリアCおよびリングギヤR1間の距離をγで示したものである。
また共線図の縦軸は、各回転メンバの回転速度、つまりリングギヤR2へのエンジン回転数Ne、サンギヤS1(モータ/ジェネレータMG1)の回転数N1、キャリアCからの出力(Out)回転数No、およびサンギヤS2(モータ/ジェネレータMG2)の回転数N2、およびローブレーキL/Bにより固定され得るリングギヤR1の回転数を示し、2個の回転メンバの回転速度が決まれば他の2個の回転メンバの回転速度が決まる。
【0023】
図1(b)の共線図により上記ハイブリッド変速機の変速動作を以下に説明するに、前進(正)回転出力時の変速動作としてEVモードと、EV-LBモードと、EIVTモードと、EIVT-LBモードの4モードが存在し、後退(逆)回転出力用のREV変速動作が存在する。
EVモードは、図2に示すようにエンジンクラッチ9を解放すると共にローブレーキL/Bも解放した状態で、図1(b)にレバーEVにより例示するごとく、エンジンENGからの動力を用いず両モータ/ジェネレータMG1,MG2(または一方のモータ/ジェネレータ)からの動力のみにより駆動系への出力Outを決定する。
EV-LBモードは、図2に示すようにローブレーキL/Bを締結した状態でEVモードと同様に エンジンENGからの動力を用いず両モータ/ジェネレータMG1,MG2(または一方のモータ/ジェネレータ)からの動力のみにより駆動系への出力Outを決定するモードで、変速状態を図1(b)にレバーEV-LBにより例示するごとくローブレーキL/Bの締結に伴うレバー比によりEVモードよりも大トルクを出力することができる。
【0024】
EIVTモードは、図2に示すようにエンジンクラッチ9を締結すると共にローブレーキL/Bを解放した状態で、図1(b)にレバーEIVTにより例示するごとく、エンジンENGからの動力および両モータ/ジェネレータMG1,MG2(または一方のモータ/ジェネレータ)からの動力により駆動系への出力Outを決定する。
EIVT-LBモードは、図2に示すようにローブレーキL/Bを締結した状態でEIVTモードと同様エンジンENGからの動力および両モータ/ジェネレータMG1,MG2(または一方のモータ/ジェネレータ)からの動力により駆動系への出力Outを決定するモードで、変速状態を図1(b)にレバーEIVT-LBにより例示するごとくローブレーキL/Bの締結に伴うレバー比によりEIVTモードよりも大トルクを出力することができる。
【0025】
後退(逆)回転出力用のREV変速動作は、図1(b)にレバーREVとして示すように、エンジンENGからの動力に依存することなく、ローブレーキL/Bの解放状態で、モータ/ジェネレータMG1の正回転、またはモータ/ジェネレータMG2の逆回転、或いはこれら双方により、キャリアCから出力(Out)へ逆回転が出力される変速状態である。
【0026】
ローブレーキL/Bを締結しない状態でモータ/ジェネレータMG1,MG2からの動力のみを用いるEVモードの場合、モータ/ジェネレータMG1,MG2のトルクT1,T2および回転数N1,N2は、変速機出力トルクTo(要求駆動力Fに比例)および変速機出力回転数No(車速VSPに比例)を用いた次式により求め得る。
N2={1/(1+α)}{-βN1+(1+α+β)No}・・・(1)
T1={β/(1+α+β)}To ・・・(2)
T2={(1+α)/(1+α+β)}To ・・・(2)
これら(1)式および(2)式と、モータ/ジェネレータMG1,MG2およびバッテリの特性とから、当該EVモード領域は車速VSPおよび要求駆動力Fの二次元座標上に例えば図9のごとくに設定される。
【0027】
ローブレーキL/Bを締結した状態でEVモードと同じ変速動作を行うEV-LBモードの場合、モータ/ジェネレータMG1,MG2のトルクT1,T2および回転数N1,N2は、変速機出力トルクToおよび変速機出力回転数Noを用いた次式により求め得る。(TLはローブレーキL/Bのトルク)
N1={(1+α+γ)/γ}No ・・・(3)
N2={(γ-β)/γ}No ・・・ (3)
T2={1/(β-γ)}{(1+α+γ)T1-γTo}・・・(4)
=To-T1-T2 ・・・(4)
これら(3)式および(4)式と、モータ/ジェネレータMG1,MG2およびバッテリの特性とから、当該EV-LBモード領域は車速VSPおよび要求駆動力Fの二次元座標上に例えば図10のごとくに設定される。
【0028】
ローブレーキL/Bを締結しない状態でエンジンENGからの動力(トルクTe、回転数Ne)およびモータ/ジェネレータMG1,MG2からの動力の双方を用いるEIVTモードの場合、モータ/ジェネレータMG1,MG2のトルクT1,T2および回転数N1,N2は、変速機出力トルクToおよび変速機出力回転数Noと、エンジントルクTeおよびエンジン回転数Neを用いた次式により求め得る。
N1=-αNo+(1+α)Ne ・・・(5)
N2=(1+β)No-βNe ・・・ (5)
T1={1/(1+α+β)}{βTo-(1+β)Te}・・・(6)
T2=To-T1-Te ・・・(6)
これら(5)式および(6)式と、モータ/ジェネレータMG1,MG2およびバッテリ並びにエンジンENGの特性とから、当該EIVTモード領域は車速VSPおよび要求駆動力F並びにバッテリの蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)に応じて決まり、車速VSPおよび要求駆動力Fの二次元座標上に表すと例えば図11のごとくに設定される。
【0029】
ローブレーキL/Bを締結した状態でEIVTモードと同じ変速動作を行うEIVT-LBモードの場合、モータ/ジェネレータMG1,MG2の回転数N1,N2およびエンジン回転数Neは変速機出力回転数Noを用いた以下の(7)式により表され、モータ/ジェネレータMG1,MG2のトルクT1,T2と、変速機出力トルクToと、エンジントルクTeと、ローブレーキL/BのトルクTLとの間には以下の(8)式の関係が成立する。
N1={(1+α+γ)/γ}No ・・・(7)
N2={(β-γ)/γ}No ・・・(7)
Ne={(1+γ)/γ}No ・・・(7)
=To-T1-T2-Te ・・・(8)
T2={1/(β-γ)}{-γTo-(1+α+γ)T1+(1+γ)Te}・・・(8)
当該EIVT-LBモード領域は、車速VSPおよび要求駆動力F並びにバッテリの蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)に応じて決まり、車速VSPおよび要求駆動力Fの二次元座標上に表すと例えば図12のごとくに設定される。
【0030】
上記の4モードを同じ二次元座標上に表した図14から明かなように、4モードのいずれにも属さない空白領域EMが、EV-LBモード領域およびEIVT-LBモード領域間、つまり、発進時や高速道路進入時に使う低車速(VSP<VSP2)、大駆動力(F≧F1)域に発生し、車速VSPがVSP2に上昇するまで要求通りに車両を加速させ得ないという問題を生じ、特にこの問題は、バッテリ蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)が小さくてEV-LBモードモードが存在しなくなり、VSP=0〜VSP2間の大きな領域(図17参照)が空白領域EMとなる時、顕著になる。
本実施の形態においては、上記の空白領域EMが存在しなくなるようEIVT-LBモード領域を拡張して図13、図15、図18および図19に示すように拡張EIVT-LBモード領域を設定する。
【0031】
しかし、EIVT-LBモードでは車速VSPとエンジン回転数Neとが比例関係にあり、また、エンジン回転数Neには下限値(例えば800rpm)が存在して、エンジンは下限回転数(例えば800rpm)よりも低い回転数で運転させることができないことから、EIVT-LBモード領域の下限車速VSP2が自ずと決定され、拡張EIVT-LBモード領域ではEIVT-LBモードでハイブリッド変速機を動作させることができない。
そこで本実施の形態においては、拡張EIVT-LBモード領域で当該領域の低車速に符合するよう、つまり、車速対応の変速機入力回転数とエンジン回転数の下限値との間における回転数差をエンジンクラッチ9が吸収するよう該エンジンクラッチ9をスリップ結合させ、これによりエンジンENGの回転数Neを下限回転数未満にしなくてもEIVT-LBモードでの動作が可能となるようにすることで、拡張EIVT-LBモード領域を成立させ得るようになす。
【0032】
かかる拡張EIVT-LBモード領域におけるクラッチ9のスリップ結合および変速動作制御、並びに、その他の各モードでの変速動作制御を行うハイブリッド変速機の変速制御システムは図3に示すごとくに構成する。
21は、エンジンENGおよびハイブリッド変速機の統合制御を司るハイブリッドコントローラ21で、このハイブリッドコントローラ21はエンジンENGの目標トルクtTeおよび目標回転数tNeに関する指令、エンジンクラッチ9の目標トルクtTcおよび目標回転数tNcに関する指令、およびローブレーキL/BのON,OFF(締結、解放)指令をエンジンコントローラ22に供給し、エンジンコントローラ22はエンジンENGを当該目標値tTe,tNeが達成されるよう運転させると共に、目標トルクtTcおよび目標回転数tNcが達成されるようエンジンクラッチ9の結合力を制御し、ローブレーキL/Bを指令通りにON,OFF(締結、解放)制御する。
【0033】
ハイブリッドコントローラ21は更に、モータ/ジェネレータMG1,MG2の目標トルクtT1,tT2および目標回転数tN1,tN2に関する指令信号をモータコントローラ23に供給し、モータコントローラ23はインバータ24およびバッテリ25によりモータ/ジェネレータMG1,MG2をそれぞれ、上記した目標トルクtT1,tT2および目標回転数tN1,tN2が達成されるよう制御する。
【0034】
これがためハイブリッドコントローラ21には、アクセルペダル踏み込み量からアクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ26からの信号と、車速VSP(出力回転数Noに比例)を検出する車速センサ27からの信号と、エンジン回転数Neを検出するエンジン回転センサ28からの信号とを入力する。
ハイブリッドコントローラ21は、これら入力情報から判る要求駆動力F、車速VSPおよびバッテリ25の蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)から運転者が希望する運転状態を実現するように、モード選択を行うと共に選択モードに応じた変速制御を実行して、上記した目標エンジントルクtTeおよび目標モータ/ジェネレータトルクtT1,tT2を決定して指令するものとする。
なおハイブリッドコントローラ21に入力する回転速度情報は、上記したエンジン回転数Neおよび車速VSP(出力回転数No)に限られるものではなく、ラビニョオ型プラネタリギヤセット2で構成する差動装置が2自由度のものであることから、当該ラビニョオ型プラネタリギヤセット2内における回転メンバのいずれか2個の回転速度をハイブリッドコントローラ21に入力してもよい。
【0035】
図4は、上記のハイブリッドコントローラ21が実行する制御プログラムを示し、先ずステップS11において車速VSP、要求駆動力F、およびバッテリ蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)から、三次元マップをもとにモードを選択する。
ステップS12では、選択モードがEVモードか否かをチェックし、ステップS14では選択モードがEV-LBモードか否かをチェックし、ステップS16では選択モードがEIVTモードか否かをチェックし、ステップS18では選択モードがEIVT-LBモードか否かをチェックする。
【0036】
EVモードが選択されている場合ステップS13において、EVモード用の三次元マップからモータ/ジェネレータMG1の目標回転数tN1を検索し、この目標回転数tN1および車速VSP(出力回転数No)を用いて前記(1)式からモータ/ジェネレータMG2の目標回転数tN2を算出し、目標駆動力F(出力トルクTo)を用いて(2)式からモータ/ジェネレータMG1,MG2の目標トルクtT1,tT2を算出する。
【0037】
EV-LBモードが選択されている場合ステップS15において、EV-LBモード用の三次元マップからモータ/ジェネレータMG1の目標トルクtT1を検索し、この目標トルクtT1および目標駆動力F(出力トルクTo)を用いて(4)式からモータ/ジェネレータMG2の目標トルクtT2を算出し、車速VSP(出力回転数No)を用いて前記(3)式からモータ/ジェネレータMG1,MG2の目標回転数tN1,tN2を算出する。
【0038】
EIVTモードが選択されている場合ステップS17において、EIVTモード用の三次元マップから目標エンジントルクtTeおよび目標エンジン回転数tNeを検索し、この目標エンジン回転数tNeおよび車速VSP(出力回転数No)を用いて前記(5)式からモータ/ジェネレータMG1,MG2の目標回転数tN1,tN2を算出し、目標エンジントルクtTeおよび目標駆動力F(出力トルクTo)を用いて前記(6)式からモータ/ジェネレータMG1の目標トルクtT1を算出すると共に、目標エンジントルクtTeおよび目標トルクtT1並びに目標駆動力F(出力トルクTo)を用いて前記(6)式からモータ/ジェネレータMG2の目標トルクtT2を算出する。
【0039】
EIVT-LBモードが選択されている場合ステップS19において、EIVT-LBモード用の三次元マップから目標エンジントルクtTeおよびモータ/ジェネレータMG1の目標トルクtT1を検索し、車速VSP(出力回転数No)を用いて前記(7)式から目標エンジン回転数tNeおよびモータ/ジェネレータMG1,MG2の目標回転数tN1,tN2を算出すると共に、目標エンジントルクtTeおよび目標トルクtT1並びに目標駆動力F(出力トルクTo)を用いて前記(8)式からモータ/ジェネレータMG2の目標トルクtT2を算出する。
【0040】
ステップS12、ステップS14、ステップS16、ステップS18で、選択モードが上記4モードの何れでもないと判定する時は、ステップS20において拡張EIVT-LBモードが選択されているとの判断のもと、当該拡張EIVT-LBモード用の三次元マップからエンジンクラッチ9の目標トルクtTcおよび目標回転数tNcを検索し、以下のようにしてモータ/ジェネレータMG1,MG2の目標トルクtT1,tT2および目標回転数tN1,tN2を算出する。
【0041】
正規のEIVT-LBモードは、現在の車速VSP、要求駆動力FおよびバッテリSOCのもとで電力消費量が最低になるような目標エンジントルクtTe、目標エンジン回転数tNe、およびモータ/ジェネレータMG1,MG2の目標トルクtT1,tT2、目標回転数tN1,tN2を求めることを主旨とするが、
拡張EIVT-LBモードは、EIVT-LBモード領域が空白領域EMを埋めるようにするためのエンジンクラッチ9の目標トルクtTcおよび目標回転数tNc、およびモータ/ジェネレータMG1,MG2の目標トルクtT1,tT2、目標回転数tN1,tN2を求めることを主旨とする。
従って拡張EIVT-LBモードでは、前記の(7)式および(8)式におけるTe,Neをそれぞれエンジンクラッチ9のトルクTcおよび回転数Ncに置き換えた次式が成立する。
N1={(1+α+γ)/γ}No ・・・(9)
N2={(β-γ)/γ}No ・・・(9)
Nc={(1+γ)/γ}No ・・・(9)
=To-T1-T2-Tc ・・・(10)
T2={1/(β-γ)}{-γTo-(1+α+γ)T1+(1+γ)Tc}・・・(10)
【0042】
拡張EIVT-LBモードにおいては、エンジンクラッチ9の目標トルクtTc、およびモータ/ジェネレータMG1,MG2の目標トルクtT1,tT2を求め、車速VSP(出力回転数No)を用いて(9)式から、エンジンクラッチ9の目標回転数tNcおよびモータ/ジェネレータMG1,MG2の目標回転数tN1,tN2を算出する。
出力トルクTo(要求駆動力Fに比例)と、クラッチトルクTcと、モータトルクT1,T2とに係わる(10)式は、出力トルクToが判っているから、変数が3個存在する3自由度の式である。
目標値tTcおよびtT1,tT2を決定するアルゴリズムとしては3個のアルゴリズムが存在する。実際上は、目標値tTcおよびtT1用のマップを用意し、目標値tT2を(10)式により算出する。
【0043】
第1のアルゴリズムは、予定駆動力Fo(図7参照)のもとで車両を走行させるのに必要な最小限のエンジンクラッチ9のトルクを目標クラッチトルクtTcとする。
第2のアルゴリズムは、モータ/ジェネレータMG1,MG2の目標トルクtT1,tT2を、モータ消費電力が最低になるよう決定する。
第3のアルゴリズムは、目標クラッチトルクtTcおよびモータ/ジェネレータMG1,MG2の目標トルクtT1,tT2を、モータ消費電力およびエンジン燃料消費量のエネルギー換算値総和が最低になるよう決定する。
【0044】
第1のアルゴリズムにおける、拡張EIVT-LBモードで車両を走行させるのに必要な最小限の目標クラッチトルクtTcは、(10)式から明らかなようにモータトルクT1,T2に加算して出力トルクToになるクラッチトルク値である。
正規のEIVT-LBモードでのトルクに関する式と、拡張EIVT-LBモードでのトルクに関する式とは、後者の式に{(1+γ)/(β-γ)}Tcが存在する点で異なるのみであり、拡張EIVT-LBモードではモータトルクT1,T2の項に{(1+γ)/(β-γ)}tTcを加えるだけで、固定のモータトルクT1,T2のもと目標クラッチトルクtTcが最小値になる。
【0045】
図7により付言するに、車両の要求運転点(VSP0,F0)が図示のごとく拡張EIVT-LBモード領域にあるとすると、モータ/ジェネレータMG1,MG2の回転数N1,N2およびクラッチ回転数Ncは前記(9)式から求めることができ、要求駆動力F0に対応する要求出力トルクT0は、次式で表され、図7に示した量T01およびT02の合算により求め得る。
T01={(1-α-γ)/γ}T1+{(γ-β)/γ}T2 ・・・(11)
T02={(1+γ)/γ}Tc ・・・(12)
T01は図7から明らかなように、EV-LBモードでの最大駆動力FEV-LBに対応するトルクで、EV-LBモードにおける最大トルク値を表し、かかるEV-LBモードでの最大トルク値を選択することにより、これに加算すべきT02を最小値にすることができる。
以上により出力トルクToは、次式により表される。
Figure 0003933064
【0046】
実際上、目標クラッチトルクtTcは、出力トルクToおよびモータ/ジェネレータMG1,MG2のトルクT1,T2が判っているから、(13)式の演算により求めることができる。
モータ/ジェネレータMG1の目標トルクtT1は、EV-LBモード用の三次元マップから求め、モータ/ジェネレータMG2の目標トルクtT2は前記(4)式から算出し、(13)式は目標クラッチトルクtTcの算出に用いる。
上記の処理は、エネルギー消費の最適化を考慮しておらず、拡張EIVT-LBモード領域での車両走行性能の確保を目的とするものである。
また目標クラッチトルクtTcは量T01に依存するため、バッテリ蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)により左右され、その理由は、量T01がバッテリ蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)により変化するからである。
つまり、バッテリ蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)が小さくなるにつれEV-LBモード領域が図8に示すように狭くなることから、量T01は同図に示すように、バッテリ蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)が小さくなるにつれ減少し、その分目標クラッチトルクtTcが増大する。
【0047】
前記第2のアルゴリズムにおいては、クラッチトルクTcを固定値、若しくは予定値とし、モータ消費電力Eが最低になるようなモータ/ジェネレータMG1,MG2のトルクT1,T2を決定する。このモータ消費電力Eは、モータ/ジェネレータMG1,MG2の回転数N1,N2およびトルクT1,T2を用いて計算する。
クラッチトルクTcは任意の固定値、若しくは、前記したごとくに求めた最小値tTcとすることができる。この場合クラッチトルクTcは、バッテリ蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)に左右され、バッテリ蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)が大きいほどクラッチトルクTcは逆に小さくなる。
【0048】
第2のアルゴリズムによる処理を図5に基づき詳述するに、先ずステップS21で、出力回転数No(車速VSPに比例)から(9)式を用いクラッチ回転数Nc、およびータ/ジェネレータMG1,MG2の回転数N1,N2を算出する。
次いでステップS22において、モータ/ジェネレータMG1のトルクT1を、モータ/ジェネレータMG1の機械特性により決まる最低トルクT1(min)に固定すると共に、モータ消費電力Eの初期値Eoを任意の値Aに固定する。
【0049】
ステップS23では、クラッチトルクTc、モータ/ジェネレータMG1のトルクT1、および出力トルクToから前記(10)式を用いてモータ/ジェネレータMG2のトルクT2を算出する。
次のステップS24においては、モータ/ジェネレータMG1,MG2の回転数N1,N2およびトルクT1,T2からモータ消費電力Eを算出する。
ステップS25では、このモータ消費電力Eが前記の初期値Eo未満か否かをチェックし、E<EoならステップS26で、モータ消費電力Eによりその初期値Eoを更新すると共にモータ/ジェネレータMG1の目標トルクtT1を実トルクT1により更新するが、E≧EoならステップS26を実行させないことにより、モータ消費電力初期値Eoの更新および目標モータトルクtT1の更新を行わない。
【0050】
ステップS25での判別結果に関係なく必ず選択されるステップS27においては、モータトルクT1をεずつ増大させ、ステップS28でこのトルクT1が、モータ/ジェネレータMG1の機械特性により決まる最大トルクT1(max)を越えたか否かを判定する。
ステップS28でトルクT1が最大トルクT1(max)を越えたと判定するまでの間は、制御をステップS23に戻して上記のループを繰り返し、ステップS28でトルクT1が最大トルクT1(max)を越えたと判定する時に制御を終了する。
以上により、モータ/ジェネレータMG1,MG2の目標トルクtT1,tT2を、モータ消費電力が最低になるよう決定することができる。
【0051】
前記第3のアルゴリズムにおいては、目標クラッチトルクtTcおよびモータ/ジェネレータMG1,MG2の目標トルクtT1,tT2を操作することにより、次式で表されるモータ消費電力およびエンジン燃料消費量のエネルギー換算値総和Jが最低になるよう決定する。
J=ε×E+φ×燃料消費量・・・(14)
εおよびφは、設計者が自由に選択する重み付け係数で、モータ消費電力Eはモータ/ジェネレータMG1,MG2の回転数N1,N2およびトルクT1,T2から計算により求め、エンジン燃料消費量はクラッチトルクTcと、クラッチ回転数Ncに所定値α(例えば100rpm)を加算して求めた回転数(Nc+α)およびエンジン下限回転数Ne(min)のうちの大きい方の回転数max=[(Nc+α),Ne(min)]とからマップ検索する。
【0052】
第3のアルゴリズムによる処理を図6に基づき詳述するに、ここでTc(max)は、当該拡張EIVT-LBモードでの最大クラッチトルクを示し、上記回転数max=[(Nc+α),Ne(min)]のもとでエンジンが出力し得る最大トルクに対応する。
先ずステップS31で、出力回転数No(車速VSPに比例)から(9)式を用いクラッチ回転数Nc、およびモータ/ジェネレータMG1,MG2の回転数N1,N2を算出する。
次いでステップS32において、クラッチトルクTcを、エンジンクラッチ9の機械特性により決まる最低トルクTc(min)に固定すると共に、エネルギー換算値総和Jの初期値Joを任意の値Aに固定する。
【0053】
ステップS33では、モータ/ジェネレータMG1のトルクT1を、モータ/ジェネレータMG1の機械特性により決まる最低トルクT1(min)に固定する。
ステップS34においては、クラッチトルクTc、モータ/ジェネレータMG1のトルクT1、および出力トルクToから前記(10)式を用いてモータ/ジェネレータMG2のトルクT2を算出する。
次のステップS35においては、(14)式を用いて前記のエネルギー換算値総和Jを算出する。
【0054】
ステップS36では、このエネルギー換算値総和Jが前記の初期値Jo未満か否かをチェックし、J<JoならステップS37で、エネルギー換算値総和Jによりその初期値Joを更新するのに加えて、目標クラッチトルクtTcをクラッチトルクTcにより更新すると共にモータ/ジェネレータMG1の目標トルクtT1を実トルクT1により更新する。
ステップS36でJ≧Joと判別する場合、ステップS37を実行させないことにより、総エネルギー初期値Joの更新、目標クラッチトルクtTc、および目標モータトルクtT1の更新を行わない。
【0055】
ステップS36での判別結果に関係なく必ず選択されるステップS38においては、モータトルクT1をεずつ増大させ、ステップS39でこのトルクT1が、モータ/ジェネレータMG1の機械特性により決まる最大トルクT1(max)を越えたか否かを判定する。
ステップS39でトルクT1が最大トルクT1(max)を越えたと判定するまでの間は、制御をステップS34に戻して上記のループを繰り返し、ステップS39でトルクT1が最大トルクT1(max)を越えたと判定する時に制御をステップS40に進める。
ステップS40では、クラッチトルクTcをδずつ増大させ、ステップS41でこのトルクTcが、前記した拡張EIVT-LBモードでの最大クラッチトルクTc(max)、つまり、前記回転数max=[(Nc+α),Ne(min)]のもとでエンジンが出力し得る最大トルクを越えたか否かを判定する。
ステップS41でクラッチトルクTcが最大クラッチトルクTc(max)を越えたと判定するまでの間は、制御をステップS33に戻して上記のループを繰り返し、ステップS41でクラッチトルクTcが最大クラッチトルクTc(max)を越えたと判定する時に制御を終了させる。
以上により、目標クラッチトルクtTcおよびモータ/ジェネレータMG1,MG2の目標トルクtT1,tT2を、(14)式で表されるモータ消費電力およびエンジン燃料消費量のエネルギー換算値総和Jが最低になるよう決定することができる。
【0056】
上記した本実施の形態によれば、図13、図15、図18および図19に示すようにEIVT-LBモード領域を低車速側に拡張して拡張EIVT-LBモード領域を設定するから、どの動作モードにも属さない空白領域EM(図14、図16、図17参照)をなくすことができ、空白領域EMにおいて生ずる加速性能の低下を拡張EIVT-LBモードにより解消することができる。
なお、当該拡張EIVT-LBモード領域の低車速では本来なら、エンジンENGの回転数Neが下限値よりも低くないとEIVT-LBモードでの動作が不可能であるが、本実施の形態によれば、拡張EIVT-LBモード領域で当該領域の低車速に符合するようエンジンクラッチ9を前記クラッチトルクTcおよびクラッチ回転数Ncの制御によりスリップ結合させるため、エンジン回転数が下限回転数以上であってもEIVT-LBモードでの動作が可能となり、拡張EIVT-LBモード領域による上記の作用効果を保証することができる。
【0057】
また本実施の形態によれば、拡張EIVT-LBモード領域を図15および図18に示すようにEV-LBモード領域とEIVT-LBモード領域との間に位置させから、そして、この位置が車両の発進時や高速道路進入時に多用する大加速度要求領域に対応するため、これら発進加速や高速道路進入加速をスムーズに行わせることができる。
なおEV-LBモード領域は図16および図17につき前述したごとく、バッテリ蓄電状態SOCが小さくなると可能持ち出し電力の不足により、図8にも示すが、だんだん狭くなってしまい、空白領域EMが拡大されるが、拡張EIVT-LBモード領域をEV-LBモード領域とEIVT-LBモード領域との間に位置させた本実施の形態によれば、バッテリ蓄電状態SOCの低下により拡大した空白領域EMも拡張EIVT-LBモード領域により確実に埋めることができる。
【0058】
更に、拡張EIVT-LBモード領域における目標クラッチトルクtTcを、図7につき前述したごとく要求駆動力F0からEV-LBモードでの最大トルク値T01を差し引いて求めた値T02とする場合、目標クラッチトルクtTcが車速VSPに最もよく符合した下限値となり、拡張EIVT-LBモード領域での車両走行性能の確保を確実なものにすることができる。
【0059】
また、拡張EIVT-LBモード領域でのモータ/ジェネレータのトルクを図5につき前述したごとく、予定のクラッチトルクのもとでモータ/ジェネレータの消費電力Eが最低になるよう決定する場合、バッテリ25の蓄電状態を長期に亘って良好に保つことができる。
【0060】
また、拡張EIVT-LBモード領域でのクラッチトルクおよびモータ/ジェネレータトルクを図6につき前述したごとく、相互に重み付けした両モータ/ジェネレータの消費電力Eおよびエンジン燃料消費量のエネルギー換算値総和Jが最低になるよう決定する場合、エネルギー効率を高めて燃費の向上を実現することができる。
【0061】
なお図8につき前述したごとく、バッテリ蓄電状態SOCに応じ、バッテリからの持ち出し可能電力が少ないほど拡張EIVT-LBモード領域を大きく低車速側に拡張させる場合、バッテリ蓄電状態SOCの低下により拡大した空白領域EMを拡張EIVT-LBモード領域により埋めることができるという前記の作用効果を更に確実なものにし得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による変速制御装置を適用し得るハイブリッド変速機を例示し、
(a)は、その線図的構成図、
(b)は、その共線図である。
【図2】 同ハイブリッド変速機におけるエンジンクラッチおよびローブレーキL/Bの締結、解放の組み合わせと、制御モードとの関係を示す説明図である。
【図3】 同ハイブリッド変速機の制御システムを示すブロック線図である。
【図4】 同制御システムにおけるハイブリッドコントローラが実行する変速制御プログラムのフローチャートである。
【図5】 拡張EIVT-LBモードでモータ消費電力が最低になるようなモータトルクを決定する時にハイブリッドコントローラが実行する制御プログラムを示すフローチャートである。
【図6】 拡張EIVT-LBモード領域でエネルギー総和が最低になるようなクラッチトルクおよびモータトルクを決定する時にハイブリッドコントローラが実行する制御プログラムを示すフローチャートである。
【図7】 拡張EIVT-LBモードでの最低クラッチトルクを求める時の考え方を説明するのに用いたモード領域線図である。
【図8】 バッテリ蓄電状態に応じてEV-LBモード領域が小さくなる様子を、拡張EIVT-LBモードでの最低クラッチトルクの変化状況と共に示す領域線図である。
【図9】 EVモード領域を示す領域線図である。
【図10】 EV-LBモード領域を示す領域線図である。
【図11】 EIVTモード領域領域を示す領域線図である。
【図12】 EIVT-LBモード領域を示す領域線図である。
【図13】 図12と同じ線図上にEIVT-LBモード領域の拡張により拡張EIVT-LBモード領域を設定した場合の領域線図である。
【図14】 図9〜図12に示した4モード領域を同じ図面上に表示し、空白領域が発生した場合の領域線図である。
【図15】 図14と同じ線図上にEIVT-LBモード領域の拡張により拡張EIVT-LBモード領域を設定した場合の領域線図である。
【図16】 図14における空白領域を、バッテリ蓄電状態が大きい時について概略的に示す領域線図である。
【図17】 図14における空白領域を、バッテリ蓄電状態が小さい時について概略的に示す領域線図である。
【図18】 図16における空白領域をEIVT-LBモード領域の拡張により拡張EIVT-LBモード領域とした場合の領域線図である。
【図19】 図17における空白領域をEIVT-LBモード領域の拡張により拡張EIVT-LBモード領域とした場合の領域線図である。
【符号の説明】
1 変速機ケース
2 ラビニョオ型プラネタリギヤセット(差動装置)
3 複合電流2層モータ
ENG エンジン(主動力源)
4 シングルピニオン遊星歯車組
5 ダブルピニオン遊星歯車組
6 カウンターシャフト
7 ディファレンシャルギヤ装置
8 駆動車輪
9 エンジンクラッチ
14 出力歯車
MG1 第1モータ/ジェネレータ
MG2 第2モータ/ジェネレータ
S1 サンギヤ
S2 サンギヤ
P1 ショートピニオン
P2 ロングピニオン
R1 リングギヤ
R2 リングギヤ
C キャリア
L/B ローブレーキ
21 ハイブリッドコントローラ
22 エンジンコントローラ
23 モータコントローラ
24 インバータ
25 バッテリ
26 アクセル開度センサ
27 車速センサ
28 エンジン回転センサ

Claims (6)

  1. 共線図上に配置される回転メンバとして複数個の回転メンバを有し、これら回転メンバのうち2個のメンバの回転状態を決定すると他のメンバの回転状態が決まる2自由度の差動装置を具え、
    前記回転メンバのうち、共線図上の内側に位置する2個の回転メンバの一方にクラッチを介して主動力源からの入力、他方に駆動系への出力をそれぞれ結合し、
    共線図上の外側に位置する2個の回転メンバにそれぞれ2個のモータ/ジェネレータを結合し、
    共線図上において、前記出力を結合した回転メンバと、共線図上で該出力に近い出力側モータ/ジェネレータを結合した回転メンバとの間における回転メンバにローブレーキを結合し、
    このローブレーキを締結した状態で前記クラッチを介した主動力源からの動力および両モータ/ジェネレータからの動力を用い前記出力への動力を決定するEIVT-LBモード領域を少なくとも有したハイブリッド変速機において、
    前記EIVT-LBモード領域を低車速側に拡張して拡張EIVT-LBモード領域を設定し、この拡張EIVT-LBモード領域で前記低車速に符合するよう前記クラッチをスリップ結合させる構成にしたことを特徴とするハイブリッド変速機の変速制御装置。
  2. 請求項1に記載のハイブリッド変速機の変速制御装置において、前記ローブレーキを締結した状態で前記両モータ/ジェネレータからの動力を用いて前記出力への動力を決定するEV-LBモード領域と、前記EIVT-LBモード領域との間に、前記拡張EIVT-LBモード領域を位置させたことを特徴とするハイブリッド変速機の変速制御装置。
  3. 請求項1または2に記載のハイブリッド変速機の変速制御装置において、前記拡張EIVT-LBモード領域におけるクラッチの伝達トルクを、要求駆動力から前記EV-LBモードでの最大トルク値を差し引いて求めた下限値とすることを特徴とするハイブリッド変速機の変速制御装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のハイブリッド変速機の変速制御装置において、前記拡張EIVT-LBモード領域でのモータ/ジェネレータのトルクを、前記クラッチの予定伝達トルクのもと両モータ/ジェネレータの消費電力が最低になるよう決定することを特徴とするハイブリッド変速機の変速制御装置。
  5. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載のハイブリッド変速機の変速制御装置において、前記拡張EIVT-LBモード領域でのクラッチの伝達トルクおよびモータ/ジェネレータのトルクを、相互に重み付けした両モータ/ジェネレータの消費電力および主動力源の燃料消費量のエネルギー換算値総和が最低になるよう決定することを特徴とするハイブリッド変速機の変速制御装置。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載のハイブリッド変速機の変速制御装置において、前記両モータ/ジェネレータ用のバッテリの蓄電状態に応じ、該バッテリからの持ち出し可能電力が少ないほど前記拡張EIVT-LBモード領域を大きく低車速側に拡張させることを特徴とするハイブリッド変速機の変速制御装置。
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