JP3916116B2 - 非水二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水二次電池に関し、さらに詳しくは、高容量で、かつサイクル特性および高温での充電状態での保存特性が優れた非水二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
リチウムイオン二次電池に代表される非水二次電池は、容量が大きく、かつ高電圧、高エネルギー密度、高出力であることから、ますます需要が増える傾向にある。
【0003】
しかしながら、この非水二次電池について、本発明者らは、さらなる高機能化を目指して検討を進めていくうちに、電池の容量が増加するにつれ、特に電極積層体の単位体積当たりの放電容量が130mAh/cm3以上、特に160mAh/cm3以上の高容量になると、そのような高容量の非水二次電池においてはサイクル特性や高温での充電状態の保存特性(以下、「充電保存特性」という)が悪くなることが判明した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来の非水二次電池の問題点を解決し、電極積層体の単位体積当たりの放電容量が160mAh/cm3以上の高容量の非水二次電池において、サイクル特性や高温での充電保存特性を向上させることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、正極、負極、セパレータおよび電解質を有し、上記正極に4V級の活物質を用い、電極積層体の単位体積当たりの放電容量が160mAh/cm3以上である非水二次電池において、上記負極の負極合剤層の密度を1.5g/cm3以上とし、上記セパレータの厚みを20μm以下とし、上記正極の集電材を、鉄を0.5重量%以上2重量%以下、シリコンを0.1重量%以上1.0重量%以下含有し、厚さが5μm以上15μm以下のアルミニウム合金箔とし、負極の表面上にFT−IR分析で1040〜1060cm−1と1150〜1215cm−1に吸収ピークを有する物質を存在させることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
また、本発明においては、負極の表面上にXPS分析で164.1〜170.6eVにピークを有する物質を存在させることを好ましい形態としている。さらに、本発明においては、負極に炭素材料を用い、炭素材料の(002)面の面間距離(d002)が3.5Å以下で、c軸方向の結晶子の大きさ(Lc)が30Å以上である場合を好ましい形態としている。さらにまた、本発明においては、負極の表面上にXPS分析で55.0eVにピークを有する物質が存在すると共に55.3eVおよび55.8eVにピークを有する物質が存在し、かつXPS分析でLiスペクトルのピーク分割を行い各ピークを原子%で表した場合に、55.0eVにピークを有する物質が1〜9原子%、55.3eVにピークを有する物質が2〜7原子%であることを好ましい形態としている。また、本発明においては、正極の充電電圧がLi基準で4.4V以上であることを好ましい形態としている。
【0007】
本発明において、FT−IR分析(高速フーリエ変換型赤外分光分析)は、ニコレ社製FT−IR分析装置740型を用い、測定法はATR法(Ge45°プリズム使用)、分解能は4cm−1で、積算回数300回とし、25℃で測定する。ただし、これと同等の測定条件でも構わない。
【0008】
また、XPS分析(X線光電子分光分析のことでESCA分析とも言われる)では、VG社製ESCA LAB MARK2でMgKα線を用い、12KV−10mA、25℃の条件下で行い、スペクトルの分離を行って、各成分の原子%(at%)を算出するが、これと同等の測定条件でも良い。
【0009】
そして、上記FT−IR分析やXPS分析にあたっては、電池をあらかじめ2.75Vまで1C(1時間でその電池を放電できる電流値)で放電し、露点−75℃のアルゴンドライボックス中で分解し、負極を一定の大きさに切り出し、メチルエチルカーボネート(MEC)で洗浄して真空乾燥を1日行ったものを測定試料として用いる。
【0010】
本発明で言う、FT−IR分析で検出される1040〜1060cm−1の吸収ピークは−S(=O)−結合に基づくもので、1150〜1215cm−1の吸収ピークは−O−S(=O)−OR結合に基づくものであると考えられる。
【0011】
また、XPS分析で164.1〜170.6eVにピークを有する物質はリチウムイオウ(硫黄)化合物に基づくものであるが、この物質による被膜は、安定な被膜であるがイオン伝導性を保持していて、負極の表面における電解液の分解を抑制する作用を有するので、特に好ましい。
【0012】
また、XPS分析で検出される55.0eVのピークはリチウムイオウ化合物に基づくピークであり、55.3eVのピークはリチウム炭酸塩に基づくピークであり、55.8eVのピークはLiFに基づくピークである。また、この比率はXPS分析でLiスペクトルのピーク分割を行い各ピークを原子%で表した場合に、55.0eVにピークを有する物質が1〜9原子%で、55.3eVにピークを有する物質が2〜7原子%であることが好ましい。
【0013】
負極の表面状態については、竹原や金村らが、負極の表面にはLi2OやLiOH、Li2CO3などの被膜が形成され、さらにLiPF6を電解質塩とする電解液を用いた場合には負極の表面にLiFの被膜が形成されることを報告している〔JOURNAL OF POWER SOURCES 68,P82−86(1997)〕。また、AURBACHらもLi負極やLiの挿入された炭素負極の表面状態について検討していて、アルキルカーボネートを用いた電解液と負極とが反応して負極の表面上にLi2CO3や有機炭酸塩、LiOR(Rはアルキル基)の被膜が形成されていることをIR(赤外分光分析)で確認しており、Li2O、LiFなどの被膜が形成されている可能性も示唆している〔JOURNAL OF POWER SOURCES 68,P91−98(1997)〕。
【0014】
負極の表面被膜はサイクル特性の良否や高温での充電保存特性に係わることから重要であり、その被膜に求められる性質としては、薄くてイオン伝導性が高くかつ電解液の被膜内部への進入を抑制できることである。しかし、リチウムイオン二次電池の電解液溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)などのエステルが主に用いられ、電解質塩としてはLiPF6が主に用いられている現状では、負極の表面に上記のLi2CO3や有機炭酸塩、LiOR(Rはアルキル基)、Li2O、LiFなどで被膜を形成するしかなく、特に負極の表面近傍にはLiFやLiOHなどの被膜が主成分となる。たとえ初期にLi2CO3や有機炭酸塩の被膜が形成された場合でもLiPF6系の電解液を用いた場合には、LiF被膜に変質していくことが報告されている〔JOURNAL OF POWER SOURCES 68,P82−86(1997)〕。
【0015】
このLiFなどの被膜は、ある程度、電解液の電極内部への進入抑制効果が期待できるものの、イオン伝導性が劣るために電池をサイクル(充放電サイクル)試験や高温での充電保存をすると、被膜が厚くなったり、イオン移動がスムーズに行われなくなり、電池の容量が低下しやすい。この現象は負極に炭素材料を用いている場合、その炭素材料1g当たりの充放電容量が290mAh以上になると顕著になる。
【0016】
そこで、本発明者らは、負極の表面被膜を改良するために−S(=O)−結合および−O−S(=O)−OR結合を有する化合物を所定量混入させた被膜とし、サイクル時の容量劣化を低減したのである。
【0017】
また、負極の表面被膜にXPS分析で164.1〜170.6eVにピークを有するリチウムイオウ化合物を混入させることによって、サイクル時の容量劣化を軽減できるメカニズムについては、いまだ充分に解明されていないが、おおむね次のように考えられる。従来の被膜成分として主に用いられてきたLiFやLi2CO3は絶縁体であり、被膜が厚くなるに従ってイオン伝導が起こりにくくなる。また、たとえ有機炭酸塩が形成されたとしても被膜中に取り込まれたリチウムをイオンの状態に解離させる能力が低い。本発明者らは、有機カルボン酸塩(CF3CO2Li)と有機スルホン酸塩(CF3SO3Li)を用いて電解液を調製し、それらのイオン伝導性を比較して、リチウムイオウ化合物のスルホン酸塩の方がカルボン酸塩より約5倍高いイオン伝導性を示すことを既に報告してきた〔JOURNAL OF POWER SOURCES 68,P91−98(1997)〕。
【0018】
以上のことから、負極の表面に形成される被膜にリチウムイオウ化合物を混入させることにより、被膜内部のイオン伝導性が向上し、イオン移送がスムーズに行われるようになり、それによってサイクル数の増加に伴う容量低下が少なくなるものと考えられる。
【0019】
また、55.8eVのピークを有するLiFをある程度含むことを好ましい形態としているのは、LiFが電解液と反応しにくい強固な被膜を形成しやすく、リチウムイオウ化合物とLiFとが共存して形成される被膜はイオン伝導性と負極の電解液との反応抑制効果がバランス良く発現するからである。
【0020】
リチウムイオウ化合物を含む被膜の作り方としては、上記のようなCF3SO3Liを混入させることも考えられるが、CF3SO3Liは電解液中に溶解してしまうので、ハロゲン元素が1個以下の電解液に溶解しにくい有機スルホン酸塩を形成できる化合物を電解液中に添加して被膜を形成させることが好ましい。
【0021】
本発明において、負極の表面に被膜形成するために用いる物質としては、−S(=O)−結合と−O−S(=O)−OR結合を有する環状スルフォネートまたはその誘導体や亜硫酸エステル化合物またはその誘導体などが好ましい。前者の環状スルフォネートまたはその誘導体の好適な具体例としては、例えば、グリコールサルファイトなどが挙げられ、後者の亜硫酸エステル化合物またはその誘導体の好適な具体例としては、例えば、ジメチルスルフォネート、エチルメチルスルフォネート、ジエチルスルフォネートなどのアルキルスルフォネートが挙げられる。
【0022】
−S(=O)−結合と−O−S(=O)−OR結合を有する環状スルフォネートまたはその誘導体や亜硫酸エステル化合物またはその誘導体などの添加量としては、電解質(本発明において、この「電解質」という用語の中には、一般に電解液と呼ばれている液状電解質はもとより、ゲル状ポリマー電解質なども含まれている)の溶媒成分中0.5体積%以上が好ましく、より好ましくは1体積%以上、さらに好ましくは1.5体積%以上である。これはあまり添加量が少ない場合にはその効果が発現しにくくなる傾向があるからである。また、添加量が多くなりすぎると電池の容量が小さくなる傾向があることから、−S(=O)−結合と−O−S(=O)−OR結合を有する環状スルフォネートまたはその誘導体や亜硫酸エステル化合物またはその誘導体などの添加量は電解質の溶媒成分中5体積%以下が好ましく、より好ましくは3体積%以下、さらに好ましくは2.5体積%以下である。なお、これはあくまでも初期の添加量であって、被膜の形成量に応じて電解液中の含有量は減少する。
【0023】
本発明において、電解質としては、液状電解質、ゲル状電解質、固体電解質のいずれであってもよいが、本発明においては、特に液状電解質を用いることが多いことから、以下、この液状電解質に関して当業者間で慣用されている「電解液」という表現を用い、それを中心に詳細に説明する。
【0024】
本発明において、電解液の溶媒成分としてはエステルが好適に用いられる。特に鎖状エステルは、電解液の粘度を下げ、イオン伝導度を高めることから好適に用いられる。このような鎖状エステルとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピオン酸メチルなどの鎖状のCOO−結合を有する有機溶媒、リン酸トリメチルなどの鎖状リン酸トリエステルなどが挙げられ、それらの中でも特に鎖状のカーボネート類が好ましい。
【0025】
また、上記鎖状エステルなどに下記の誘電率が高いエステル(誘電率30以上)を混合して用いると負荷特性などが向上するので好ましい。このような誘電率の高いエステルとしては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ガンマーブチロラクトン(γ−BL)などが挙げられる。特に環状構造のものが好ましく、とりわけ環状のカーボネートが好ましく、エチレンカーボネート(EC)が最も好ましい。
【0026】
上記高誘電率エステルは電解液の全溶媒中の50体積%未満が好ましく、より好ましくは40体積%以下、さらに好ましくは35体積%以下である。そして、これらの誘電率の高いエステルによる特性の向上は、上記高誘電率エステルが電解液の全溶媒中で10体積%以上になると顕著になり、20体積%に達するとより顕著になる。また、これと混合する鎖状エステルは、電解液の全溶媒中の50体積%以上が好ましく、より好ましくは60体積%以上、さらに好ましくは65体積%以上である。
【0027】
上記エステル以外に併用可能な溶媒としては、例えば、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,3−ジオキソラン(DO)、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチル−テトラヒドロフラン(2Me−THF)、ジエチルエーテル(DEE)などが挙げられる。そのほか、アミン系またはイミド系有機溶媒や、含イオウ系または含フッ素系有機溶媒なども用いることができる。また、ポリエチレンオキサイドやポリメタクリル酸メチルなどのポリマーを含んでゲル状になっていてもよい。
【0028】
電解液の溶質としては、例えば、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiCF3CO2、Li2C2F4(SO3)2、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiCnF2n+1SO3(n≧2)、LiN(RfOSO2)2〔ここでRfはフルオロアルキル基〕などが単独でまたは2種以上混合して用いられるが、特にF(フッ素)を含有するリチウム塩が好ましく、なかでもLiPF6や炭素を3個以上有する含フッ素有機リチウム塩が好ましい。電解液中における溶質の濃度は、特に限定されるものではないが、濃度を1mol/l以上の多めにすると安全性がよくなるので好ましく、1.2mol/l以上がより好ましい。また、1.7mol/lより少ないと電気特性が良くなるので好ましく、1.5mol/lより少ないとさらに好ましい。
【0029】
本発明において、正極に4V級の活物質を用いるのは、電圧の高い電池を構成することが可能になり、それによって、エネルギー密度の高い、高出力の電池を実現することが可能になり、近年需要の増大している携帯型電子機器の電源として適した電池を作製することができるという理由によるものである。このような4V級の活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、コバルト酸リチウムとニッケル酸リチウムとの固溶体、スピネル型マンガン酸リチウム(LiMn2O4)などや、それらに他の金属(Li、Co、Ni、Fe、Cr、Cuなど)を適宜固溶させたものなどが挙げられる。また、上記正極活物質を4.4V(Li基準)以上に充電する場合、通常の電解液では劣化が大きくなるが、本発明は高電圧での貯蔵劣化を小さくする作用を有するので、上記のように4.4V以上の高電圧下で貯蔵する際に本発明を適用すると特に好ましい結果が得られる。
【0030】
正極は、例えば、上記正極活物質に、必要に応じて、例えば鱗片状黒鉛などの導電助剤やポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどのバインダを加え、混合して正極合剤を調製し、それを溶剤で分散させてペーストにし(バインダはあらかじめ溶剤に溶解させてから正極活物質などと混合してもよい)、その正極合剤ペーストを金属箔などからなる正極集電材に塗布し、乾燥して、正極集電材の少なくとも一部に正極合剤層を形成することによって作製される。ただし、正極の作製方法は、上記例示の方法に限られることなく、他の方法によってもよい。
【0031】
正極に用いる正極集電材は、アルミニウムを主成分とする金属箔が好ましく、その純度は98重量%以上99.9重量%未満が好ましい。通常のリチウムイオン二次電池では純度が99.9重量%以上のアルミニウム箔が正極集電材として用いられているが、本発明においては高容量化やサイクル特性の向上などを図るため厚さが15μm以下の薄い金属箔を用いる。そのため、薄くても使用に耐え得る強度にしておくことが好ましく、そのような強度を確保するためには純度が99.9重量%未満であることが好ましい。特に添加する金属元素として好ましいのは、鉄とシリコンであり、鉄は0.5重量%以上で、好ましくは0.7重量%以上であり、また、2重量%以下で、好ましくは1.3重量%以下である。シリコンは0.1重量%以上で、好ましく0.2重量%以上であり、また、1.0重量%以下で、好ましくは0.3重量%以下である。これらの鉄やシリコンはアルミニウムと合金化していることが必要であり、アルミニウム中に不純物として存在するものではない。
【0032】
そして、正極集電材の引張り強度としては150N/mm2以上が好ましく、より好ましくは180N/mm2以上である。また、本発明において用いる正極集電材は、伸びが2%以上であることが好ましく、より好ましくは3%以上である。これは電極積層体の単位体積当たりの放電容量が大きくなるにつれて電極合剤層の充電時の膨張が大きくなるため、その膨張によって正極集電材に応力が発生して、正極集電材に亀裂や切断などが発生しやすくなるが、正極集電材の伸びを大きくしておくと、その伸びによって応力を緩和し、正極集電材の亀裂や切断などを防止できるからである。
【0033】
本発明においては、上記のように、正極集電材として厚みが15μm以下のアルミニウムを主成分とする金属箔を用いることが好ましいとしているが、これは厚みが薄いほど電池の高容量化に好都合であるという理由によるものである。しかし、あまりにも薄くなりすぎると、正極の作製時や巻回構造の電極体の作製時などに正極集電材の強度不足による切断などが生じるおそれがあるため、正極集電材の厚みとしては、上記のように15μm以下であって、5μm以上、特に8μm以上が実用上適している。
【0034】
また、正極集電材の表面は片面が粗面化していることが好ましい。そして、その粗な面が巻回体において外周側の面にあることが好ましい。これは、巻回体の場合、外周側の面が巻回中心部に近くなるほど対向する負極が多く存在しているので正極が劣化しやすいため、外周側に粗な面を用いて接着性を高めることにより正極の劣化を低減できるからである。粗な面の好ましい平均粗度はRaで0.1〜0.5μmであり、より好ましくは0.2〜0.3μmである。そして、光沢面の好ましい平均粗度はRaで0.2μm以下で、より好ましくは0.1μm以下である。
【0035】
また、正極集電材の濡れ性が悪い場合、電池をサイクル(充放電)させた場合にサイクル特性の低下が生じやすい傾向にある。そのような場合には正極集電材の濡れ性を37dyne/cm以上にすることが好ましい。
【0036】
負極に用いる材料は、リチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、本発明においては、それを負極活物質と呼んでいるが、そのような負極活物質の具体例としては、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などの炭素材料が挙げられる。また、Si、Sn、Inなどの合金またはLiに近い低電圧で充放電できる酸化物などの化合物なども負極活物質として用いることができる。
【0037】
負極活物質として炭素材料を用いる場合、該炭素材料は下記の特性を持つものが好ましい。すなわち、その(002)面の面間距離(d002 )に関しては、3.5Å以下が好ましく、より好ましくは3.45Å以下、さらに好ましくは3.4Å以下である。また、c軸方向の結晶子の大きさ(Lc)は30Å以上が好ましく、より好ましくは80Å以上、さらに好ましくは250Å以上である。そして、上記炭素材料の平均粒径は8〜20μm、特に10〜15μmが好ましく、純度は99.9重量%以上が好ましい。
【0038】
負極は、例えば、上記負極活物質に、必要に応じ、正極の場合と同様の導電助剤やバインダなどを加え、混合して負極合剤を調製し、それを溶剤に分散させてペーストにし(バインダはあらかじめ溶剤に溶解させておいてから負極活物質などと混合してもよい)、その負極合剤ペーストを銅箔などからなる負極集電材に塗布し、乾燥して、負極集電材の少なくとも一部に負極合剤層を形成することによって作製される。ただし、負極の作製方法は上記例示の方法に限られることなく、他の方法によってもよい。
【0039】
負極活物質に炭素材料を用いる場合は、その負極の負極合剤層の密度を1.5g/cm3以上にすることが高容量化を図る上で好ましい。通常、負極合剤層を高密度にすると、高容量は得られやすくなるが、電解液の浸透が遅くなり、また活物質の利用度も不均一になりやすいため、サイクル特性が低下しやすくなる。そのような場合には、本発明において用いる−S(=O)−結合と−O−S(=O)−OR結合を有する環状スルフォネートまたはその誘導体、亜硫酸エステル化合物またはその誘導体などの効果がより顕著に発現するようになる。
【0040】
セパレータとしては、厚みが20μm以下のものを用いるが、特に厚みが10μm以上、好ましくは15〜20μm程度の微孔性ポリエチレンフィルム、微孔性ポリプロピレンフィルム、微孔性エチレン−プロピレンコポリマーフィルムなどのポリオレフィン系セパレータは、薄くても充分な強度を有しているので、正極活物質や負極活物質などの充填量を高めることができるとともに熱伝導性が改善され、電池内部の発熱に対しても放熱を促進するので、本発明において好適に使用される。特に電極積層体と電池ケースとの間にセパレータが介在する場合は電極内部の熱を放熱する効果が大きい。
【0041】
本発明は、電極積層体の単位体積当たりの放電容量が160mAh/cm3以上の非水二次電池を対象としているが、これは高容量化を図るという理由に基づいている。本発明において、電極積層体の体積とは、正極、負極およびセパレータを積層したものまたは正極、負極およびセパレータを巻回したものの電池内における嵩体積であって、後者のように巻回したものにあっては、巻回に際して使用した巻き軸に基づく巻回体中心部の透孔などは体積として含まない。要は正極、負極、セパレータが占める嵩体積を合計したものである。これら正極、負極、セパレータの3つの体積は電池の容量を決定する重要な因子であり、電池の大きさにかかわらず、電極積層体の単位体積当たりの放電容量(放電容量/電極積層体の体積)を計算することによって、電池の容量密度を比較することができる。また、ここでいう放電容量とは、その電池の標準使用条件で充放電させた場合の放電容量である。なお、本発明において、標準使用条件とは、1C(その電池を1時間で放電できる電流)で25℃でメーカー推奨充電電圧(本発明の実施例では4.3V)まで充電し、その電圧に達した後は、同電圧で定電圧充電を行い、充電を2時間30分で終了し、0.2Cで2.75Vまで放電することを言い、その標準使用条件で充放電させて放電容量を測定し、電極積層体の単位体積当たりの放電容量を求める。
【0042】
【実施例】
つぎに、実施例をあげて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0043】
実施例1
メチルエチルカーボネートとエチレンカーボネートとグリコールサルファイトとを体積比65:33:2で混合し、この混合溶媒にLiPF6を1.4mol/l溶解させて、組成が1.4mol/lLiPF6/EC:MEC:GS(33:65:2体積比)で示される電解液を調製した。なお、上記グリコールサルファイトは、次の構造式
【0044】
【化1】
で示され、−S(=O)−結合と−O−S(=O)−OR結合を有している。
【0045】
上記電解液における、ECはエチレンカーボネートの略称であり、MECはメチルエチルカーボネートの略称であり、GSはグリコールサルファイトの略称である。従って、上記電解液を示す1.4mol/l LiPF6 /EC:MEC:GS(33:65:2体積比)は、メチルエチルカーボネート65体積%とエチレンカーボネート33体積%とグリコールサルファイト2体積%との混合溶媒にLiPF6を1.4mol/l相当を溶解させたものであることを示している。
【0046】
上記とは別に、LiCoO2に導電助剤として鱗片状黒鉛を重量比100:6で加えて混合し、この混合物と、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液とを混合してペーストを調製した。この正極合剤ペーストを70メッシュの網を通過させて大きなものを取り除いた後、厚さ15μmのアルミニウムを主成分とする金属箔からなる正極集電材の両面に塗布量が24.6mg/cm2(ただし、乾燥後の正極合剤量)となるように均一に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、その後、ローラプレス機により圧縮成形した後、切断し、リード体を溶接して、帯状の正極を作製した。
【0047】
上記正極集電材として用いたアルミニウムを主成分とする集電材は、鉄を1重量%、シリコンを0.15重量%含んでおり、アルミニウムの純度は98重量%以上であった。また、正極集電材として用いたアルミニウムを主成分とする金属箔の引張り強度は185N/mm2であり、粗面の平均粗度Raは0.2μmで、光沢面の平均粗度Raは0.04μmであった。そして、上記正極集電材として用いたアルミニウムを主成分とする金属箔は、濡れ性が38dyne/cmで、伸びが3%であった。
【0048】
つぎに、黒鉛系炭素材料〔ただし、(002)面の面間距離(d002)が3.36Å、c軸方向の結晶子の大きさ(Lc)が1000Å以上、平均粒径16μm、純度99.9重量%以上という特性を持つ黒鉛系炭素材料〕を、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液と混合してペーストを調製した。この負極合剤ペーストを70メッシュの網を通過させて大きなものを取り除いた後、厚さ10μmの帯状の銅箔からなる負極集電材の両面に塗布量が12.0mg/cm2(ただし、乾燥後の負極合剤量)となるように均一に塗布して乾燥し、負極合剤層を形成し、その後、ローラプレス機により圧縮成形し、切断した後、乾燥し、リード体を溶接して、帯状の負極を作製した。なお、負極の負極合剤層の密度は1.5g/cm3であった。
【0049】
前記帯状の正極を厚さ20μmの微孔性ポリエチレンフィルムを介して上記帯状の負極に重ね、渦巻状に巻回して渦巻状巻回構造の電極積層体とした。その際、正極集電材の粗面側が外周側になるようにして巻回した。上記積層電極体の体積は11.4cm3であった。その後、この電極体を外径18mmの有底円筒状の電池ケース内に充填し、正極および負極のリード体の溶接を行った。
【0050】
つぎに、上記電解液3.7mlを電池ケース内に注入し、電解液がセパレータなどに充分に浸透した後、封口し、予備充電、エイジングを行い、図1の模式図に示すような構造の筒形の非水二次電池を作製した。
【0051】
この電池を2.75Vまで1Cで放電し、露点−75℃のアルゴンドライボックス中で分解し、負極を一定の大きさに切り出し、メチルエチルカーボネートで洗浄して真空乾燥を1日行った後、負極の表面被膜をFT−IR分析したところ、1048cm−1に−S(=O)−に基づく吸収ピークと1215cm−1に−O−S(=O)−ORに基づく吸収ピークが観測され、XPS分析したところ、55.0eVにピークを有する化合物が2.0原子%、55.3eVにピークを有する化合物が4.0原子%、55.8eVにピークを有する化合物のピークが1.5原子%、164.1〜170.6eVの間にピークを有するリチウムイオウ化合物のピークが合計で1.5原子%検出された。
【0052】
図1に示す電池について説明すると、1は前記の正極で、2は負極であり、この図1では、繁雑化を避けるため、正極1や負極2の作製にあたって使用した集電体兼基体としての金属箔などは図示していない。そして、これらの正極1と負極2はセパレータ3を介して渦巻状に巻回され、渦巻状巻回構造の電極積層体として上記の電解液4と共に電池ケース5内に収容されている。
【0053】
電池ケース5はステンレス鋼製で、その底部には上記電極積層体の挿入に先立って、ポリプロピレンからなる絶縁体6が配置されている。封口板7はアルミニウム製で円板状をしていて、中央部に薄肉部7aを設け、かつ上記薄肉部7aの周囲に電池内圧を防爆弁9に作用させるための圧力導入口7bとしての孔が設けられている。そして、この薄肉部7aの上面に防爆弁9の突出部9aが溶接され、溶接部分11を構成している。なお、上記の封口板7に設けた薄肉部7aや防爆弁9の突出部9aなどは、図面上での理解がしやすいように、切断面のみを図示しており、切断面後方の輪郭線は図示を省略している。また、封口板7の薄肉部7aと防爆弁9の突出部9aとの溶接部分11も、図面上での理解が容易なように、実際よりは誇張した状態に図示している。
【0054】
端子板8は、圧延鋼製で表面にニッケルメッキが施され、周縁部が鍔状になった帽子状をしており、この端子板8にはガス排出口8aが設けられている。防爆弁9は、アルミニウム製で円板状をしており、その中央部には発電要素側(図1では、下側)に先端部を有する突出部9aが設けられ、かつ薄肉部9bが設けられ、上記の突出部9aの下面が、前記したように、封口板7の薄肉部7aの上面に溶接され、溶接部分11を構成している。絶縁パッキング10は、ポリプロピレン製で環状をしており、封口板7の周縁部の上部に配置され、その上部に防爆弁9が配置していて、封口板7と防爆弁9とを絶縁するとともに、両者の間から電解液が漏れないように両者の間隙を封止している。環状ガスケット12はポリプロピレン製で、リード体13はアルミニウム製で、前記封口板7と正極1とを接続し、渦巻状電極体の上部には絶縁体14が配置され、負極2と電池ケース5の底部とはニッケル製のリード体15で接続されている。
【0055】
実施例2
グリコールサルファイトに代えてジエチルスルフォネートを用いた以外は、実施例1と同様に筒形の非水二次電池を作製した。この電池を実施例1と同様に放電し処理した後、負極の表面被膜をFT−IR分析したところ、1047cm−1に−S(=O)−に基づくピークと1214cm−1に−O−S(=O)−ORに基づく吸収ピークが観測され、XPS分析したところ、55.0eVにピークを有する化合物が1.9原子%、55.3eVのピークを有する化合物が4.2原子%、55.8eVのピークを有する化合物が6.5原子%、164.1〜170.6eVの間にピークを有するリチウムイオウ化合物のピークが合計で1.6原子%検出された。上記ジエチルスルフォネートは、次の構造式
【0056】
【化2】
で示され、−S(=O)−結合と−O−S(=O)−OR結合を有している。
【0057】
比較例1
グリコールサルファイトを添加せず、そのぶん、メチルエチルカーボネートとエチレンカーボネートの比率を増やしてメチルエチルカーボネートとエチレンカーボネートとの体積比を66:34にした以外は、実施例1と同様に筒形の非水二次電池を作製した。この電池を実施例1と同様に放電し処理した後、負極の表面被膜をFT−IR分析したところ、1040〜1060cm−1や1150〜1215cm−1に吸収ピークは認められなかった。また、XPS分析したところ、55.8eVのピークを有する化合物が6.5原子%検出された。しかし、55.0eVにピークを有する化合物や164.1〜170.6eVの間にピークを有するリチウムイオウ化合物は検出されなかった。その代わりに54.5eVにピークを有する化合物が検出された。
【0058】
比較例2
グリコールサルファイトを添加せず、そのぶん、メチルエチルカーボネートとエチレンカーボネートの比率を増やしてメチルエチルカーボネートとエチレンカーボネートとの体積比を66:34にし、負極含有ペーストの塗布量を減らして負極の負極合剤層の密度を1.4g/cm3にした以外は、実施例1と同様に筒形の非水二次電池を作製した。この電池を実施例1と同様に放電し処理した後、負極の表面被膜をFT−IR分析したところ、1040〜1060cm−1や1150〜1215cm−1に吸収ピークは認められなかった。また、XPS分析したところ、55.8eVのピークを有する化合物が6.8原子%検出された。しかし、55.0eVにピークを有する化合物や164.1〜170.6eVの間にピークを有するリチウムイオウ化合物は検出されなかった。その代わりに54.5eVにピークを有する化合物が検出された。
【0059】
比較例3
グリコールサルファイトを添加せず、そのぶん、メチルエチルカーボネートとエチレンカーボネートの比率を増やしてメチルエチルカーボネートとエチレンカーボネートとの体積比を66:34にし、正極集電材として従来から汎用されている厚さ20μmのアルミニウムを主成分とする金属箔を用いた。このアルミニウムを主成分とする金属箔には鉄が0.03重量%、シリコンが0.02重量%含まれており、純度は99.94重量%であった。また、引張り強度は140N/mm2(15μm換算値)であり、両面光沢面で平均粗度Raは0.04μmであった。また、濡れ性は36dyne/cmで、伸びは3%であった。この正極集電材の両面に実施例1と同様の正極合剤ペーストを塗布量が23.9mg/cm2(ただし、乾燥後の正極合剤量)になるように均一に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、その後、ローラプレス機により圧縮成形した後、切断し、リード体を溶接して、帯状の正極を作製した。また、負極は実施例1と同様の厚さ10μmの銅箔からなる負極集電材の両面に実施例1と同様の負極合剤ペーストを塗布量が11.0mg/cm2(ただし、乾燥後の負極合剤量)となるように均一に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成し、セパレータとしては厚さ25μmの微孔性ポリエチレンフィルムを用い、それら以外は実施例1と同様に筒形の非水二次電池を作製した。
【0060】
この電池を実施例1と同様に放電し処理した後、負極の表面被膜をFT−IR分析したところ、1040〜1060cm−1や1150〜1215cm−1に吸収ピークは認められなかった。また、XPS分析したところ、55.8eVのピークを有する化合物が6.7原子%検出された。しかし、55.0eVにピークを有する化合物や164.1〜170.6eVの間にピークを有するリチウムイオウ化合物は検出されなかった。その代わりに54.5eVにピークを有する化合物が検出された。
【0061】
比較例4
正極含有ペーストの塗布量を20.0mg/cm2(ただし、乾燥後の正極合剤量)とし、負極含有ペーストの塗布量を12.0mg/cm2(ただし、乾燥後の負極合剤量)とした以外は、比較例3と同様に筒形の非水二次電池を作製した。
【0062】
この比較例4の電池を実施例1と同様に放電し処理した後、負極の表面被膜をFT−IR分析したところ、比較例3と同様に1040〜1060cm−1や1150〜1215cm−1に吸収ピークは認められなかった。また、XPS分析した結果も比較例3の場合と同様であった。
【0063】
上記実施例1〜2および比較例1〜4の電池を、25℃、1C(1700mA)で2.75Vまで放電した後、1Cで充電し、4.3Vに達した後は4.3Vの定電圧を保って2時間30分の充電を行った。この時、一部の電池を分解して正極の電位を測定したところ、正極の電位は4.40〜4.41Vであった。その後、電池を1Cで2.75Vまで放電する充放電を繰り返し、1サイクル目の放電容量および100サイクル目の放電容量を測定し、それに基づき、100サイクル目での1サイクル目に対する容量保持率〔(100サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)×100〕を測定した。その結果を電極積層体の単位体積当たりの放電容量および1サイクル目の放電容量と共に表1に示す。なお、上記電極積層体の単位体積当たりの放電容量は、前記の標準使用条件、つまり、1C(その電池を1時間で放電できる電流で、この場合、1700mA)で25℃で4.3Vまで充電し、4.3Vに達した後は4.3Vで定電圧充電を行い、充電を2時間30分で終了し、0.2Cで2.75Vまで放電させて放電容量を測定し、その放電容量と電極積層体の体積から求めたものである。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示すように、比較の基準となる比較例1の電池では、100サイクル目での容量保持率が68%にまで低下したのに対し、実施例1〜2の電池は容量保持率が81%以上であって、サイクル特性が優れていた。また、実施例1〜2の電池は、電極積層体の単位体積当たりの放電容量が168mAh/cm3以上であって、高容量であった。なお、比較例4の電池は、100サイクル目での容量保持率が高く、サイクル特性は優れていたが、電極積層体の単位体積当たりの放電容量が137mAh/cm3であって、容量が小さかった。
【0066】
また、上記実施例1〜2および比較例1〜4の電池を、25℃、1C(1700mA)で2.75Vまで放電した後、1Cで充電し、4.3Vに達した後は4.3Vの定電圧を保って2時間30分充電し、その後、1Cの定電流で2.75Vまで放電し、さらにもう一度1Cで充電し、4.3Vに達した後は4.3Vの定電圧を保って2時間30分充電した。この段階で一部の電池について1Cの定電流で2.75Vまで放電して放電容量を測定し、これを貯蔵前の最終放電容量とした。そして、上記充電後の残りの電池について60℃で20日間貯蔵した。その貯蔵後の電池を1Cの定電流で2.75Vまで放電し、さらに貯蔵前と同様に1Cで充電し、4.3Vに達した後は、4.3Vの定電流を保って2時間30分充電し、その後、1Cの定電流で2.75Vまで放電して放電容量を測定した。そして、この貯蔵後2サイクル目の放電容量の貯蔵前の最終放電容量に対する容量保存率を次の式
により求め、その結果を貯蔵後2サイクル目の容量保存率として表2に電極積層体単位体積当たりの放電容量と共に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
表2に示すように、比較の基準となる比較例1の電池では、貯蔵による容量保存率が75%にまで低下したが、実施例1〜2の電池では、貯蔵による容量保存率が84%以上であって、高温での充電保存特性、つまり高温での充電状態の保存特性が優れていた。なお、比較例4の電池は、高温での充電保存特性は優れていたが、電極積層体の単位体積当たりの放電容量が137mAh/cm3であって、容量が小さかった。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、正極に4V級の活物質を用い、電極積層体の単位体積当たりの放電容量が160mAh/cm3以上の高容量の非水二次電池において、高容量で、かつサイクル特性および高温での充電保存特性の優れた非水二次電池を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る非水二次電池の一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 電解質
Claims (5)
- 正極、負極、セパレータおよび電解質を有し、上記正極に4V級の活物質を用い、電極積層体の単位体積当たりの放電容量が160mAh/cm3 以上である電池において、上記負極の負極合剤層の密度が1.5g/cm 3 以上であり、上記セパレータの厚みが20μm以下であり、上記正極の集電材が、鉄を0.5重量%以上2重量%以下、シリコンを0.1重量%以上1.0重量%以下含有し、厚さが5μm以上15μm以下のアルミニウム合金箔であり、負極の表面上にFT−IR分析で1040〜1060cm−1と1150〜1215cm−1に吸収ピークを有する物質が存在することを特徴とする非水二次電池。
- 負極の表面上にXPS分析で164.1〜170.6eVにピークを有する物質が存在する請求項1記載の非水二次電池。
- 負極に炭素材料を用い、上記炭素材料の(002)面の面間距離(d002 )が3.5Å以下で、c軸方向の結晶子の大きさ(Lc)が30Å以上である請求項1または2記載の非水二次電池。
- 負極の表面上にXPS分析で55.0eVにピークを有する物質が存在すると共に55.3eVおよび55.8eVにピークを有する物質が存在し、55.0eVにピークを有する物質が1〜9原子%で、55.3eVにピークを有する物質が2〜7原子%である請求項3記載の非水二次電池。
- 電解質の溶媒成分中に環状スルフォネートまたはその誘導体あるいは亜硫酸エステルまたはその誘導体が0.5体積%以上5体積%以下添加されている請求項1〜4のいずれかに記載の非水二次電池。
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