JP3909149B2 - 全芳香族サーモトロピック液晶コポリエステルおよびその組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、p−ヒドロキシ安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヒドロキノンおよび4,4'−ビフェノールからなるサーモトロピック液晶コポリエステルに関するものである。さらに詳しくは、限定されたこれら5成分のモノマー組成により、射出成形時の流動性、耐オーブンブリスター性さらに機械的特性に優れた安価な液晶コポリエステルに関すものである。
【0002】
【従来の技術】
p−ヒドロキシ安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヒドロキノンおよび4,4'−ビフェノールからなるサーモトロピック液晶コポリエステルは、溶融成形特に射出成形可能な樹脂であることが知られている。例えば、5成分系サーモトロピック液晶コポリエステルとしては、特公表03−50174号公報およびアメリカ特許第5066767号公報、特開昭63−39918号公報、特開昭63−57663号公報、特開平03−52921、特開昭60−35425号公報等が挙げられる。
【0003】
特に特公表03−50174号公報およびアメリカ特許第5066767号公報に記載されたコポリエステルは、p−ヒドロキシ安息香酸および4,4'−ビフェノールの共重合割合が少ないモノマー組成であることを特徴としている。しかし、特公表03−50174号公報の実施例に記載されたコポリエステルの大部分は、4,4'−ビフェノールの共重合割合が極めて少ないため、射出成形時の流動性が悪く、また射出成形品の耐オーブンブリスター性や機械的特性が低いという問題点がある。
また、上記特公表03−50174号公報記載の実施例3、5、14および 15においては、4,4'−ビフェノール/ヒドロキノンのモル比は1/3〜1/4の範囲にあるが、p−ヒドロキシ安息香酸の共重合割合が27モル%以上と多い。さらに、実施例3、14および15におけるモノマー組成により得られた全芳香族液晶コポリエステルは、射出成形時の流動性は良好であるが、融点が 300℃以下であるため耐オーブンブリスター性が著しく劣るという問題が生じる。
【0004】
また、特開昭60−35425号公報、特開昭63−39918号公報、特開昭63−57663号公報および特開平03−52921号公報に記載されたコポリエステルもまた、p−ヒドロキシ安息香酸の共重合割合が30モル%以上と多い。またこのように高価なp−ヒドロキシ安息香酸の含有量が多いため、モノマーのコストが高いという問題点もある。
【0005】
このように、p−ヒドロキシ安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヒドロキノンおよび4,4'−ビフェノールからなる5成分系サーモトロピック液晶コポリエステルにおいて、p−ヒドロキシ安息香酸の共重合割合の少ないモノマー組成比で、射出成形時の流動性に優れ、さらに、良好な耐オーブンブリスター性を有する安価な全芳香族液晶コポリエステルを提供することは、従来の技術では困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような事情に鑑み、本発明は、p−ヒドロキシ安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヒドロキノンおよび4,4'−ビフェノールからなる安価な5成分系サーモトロピック液晶コポリエステルであって、かつ射出成形時の流動性および耐オーブンブリスター性に優れた全芳香族液晶コポリエステルを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定の共重合割合を有するp−ヒドロキシ安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヒドロキノンおよび4,4'−ビフェノールからなる5成分系サーモトロピック液晶コポリエステルは、射出成形時の流動性に優れ、かつ良好な耐オーブンブリスター性を示すことを見出して本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1は、下記式〔a〕から〔e〕により表される繰返し構造単位からなり、
【0008】
【化2】
【0009】
かつ以下の条件(1)から(5)を満たすことを特徴とする射出成形時の流動性に優れた全芳香族サーモトロピック液晶コポリエステルに関するものである。
(1)式〔a〕により表される繰返し構造単位の含有割合(モル%、以下「(a)」と略す、その他同様)が全体の5〜25モル%、
(2)(b)+(c)および(d)+(e)がいずれも全体の37.5〜47.5モル%、
(3)(b)/(c)のモル比が50/50〜80/20、
(4)(d)/(e)のモル比が20/80〜25/75、
(5)示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が300〜400℃。
本発明の第2は、上記本発明の第1の全芳香族サーモトロピック液晶コポリエステルに、組成物全体に対して10〜90重量%の無機充填材を配合してなる組成物に関するものである。
本発明の第3は、本発明の第1または第2において、射出成形時の流動性に優れていることを特徴とする全芳香族サーモトロピック液晶コポリエステルに関するものである。
【0010】
以下に本発明をさらに詳しく説明する。
本発明における上記式〔a〕で表される繰返し構造単位に該当するモノマーとしては、p−ヒドロキシ安息香酸およびその機能誘導体が挙げられる。機能誘導体としては、エステル化反応により式〔a〕の繰返し構造単位が誘導され得るモノマー、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸フェニル、p−アセトキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−アセトキシ安息香酸メチルなどが例示される。これらのモノマーは単独でもまた混合物でも使用することができる。
【0011】
本発明における上記式〔b〕で表される繰返し構造単位に該当するモノマーとしては、テレフタル酸およびその機能誘導体が挙げられる。機能誘導体としては、エステル化反応により式〔b〕の繰返し構造単位が誘導され得るモノマー、例えば、テレフタル酸、テレフタル酸ジフェニルエステル、同ジメチルエステル、同ジエチルエステルなどが例示される。これらのモノマーは単独でもまた混合物でも使用することができる。
【0012】
本発明における上記式〔c〕で表される繰返し構造単位に該当するモノマーとしては、イソフタル酸およびその機能誘導体が挙げられる。機能誘導体としては、エステル化反応により式〔c〕の繰返し構造単位が誘導され得るモノマー、例えば、イソフタル酸、イソフタル酸ジフェニルエステル、同ジメチルエステル、同ジエチルエステルなどが例示される。これらのモノマーは単独でもまた混合物でも使用することができる。
【0013】
本発明における上記式〔d〕で表される繰返し構造単位に該当するモノマーとしては、4,4'−ビフェノールおよびその機能誘導体が挙げられる。機能誘導体としては、エステル化反応により式〔d〕の繰返し構造単位が誘導され得るモノマーであり、例えば、4,4'−ビフェノール、4,4'−ジアセトキシビフェニルなどが例示される。これらのモノマーは単独でもまた混合物でも使用することができる。
【0014】
本発明における上記式〔e〕で表される繰返し構造単位に該当するモノマーとしては、ヒドロキノンおよびその機能誘導体が挙げられる。機能誘導体としては、エステル化反応により式〔e〕の繰返し構造単位が誘導され得るモノマー、例えば、ヒドロキノン、ジアセトキシベンゼンなどが例示される。これらのモノマーは単独でもまた混合物でも使用することができる。
【0015】
本発明における上記式〔a〕の構造単位の含有割合(a)は、全芳香族コポリエステル全体の5〜25モル%であることが必要である。式〔a〕の構造単位が5モル%未満では全芳香族コポリエステルの融点が上昇して流動性が低下し、さらに機械的強度が低下するため好ましくない。また、式〔a〕の構造単位が25モル%より多い場合にはモノマーのコストが高くなるため好ましくない。
本発明における上記式〔b〕および式〔c〕の構造単位の含有量は、(b)+(c)が全芳香族コポリエステル全体の37.5〜47.5モル%であり、また、(b)/(c)のモル比は、50/50〜80/20であることが必要である。
(b)/(c)のモル比が50/50未満であると融点が低下して耐熱性が低くなり、また80/20を超えると全芳香族コポリエステルの融点が上昇して流動性が低下するため、いずれも好ましくない。
本発明における上記式〔d〕および式〔e〕の構造単位の含有量は、(d)+(e)が全芳香族コポリエステル全体の37.5〜47.5モル%であり、また、(d)/(e)のモル比は、20/80〜25/75であることが必要である。
(d)/(e)のモル比が20/80未満であると機械的特性や流動性が著しく低下し、25/75を超えるとモノマーのコストが高くなるため好ましくない。
【0016】
前記式〔a〕から〔e〕によって表される繰返し単位からなり、かつ各繰返し単位の組成割合が前記(1)〜(4)の関係を満足する本発明の全芳香族コポリエステルは、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点が300〜400℃に範囲にあることが必要である。融点が300℃未満の場合は、耐熱性が低いために好ましくない。また、融点が400℃を超えると、成形時の流動性が低下するので好ましくない。
【0017】
本発明の全芳香族コポリエステルは、従来のポリエステルの重縮合法に準じて製造することができ、製法については特に制限はないが、代表的な方法としては例えば次の(1)〜(4)が挙げられる。
(1)芳香族ジヒドロキシ化合物、芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジカルボン酸、ならびに無水酢酸とから脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
(2)芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物、芳香族ヒドロキシカルボン酸のアシル化物および芳香族ジカルボン酸から脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
(3)芳香族ジヒドロキシ化合物、芳香族ヒドロキシカルボン酸のフェニルエステルおよび芳香族ジカルボン酸のジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応によって製造する方法。
(4)芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジカルボン酸を所望量のジフェニルカーボネートと反応させ、カルボキシル基をフェニルエステル化した後、芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応によって製造する方法。
例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ヒドロキノンおよび4,4'−ビフェノールを反応器に投入し、無水酢酸を加えて無水酢酸還流下にアセトキシ化を行い、その後昇温して250〜350℃の温度範囲で酢酸を留出しながら脱酢酸重縮合を行なうことによりポリエステルを製造する方法が挙げられる。重合時間は1時間から数十時間の範囲で選択することができる。
【0018】
重合反応に使用する触媒としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモンなどの金属塩触媒、N−メチルイミダゾールなどの有機化合物触媒等が挙げられる。
【0019】
本発明の全芳香族コポリエステルは、上記の重合反応のそれぞれについて溶融重合と固相重合を併用して製造することが望ましい。すなわち、溶融重合により重縮合を終えたポリマーを固相重合によりさらに高度に重合する製造方法である。例えば、溶融重合により得られたコポリエステルのプレポリマーを、窒素などの不活性雰囲気下において200〜350℃の温度範囲で1〜30時間熱処理することにより行われる。
【0020】
また、溶融重合における重合器は特に限定されるものではないが、一般の高粘度反応に用いられる撹拌設備、例えば、錨型、多段型、螺旋帯、螺旋軸等の各種形状の撹拌機またはそれらを変形したものを具備する撹拌槽型重合器、具体的にはワーナー式ミキサー、バンバリーミキサー、ポニーミキサー、ミュラーミキサー、ロールミル、連続操作可能なコニーダー、パグミル、ギヤーコンパウンダーなどから選ばれるものが望ましい。
【0021】
上記のようにして得られた本発明の全芳香族コポリエステルは、単独であるいは他の全芳香族ポリエステルと混合して使用することができる。
また、本発明の全芳香族コポリエステルは、主として機械的強度の向上のために、繊維状、粉粒状、板状などの無機または有機充填材を配合することができる。
繊維状の充填材としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカアルミナ繊維、チタン酸カリウム繊維、炭素もしくは黒鉛繊維、さらにアルミニウム、チタン、銅などの金属の繊維状物質が挙げられる。代表的なものはガラス繊維である。
一方、粒状充填材としては、カーボンブラック、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー、ガラスバルーン、ガラス粉、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、タルク、クレー、ケイ藻土、ウォラストナイトなどのケイ酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナ、硫酸カルシウム、その他各種金属粉末が挙げられる。
また、板状充填材としては、マイカ、ガラスフレーク、各種金属箔などが挙げられる。
そのほか、有機充填材の例としては、芳香族ポリエステル、芳香族ポリイミド、ポリアミドなどからなる耐熱性高強度の繊維などが挙げられる。
これらの充填材は、必要に応じてあらかじめ従来公知の収束剤または表面処理剤により処理することができる。
【0022】
また、上記以外に従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、増量剤、補強剤、顔料、難然化剤等の種々の添加剤を適宜の量添加してもよい。これらの添加剤および充填材は1種または2種以上を併用することができる。
【0023】
無機充填材を用いる場合には、その配合量は組成物全体に対して10重量%以上、90重量%以下、好ましくは80重量%以下である。90重量%より多い無機充填材を配合すると、機械的強度は低下するため好ましくない。10重量%未満では無機充填材の配合効果を発揮することが困難である。
【0024】
上記のようにして得られる本発明のサーモトロピック液晶コポリエステルおよびその組成物は、従来公知の成形方法、例えば、押出成形、射出成形、圧縮成形、ブロー成形などの通常の溶融成形に供して、繊維、フィルム、三次元成形品、容器、ホースなどに加工し成形品を得ることができる。特に好ましくは、射出成形に供する。射出成形においては、従来公知の条件により行うことができる。
【0025】
なお、このようにして得られた成形品は、適宜の条件による熱処理によって強度を増大させることができ、弾性率も多くの場合向上させることができる。この熱処理は、成形品を不活性雰囲気(例えば窒素、アルゴン、ヘリウム)中、酸素含有雰囲気(例えば空気)中または減圧下において、ポリマーの融点以下の温度で加熱することによって行なうことができる。
【0026】
【発明の実施の態様】
以下に実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
なお、以下の各実施例および比較例により得られた全芳香族コポリエステルは、常法により測定したところいずれも溶融時に光学異方性を示したので、液晶性を示すことが確認された。
【実施例】
<測定方法>
実施例に示されている物性値は、次の方法で測定した。
(1)融点測定
示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)製)を用いて測定し、リファレンスとしてα−アルミナを用いる。測定温度条件は、20℃/分で室温から420℃まで昇温してポリマーを完全に融解させた後、10℃/分で150℃まで降温し、さらに20℃/分で430℃まで昇温したときに得られた吸熱ピークの頂点を融点とする。
(2)見掛け粘度
キャピラリーレオメーター(商品名:モデル2010、インテスコ(株)製)を用いる。キャピラリーとして径1.0mm、長さ40mm、流入角90°のものを用い、せん断速度100sec-1で、DSCで測定した融点よりも30℃低い温度から+4℃/分の昇温速度で等速加熱を行いながら測定を行ない、融点より20℃高い温度における見掛け粘度を求める。
(3)射出成形時の流動長測定
製造したコポリエステルにミルドガラスファイバー30重量%を充填したペレットを用い、射出成形機(商品名:UH−1000、日精樹脂産業(株)製)により、射出速度100mm/秒、射出圧800kgf/cm2で融点より20℃高い温度における0.2mm厚のバーフロー長を測定する。
(4)引張強度の測定
製造したコポリエステルにミルドガラスファイバー30重量%を充填したペレットを用い、射出成形機(商品名:SG−25 Sycap.M III、住友重機械工業(株)製)によりASTM引張試験片を作成し、ASTM D638に準じて引張強度を測定する。
(5)耐ブリスター性の測定
製造したコポリエステルにミルドガラスファイバー30重量%を充填したペレットを用い、射出成形機(商品名:Mini−7、(株)新潟鉄工所製)により 50mm(長さ)×10mm(幅)×1mm(厚さ)の試験片を作成し、試験片を所定温度に保持したエアーオーブン中に30分間放置して、試験片表面にブリスターおよび変形の発生しない最高温度を耐ブリスター温度とする。
【0027】
<実施例1>
SUS316の材質を用いたダブルヘリカル撹拌翼を有する重合槽(日東高圧(株)製)に、p−ヒドロキシ安息香酸(HBA、上野製薬(株)製)414.36g(3.00モル)、イソフタル酸(IPA、エイ・ジー・インターナショナルケミカル(株)製)383.76g(2.31モル)、テレフタル酸(TPA、三井石油化学工業(株)製)779.15g(4.69モル)、ヒドロキノン(HQ、三井石油化学工業(株)製)583.58g(5.30モル)、4,4'−ビフェノール(BP、本州化学工業(株)製)316.56g(1.70モル)および触媒として酢酸マグネシウム(東京化成(株)製)0.35gを仕込み、系内を60℃に昇温しながら減圧−窒素注入を5回繰り返して窒素置換を行なった。
窒素置換終了後、無水酢酸(チッソ(株)製)1909.85g(18.71モル)を加え、撹拌翼の回転数100rpmとして、150℃まで1時間で昇温し、還流状態で2時間アセチル化反応を行なった。
アセチル化終了後、酢酸を留出させながら0.5℃/分の速度で昇温して重縮合を行い、330℃において重合物をリアクター下部の抜き出し口から取り出した。取り出した重合体を粉砕機により粉砕し、円筒型回転式リアクターを有する固相重合装置(旭硝工(株)製)により固相重合を行なった。リアクターに粉砕した重合体を投入し、窒素を1リットル/分流通し、回転数20rpmで260℃まで2時間かけて昇温し、260℃で1時間保持し、次いで280℃まで2分間で昇温して2時間保持し、同様に300℃まで昇温して2時間保持し、さらに320℃まで昇温して7時間保持した後、室温まで1時間で冷却してポリマーを得た。得られた重合体についてDSCで測定したところ、融点は343℃であった。また、363℃における見掛け粘度は1110ポイズであった。
得られた全芳香族液晶コポリエステル70重量%に対し、ミルドガラスファイバー(商品名:MJH20JMH−1−20、旭ファイバーグラス(株)製)30重量%を配合し、30mmφ二軸押出機(商品名:PCM−30、池貝鉄工(株)製)を用いてシリンダーの最高温度370℃で混合を行い、ガラスファイバー30重量%を充填した組成物を得た。得られた組成物を用いて、射出成形時の流動長、引張強度および耐ブリスター性の測定を行なった。
モノマー共重合組成を表1に、また得られた重合体の融点および見掛け粘度、ならびに充填物を配合した組成物の射出成形時の流動長、引張強度および耐ブリスター性の測定結果を表2に示す。
【0028】
<実施例2>
実施例1と同様の装置を用い、p−ヒドロキシ安息香酸179.56g (1.30モル)、テレフタル酸722.67g(4.35モル)、イソフタル酸 581.46g(3.50モル)、4,4'−ビフェノール316.56g(1.70モル)、ヒドロキノン677.18g(6.15モル)および酢酸マグネシウム 0.35gを投入し、無水酢酸1909.85gを加え、実施例1と同様の操作で重合体を得た後、同様に測定を行なった。モノマー組成比および測定結果を表1および表2に示す。
【0029】
<比較例1>
(特公表平3−501749の実施例6と同一のモノマー組成)
実施例1と同様の装置を用い、p−ヒドロキシ安息香酸414.36g (3.00モル)、テレフタル酸581.46g(3.50モル)、イソフタル酸581.46g(3.50モル)、4,4'−ビフェノール52.14g(0.28モル)、ヒドロキノン739.94g(6.72モル)および酢酸マグネシウム 0.35gを投入し、無水酢酸1909.85gを加え、実施例1と同様の操作で重合体を得た後、同様に測定を行なった。モノマー組成比および測定結果を表1および表2に示す。
【0030】
<比較例2>
実施例1と同様の装置を用い、p−ヒドロキシ安息香酸414.36g (3.00モル)、テレフタル酸779.15g(4.69モル)、イソフタル酸383.76g(2.31モル)、4,4'−ビフェノール949.67g(5.10モル)、ヒドロキノン209.21g(1.90モル)および酢酸マグネシウム0.35gを投入し、無水酢酸1909.85gを加え、実施例1と同様の操作で重合体を得た後、同様に測定を行なった。モノマー組成比および測定結果を表1および表2に示した。
【0031】
<比較例3>
実施例1と同様の装置を用い、p−ヒドロキシ安息香酸414.36g (3.00モル)、テレフタル酸1078.18g(6.49モル)、イソフタル酸84.73g(0.51モル)、4,4'−ビフェノール316.56g(1.70モル)、ヒドロキノン583.58g(5.30モル)および酢酸マグネシウム 0.35gを投入し、無水酢酸1909.85gを加え、実施例1と同様の操作で重合体を得た後、同様に測定を行なった。モノマー組成比および測定結果を表1および表2に示す。
【0032】
<比較例4>
実施例1と同様の装置を用い、p−ヒドロキシ安息香酸414.36g (3.00モル)、テレフタル酸423.63g(2.55モル)、イソフタル酸739.28g(4.45モル)、4,4'−ビフェノール316.56g(1.70モル)、ヒドロキノン583.58g(5.30モル)および酢酸マグネシウム0.35gを投入し、無水酢酸1909.85gを加え、実施例1と同様の操作で重合体を得た後、同様に測定を行なった。モノマー組成比および測定結果を表1および表2に示す。
【0033】
<比較例5>
実施例1と同様の装置を用い、p−ヒドロキシ安息香酸35.91g(0.26モル)、テレフタル酸825.67g(4.97モル)、イソフタル酸564.85g(3.40モル)、4,4'−ビフェノール333.32g(1.79モル)、ヒドロキノン724.52g(6.58モル)および酢酸マグネシウム0.35gを投入し、無水酢酸1909.85gを加え、実施例1と同様の操作で重合体を得た後、同様に測定を行なった。モノマー組成比および測定結果を表1および表2に示す。
【0034】
<比較例6>
(特公表平3−501749の実施例15と同一モノマー組成)
実施例1と同様の装置を用い、p−ヒドロキシ安息香酸845.29g (6.12モル)、テレフタル酸576.47g(3.47モル)、イソフタル酸327.28g(1.97モル)、4,4'−ビフェノール253.25g(1.36モル)、ヒドロキノン449.25g(4.08モル)および酢酸マグネシウム0.35gを投入し、無水酢酸1909.85gを加え、実施例1と同様の操作で重合体を得た後、同様に測定を行なった。モノマー組成比および測定結果を表1および表2に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
表1および表2において、実施例1および2を、比較例1および2と比較すると、p−ヒドロキシ安息香酸(HBA)の共重合割合およびテレフタル酸 (TPA)/イソフタル酸(IPA)のモル比が本発明の特許請求の範囲にあっても、4,4'−ビフェノール(BP)/ヒドロキノン(HQ)のモル比が適正な範囲から外れる場合には、BP/HQモル比が低すぎると(比較例1)、射出成形時の流動性、引張強度および耐オーブンブリスター性が劣る結果を示す。逆にBP/HQモル比が高すぎると(比較例2)、融点が著しく低下して300℃以下になり、耐オーブンブリスター性が劣る結果になる。
【0038】
比較例3および4と実施例とを比較すると、HBA共重合割合およびBP/ HQモル比が本発明の特許請求の範囲にあっても、TPA/IPAモル比が適正な範囲から外れる場合には、TPA/IPAモル比が高すぎると(比較例3)、融点が著しく高くなり射出成形時の流動性が低下し、さらに引張強度および耐オーブンブリスター性も劣る結果を示す。逆にTPA/IPAモル比が低すぎると(比較例4)、融点が著しく低下して耐オーブンブリスター性が劣る結果になる。
【0039】
比較例5および6と実施例とを比較すると、BP/HQモル比およびTPA/IPAモル比が本発明の特許請求の範囲にあっても、HBA共重合割合が適正な範囲から外れる場合には、HBAの割合が低すぎると(比較例5)、射出成形時の流動性、引張強度および耐オーブンブリスター性が劣る結果を示す。逆に HBAの割合が高すぎると(比較例6)、融点が著しく低下して耐オーブンブリスター性が劣る結果になる。
【0040】
一方、実施例1および2の結果によれば、HBAの共重合割合、TPA/ IPAモル比およびBP/HQモル比がすべて適正な範囲内にあり、射出成形時の流動性、引張強度および耐オーブンブリスター性はすべて良好な値を示す。
上記の結果から、本発明のサーモトロピック液晶コポリエステルは、射出成形時の流動性、引張強度および耐オーブンブリスター性などの材料特性に優れ、さらに、p−ヒドロキシ安息香酸の共重合割合が少ないことからモノマーのコストが安く、安価な液晶コポリエステルであることがわかる。
【0041】
【発明の効果】
本発明のサーモトロピック液晶コポリエステルは、特定のモノマー組成を有することにより、射出成形時の流動性に優れ、さらに引張強度および耐オーブンブリスター性にも優れている。従って射出成形材料として好ましく、かつ安価であるため応用範囲がきわめて広い。
Claims (3)
- 請求項1に記載の全芳香族サーモトロピック液晶コポリエステルに、組成物全体に対して10〜90重量%の無機充填材を配合してなる組成物。
- 射出成形時の流動性に優れたことを特徴とする請求項1に記載の全芳香族サーモトロピック液晶コポリエステルまたは請求項2に記載の組成物。
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