JP3906933B2 - 酸化インジウムオルガノゾルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、酸化インジウムオルガノゾル、その製造方法および導電性被膜付基材に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
従来より、Snなどの異種元素を含有する導電性酸化インジウム被膜は、液晶表示素子の透明電極などとして用いられている。
【0003】
この種の導電性酸化インジウム被膜は、真空蒸着法、スパッタリング法などの乾式法、または以下に述べる湿式法で基材上に形成されている。
しかしながら、乾式法で導電性酸化インジウム被膜を形成する場合、被膜形成用装置が高価であり、しかも大面積の被膜が得難いといった問題点があった。
【0004】
また、湿式法では、無機または有機のインジウム化合物を水および/または有機溶媒に溶解または分散して含む塗布液を基材上に塗布し、乾燥・焼成することにより導電性酸化インジウム被膜が形成されている。
【0005】
たとえば、特開昭59−223229号公報には、In・Sn複合酸化物ゾル組成物を塗布液として用い、この塗布液を基材上に塗布し、乾燥・焼成することにより、導電性酸化インジウム被膜を形成する方法が開示されている。
【0006】
これら従来の湿式法においては、塗布液に含まれるインジウム化合物は、無機または有機のインジウム塩などいわゆる酸化インジウムの前駆体である。上記特開昭59−223229号公報に開示されているIn・Sn複合酸化物ゾル中の複合酸化物微粒子も、その製造法からみて、非晶質の酸化物である。
【0007】
したがって、このような塗布液を基材上に塗布した後に乾燥しただけでは高い導電性を示す結晶性酸化インジウムの被膜は得られず、基材上に塗布した後の塗膜を400℃以上の高温で焼成してインジウム塩を熱分解するとともに得られた酸化インジウムを結晶化することにより、はじめて高導電性の酸化インジウム被膜が形成される。上記特開昭59−223229号公報の実施例でも500℃で焼成する工程を経て導電性被膜が形成されている。
【0008】
しかしながら、このように焼成工程で500℃程度の温度で加熱すると、基材がプラスチック基材である場合には基材が損傷してしまい、また、基材がガラス基材である場合には基材に歪み、割れなどが生じるという問題点があった。
【0009】
本発明者らは、上記のような従来技術に伴う問題点を解決するため、高温で焼成することにより、導電性が付与された結晶性酸化インジウム粉末であって、異種元素を含有する結晶性酸化インジウム粉末を予め調製し、この粉末を粉砕した後、酸性水溶液またはアルカリ性水溶液に分散させることによって得られた結晶性酸化インジウムゾル、および該ゾルを用いて形成された導電性酸化インジウム被膜付基材について、すでに特願平6−278148号明細書で提案している。この発明によれば、従来のように基材上に酸化インジウムゾルを塗布して得られた塗膜を高温で焼成しなくても導電性に優れた酸化インジウム被膜が得られる。
【0010】
しかしながら、その後の本発明者らの検討によれば、上述した結晶性酸化インジウムゾルは、その分散媒が水であるか、たとえこの水が有機溶媒で置換されていたとしても、ゾル中の結晶性酸化インジウム微粒子が有機溶媒で置換する前に水と接触していたことに起因して、ゾル中の結晶性酸化インジウム微粒子表面が水和されており、このため、このゾルを用いて形成された被膜の導電性が若干低くなるという問題点があることが判明した。
【0011】
本発明者らは、上記知見に基づいて鋭意研究を重ねた結果、結晶性酸化インジウムゾルの分散媒として双極子モーメントが特定された有機溶媒を用いることにより、さらにゾル製造過程で結晶性酸化インジウム粉末を水と接触させないようにすればより効果的に上記問題点が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
【発明の目的】
本発明は、上記の如き従来の結晶性酸化インジウムゾルから形成された導電性被膜に比較してより一層導電性の高い被膜が基材上に形成できるような酸化インジウムゾル、その製造方法およびこのような高導電性酸化インジウム被膜がプラスチックまたはガラス基材上に形成された高導電性被膜付基材を提供することを目的としている。
【0013】
【発明の概要】
本発明に係る酸化インジウムオルガノゾルは、異種元素を含有する結晶性酸化インジウム微粒子が1.9[Debye] 以上の双極子モーメントを有する有機溶媒または該有機溶媒を含む混合有機溶媒に分散されていることを特徴としている。
【0014】
本発明に係る酸化インジウムオルガノゾルの製造方法は、異種元素を含有する結晶性酸化インジウム微粒子を、直接、1.9[Debye] 以上の双極子モーメントを有する有機溶媒または該有機溶媒を含む混合有機溶媒に分散させた後、粉砕処理し、水分濃度1重量%以下の酸化インジウムオルガノゾルを得ることを特徴としている。
【0015】
本発明に係る導電性被膜付基材は、上記酸化インジウムオルガノゾルから形成された導電性被膜を基材上に有することを特徴としている。
【0016】
【発明の具体的説明】
酸化インジウムオルガノゾル
まず、本発明に係る酸化インジウムオルガノゾルにつき具体的に説明する。
【0017】
本発明に係る酸化インジウムオルガノゾルでは、異種元素を含有する結晶性酸化インジウム微粒子が1.9[Debye] 以上の双極子モーメントを有する有機溶媒または該有機溶媒を含む混合有機溶媒に分散されている。
【0018】
本明細書中で異種元素を含有する結晶性酸化インジウムとは、酸化インジウム中に1種または2種以上の異種元素(In以外の元素)が含有されていて、これらの異種元素がInに代わって酸化インジウム結晶の一部を構成しているか、あるいは酸化インジウムと固溶した状態で存在している結晶性の酸化インジウムを意味し、異種元素化合物と酸化インジウムとの単なる混合物ではない。
【0019】
このような結晶性酸化インジウムを形成するのに適当な異種元素としては、Si、Ge、Sn、Zr、Ti、Fなどが挙げられる。
これらの異種元素の含有量が少なすぎると、酸化インジウム結晶中を伝導する電子の密度が低くなり、充分な導電性を有する酸化インジウムが得られないことがある。逆にこれらの異種元素の含有量が多すぎると、酸化インジウムの結晶性が低下して酸化インジウム結晶中を伝導する電子の移動度が低くなり、充分な導電性を有する酸化インジウム微粒子が得られないことがある。
【0020】
このような点から、異種元素がSi、Ge、Sn、ZrおよびTiから選ばれる1種または2種以上である場合、これらの異種元素は、酸化インジウム中に酸化物換算量(ただし、異種元素がSnである場合はSnO2 換算量であり、異種元素がTiである場合はTiO2 換算量である)で1〜20重量%含まれていことが好まく、また、異種元素がFである場合には、Fとして酸化インジウム中に0.1〜10重量%含まれてるいことが好ましい。
【0021】
本発明の酸化インジウムオルガノゾルに用いられる異種元素を含有する結晶性酸化インジウム微粒子は、結晶性であり、500℃以上の高温焼成を経て得られるbixbyite型酸化インジウムと同様のX線回折パターンを示す。
【0022】
この微粒子の平均粒径は約5〜250nmであることが好ましく、このような平均粒径を有する微粒子を用いると、安定性に優れた酸化インジウムオルガノゾルを製造することができると同時に透明性に優れた導電性被膜が形成できる。
【0023】
また、この微粒子は、ゾル中に約30重量%以下の量で含まれていることが好ましく、この量を越えるとゾルの安定性が損なわれる場合がある。
上記範囲の平均粒径を有する酸化インジウム微粒子を上記のような量で含む酸化インジウムオルガノゾルは、ゲル化を起こすこともなく、また長期間、たとえば室温で1年以上にわたって微粒子の凝集・沈降もなく、安定である。
【0024】
本発明に係る酸化インジウムオルガノゾルでは、1.9[Debye] 以上の双極子モーメントを有する有機溶媒または該有機溶媒を含む混合有機溶媒が、上述したような異種元素を含有する結晶性酸化インジウム微粒子の分散媒として用いられる。
【0025】
双極子モーメントが1.9[Debye] 以上である有機溶媒としては、たとえば分子内にカルボニル基および/またはエーテル基を有する有機溶媒、あるいは複素環を有する有機溶媒が用いられ、具体的にはアセトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン類、アセチルアセトン、アセトニルアセトンなどのβ−ジケトン類、アセト酢酸エステル、乳酸エステル、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテートなどのエステル類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、N−メチルピロリドンなどの複素環化合物、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0026】
上記のような1.9[Debye] 以上の双極子モーメントを有する有機溶媒が酸化インジウムオルガノゾル中に存在すると、ゾルの安定性が向上する。
これは、ゾル中の酸化インジウム微粒子が1.9[Debye] 以上の双極子モーメントを有する有機溶媒と溶媒和を形成し、酸化インジウム微粒子の凝集を防止する、すなわち、酸化インジウム微粒子の分散剤として作用しているためと推定される。
【0027】
本発明に係る酸化インジウムオルガノゾルでは、1.9[Debye] 以上の双極子モーメントを有する有機溶媒と1.9[Debye] 未満の双極子モーメントを有する有機溶媒との混合有機溶媒を分散媒として用いてもよい。
【0028】
この混合有機溶媒に用いられる1.9[Debye] 未満の双極子モーメントを有する有機溶媒としては、従来のオルガノゾルの分散媒、たとえばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、トリメチレングリコールなどのグリコール類などが挙げられる。
【0029】
本発明に係る酸化インジウムオルガノゾルの分散媒が、1.9[Debye] 以上の双極子モーメントを有する有機溶媒と1.9[Debye] 未満の双極子モーメントを有する有機溶媒との混合溶媒である場合、安定性に優れたゾルを提供するためには、1.9[Debye] 以上の双極子モーメントを有する有機溶媒の量が、ゾル中の酸化インジウム微粒子1重量部当り0.1重量部以上であることが好ましい。
【0030】
また、本発明に係る酸化インジウムオルガノゾルでは、水分濃度が5重量%以下、好ましくは1重量%以下であることが望ましい。ゾル中の水分濃度が5重量%を越えると、ゾル中で酸化インジウム微粒子の表面が水和し、得られる導電性酸化インジウム被膜の導電性が低下するおそれがある。
【0031】
酸化インジウムオルガノゾルの製造方法
次いで、本発明に係る酸化インジウムオルガノゾルの製造方法について説明する。
【0032】
本発明に係る酸化インジウムオルガノゾルは、異種元素を含有する結晶性酸化インジウム粉末を上述したような特定の双極子モーメントを有する有機溶媒を含む分散媒中に、必要に応じて粉砕処理を施して分散させることによって製造される。
【0033】
本発明に係る酸化インジウムオルガノゾルの原料として用いられる異種元素を含有する結晶性酸化インジウム粉末は、たとえば異種元素の塩とインジウム塩との混合水溶液中でこれらの塩を加水分解し、得られた加水分解物を乾燥・焼成することにより得られる。好ましくは特開昭63−11519号公報に開示された方法で製造された導電性酸化インジウム微粉末が用いられる。
【0034】
このような方法で得られた異種元素を含有する結晶性酸化インジウム粉末は、この粉末を構成する微粒子が良好な導電性を示すようにするために、通常、400℃以上で加熱処理がなされる。この結果、一次粒子が焼結して数μm〜数百μmの平均粒径を有する二次粒子からなる粉末が得られる。このような粒径の大きな粉末を用いて酸化インジウムゾルを製造するためには、これらの粉末を粉砕する必要がある。
【0035】
しかし、これらの粉末を水に分散させてボールミルやサンドミルなどによる通常の方法でコロイド次元の粒径まで粉砕しようとすると、粉砕効率が悪く、また得られた粉砕粒子は不安定で分散媒中ですぐに凝集してしまう。
【0036】
そこで、これらの焼結二次粒子からなる粉末を機械的手段で予め粉砕した後、分散媒として水を用いることなく、直接、1.9[Debye] 以上の双極子モーメントを有する有機溶媒または該有機溶媒を含む混合有機溶媒に分散させることによって酸化インジウムオルガノゾルが製造される。この過程で酸化インジウム微粒子は有機溶媒と溶媒和を形成する。この際、特に加熱処理を行う必要はないが、異種元素を含有する結晶性酸化インジウム粉末を構成している二次粒子の焼結が強固な場合には、これら粉末を、分散媒に分散した後、サンドミル、ボールミルなどの粉砕手段で粉砕処理することが好ましい。
【0037】
導電性被膜付基材
本発明に係る導電性被膜付基材は、ガラス、プラスチック、金属、セラミックなどからなる平板、立体物、フィルムなどの基材上に上記のようにして製造された本発明に係る酸化インジウムゾルからなる塗布液から形成された通常、10〜300nm、好ましくは30〜200nmの膜厚の導電性被膜を有している。
【0038】
この導電性被膜付基材は、導電性被膜の表面抵抗が小さく、透明性に優れ、しかもヘーズが小さいので液晶表示素子やタッチパネルの透明電極付基板、陰極線管の前面板、その他の電極付基材などに好適に応用することができる。
【0039】
この導電性被膜付基材は、基材上に本発明に係る酸化インジウムオルガノゾルをディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法などの方法で塗布し、次いで得られた塗膜を乾燥・焼成することによって製造される。
【0040】
本発明では、上記の焼成を200℃以下の低温で行っても従来の導電性酸化インジウム被膜と同等の高い導電性を示す。したがって、従来の導電性酸化インジウム被膜付基材のように500℃以上の温度で加熱する必要はなく、このため、このような高温を加熱することに起因する基材の損傷、歪み、割れなどが生じることはない。
【0041】
この導電性被膜付基材を製造する際、本発明に係る酸化インジウムオルガノゾルのみを用いてもよいが、これに染料、有機顔料、あるいはカーボンブラックなどの無機顔料を本発明の目的を損なわない範囲の量で加えててもよい。このような着色剤を含む酸化インジウムオルガノゾルからは着色された導電性被膜が基材上に形成される。
【0042】
上記のようにして形成された導電性被膜に機械的強度が要求されるときは、この導電性被膜上に保護膜を形成すればよい。この保護膜を形成する際には、通常の保護膜形成用塗布液、例えばアルコキシシラン加水分解物を含むシリカ系被膜形成用塗布液が用いられる。
【0043】
また、上記のようにして形成された導電性被膜上に、この導電性被膜よりも屈折率の低い透明被膜をその光学的膜厚をコントロールしながら形成すれば、反射防止性の導電性被膜付基材が得られる。さらに、この屈折率の低い透明被膜を上述したようなシリカ系被膜形成用塗布液を用いて形成すれば、反射防止性能に優れ、しかも機械的強度が高い導電性被膜付基材が得られる。
【0044】
【発明の効果】
本発明に係る酸化インジウムオルガノゾルは、異種元素を含有する結晶性酸化インジウム微粒子のゾルであるので、基材上にこのゾルを含む塗布液を塗布し、200℃以下の低温で乾燥・焼成して酸化インジウム被膜を形成しても高い導電性を有する被膜付基材が得られる。
【0045】
このため、本発明によれば、酸化インジウム被膜に高導電性を付与するために塗布後、500℃以上の焼成過程を経て製造する必要がある従来の導電性酸化インジウム被膜付基材に比較して耐熱性の低い基材にも導電性被膜付基材が形成できる。
【0046】
また、本発明に係る酸化インジウムオルガノゾルは、ゾル製造過程で水を用いることなく、異種元素を含有する結晶性酸化インジウム微粒子を、直接、1.9[Debye] 以上の双極子モーメントを有する有機溶媒または該有機溶媒を含む混合有機溶媒に分散して製造されるので、分散後にゾル中の微粒子が凝集することはなく、水を用いて製造された従来の酸化インジウムゾルに比較して微粒子の分散性に優れている。
【0047】
このため、本発明に係る酸化インジウムオルガノゾルから得られた被膜は、酸化インジウム微粒子の凝集に起因する斑点、白濁、むらなどがなく、外観に優れている。
【0048】
さらに、本発明に係る酸化インジウムオルガノゾルを用いると、水を用いて製造された従来の酸化インジウムゾルを用いた場合に比較して導電性の高い被膜を基材上に形成することができる。
【0049】
したがって、本発明によれば、ゾル中の異種元素を含有する結晶性酸化インジウム微粒子の粒径を小さくすることにより、ヘーズが低く、しかも導電性の高い被膜を基材上に形成することができる。
【0050】
さらにまた、本発明に係る酸化インジウムオルガノゾル中の異種元素を含有する酸化インジウム微粒子が結晶性であるため、このゾルからなる塗布液から基材上に形成された導電性被膜の屈折率は、1.7〜2.0と高い。このようにして基材上に形成された導電性酸化インジウム被膜上に低屈折率の被膜を積層すれば、導電性および反射防止性に優れた導電性被膜付基材を提供することが可能である。
【0051】
すなわち、本発明によれば、導電性および反射防止性に優れた導電性被膜付基材が提供可能である。
【0052】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0053】
【実施例1】
硝酸インジウム79.9gを水686gに溶解した硝酸インジウム水溶液と、スズ酸カリウム12.7gを10重量%水酸化カリウム水溶液に溶解したスズ酸カリウム水溶液とを調製した。
【0054】
50℃に加熱された1000gの水に攪拌しながら前記硝酸インジウム水溶液と前記スズ酸カリウム水溶液とを添加し、系内のpHを11に保持しながら水溶液中の硝酸インジウムとスズ酸カリウムとを加水分解した。このようにして生成した微粒子をろ別し、洗浄し、乾燥した後、窒素中300℃で3時間焼成し、さらに窒素中500℃で6時間焼成してSnがドープされたIn2 O3 (SnO2 :17.5重量%)の微粉末(A)を得た。
【0055】
この微粉末(A)100gをアセチルアセトン40gに充分に混合・分散させてからエタノール360gを加えた後、この分散液をサンドミルに収容し、この分散液中の微粉末(A)をサンドミルで5時間粉砕して固形分濃度20重量%のゾルAを得た。
【0056】
このゾルA中の微粒子の平均粒径は40nmであり、ゾルA中の水分濃度は0.3%であった。
このようにして得られたゾルAは、6ケ月以上にわたって微粒子の凝集・沈降もなく、安定であった。
【0057】
このゾルA中に含まれている微粒子の乾燥後のX線回折図を図1に示す。
図1は、この微粒子がBixbyite型のIn2 O3 であることを示している。
【0058】
【実施例2】
スズ酸カリウムの量を7.3gに代えた以外は実施例1と同様にしてSnがドープされたIn2 O3 (SnO2 :10.5重量%)の微粉末(B)を得た。
【0059】
この微粉末(B)100gをメチルエチルケトン400gに充分に混合・分散させた後、この分散液をサンドミルに収容し、この分散液中の微粉末(B)をサンドミルで3時間粉砕して固形分濃度20重量%のゾルBを得た。
【0060】
このゾルB中の微粒子の平均粒径は60nmであり、ゾルB中の水分濃度は0.2%であった。
このようにして得られたゾルBは、6ケ月以上にわたって微粒子の凝集・沈降もなく、安定であった。
【0061】
【実施例3】
スズ酸カリウムの量を9.5gに代えた以外は実施例1と同様にしてSnがドープされたIn2 O3 (SnO2 :13.3重量%の微粉末(C)を得た。
【0062】
この微粉末(C)100gをメチルセロソルブ300gに充分に混合・分散させてからメタノール100gを加えた後、この分散液をサンドミルに収容し、この分散液中の微粉末(C)をサンドミルで8時間粉砕して固形分濃度20重量%のゾルCを得た。
【0063】
このゾルC中の微粒子の平均粒径は10nmであり、ゾルC中の水分濃度は0.4%であった。
このようにして得られたゾルCは、6ケ月以上にわたって微粒子の凝集・沈降もなく、安定であった。
【0064】
【参考例1】
塩化インジウム66.0gと塩化スズ7.0gとを水788gに溶解した塩化インジウム−塩化スズ水溶液と、10重量%水酸化カリウム水溶液とをそれぞれ調製した。
【0065】
50℃に加熱された1000gの水に、攪拌しながら前記塩化インジウム−塩化スズ水溶液と前記水酸化カリウム水溶液とを添加し、系内のpHを11に保持しながら水溶液中の塩化インジウムと塩化スズとを加水分解した。このようにして生成した微粒子をろ別し、洗浄し、乾燥した後、窒素中300℃で3時間焼成し、さらに窒素中500℃で6時間焼成してSnがドープされたIn2 O3 (SnO2 :13.0重量%)の微粉末(D)を得た。
【0066】
この微粉末(D)100gをメチルセロソルブ300gに充分に混合・分散させてからエタノール86gと純水24gとを加えた後、この分散液をサンドミルに収容し、この分散液中の微粉末(D)をサンドミルで5時間粉砕して固形分濃度20重量%のゾルDを得た。
【0067】
このゾルD中の微粒子の平均粒径は40nmであり、ゾルD中の水分濃度は5.0%であった。
このようにして得られたゾルDは、6ケ月以上にわたって微粒子の凝集・沈降もなく、安定であった。
【0068】
【実施例5】
スズ酸カリウム12.7gに代えてフッ化アンモニウム1.79g用いた以外は実施例1と同様にしてSnおよびFがドープされたIn2 O3 (SnO2 :17.1重量%、F:2.0重量%)の微粉末(E)を得た。
【0069】
この微粉末(E)100gをアセト酢酸エチル200gに充分に混合・分散させてからイソプロピルアルコール200gを加えた後、この分散液をサンドミルに収容し、この分散液中の微粉末(E)をサンドミルで2時間粉砕して固形分濃度20重量%のゾルEを得た。
【0070】
このゾルE中の微粒子の平均粒径は70nmであり、ゾルE中の水分濃度は0.2%であった。
このようにして得られたゾルEは、6ケ月以上にわたって微粒子の凝集・沈降もなく、安定であった。
【0071】
【実施例6】
実施例1の加水分解工程で得られた微粒子をろ別し、洗浄した後、この微粒子をSiO2 換算量で20重量%のシリカゾル(触媒化成工業(株)製S−550、平均粒径5.5nm)5gとを混合した。この混合物を乾燥し、次いで実施例1と同様にして焼成してSnおよびSiがドープされたIn2 O3 (SnO2 :17.1重量%、SiO2 :2.2重量%)の微粉末(F)を得た。
【0072】
この微粉末(F)100gをN−メチルピロリドン10gに充分に混合・分散させてからn−ブタノール390gを加えた後、この分散液をサンドミルに収容し、この分散液中の微粉末(F)をサンドミルで4時間粉砕して固形分濃度20重量%のゾルFを得た。
【0073】
このゾルF中の微粒子の平均粒径は50nmであり、ゾルF中の水分濃度は0.8%であった。
このようにして得られたゾルFは、6ケ月以上にわたって微粒子の凝集・沈降もなく、安定であった。
【0074】
【実施例7】
シリカゾルの代わりにZrO2 換算量で5重量%の炭酸ジルコニウム・アンモニウム水溶液3g用いた以外は実施例3と同様にしてSnおよびZrがドープされたIn2 O3 (SnO2 :17.4重量%、Zr:0.3重量%)の微粉末(G)を得た。
【0075】
この微粉末(G)100gをジアセトンアルコール300gに充分に混合・分散させてからエチレングリコール100gを加えた後、この分散液をサンドミルに収容し、この分散液中の微粉末(G)をサンドミルで2時間粉砕して固形分濃度20重量%のゾルGを得た。
【0076】
このゾルG中の微粒子の平均粒径は100nmであり、ゾルG中の水分濃度は0.1%であった。
このようにして得られたゾルGは、6ケ月以上にわたって微粒子の凝集・沈降もなく、安定であった。
【0077】
【参考例2】
微粉末(C)100gにメチルセロソルブ300gに充分に混合・分散させてからメタノール61gと純水39gを加えた後、この分散液をサンドミルに収容し、この分散液中の微粉末(C)をサンドミルで5時間粉砕して固形分濃度20重量%のゾルHを得た。
【0078】
このゾルH中の微粒子の平均粒径は80nmであり、ゾルH中の水分濃度は8.0%であった。
このようにして得られたゾルHは、6ケ月以上にわたって微粒子の凝集・沈降もなく、安定であった。
【0079】
【参考例3】
微粉末(A)200gを純水500gに分散した分散液のpHを濃塩酸で1.0に調整した後、この分散液をサンドミルに収容し、この分散液中の微粉末(A)をサンドミルで5時間粉砕した。次いで、この分散液をオートクレーブ中で液相に保ちながら250℃で1時間加熱して固形分濃度20重量%の水性ゾルを得た。
【0080】
この水性ゾルにメチルセルソルブを加え、減圧蒸留法(90℃)で溶媒置換して水分濃度0.8重量%、固形分濃度20重量%のメチルセロソルブを分散媒とするオルガノゾルIを得た。
【0081】
このゾルI中の微粒子の平均粒径は40nmであった。
このようにして得られたゾルIは、6ケ月以上にわたって微粒子の凝集・沈降もなく、安定であった。
【0082】
【比較例1】
微粉末(A)100gにアセチルアセトンを加えず、エタノール400gのみを加えた以外は実施例1と同様にして固形分濃度20重量%のゾルJを得た。
【0083】
このゾルJ中の微粒子の平均粒径は2000nmであり、ゾルJ中の水分濃度は0.2%であった。
このようにして得られたゾルJでは、1日後に微粒子の凝集および沈降が生じていることが観察された。
【0084】
なお、上記ゾルA〜Jの平均粒径および水分濃度は次のようにして測定した。
平均粒径:
粒径測定機(日立製作所(株)製CAPA−700)で測定した。
水分濃度:
カールフィッシャー(京都電子(株)製)で測定した。
【0085】
上記ゾルA〜Jの性状を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
【実施例10〜12および14〜16、参考例4〜6、比較例2】
実施例1〜3および5〜7、参考例1〜3、比較例1で得られたゾルA〜Jを、エタノール70%、イソプロピルアルコール15%、プロピレングリコールモノメチルエーテル10%、ジアセトンアルコール5%(重量比)の混合溶媒で、固形分濃度5.0重量%まで希釈し、さらにエタノールで希釈して固形分濃度2.0重量%の塗布液を調製した。
【0088】
この塗布液をブラウン管用14”パネル上に塗布し、下記条件で導電性被膜を形成した。
パネル表面温度:40℃
塗布法 :スピナー法(100rpm、60秒)
焼成条件 :200℃、30分
このようにして得られた導電性被膜付基材につき、下記項目の測定・評価を行った。
【0089】
表面抵抗:表面抵抗計(三菱化学(株)製 LORESTA)で測定した。
ヘーズ :ヘーズコンピュータ(スガ試験機製)で測定した。
外観 :目視観察により、白濁、微小斑点およびむらのないものを良(○)として評価した。
【0090】
以上の結果を表2に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
【実施例19〜21および23〜25、参考例7〜9、比較例3】
エチルシリケート(SiO2 :28重量%)100g、エタノール390g、純水67.2g、61%HNO3 2.8gの混合液を、エタノール60g、ブタノール20g、ジアセトンアルコール20gからなる希釈液で固形分濃度0.85重量%に希釈した被膜形成用塗布液を調製した。
【0093】
実施例10〜12および14〜16、参考例4〜6および比較例2で得られた導電性塗布液を、ブラウン管用14"パネル上に、その表面温度を40℃に保持しながらスピナー法(100rpm、60秒)で塗布した。
【0094】
次いで、上記パネルの表面温度を引続き40℃に保持しながら、得られた導電性被膜上に、上記被膜形成用塗布液を、上記と同様にして塗布した。
しかる後、得られた積層被膜付基材を200℃で30分間焼成して積層導電性被膜付基材を得た。
【0095】
このようにして得られた導電性被膜付基材につき、それぞれの反射率を分光光度計(日本分光社:U−best)で測定した。
結果を表3に示す。
【0096】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係る酸化インジウムオルガノゾルの一例につき、その中に含まれている結晶性酸化インジウム微粒子のX線回折図である。
Claims (1)
- 異種元素を含有する結晶性酸化インジウム微粒子を、直接、1.9[Debye] 以上の双極子モーメントを有する有機溶媒または該有機溶媒を含む混合有機溶媒に分散させた後、粉砕処理し、水分濃度1重量%以下の酸化インジウムオルガノゾルを得ることを特徴とする酸化インジウムオルガノゾルの製造方法。
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