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JP3993730B2 - ポンプ装置用のインペラ及びポンプ装置 - Google Patents

ポンプ装置用のインペラ及びポンプ装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗濯機用のバスポンプ等のポンプ装置に用いられるインペラ及びポンプ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の洗濯機、たとえば全自動洗濯機において、洗濯部位に洗浄用の流体を汲み上げる流体ポンプとして、たとえばお風呂の湯水を汲み上げて洗濯機の槽内に供給するバスポンプを備えたものがある。このようなバスポンプは、従来、DCモータにポンプ部品を組み付けることによってポンプ装置を構成している。
【0003】
なお、このタイプのポンプは、洗濯機と浴槽とをつなぐホース内に溜まった空気を吸い出した後に風呂水を吸い上げる必要があり、通常、この動作(自吸過程)が可能な自吸式ポンプとなっている。このような従来構造のポンプ装置は、たとえば、特開平8−135590号、特開平8−303379号、特開平10−196582号公報等に開示されている。
【0004】
上述したようなポンプ装置は、ケースに設けられた吐出口及び吸引口に連通されたインペラ室内でインペラを回転させることにより液体を吸引口から吸い上げ、吸い上げた液体を吐出口から吐出させるように構成されている。図6(A)及び(B)は、このようなポンプ装置に用いられるインペラの一例を示したものである。
【0005】
インペラ101は、円板形状の平面部102aを有する保持部材102と、保持部材102の一側の面に中心部を空けて放射状に立設された複数の羽根部材103から主に構成されている。保持部材102は、羽根部材103が立設された側とは反対側の面に筒状部102bを備えており、この筒状部102bがモータ駆動により回転する回転軸(図示省略)にはめ込まれるようになっている。これにより、インペラ101がモータ駆動によりインペラ室(図示省略)内で回転するようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
なお、上述したように構成されたポンプ装置においては、インペラ101が回転すると羽根部材103が設けられた側の中心部から気体及び液体が取り込まれ、その液体等が遠心力によってインペラ101の外側へ飛ばされる。この動作が行われる際、すなわち自吸動作及び吸水動作が行われる際、その回転中心には負圧が発生する。そして、この負圧の発生によりインペラ室内で回転するインペラ101及びインペラ101を支持している軸(図示省略)に対して軸方向への推力がかかる。より具体的には、インペラ101がモータの駆動部から離れる方向(図6において矢示X方向)に推力が働く。
【0007】
加えて、遠心力によりインペラ101の外側へ飛ばされた液体等が回転により吸い込まれた気体や液体が保持部材102の裏側、すなわち平面部102aのモータ駆動部側へ入り込む、この入り込んだ液体等の圧力を保持部材102の平面部102aが受けるため、上述した推力がより強力なものとなる(図6の1点鎖線参照)。このため、回転軸を支持する軸受け、特にスラスト軸受けに多大な荷重がかかり軸受けを破損するおそれがある。また、多大な荷重を受けながら回転軸が回転するため、軸受け部分に発生する熱が異常に高くなり、軸受けを格納している軸受けホルダーがその摩擦熱によって溶けてしまうという問題が生じる。
【0008】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑みて、吸水時や自吸過程時における回転駆動軸のスラスト方向への荷重を軽減することが可能なポンプ装置用のインペラ及びポンプ装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記した目的に鑑みて、本発明は、回転中心に配置される保持部材と、その保持部材の平面部に保持された羽根部材とを有し、駆動源によりインペラ室内で回転し、その回転の遠心力によりその外側へ飛ばされた液体等が平面部の裏側へ入り込み、平面部の裏から羽根部材が設置されている面側に向かって推力が働くポンプ装置用インペラにおいて、回転中心に配置される保持部材と、この保持部材の回転中心部から半径方向に所定寸法離れた位置において保持部材の半径方向外側及び軸方向に突出するように保持部材に保持された複数の羽根部材を設け、羽根部材の外径より平面部の外径を小さくし、保持部材が受ける上記推力を小さくすると共に、これら複数の羽根部材の軸方向に突出した側の端部の外周側部分を連結し当該外周側部分を軸方向において閉塞する連結部を設け、上記推力とは逆方向の推力を得、保持部材の外径寸法を連結部の内径寸法より小さく設定し、保持部材と連結部とが軸方向において重ならないように構成し、かつ、保持部材と複数の羽根部材と連結部とを樹脂で一体成形したものとしている。
【0010】
上述したインペラは、保持部材の半径方向外側へ各羽根部材が突出するように構成されている。すなわち、吸水動作や自吸動作のためにインペラが回転した際にインペラの裏側へ回り込む液体等の圧力を受ける保持部材が羽根部材の外径より小さく形成されている。このため、本発明のインペラは、従来のインペラに比して、保持部材の面積が小さいものとなっており、インペラの回転を支持する軸の自吸動作時等におけるスラスト荷重を軽減することが可能となる。
【0011】
加えて、各羽根部材を連結するように形成された連結部がインペラの一部として回転することによって、インペラに逆方向への推力を与える。この逆方向への推力の発生により、上述した軸の自吸動作時等におけるスラスト荷重を相殺し、スラスト荷重による軸受け等への負担をさらに軽減することができる。また、保持部材の外径寸法を連結部の内径寸法より小さく設定し、保持部材と連結部とが軸方向において重ならないように構成すると共に保持部材と複数の羽根部材と連結部とを樹脂で一体成形している。そのため、各部材を別々に成型して超音波溶着等を用いた後加工により一体化させる等、複雑な工法を用いることなく、軸方向の上下にストレートに抜く簡単な金型構成により、上述した保持部材、複数の羽根部材及び連結部を一体成型することが可能となる。この結果、インペラの製造が容易となる。
【0012】
また、他の発明は、上述したポンプ装置用のインペラに加えて、保持部材と複数の羽根部材と連結部とを、保持部材の回転中心部に立設された筒状部から平面部まで伸びる金属製の枠を骨部として樹脂で一体成形している。そのため、各部材を別々に成型して超音波溶着等を用いた後加工により一体化させる等、複雑な工法を用いることなく、保持部材、複数の羽根部材及び連結部を一体成型することが可能となる。この結果、インペラの製造が容易となる。
【0014】
また、本発明のポンプ装置は、上述のポンプ装置用のインペラと、インペラの上部に配置されたモータと、インペラと液体を収容するケースとを有し、モータの下部に配置されたインペラ室内で回転するインペラの回転水平面が、モータの非駆動時におけるケース内の液面に対して平行になるように設けられている。
【0015】
このため、インペラの回転によって形成される流体の流れが、ケース内を旋回しながら上昇するいわゆる「縦渦」となり、流体が気液分離室内でゆっくりと上昇することとなる。この結果、気液分離室内で十分に気液が分離され呼び水のみが効率よくインペラの回転中心に戻る。また、流体の流れの勢いが強くなり過ぎないため、流体の水位が必要以上に高くならず、吐出口を上部に設けておけば液体が吐出口から吐出されにくい。このことから、高い自吸性能を発揮することができる。
【0016】
このような要素に加え、このポンプ装置では自吸動作や吸水動作時において、インペラのスラスト方向への推力が弱いものとなる。すなわち、インペラは、保持部材の半径方向外側へ各羽根部材が突出するように構成されており、保持部材が羽根部材の外径に対して小さく形成されている。このため、保持部材は、自吸動作時等にインペラの裏側へ回り込む液体の圧力をそれ程強く受けず、軸の自吸動作時等におけるスラスト荷重が軽減される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のポンプ装置用のインペラの実施の形態について図1から図3を参照しながら説明する。なお、図1は、本発明のポンプ装置用のインペラの縦断面図、図2は平面図、図3は底面図である。
【0018】
インペラ1は、後述する自吸式ポンプ装置3の一部品として駆動モータ4の駆動力によりインペラ室6内で回転する。このインペラ1は、回転中心に配置される保持部材11と、この保持部材11に保持された複数の羽根部材14と、各羽根部材14を連結する連結部17から主に構成されている。
【0019】
保持部材11は、各羽根部材14を保持すると共に後述する回転軸41aへの取付部となっている。保持部材11は、円板形状の平面部11aと、この平面部11aの一側の面の回転中心部に立設された筒状部11bとを備えている。また、保持部材11は、筒状部11bが備えられた側と反対側の回転中心部に円錐形状に突出された凸部11cを有している。円板形状の平面部11aは、複数の羽根部材14を保持するための部位となっている。筒状部11bの内側の穴は、インペラ1を後述する回転軸41aにはめ込むためのものとなっており、筒状部11bを回転軸41aにはめ込むことによりインペラ1は回転軸41aと一体的に回転するようになっている。
【0020】
なお、インペラ1を構成する各部材、すなわち保持部材11、複数の羽根部材14及び連結部17は、金属製の枠18を骨部とし樹脂で一体成形されたものとなっている。枠18は、筒状部11bの外周面を覆い外面に露出される露出部18aと、平面部11a内に埋め込まれた埋設部18bとからなり、露出部18aの端部に爪部18cが形成されこの爪部18cが筒状部11bの外周面に形成された段部11dに食い込むようになっている。枠18の露出部18aは、後述するオイルシール15に滑らかに摺動するための部位となっている。なお、保持部材11の筒状部11bが形成された面と反対側の面に形成された凸部11cは、インペラ1内部に取り込んだ流体をインペラ1の外側へ拡散させるための部位となっている。
【0021】
各羽根部材14は、流体を攪拌するための部材となっており、保持部材11の平面部11aの筒状部11bが形成された面とは反対側の面の外周端縁に保持されている。各羽根部材14は、所定の肉厚を備えた平板状部材(多少湾曲されていても良い)で構成されており、各平面が保持部材11の平面部11aに対して垂直で筒状部11b及び回転軸41aに対して平行となるように取り付けられている。これらの羽根部材14は、保持部材11の回転中心から半径方向に所定寸法L1(図2参照)離れた位置において保持部材11の半径方向(図1において矢示R1)及び軸方向(図1において矢示R2)に突出するように保持されている。
【0022】
本発明のインペラ1は、このように各羽根部材14の外周径に比して保持部材11の平面部11aの面積が小さいものとなっている。このため、ポンプ動作時においてインペラ1の平面部11aの裏側(図1において平面部11aの上側)に入り込む流体の圧力が平面部11aにかかりにくくなり、ポンプ駆動時にインペラ1にかかる推力(図1において矢示X2参照)を軽減するものとなっている。
【0023】
なお、各羽根部材14と保持部材11との関係をさらに詳述すると、各羽根部材14は保持部材11に取り付けられた根本部分から外周端側にかけて半径方向に延びるようには取り付けられておらず、外周端側が回転軸41a側(図2で示した方向)から見て周方向左周り側へいくように延設されている。また、各羽根部材14の軸方向における保持部材11側の端部(平面部11aから半径方向外側に突出している部分)には、段部14aがそれぞれ形成されている。この段部14は、上述した矢示X2方向への推力をさらに弱めるものとなっている。なお、本実施の形態では、羽根部材14は8枚で構成されているが、枚数に関しては特にこれに限定されるものではない。また、上述のような段部14aを形成せず、この羽根部材14の保持部材11側の端部を平坦な面としても良い。
【0024】
連結部17は、各羽根部材14の剛性を保つと共にポンプ駆動時にインペラ1にかかる推力(図1において矢示X2参照)を相殺するための推力(駆動モータ4から離れる方向へかかる推力に抗して逆方向に発生する推力=図1において矢示X1参照)を起こすための部材となっている。連結部17は、ドーナツ形状の円板部材で形成されている。この連結部材17は、各羽根部材14の軸方向に突出した側の端部(保持部材11に保持されている側とは反対側の端部)の外周側部分を連結し、この外周側部分を軸方向において閉塞するように配置されている。
【0026】
なお、本実施の形態のインペラ1は、上述したように保持部材11、各羽根部材14及び連結部材17を枠18を骨部として樹脂で一体成形したものとしているが、各部材は別体で形成された後、超音波溶着等で一体化させても良い。また、保持部材11と各羽根部材14のみ、あるいは保持部材11と8枚の羽根部材14のうちの一部、各羽根部材14と連結部17、8枚の羽根部材14のうちの一部と連結部17等を一体成形とし、残りの部材を超音波溶着等で一体化させるようにしても良い。
【0027】
なお、上述したように構成されたインペラ1は、保持部材11の平面部11aの外径寸法W1が、ドーナツ形状の連結部17の内径寸法W2より小さく設定されている。このため、保持部材11の平面部11aと連結部17とは、軸方向において重ならないものとなる。この結果、本実施の形態のインペラ1は、軸方向(図1において上下方向)に分割された2つの金型の隙間に枠18となる金属材料と樹脂とを充填し、2つの金型をストレートに上下に抜くことにより、インサート成型による一体成形で形成される。なお、図1の矢示C1は上側の金型、矢示C2は下側の金型のそれぞれの進入位置を示している。
【0028】
次に、上述したインペラ1を用いた自吸式のポンプ装置3の実施の形態について図4及び図5を参照しながら説明する。なお、図4は、自吸式ポンプ装置の平面図、図5は図4のV−O−V断面図である。
【0029】
本発明の自吸式ポンプ装置3は、図4及び図5に示すように、内部に流体を吸引するための吸込口2aと吸引した流体を外部に吐出するための吐出口2bとを有するケース2と、ケース2内部に回転自在に配置されたインペラ1を回転駆動する駆動モータ4とを有している。インペラ1の構成は、上述したとおりである。
【0030】
ケース2は、上下方向の上側略半分でかつ図5において左右方向左側半分を占める駆動モータ4を配置させるための駆動モータ取り付け用凹部5を有し、この凹部5内の空間と壁によって空間的に隔てられた内部空間をこの凹部5の右隣り及び下部に備えた本体部21と、この本体部21の最下部に形成された開放部分を塞いで内部空間を封止する底蓋部22から構成されている。すなわち、底蓋部22は、このケース2全体の底面を形成するものとなっており、本体部21の開放端に形成された段部21a内にOリング23を嵌め込んだ状態で本体部21にボルト24によって固定される。これによって、ケース2内部の流体が、本体部21と底蓋部22の合わせ面から外部に漏れ出るのを防止するようになっている。
【0031】
駆動モータ取り付け用凹部5は、駆動モータ4を取り付けるための凹部となっている。また、この駆動モータ取り付け用凹部5の上端には、駆動モータ4の上面側を覆う駆動モータ収納用蓋5aが被せられている。なお、駆動モータ取り付け用凹部5は、中心部には駆動モータ4のアウターロータ部41の回転軸41aを回転自在に挿通支持すると共に、駆動モータ4のステータ部42を支持固定する支持筒部51が形成されている。この支持筒部51は、駆動モータ取り付け用凹部5の底面の中心位置に形成された円形の凸面部52の中心部分に立設されたものとなっている。そして、この支持筒部51の孔内両端には、回転軸41aを回転自在に支承する軸受け51a,51bが嵌め込まれている。また、軸受け51aの上部にはスラスト受け用ワッシャー51dが、軸受け51bの下部にはスラスト受け用ワッシャー51eがそれぞれ配置されている。また、支持筒部51の外周部分には、ステータ部42を載置固定するための段部51cが形成されている。
【0032】
また、上述したように構成されたケース2の内部空間は、上述した吸込口2a及び吐出口2bと、さらに呼び水供給口2cとによって外部と連通するようになっている。ケース2内部には、インペラ1を回転自在に配置したインペラ室6と、自吸過程時にインペラ1の回転により気液混合させた流体を気液分離するための気液分離室7とが備えられている。
【0033】
インペラ室6は、駆動モータ4の下部となるスペースの一部に形成されている。また、気液分離室7は、ケース2の内部空間のうちのインペラ室6以外の大部分のスペースを占めている。具体的には、気液分離室7は、駆動モータ取り付け用凹部5の下部のスペースのインペラ室6以外の部分(以下、(気液分離室7の)狭いスペース7aという)とケース2の左側半分のうちの後述する中継パイプ8等によって仕切られた空間以外の部分(以下、(気液分離室7の)広いスペース7bという)とからなり、これらの両スペース7a,7bは一連のものとなっている。
【0034】
インペラ室6は、駆動モータ4の取り付けられる駆動モータ取り付け用凹部5の下部のスペースの一部に形成されており、内部にはインペラ1が回転自在に配置されている。このインペラ室6は、インペラ1の周囲を囲繞するボリュート部9と、インペラ1の軸方向(図5において上下方向)両側に配置される上面部10a及び下面部10bとによって画成された内部空間となっている。
【0035】
インペラ1の上方に位置する上面部10aは、インペラ室6と駆動モータ4との間に配置された壁となっており、このインペラ室6の上方部分の密封をオイルシール15と協働して行うようになっている。この上面部10aは、ケース2の壁、すなわち駆動モータ取り付け凹部5の底面を利用したものとなっている。したがって、インペラ1のケース2を隔てた上部は、駆動モータ取り付け用凹部5となっており、ここに駆動モータ4が装填されている。なお、この上面部10aは、インペラ1の上面と近接するようになっている。
【0036】
上面部10aには、上述した凸面部52が設けられており、この凸面部52の内部(ケース2側から見て内部)は空洞となっており、この空洞部分にインペラ室6内の流体の駆動モータ4側への侵入を防止するためのオイルシール15が嵌め込まれている。この構成により、ステータ部42へ液体が浸入するのを防止する。
【0037】
なお、インペラ室6を画成する下面部10bの中央部分には、インペラ室6内へ流体を取り込むための取り込み口16が設けられている。この取り込み口16は、後述する中継パイプ8を介して吸込口2aと連結されている。下面部10bは、中継パイプ8の構成部品となる第2パイプ部材82の平坦面82aを利用したものとなっており、この平坦面をボリュート部9の先端部分に当接させることにより、上述した上面部10aとボリュート部9と協働してインペラ室6を形成するものとなっている。
【0038】
なお、本実施の形態では、ボリュート部9は、この上面部10aから下方に延設されたものとなっており、上面部10aと共にケース2の本体部21に一体的に形成したものとなっている。さらに、本実施の形態では、第2パイプ部材82の平坦面82aに立設されたカバー部82dが、本体部21側に形成されたボリュート部9の周囲を囲むようになっている。なお、このカバー部82dは、第2パイプ部材82のボリュート部9に対する位置決めとしての要素が強い部材であり、特に無くても支障はないものとなっている。
【0039】
ボリュート部9は、インペラ1の回転遠心力によりインペラ1外方へ押しやられる流体をインペラ室6から気液分離室7側へ排出させる2つの出口部(図示省略)及び、自吸過程時に気体と分離された液体を気液分離室7からインペラ室6内へ戻すための戻し孔(図示省略)を備えている。
【0040】
吸込口2aは、駆動モータ取り付け用凹部5の右隣となるケース2の上面の略中央に設けられている。この部分は、気液分離室7の広いスペース7bの上面7cとなっており、吸込口2aは気液分離室7の上面7cの中央位置に形成されていることとなる。
【0041】
この吸込口2aは、ケース2の内外にそれぞれ突出された筒形状で形成されており、外側に突出された部分は風呂等の貯水源に一端を浸したホースの他端の接続部となっている。この吸込口2aは、ケース2の本体部21と一体的に形成されている。このように形成された吸込口2aのケース2の内部に突出された部分は、気液分離室7内を貫く中継パイプ8を介してインペラ室6に連結されており、吸込口2aから侵入してくる流体がインペラ室6へ入るようになっている。
【0042】
吐出口2bは、ケース2の右側のスペース、すなわち広いスペース7bを形成する側面上部に形成されている。本実施の形態では、自吸過程時にインペラ1の回転によってインペラ室6から吐き出される気液混合体が、中継パイプ8のストレート部分(吸込口2aから真っ直ぐに下方に延出されている部分)の周囲を回転しながら上昇していく。吐出口2bは、自吸過程時においてこのように上昇する気液混合体が吐出しない位置に設けられている。
【0043】
なお、吐出口2bは、ケース2の側面に形成された挿通孔と、この挿通孔の縁から外部側に突出する筒状部とから構成されている。また、呼び水供給口2cは、自吸過程時に予めケース2の内部空間内に水を供給するためのものとなっており、吐出口2bのと並列的に設けられている。この呼び水供給口2cも、吐出口2bと同様、ケース2の側面に形成された挿通孔と、この挿通孔の縁から外部側に突出する筒状部とから構成されているが、この筒状部の径は吐出口2bの筒状部よりも細いものとなっている。
【0044】
中継パイプ8は、吸込口2aの下端に接続された第1パイプ部材81と、この第1パイプ部材81に連結されると共に上述したインペラ室6の下面部10bを構成している第2パイプ部材82から構成されている。
【0045】
第1パイプ部材81は、気液分離室7の上面7cに形成された吸込口2aに連続するストレート部81aとこのストレート部81aの下端部分から直角に湾曲した湾曲部81bとを有するL字状パイプ部81cと、このL字状パイプ部81cの湾曲部81bの開放部分を取り囲むように形成された逆流防止部81dとから構成される。なお、逆流防止部81dは、L字状パイプ部81cの径より大きな内径を有する空洞部となっている。この逆流防止部81dは、第2パイプ部材82を接続する際に、逆止弁83を第2パイプ部材82と協働して挟持するものとなっている。
【0046】
逆止弁83は、ゴム製の部材で形成されており、吸込口2a側から流体が吸い込まれてくると、その流体の勢いで図5に示すような状態にL字状パイプ部81cの端部を開放するものとなっている。また、逆止弁83は、それ以外の場合、すなわちポンプ動作をしていない場合や万が一液体が逆流するような場合は、L字状パイプ部81cの端部を閉塞するものとなっている。
【0047】
第2パイプ部材82は、上述したようにインペラ室6の下面部10bを構成する平坦面82aと、この平坦面82のごく一部を利用して形成したL字状パイプ部82bと、第1パイプ部材81との接続部82cとから構成されている。L字状パイプ部82bは、第1パイプ部81の形状に合わせて形成される液体の流れ、すなわち上から下、そして約90度湾曲して横方向へ流れる流体の流れ(図5において矢示B1)を、上方向へ持っていき、インペラ室6の下面部10bの中央に形成された取り込み口16から流体をインペラ室6内へ送り込むためのものとなっている。
【0048】
また、上述したように構成されたインペラ1は、駆動モータ4の回転軸41aの下端部分に回転中心軸となる保持部材11の筒状部11bが挿入固定され、回転水平面Yが自吸過程時にケース2内に予め溜められる呼び水の液面Y1に対して平行となるようにインペラ室6内に配置されている。インペラ1の回転中心は、上述した取り込み口16と重なる位置に配置される。インペラ1が駆動モータ4によって回転すると、インペラ1の回転中心部分付近に負圧が発生し吸込口2a側の流体がインペラ室6内に取り込まれ、インペラ1によって攪拌されながら、インペラ1の外周側に押しやられることとなる。
【0049】
駆動モータ4は、ステータ部42の外周部分に対向するマグネット41bを備えたアウターロータ部41と、通電部となるステータ部42とから構成されており、ステータ部42に電力が入力されると、マグネット41bとステータ部42との間に磁界が発生し、アウターロータ部41が回転軸41aを回転中心としてインペラ1と共に回転するようになっている。この駆動モータ4は、インペラ室6の上部にいわゆる「縦置き」に設けられており、液体がステータ部42に浸入しにくいという効果を有している。
【0050】
このように構成された駆動モータ4のマグネット41bを固定したアウターロータ部41は、駆動モータ取り付け用凹部5の内壁から所定距離の隙間を持たせて回転自在なものとなっており、マグネット41bが駆動モータ取り付け用凹部5の内壁にぶつからないような配置となっている。
【0051】
なお、駆動モータ4をインペラ1の上部に「縦置き」に配置すると、アウターロータ部41のスラスト荷重及びインペラ1の裏側(図5において上側)に入り込む流体の圧力により、スラスト方向下側への荷重が相当大きくなるが、本実施の形態では、上述したようにインペラ1がスラスト方向下側への推力をうち消すように作用するためそれ程スラスト荷重が大きくないものとなっている。このため、荷重を受けながら回転することによる軸受け51a,51b及びスラスト受け用ワッシャー51d,51eの損傷や異常に高い摩擦熱の発生による焼損等の不具合が生じない。そのため、軸受け51a,51b及びスラスト受け用ワッシャー51d,51eを、それ程耐熱性の高くない部材で構成することも可能となり、材料コストを低減することができる。
【0052】
上述したように構成された本実施の形態の自吸式ポンプ装置3の動作について説明する。
【0053】
ケース2の内部空間には、予め少なくともインペラ1が浸かる程度の呼び水が溜められる。この呼び水の液面Y1は、回転軸41aに対して垂直な面、すなわち、インペラ1の回転水平面Yと平行な面となる。この程度の量の呼び水がケース2内に供給された後、駆動モータ4のステータ部42に電力を供給する。すると、アウターロータ部41が、回転軸41を回転中心として回転し、これによってインペラ1がに回転する。
【0054】
インペラ1の回転により、インペラ室6内は負圧になり、逆止弁83が開いて吸込口2aに接続されているホース(図示しない)よりまず空気が吸い込まれる。続いて混合した空気と水、または空気が取り込み口16からインペラ室6に吸い込まれ、インペラ1の回転によって攪拌されながら混合し、インペラ室6のボリュート部9に形成された2つの出口部から気液分離室7側へ吐き出される。このときの気液分離室7の広いスペース7b内での流路は、気液分離室7内を貫く中継パイプ8のストレート部分を周回しながら「縦渦」状態で上昇するものとなる。
【0055】
このため、流体の流れによって形成された「縦渦」の中心位置が真空となり、呼び水がその真空部分に引き寄せられる。この結果、気液分離室7内で形成される「縦渦」では、空気と水とが容易に分離される。すなわち、この自吸動作中、気液分離室7内では、激しく気液混合体がかき回された状態で移動するが、液体の流れが「縦渦」を形成しているため、「横渦」と比べると気液混合体が上部に達するまでに時間がかかる。この結果、気液混合体が気液分離室7の上部に達するまでに空気と水とが確実に分離され、液体が上部に形成された吐出口2bから吐出されにくい。このようにして気液分離されると、質量の軽い空気は気液分離室7の上部へ溜まり、その後吐出口2bから排出され、質量の重い水は気液分離室7の下部へ落ちてきて、主に広いスペース7b側に形成された戻し孔からインペラ室6内に戻り、再び空気とかき混ぜられた後、気液分離室7側に吐き出される。
【0056】
この動作を繰り返すことにより、インペラ1によって気液分離室7へ吐き出された呼び水と空気のうち、空気のみが吐出口2bから排出されていく。空気が排出されると、徐々に水がホース内を上昇してくる。
【0057】
なお、上述のような動作を継続し、ホース内の空気が全て排出され、ホース内が水で満たされると、自吸運転状態から定常の給水運転状態になり、吸込口2aからの水が連続的に吐出口2bから排出される。
【0058】
上述のように、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限らず種々の変形、応用が可能である。例えば、上述の実施の形態では、自吸式ポンプ装置の例を説明したが、上述したインペラ1は自吸式ではない種々のポンプ装置にも適用可能である。加えて、上述の実施の形態では、駆動モータ4がインペラ1の上部に配置され、回転軸41aがケース2内の液面に対して垂直となる「縦置き」型のポンプ装置の例を説明したが、インペラ1は「横置き」のポンプ装置にも適用可能である。
【0059】
また、上述の実施の形態では、インペラ1の保持部材11の平面部11aの外径寸法1を連結部17の内径寸法W2より小さい寸法としたが、外径寸法W1=内径寸法W2としても良い。この場合は、上述した外径寸法W1<内径寸法W2の場合と同様、軸方向に2分割された金型を軸方向上下にストレートに抜く単純な工法により、インペラ1を構成する各部材を一体成形することができる。なお、このようなストレート抜きによる一体成形としない場合は、上述の寸法に拘らず、外径寸法1>内径寸法W2としてもよい。
【0060】
【発明の効果】
本発明のインペラは、羽根部材を保持部材の回転中心部から半径方向に所定寸法離れた位置において保持部材の半径方向外側及び軸方向に突出するように保持部材に保持させることにより、羽根部材の外径に対して保持部材の外径を小さいものとし、さらに羽根部材の軸方向端部(保持部材側とは逆側の端部)に羽根部材の外周側を軸方向において塞ぐ連結部を設けている。このため、吸水動作や自吸動作のためにインペラが回転した際にインペラの裏側へ回り込む液体等の圧力を保持部材が受けにくくなると共に、連結部の回転によってインペラに逆方向への推力を与える。この結果、上述のインペラをポンプ装置に取り付けた場合、従来に比してインペラの回転を支持する軸の自吸動作時等におけるスラスト荷重を軽減することが可能となり、スラスト荷重による軸受け等の摩耗や摩擦熱の発生による部材の焼損等の不具合を解消することができる。
【0061】
また、保持部材の外径寸法を連結部の内径寸法より小さくし、保持部材と連結部とが軸方向において重ならないように構成しているので、各部材を別々に成型して超音波溶着等を用いた後加工により一体化させる等、複雑な工法を用いることなく、軸方向にストレートに抜く簡単な金型構成により、上述した保持部材、複数の羽根部材及び連結部を一体成型することが可能となる。この結果、製造コストを低減することができる。
【0062】
また、本発明のポンプ装置は、羽根部材を保持部材の回転中心部から半径方向に所定寸法離れた位置において保持部材の半径方向外側及び軸方向に突出するように保持部材に保持し、モータの下部に配置されるインペラの回転水平面が液面に対して平行に配置されている。すなわち、モータを上部、インペラを下部に配置したいわゆる「縦置き」配置となっている。このため、従来の「横置き」のものに比して自吸効率が向上する。加えて、「縦置き」配置とすると、スラスト荷重が多大となりがちであるが、本発明はインペラの裏側に入り込む液体を逃がす構成となっており(従来に比して羽根部材を保持する保持部材の面積が小さいため)、このスラスト荷重を軽減することが可能となる。この結果、多大なスラスト荷重による不具合、具体的には、軸受け等の摩耗や摩擦熱の発生による部材の焼損等を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態のインペラを示す縦断面図である。
【図2】図1のインペラを矢示II方向から見た平面図である。
【図3】図1のインペラを矢示III方向から見た底面図である。
【図4】本発明の実施の形態のインペラを用いた自吸式ポンプ装置を示す平面図である。
【図5】図4の自吸式ポンプ装置のV−O−V断面図である。
【図6】従来技術のインペラを示す図で、(A)は縦断面図、(B)は(A)を矢示VI方向から見た底面図である。
【符号の説明】
1 インペラ
2 ケース
ポンプ装置
4 駆動モータ
6 インペラ室
11 保持部材
14 羽根部材
17 連結部
Y (インペラの)回転水平面
Y1 (非駆動時のおけるケース内の)液面

Claims (3)

  1. 回転中心に配置される保持部材と、その保持部材の平面部に保持された羽根部材とを有し、駆動源によりインペラ室内で回転し、その回転の遠心力によりその外側へ飛ばされた液体等が上記平面部の裏側へ入り込み、上記平面部の裏から上記羽根部材が設置されている面側に向かって推力が働くポンプ装置用インペラにおいて、
    上記保持部材の回転中心部から半径方向に所定寸法離れた位置において上記保持部材の半径方向外側及び軸方向に突出するように上記保持部材に保持された複数の上記羽根部材を設け、上記羽根部材の外径より上記平面部の外径を小さくし、上記保持部材が受ける上記推力を小さくすると共に、これら複数の羽根部材の軸方向に突出した側の端部の外周側部分を連結し当該外周側部分を軸方向において閉塞する連結部を設け、上記推力とは逆方向の推力を得、上記保持部材の外径寸法を上記連結部の内径寸法より小さく設定し、上記保持部材と上記連結部とが軸方向において重ならないように構成し、かつ、上記保持部材と上記複数の羽根部材と上記連結部とを樹脂で一体成形したことを特徴とするポンプ装置用のインペラ。
  2. 前記保持部材と前記複数の羽根部材と前記連結部とを、前記保持部材の回転中心部に立設された筒状部から前記平面部まで伸びる金属製の枠を骨部として樹脂で一体成形したことを特徴とする請求項1記載のポンプ装置用のインペラ。
  3. 請求項1または2記載のポンプ装置用のインペラと、上記インペラの上部に配置されたモータと、上記インペラと液体を収容するケースとを有し、上記モータの下部に配置されたインペラ室内で回転する上記インペラの回転水平面が、上記モータの非駆動時における上記ケース内の液面に対して平行になるように設けられていることを特徴とするポンプ装置。
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