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JP3986129B2 - ゴム補強用変性カーボンブラック含有ゴム組成物の製造方法 - Google Patents

ゴム補強用変性カーボンブラック含有ゴム組成物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム補強用の変性カーボンブラック(以下、単に「変性カーボン」と記載することがある)を含むゴムマスターバッチ組成物の製造方法に関し、更に詳しくはジエン系ゴムと表面に水分散シリカを付着させたゴム補強用変性カーボンブラックとを含むゴムマスターバッチ組成物の製造方法に関する。このゴム補強用変性カーボンブラック含有ゴム組成物はタイヤのキャップトレッドやサイドトレッドなどのタイヤ材料をはじめとしてベルトコンベア、産業用ゴムロール、ホースなどの各種ゴム製品用として使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
タイヤ業界などのゴム業界においては、ゴム補強用として使用されているカーボンブラックを予じめ湿式カーボンブラックマスターバッチ法を用いてゴムと混合して、カーボンブラックのゴムへの混練工程の簡素化やゴム中へのカーボンブラックの分散性の改良が行われて来た(例えば特開昭59−49247号公報及び特開昭63−43937号公報参照)。ところで、近年、優れたシランカップリング剤の出現によりシリカをカーボンブラックの代わりに配合することが行われている。シリカは、カーボンブラックに比べて、高温(60℃付近)でのtanδが低く、低温(0℃付近)でのtanδが高いという特性を持つため、例えばタイヤトレッド用ゴム組成物に用いた場合、低転がり抵抗でかつグリップ力の高いタイヤが製造できるという利点がある。しかしながら、シリカは、カーボンブラックに比べて耐摩耗性に劣り、また電気伝導度が低いために、例えばタイヤ用に使用すると走行中にタイヤが帯電し、ラジオなどの電子機器にノイズを発生させたり、場合によっては誤動作を生じるなどの種々の問題があった。
【0003】
顔料などの表面にシリカなどを被覆して分散性を改良したり、耐候性を向上させたりすることは、例えば特公昭50−14254号公報や特公平7−30269号公報などに提案されているが、いずれもゴム補強用としてカーボンブラックの表面にシリカを付着せしめることについては言及していない。更に特開平8−277347号公報には、ゴム補強用としてカーボンブラックの表面にシリカを付着せしめることが記載されているが、工業的に効率よく生産することに関しては言及されていない。
【0004】
シリカをゴム組成物に配合するに際しては、シリカは混練中の分散が進行しづらく混練加工に多くの労力を必要とするため、カーボンブラックのようなマスターバッチ化が望まれている。ところが、シリカはその凝集pH(約4〜7)がゴムラテックスの凝集pH域(約2.5〜3)と異なる等の理由により、従来、満足な湿式シリカマスターバッチができなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、シリカのもつ優れたtanδ温度依存性を備えかつ耐摩耗性及び加工性が良好で、低電気伝導度に起因する問題がなく、しかも簡便かつ廉価に製造することができるゴム補強用シリカ変性カーボンブラックのゴムマスターバッチ組成物の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に従えば、(a)ジエン系ゴム成分のラテックス100重量部(固形分として)と(b)水分散シリカを添加して変性造粒した変性カーボンブラック10〜250重量部とを混合し、次にこの混合物を凝固剤で凝固せしめることを特徴とする変性カーボンブラック含有ゴム組成物の製造方法が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、前記したように、シリカのもつ優れたtanδ温度依存性を備えかつ耐摩耗性が良好で、しかも低電気伝導度に起因する問題のない、全く新規なゴム補強用変性カーボンブラックをジエン系ゴムラテックスと共に凝固させることにより、湿式法でシリカ含有ゴムマスターバッチ組成物を得ることに成功した。
【0009】
本発明において使用するゴム補強用シリカ変性カーボンブラックの製造用原料物質として使用されるゴム補強用カーボンブラックとしては、従来からタイヤ用その他のゴム補強用カーボンとして汎用されている任意のカーボンブラックを用いることができる。好ましいカーボンブラックはオイルファーネス法によって製造されたGPF〜SAFグレードのゴム補強用カーボンブラックで、ゴム組成物の用途により、使い分け、または2種類以上をブレンド使用することができる。
【0010】
本発明に従ったゴム補強用変性カーボンブラックは、例えば以下のようにして製造することができる。即ちゴム補強用カーボンブラックと水分散シリカを混合し、スラリー状にする。カーボンブラックの分散性をよくするために、適当な分散剤(例えばメタノール、各種界面活性剤)を添加してもよい。これを、例えば水分散シリカ粒子が独立に存在できない領域のpH(7付近)とすることにより、シリカがカーボンブラックのまわりに付着した変性カーボンブラックが得られる。このようにして得られたスラリーをゴムラテックスと混合する。なお、カーボンブラック表面に付着させるシリカの量には特に限定はないが、好ましくは、シリカ変性カーボンブラック重量当り0.1〜25重量%である。シリカ付着量が多すぎるとゴムラテックスとの凝固が困難となる傾向がある。また、水分散シリカをカーボンブラックに添加した後、造粒工程で造粒したカーボンブラックを常法によりスラリー化し、これとジエン系ゴム成分のラテックスを混合して混合物を得ることができる。
【0011】
このようにして得られたゴムラテックス変性カーボンブラックスラリー混合物は、常法により凝固させることによっても本発明のゴム補強用変性カーボンブラック含有ゴム組成物を製造することができる。凝固剤としては、例えば、硫酸、ギ酸などの酸、食塩などの電解質、高分子凝集剤などの一般的な凝固剤を用いることができ(これらを併用しても良い)、その添加量も従前通りである。
【0012】
本発明に用いる水分散シリカとしては常法に従って、珪酸金属塩と酸とを混合反応させて製造したものを使用できる。水分散シリカの形態(ゾルであってもゲルであってもかまわない)および水分散シリカ中のシリカ濃度にはとくに限定はないが、ゾル状シリカであるほうが好ましく、ゾルの安定な50,000ppm 以下が適当である。一方、水分散シリカとして市販のものを使用することもできる。市販の水分散シリカは一般的にはイオン交換膜法で製造されたもので上記の方法で製造されたものに比較して不純物であるナトリウム塩などをほとんど含まないこと、高シリカ含有量でもゾル状態が保たれていることなどが特徴であり、本発明のゴム組成物を製造するために好適に使用できる。シリカ粒子の好ましい直径は1〜100nmであり、そのナトリウムイオン含有量がNa2 O換算で1.0重量%以下である。
【0013】
水分散シリカゾルはシリカの一次粒子または低次のストラクチャーを有するシリカが水中に分散した状態のもので通常塩基性状態で安定化されている。本発明では処理カーボンブラックの製造に際し、例えば酸の添加でシリカゾルがゲル化する中性条件に調整した後、カーボンブラックに混合するかまたはカーボンブラックと水分散シリカを混合後、酸の添加で中性条件に調整することによってカーボンブラックとシリカを複合化させることができる。また、単に水分散シリカとカーボンブラックとを混合し、乾燥することによってもその乾燥過程でシリカのゲル化が起こるとともに、カーボンブラックとの複合化が起こる(少なくとも一部のシリカがカーボンブラック表面に接着する)。上述の様な方法で、カーボンブラックとシリカを複合化させる工程は造粒工程であっても、カーボンブラックをスラリー化した後であってもかまわない。
【0014】
本発明の特徴は前記の水分散シリカをカーボンブラックに付着させるシリカの源としているところにあり、特開平8−277347号公報で本発明者らが開示したゴム補強用変性カーボンブラックをより工業的に効率よく製造できるところにある。
【0015】
本発明によれば、ゴム補強用変性カーボンブラックをジエン系ゴムなどの架橋可能な成分に配合して耐摩耗性、グリップ性能、転がり抵抗などに優れたゴム組成物を得ることができる。そのような架橋可能なゴムとしては例えば、天然ゴム(NR)、各種ブタジエンゴム(BR)、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリロブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどを用いることができ、これらは単独又はブレンドとして用いることができ、ブレンドを用いる場合にはそのブレンド比には特に制限はない。
【0016】
本発明において使用するゴム補強用変性カーボンブラック含有組成物は、ゴム成分100重量部に対しゴム補強用変性カーボンブラックを10〜250重量部、更に好ましくは15〜200重量部配合する。この配合量が少な過ぎると種々のゴム製品として使用する際に、ゴム補強用変性カーボンを通常必要とされる量(10部以上)配合できない。逆に多過ぎると硬度が高くなり過ぎ加工性が低下する等、マスターバッチとしての実用性が乏しくなるおそれがあるので好ましくない。前記ゴム組成物には前記水分散シリカ変性カーボンブラックの他に通常ゴム組成物に配合される任意のカーボンブラック又は/及びシリカを併用することができる。
【0017】
前記ゴム組成物には、前記ゴム、水分散シリカを表面に付着させたカーボンブラックなどに加えて、ゴム工業で通常使用される任意の配合剤、例えば硫黄、有機過酸化物、軟化剤、老化防止剤、加硫促進剤、充填剤、可塑剤、シランカップリング剤等を必要に応じて、通常の配合量の範囲で適宜配合することができる。
【0018】
本発明のゴム補強用変性カーボンブラック含有ゴム組成物は通常の湿式カーボンブラックマスターバッチ法と同じ方法で製造することができる。前述のような方法で表面にシリカを付着させたカーボンブラックのスラリーを製造し、これとジエン系ゴムラテックス(例えばSBRラテックス)を適当な比率で混合する。次いで、これらに従来からカーボンブラックマスターバッチの製造等に一般的に使用されている凝固剤(例えば、高分子凝集剤、NaClなど)を加え凝固させる。凝固したゴム組成物を水相と分別し、例えば熱風乾燥により水分を除去し目的のゴムマスターバッチ組成物を得る。なお上記工程中にて老化防止剤プロセス油やシランカップリング剤などの添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0019】
本発明に使用されるゴム補強用変性カーボンブラックは、前述の如く、例えばカーボンブラックスラリー中に水分散シリカをカーボンブラック表面に付着させることによって製造されるため、この変性カーボンブラックはスラリー状で存在する。従ってこのスラリーを直接ゴムラテックスと混合することによっても本発明のゴム組成物を製造することができる。これによってシリカのゴムとの混練加工の労力を省略できると共に、ゴム中へのゴム補強用変性カーボンブラックの分散が良好となることに加えて、ゴム補強用変性カーボンブラックをスラリーから回収し乾燥する工程がはぶけ、製造費の削減に更に寄与できる。
【0020】
本発明の好ましい態様では前記湿式混合の際に、従来からゴムの配合に一般的に使用されるアロマ系オイル、パラフィン系オイル、ナフテン系オイルなどのプロセスオイル及び/又は合成可塑剤、液状ゴムなどの液状物をジエン系ゴム100重量部当り10〜200重量部配合することができる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことは言うまでもない。
【0022】
実施例1〜7及び比較例1〜2
ゴム補強用変性カーボンブラックの調製(実施例1用)
ゴム補強用カーボンブラック(N339)100gを使用し、これに水分散シリカ2リットルを加え混合スラリー化した。水分散シリカとしては、水酸化ナトリウムでpH10に調整した水に、JIS1号珪酸ナトリウム水溶液と、それを中和する量の希硫酸を所定量加え、最終的にSiO2 量として0.5重量%になるようなゾル状水分散シリカを得た。
【0023】
上で得たカーボンブラックの水分散シリカスラリーを90℃に加熱し、またpHを7に調製し、所望の変性カーボンブラックを含むスラリー状物質(固形分含量5.2重量%)を得た。
【0024】
ゴム補強用変性カーボンブラックの調製(実施例2〜7)
市販品の水分散シリカ(表III を参照)を用いて、次のようにしてゴム補強用変性カーボンブラックを製造した。造粒していないカーボンブラック(N339)に表III に示す市販水分散シリカを適当に水で薄め、カーボンの重量と等しく、かつ、それぞれのシリカ含有量がカーボンブラックとシリカの合計量の1重量%となる様に混合した後、通常のカーボンブラック造粒装置(有刺スクリュー型)で約80℃で造粒した。これを約105℃で乾燥し、表IIに示すゴム補強用変性カーボンブラックを得た。
【0025】
変性カーボンブラック含有ゴム組成物の調製(実施例1〜7)
次に上で得た変性カーボンブラックをスラリー(濃度12.5重量%)とし、その200gとSBR1502ラテックス(濃度41重量%)125gを混合し、これに凝固剤として食塩水(濃度3重量%)1,000gを添加して温度50℃で0.5時間攪拌したのち、80℃で24時間乾燥し、ゴム補強用シリカ変性カーボンブラック含有ゴム組成物(マスターバッチ1〜7)を得た。
【0026】
ゴム補強用変性カーボンブラックのシリカ含量の測定
変性カーボンブラック試料を電気炉中で600℃で灰化し、その灰分をフッ化処理しその減量をシリカ分として付着、もとの変性カーボンに対する重量分率シリカ量10重量%及び1重量%を確認した。
【0027】
以下の配合に従って各種ゴム組成物を常法に従ってバンバリーミキサー及びロール機で混練して調製した(加硫条件:160℃×30分)。結果を表Iに示す。
【0028】
配合表
────────────────────────
ジエン系ゴム(SBR1502):100重量部*1
補強性充填剤(表I参照) 50重量部*1
シランカップリング剤*2: 3重量部*3
亜鉛華(JIS3号): 3重量部
ステアリン酸: 2重量部
老化防止剤*4: 2重量部
粉末硫黄: 2重量部
加硫促進剤*5: 1重量部
────────────────────────
*1)ウェットマスターバッチ
*2)Si 69 (Degussa社製)
*3)補強性充填剤がカーボンブラックの場合使用せず。
*4)Santoflex 13 (Monsant 社製)
*5)Santocure NS (Monsant 社製)
【0029】
【表1】
Figure 0003986129
【0030】
【表2】
Figure 0003986129
【0031】
【表3】
Figure 0003986129
【0032】
【表4】
Figure 0003986129
【0033】
【発明の効果】
表Iの結果から明らかなように、本発明に係るゴム補強用水分散シリカ変性カーボンブラック含有ゴム組成物の製造方法は、通常のカーボンマスターバッチと同じ方法で、しかも簡便かつ廉価に製造することができ、得られる組成物もカーボンブラックに比較し、高温域(60℃)でのtanδが低く、かつ耐摩耗性も低下しない。

Claims (4)

  1. (a)ジエン系ゴム成分のラテックス100重量部(固形分として)と(b)水分散シリカを添加して変性造粒した変性カーボンブラック10〜250重量部とを混合し、次にこの混合物を凝固剤で凝固せしめることを特徴とするカーボンブラック含有ゴム組成物の製造方法。
  2. 水分散シリカが直径が1nm〜100nmのシリカ粒子を含有し、そのナトリウムイオン含有量がNa2 O換算で1.0重量%以下である請求項1に記載の製造方法。
  3. 芳香族プロセス油及び/又は高粘度油5〜150重量部を混合物中に更に含ませる請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. シリカ含有量が変性カーボンブラックの0.1〜25重量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
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