JP3985124B2 - 一方向クラッチ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸方向の寸法が小さいコンパクトな一方向クラッチに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、釣具のリールや複写機の紙送り機構などには、図7,図8に示すようなローラクラッチと呼ばれる一方向クラッチが組み込まれている。
【0003】
このローラクラッチは、外輪10と、内輪に相当する軸11と、多数のローラ12と、その保持器13と、バネ14とからなるものであって、図7に示すように、外輪10の軸方向両端には内向きの鍔部10a,10aが折曲形成されており、また、外輪10の内周面には図8に示すように多数のカム面10bが等間隔をあけて形成されている。そして、多数のローラ12がそれぞれのカム面10bと軸11との間に配設され、外輪10の内側に固定された保持器13によって保持されると共に、バネ14によってカム面10bに食い込む方向に付勢されている。
【0004】
このようなローラクラッチでは、例えば、内輪に相当する軸11が時計方向に回転すると、その回転力を受けたローラ12がバネ14の付勢力に抗してカム面10bに食い込まない方向(時計方向)に変位し、外輪10に対してローラ12が空転して軸11の回転力が外輪10に伝達されないため、所謂オーバーラン状態となる。これに対し、軸11が反時計方向に回転する場合は、その回転力とバネ14の付勢力を受けてローラ12がカム面10bに食い込む方向(反時計方向)に変位してカム面10bに食い込むため、軸11が所謂ロック状態となってその回転力が外輪10に伝達される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のローラクラッチは、既述したように一方向の回転のみを伝達できるものであるが、外輪10のカム面10bと軸11との間に介在させるローラ12が、加工上の制約から、ある程度の長さを必要とするため、外輪10の軸方向の寸法W(幅寸法)が大きくなり、軸方向に大きい装着スペースが必要になるという問題があった。
【0006】
また、このローラクラッチは、軸11に対する軸方向の位置決め手段が存在しないため、別途、位置決め手段を設ける必要があるという問題もあった。
【0007】
本発明は斯かる問題に対処すべくなされたもので、その目的とするところは、従来のローラクラッチよりも軸方向の寸法が小さく、軸(シャフト)に対する位置決めも簡単に行えるコンパクトな一方向クラッチを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、本発明の請求項1に係る一方向クラッチは、
2枚の内輪プレートが貼合わされて、外輪装着用空隙部と転動体の軌道が2枚の内輪プレートの外周縁間に形成された内輪と、
転動体を収容する複数の穴が円周方向に等間隔をあけて形成され、内周縁が上記内輪の外輪装着用空隙部に挟まれて回動自在に装着された板状の外輪と、
上記外輪の各穴に転動体として収容され、各穴の外輪外周側のカム面と、上記軌道を形成する2枚の内輪プレートの外周縁とによって保持されたボールと、
上記内輪、上記外輪および上記ボールが収容され、上記外輪が回転不能に固定された蓋付きのハウジング部材であって、その蓋の裏面に上記ボールを上記内輪側に付勢する弾性片が円周方向に等間隔をあけて突設された蓋付きのハウジング部材と、を具備してなり、
上記外輪の外周には複数の回り止め用の凹部が等間隔をあけて形成され、この凹部を上記ハウジング部材の内周面に形成された凸部と噛み合わせることによって、上記外輪が上記ハウジング部材に回転不能に固定されており、
上記蓋の外周面には複数の凹部が等間隔をあけて形成され、この凹部が上記ハウジング部材の内周面の上記凸部と噛み合うように上記蓋を上記ハウジング部材に被着することで、上記各弾性片の先端が上記各ボールに弾接するようにしたことを特徴とする。
【0009】
このような構成の一方向クラッチは、その軸方向の寸法(幅寸法)が、転動体の軌道を形成する2枚の内輪プレートの外周縁の部分で最大となるが、転動体としてローラではなくボールを使用しているため、この軌道を形成する外周縁から外周縁までの寸法が短くなって、実質的にボールの直径に双方の外周縁の厚みを加えた寸法となり、従来のローラを組込んだローラクラッチに比べると、軸方向の寸法をかなり短縮することが可能となる。しかも、この一方向クラッチは、2枚の内輪プレートを貼合わせた内輪を軸(シャフト)に固定するだけで、簡単に軸方向の位置決めを行って取付けることができる。
【0010】
上記のように内輪をシャフトに取付固定して、例えば、ボールがカム面に食い込まない方向にシャフトと内輪を回転させると、ボールが外輪の穴の中で空転してシャフトと内輪の回転力が外輪に伝達されないためオーバーラン状態となり、逆に、ボールがカム面に食い込む方向にシャフトと内輪を回転させると、ボールが外輪の穴の中でカム面に食い込んでロック状態となるため、外輪に対する内輪及びシャフトの回転が阻止される。
【0012】
また、このような一方向クラッチは、裏面に弾性片を設けた蓋を例えば合成樹脂の射出成形等の手段によって容易且つ安価に量産できる上に、この蓋をハウジング部材に被着するだけで各弾性片を一斉にボールに弾接させることができるため、クラッチ組立作業も簡単になる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る一方向クラッチの正面図、図2は同クラッチの断面図、図3(a)及び(b)は同クラッチの内輪の断面図及び正面図、図4(a)及び(b)は同クラッチの外輪の断面図及び正面図である。
【0015】
この一方向クラッチは、図1,図2に示すように、内輪1と、外輪2と、転動体であるボール3と、バネ4とで構成されている。
【0016】
内輪1は、図3に示すように、打抜きプレス成形されたステンレス製の2枚の内輪プレート1a,1aを貼合わせたもので、双方の内輪プレート1a,1aの外周縁には段部1b,1bと湾曲部1c,1cが形成されている。そして、この外周縁の段部1b,1bの間が外輪装着用空間部1dとされ、外周縁の湾曲部1c,1cの間に転動体(ボール3)の軌道1eが形成されている。また、この内輪1の内周はDカットの形状とされ、シャフトに固定されたとき大きいトルクを負荷できるようになっている。
【0017】
なお、この実施形態では、2枚の内輪プレート1a,1aをリベット1fで4箇所接合して貼合わせているが、スポット溶接等の他の接合手段を採用して貼合わせてもよい。
【0018】
一方、外輪2は、図4に示ように、打抜きプレスによってボール3を収容する複数(この実施形態では6つ)の穴2aを円周方向に等間隔をあけて形成したステンレス製の板状の外輪であり、図2に示すように、この外輪2の内周縁が上記内輪1の外輪装着用空隙部1dに挟まれて回転自在に装着されている。
【0019】
ボール3を収容する上記の穴2aは、その外輪外周側にカム面2bが形成されており、後述するように、内輪1が外輪2に対して一方向に回転したときにボール3がカム面2bに食い込むようになっている。また、この外輪2の外周には、複数(この実施形態では6つ)の回止め用の凹部2cが等間隔をあけて形成されており、後述するハウジング部材5に回転不能に収容できるようになっている。なお、穴2aや凹部2cの数は6つに限定されるものではない。
【0020】
図1、図2に示すように、上記外輪2の各穴2aには転動体としてボール3が収容されており、該ボール3は各穴のカム面2bと、前記軌道1eを形成する2枚の内輪プレート1a,1aの外周縁の湾曲部1c,1cとによって保持されている。そして、各ボール3はバネ4によってカム面2bに食い込む方向に付勢されている。尚、図1では、バネ4をコイルスプリングのように模式的に示しているが、バネ4としては後述する弾性片5cなどが好適に採用される。
【0021】
以上のような構成の一方向クラッチは、軸方向の寸法W(幅寸法)が、転動体の軌道を形成する2枚の内輪プレート1a,1a外周縁の湾曲部1c,1cで最大となるが、転動体としてローラではなくボール3を使用しているため、最大の軸方向の寸法Wは実質的にボール3の直径に双方の外周縁の湾曲部1c,1cの板厚を加えた寸法となり、従来のローラを組込んだローラクラッチに比べると、軸方向の寸法Wをかなり短縮することが可能となる。しかも、この一方向クラッチは、内輪1をシャフト6に固定することで、簡単に軸方向の位置決めを行うことができる。
【0022】
このように内輪1をシャフト6に取付固定し、該内輪1を図1において例えば時計方向に回転させると、その回転力を受けたボール3がバネ4に抗して時計方向に転動変位し、外輪2の穴2aの中でボール3が空転して内輪1の回転力が外輪2に伝達されないため、オーバーラン状態となる。そして、内輪1を反時計方向に回転させると、その回転力とバネ4の付勢力を受けたボール3が反時計方向に転動変位し、外輪2の穴2aの中でボール3がカム面2bに食い込んでロック状態となるため、外輪2に対する内輪1の回転が阻止されて内輪1の回転力が外輪2に伝達される。
【0023】
図5は本発明の他の実施形態に係る一方向クラッチの断面図、図6は同クラッチのハウジング部材の蓋の背面図である。
【0024】
この実施形態の一方向クラッチは、蓋5a付きのハウジング部材5(例えばギヤ、プーリ等)に前述の一方向クラッチを収容し、その外輪2の前記凹部2cをハウジング部材5の内周面に形成された凸部と噛み合わせることによって、外輪2をハウジング部材5に回転不能に固定したものである。
【0025】
このハウジング部材5の蓋5aは、例えばポリアセタール等の弾性のある合成樹脂を射出成形したものであって、図5,図6に示すように、内輪プレート1aの外周縁の湾曲部1cが嵌まり込む環状溝5bが裏面に形成されており、この環状溝5bの底面には、外輪2の各穴2aに収容された前記ボール3を内輪1側に付勢する6つの円弧状の弾性片5cが円周方向に等間隔をあけて突設されている。そして、この蓋5aの外周面には6つの凹部5dが等間隔で形成されており、この凹部5dがハウジング部材5の内周面の上記凸部と噛み合うように蓋5aをハウジング部材5に被着すると、各弾性片5cの先端が各ボール3に弾接して、内輪1側に各ボール3を付勢するようになっている。
【0026】
上記のような一方向クラッチは、裏面に弾性片5cを一体成形した蓋5aを合成樹脂の射出成形によって容易且つ安価に量産できる上に、この蓋5aをハウジング部材5に被着するだけで各弾性片5cを一斉にボール3に弾接させることができるため、クラッチ組立作業も簡単になるといった利点がある。
【0027】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の一方向クラッチは、従来のローラクラッチよりも軸方向の寸法(幅寸法)をかなり短縮して薄型化することができ、シャフトに対する軸方向の位置決めや組立作業も簡単に行えるといった顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る一方向クラッチの正面図である。
【図2】同クラッチの断面図である。
【図3】(a)は同クラッチの内輪の断面図、(b)は同クラッチの内輪の正面図である。
【図4】(a)は同クラッチの外輪の断面図、(b)は同クラッチの外輪の正面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る一方向クラッチの断面図である。
【図6】同クラッチのハウジング部材の蓋の背面図である。
【図7】従来のローラクラッチの断面図である。
【図8】図7のA−A線断面図である。
【符号の説明】
1 内輪
1a 内輪プレート
1b 内輪プレートの外周縁の段部
1c 内輪プレートの外周縁の湾曲部
1d 外輪装着用空隙部
1e 転動体の軌道
2 外輪
2a 転動体を収容する穴
2b カム面
3 ボール(転動体)
4 バネ
5 ハウジング部材
5a ハウジング部材の蓋
5c 弾性片
Claims (1)
- 2枚の内輪プレートが貼合わされて、外輪装着用空隙部と転動体の軌道が2枚の内輪プレートの外周縁間に形成された内輪と、
転動体を収容する複数の穴が円周方向に等間隔をあけて形成され、内周縁が上記内輪の外輪装着用空隙部に挟まれて回動自在に装着された板状の外輪と、
上記外輪の各穴に転動体として収容され、各穴の外輪外周側のカム面と、上記軌道を形成する2枚の内輪プレートの外周縁とによって保持されたボールと、
上記内輪、上記外輪および上記ボールが収容され、上記外輪が回転不能に固定された蓋付きのハウジング部材であって、その蓋の裏面に上記ボールを上記内輪側に付勢する弾性片が円周方向に等間隔をあけて突設された蓋付きのハウジング部材と、を具備してなり、
上記外輪の外周には複数の回止め用の凹部が等間隔をあけて形成され、この凹部を上記ハウジング部材の内周面に形成された凸部と噛み合わせることによって、上記外輪が上記ハウジング部材に回転不能に固定されており、
上記蓋の外周面には複数の凹部が等間隔をあけて形成され、この凹部が上記ハウジング部材の内周面の上記凸部と噛み合うように上記蓋を上記ハウジング部材に被着することで、上記各弾性片の先端が上記各ボールに弾接するようにしたことを特徴とする一方向クラッチ。
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