JP3967296B2 - 静電吸引型流体吐出方法及びその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インク等の流体を帯電させて静電吸引することで、基板などの対象物上に該流体を吐出する静電吸引型流体吐出方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、インク等の流体を対象物(記録媒体)上に吐出する流体ジェット方式には、インクジェットプリンタとして実用化されているピエゾやサーマルなどの方式があるが、その他の方式として、吐出する流体に電界を印加してノズルのノズル孔(インク吐出孔・吐出孔)から吐出させる静電吸引方式がある
このような静電吸引方式の流体吐出装置(以下、静電吸引型流体吐出装置と称する)としては、例えば特許文献1、2において開示がある。
【0003】
また、特許文献4には、ノズル孔をスリット状とすると共にノズル孔に突出した針電極を設け、該針電極を用いて微粒子を含むインク吐出する装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、ノズル孔より内部のインク室に電圧印加用の電極を設けた装置が開示されている。
【0005】
ここで、従来の静電吸引型流体吐出装置における流体吐出モデルを説明する。
【0006】
静電吸引型流体吐出装置、とりわけオンデマンド型の静電吸引型流体吐出装置の設計要因としては、インク液体の導電性(例えば比抵抗106〜1011Ωcm)、表面張力(例えば0.020〜0.040N/m)、粘度(例えば0.011〜0.015Pa・s)、印加電圧(電場)がある。そして、印加電圧としては、ノズルに印加する電圧、およびノズルと対向電極間との距離が特に重要とされていた。
【0007】
静電吸引型流体吐出装置においては、電気流体的な不安定性を利用しており、図15にこの様子を示す。一様電界の中に導電性流体を静置すると、導電性流体の表面に作用する静電力が表面を不安定にし、曳き糸の成長を促す(静電曳き糸現象)。この時の電場は、ノズル100と、ノズル100先端のノズル孔100aと距離hを隔てて対向する対向電極101との間に電圧Vを印加したときに発生する電場E0とする。この時の成長波長λcは物理的に導くことが可能であり(例えば、非特許文献1)、次式で表される。
【0008】
【数1】
【0009】
ここで、γ:表面張力(N/m)、ε0:真空の誘電率(F/m)、E0:電界の強さ(V/m)である。ノズル径d(m)が、λcよりも小さい場合、成長は起こらない。すなわち、
【0010】
【数2】
【0011】
が、吐出のための条件となっていた。
【0012】
ここで、E0は平行平板を仮定した場合の電界強度(V/m)で、ノズル−対向電極間距離をh(m)、ノズルに印加する電圧をV0として、
【0013】
【数3】
【0014】
したがって、dは、
【0015】
【数4】
【0016】
となる。
【0017】
【特許文献1】
特公昭36−13768号公報(公告日昭和36年8月18日)
【0018】
【特許文献2】
特開2001−88306号公報(公開日平成13年4月3日)
【0019】
【特許文献3】
特開平8−238774号公報(公開日平成8年9月17日)
【0020】
【特許文献4】
特開2000−127410号公報(公開日平成12年5月9日)
【0021】
【非特許文献1】
画像電子情報学会,第17巻,第4号,1988年,p.185-193
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
静電吸引型流体吐出装置に関わらず流体吐出装置では、一般的により微細なドット形成やライン形成を可能とするために、インクを吐出するノズルの径を小さくしたいといった要望がある。
【0023】
しかしながら、現在実用化されているピエゾ方式やサーマル方式などの流体吐出装置では、ノズル径を小さくして、例えば1plを下回るような微小量の流体の吐出は困難である。これは、流体を吐出するノズルが微細になるほど吐出に必要な圧力が大きくなるためである。
【0024】
また、上述のような流体吐出装置では、液滴の微細化と高精度化は相反する課題であり、両方を同時に実現するのは困難であった。これは以下の理由による。
【0025】
ノズルから吐出された液滴に付与される運動エネルギーは、液滴半径の3乗に比例する。このため、ノズルを微細化した場合に吐出される微細液滴は、吐出時の空気抵抗に耐えるほどの十分な運動エネルギーを確保できず、空気滞留などによる撹乱を受け、正確な着弾を期待できない。さらに、液滴が微細になるほど、表面張力の効果が増すため、液滴の蒸気圧が高くなり蒸発量が激しくなる.このため、微細液滴は飛翔中に著しい質量の消失を招き、着弾時に液滴の形態を保つことすら難しいという問題があった。
【0026】
またさらに、上述した従来の静電吸引型流体吐出装置における流体吐出モデルに基づくと、上記(2)式より、ノズル径の減少は吐出に必要な電界強度の増加を要請することとなる。そして、電界強度は、上記(3)式に示すように、ノズルに印加する電圧(駆動電圧)V0とノズル−対向電極間距離hとによって決まるため、ノズル径の減少は駆動電圧の上昇を招来する。
【0027】
ここで、従来の静電吸引型流体吐出装置における駆動電圧は、1000V以上と非常に高いため、各ノズル間でのリークや干渉化を考慮すると小型化および高密度化は難しく、ノズル径をさらに小さくすると上記問題がより大きなものとなる。また、1000Vを越えるような高電圧のパワー半導体は一般的に高価で周波数応答性も低い。
【0028】
尚、上記特許文献1で開示されているノズル径は0.127mmであり、特許文献2で開示されているノズル径の範囲は50〜2000μm、より好ましくは100〜1000μmといった範囲であった。
【0029】
ノズル径に関して、従来の静電吸引型流体吐出における典型的な動作条件を当てはめて計算してみると、表面張力0.020N/m、電界強度107V/mとして、上記(1)式に代入して計算すると、成長波長λcは約140μmとなる。すなわち、限界ノズル径として70μmという値が得られる。すなわち、上記条件下では107V/mの強電界を用いてもノズル径が直径70μm程度以下の場合は背圧を印加して強制的にメニスカス形成させるなどの処置をとらない限り、インクの成長は起こらず、静電吸引型流体吐出は成立しないと考えられていた。すなわち、微細ノズルと駆動電圧の低電圧化は両立しない課題と考えられていた。
【0030】
以上のように、従来の流体吐出装置では、ノズルの微細化と高精度化は相反する課題であり、両方を同時に実現することは困難であった。また、特に静電吸引型流体吐出装置では、ノズルの微細化と駆動電圧の低電圧化とは両立しない課題と考えられていた。
【0031】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、ノズルの微細化と微小流体の吐出及び着弾位置の高精度化、さらに、駆動電圧の低電圧化をすべて実現した静電吸引型流体吐出装置を提供することにある。
【0032】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の静電吸引型流体吐出装置は、上記の課題を解決するために、電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に上限電圧が設定されたパルス電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加する電圧印加手段を備え、該パルス電圧の立ち上がり直前に、上限電圧と同極性でかつ上記吐出可能最低電圧よりも絶対値の小さい予備充電電圧が設定されていることを特徴としている。
【0033】
上記の構成によれば、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、本願発明者らが提案する新たな吐出モデルにしたがって、局所電界が発生し、微細ノズル化により吐出における駆動電圧の低下が可能となる。このような駆動電圧の低下は、装置の小型化およびノズルの高密度化において極めて有利となる。もちろん、駆動電圧を低下させることで、コストメリットの高い低電圧駆動ドライバの使用をも可能にする。
【0034】
さらに、上記吐出モデルでは、吐出に必要な電界強度は、局所的な集中電界強度に依存することになるため、対向電極の存在が必須とならない。すなわち、対向電極を要さずに絶縁性基板などに対しても印字を行うことが可能となり、装置構成の自由度が増す。また、厚い絶縁体に対しても印字を行うことが可能となる。
【0035】
ところが、上述のような微細ノズル化は、吐出量が微量となるほど急激に吐出応答性が悪くなり、高周波数駆動が困難となるといった問題がある。もちろん、この問題は、ノズル−基板間に印加するパルス電圧の上限電圧を大きくすることで、吐出応答性が上がり、高周波数駆動がある程度実現可能にはなるが、駆動電極に高電圧を印加するため高電圧ドライバが必要であり、微細ノズル化による本来のメリットであったはずのコストメリットの高い低電圧駆動ドライバを使用することが不可能となってしまう。
【0036】
吐出応答性をより詳細に見ると、パルス電圧の立ち上がり時の吐出開始応答性、及び立ち下り時の吐出終了応答性に分けられ、吐出応答性が低いことはつまり、上限電圧印加時間に依存する精度の高い吐出量制御が行えないといった問題でもある。
【0037】
これに対し、上記構成では、電圧印加手段が、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に上限電圧が設定されたパルス電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加するにおいて、該パルス電圧の立ち上がり直前に、上限電圧と同極性でかつ上記吐出可能最低電圧よりも絶対値の小さい予備充電電圧が設定されているので、パルス電圧立ち上がり前に既にメニスカス表面電位がある程度予備充電された状態となっている。
【0038】
したがって、パルス電圧の立ち上がり後、メニスカス表面電位は吐出条件である吐出可能最低電圧に短時間で到達して吐出が開始し、吐出開始応答性を高めることができ、ひいては、吐出限界周波数を向上させて高周波数駆動が可能となる。
【0039】
本発明の第2の静電吸引型流体吐出装置は、上記の課題を解決するために、電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に上限電圧が設定されたパルス電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加する電圧印加手段を備え、該パルス電圧の立ち下がり直後に、上限電圧と逆極性の減衰促進電圧が設定されていることを特徴としている。
【0040】
上記の構成においても、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、駆動電圧の低下が可能となり、装置の小型化およびノズルの高密度化において極めて有利となると共に、コストメリットの高い低電圧駆動ドライバの使用をも可能にする等の上記した本発明の第1の静電吸引型流体吐出装置と同様の作用を奏する。
【0041】
そして、上記構成では、電圧印加手段が、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に上限電圧が設定されたパルス電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加するにおいて、該パルス電圧の立ち下がり直後に、上限電圧と逆極性の減衰促進電圧が設定されているので、パルス電圧立ち下がり後にメニスカス表面電位が急激に減衰する。
【0042】
したがって、パルス電圧の立ち下がり後、メニスカス表面電位は吐出を継続する条件である吐出維持可能最低電圧を短時間で下回って吐出が停止し、吐出終了応答性を高めることができ、ひいては、吐出限界周波数を向上させて高周波数駆動が可能となる。
【0043】
本発明の第3の静電吸引型流体吐出装置は、上記の課題を解決するために、電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流吐出装置において、上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に上限電圧が設定されたパルス電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加する電圧印加手段を備え、該パルス電圧の立ち上がり直前に、上限電圧と同極性でかつ上記吐出可能最低電圧よりも絶対値の小さい予備充電電圧が設定されると共に、パルス電圧の立ち上がり直後に、上限電圧と逆極性の減衰促進電圧が設定されていることを特徴としている。
【0044】
上記の構成においても、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、駆動電圧の低下が可能となり、装置の小型化およびノズルの高密度化において極めて有利となると共に、コストメリットの高い低電圧駆動ドライバの使用をも可能にする等の上記した本発明の第1の静電吸引型流体吐出装置と同様の作用を奏する。
【0045】
そして、上記構成では、電圧印加手段が、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に上限電圧が設定されたパルス電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加するにおいて、該パルス電圧の立ち上がり直前に、上限電圧と同極性でかつ上記吐出可能最低電圧よりも絶対値の小さい予備充電電圧が設定されると共に、パルス電圧の立ち上がり直後に、上限電圧と逆極性の減衰促進電圧が設定されている。
【0046】
したがって、上述したように、吐出開始応答性と吐出終了応答性を共に高めることができ、ひいては、より効果的に吐出限界周波数を向上させてさらなる高周波数駆動が可能となり、また、上限電圧印加時間に依存した吐出制御を行うことができるので、吐出量の時間制御も可能となる。
【0047】
本発明の第4の静電吸引型流体吐出装置は、上記の課題を解決するために、電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に上限電圧が設定されたパルス電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加する電圧印加手段を備え、該パルス電圧の立ち上がり直前に、上限電圧と同極性でかつ上記吐出可能最低電圧よりも絶対値の小さい予備充電電圧が設定されると共に、パルス電圧の立ち上がり直後に、上限電圧と同極性で減衰促進電圧減衰促進電圧が設定されていることを特徴としている。
【0048】
この構成と上記した本発明の第3の静電吸引型流体吐出装置との違いは、吐出終了応答性を高めるための減衰促進電圧にある、第3の静電吸引型流体吐出装置では、減衰促進電圧は上限電圧とは逆極性であったが、ここでは同極性で吐出維持可能最低電圧よりも絶対値の小さい電圧としている。
【0049】
このようにすることで、減衰促進電圧が逆極性のものに比べて、吐出終了応答性を良好にする効果は劣るが、不吐出時間をできるだけ短縮した単発流吐出が可能となり、近接ドットの形成に対して有効である。また、パルス電圧の上限電圧及び下限電圧の電位差が小さくなるため、低電圧駆動ドライバの使用が可能となる。
【0050】
本発明の第5の静電吸引型流体吐出装置は、上記課題を解決するために、電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に直流電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加する電圧印加手段を備え、該直流電圧の印加開始直前に、該直流電圧と同極性でかつ上記吐出可能最低電圧よりも絶対値の小さい予備充電電圧が設定されていることを特徴としている。
【0051】
上記の構成においても、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、駆動電圧の低下が可能となり、装置の小型化およびノズルの高密度化において極めて有利となると共に、コストメリットの高い低電圧駆動ドライバの使用をも可能にする等の上記した本発明の第1の静電吸引型流体吐出装置と同様の作用を奏する。
【0052】
そして、上記構成では、電圧印加手段が、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に直流電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加するにおいて、該直流電圧の印加開始直前に、該直流電圧と同極性でかつ上記吐出可能最低電圧よりも絶対値の小さい予備充電電圧が設定されているので、電圧印加開始時の吐出開始応答性に起因して、直流電圧印加終了タイミングに依存させた精度の高い吐出開始位置制御が可能となる。
【0053】
つまり、上記した電圧の立ち上がり及び立ち下り時の応答性の問題は、何もパルス電圧に限るものではなく、基板上にライン描画を行うにあたって印加される直流電圧印加時にも生じる。そのため、直流電圧印加開始時の吐出開始応答性に起因して、直流電圧印加開始タイミングに依存させた精度の高い吐出開始位置制御が行えなかったが、これにより、直流電圧印開始タイミングに依存させた精度の高い吐出開始位置制御が可能となる。
【0054】
本発明の第6の静電吸引型流体吐出装置は、上記課題を解決するために、電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に直流電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加する電圧印加手段を備え、該直流電圧の印加終了直後に、該直流電圧と逆極性の減衰促進電圧が設定されていることを特徴としている。
【0055】
上記の構成においても、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、駆動電圧の低下が可能となり、装置の小型化およびノズルの高密度化において極めて有利となると共に、コストメリットの高い低電圧駆動ドライバの使用をも可能にする等の上記した本発明の第1の静電吸引型流体吐出装置と同様の作用を奏する。
【0056】
そして、上記構成では、電圧印加手段が、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に直流電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加するにおいて、該直流電圧の印加終了直後に、該直流電圧と逆極性の減衰促進電圧が設定されているので、電圧印加終了時の吐出終了応答性に起因して、直流電圧印加終了タイミングに依存させた精度の高い吐出終了位置制御が可能となる。
【0057】
印加開始位置制御と同様に、基板上にライン描画を行うにあたって、直流電圧印加終了時の吐出終了応答性に起因して、直流電圧印加終了タイミングに依存させた精度の高い吐出終了位置制御が行えなかったが、これにより、直流電圧印加終了タイミングに依存させた精度の高い吐出終了位置制御が可能となる。
【0058】
また、本発明の上記第2、第3、第6の静電吸引型流体吐出装置では、吐出可能最低電圧よりも上記減衰促進電圧の絶対値が小さい構成とすることがさらに好ましい。
【0059】
これは、吐出可能最低電圧の絶対値を超えて減衰促進電圧が大きいと、パルス電圧の周期等の減衰促進電圧の印加期間にもよるが、メニスカス表面電位が逆極性側で吐出可能最低電圧より大きくなり、逆極性に帯電した流体が吐出される恐れがあるためである。吐出可能最低電圧の絶対値よりも小さくしておくことで、メニスカス表面電位が逆極性となることはない。
【0060】
本発明の静電吸引型流体吐出方法は、上記課題を解決するために、電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出方法において、上記ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmとし、上記ノズルと上記基板との間に、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧を印加するにあたり、電圧の立ち上がり直前に、上記吐出可能最低電圧よりも絶対値の小さい印加電圧と同極性の予備充電電圧を印加することを特徴としている。
【0061】
既に説明したように、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、駆動電圧の低下が可能となり、装置の小型化およびノズルの高密度化において極めて有利となると共に、コストメリットの高い低電圧駆動ドライバの使用をも可能にし、対向電極を用いない構成も可能となる。
【0062】
加えて、電圧の立ち上がり直前に、吐出可能最低電圧よりも絶対値の小さい印加電圧と同極性の予備充電電圧を印加しておくことで、メニスカス表面電位の予備充電が可能となり、吐出開始応答性を良好とできる。
【0063】
また、本発明の別の静電吸引型流体吐出方法は、上記課題を解決するために、電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出方法において、上記ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmとし、上記ノズルと上記基板との間に、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧を印加するにあたり、電圧の立ち下がり直後に、印加電圧とは逆極性の減衰促進電圧を印加することを特徴としている。
【0064】
既に説明したように、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、駆動電圧の低下が可能となり、装置の小型化およびノズルの高密度化において極めて有利となると共に、コストメリットの高い低電圧駆動ドライバの使用をも可能にし、対向電極を用いない構成も可能となる。
【0065】
加えて、電圧の立ち下がり直後に、印加電圧とは逆極性の減衰促進電圧を印加することで、メニスカス表面電位の減衰を促進して流体の切れを良くして、吐出終了応答性を良好とできる。
【0066】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図1ないし図16に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0067】
本実施の形態に係る静電吸引型流体吐出装置は、そのノズル径を0.01μm〜25μmとしており、かつ、1000V以下の駆動電圧にて流体の吐出制御を可能としている。
【0068】
ここで、従来の流体吐出モデルにおいては、ノズル径の減少は駆動電圧の上昇に繋がるため、50μm以下のノズル径では、吐出インクに背圧を与えるなどの他の工夫を行わない限り、1000V以下の駆動電圧でのインク吐出は不可能と考えられていた。しかしながら、本願発明者らは鋭意検討の結果、あるノズル径以下では、従来の流体吐出モデルとは異なる吐出モデルでの吐出現象が起こることを突き止めた。本発明は、この流体吐出モデルにおける新たな知見に基づいてなされたものである。
【0069】
先ずは、本願発明者らによって発見された流体吐出モデルについて説明する。
【0070】
直径d(以下の説明においては、特に断らない限りノズルの内径を指す)のノズルに導電性流体を注入し、無限平板導体から高さhに垂直に位置させたと仮定する。この様子を図2に示す。このとき、ノズル先端部(ノズル孔)に誘起される電荷Qは、ノズル先端部の流体によって形成される半球部に集中すると仮定し、以下の式で近似的に表される。
【0071】
【数5】
【0072】
ここで、Q:ノズル先端部に誘起される電荷(C)、ε0:真空の誘電率(F/m)、d:ノズルの直径(m)、V0:ノズルに印加する総電圧である。また、αは、ノズル形状などに依存する比例定数であり、1〜1.5程度の値を取るが、特にd<<h(h:ノズル(正確にはノズル孔)−基板間距離(m))の時はほぼ1となる。
【0073】
また、基板として導電基板を用いた場合、ノズルと対向して基板内の対称位置に、上記電荷Qと反対の極性を持つ鏡像電荷Q’が誘導されると考えられる。基板が絶縁体の場合は、誘電率によって定まる対称位置に同様に電荷Qと逆極性の映像電荷Q’が誘導される。
【0074】
ノズル先端部における集中電界強度Elocは、先端部の曲率半径をRと仮定すると、
【0075】
【数6】
【0076】
で与えられる。ここで、kは、ノズル形状などに依存する比例定数であり、1.5〜8.5程度の値を取るが、多くの場合5程度と考えられる(P.J. Birdseye and D.A. Smith, Surface Science, 23(1970), p.198-210)。また、ここでは、流体吐出モデルを簡単にするため、R=d/2と仮定する。これは、ノズル先端部において表面張力によって流体がノズル径dと同じ曲率径を持つ半球形状に盛り上がっている状態に相当する。
【0077】
ノズル先端部の流体に働く圧力のバランスを考える。まず、静電的な圧力Peは、ノズル先端部の液面積をSとすると、
【0078】
【数7】
【0079】
となる。(5)〜(7)式より、圧力Peは、α=1とおいて、
【0080】
【数8】
【0081】
と表される。
【0082】
一方、ノズル先端部における流体の表面張力による圧力Psとすると、
【0083】
【数9】
【0084】
となる。ここで、γ:表面張力である。静電的な力により吐出が起こる条件は、静電的な力が表面張力を上回ることなので、静電的な圧力Peと表面張力による圧力Psとの関係は、
【0085】
【数10】
【0086】
となる。
【0087】
図3に、ある直径dのノズルを与えた時の、表面張力による圧力Psと静電的な圧力Peとの関係を示す。流体の表面張力としては、流体が水(γ=72mN/m)の場合を仮定している。ノズルに印加する電圧を700Vとした場合、ノズル直径dが25μmにおいて静電的な圧力Peが表面張力による圧力Psを上回ることが示唆される。このことより、V0とdとの関係を求めると、
【0088】
【数11】
【0089】
が吐出の最低電圧を与える。
【0090】
また、その時の吐出圧力ΔPは、
【0091】
【数12】
【0092】
より、
【0093】
【数13】
【0094】
となる。
【0095】
ある直径dのノズルに対し、局所的な電界強度によって吐出条件を満たす場合の吐出圧力ΔPの依存性を図4に、また、吐出臨界電圧(すなわち吐出の生じる最低電圧)Vcの依存性を図5に示す。
【0096】
図4から、局所的な電界強度によって吐出条件を満たす場合(V0=700V,γ=72mN/mと仮定した場合)のノズル径の上限が25μmであることが分かる。
【0097】
図5の計算では、流体として水(γ=72mN/m)及び有機溶剤(γ=20mN/m)を想定し、k=5の条件を仮定した。この図より、微細ノズルによる電界の集中効果を考慮すると、吐出臨界電圧Vcはノズル径の減少に伴い低下することが明らかであり、流体が水の場合においてノズル径が25μmの場合、吐出臨界電圧Vcは700V程度であることが分かる。
【0098】
従来の吐出モデルにおける電界の考え方、すなわちノズルに印加する電圧V0とノズル−対向電極間距離hとによって定義される電界のみを考慮した場合では、ノズル径が微小になるに従い、吐出に必要な駆動電圧は増加する。
【0099】
これに対し、本願発明者らが提案する新たな吐出モデルのように、局所電界強度に注目すれば、微細ノズル化により吐出における駆動電圧の低下が可能となる。このような駆動電圧の低下は、装置の小型化およびノズルの高密度化において極めて有利となる。もちろん、駆動電圧を低下させることで、コストメリットの高い低電圧駆動ドライバの使用をも可能にする。
【0100】
さらに、上記吐出モデルでは、吐出に必要な電界強度は、局所的な集中電界強度に依存することになるため、対向電極の存在が必須とならない。すなわち、従来の吐出モデルでは、ノズル−基板間に電界を印加するため、絶縁体の基板に対してはノズルと反対側に対向電極を配置するか、あるいは基板を導電性とする必要があった。そして、対向電極を配置する場合、すなわち基板が絶縁体の場合では、使用できる基板の厚さに限界があった。
【0101】
これに対し、本発明の吐出モデルでは、対向電極を要さずに絶縁性基板などに対しても印字を行うことが可能となり、装置構成の自由度が増す。また、厚い絶縁体に対しても印字を行うことが可能となる。
【0102】
また、図6に、基板との間に働く鏡像力の大きさと基板からの距離hとの相関を示す。図より明らかなように、この鏡像力は基板とノズル間の距離が近くなるほどに顕著になり、特にhが20μm以下で顕著である。
【0103】
次に、吐出流量の精密制御について考えて見る。円筒状の流路における流量Qは、粘性流の場合、以下のハーゲン・ポアズイユの式によって表される。いま、円筒形のノズルを仮定し、このノズルを流れる流体の流量Qは、次式で表される。
【0104】
【数14】
【0105】
ここで、η:流体の粘性係数(Pa・s)、L:流路すなわちノズルの長さ(m)、d:流路すなわちノズル孔の直径(m)、△P:圧力差(Pa)である。上式より、流量Qは、流路の半径の4乗に比例するため、流量を制限するためには、微細なノズルの採用が効果的である。この(14)式に、(13)式で求めた吐出圧力△Pを代入し、次式を得る。
【0106】
【数15】
【0107】
この式は、直径d、長さLのノズルに電圧Vを引加した際に、ノズルから流出する流体の流出量を表している。この様子を、図7に示す。計算にはL=10mm、η=1(mPa・s)、γ=72(mN/m)の値を用いた。いま、ノズルの直径を先行技術の最小値50μmと仮定する。電圧Vを徐々に印加していくと、電圧V=1000Vで吐出が開始する。この電圧は、図5でも述べた吐出開始電圧に相当する。そのときのノズルからの流量がY軸に示されている。吐出開始電圧Vc直上で流量は急速に立ち上がっている。
【0108】
このモデル計算上では、電圧をVcより少し上で精密に制御することで微小流量が得られそうに思えるが、片対数で示される図からも予想されるように実際上それは不可能で、特に10-10m3/s以下、微小量の実現は困難である。また、ある径のノズルを採用した場合には、式(11)で与えられたように、最小駆動電圧が決まってしまう。このため、先行技術のように、直径50μm以上のノズルを用いる限り、10-10m3/s以下の微小吐出量や、1000V以下の駆動電圧にすることは困難である。
【0109】
図から分かるように、直径25μmのノズルの場合700V以下の駆動電圧で充分であり、直径10μmのノズルの場合500V以下でも制御可能である。また、直径1μmのノズルの場合300V以下でも良いことが分かる。
【0110】
以上の考察は、連続流を考えた場合であるが、単発流とするためには、スイッチングの必要性がある。次にそれに関して述べる。
【0111】
静電吸引による吐出は、ノズル端部における流体の帯電が基本である。帯電の速度は誘電緩和によって決まる時定数程度と考えられる。
【0112】
【数16】
【0113】
ここで、ε:流体の比誘電率、σ:流体の導電率(S・m)である。流体の比誘電率を10、導電率を10-6S/mを仮定すると、τ=1.854×10-5secとなる。あるいは、臨界周波数をfcとすると、
【0114】
【数17】
【0115】
となる。このfcよりも早い周波数の電界の変化に対しては、応答できず吐出は不可能になると考えられる。上記の例について見積もると、周波数としては10kHz程度となる。
【0116】
次に、ノズル壁面における表面張力の低下について考える。電極の上に絶縁体を配置し、その上に滴下した流体と電極の間に電圧を印加すると流体と絶縁体の接触面積が増す、すなわち濡れ性がよくなることが見いだされ、エレクトロウェッティング(Electrowetting)現象と呼ばれている。この効果は、円筒形のキャピラリー形状においても成り立ち、エレクトロキャピラリー(Electrocpapillary)と呼ばれることもある。エレクトロウェッティング効果による圧力と、印加電圧、キャピラリーの形状、溶液の物性値との間に以下の関係がある。
【0117】
【数18】
【0118】
ここで、ε0:真空の誘電率、ε,一:絶縁体の誘電率、t:絶縁体の厚さ、d:キャピラリーの内径である。流体として、水を考えてこの値を計算してみると、上述の特許文献1の実施例の場合を計算してみると、高々30000Pa(0.3気圧)にすぎないが、本発明の場合、ノズルの外側に電極を設けることにより30気圧相当の効果が得られることがわかった。これにより、微細ノズルを用いた場合でもノズル先端部への流体の供給は、この効果により速やかに行われる。この効果は、絶縁体の誘電率が高いほど、またその厚さが薄いほど顕著になる。エレクトロキャピラリー効果を得るためには、厳密には絶縁体を介して電極を設置する必要があるが、十分な絶縁体に十分な電場がかかる場合、同様の効果が得られる。
【0119】
以上の議論において、注意すべき点は、これらの近似理論は従来のように電界強度として、ノズルに印加する電圧V0と、ノズル−対向電極間の距離hで決まる電界ではなく、ノズル先端における局所的な集中電界強度に基づいている点である。また、本発明において重要なのは、局所的な強電界と、流体を供給する流路が非常に小さなコンダクタンスを持つことである。そして、流体自身が微小面積において十分に帯電することであり、帯電した微小流体は、基板などの誘電体、または導体を近づけると、鏡像力が働き基板に対し直角に飛翔することとなる。
【0120】
ところで、本願発明者らが見出した新しい流体吐出モデルによる静電吸引型流体吐出では、上述したように、ノズル径と駆動電圧とを共に小さくすることが可能であるが、この場合でも、流体を単発流で吐出するには、流体を充填したノズルと、ノズル先端部に対向して配置された基板との間にパルス電圧を印加し、その電気力によって液体をノズル先端から基板側に吸引し、液滴を基板上に形成する方法が採られる。
【0121】
この方法によれば、ノズル−基板間に印加するパルス電圧の上限電圧(上限値)を大きくすると、ノズルより吐出される流体量が多くなり、反対にパルス電圧の上限電圧を小さくすると、ノズルより吐出される流体量が小さくなる。つまり、パルス電圧の上限値を制御することで吐出量を制御することができる。
【0122】
しかしながら、このモデルの場合、基本的に吐出応答性はノズル内部の電極とノズル先端部との間の流体の電気抵抗Rと、ノズル先端部のメニスカスと基板との間の静電容量Cの積である時定数RCで決定する。そして、電気抵抗Rと静電容量Cの要素パラメータにはノズル径(直径)dが含まれており、吐出応答性はこのノズル径dによって変化する。
【0123】
図8は、銀ナノペーストの吐出応答性を示すグラフである。このように、ノズル径が小さくなるにつれて時定数RCが極端に大きくなため、吐出応答性が悪くなり、吐出可能な限界周波数も小さくなる。
【0124】
つまり、本発明の静電吸引型流体吐出では、吐出量が微量となるほど急激に吐出応答性が悪くなり、高周波数駆動が困難となるといった問題がある。もちろん、ノズル−基板間に印加するパルス電圧の上限電圧を大きくすることで、吐出応答性が上がり、高周波数駆動がある程度実現可能にはなるが、駆動電極に高電圧を印加するため高電圧ドライバが必要であり、本発明の静電吸引型流体吐出の本来のメリットであったはずのコストメリットの高い低電圧駆動ドライバを使用することが不可能となってしまう。
【0125】
吐出応答性をより詳細に見ると、パルス電圧の立ち上がり時の吐出開始応答性、及び立ち下り時の吐出終了応答性に分けられ、吐出応答性が低いことはつまり、上限電圧印加時間に依存する精度の高い吐出量制御が行えないといった問題でもある。
【0126】
また、このような電圧の立ち上がり及び立ち下り時の応答性の問題は、何もパルス電圧に限るものではなく、基板上にライン描画を行うにあたって印加される直流電圧印加時にも生じる。つまり、直流電圧印加開始時の吐出開始応答性に起因して、直流電圧印加開始タイミングに依存させた精度の高い吐出開始位置制御が行えない。同様に、直流電圧印加終了時の吐出終了応答性に起因して、直流電圧印加終了タイミングに依存させた精度の高い吐出終了位置制御が行えない。
【0127】
ここで述べた問題は何れも、本発明の静電吸引型流体吐出が、従来にない微量の流体吐出が可能となり、基板上に形成されるドットの径やピッチ、ライン描画であれば線幅、ピッチ、線長が微細となったが故に生じた、新たな問題である。
【0128】
本実施の形態に係る静電吸引型流体吐出装置は、ノズルと基板との間の印加電圧波形を工夫することで、コストメリットの高い低電圧ドライバの使用を実現し、かつ、高周波数駆動可能で上限電圧印加時間に依存する精度の高い吐出量制御を可能とする、或いはかつ、直流電圧印加開始・終了タイミングに依存する精度の高い吐出位置制御を可能とするものである。このような静電吸引型流体吐出装置の構成について、以下に具体的に説明する。
【0129】
図9は、本発明の実施の一形態である静電吸引型流体吐出装置の側面断面図を示したものである。図中1は、先端に超微細径のノズル孔(吐出孔)が形成された超微細径のノズルである。超微細量の流体体吐出を実現するためには、低コンダクタンスの流路をノズル1近傍に設けるか、またはノズル1自身を低コンダクタンスのものにする必要がある。このためには、ガラス製キャピラリーが好適であるが、導電性物質に絶縁材でコーティングしたものでも可能である。
【0130】
ノズル孔の直径(以下、ノズル直径)の下限値は、制作上の都合から0.0lμmが好ましく、また、ノズル直径の上限値は、図3に示した静電的な力が表面張力を上回る時のノズル直径の上限が25μmであること、および、図4に示した局所的な電界強度によって吐出条件を満たす場合のノズル直径の上限が25μmであることから25μmが好ましく、15μmがより好ましい。特に、局所的な電界集中効果をより効果的に利用するには、ノズル直径は0.01〜8μmの範囲が望ましい。
【0131】
ノズル1内部には、図示しない溶液源から供給路8を介して吐出すべき溶液3が供給され充填されると共に、電極2がこの溶液3に浸されるように配置されている。ノズル1は、シールドゴム4およびノズルクランプ5によりホルダー6に取り付けられている。
【0132】
なお、本発明によれば、ノズル先端部に於ける電界の集中効果と、対向基板に誘起される鏡像力の作用とで、先行技術のように基板を導電性にしたり、基板の背面側に対向電極を設けたりする必要はなく、基板として絶縁性のガラス基板、ポリイミドなどのプラスチック基板、セラミックス基板、半導体基板などを用いることが可能である。
【0133】
しかしながら、本実施の形態では、ノズル1のノズル孔の対向面側に、所定の距離離れた位置に、ノズル1のノズル孔から吐出した溶液を基板13の表面により安定して着弾させることを目的に対向電極14が配設され、この対向電極14とノズル1との間に基板13が配置されるようになっている。
【0134】
上記電極2と対向電極14とは、電圧印加部9に接続されている。この電圧印加部9は、電極2に印加する電圧と対向電極14に印加される電圧の少なくとも一方を制御して、ノズル1先端部と基板13との間に、単発流吐出であればパルス電圧を印加し、連続流吐出であれば直流電圧を印加するようになっている。ノズル1先端部と基板13との間に印加する電圧の極性はプラスでもマイナスでも良い。
【0135】
ここでまず、上記電圧印加部9による電圧印加を説明する前に、ノズル1と基板13との間に種々の電圧を印加して、吐出応答性を調べて結果を示す。
【0136】
まずは、ノズル1と基板13との間に、図10(a)(b)に示すパルス電圧を印加した。
【0137】
(a)(b)の各パルス電圧は、上限電圧10が共に吐出可能最低電圧30以上の同じ電圧に設定されると共に、上限電圧10の印加期間及び周期は同じである。両者の違いは、下限電圧20にあり、(b)は、下限電圧20が0Vに設定され、(a)は、下限電圧20が0Vより高く、吐出可能最低電圧30未満の電圧に設定されている。
【0138】
上記吐出可能最低電圧30とは、直流バイアスで流体吐出させた場合に、吐出が可能な最低電圧条件を意味しており、ノズル1先端部(ノズル孔)の流体で形成されるメニスカスの表面電位が吐出可能最低電圧30に達した時点で吐出が開始される。例えば、ノズル先端径が2μmの場合、吐出可能最低電圧30は約150Vである。
【0139】
なお、本実施の形態では、上限電圧10が+極性である場合を例示するが、上述したように、上限電圧10は−極性であってもよい。したがって、説明に用いる電圧値の高低は、0Vラインを基準にしてその絶対値が大小に相当する。
【0140】
このような波形の各パルス電圧を印加した場合における、ノズル1先端部のメニスカスの表面電位40変化と吐出との関係を見ると、図1(b)に示すパルス電圧では、下限電圧20が0Vであるため、パルス電圧を印加した直後に吐出材料に通電が開始され、ノズル1先端部のメニスカスに電荷が蓄積し始め、メニスカス表面電位40が上昇する。メニスカス表面電位40の上昇カーブは、上限電圧10や吐出材料の電気伝導度、ノズル1内部の流路抵抗により異なるが、基本的に飽和曲線を描く。そして、メニスカス表面電位40が吐出可能最低電圧30に達した時点で吐出は開始されるが、図1(b)の場合、上限電圧印加時間内でメニスカス表面電位40が吐出可能最低電圧30には達せず、吐出は開始されない。上限電圧10の立ち下がり後は、下限電圧20との電位差に応じたメニスカス上での蓄積電荷の放出が始まり、メニスカス表面電位40は減衰する。つまり、比較例では、流体吐出することなく、パルス電圧の周期に合わせてメニスカス表面電位40の上昇、減衰が繰り返される。
【0141】
一方、図2(a)に示すパルス電圧では、下限値20が0Vよりも高く設定されているため、上限電圧10印加前に予めメニスカス上に電荷が蓄積され、メニスカス表面電位40は、ほぼ下限電圧20と同様の値になっている。そして、上限電圧10の印加(立ち上がり)とともに、下限電圧20と同様の値から、メニスカス表面電位40の上昇が始まり、上限値印加時間内に吐出可能最低電圧30に達する。メニスカス表面電位40が吐出可能最低電圧30に達した時点で流体吐出が開始し、上限電圧10の立ち下がり後は、メニスカス表面電位40の減衰と共に吐出は終了する。
【0142】
このように、予め下限電圧20として上限電圧10と同じ極性の同極性バイアスを印加することにより、下限電圧20が0Vでは流体を吐出させることができなかった上限電圧10の印加時間内で、メニスカス表面電位40を吐出可能最低電圧30にまで到達させて流体を吐出させることができ、パルス電圧の周期(上限電圧の周期)に合わせた流体吐出が可能となる。
【0143】
上限電圧10立ち上がり後の流体吐出が開始されるまでの時間が短いほど、吐出開始応答性は高いので、吐出開始応答性のみを考えた場合、下限電圧20の設定範囲は、上限電圧10と同極性で、吐出可能最低電圧30よりも低い範囲で、より好ましくは、該範囲内でより高い、つまり、吐出可能最低電圧30に近いことである。
【0144】
図11に、ハリマ化成(株)製の銀ナノペーストを流体とした吐出開始応答性確認実験の結果を示す(ノズル直径12μm)。銀ナノペーストの電気伝導度に適合させて吐出特性を確認するため、パルス電圧の上限電圧10を+450V、上限電圧10の印加時間を2000μsecと設定している。この場合の吐出可能最低電圧30は+200Vであった。
【0145】
図11に示すように、パルス電圧の下限電圧20を0Vから+150Vまで増加させると、上限電圧10を印加してから吐出が開始するまでの時間が徐々に短くなり、下限電圧20による吐出応答性向上の効果を確認することができた。
【0146】
このことから、下限電圧20を、上限電圧10と同極性で、吐出可能最低電圧30より小さい範囲内で設定することで吐出開始応答性を高めることができ、ひいては、駆動周波数を向上させ得ることがわかる。
【0147】
次に、ノズル1と基板13との間に、図12(a)(b)に示すパルス電圧を印加した。
【0148】
(a)(b)の各パルス電圧は、上限電圧10が共に吐出可能最低電圧30以上の同じ電圧に設定されると共に、上限電圧10の印加期間及び周期は同じである。両者の違いは、下限電圧20にあり、(b)では、下限電圧20が上限電圧10と同極性に設定され、(a)では、下限電圧20が上限電圧10とは逆極性に設定さている。
【0149】
このような波形の各パルス電圧を印加した場合における、ノズル1先端部のメニスカスの表面電位40変化と吐出との関係を見ると、図12(b)に示す比較例では、下限電圧20が上限電圧10と同極性であるため、上限電圧10立ち下げ後のメニスカス表面電位40と下限電位20との間の電位差が小さく、上限電圧10立ち下げ後のメニスカス表面電位40の減衰速度が遅い。そのため、上限電圧10立ち下げ後もメニスカス表面電位40が吐出維持可能最低電圧50に達するまでに時間がかかり、吐出が比較的続くこととなる。図12(b)は、その最たるものであり、下限電圧20が非常に高いため、下限電圧20の印加時間内にメニスカス表面電位40が吐出維持可能最低電50を下回ることができず、吐出はパルス信号周期(上限電圧印加周期)に合わせて切れることなく断続的に行われる。
【0150】
一方、図12(a)に示す本実施の形態のパルス電圧では、下限電20が上限電圧10と逆極性に設定されているため、上限電圧立ち下げ後のメニスカス表面電位40と下限電位20との間の電位差が大きく、メニスカス表面電位40の減衰速度も速くなる。そのため、メニスカス表面電位40が減衰によって吐出維持可能最低電圧50を下回る時期を早くすることができ、吐出の切れの良さ、つまり、吐出終了応答性を良くすることが可能である。
【0151】
このように、下限電圧20を上限電圧10の逆極性とし、上限電圧10の立ち下がり後に逆極性バイアスを印加することにより、上限電圧10の立ち下がり後の吐出終了を早くすることができ、吐出終了応答性を良くすることが可能である。吐出終了応答性を高めることで、吐出限界周波数を向上させることができる。
【0152】
上限電圧10立ち下がり後の流体吐出が完了するまでの時間が短いほど、吐出終了応答性は高いので、吐出終了応答性のみを考えた場合、下限電圧20の設定範囲は、上限電圧10と逆極性でその絶対値は大きいほどよい。しかしながら、絶対値が吐出可能最低電圧30の絶対値よりも大きくなると、上限電圧10と下限電圧20との印加時間の割合(デューティ比)との兼ね合いもあるが、メニスカス表面電位40が逆極性となる恐れがあるので、吐出可能最低電圧30の絶対値以内としておくことが望ましい。
【0153】
図13に、ハリマ化成(株)製の銀ナノペーストを流体とした吐出終了応答性確認実験の結果を示す(ノズル直径12μm)。銀ナノペーストの電気伝導度に適合させて吐出特性を確認するため、パルス電圧の上限電圧10を+450V、上限電圧10の印加時間を3000μsecと設定している。この場合、吐出可能最低電圧30は+200Vであった。
【0154】
図13に示すように、パルス電圧の下限電圧20を0Vから−200Vまで増加させると、上限電圧10の立ち下がりから吐出が終了するまでの時間が徐々に短くなり、下限電圧20を上限電圧10の逆極性とすることによる吐出終了応答性向上の効果を確認することができた。
【0155】
このことから、下限電圧20を、上限電圧10と逆極性に設定することで吐出終了応答性を高めることができ、ひいては、駆動周波数を向上させ得ることがわかる。
【0156】
このようなパルス電圧の下限電圧20の工夫による、吐出開始応答性及び吐出終了応答性の向上効果を鑑みて、本静電吸引型流体吐出装置の電圧印加部9は、以下のような電圧をノズル1と基板13との間に印加する構成となっている。
【0157】
図1(a)に、単発流吐出の場合に、上記電圧印加部9がノズル1と基板13との間に印加するパルス電圧の波形を示す。また、図1(b)に、比較例のパルス電圧波形を示す。
【0158】
本実施の形態のパルス電圧と、比較例のパルス電圧とは、上限電圧10が共に吐出可能最低電圧30以上の同じ電圧に設定されると共に、上限電圧10の印加期間及び周期は同じである。両者の違いは下限電圧20にあり、比較例では下限電圧20は0Vに設定されている。これに対し、本実施の形態では、下限電圧20は2段階に分けて設定されており、吐出開始応答性を良好とすべく、上限電圧10の立ち上がり直前に、上限電圧10と極性が同じで吐出可能最低電圧30未満の第1下限電圧(予備充電電圧)20aが設定され、吐出終了応答性を良好とすべく、上限電圧10の立ち下り直後に、上限電圧10の逆極性の第2下限電圧(減衰促進電圧)20bが設定されている。
【0159】
このような波形の各パルス電圧を印加した場合における、ノズル1先端部のメニスカスの表面電位40変化と吐出との関係を見ると、図1(b)に示す比較例では、下限電圧20が0Vであるため、パルス電圧を印加した直後に吐出材料に通電が開始され、ノズル1先端部のメニスカスに電荷が蓄積し始め、メニスカス表面電位40が上昇する。メそして、メニスカス表面電位40が吐出可能最低電圧30に達した時点で吐出が開始され、上限電圧10の立ち下がり後は、メニスカス表面電位40の減衰と共に、吐出維持可能最低電圧50を超えると吐出が終了する。
【0160】
一方、図1(a)に示す本実施の形態のパルス電圧では、まず上限電圧10の立ち上がり直前に、吐出可能最低電圧30に満たない程度に下限第1電圧20aが設定されているため、下限第1電圧値20aに応じた分だけメニスカス表面に電荷が蓄積され、メニスカス表面電位40は下限第1電圧20aとほぼ同電位となる。そしてさらに、吐出可能最低電圧30以上の上限電圧10を印加すると、メニスカス表面電位40は直ちに吐出可能最低電圧30に到達し、吐出が開始される。吐出終了時に関しては、上限電圧10の立ち下がり直後に、上限電圧10と逆極性の下限第2電圧20aが設定されているため、上限電圧10たち下げ後のメニスカス表面電位40の減衰速度が速く、メニスカス表面電位40は、直ちに吐出維持可能最低電圧50を下回り、吐出が終了する。
【0161】
このような構成とすることで、上限電圧10の立ち上がりと立ち下がりの両方で吐出応答性を向上することができ、吐出限界周波数を向上することができる。また、立ち上がりと立ち下がりの両方の応答性を向上させることで、上限電圧印加時間に依存した吐出制御を行うことができ、吐出量の時間制御を可能にする。
【0162】
図14に、単発流吐出の場合に、上記電圧印加部9がノズル1と基板13との間に印加する変形例のパルス電圧の波形を示す。図14に示すパルス電圧と図1(a)のパルス電圧との違いは、上限電圧10の立ち下がり直後の下限第2電圧20bにあり、ここでは下限第2電圧20bが、下限第1電圧20aよりも小さい、上限電圧10の同極性電圧となっている。但し、下限第2電圧20bとしては、同極性であれば、0Vに近づけるほど吐出終了応答性は良好となる。また、下限第2電圧20bを0ボルトとしたパルス電圧であってもよい。このようにすることで、下限第2電圧20bが逆極性のものに比べて、吐出終了応答性を良好にする効果は劣るが、不吐出時間をできるだけ短縮した単発流吐出が可能となり、近接ドットの形成に対して有効である。また、パルス電圧の上限電圧及び下限電圧の電位差が小さくなるため、低電圧駆動ドライバの使用が可能となる。
【0163】
図15(a)に、連続流吐出の場合に、上記電圧印加部9がノズル1と基板13との間に印加する直流電圧立ち上がりの波形を示す。また、図15(b)に、比較例の直流電圧立ち上がりの波形を示す。
【0164】
図15(a)では、直流電圧15の立ち上がり直前に、直流電圧15と同極性で、かつ吐出可能最低電圧30未満のバイアス電圧(予備充電電圧)25が印加されている。これに対し、比較例の図15(b)ではバイアス電圧25は印加されておらず、0Vからの立ち上がりとなっている。
【0165】
図15(b)では、直流電圧の立ち上がり直前のバイアス電圧25が印加されていないため、メニスカス表面電位40は、直流電圧15の立ち上がり後に0ボルトから上昇が開始する。そのため、メニスカス表面電位40が吐出可能最低電圧30に到達して吐出が開始するまでの時間が長く、直流電圧15印加開始と同時に吐出を開始することができない。
【0166】
一方、図15(a)では、直流電圧15の立ち上がり直前にバイアス電圧25が設定されているため、予めメニスカス表面電位40がバイアス電圧25とほぼ同電位になるまで上昇している。したがって、直流電圧15を印加すると、メニスカス表面電位40が吐出可能最低電位30に到達するまでの時間が短く、直流電圧15印加とほぼ同時に吐出を開始することが可能である。また、この吐出開始応答性に関しては、吐出可能最低電圧30未満の範囲内で立ち上がり直前のバイアス電圧25が大きい、つまり吐出可能最低電圧30に近いほど良好である。
【0167】
図16(a)に、連続流吐出の場合に、上記電圧印加部9がノズル1と基板13との間に印加する直流電圧立ち下がりの波形を示す。また、図16(b)に、比較例の直流電圧立ち下がりの波形を示す。
【0168】
図16(a)では、直流電圧15の立ち下がり直後に、直流電圧15と逆極性のバイアス電圧(減衰促進電圧)26が印加されている。これに対し、比較例の図16(b)ではバイアス電圧26は印加されておらず、0Vへの立ち下がりとなっている。
【0169】
図16(b)では、直流電圧の立ち下がり直後にバイアス電圧26が印加されておらず0Vへの立ち下がりであるため、メニスカス表面電位40は直流電圧立ち下がりに、緩やかな減衰カーブを描く。そのため、メニスカス表面電位40が吐出維持可能最低電位50を下回り、吐出が終了するまでの時間が長く、直流電圧印加終了と同時に吐出を終了することができない。
【0170】
一方、図16(a)では、直流電圧15の立ち下がり直後に逆極性のバイアス電圧26が設定されているので、直流電圧15の立ち下がり後のメニスカス表面40との間の電位差は図16(b)よりも大きく、メニスカス表面電位40は直流電圧15の立ち下がり後に、急峻な減衰カーブを描く。そのため、メニスカス表面電位40が吐出維持可能最低電位50を下回り、吐出が終了するまでの時間は短く、直流バイアス印加終了とほぼ同時に吐出を終了することが可能である。また、この吐出終了応答性に関しては、立ち下がり直後のバイアス電圧26は、直流電圧15と逆極性で、その絶対値が大きいほど良好である。しかしながら、吐出可能最低電圧30の絶対値を超えて大きいと、バイアス電圧26の印加時間にもよるが、逆極性側でメニスカス表面電位40が吐出可能最低電圧30より大きくなり、逆極性に帯電した流体が吐出される恐れがあるため、吐出可能最低電圧30の絶対値よりも小さくしておくことが好ましい。
【0171】
このような構成とすることで、直流電圧15の立ち上がりと立ち下がりの両方で吐出応答性、つまり、吐出開始応答性、吐出終了応答性を良くすることが可能であり、直流電圧15でライン描画を行う際に、その吐出開始位置と吐出終了位置の精度を向上することが可能である。
【0172】
なお、本実施の形態においては、対向電極14を備えた構成としているが、上述したように、本発明の静電吸引型流体吐出では、対向電極14を具備することは必須ではないので、図1(a)に示したパルス電圧を、ノズル1内部の電極2に印加する電圧のみで発生させる構成も可能である。また、対向電極14が接地され、電圧印加部9がノズル1内部の電極2に印加する電圧のみを制御して、図1(a)に示したパルス電圧を発生させる構成も可能である。
【0173】
また、本実施の形態では、ノズル1先端部と基板13との間に印加されるパルス電圧の波形として、図1、図10、図12、図14〜図16に示したような矩形波を例示したが、正弦波のようなスルーレートの低い波形に対しても同様に適用される。
【0174】
なお、本実施の形態では、最良の実施の形態として、吐出開始応答性、吐出終了応答性が共に良好となるものを説明したが、図10〜図13を用いた説明よりわかるように、吐出開始応答性と、吐出終了応答性とは、各々独立したものである。
【0175】
最後に、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
【0176】
【発明の効果】
本発明の第1の静電吸引型流体吐出装置は、以上のように、電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に上限電圧が設定されたパルス電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加する電圧印加手段を備え、該パルス電圧の立ち上がり直前に、上限電圧と同極性でかつ上記吐出可能最低電圧よりも絶対値の小さい予備充電電圧が設定されていることを特徴としている。
【0177】
上記の構成によれば、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、駆動電圧の低下が可能となり、装置の小型化およびノズルの高密度化において極めて有利となると共に、コストメリットの高い低電圧駆動ドライバの使用をも可能にし、対向電極を用いない構成も可能となるなどの効果を奏する。
【0178】
これに加えて、電圧印加手段が、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に上限電圧が設定されたパルス電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加するにおいて、該パルス電圧の立ち上がり直前に、上限電圧と同極性でかつ上記吐出可能最低電圧よりも絶対値の小さい予備充電電圧が設定されているので、パルス電圧の立ち上がり後、メニスカス表面電位は吐出条件である吐出可能最低電圧に短時間で到達して吐出が開始し、吐出開始応答性を高めることができ、ひいては、吐出限界周波数を向上させて高周波数駆動が可能となるという効果も併せて奏する。
【0179】
本発明の第2の静電吸引型流体吐出装置は、以上のように、電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に上限電圧が設定されたパルス電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加する電圧印加手段を備え、該パルス電圧の立ち下がり直後に、上限電圧と逆極性の減衰促進電圧が設定されていることを特徴としている。
【0180】
上記の構成においても、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、第1の静電吸引型流体吐出装置と同様の効果を奏する。
【0181】
そして、これに加えて、電圧印加手段が、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に上限電圧が設定されたパルス電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加するにおいて、該パルス電圧の立ち下がり直後に、上限電圧と逆極性の減衰促進電圧が設定されているので、パルス電圧の立ち下がり後、メニスカス表面電位は吐出を継続する条件である吐出維持可能最低電圧を短時間で下回って吐出が停止し、吐出終了応答性を高めることができ、ひいては、吐出限界周波数を向上させて高周波数駆動が可能となるという効果を合わせて奏する。
【0182】
本発明の第3の静電吸引型流体吐出装置は、以上のように、電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流吐出装置において、上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に上限電圧が設定されたパルス電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加する電圧印加手段を備え、該パルス電圧の立ち上がり直前に、上限電圧と同極性でかつ上記吐出可能最低電圧よりも絶対値の小さい予備充電電圧が設定されると共に、パルス電圧の立ち上がり直後に、上限電圧と逆極性の減衰促進電圧が設定されていることを特徴としている。
【0183】
上記の構成においても、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、第1の静電吸引型流体吐出装置と同様の効果を奏する。
【0184】
そして、これに加えて、電圧印加手段が、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に上限電圧が設定されたパルス電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加するにおいて、該パルス電圧の立ち上がり直前に、上限電圧と同極性でかつ上記吐出可能最低電圧よりも絶対値の小さい予備充電電圧が設定されると共に、パルス電圧の立ち上がり直後に、上限電圧と逆極性の減衰促進電圧が設定されているので、吐出開始応答性と吐出終了応答性を共に高めることができ、ひいては、より効果的に吐出限界周波数を向上させてさらなる高周波数駆動が可能となり、また、上限電圧印加時間に依存した吐出制御を行うことができるので、吐出量の時間制御も可能となるといった効果を併せて奏する。
【0185】
本発明の第4の静電吸引型流体吐出装置は、以上のように、電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に上限電圧が設定されたパルス電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加する電圧印加手段を備え、該パルス電圧の立ち上がり直前に、上限電圧と同極性でかつ上記吐出可能最低電圧よりも絶対値の小さい予備充電電圧が設定されると共に、パルス電圧の立ち上がり直後に、上限電圧と同極性で減衰促進電圧減衰促進電圧が設定されていることを特徴としている。
【0186】
この構成と上記した本発明の第3の静電吸引型流体吐出装置との違いは、吐出終了応答性を高めるための減衰促進電圧にある、第3の静電吸引型流体吐出装置では、減衰促進電圧は上限電圧とは逆極性であったが、ここでは同極性で吐出維持可能最低電圧よりも絶対値の小さい電圧としているので、減衰促進電圧が逆極性のものに比べて、吐出終了応答性を良好にする効果は劣るが、不吐出時間をできるだけ短縮した単発流吐出が可能となり、近接ドットの形成に対して有効である。また、パルス電圧の上限電圧及び下限電圧の電位差が小さくなるため、低電圧駆動ドライバの使用が可能となる。
【0187】
本発明の第5の静電吸引型流体吐出装置は、以上のように、電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に直流電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加する電圧印加手段を備え、該直流電圧の印加開始直前に、該直流電圧と同極性でかつ上記吐出可能最低電圧よりも絶対値の小さい予備充電電圧が設定されていることを特徴としている。
【0188】
上記の構成においても、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、第1の静電吸引型流体吐出装置と同様の効果を奏する。
【0189】
そして、これに加えて、電圧印加手段が、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に直流電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加するにおいて、該直流電圧の印加開始直前に、該直流電圧と同極性でかつ上記吐出可能最低電圧よりも絶対値の小さい予備充電電圧が設定されているので、電圧印加開始時の吐出開始応答性に起因して、直流電圧印加終了タイミングに依存させた精度の高い吐出開始位置制御が可能となるといった効果を併せて奏する。
【0190】
本発明の第6の静電吸引型流体吐出装置は、以上のように、電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に直流電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加する電圧印加手段を備え、該直流電圧の印加終了直後に、該直流電圧と逆極性の減衰促進電圧が設定されていることを特徴としている。
【0191】
上記の構成においても、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、第1の静電吸引型流体吐出装置と同様の効果を奏する。
【0192】
そして、これに加えて、電圧印加手段が、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に直流電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加するにおいて、該直流電圧の印加終了直後に、該直流電圧と逆極性の減衰促進電圧が設定されているので、電圧印加終了時の吐出終了応答性に起因して、直流電圧印加終了タイミングに依存させた精度の高い吐出終了位置制御が可能となるといった効果を併せて奏する。
【0193】
本発明の静電吸引型流体吐出方法は、以上のように、電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出方法において、上記ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmとし、上記ノズルと上記基板との間に、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧を印加するにあたり、電圧の立ち上がり直前に、上記吐出可能最低電圧よりも絶対値の小さい印加電圧と同極性の予備充電電圧を印加することを特徴としている。
【0194】
既に説明したように、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、駆動電圧の低下が可能となり、装置の小型化およびノズルの高密度化において極めて有利となると共に、コストメリットの高い低電圧駆動ドライバの使用をも可能にし、対向電極を用いない構成も可能となる上、このように、電圧の立ち上がり直前に、吐出可能最低電圧よりも絶対値の小さい印加電圧と同極性の予備充電電圧を印加しておくことで、メニスカス表面電位の予備充電が可能となり、吐出開始応答性を良好とできるといった効果を奏する。
【0195】
また、本発明の別の静電吸引型流体吐出方法は、以上のように、電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出方法において、上記ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmとし、上記ノズルと上記基板との間に、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧を印加するにあたり、電圧の立ち下がり直後に、印加電圧とは逆極性の減衰促進電圧を印加することを特徴としている。
【0196】
既に説明したように、ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmの微細径とすることで、駆動電圧の低下が可能となり、装置の小型化およびノズルの高密度化において極めて有利となると共に、コストメリットの高い低電圧駆動ドライバの使用をも可能にし、対向電極を用いない構成も可能となる上、このように、電圧の立ち下がり直後に、印加電圧とは逆極性の減衰促進電圧を印加することで、メニスカス表面電位の減衰を促進して流体の切れを良くして、吐出終了応答性を良好とできるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本実施の一形態の静電吸引型流体吐出装置において、ノズル−基板間に印加されるパルス電圧の波形と、その際のメニスカス表面電位の推移とを示す波形図であり、(b)はその比較例のパルス電圧の波形と、その際のメニスカス表面電位の推移とを示す波形図である。
【図2】本発明の基本となる吐出モデルにおいて、ノズルの電界強度の計算を説明するための図である。
【図3】表面張力圧力および静電的圧力のノズル径依存性のモデル計算結果を示すグラフである。
【図4】吐出圧力のノズル径依存性のモデル計算結果を示すグラフである。
【図5】吐出限界電圧のノズル径依存性のモデル計算結果を示すグラフである。
【図6】荷電液滴と基板の間に働く鏡像力とノズル−基板間距離の相関を示したものである。
【図7】ノズルから流出する流量と印加電圧との相関関係のモデル計算結果を示したものである。
【図8】ノズル径と吐出応答性、吐出限界周波数の関係を説明するためのグラフである。
【図9】本発明の実施の形態の一例としての静電吸引型流体吐出装置の要部側面断面を含む説明図である。
【図10】(a)(b)共に、ノズル−基板間に印加するパルス電圧の波形と、その際のメニスカス表面電位の推移を示す波形図である。
【図11】ノズル−基板間に印加するパルス電圧の立ち上がり直前に印加する電圧値による吐出開始応答性確認実験の結果を示すグラフである。
【図12】(a)(b)共に、ノズル−基板間に印加するパルス電圧の波形と、その際のメニスカス表面電位の推移を示す波形図である。
【図13】ノズル−基板間に印加するパルス電圧の立ち下がり直後に印加する電圧値による吐出終了応答性確認実験の結果を示すグラフである。
【図14】ノズル−基板間に印加するパルス電圧の波形と、その際のメニスカス表面電位の推移を示す波形図である。
【図15】(a)は、本実施の一形態の静電吸引型流体吐出装置において、ノズル−基板間に印加される直流電圧印加開始時の波形と、その際のメニスカス表面電位の推移とを示す波形図であり、(b)はその比較例の直流電圧印加開始時の波形と、その際のメニスカス表面電位の推移とを示す波形図である。
【図16】(a)は、本実施の一形態の静電吸引型流体吐出装置において、ノズル−基板間に印加される直流電圧印加終了時の波形と、その際のメニスカス表面電位の推移とを示す波形図であり、(b)はその比較例の直流電圧印加終了時の波形と、その際のメニスカス表面電位の推移とを示す波形図である。
【図17】静電吸引型流体吐出装置にける静電曳き糸現象による吐出流体の成長原理を示す図である。
【符号の説明】
1 ノズル
2 電極
3 流体
9 電圧印加部電圧印加手段)
13 基板
10 上限電圧
20 下限電圧
20a 下限第1電圧(予備充電電圧)
20b 下限第2電圧(減衰促進電圧)
25 バイアス電圧(予備充電電圧)
26 バイアス電圧(減衰促進電圧)
40 メニスカス表面電位
50 吐出可能最低電圧
Claims (9)
- 電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、
上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、
流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に上限電圧が設定されたパルス電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加する電圧印加手段を備え、
該パルス電圧の立ち上がり直前に、上限電圧と同極性でかつ上記吐出可能最低電圧よりも絶対値の小さい予備充電電圧が設定されていることを特徴とする静電吸引型流体吐出装置。 - 電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、
上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、
流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に上限電圧が設定されたパルス電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加する電圧印加手段を備え、
該パルス電圧の立ち下がり直後に、上限電圧と逆極性の減衰促進電圧が設定されていることを特徴とする静電吸引型流体吐出装置。 - 電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流吐出装置において、
上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、
流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に上限電圧が設定されたパルス電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加する電圧印加手段を備え、
該パルス電圧の立ち上がり直前に、上限電圧と同極性でかつ上記吐出可能最低電圧よりも絶対値の小さい予備充電電圧が設定されると共に、パルス電圧の立ち上がり直後に、上限電圧と逆極性の減衰促進電圧が設定されていることを特徴とする静電吸引型流体吐出装置。 - 電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、
上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、
流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に上限電圧が設定されたパルス電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加する電圧印加手段を備え、
該パルス電圧の立ち上がり直前に、上限電圧と同極性でかつ上記吐出可能最低電圧よりも絶対値の小さい予備充電電圧が設定されると共に、パルス電圧の立ち上がり直後に、上限電圧と同極性で上記予備充電電圧よりも絶対値の小さい減衰促進電圧が設定されていることを特徴とする静電吸引型流体吐出装置。 - 電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、
上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、
流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に直流電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加する電圧印加手段を備え、
該直流電圧の印加開始直前に、該直流電圧と同極性でかつ上記吐出可能最低電圧よりも絶対値の小さい予備充電電圧が設定されていることを特徴とする静電吸引型流体吐出装置。 - 電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出装置において、
上記ノズルの吐出孔直径が0.01〜25μmであると共に、
流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上に直流電圧を上記ノズルと上記基板との間に印加する電圧印加手段を備え、
該直流電圧の印加終了直後に、該直流電圧と逆極性の減衰促進電圧が設定されていることを特徴とする静電吸引型流体吐出装置。 - 上記吐出可能最低電圧よりも上記減衰促進電圧の絶対値が小さいことを特徴とする請求項2、3、6に記載の静電吸引型流体吐出装置。
- 電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出方法において、
上記ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmとし、
上記ノズルと上記基板との間に、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧を印加するにあたり、電圧の立ち上がり直前に、上記吐出可能最低電圧よりも絶対値の小さい印加電圧と同極性の予備充電電圧を印加することを特徴とする静電吸引型流体吐出方法。 - 電圧印加により帯電された流体をノズルの吐出孔から静電吸引によって吐出させることで、ノズルに対向配置された基板に着弾させる静電吸引型流体吐出方法において、
上記ノズルの吐出孔直径を0.01〜25μmとし、
上記ノズルと上記基板との間に、流体の吐出が開始される電圧条件である吐出可能最低電圧以上の電圧を印加するにあたり、電圧の立ち下がり直後に、印加電圧とは逆極性の減衰促進電圧を印加することを特徴とする静電吸引型流体吐出方法。
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