JP3956623B2 - 高水蒸気バリアフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品、医薬品、精密電子部品等の包装分野に用いられる透明なガスバリア材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品、医薬品、精密電子部品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の変質、特に食品分野においては蛋白質や油脂等の酸化、変質を抑制し、味覚や鮮度を保持するために、又医薬品分野においては有効成分の変質を抑制し、効能を維持するために、さらに、精密電子部品分野においては金属部分の腐食、絶縁不良等を防止するために、包装材料を透過する酸素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体による影響を防止する必要があり、これら気体を遮断するガスバリア性を備えることが求められている。そのため、従来から温度、湿度などに影響されないアルミニウムなどの金属箔やアルミニウム蒸着フイルムあるいはポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリルなどの樹脂フイルムやこれらの樹脂を表面にコーティングしたフイルムなどがガスバリア材として一般的に包装材料に用いられてきた。
【0003】
ところが、アルミニウムなどの金属箔やアルミニウム蒸着フイルムを用いた包装材料は、ガスバリア性に優れるが、包装材料を透視して内容物を確認することができないだけではなく、使用後の廃棄の際は不燃物として処理しなければならない点や包装後の内容物などの検査の際に金属探知器が使用できない点などの欠点を有していた。また、ガスバリア性樹脂フイルムやガスバリア性樹脂をコーティングしたフイルムは、温湿度依存性が大きく、高いガスバリア性を常時維持できない。さらに、塩素を含む樹脂は廃棄や焼却の際に有害物質生成の原因となる可能性があるなどの問題があった。
【0004】
そこで、これらの欠点を克服した包装用材料として、最近では酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素などの無機酸化物を透明な基材フイルム上に蒸着した蒸着フィルムが上市されている。これらの蒸着フイルムは透明性及び酸素、水蒸気等のガス遮断性を有していることが知られ、金属箔などでは得る事が出来ない透明性、ガスバリア性の両方を有する包装材料として好適とされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した無機酸化物の内、酸化マグネシウム、酸化カルシウムの蒸着原材料は、例えば酸化マグネシウムの沸点が3600℃、酸化カルシウムの沸点が2850℃等と昇華温度が高く、そのために蒸着工程における蒸発速度が遅くなる。そのためガスバリア性を発現させるのに十分な200Å程度の厚さの蒸着薄膜を付着させようとすると、製膜時間が長時間になり、製造効率が悪く、高コストに繋がるため商業的採算が合わない。また、酸化マグネシウムあるいは酸化カルシウムを単層で透明な基材フイルム上に蒸着すると、経時で空気中の水分を吸湿してガスバリア性が劣化し、ガスバリア材料としては不適当である。
【0006】
上記の理由などにより、現在上市されている無機酸化物の蒸着フイルムは、酸化アルミニウムあるいは酸化珪素などの無機酸化物を基材フイルムに蒸着したものが主流であるが、これらの既存の蒸着フイルムは酸素ガスバリア性は優れているが、水蒸気バリア性は酸素ガスバリア性に比し、約10,000倍程度の透過性があり、包装材料に使用するには不満足である。
【0007】
本発明の課題は、透明で、酸素ガスバリア性に優れ、かつ、温湿度に影響されない水蒸気バリア性を有する高水蒸気バリアフイルムを提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る発明は、透明な基材フィルムの少なくとも一方の面に酸化カルシウムでなる無機酸化物の蒸着薄膜(A)を設け、更に、該無機酸化物の蒸着薄膜(A)の上に酸化アルミニウムでなる無機酸化物の蒸着薄膜(B)を積層したものからなることを特徴とする高水蒸気バリアフィルムである。
【0011】
次に、請求項2に係る発明は、上記請求項1に係る発明において、前記無機酸化物の蒸着薄膜(A)と蒸着薄膜(B)の合計厚さが50〜3000Åの範囲であることを特徴とする高水蒸気バリアフィルムである。
【0012】
【作用】
本発明によれば、蒸着工程で透明な基材フイルム上に設けられた無機酸化物の蒸着薄膜(A)が基材フイルムに由来する水分と反応して水酸化物になることで、基材フイルムに由来する水分を吸収し、無機酸化物の蒸着薄膜(A)の上に積層される異種の無機酸化物の蒸着薄膜(B)への水分の侵入を抑えることにより、無機酸化物の蒸着薄膜(B)の緻密化を促進して、高い水蒸気バリア性を保持できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の高水蒸気バリアフイルムを、実施の形態に沿って以下に詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施の形態を示す側断面図であり、フイルムの厚み方向に順に、基材フイルム1、無機酸化物の蒸着薄膜(A)2、無機酸化物の蒸着薄膜(B)3が順次形成されている。
【0015】
前記基材フイルム1は透明性を有する高分子材料であり、とくに無色透明であればよく、通常、包装材料として用いられるものが好ましい。例えば、二軸延伸ポリプロピレンフイルム(OPP)、二軸延伸ナイロンフイルム(ONy)、二軸延伸ポリエステルフイルム(PET)などが機械的強度、寸法安定性を有しているので好ましい。さらに、平滑性が優れ、かつ添加剤の量が少ないフィルムが好ましい。また、前記基材フイルム1と無機酸化物の蒸着薄膜(A)2の密着性を良くするために、基材フイルム1の蒸着薄膜(A)2側の面を、前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理を施しておいてもよく、さらに薬品処理、溶剤処理などを施してもよい。
【0016】
前記基材フイルム1は、厚さはとくに制限を受けるものではないが、包装材料としての適性、他の層を積層する場合の加工性を考慮すると、5〜100μmの範囲が好ましい。
【0017】
前記蒸着薄膜(A)2の無機酸化物は、酸化カルシウム、酸化マグネシウムあるいはそれらの混合物である必要がある。その理由は、前記酸化カルシウム、酸化マグネシウムが基材フイルム1の上に蒸着加工された後、基材フイルムに由来する水分と反応し、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物になることにより、水分を吸収する吸湿機能を有し、次工程で積層される蒸着薄膜(B)3への水分の侵入を抑える役割を果たし、蒸着薄膜(B)の緻密化を促進することにより、本発明の温湿度に影響されない高い水蒸気バリア性を保持できる。
【0018】
前記蒸着薄膜(B)3の無機酸化物は、酸化アルミニウム、酸化珪素あるいはそれらの混合物である必要がある。これらの無機酸化物は前述の如く基材フイルム1に由来する水分の影響を直接受けることがないので、蒸着加工される際その蒸着薄膜が非常に緻密になつているので、優れたガスバリア性を有するばかりでなく、経時でそのガスバリア性、特に水蒸気バリア性が低下することが無いなどの特徴がある。
【0019】
前記無機酸化物の蒸着薄膜(A)2と蒸着薄膜(B)3との合計厚さは50〜3000Åの範囲内であることが望ましい。膜厚が50Å以下になると均一な薄膜が形成されないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない。また、膜厚を3000Å以上にした場合は薄膜にフレキシビリティを保持させることができず、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じる恐れがあるため良くない。
【0020】
なお、前記無機酸化物の蒸着薄膜(A)2及び蒸着薄膜(B)3は基材フイルム1の両面に形成させても良い。
【0021】
前記無機酸化物の蒸着薄膜(A)2及び蒸着薄膜(B)3の積層方法としては、蒸着用原材料が既に金属酸化物の場合は通常の真空蒸着法やスパッタリング法、あるいはイオンプレーティング法等で形成する方法ことができる。
【0022】
また、蒸着用原材料が金属の場合は、酸素,炭酸ガスと不活性ガスなどとの混合ガスの存在下で蒸着加工を行い、基材フイルム上に金属酸化物の薄膜を形成をさせる、いわゆる反応性蒸着、反応性スパッタリング、反応性イオンプレーティングにより連続的に無機酸化物の蒸着薄膜(A)及び蒸着薄膜(B)を形成させる方法もある。
【0023】
【実施例】
次に、本発明の高水蒸気ガスバリアフイルムを以下に具体的な実施例に従って説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0024】
〈実施例1〉
基材フイルム1として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフイルムを、蒸着薄膜(A)2用の蒸着原材料として酸化カルシウム粉末(純度2N)を準備し、電子線加熱方式による真空蒸着装置により、基材フイルム1の片面に厚さ100Åの酸化カルシウムの蒸着薄膜(A)2を形成し、酸化カルシウムの蒸着フイルムを得た。
次いで、前記酸化カルシウムの蒸着フイルムを同一の電子線加熱方式による真空蒸着装置に装着し、蒸着薄膜(B)3用の蒸着原材料として金属のアルミニウムを用い、酸素を導入しながらアルミニウムを加熱蒸発させて反応蒸着を行い、前記酸化カルシウムの蒸着薄膜(A)2の上に厚さ200Åの酸化アルミニウムの蒸着薄膜(B)3を形成させ、本発明の高水蒸気バリアフイルムを得た。
【0025】
〈比較例1〉
実施例1と同様にして、電子線加熱方式による真空蒸着装置を用いて、基材フイルム1として使用した厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフイルムの片面に厚さ100Åの酸化カルシウムの蒸着薄膜を形成させ、比較用の蒸着フイルムを得た。
【0026】
〈比較例2〉
実施例1と同様にして、電子線加熱方式による真空蒸着装置を用いて、基材フイルム1として使用した厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフイルムの片面に厚さ300Åの酸化アルミニウムの蒸着薄膜を形成させ、比較用の蒸着フイルムを得た。
【0027】
〈評価〉
実施例1及び比較例1〜2の蒸着フィルムの光線透過率、酸素透過率及び水蒸気透過率を以下に示す測定方法で測定し、透明性及びガスバリア性を評価した。その結果を表1に示す。
(1)光線透過率:分光光度計(島津製作所社製 UV−3100)を用いて、波長400nmの光の透過率を測定した。
(2)酸素透過率:モダンコントロール社製(MOCON OXTRAN 10/50A)を用いて、25℃−100%RH雰囲気下で測定した。
(3)水蒸気透過率(初期):モダンコントロール社製(MOCON PERMATRAN W6)を用いて、40℃−90%RH雰囲気下で各フィルムを蒸着直後に測定した。
(4)水蒸気透過率(暴露後):各フィルムを蒸着後に25℃、50%RHの雰囲気中に5日間保持した後にモダンコントロール社製(MOCON PERMATRAN W6)を用いて、40℃−90%RH雰囲気下で測定した。
【0028】
【表1】
【0029】
表1の結果より、実施例1は透明性もよく、蒸着直後及び25℃、50%RHで5日間保持後も、高温、高湿度条件(40℃、90%RH)での水蒸気バリア性が低下しないで、良好な水蒸気バリア性を保持している。なお、酸素ガスバリア性も良好ある。比較例1は透明性、酸素ガスバリア性、蒸着直後の水蒸気バリア性は良いが、25℃、50%RHで5日間保持後の高温、高湿度条件下での水蒸気バリア性の低下が大きい。比較例2は透明性、酸素バリア性は良いが、蒸着直後に既に水蒸気バリア性は良くない。
これらのことから、本発明の実施例1の高水蒸気バリアフイルムは初期ばかりでなく、経時でも高い水蒸気バリア性を保持できることがわかった。
【0030】
【発明の効果】
本発明の高水蒸気バリアフイルムが、透明な基材フイルムの上に、水分と反応して水酸化物となることにより基材フイルムに由来する水分を吸収する吸湿機能を有する酸化カリシウムでなる無機酸化物の蒸着薄膜を設け、さらに、その蒸着薄膜の上に異種のガスバリア性のある酸化アルミニウムでなる無機酸化物の蒸着薄膜を積層した2層構成の蒸着薄膜からなっているので、内容物を透視できる透明性を有すると共に、包装分野で要求される各種ガスバリア性にも優れ、特に温湿度に影響されない優れた水蒸気バリア性を保持できるので、他の材質との貼り合わせ、製袋及び成形加工などの各種加工後も、内容物の品質保存性に優れ、包装分野に於いて広く使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高水蒸気バリアフイルムの側断面図である。
【符号の説明】
1…基材フイルム
2…無機酸化物の蒸着薄膜(A)
3…無機酸化物の蒸着薄膜(B)
Claims (2)
- 透明な基材フィルムの少なくとも一方の面に酸化カルシウムでなる無機酸化物の蒸着薄膜(A)を設け、更に、該無機酸化物の蒸着薄膜(A)の上に酸化アルミニウムでなる無機酸化物の蒸着薄膜(B)を積層したものからなることを特徴とする高水蒸気バリアフィルム。
- 前記無機酸化物の蒸着薄膜(A)と蒸着薄膜(B)の合計厚さが50〜3000Åの範囲であることを特徴とする請求項1記載の高水蒸気バリアフィルム。
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