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JP3947986B2 - シート状高吸収体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は厚さが薄く、しかも充分に吸収能力を発揮するような吸収体製品に使用されるシート状の高吸収体を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
オムツや生理用品等の吸収体商品の性能は、その中心を占める吸収体の性能によって大きく左右される。その吸収体に関する技術開発は省資源化と効率化を求め、ますます薄く、軽量化の方向に向かっている。そのための手段が吸収体の基本素材を木材パルプからより単位重量当りの吸収量にすぐれたいわゆる高吸水性樹脂(SAPと略称する)への転換であり、その極限を狙ったものがパルプ成分をできるだけ少なくしたいわゆるパルプレスなSAP主体の吸収体の開発である。
【0003】
パルプレス吸収体技術の典型的なものが、本発明者らが提案した特願平8−333520号に記載されている。これは、粒子状SAPを水和性を有するミクロフィブリル状の極微細繊維でSAP粒子相互と基材とを結合した複合吸収体である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この先発明の複合吸収体の製造にあたっては、SAPを膨潤させずに、しかも極微細繊維を均一に分散させるため、有機媒体と水との混合溶媒を用いている。しかし、このようなSAP/微細繊維の共分散系において、低粘度の系ではSAPの沈降を防ぐために常時、撹拌が必要であり、系を高粘度に保つと、分散は安定しても、成形プロセスや脱溶媒が難しくなるといった、プロセス上の解決すべき問題が残されている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の狙いは、有機溶媒とその溶媒のもつ温度、粘度特性を利用して上記問題を解決しようとするものである。
【0006】
即ち本発明は、低温度では高粘度、加温下では粘度が対数的に低下する性質をもった多価アルコール系、特に多価アルコールと水との混合溶媒系に於ける温度、粘度挙動を利用し、分散貯留時には系を低温化、高粘度化にして安定状態を保ち、移送、成形し、脱液時には系を加温、加水して粘度を下げ、流動性を上げ、これにより成形、脱液を容易ならしめることを特徴とするシート状高吸収体の製造方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
(1)本発明に用いられる分散媒体
本発明に於ける分散媒体は吸収体の主要成分である各種粒状SAP、そして副成分である短繊維状物を均一に混合分散してスラリー状の分散液を調製するためのものである。
【0008】
粒状SAPとは、引用特願に述べられているような各種のものであり、副成分である短繊維状物とは、1つには粒子状SAPの結合材として働くSAPよりはるかに繊維長の短い、水分散状態で得られるミクロフィブリル状極微細繊維であるミクロフィブリレイテッドセルローズやバクテリヤセルローズ(これをMFCと略称する)である。もう1つの場合は、粒子状SAPをそのネットワークの中に閉じ込めるために働く粒子状SAPよりも長さの長い(長さとしては均一分散させるためには太さや長さに制限があるが、大体において直径3d以下、10mm以下であるような)短繊維をさす。
【0009】
さて、上記のような粒子状SAPや短繊維状物を短時間に沈降、凝集させることなく、均一に分散させるためには、水に可溶であり、その水との混合状態で0℃以下の低温でも氷結せず、高粘度を示して、ある時間安定に貯留でき、温度が上昇するにつれて粘度低下を示し、それを利用してポンプ移送、成形を容易にさせることのできるような多価アルコール系の溶媒が適している。
【0010】
多価アルコール系の溶媒の例としては、例えばエチレングライコール、プロピレングライコール、ジエチレングライコール、トリエチレングライコール、低分子量のポリエチレングライコール、グリセリン等が挙げられる。これらの多価アルコール系溶媒は温度による粘度変化が大きく、例えば表1に示すように、20℃と50℃の30℃の違いでも大きな粘度差を示す。
【0011】
【表1】
Figure 0003947986
これらの上述した溶媒の中でも、比較的取扱いが容易で、工業的に入手が容易であるのは、エチレングライコールとプロピレングライコールである。両者の−10℃から120℃までの粘度と温度の関係を示したのが図1である。より環境への安全性、衛生材料用途などを考えた人体への安全性を考慮すると、もっとも望ましいのはプロピレングライコール(以下「PG」と略称する。)である。
【0012】
上記のような溶媒は本発明では、主として水との混合状態で用いられるが、粒子状SAPの凝集や膨潤を防ぎ、かつMFC等の短繊維状物を安定分散するためには、水と溶媒との適切な混合比を選択する必要がある。溶媒/水比は大体9/1〜5/5であって、5/5より水が増えるとSAPの膨張が急激に増大し、9/1より溶媒が多くなるとMFCが沈殿を開始する。これらの転移領域や性質は溶媒種によって多少異なる。PGを例にとると特に望ましい混合比は6/4〜8/2である。PGの水溶液状態での粘度と温度の関係を混合比4/6,6/4,8/2の場合で示したのが図2である。水分量の増加に従って粘度は相対的に低下するが、その水溶液状態でも温度による粘度差の大きいことがわかる。
【0013】
以下より詳細に実施例によって説明する。
【0014】
(2)複合体製造プロセスに於ける分散スラリーの粘度、温度変化
図3はPGを例にして各工程別の分散媒体の粘度と温度の設定の一例を示したものである。この例では分散スラリーとして粒状SAP(三菱化学製US−40)30%、MFC(特種製紙製S−MFC)0.5%をPG/水比70/30の分散媒体に分散したものを採用した。
【0015】
分散スラリーの調製はSAP,MFCを混合分散するさい、撹拌が必要であるため、撹拌に大きなエネルギーを消費しないよう30℃で約400rpmの撹拌状態で行った。得られた分散スラリーを冷却ジャケット付貯留タンクに導き、約40rpmの回転でゆっくり撹拌しつつ約10℃で貯留した。貯留タンクからモイノポンプ(兵神ポンプ製作所製)を用い、加温ジャケットつきパイプを通じてコーティングヘッダーに送液した。
【0016】
コーティングヘッダーは約20分間の滞在量をもち、内部に蒸気パイプによる加温装置を備えている。このヘッダーで約50℃に加熱コントロールした。この加熱スラリーをグリッド付のコーティングロールに供給し、1mm間隔をおき、10mmの巾で不織布基布上にコーティングした。不織布としてはテクセル(王子製紙製)50g/m2 を用いた。コーティング量は約150g/m2 であった。このコーティングされた不織布を上、下にスチーム発生装置を備えたスチーム処理ゾーンに導き、水分添加と加熱を行った後、減圧サクションゾーンを通過させ、PG、水を除去した後、130℃の熱風乾燥により残留PGと水を除去してシート状高吸収体とした。
【0017】
(3)分散プロセスに於ける実施態様例
粒状SAP/MFCを水/PGの分散媒体中に分散スラリ−を調製し、それを成形して複合吸収体を製造するプロセスに於いて、SAP粒子相互とSAPと基材とはSAP粒子表面を被覆するMFCの強固な水素結合によって接合されている。このような水素結合はPG含有量の多いPGと水の混合分散媒系では、まずPGが除去され、しかるのち水分が除去されてはじめて水素結合が完結する。またPG水溶液の沸点は下表のように水の含有量が高いほど沸点が低くなることから、PGの除去には水含有量を工程中でできるだけ高くすることが、工程上有利になる。
【0018】
【表2】
Figure 0003947986
しかし一方、分散媒体PG/水(比)で水の含有量を増加させていくと下表のようにSAP含有分散スラリーは経時変化により、分散安定性が低下してくる。
【0019】
【表3】
Figure 0003947986
従って工程内でPGから水への置換をどのように行うかが極めて重要な技術になる。その手段の第一は、分散条件として如何に水分含有量の高い系を採用できるかが一つの焦点であり、その手段の第二は、シート状に成形した後に、PGから水への置換をどのように行うかという2つの技術に集約される。図4は分散スラリーの調製を、成形工程における給液部分、すなわちコーティングヘッダーに至る間にどのようなステップで行うかについての実施態様例について説明したものである。
【0020】
工程A,BはともにPG/水比70/30を分散媒体とした分散スラリーを調製するものであって、工程AではPG100%のSAP分散液にMFCの水分散液を加え、最終的に混合比70/30に調製するものである。分散はプロセスとして簡単であるが、水分散液を添加するさい、局部的に水比率が多くなるとSAPが膨潤し、分散系が不均一になるので撹拌に注意する必要がある。
【0021】
工程Bでは、MFCのPG/水分散液を混合比70/30で調製した後に粒状SAPを分散するもので比較的安定に分散スラリーを調製できる。
【0022】
工程Cは工程B同様にして得られた混合比70/30のスラリーにコーティングヘッダーで加熱するさいに直接水蒸気を添加することによって、短い時間内で加温と均一な加水を行い、ヘッダーでの滞在時間のみという短時間の間に混合比60/40に水分量を増やし、加温効果と加水効果により粘度を大幅に下げ、流動性を高めてコーティング成形をする工程を説明したものである。
【0023】
工程D,Eは粒状SAPの添加をヘッダー直前にもってくることによって、スラリーの滞在時間の短い間に、相対的に水分量を増やす実施態様であって、工程Dでは粒状SAPをヘッダー直前に添加することにより混合比60/40と水分量を高めるケースを想定したものである。工程EではMFCの高水分率分散液を作り、それにヘッダー直前に短時間で均一混合をはかるためSAPのPG100%分散液を添加混合し、より水分含有量の高い混合比55/45の分散スラリーを調製しようとする試みである。
【0024】
(4)PG/水分散系からのPG脱液プロセスの実施態様
水分含有量の高いPG/水系の分散スラリーの調製についての実施例については上述した。成形したPG含有SAPシートからの脱液と水分含有量を増加させるには水を液滴状にスプレーしたり、フローコートにより水流を薄層状に、シート上に流下させて、PGと水とを置換する方法が考えられるが、注意をしないとシートの表面を不均一にする恐れがある。
【0025】
水流の代わりに水蒸気を加熱と加水源にした1つの例を図5に示す。これは、成形したPG含有シート状SAPからの減圧脱液による液相での脱液とその後の熱プレス、熱風乾燥による気相での脱液の方法についての実施態様である。混合比70/30の溶媒系のスラリーから基材上に成形されたSAPシートは基材とともに第一の水蒸気処理ゾーンに導かれ、加熱と水分率を約50/50に高められた状態で減圧脱液され、PG残存量を下げたうえで、第二の水蒸気処理ゾーンに導かれる。第二の水蒸気ゾーンでは更に加温と水分率を約30/70まで高められた状態で減圧脱液し、更にPG含有量を下げた状態で熱ロールでシートを熱プレスで表面を一部乾燥し、表面を安定化した状態で更にPG含有量を下げ、熱風乾燥機に導きPGとともに水分を除き、最終的に脱液、乾燥された本発明のシート状高吸収体が得られる。なお図中、PG残存量は成形直後のシートのPG残留量を100としたときの相対値で示したものである。
【0026】
本発明はSAPの分散媒体として多価アルコールと水との混合溶媒を使用し、この溶媒のもつ粘度、温度特性を工程の構成にうまく組合せ、利用することによって、シート状高吸収体の製造システムの提供を狙ったものである。
【0027】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明によれば、低温度では高粘度、加温下では粘度が対数的に低下する性質をもった多価アルコール系、特に多価アルコールと水との混合溶媒系に於ける温度、粘度挙動を利用し、分散貯留時には系を低温化、高粘度化にして安定状態を保ち、移送、成形し、脱液時には系を加温、加水して粘度を下げ、流動性を上げ、これにより成形、脱液を容易にすることがかのうであり、シート状高吸収体の製造効率の向上とコストの低減を実現するという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エチレングライコールとプロピレングライコールの−10℃から120℃までの粘度と温度の関係を示すグラフ。
【図2】プロピレングライコールの水溶液状態での粘度と温度の関係を混合比4/6,6/4,8/2の場合で示すグラフ。
【図3】プロピレングライコールを例にして各工程別の分散媒体の粘度と温度の設定例を示すもので、(A)は工程図、(B)は各工程における温度の変化を示す図、(C)は各工程における粘度の変化を示す図。
【図4】(A)〜(E)は、分散スラリーの調製を、コーティングヘッダーに至る間にどのようなステップで行うかについての実施態様例をそれぞれ示す説明図。
【図5】水蒸気を加熱と加水源とし、成形したプロピレングライコール含有シート状SAPからの減圧脱液による液相での脱液と、その後の熱プレス、熱風乾燥による気相での脱液の各工程の順序と、各工程におけるプロピレングライコール/水組成とプロピレングライコール残存量の変化を示す説明図。

Claims (11)

  1. 粘度の温度依存性が大きい水溶性多価アルコール、もしくは該多価アルコールと水との混合物からなる分散媒体中に、粒子状高分子吸収体を分散させてスラリー状の分散液を調製する調製工程と、低温状態を維持して高粘度状態を保ちつつ前記分散液を貯留する貯留工程と、前記分散液をシート状に成形して成形物を得る成形工程と、前記成形物からこれに含まれる前記分散媒体を除去する脱液工程と、ついで前記成形物を乾燥して高吸収体を形成させる乾燥工程とを備え、前記貯留工程では低温状態を維持して高粘度状態を保ち、前記成形工程に至る前記分散液の移送から、前記脱液工程に移行する過程で、前記分散液を順次に加温することにより、前記スラリー状分散液の粘度を低下させ、これにより前記スラリー状分散液の分散状態を安定化するとともに、成形、脱液を容易にすることを特徴とするシート状高吸収体の製造方法。
  2. 前記分散媒体が、多価アルコールと水との混合物であり、その多価アルコール/水比が9/1〜5/5である請求項1に記載の方法。
  3. 前記分散媒体中の前記多価アルコールに対する水の含有量の割合を、前記調製工程、前記成形工程、および前記脱液工程に移行するにしたがって順次高めていく請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記分散液中に、前記粒子状高分子吸収体とともに短繊維状成分を共存させて、共分散系とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記短繊維成分が前記粒子状高分子吸収体より微細な水和性のあるミクロフィブリル状微細繊維である請求項4に記載の方法。
  6. 前記短繊維成分が前記粒子状高分子吸収体の平均粒径よりも長く、かつ直径3デニール以下で長さが10mm以下の繊維状物である請求項4に記載の方法。
  7. 前記短繊維状成分が、前記粒子状高分子吸収体の平均粒径よりも短い微細な水和性のあるミクロフィブリル状微細繊維と、前記粒子状高分子吸収体の平均粒径よりも長く、かつ直径3デニール以下で長さが10mm以下の繊維状物との組合せからなる請求項4に記載の方法。
  8. 前記多価アルコールが、エチレングライコール、プロピレングライコール、ジエチレングライコール、トリエチレングライコール、低分子量ポリエチレングライコール、グリセリンからなる群から選択されたものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記分散液が、前記成形工程における給液部分において30℃以上の温度で、かつ前記貯留工程における温度よりも20℃以上高く保たれている請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記給液部分での加熱を、飽和水蒸気の直接吹き込みにより行い、前記給液部分での前記分散液の加熱と加水効果による多価アルコール/水比の調節を行う請求項9に記載の方法。
  11. 前記成形工程で得られた液体含有シートを水蒸気処理装置に導き、前記シートの加熱と前記多価アルコール類の水置換を行わせることにより、脱液を容易にする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
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