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JP3946923B2 - 回転駆動装置及び該回転駆動装置の製造方法 - Google Patents

回転駆動装置及び該回転駆動装置の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転動力を発生する駆動部と、この回転動力を伝達する第1及び第2減速機構部とを有する回転駆動装置に関し、特に、第2減速機構部が内接噛合遊星歯車構造であるものに関する。更に本発明は、このような回転駆動装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、小型で高出力な回転駆動装置として、特許第2771395号に開示されているような、減速機構部として内接噛合遊星歯車減速構造が採用されているものが広く知られている。この減速機構部は、内歯歯車と、この内歯歯車に内接噛合する外歯歯車を有しており、この内歯歯車の中心が外歯歯車の周囲の内側に設定され(国際分類F16H1/32に該当)、1段で約1/6から1/119の高変速比を達成することができる。従って、この回転駆動装置は非常に幅広い用途、例えばロボットのアームを駆動したり、大荷重のものを運搬するリフト装置を駆動する場合に数多く用いられている。
【0003】
しかしながら、近年の産業の発達に伴う使用者のニーズの多様化により、コンパクトで更に高減速比(例えば1/200以上の減速比)を発揮できる回転駆動装置が求められるようになっており、図6には、このようなニーズに対応して提案された2段減速タイプの回転駆動装置が示されている。
【0004】
この回転駆動装置1は、上記の特許第2771395号に記載されている回転駆動装置の減速機構部と駆動部との間に、更に減速機構部を介在させて約1/1000の高減速比まで達成可能にしたものであり、具体的には、回転動力を発生する駆動部(モータ)2と、この駆動部に連結されて回転動力を伝達する第1減速機構部4と、この第1減速機構部に連結されて回転動力を伝達する内接噛合遊星歯車構造の第2減速機構部6と、を備える。
【0005】
回転駆動装置1の第2減速機構部6は、第1減速機構部4に連結される第1軸11と、この第1軸11と同軸的に配置されて出力軸となる第2軸12とを備えている。この第1軸11の外周上には、所定位相差(この例では180°)をもって軸方向に隣接して2つの偏心体13a、13bが嵌合され、これらが第1軸11と一体に回転する。偏心体13a、13bの中心は、それぞれ第1軸11の軸心に対して所定の偏心量だけ偏心しており、この偏心体13a、13bの外周には、それぞれベアリング14a、14bを介して外歯歯車15a、15bが嵌合されている。
【0006】
これら各偏心体13a、13bに嵌合された複数の外歯歯車15a、15bには、内ピン孔16a、16bがそれぞれ複数設けられており、これら内ピン孔16a、16bに内ピン17が遊嵌されている。
【0007】
外歯歯車を2枚(複列)にしているのは、主に伝達容量の増大、強度の維持、回転バランスの保持を図るためである。特に、本例のように、2段減速タイプにおける下段側にこの構造が採用される場合には、下段側の伝達容量(伝達トルク)が増大するため複列にすることが好ましい。
【0008】
外歯歯車15a、15bの外周にはトロコイド歯形や円弧歯形の外歯が設けられ、この外歯は、第1軸11と同心に設けられた内歯歯車20に内接噛合している。内歯歯車20はケーシング51の内周に一体的に形成されており、各内歯が外ピン21によって構成される。
【0009】
結局、この第2減速機構部6は、内歯歯車20及びこの内歯歯車20に内接噛合する外歯歯車15a、15bを有し、この内歯歯車20の中心が外歯歯車15a、15bの外周の内側にあるという特徴(国際分類F16H1/32に規定する特徴)を有している。
【0010】
ケーシング51は、詳細には、中央ケーシング52、駆動部2側の継ケーシング53、及びこの継ケーシング53と反対側に配置される前部ケーシング54とからなる。従って、このケーシング51の内部に第2減速機構部6が収容されている。
【0011】
2枚の外歯歯車15a、15bの両側には、一対のキャリア23、24が配置されている。このキャリア23、24は、ケーシング51の内周に嵌合した2つの軸受31、32により回転自在に支持されており、外歯歯車15a、15bを貫通する複数本のキャリアピン(連結ピン)25及びスペーサ26で一体に結合されている。
【0012】
又、外歯歯車15a、15bの内ピン孔16a、16bに遊嵌された内ピン17の両端は、この一対のキャリア23、24に滑り回転可能に支持されており、これにより、外歯歯車15a、15bの自転成分のみがキャリア23、24に伝達される。
【0013】
駆動部2側のキャリア23は、中央孔23aを有するリング状をなしており、この中央孔23aに第1軸の一端が軸受を介して支持され、他端は反対側のキャリア24の内部に嵌合された軸受を介して支持されている。つまり、第1軸11は一対のキャリア23、24の内部に回転自在に収容されている。
【0014】
この第2減速機構部は、第1軸11が1回転すると偏心体13a、13bが共に回転し、これに伴って外歯歯車15a、15bが第1軸11の周りで揺動回転を行おうとする。しかし、内歯歯車20によってその自由な自転が拘束されているため、外歯歯車15a、15bは、この内歯歯車20に内接噛合しながらほとんど揺動のみを行う。
【0015】
今、例えば外歯歯車15a、15bの歯数をN、内歯歯車20の歯数をN+1とした場合、その歯数差は1となり、第1軸11の1回転毎に外歯歯車15a、15bが、内歯歯車20に対して1歯分だけずれる(自転する)ことになる。結果として、第1軸11の1回転が外歯歯車15a、15bの−1/N回転に減速されたことになる。
【0016】
この外歯歯車15a、15bの回転は、内ピン孔16a、16b及び内ピン17の隙間によってその揺動成分が吸収され、自転成分のみがキャリア23、24に伝えられて、更にそれが第2軸12へと伝達される。
【0017】
この結果、第2減速機構部6では、結局減速比−1/N(−は逆回転を表わす)の減速が達成される。
【0018】
次に、第1減速機構部について説明する。
【0019】
この回転駆動装置1では、第1減速機構部4にも揺動内接噛合遊星歯車構造が採用されており、第2減速機構部6とほぼ同様の構成である。従って、重複した説明を避けるため、同一部分又は部材については下2桁を同一符号を付することで構成・作用等の詳細な説明は省略する。
【0020】
この第1減速機構部4において第2減速機構部6と異なる点は、主に、外歯歯車115が1枚(単列)ということである。これは、前段側には後段側と比較して伝達容量(伝達トルク)が小さいことから、1枚でも強度面等において十分対応できると考えられるためである。
【0021】
又、第1減速機構部4における出力側のキャリア324は、スプライン構造によって第2減速機構部6の第1軸11に連結されている。又、第1減速機構部4における第1軸311は、駆動部2の駆動軸61に連結されている。
【0022】
この第1減速機構部4を収容するケーシング351は、中央ケーシング352と、駆動部2側の継ケーシング353と、第2減速機構部6側の継ケーシング53とからなり、従って、継ケーシング53が第1減速機構部4と第2減速機構部6とを一体的に結合する役目を果たし、更に、双方のケーシング51、151の一部を兼用しているといえる。
【0023】
以上のように構成された回転駆動装置1は、共に揺動内切噛合遊星歯車構造の第1及び第2減速機構部4、6により、駆動部2の回転動力を2段階で減速して、第2軸12から出力する。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように構成された回転駆動装置1によれば、共に揺動内接噛合遊星歯車構造である第1減速機構部4と第2減速機構部6とによって、極めて高い減速比を達成可能であり、この点では市場の広いニーズに十分対応している。つまり、この回転駆動装置1の特徴は、駆動部2の回転動力をその同軸性を維持したまま、第2減速機構部6の第2軸12に伝達し、極めて高い出力が得られるということである。
【0025】
しかしながら、この回転駆動装置1は新たに中央ケーシング352と継ケーシング353を第2減速機構部6と駆動部2の間に介在させて、そこに第1減速機構部4を収容する構造であるので、装置全体が軸方向に大幅に長大化し、製造コストもかなり高いものであった。
【0026】
又、第1減速機構部4及び第2減速機構部6は共に歯車(外歯歯車、内歯歯車)を含む減速構造であるが故に、これらを連結すると騒音が大幅に増加するという問題があった。これは、互いに独立した内部空間をもった各ケーシング51、151を単に連結(連通)した構造であることから、各ケーシング内の騒音が双方の内部空間で共鳴して増幅されること、あるいは互いに異なる1又は2以上のピーク周波数を有する駆動部2及び2つの減速機構部4、6が連結されることによって複雑な共振現象を起こすためと推測される。
【0027】
ところで、2段減速タイプで高い減速比を達成するためには、以上に示した回転駆動装置1以外にも、この第1減速機構部を、平歯車等を組合わせた平行軸歯車構造にすることも考えられる。
【0028】
しかしながら、この平行軸歯車構造で大きな減速比を得るためには、入力側歯車(ピニオン)と出力側歯車の中心間距離を広くして、噛合する歯車間の歯数差を大きく設定する必要があり、その中心間距離により回転駆動装置全体が(軸方向に加えて)径方向にも大型化することが予測される。又、駆動部(モータ)と出力軸とを同軸化するには、ここだけで2段(全体では3段)にして軸心のずれを戻す必要があり、軸方向の長大化が避けられない。
【0029】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、大型化及び高コスト化を極力抑えた状態で、従来よりも高い減速比を達成することができ、更に騒音も大幅に低減された回転駆動装置を得ることを目的とする。
【0030】
又、他の目的としては、回転駆動装置の組立の容易化を図り、作業者の労力を軽減することにある。
【0031】
【課題を解決するための手段】
本発明は、回転動力を発生する駆動部と、この駆動部に連結されて回転動力を伝達する第1減速機構部と、この第1減速機構部に連結される第1軸、この第1軸に対して偏心回転する外歯歯車、ケーシングに固定されると共に外歯歯車が内接噛合する内歯歯車、外歯歯車の軸方向両外側位置においてケーシングに軸受を介して回転自在に支持され、外歯歯車の自転成分のみを取り出す一対のキャリア、及び第1軸と同軸的に配置されてキャリアの回転が伝達される第2軸、を備える揺動内接噛合遊星歯車構造の第2減速機構部と、を備える回転駆動装置において、第1減速機構部を、駆動部の駆動軸に連結される太陽ローラ、この太陽ローラの外周に転接する遊星ローラ、この遊星ローラが内接するリングローラ、及び遊星ローラの公転成分を取り出して第2減速機構部の第1軸に伝達する遊星キャリア、を備える摩擦伝動式の単純遊星ローラ構造とすると共に、リングローラの外径寸法を、第2減速機構部の一対のキャリアのうちの駆動部側を支持する軸受の外径寸法以内に設定し、このリングローラを、この軸受を収容している前記ケーシングと同一のケーシング内であって、且つ該軸受より駆動部側の空間に配置したことにより、上記目的を達成するものである。
【0032】
単純遊星ローラ機構は摩擦力によって回転動力を伝達するものであるため、歯車伝達構造に比べて極めて静粛な運転が可能であり、又、平行歯車等と比較して高い減速比を維持したままコンパクトに構成できる。
【0033】
本発明者は、この単純遊星ローラ機構の特徴に着目し、この回転駆動装置における上段減速側である第1減速機構部を、摩擦伝動タイプの単純遊星ローラ構造とし、且つ、第1減速機構部のリングローラの外径を、第2減速機構部の上記軸受の外径寸法以内に設定すれば、極めてコンパクトに第1減速機構部と第2減速機構部とを連結可能であることを見出した。
【0034】
即ち、この構成を採用すると、ケーシング内の上記軸受より駆動部側の空間は、極めて簡単な設計変更で(単にケーシングを多少延長するだけで)単純遊星ローラ機構を収容可能な程度に拡張することができ、しかもその拡張スペースは回転駆動装置全体の大きさにほとんど影響を与えることがない。
【0035】
又、上記軸受の外径寸法以内にリングローラの外径を設定すれば、(この軸受を外した状態で)駆動部の反対側から、つまり将来組み込まれる第2減速機構部側からこのリングローラをケーシングに組み込み可能となる。これによりケーシングの内部構造は大幅に簡略化され、装置の製造・組立も大変容易になる(製造方法等は後述する)。
【0036】
従って、単純遊星ローラ機構の第1減速機構部を、第2減速機構部と同一ケーシング内の上記軸受より駆動部側の空間に配置できるようになり、第1減速機構部と第2減速機構部を組合わせて市場のニーズに十分対応可能な高い減速比を達成しつつ、従来よりも大幅に軸方向寸法が短縮化され、製造コストも低減することができる。勿論、以上のように構成された回転駆動装置は、駆動部の回転動力を同軸性を維持したまま出力することができ、径方向に大型化することもない。
【0037】
更に、この第1減速機構部は摩擦伝動式であるため静粛運転が可能であり、それに加えて第1減速機構部と第2減速機構部を1つのケーシング内に収容可能であるので、従来のように2つのケーシングの内部空間による共鳴等を抑制することができ、又、駆動部(モータ)と第2減速機構部の振動伝達が摩擦伝動式の第1減速機構部の存在によって遮断されるため、各部の共振が低減され、運転時の騒音が大幅に低減される。結果として、従来困難であると考えられた高減速比、コンパクト性、静粛性の三者を合理的に解決することができる。
【0038】
又、以上のように回転駆動装置を構成すれば、製造工程を大幅に簡略化できる。具体的な製造方法としては、ケーシングに駆動部を組み付け、この駆動部が組み付けられた状態のケーシングに、駆動部と反対側から第1減速機構部を組み込み、この第1減速機構部が組み込まれた状態のケーシングに、第2減速機構部を組み込むようにすればよい。
【0039】
この製造方法によれば、最初にケーシングに固定された駆動部の駆動軸を基準にして、(同軸性を有する)第1減速機構部と第2減速機構部を順次組み込むことができるので、作業者の労力が大幅に低減される。
【0040】
特に、第1減速機構部に採用される単純遊星ローラ構造と、第2減速機構部に採用される揺動内接噛合遊星歯車構造は、共にユニット的要素(モジュール的要素)が強いものであり、各々を別段階である程度組み上げた状態で、まとめてケーシングに組み込むことができる。しかも、共に回転動力を同軸的に伝達する構造であるため、位置決めが容易であり、迅速に組み立てることができる。
【0041】
なお、組立の容易化を図るという面では、駆動部の駆動軸と第1減速機構部の太陽ローラとの連結構造と、この第1減速機構部の遊星キャリアと第2減速機構部の第1軸との連結構造とを、共に軸径方向の遊びを許すスプライン結合構造にすることが好ましい。このようにすると、第1減速機構部と第2減速機構部の各組込み段階において、微調整をする必要がほとんど無くなり、更に容易に且つ迅速に組み立てることができる。
【0042】
又、以上の思想を考慮すると、この回転駆動装置における第2減速機構部は、第1減速機構部に連結される減速機と、この減速機の軸方向両外側においてケーシングに軸受けを介して回転自在に支持され、減速機の回転動力を取り出す一対のキャリアと、を備えるキャリア伝動式構造であれば良く、上記発明を同様に適用することが可能である。
【0043】
例えば、既に示した内接噛合遊星歯車構造以外にも、第2減速機構部における上記減速機を、第1減速機構部に連結される太陽部材、この太陽部材の周囲に配置される遊星部材、及びこの遊星部材が内接するリング部材を備える単純遊星構造とし、更に、遊星部材の軸方向両外側位置においてケーシングに軸受けを介して一対のキャリアを回転自在に配置して遊星部材の太陽部材周りの公転成分のみを出力軸に伝達するような構成としても良い。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0045】
図1は、本発明の実施形態として示す回転駆動装置(ギヤドモータ)の断面図、図2はその中の第1減速機構部の拡大断面図、図3は図2のIII−III矢視図、図4は図1のIV−IV矢視断面図である。なお、以下の説明については、図6において示す従来例の構成と同一又は類似部分については下2桁が同一の番号を付し、構成・作用等の重複説明は一部省略する。
【0046】
この回転駆動装置101は、回転動力を発生する駆動部102と、この駆動部102に連結されて回転動力を伝達する第1減速機構部104と、この第1減速機構部104に連結される第2減速機構部106とを備える。
【0047】
この第2減速機構部106は、第1軸(入力軸)111と、この第1軸111に対して偏心回転する外歯歯車115a、115bと、ケーシング151に固定されると共に外歯歯車115a、115bが内接噛合する内歯歯車120と、外歯歯車115a、115bの軸方向(L)両外側位置においてケーシング151に軸受131、132を介して回転自在に支持され、外歯歯車115a、115bの自転成分のみを取り出す一対のキャリア123、124と、及び第1軸111と同軸的に配置され、キャリア123、124の回転が伝達される第2軸112(出力軸)と、を備える揺動内接噛合遊星歯車構造である。
【0048】
第2減速機構部106のケーシング151は、上記内歯歯車120と一体を成す中央ケーシング152と、駆動部102側(第1減速機構部104側)の継ケーシング153と、中央ケーシング152を間にして前記継ケーシング153と反対側に配置される前部ケーシング154とから構成される。
【0049】
継ケーシング153の内部にはキャリア123を支持する軸受131が嵌合されているが、この継ケーシング153は軸線方向Lに多少延長され、それによって形成される軸受131よりも駆動部102側の空間に、第1減速機構部104が収容されている。
【0050】
即ち、第1減速機構部104が前段減速部に相当し、第2減速機構部106が後段減速部に相当する。
【0051】
なお、駆動部102のケーシング155は、固定子を内装した円筒ケーシング156と、上記の継ケーシング153と、この継ケーシング153と反対側に位置する後面カバー157とから構成されており、従って、継ケーシング153が減速機構側のケーシング151と駆動部102側のケーシング155の一部を兼用している。
【0052】
更に具体的に、第2減速機構部106の第1軸111の外周上には所定位相差(この例では180°)をもって軸方向に隣接して2つの偏心体113a、113bが嵌合され、これらが第1軸111と一体に回転する。図4に示すように、偏心体113a、113bの中心O1は、第1軸111の軸心O2に対して所定の偏心量eだけ偏心している。各偏心体113a、113bの外周には、ベアリング114a、114bを介して外歯歯車115a、115bが嵌合される。
【0053】
この複列(2つ)の外歯歯車115a、115bには、内ピン孔116a、116bがそれぞれ複数形成されており、これら内ピン孔116a、116bに内ピン117が遊嵌されている。外歯歯車115a、115bの外周にはトロコイド歯形や円弧歯形の外歯が設けられており、この外歯が第1軸111と同心に設けられた内歯歯車120と内接噛合している。内歯歯車120は中央ケーシング152の内周に一体的に形成されており、各内歯が、中央ケーシング152の内周に保持された外ピン121によって構成されている。
【0054】
なお、外歯歯車115a、115bと内歯歯車120との歯数差は「4」となっている(図4参照)。
【0055】
2枚の外歯歯車115a、115bの外側に配置される両キャリア123、124は、それぞれ継ケーシング153及び前部ケーシング154の内部に嵌合した軸受131、132により回転自在に支持され、外歯歯車115a、115bを貫通する複数本のキャリアピン(連結ピン)125及びスペーサ126で軸方向に位置決めして一体に結合されている。又、外歯歯車115a、115bの内ピン孔116a、116bに遊嵌された内ピン117の両端は、両側のキャリア123、124に滑り回転可能に結合され、これにより、外歯歯車115a、115bの自転成分のみが両側のキャリア123、124に伝達される。
【0056】
駆動部102側のキャリア123は、中央孔123aを有するリング状をなしており、この中央孔123aに第1軸111の先端111aが臨んでいる。又、反対側のキャリア124は第2軸112の基部に一体形成されており、このキャリア124に形成された凹所124aに、第1軸111の他端111bが挿入されている。そして、この第1軸111は、キャリア123の貫通孔123aの内部に嵌合された軸受133と、他方のキャリア124の凹所124a近傍に嵌合された軸受134とによって回転自在に支持されている。
【0057】
第1減速機構部104は、図2に拡大して示されるように、駆動部102の駆動軸161と連結される太陽ローラ211、この太陽ローラ211の外周に転接する遊星ローラ212と、この遊星ローラ212が内接するリングローラ213と、遊星ローラ212の公転成分を取り出して第2減速機構部106の第1軸111に伝達する遊星キャリア215、を備える摩擦伝動式の単純遊星ローラ構造である。
【0058】
この第1減速機構部104のリングローラ213の外径寸法は、第2減速機構部106の一対のキャリア123、124のうちの駆動部102側(即ちキャリア123)を支持する軸受131の外径寸法以内に設定されている。更に、このリングローラ213は、ケーシング151(具体的には継ケーシング153)内の上記軸受131より駆動部102側の空間に、配置されている。
【0059】
第1減速機構部104について図2及び図3等を参照しながら更に詳細に説明する。
【0060】
リングローラ213の内径寸法D3は、遊星ローラ212の直径D2の2倍と太陽ローラ211の直径D1との和よりやや小さめに設定されている。従って、リングローラ213の内側に遊星ローラ212と太陽ローラ211を組み込んだ状態では、リングローラ213は径方向外側に微妙に弾性変形しており、この変形に伴う応力によって各摩擦ローラ211、212、213との接触面間に所定の押力を付与して摩擦力を発生させている。
【0061】
更に、リングローラ213は、単純遊星ローラ構造における固定要素として、継ケーシング153に貫通ボルト252により固定されている。又、太陽ローラ211が入力要素、遊星ローラ212を支持する遊星キャリア215が出力要素となっている。なお、リングローラ213に対して径方向の外圧が加わらないように、リングローラ213の外径は継ケーシング153の内周径よりも小さく設定されている。
【0062】
遊星ローラ212の公転運動を取り出す遊星キャリア215は、第2減速機構部106側に突出した中空円筒状の出力軸部216と、この出力軸部216の基端側に一体的に形成されるリテーナ部(リテーナ)217とを有し、出力軸部216の内周には内スプライン218が形成される。この内スプライン218は、第2減速機構部106の第1軸111の軸端部に形成される外スプラインと係合しており(図1参照)、共に一体となって回転する。
【0063】
このリテーナ部217は、軸方向に突出して4つの遊星ローラ212の間にそれぞれ挿入される4本の突起部217a〜217dを有しており、各突起部217a〜217dには、遊星ローラ212の外周面と同一の曲率となる凹円弧面219が形成されている。
【0064】
従って、このリテーナ部217は、上記凹円弧面219を遊星ローラ212に当接させて、各遊星ローラ212の円周方向の相互位置を90°間隔で一定に保持しており、結果として、このリテーナ部217を備えた遊星キャリア215が、遊星ローラ212を自転可能に保持する役目と、この遊星ローラ212の公転成分を取り出す役目を果たしている。
【0065】
リングローラ213の両端面には、リング状の側板221が配置されており、これらの両側板221により遊星ローラ212とリングローラ213との接触面部分が全周に亘って外から遮蔽されている。この遮蔽された空間の内周側は、リテーナ部217の外周面によっても封じられており、この空間の内部に歯車用グリースよりも高価なトラクショングリースが封入されている。このグリースは摩擦を減らすのではなく、摩擦力を確保するためのものである。
【0066】
又、太陽ローラ211の奥部にも、太陽ローラ211を収容した空間と出力軸部216の内部空間とを仕切る仕切板222が配置されている。
【0067】
なお、本発明に係る第1減速機構部の単純遊星ローラ構造は、上記に示したようなリテーナタイプに限定されるものではなく、遊星キャリア215が軸方向のピンを備え、リング状の遊星ローラ212がこのピンに回転自在に保持されているピンタイプのものでもよい。
【0068】
この第1減速機構部104は、駆動部102によって太陽ローラ211が駆動され、これに伴ってこの太陽ローラ211の回りを遊星ローラ212が公転しようとする。遊星ローラ212はリングローラ213と太陽ローラ211とに挟持されているので、リングローラ213の内周面を転がるようにして太陽ローラ211周りを公転する。即ち、遊星ローラ212は自転運動を伴って太陽ローラ212の回りを公転することになる。この遊星ローラ212の公転運動は、リテーナ部217を介して遊星キャリア215によって取り出され、第2減速機構部106の第1軸に所定の減速比で伝達される。なお、遊星キャリア215と第2減速機構部106の第1軸とが一体化されていても良い。
【0069】
これ以降は、既に従来の例において示したように、揺動内接噛合遊星歯車構造の第2減速機構部106によって所定の減速比でその回転が伝達され、第2軸112から出力される。
【0070】
本発明者は、単純遊星ローラ構造におけるリングローラ213が軸受131と同様のリング構造であることに着目し、ケーシング151の内部を多少設計変更すれば、軸受131に接近した合理的な位置に第1減速機構部104を配置できることを見出した。従って、この着想の下で、第2減速機構部106のキャリア123を支持する軸受131の外径寸法以下に、リングローラ213の外径寸法が設定されているので、リングローラ213をこの軸受131の駆動部102側に同心状態で収容することができる。
【0071】
結果として、回転駆動装置101は第1段目の減速機構部を単純遊星構造として高い減速比(高出力)が達成されているのにも拘らず、この実施形態においては駆動部102と第2減速機構部106のみを備える回転駆動装置と比較して、軸線方向の長大化がわずか5%程度に抑えられており、従来困難と考えられていた、高減速比とコンパクト化の相反する要求を、合理的に両立することができる。又これにより製造コストも従来のものと比較して大幅に低減されている。
【0072】
更に、この第1減速機構部104に採用されている単純遊星ローラ構造は、各摩擦ローラ211、212、213の間に生じる摩擦力によって回転動力を伝達する摩擦伝動タイプであるため、歯車構造よりも静粛に構成することができる。従って、第1減速機構部104と第2減速機構部106とを組合わせた2段減速構造であっても騒音が増大するという問題は生じることはなく、むしろ予測の域をはるかに超えて騒音低減が図られることを発明者は確認済みである(特願平11−180641)。特に、この回転駆動装置はケーシング151の同一内部空間に第1及び第2減速機構部104、106を収容しているため、2つの空間の個々の共鳴がそれぞれ干渉し合って新たな共鳴が発生することが防止され、一層騒音の増大が防止されている。
【0073】
次に、この回転駆動装置101の組立方法(製造方法)について図5を参照して説明する。
【0074】
まず、図5(A)に示されるように、ケーシング151(の一部である継ケーシング153)に駆動部102を組み付ける。つまり、既に別段階で組み上げられたユニット状の駆動部102を、ケーシング151に連結する。
【0075】
次に、図5(B)に示されるように、この駆動部102が組み付けられた状態のケーシング151(継ケーシング153)に、駆動部102と反対側から(対向側から)、単純遊星ローラ構造の第1減速機構部104を組み込む。この第1減速機構部104は、太陽ローラ211、遊星ローラ212、リングローラ213が予め焼きばめ等で組み付けられ、これに遊星キャリア215のリテーナ部217を挿入することで既に別段階で組み上げられており、このユニットをまとめて挿入し、貫通ボルト252によってリングローラ213を固定するだけでよい。
【0076】
なお、太陽ローラ211と駆動軸161とは浮動連結構造(スプライン構造)となっており、径方向に遊びを有するので、この第1減速機構部104を容易に挿入することができる。
【0077】
次に、図5(C)に示されるように、第1減速機構部104が組み込まれた状態のケーシング151に、揺動内接噛合遊星歯車構造の第2減速機構部106を組み込む。この第2減速機構部106も、(内歯歯車120を除いては)ほとんどユニット状態(モジュール状態)で別段階で組み上げることができ、これを単にケーシング151に挿入するだけでよい。なお、内歯歯車120(を含む中央ケーシング152)は、事前に継ケーシング153に固定しておくことが好ましい。
【0078】
以降、前部ケーシング154を組付ければ回転駆動装置101が完成する。
【0079】
この方法によれば、ケーシング151(継ケーシング153)を基礎として、ユニット的要素の高い駆動部102と第1減速機構部104と、第2減速機構部106とを一気に組み上げることができる。これは、第1減速機構部104の外径(リングローラ213の外径)を第2減速機構部106の軸受131の外径よりも小さく設定して、これらを同一内部空間に収容できるようにしたためである。
【0080】
更に、最初に組付ける駆動部102の駆動軸161の軸心を基準にして、共に同軸上の動力伝達形態を有する第1及び第2減速機構部104、106を組付ければよいので、中心の位置決めが大変容易であり、組立精度及び組立速度が大幅に向上する。
【0081】
結果として、作業者の組立労力が大幅に軽減され、製造コストの低廉化にもつながる。
【0082】
なお、以上の実施形態においては、この回転駆動装置における第2減速機構部が内接噛合遊星歯車構造である場合に限定して示したが、本発明はその思想からも明らかなように上記構造に限定されない。即ち、第2減速機構部は、第1減速機構部に連結される減速機と、この減速機の軸方向両外側においてケーシングに軸受けを介して回転自在に支持され、減速機の回転動力を取り出す一対のキャリアと、を備えるキャリア伝動式構造であれば十分であり、上記発明を同様に適用することが可能である。
【0083】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成したので、回転駆動装置の大型化を極力抑えながら、減速比を大幅に高めることができる。又、簡易且つ迅速に回転駆動装置を組み立てることができるので、作業者の労力が大幅に軽減され、製造コストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る回転駆動装置の断面図
【図2】同回転駆動装置内の単純遊星ローラ構造の第1減速機構部の断面図
【図3】図2のIII−III矢視図
【図4】図1のIV−IV矢視断面図
【図5】同回転駆動装置の組立過程を示す模式図
【図6】従来の回転駆動装置を示す断面図
【符号の説明】
101…回転駆動装置
102…駆動部
104…第1減速機構部
106…第2減速機構部
111…第1軸
112…第2軸
115a、115b…外歯歯車
120…内歯歯車
123、124…キャリア
131、132…軸受
151…ケーシング
153…継ケーシング
161…駆動軸
211…太陽ローラ
212…遊星ローラ
213…リングローラ
215…遊星キャリア

Claims (3)

  1. 回転動力を発生する駆動部と、
    該駆動部に連結されて前記回転動力を伝達する第1減速機構部と、
    該第1減速機構部に連結される第1軸、該第1軸に対して偏心回転する外歯歯車、ケーシングに固定されると共に前記外歯歯車が内接噛合する内歯歯車、前記外歯歯車の軸方向両外側位置において前記ケーシングに軸受を介して回転自在に支持され、該外歯歯車の自転成分のみを取り出す一対のキャリア、及び前記第1軸と同軸的に配置され、前記キャリアの回転が伝達される第2軸、を備える内接噛合遊星歯車構造の第2減速機構部と、を備える回転駆動装置において、
    前記第1減速機構部を、前記駆動部の駆動軸に連結される太陽ローラ、該太陽ローラの外周に転接する遊星ローラ、該遊星ローラが内接するリングローラ、及び前記遊星ローラの公転成分を取り出して前記第2減速機構部の前記第1軸に伝達する遊星キャリア、を備える摩擦伝動式の単純遊星ローラ構造とすると共に、
    前記リングローラの外径寸法を、前記第2減速機構部の前記一対のキャリアのうち駆動部側を支持する前記軸受の外径寸法以内に設定し、
    該リングローラを、該軸受を収容している前記ケーシングと同一のケーシング内であって、且つ該軸受より駆動部側の空間に配置したことを特徴とする回転駆動装置。
  2. 請求項1記載の回転駆動装置の製造方法であって、
    前記ケーシングに前記駆動部を組み付ける第1手順と、
    該駆動部が組み付けられた状態の前記ケーシングに、該駆動部と反対側から前記第1減速機構部を組み込む第2手順と、
    該第1減速機構部が組み込まれた状態の前記ケーシングに、前記第2減速機構部を組み込む第3手順と、
    を有することを特徴とする回転駆動装置の製造方法。
  3. 回転動力を発生する駆動部と、
    該駆動部に連結されて前記回転動力を伝達する第1減速機構部と、
    該第1減速機構部に連結される減速機、及び該減速機の軸方向両外側においてケーシングに軸受けを介して回転自在に支持され、減速機の回転動力を取り出す一対のキャリアを備えるキャリア伝動式の第2減速機構部と、を備える回転駆動装置において、
    前記第1減速機構部を、前記駆動部の駆動軸に連結される太陽ローラ、該太陽ローラの外周に転接する遊星ローラ、該遊星ローラが内接するリングローラ、及び前記遊星ローラの公転成分を取り出して前記第2減速機構部の前記入力軸に伝達する遊星キャリア、を備える摩擦伝動式の単純遊星ローラ構造とすると共に、
    前記リングローラの外径寸法を、前記第2減速機構部の前記一対のキャリアのうち駆動部側を支持する前記軸受けの外径寸法以内に設定し、
    該リングローラを、該軸受を収容している前記ケーシングと同一のケーシング内であって、且つ該軸受けより駆動部側の空間に配置した
    ことを特徴とする回転駆動装置。
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