JP3943216B2 - オレフィン類重合用固体触媒成分及び触媒 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、触媒活性が極めて高く、立体規則性の高い重合体を高収率で得ることのできるオレフィン類重合用固体触媒成分及び触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、オレフィン類の重合においては、マグネシウム、チタン、電子供与性化合物及びハロゲンを必須成分として含有する固体触媒成分、並びに該固体触媒成分、有機アルミニウム化合物及び有機ケイ素化合物からなるオレフィン類重合用触媒の存在下に、オレフィン類を重合もしくは共重合させるオレフィン類の重合方法が数多く提案されている。例えば、特開昭57−63310号及び同57−63311号公報においては、マグネシウム化合物、チタン化合物及び電子供与体を含有する固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物及びSi−O−C結合を有する有機ケイ素化合物との組み合わせからなる触媒を用いて、特に炭素数が3以上のオレフィンを重合させる方法が提案されている。しかしながら、これらの方法は、高立体規則性重合体を高収率で得るには、必ずしも充分に満足したものではなく、より一層の改良が望まれていた。
【0003】
そこで特開昭63−92614号公報においては、ジアルコキシマグネシウム、芳香族ジカルボン酸ジエステル、芳香族炭化水素及びチタンハロゲン化物及び塩化カルシウムを接触して得られる、オレフィン類重合用固体触媒成分が提案されている。
【0004】
また、特開平1−315406号公報においては、ジエトキシマグネシウムとアルキルベンゼンとで形成された懸濁液に、四塩化チタンを接触させ、次いでフタル酸ジクロライドを加えて反応させることによって固体生成物を得、該固体生成物を更にアルキルベンゼンの存在下で四塩化チタンと接触反応させることによって調製された固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物及び有機ケイ素化合物よりなるオレフィン類重合用触媒及び該触媒の存在下でのオレフィン類の重合方法が提案されている。
【0005】
上記各従来技術は、その目的が生成重合体中に残留する塩素やチタン等の触媒残渣を除去する所謂脱灰工程を省略し得る程の高活性を有すると共に、併せて立体規則性重合体の収率の向上や、重合時の触媒活性の持続性を高めることに注力したものであり、それぞれ優れた成果を上げている。しかし、当業界においては、生産性向上のため、更に高い触媒活性が要求されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術では係る課題を解決するには充分ではなく、より触媒活性が高いオレフィン類重合用固体触媒成分あるいは触媒の開発が望まれていた。
【0007】
本発明の目的は、係る従来技術に残された問題点を解決し、より高い触媒活性を有し、高立体規則性を有する重合体をより高収率で得ることのできるオレフィン類重合用固体触媒成分及び触媒を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記従来技術に残された課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ジアルコキシマグネシウム、チタン化合物、芳香族ジカルボン酸ジエステル及び芳香族炭化水素を接触することにより得られ、かつ特定の関係式を満たすオレフィン類重合用固体触媒成分を用いることにより、触媒活性が極めて高く、かつ高立体規則性を高度に維持した重合体を生成できる触媒が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分は、(A)(a)ジアルコキシマグネシウム、(b)一般式Ti(OR1 )n X4−n (式中、R1 は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xは塩素原子、臭素原子あるいはヨウ素原子を示し、nは0≦n≦3の実数である。)で表されるチタン化合物、(c)芳香族ジカルボン酸ジエステル及び(d)トルエンを接触し反応させて固体生成物を得る反応処理工程Aを行い、該反応処理工程Aで得られた固体生成物を(d)トルエンで洗浄する洗浄工程を行い、次いで(d)洗浄後の固体生成物に新たに(d)トルエン及び(b)チタン化合物を加えて反応させる反応処理工程Bを行い、更に該反応処理工程Bで得られた固体生成物を(d)トルエンで洗浄する洗浄工程及び上記反応処理工程Bを順次行うことにより調製されることを特徴とする。また、上記オレフィン類重合用固体触媒成分は、以下の関係式を満たすことを特徴とする。
0.25≦S1 /S2≦10 (1)
(式中、S1及びS2はラマン分光により求められる値で、S1は280〜400cm-1に現れる複数のピークのピーク面積値の合計値、S2は200〜270cm-1に現れる強いピークのピーク面積値である。)
【0010】
また、本発明のオレフィン類重合用触媒は、以下の(A)、(B)及び(C)成分よりなることを特徴とする。
(A)上記のオレフィン類重合用固体触媒成分、
(B)一般式R2 p AlY3-p(式中、R2は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Yは 水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物、及び
(C)一般式R3 q Si(OR4)4-q(式中、R3及びR4は炭化水素基を示し、同一または異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である。)で表される有機ケイ素化合物。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分(A)(以下、「固体触媒成分(A)」ということがある。)の調製に用いられるジアルコキシマグネシウム(a)の具体例としては、ジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム、エトキシメトキシマグネシウム、エトキシプロポキシマグネシウム、ブトキシエトキシマグネシウム等が挙げられる。また、これらのジアルコキシマグネシウムは、金属マグネシウムを、ハロゲンあるいはハロゲン含有金属化合物等の存在下にアルコールと反応させて得ることもできる。上記のジアルコキシマグネシウムの中でも特にジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウムが好ましく用いられる。また、上記のジアルコキシマグネシウムは、2種以上併用することもできる。
【0012】
更に、本発明において固体触媒成分(A)の調製に用いられるジアルコキシマグネシウム(a)は、顆粒状または粉末状であり、その形状は不定形あるいは球状のものが使用し得る。例えば球状のジアルコキシマグネシウムを使用した場合、より良好な粒子形状と狭い粒度分布を有する重合体粉末が得られ、重合操作時の生成重合体粉末の取扱い操作性が向上し、生成重合体粉末に含まれる微粉に起因する閉塞等の問題が解消される。
【0013】
上記の球状ジアルコキシマグネシウム(a)は、必ずしも真球状である必要はなく、楕円形状あるいは馬鈴薯形状のものを用いることもできる。具体的にその粒子の形状は、長軸径lと短軸径wとの比(l/w)が3以下であり、好ましくは1〜2であり、より好ましくは1〜1.5である。
【0014】
また、上記ジアルコキシマグネシウム(a)の平均粒径は1〜200μmのものが使用し得る。好ましくは5〜150μm、更に好ましくは10〜100μmである。また、その粒度については、微粉及び粗粉の少ない、粒度分布の狭いものを使用することが望ましい。具体的には、5μm以下の粒子が20%以下であり、好ましくは10%以下である。一方、100μm以上の粒子が10%以下であり、好ましくは5%以下である。更にその粒度分布をln(D90/D10)(ここで、D90は積算粒度で90%における粒径、D10は積算粒度で10%における粒径である。)で表すと3以下であり、好ましくは2以下である。
【0015】
本発明における固体触媒成分(A)の調製に用いられるチタン化合物(b)は、下記一般式Ti(OR1 )n X4-n (式中、R1 は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xは塩素原子、臭素原子あるいはヨウ素原子を示し、nは0≦n≦3の実数である。)で表されるチタンハライドもしくはアルコキシチタンハライドの1種あるいは2種以上である。
【0016】
具体的には、チタンテトラクロライド、チタンテトラブロマイド、チタンテトラアイオダイド等のチタンテトラハライド、メトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、プロポキシチタントリクロライド、n−ブトキシチタントリクロライド、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジプロポキシチタンジクロライド、ジ−n−ブトキシチタンジクロライド、トリメトキシチタンクロライド、トリエトキシチタンクロライド、トリプロポキシチタンクロライド、トリ−n−ブトキシチタンクロライド等のアルコキシチタンハライドが例示される。このうち、チタンテトラハライドが好ましく、特に好ましくはチタンテトラクロライド(TiCl4 )である。これらのチタン化合物は2種以上併用することもできる。
【0017】
本発明における固体触媒成分(A)の調製に用いられる芳香族ジカルボン酸ジエステル(c)としては、フタル酸あるいはテレフタル酸のジエステルの1種あるいは2種以上が好適である。
【0018】
フタル酸のジエステルの具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジ−iso−プロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−iso−ブチル、フタル酸エチルメチル、フタル酸メチル(iso−プロピル)、フタル酸エチル(n−プロピル)、フタル酸エチル(n−ブチル)、フタル酸エチル(iso−ブチル)、フタル酸ジ−n−ペンチル、フタル酸ジ−iso−ペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ−n−ヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘキシル)、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジ−n−ノニル、フタル酸ジ−iso−デシル、フタル酸ビス(2,2−ジメチルヘプチル)、フタル酸n−ブチル(iso−ヘキシル)、フタル酸n−ブチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチルヘキシル、フタル酸n−ペンチル(iso−ヘキシル)、フタル酸iso−ペンチル(ヘプチル)、フタル酸n−ペンチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチル(iso−ノニル)、フタル酸iso−ペンチル(n−デシル)、フタル酸n−ペンチルウンデシル、フタル酸iso−ペンチル(iso−ヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(iso−ノニル)、フタル酸n−ヘキシル(n−デシル)、フタル酸n−ヘプチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘプチル(iso−ノニル)、フタル酸n−ヘプチル(neo−デシル)、フタル酸2−エチルヘキシル(iso−ノニル)が例示され、これらの1種あるいは2種以上が使用される。
【0019】
テレフタル酸のジエステルの具体例としては、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジ−n−プロピル、テレフタル酸ジ−iso−プロピル、テレフタル酸ジ−n−ブチル、テレフタル酸ジ−iso−ブチル、テレフタル酸エチルメチル、テレフタル酸メチル(iso−プロピル)、テレフタル酸エチル(n−プロピル)、テレフタル酸エチル(n−ブチル)、テレフタル酸エチル(iso−ブチル)、テレフタル酸ジ−n−ペンチル、テレフタル酸ジ−iso−ペンチル、テレフタル酸ジヘキシル、テレフタル酸ジ−n−ヘプチル、テレフタル酸ジ−n−オクチル、テレフタル酸ビス(2,2−ジメチルヘキシル)、テレフタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、テレフタル酸ジ−n−ノニル、テレフタル酸ジ−iso−デシル、テレフタル酸ビス(2,2−ジメチルヘプチル)、テレフタル酸n−ブチル(iso−ヘキシル)、テレフタル酸n−ブチル(2−エチルヘキシル)、テレフタル酸n−ペンチルヘキシル、テレフタル酸n−ペンチル(iso−ヘキシル)、テレフタル酸iso−ペンチル(ヘプチル)、テレフタル酸n−ペンチル(2−エチルヘキシル)、テレフタル酸n−ペンチル(iso−ノニル)、テレフタル酸iso−ペンチル(n−デシル)、テレフタル酸n−ペンチルウンデシル、テレフタル酸iso−ペンチル(iso−ヘキシル)、テレフタル酸n−ヘキシル(2−エチルヘキシル)、テレフタル酸n−ヘキシル(2−エチルヘキシル)、テレフタル酸n−ヘキシル(iso−ノニル)、テレフタル酸n−ヘキシル(n−デシル)、テレフタル酸n−ヘプチル(2−エチルヘキシル)、テレフタル酸n−ヘプチル(iso−ノニル)、テレフタル酸n−ヘプチル(neo−デシル)、テレフタル酸2−エチルヘキシル(iso−ノニル)が例示され、これらの1種あるいは2種以上が使用される。
【0020】
上記の内でも、フタル酸のジエステルが好適であり、その中でも特にフタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−プロピル、フタル酸ジ−iso−プロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−iso−ブチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジ−iso−デシルが好ましく用いられる。
【0021】
本発明においては、芳香族ジカルボン酸ジエステル(c)の他に、以下に示す電子供与性化合物、例えばアルコール類、フェノール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、酸ハライド類、アルデヒド類、アミン類、アミド類、ニトリル類、イソシアネート類、Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物等を併用することもできる。これらは1種あるいは2種以上使用することができる。
【0022】
具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノール類、メチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテル、ブチルエーテル、アミルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸プロピル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸シクロヘキシル、安息香酸フェニル、p−トルイル酸メチル、p−トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル等のモノカルボン酸エステル類、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジプロピル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジオクチル等のジカルボン酸エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等のケトン類、フタル酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド等の酸ハライド類、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類、メチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピペリジン、アニリン、ピリジン等のアミン類、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トリニトリル等のニトリル類等を挙げることができる。
【0023】
また、Si−O−C結合を含む有機ケイ素化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン等を挙げることができる。
【0024】
本発明における固体触媒成分(A)の調製に用いられる芳香族炭化水素(d)は、トルエンである。
【0025】
本発明における固体触媒成分(A)の調製においては、上記必須の成分の他、更に、アルミニウム化合物または有機酸の金属塩またはポリシロキサンを使用することができる。
【0026】
アルミニウム化合物としては、アルミニウムトリクロライド、ジエトキシアルミニウムクロライド、ジ−iso−プロポキシアルミニウムクロライド、エトキシアルミニウムジクロライド、iso−プロポキシアルミニウムジクロライド、ブトキシアルミニウムジクロライド、トリエトキシアルミニウム等が挙げられる。
【0027】
有機酸の金属塩としては、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0028】
ポリシロキサンとしては、下記一般式(1)で表されるものの1種あるいは2種以上が用いられる。
【0029】
【化1】
【0030】
(式中、lは平均重合度を表し、2〜30000であり、R5 〜R12の主体はメチル基であり、ときにはR5 〜R12の一部分はフェニル基、水素原子、高級脂肪酸残基、エポキシ含有基、ポリオキシアルキレン基で置換されたものであり、また上記一般式の化合物はR8 及びR9 がメチル基の環状ポリシロキサンを形成していてもよい。)
【0031】
該ポリシロキサンは、シリコーンオイルとも総称され、25℃での粘度が2〜10000センチストークス、より好ましくは3〜500センチストークスを有する、常温で液状あるいは粘稠状の鎖状、部分水素化、環状あるいは変性ポリシロキサンである。
【0032】
鎖状ポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンが、部分水素化ポリシロキサンとしては、水素化率10〜80%のメチルハイドロジェンポリシロキサンが、環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンが、また変性ポリシロキサンとしては、高級脂肪酸基置換ジメチルシロキサン、エポキシ基置換ジメチルシロキサン、ポリオキシアルキレン基置換ジメチルシロキサンが例示される。
【0033】
上記接触の際、芳香族炭化水素(d)以外の他の不活性有機溶媒を併用して行うことも可能であり、用いられる不活性有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素化合物、オルトジクロルベンゼン、塩化メチレン、四塩化炭素、ジクロルエタン等のハロゲン化炭化水素化合物等が挙げられる。
【0034】
本発明の固体触媒成分(A)を調製する方法としては、ジアルコキシマグネシウムを、アルコールまたはチタン化合物等に溶解させた後、固体物を析出させて得る方法、またはジアルコキシマグネシウムをチタン化合物または不活性炭化水素溶媒等に懸濁させて得る方法等が挙げられる。このうち、前者の方法で得られた固体触媒成分(A)の粒子はほぼ球状に近く、粒度分布もシャープである。また、後者の方法においても、球状のジアルコキシマグネシウムを用いることにより、球状でかつ粒度分布のシャープな固体触媒成分を得ることができ、また球状のジアルコキシマグネシウムを用いなくとも、例えばスプレードライ法によって粒子を形成させることにより、上記と同様に球状でかつ粒度分布のシャープな固体触媒成分(A)を得ることができる。
【0035】
各成分の接触は、不活性ガス雰囲気下、水分等を除去した状況下で、攪拌機を具備した容器中で、攪拌しながら行われる。接触温度は、単に接触させて攪拌混合する場合や、分散あるいは懸濁させて変性処理する場合には、室温付近の比較的低温域であっても差し支えないが、接触後に反応させて生成物を得る場合には、40〜130℃の温度域が好ましい。反応時の温度が40℃未満の場合は充分に反応が進行せず、結果として調製された固体成分の性能が不充分となり、130℃を超えると使用した溶媒の蒸発が顕著になる等して、反応の制御が困難になる。なお、反応時間は1分以上、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。
【0036】
以下に、固体触媒成分(A)の調製方法を例示する。
【0037】
(1)ジアルコキシマグネシウムを芳香族炭化水素中に懸濁させた後、チタン化合物と接触させ、必要に応じチタン化合物との接触を繰り返す際、いずれかの時点で芳香族ジカルボン酸ジエステルを接触させて、固体触媒成分(A)を調製する方法。この際、ポリシロキサンを併用することもできる。
【0038】
(2)ジアルコキシマグネシウム及び芳香族ジカルボン酸ジエステルを芳香族炭化水素中に懸濁させ、その懸濁液をチタン化合物中に添加し、反応させて固体成分を得、該固体成分を芳香族炭化水素で洗浄した後、芳香族炭化水素の存在下、再度チタン化合物を接触させて、固体触媒成分(A)を得る方法。この際、ポリシロキサンを併用することもできる。
【0039】
(3)ジアルコキシマグネシウムを芳香族炭化水素中に懸濁させた後、チタン化合物と接触させ、必要に応じチタン化合物との接触を繰り返す際、いずれかの時点で芳香族ジカルボン酸ジエステル及び塩化カルシウム等の無機塩を接触させて、固体触媒成分(A)を調製する方法。
【0040】
(4)ジアルコキシマグネシウム及び塩化カルシウム等のカルシウム化合物を共粉砕し、得られた粉砕物を芳香族炭化水素に懸濁させた後、チタン化合物及び芳香族ジカルボン酸ジエステルと接触反応させ、次いで更にチタン化合物を接触させることにより固体触媒成分(A)を調製する方法。この際、一般式Si(OR13)4 (式中、R13はアルキル基またはアリール基を示す。)で表されるケイ素化合物を共存させることもできる。
【0041】
(5)ジアルコキシマグネシウムを芳香族炭化水素中に懸濁させた後、チタン化合物と接触させ、必要に応じチタン化合物との接触を繰り返す際、いずれかの時点で芳香族ジカルボン酸ジエステル、及びステアリン酸ナトリウム等の有機酸金属塩あるいはテトラブトキシチタンやトリイソプロポキシアルミニウム等のアルコキシ化合物を接触させて、固体触媒成分(A)を調製する方法。
【0042】
(6)ジアルコキシマグネシウムを芳香族炭化水素中に懸濁させた後、チタン化合物と接触させ、その後再度チタン化合物と接触させる際に、いずれかの時点で芳香族ジカルボン酸ジエステル及び界面活性剤を接触させて、固体触媒成分(A)を得る方法。
【0043】
(7)ジアルコキシマグネシウムを芳香族炭化水素中に懸濁させた後、チタン化合物と接触させ、必要に応じチタン化合物との接触を繰り返す際、いずれかの時点で芳香族ジカルボン酸ジエステルと接触させて得られる固体成分を、炭化水素溶媒の存在下または不存在下で加熱処理して固体触媒成分(A)を得る方法。この際、ハロゲン化炭化水素を共存させることもできる。
【0044】
(8)ジアルコキシマグネシウムを芳香族炭化水素中に懸濁させた後、チタン化合物と接触させ、必要に応じチタン化合物との接触を繰り返す際、いずれかの時点で芳香族ジカルボン酸ジエステル及び水を接触させて、固体触媒成分(A)を得る方法。この際、ハロゲン化炭化水素を共存させることもできる。
【0045】
(9)ジアルコキシマグネシウムを芳香族炭化水素中に懸濁させた後、チタン化合物と接触させ、必要に応じチタン化合物との接触を繰り返す際、いずれかの時点で芳香族ジカルボン酸ジエステル及び有機アルミニウム化合物を接触させて、固体触媒成分(A)を得る方法。この際、芳香族ジカルボン酸ジエステル以外の電子供与性化合物、例えば有機ケイ素化合物等を併用することもできる。
【0046】
(10)ジアルコキシマグネシウムを芳香族炭化水素中に懸濁させた後、チタン化合物と接触させ、その後昇温して炭素数の異なる2種以上のアルキル基を有する芳香族ジカルボン酸ジエステルと接触反応させて固体成分を得、該固体成分をアルキルベンゼンで洗浄した後、芳香族炭化水素の存在下、再度チタン化合物と接触させて、固体触媒成分(A)を得る方法。この際、炭素数の異なる2種以上のアルキル基を有する芳香族ジカルボン酸ジエステルを、2回目以降のチタン化合物との接触の際に再度接触させることもできる。また、いずれかの時点で、ポリシロキサンを接触させることもできる。
【0047】
(11)ジアルコキシマグネシウムを芳香族炭化水素中に懸濁させた後、チタン化合物と接触させ、必要に応じチタン化合物との接触を繰り返す際、いずれかの時点で芳香族ジカルボン酸ジエステル、一般式Al(OR14)v W3-v (式中、R14は炭素数1〜4のアルキル基またはアリール基、Wはハロゲン元素、vは0≦v≦3の実数。)で表されるアルミニウム化合物を接触させて、固体触媒成分(A)を調製する方法。また、いずれかの時点で、ポリシロキサンを接触させることもできる。
【0048】
(12)ジアルコキシマグネシウム、チタン化合物、芳香族ジカルボン酸ジエステルを、芳香族炭化水素溶媒の存在下に接触させることにより溶液を形成した後、固体成分を生成させ、再度チタン化合物と反応させて、固体触媒成分(A)を調製する方法。この際、いずれかの時点で、ポリシロキサンを接触させることもできる。
【0049】
(13)ジアルコキシマグネシウムを芳香族炭化水素中に懸濁させた後、チタン化合物と接触させ、必要に応じチタン化合物との接触を繰り返す際、いずれかの時点で芳香族ジカルボン酸ジエステル及びポリカルボニル化合物を接触させて、固体触媒成分(A)を調製する方法。また、いずれかの時点で、ポリシロキサンを接触させることもできる。
【0050】
(14)ジアルコキシマグネシウムを芳香族炭化水素中に懸濁させた後、チタン化合物と接触させ、必要に応じチタン化合物との接触を繰り返す際、いずれかの時点で芳香族ジカルボン酸ジエステル及び1価あるいは多価のアルコールを接触させることにより固体触媒成分(A)を得る方法。また、いずれかの時点で、塩化アルミニウム等のアルミニウム化合物やポリシロキサンを接触させることもできる。
【0051】
(15)上記(1)〜(14)のいずれかの方法で調製した固体生成物を2種以上混合して、固体触媒成分(A)を得る方法。
【0052】
また、本発明で用いられる固体触媒成分(A)の好ましい調製方法としては、以下のような方法が挙げられる:例えば、ジアルコキシマグネシウム(a)を常温で液体の芳香族炭化水素(d)に懸濁させ、次いでこの懸濁液にチタン化合物(b)を−20〜100℃で接触し、0〜130℃で反応させる。この際、該懸濁液にチタン化合物(b)を接触させる前または接触した後に、芳香族ジカルボン酸ジエステル(c)の1種あるいは2種以上を、−20〜130℃で接触させ、固体反応生成物を得る。この固体反応生成物を常温で液体の芳香族炭化水素化合物で洗浄した後、再度チタン化合物(b)を、芳香族炭化水素(d)の存在下に、0〜130℃で接触反応させる。この際、固体反応生成物にチタン化合物(b)を接触させる前または接触した後に、更に芳香族ジカルボン酸ジエステル(c)の1種あるいは2種以上を接触させることも好ましい態様である。更にこの後、チタン化合物(b)を、芳香族炭化水素(d)の存在下に、0〜130℃で、1回ないし複数回接触させる。この際にも、芳香族ジカルボン酸ジエステル(c)の1種あるいは2種以上を接触させたり、チタン化合物の各接触毎に固体反応生成物を常温で液体の芳香族炭化水素化合物で洗浄することができる。次いで得られた固体生成物を、常温で液体の炭化水素化合物で洗浄し、固体触媒成分(A)を得る。また、上記のいずれかの時点で、必要に応じ、Al(OR15)r Z3-r (式中、R15は炭素数1〜4のアルキル基またはアリール基を示し、Zはハロゲン元素を示し、0≦r≦3)で表されるアルミニウム化合物及び/またはポリシロキサンを用いてもよい。上記各段階において、チタン化合物(b)の存在下に反応される際の時間には特に制約はないが、通常10分〜10時間、好ましくは30分〜5時間の範囲である。
【0053】
固体触媒成分(A)を調製する際の各化合物の使用量比は、調製法により異なるため一概には規定できないが、例えばジアルコキシマグネシウム(a)1モル当たり、チタン化合物(b)が0.5〜100モル、好ましくは0.5〜50モル、より好ましくは1〜10モルであり、芳香族ジカルボン酸ジエステル(c)が、ジアルコキシマグネシウム(a)1モル当たり0.01〜10モル、好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.02〜0.6モルであり、芳香族炭化水素(d)は、ジアルコキシマグネシウム(a)1モルに対し0.001モル以上、好ましくは0.005〜1000モル、より好ましくは0.01〜500モルである。
【0054】
本発明の固体触媒成分は、ラマン分光分析により得られるパラメータ(前述の(1)式のS1 /S2 )が、0.25≦S1 /S2 ≦10の関係を満たすことを特徴とする。ラマンスペクトルの測定は、分子構造の決定や物質の同定等を行うための一般的な方法であり、ある特定の波数において特定の物質に帰属するピークが得られる。
【0055】
本発明の固体触媒成分は、ラマンスペクトルで、波数200〜270cm-1に強いピークを有し、また、波数280〜400cm-1の範囲に、複数のピークが現れる。本発明の固体触媒成分のラマンスペクトルの一例を図2に示す。本発明の固体触媒成分は、波数280〜400cm-1の範囲に現れる複数のピークの、各々のピークのピーク面積値の合計値S1 と、200〜270cm-1に生じる強いピークのピーク面積値S2 との比、即ちS1 /S2 が、0.25≦S1 /S2 ≦10、好ましくは0.30≦S1 /S2 ≦8.0、より好ましくは0.30≦S1 /S2 ≦5.0の関係式を満たす。このような固体触媒成分は、生成ポリマーの立体規則性を高度に維持しつつ触媒活性が顕著に改善される。前記ラマンスペクトルの測定において、使用装置は適切な能力を有するものであれば特に限定されず、例えば、市販のラマンスペクトル測定装置を用いることができる。また、積算回数は任意であるが、測定精度と試料の劣化の関係を考慮すると、50〜50000回、より好ましくは100〜10000回程度が望ましい。また、前記複数のピークS1 及び強いピークS2 の面積は、ラマンスペクトルのベースラインから上に突出した部分の面積をいい、その算出方法は公知の方法で行えばよく、例えば、コンピュータ計算、近似三角形化等の手法により求められる。
【0056】
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる有機アルミニウム化合物(B)としては、一般式R2 p AlY3-p(式中、R2は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Yは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である)で表される化合物を用いることができる。このような有機アルミニウム化合物(B)の具体例としては、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、トリ−iso−ブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムハイドライドが挙げられ、1種あるいは2種以上が使用できる。好ましくは、トリエチルアルミニウム、トリ−iso−ブチルアルミニウムである。
【0057】
本発明のオレフィン類重合用触媒を形成する際に用いられる有機ケイ素化合物(C)としては、一般式R3 q Si(OR4)4-q(式中、R3およびR4は炭化水素基を示し、同一または異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である)で表される化合物が用いられる。R3の好ましい炭化水素基としては、炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基が挙げられ、同一または異なっていてもよい。R4の好ましい炭化水素基としては、炭素数1〜4のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基、アラルキル基が挙げられ、同一または異なっていてもよい。このような有機ケイ素化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルキルアルコキシシラン等を挙げることができる。
【0058】
上記の有機ケイ素化合物を具体的に例示すると、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−n−プロピルエトキシシラン、トリ−n−ブチルメトキシシラン、トリ−iso−ブチルメトキシシラン、トリ−t−ブチルメトキシシラン、トリ−n−ブチルエトキシシラン、トリシクロヘキシルメトキシシラン、トリシクロヘキシルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−iso−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−iso−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、n−ブチルメチルジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシル(iso−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロペンチル(iso−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−ペンチル)ジエトキシシラン、シクロペンチル(iso−ブチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(n−プロピル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(n−ブチル)ジエトキシシラン、シクロヘキシル(iso−ブチル)ジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシルジメチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルメトキシシラン、シクロヘキシルジエチルエトキシシラン、2−エチルヘキシルトリメトキシシラン、2−エチルヘキシルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−エチルヘキシルトリメトキシシラン、2−エチルヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジプロポキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、ビス(3−メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、ビス(4−メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、3,5ジメチルシクロヘキシルシクロヘキシルジメトキシシラン、ビス(3,5ジメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。上記の中でも、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−iso−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロペンチルエチルジエトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジエトキシシラン、3−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、4−メチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、3,5−ジメチルシクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシランが好ましく用いられ、該有機ケイ素化合物(C)は1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0059】
本発明のオレフィン類重合触媒を用いてオレフィン類を重合するには、前記した固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)及び有機ケイ素化合物(C)よりなる触媒の存在下、オレフィン類の重合もしくは共重合を行うが、各成分の使用量比は、本発明の効果に影響を及ぼすことのない限り任意であり、特に限定されるものではないが、通常有機アルミニウム化合物(B)は固体触媒成分(A)中のチタン原子のモル当たり、モル比で1〜1000、好ましくは50〜800の範囲で用いられる。有機ケイ素化合物(C)は、(B)成分のモル当たり、モル比で0.002〜10、好ましくは0.01〜2、特に好ましくは0.01〜0.5の範囲で用いられる。
【0060】
各成分の接触順序は任意であるが、重合系内にまず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、次いで有機ケイ素化合物(C)を接触させ、更に固体触媒成分(A)を接触させることが望ましい。
【0061】
本発明における重合方法は、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行うことができ、またオレフィン単量体は、気体及び液体のいずれの状態でも用いることができる。また、重合時に分子量調節剤として水素を用いることも可能である。重合温度は200℃以下、好ましくは100℃以下であり、重合圧力は10MPa以下、好ましくは5MPa以下である。また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に重合反応を1段で行ってもよいし、2段以上で行ってもよい。
【0062】
本発明の方法により重合あるいは共重合されるオレフィン類は、炭素数2〜10のオレフィン、具体的にはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン等の長鎖オレフィン類、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等の分枝オレフィン類、ブタジエン等のジエン類、あるいはビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン等が好ましく、これらのオレフィンは1種あるいは2種以上用いることができる。とりわけ、エチレン及びプロピレンが好適に用いられる。
【0063】
更に、本発明において固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)及び有機ケイ素化合物(C)よりなる触媒を用いて行うオレフィン重合(本重合ともいう。)にあたり、触媒活性、立体規則性及び生成する重合体の粒子性状等を一層改善させるために、本重合に先立ち予備重合を行うことが望ましい。予備重合の際に用いるオレフィン類として、本重合と同様のオレフィン類あるいはスチレン等のモノマーを用いることができる。
【0064】
予備重合を行うに際して、各成分及びモノマーの接触順序は任意であるが、好ましくは、不活性ガス雰囲気あるいは重合を行うオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、次いで固体触媒成分(A)を接触させた後、1種あるいは2種以上のオレフィンを接触させる。有機ケイ素化合物を組み合わせて予備重合を行う場合は、不活性ガス雰囲気あるいは重合を行うオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内にまず有機アルミニウム化合物(B)を装入し、次いで有機ケイ素化合物(C)を接触させ、更に固体触媒成分(A)を接触させた後、1種あるいは2種以上のオレフィンを接触させる方法が望ましい。
【0065】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比しつつ、具体的に説明する。
【0066】
〈ラマン分光分析による固体触媒成分の測定及びパラメータの算出〉
固体触媒成分について、株式会社日本分光製フーリエ変換ラマン分光光度計(フーリエ変換赤外分光光度計Herschel FT/IR−800に、ラマン分光ユニットRFT−600を組み合わせた装置。)を用いて、YAGレーザー発振波長=1064nm、測定範囲=0〜4000cm-1、分解能=4cm-1、積算回数=300回にて測定を行った。測定終了後、波数280〜400cm-1の範囲に現れる複数のピークのピーク面積値の合計値S1 と、200〜270cm-1に生じる強いピークのピーク面積値S2 を算出し、S1 /S2 を求めた。
【0067】
〈重合評価〉
得られた重合体につき、固体触媒成分当たりの重合活性(Yield )及びソックスレー抽出器にて沸騰n−ヘプタンで6時間抽出した際の不溶解の重合体量(HI)を測定した。重合活性及びHIは、下記の(2)及び(3)式より算出した。更に、生成重合体のメルトフローレイト(MI)、嵩密度(BD)を測定した。MI及びBDの測定はそれぞれJIS K 7210及びJIS K 6721に準拠した。
【0068】
Yield (g-PP/g-cat. )=a(g)/固体触媒成分(g) (2)
HI(重量%)={b(g)/a(g)}×100 (3)
上記(2)及び(3)式において、aは重合反応終了後、生成した重合体の重量を示し、bは重合反応終了後に生成した重合体を沸騰n−ヘプタンで6時間抽出した、n−ヘプタン不溶解分の重量を示す。
【0069】
実施例1
〈固体触媒成分の調製〉
攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量500mlの丸底フラスコに、ジエトキシマグネシウム10g、トルエン80ml、チタンテトラクロライド20ml及びフタル酸ジ−n−ブチル2.7mlを装入し、攪拌しながら110℃で2時間反応させた(処理工程A)。反応終了後、生成物をトルエンで洗浄し(トルエン洗浄工程)、新たにトルエン80ml、チタンテトラクロライド20mlを加えて、攪拌しながら100℃で2時間接触反応させた(処理工程B)。その後、トルエン洗浄工程及び処理工程Bをもう1度繰り返し、次いで、生成物を40℃のヘプタンで洗浄し(ヘプタン洗浄工程)、濾過、乾燥して、粉末状の固体触媒成分を得た。この固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ、2.77重量%であった。該固体触媒成分をラマン分光法により測定し、S1 /S2 を算出した。結果を表1に示す。
【0070】
〈重合〉
窒素ガスで置換された、内容積2200mlの攪拌装置付きオートクレーブ内に、上記の固体触媒成分をチタン原子として0.0026mmol相当量と、トリエチルアルミニウム1.3mmol及びシクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.13mmolを入れて攪拌処理し、重合触媒を形成した。その後、水素ガス2000ml、液化プロピレン1400mlを装入し、20℃で5分間予備重合を行い、その後本重合を70℃で1時間行った。生成ポリマーの評価結果を表1に併載する。
【0071】
実施例2
〈固体触媒成分の調製〉
1回目の処理工程Bの終了後、トルエン洗浄工程及び処理工程Bを更に2回づつ繰り返した以外は、実施例1と同様に行った。この固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ、2.50重量%であった。該固体触媒成分をラマン分光法により測定し、S1 /S2 を算出した。結果を表1に併載する。
【0072】
〈重合〉
実施例1と同様に行った。生成ポリマーの評価結果を表1に併載する。
【0073】
実施例3
〈固体触媒成分の調製〉
1回目の処理工程Bの終了後、トルエン洗浄工程及び処理工程Bを更に4回づつ繰り返した以外は、実施例1と同様に行った。この固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ、2.59重量%であった。該固体触媒成分をラマン分光法により測定し、S1 /S2 を算出した。結果を表1に併載する。
【0074】
〈重合〉
実施例1と同様に行った。生成ポリマーの評価結果を表1に併載する。
【0075】
比較例1
〈固体触媒成分の調製〉
攪拌機を具備し、窒素ガスで充分に置換された、容量500mlの丸底フラスコに、ジエトキシマグネシウム10g、トルエン80ml、チタンテトラクロライド20ml及びフタル酸ジ−n−ブチル2.7mlを装入し、攪拌しながら110℃で2時間反応させた。反応終了後、生成物をトルエンで洗浄し、新たにトルエン80ml、チタンテトラクロライド20mlを加えて、攪拌しながら100℃で2時間接触反応させた。次いで、生成物を40℃のヘプタンで洗浄し、濾過、乾燥して、粉末状の固体触媒成分を得た。この固体触媒成分中のチタン含有量を測定したところ、3.76重量%であった。該固体触媒成分をラマン分光法により測定し、S1 /S2 を算出した。結果を表1に併載する。
【0076】
【表1】
【0077】
【発明の効果】
本発明の固体触媒成分及び触媒は触媒活性が極めて高いことから、本発明の重合触媒を用いてオレフィン類を重合することにより、ポリオレフィンの生産性が改善され、かつ立体規則性の高いポリオレフィンを高収率で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の触媒成分及び重合触媒を製造する工程を示すフローチャート図である。
【図2】本発明の固体触媒成分のラマンスペクトルの例である。
Claims (3)
- (A)(a)ジアルコキシマグネシウム、(b)一般式Ti(OR1 )n X4−n(式中、R1 は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xは塩素原子、臭素原子あるいはヨウ素原子を示し、nは0≦n≦3の実数である。)で表されるチタン化合物、(c)芳香族ジカルボン酸ジエステル及び(d)トルエンを接触し反応させて固体生成物を得る反応処理工程Aを行い、該反応処理工程Aで得られた固体生成物を(d)トルエンで洗浄する洗浄工程を行い、次いで(d)洗浄後の固体生成物に新たに(d)トルエン及び(b)チタン化合物を加えて反応させる反応処理工程Bを行い、更に該反応処理工程Bで得られた固体生成物を(d)トルエンで洗浄する洗浄工程及び上記反応処理工程Bを順次行うことにより調製されるオレフィン類重合用固体触媒成分。
- 下記の関係式を満たすものであることを特徴とする請求項1記載のオレフィン類重合用固体触媒成分。
0.25≦S1 /S2≦10 (1)
(式中、S1及びS2はラマン分光により求められる値で、S1は280〜400cm-1に現れる複数のピークのピーク面積値の合計値、S2は200〜270cm-1に現れる強いピークのピーク面積値である。) - 下記(A)、(B)及び(C)成分によって形成されることを特徴とするオレフィン類重合用触媒。
(A)請求項1又は2に記載のオレフィン類重合用固体触媒成分、
(B)一般式R2 p AlY3−p(式中、R2は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Yは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。)で表される有機アルミニウム化合物、及び
(C)一般式R3 qSi(OR4)4−q(式中、R3びR4は炭化水素基を示し、同一または異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である。)で表される有機ケイ素化合物。
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