JP3837318B2 - 車両用操舵装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ステアリングホイールなどの操作部材の操作に基づいて、この操作部材に対して機械的な結合を持たない舵取り機構を駆動して舵取り車輪を転舵させる構成の車両用操舵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステアリングホイールと舵取り車輪を転舵するための舵取り機構との機械的な結合をなくし、ステアリングホイールの操作方向および操作量を検出するとともに、その検出結果に基づいて、舵取り機構に電動モータなどの操舵アクチュエータからの駆動力を与えるようにした車両用操舵装置(いわゆるステア・バイ・ワイヤ・システム)が提案されている。
【0003】
このような構成を採用することにより、車両の走行状況などに応じて、ステアリングホイールの回転量と舵取り車輪の転舵量との比(ギヤ比)を自由に変更することができ、車両の運動性能の向上を図ることができる。また、上記のような構成には、衝突時におけるステアリングホイールの突き上げを防止できるという利点や、ステアリングホイールの配設位置の自由度が増すという利点もある。
図2は、ステア・バイ・ワイヤシステムの電気的構成を示すブロック図である。ステアリングホイールの操作方向および操作量等の検出信号は、主制御電子制御ユニット(ECU)101に入力される。舵取り機構には、主操舵モータ105および副操舵モータ106が結合されており、ステアリングホイールには、反力モータ107が結合されている。主操舵モータ105および副操舵モータ106は、いずれも、舵取り機構に駆動力を与えて舵取り車輪の転舵を起こさせるためのものであるが、副操舵モータ106は、主操舵モータ105やその制御系等に異常が生じた場合に、舵取り機構に駆動力を与えるように動作する。また、反力モータ107は、路面反力に対応した反力をステアリングホイールに与える。
【0004】
主操舵モータ105は、主操舵電子制御ユニット102によって駆動制御される。具体的には、主操舵電子制御ユニット102は、主操舵モータ105に駆動電流を与える主操舵駆動部108と、この主操舵駆動部108を制御する主操舵制御部111とを有している。
副操舵モータ106は、副操舵電子制御ユニット103によって駆動制御される。具体的には、副操舵電子制御ユニット103は、副操舵モータ106に駆動電流を与える副操舵駆動部109と、この副操舵駆動部109を制御する副操舵制御部112とを有する。
【0005】
反力モータ107も同様に、反力電子制御ユニット104によって駆動制御されるようになっている。この反力電子制御ユニット104は、反力モータ107に駆動電流を与える反力駆動部110と、この反力駆動部110を制御する反力制御部113とを有している。
主操舵駆動部108、副操舵駆動部109および反力駆動部110は、パワー素子を含むドライバ回路であり、主操舵制御部111、副操舵制御部112および反力制御部113は、電流フィードバック制御のための制御指令をそれぞれ出力する。そして、これらの主操舵制御部111、副操舵制御部112および反力制御部113が、主制御電子制御ユニット101によって統合制御されるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
主操舵電子制御ユニット102、副操舵電子制御ユニット103および反力電子制御ユニット104への電源の供給は、主制御電子制御ユニット101によって制御されるようになっている。すなわち、車両のイグニッションキースイッチが導通されると、車載バッテリからの電力が主制御電子制御ユニット101に供給され、この主制御電子制御ユニット101の作動後に、主操舵電子制御ユニット102、副操舵電子制御ユニット103および反力電子制御ユニット104の電源が投入される。
【0007】
したがって、もしも、主制御電子制御ユニット101に故障が生じていれば、主操舵電子制御ユニット102、副操舵電子制御ユニット103および反力電子制御ユニット104には電力が供給されない。その結果、舵取り機構に駆動力を与えることができず、ステアリングホイールに操舵抵抗を与えることもできないから、操舵システムを始動することができない。
一方、主操舵モータ105、副操舵モータ106および反力モータ107の制御に必要なセンサ信号は、主制御電子制御ユニット101に入力されるようになっている。そして、主制御電子制御ユニット101の故障時には、その電源が遮断されるとともに、センサ信号は、主操舵電子制御ユニット102等に与えられるようになっている。
【0008】
しかし、故障発生時における主制御電子制御ユニット101の電源の遮断は、自らの処理によって行うようになっていて、主操舵電子制御ユニット102または副操舵電子制御ユニット103からは、主制御電子制御ユニット101の電源を遮断できない。そのため、主制御電子制御ユニット101が暴走し、その電源が遮断されない場合には、主操舵モータ105が意図しない動作を起こすおそれがある。
【0009】
そこで、この発明の目的は、上述の技術的課題を解決し、主制御部に異常が生じていても舵取り機構の制御を開始できる車両用操舵装置を提供することである。
また、この発明の他の目的は、主制御部に故障が生じても舵取り機構の制御を安定して行える車両用操舵装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、車両の操向のための操作部材(30)と、この操作部材とは機械的に非連結状態で設けられて、舵取り車輪を転舵させるための舵取り機構(10)と、上記舵取り機構または操作部材に駆動力を与えるアクチュエータ(51M,51S,40)と、このアクチュエータに駆動電流を与える駆動回路(53M,53S,43)と、この駆動回路に制御指令を与えることによって、上記アクチュエータを制御するためのアクチュエータ制御部(61M,61S,45)と、上記アクチュエータ制御部を統括制御するための主制御部(80)と、車両のイグニッションキースイッチ(91)の導通に応答して、上記主制御部およびアクチュエータ制御部に独立に電源を供給する電源供給回路(92)と、上記主制御部への電源の供給を制御する電源制御手段(81)とを含み、上記アクチュエータ制御部は、上記主制御部における異常発生に応答して、上記電源制御手段を制御して、上記主制御部への電源の供給を遮断するとともに、その直後は、当該異常発生直前の制御指令を上記駆動回路に与えるものであることを特徴とする車両用操舵装置である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
【0011】
上記の構成によれば、車両のイグニッションキースイッチが導通されると、主制御部だけでなくアクチュエータ制御部にも電源が供給されるから、主制御部に異常が生じている場合であっても、舵取り機構の制御を開始できる。
【0012】
また、この発明によれば、アクチュエータ制御部は主制御部における異常発生の有無を監視していて、主制御部に異常が生じると、主制御部への電源の供給を停止させるとともに、その直後は、当該異常発生直前の制御指令を上記駆動回路に与える。これによって、主制御部の暴走に起因して、舵取り機構が意図しない動作を起こすおそれがなくなる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る車両用操舵装置の基本的な構成を説明するための概念図である。この車両用操舵装置は、一対の舵取り車輪(通常は前輪)W,Wに舵取り動作を行わせるための舵取り機構10と、この舵取り機構10に対して機械的な結合のない状態で設けられたステアリングホイール30とを備えている。
【0014】
この車両用操舵装置は、舵取り機構10を駆動するための操舵駆動系が、主操舵駆動系50Mと副操舵駆動系50Sとの二重系とされている。主操舵駆動系50Mは、主操舵アクチュエータ51Mと、この主操舵アクチュエータ51Mの回転角を検出するための主回転角センサ52Mとを含む。一方、副操舵駆動系50Sは、副操舵アクチュエータ51Sと、この副操舵アクチュエータ51Sの回転角を検出するための副回転角センサ52Sとを含む。主操舵アクチュエータ51Mおよび副操舵アクチュエータ51Sは、たとえば、いずれも電動モータで構成されている。
【0015】
舵取り機構10は、車体の左右方向に延びて配置された操舵軸11と、この操舵軸11の両端部にタイロッド12,12を介して結合され、舵取り車輪W,Wを支持するナックルアーム13,13とを有している。操舵軸11は、ハウジング14に支承されて軸方向に摺動可能にされており、その途中部に、主操舵アクチュエータ51Mが同軸的に組み込まれている。
また、操舵軸11の一部には、ラックギヤ11aが形成されており、このラックギヤ11aには、シャフト21の先端のピニオンギヤ22が噛合している。シャフト21には、副操舵アクチュエータ51Sが結合されており、副操舵アクチュエータ51Sが発生する駆動力がシャフト21に入力されるようになっている。
【0016】
この構成により、主操舵アクチュエータ51Mが駆動されると、主操舵アクチュエータ51Mの回転がボールねじなどからなる運動変換機構によって操舵軸11の摺動に変換され、この操舵軸11の摺動により舵取り車輪W,Wの操舵が達成される。また、副操舵アクチュエータ51Sが駆動されると、副操舵アクチュエータ51Sによるシャフト21の回転がピニオンギヤ22およびラックギヤ11aによって操舵軸11の摺動に変換され、この操舵軸11の摺動により舵取り車輪W,Wの操舵が達成される。
【0017】
ステアリングホイール30には、このステアリングホイール30に対して路面反力に相当する反力を付与するための反力アクチュエータ40が結合されている。
反力アクチュエータ40は、ステアリングホイール30に結合されたシャフト23を回転軸とする電動モータ(たとえば、三相ブラシレスモータ)で構成されており、そのケーシングが車体の適所に固定されている。反力アクチュエータ40には、ステアリングホイール30から入力される操舵トルクを検出するためのトルクセンサ41と、ステアリングホイール30の操作角を検出するための操作角センサ42とが付設されている。
【0018】
反力アクチュエータ40、主操舵アクチュエータ51Mおよび副操舵アクチュエータ51Sには、駆動回路43,53M,53Sから、駆動電流が供給されるようになっている。
トルクセンサ41、操作角センサ42、主回転角センサ52M、副回転角センサ52Sの検出信号は、主制御電子制御ユニット60に入力されている。また、操舵軸11に関連して、この操舵軸11の軸方向位置を検出するための転舵位置センサ15が設けられており、この転舵位置センサ15の検出信号も主制御電子制御ユニット60に入力されるようになっている。主制御電子制御ユニット60には、さらに、車速を検出するための車速センサ70の検出信号が入力されるようになっている。この車速センサ70は、たとえば、車輪の回転速度を検出する車輪速センサによって構成することができる。
【0019】
この車両用操舵装置には、主制御電子制御ユニット60の他に、主操舵アクチュエータ51Mを制御するための主操舵電子制御ユニットU1と、副操舵アクチュエータ51Sを制御するための副操舵電子制御ユニットU2と、反力アクチュエータ40を制御するための反力電子制御ユニットU3とが備えられている。これらの電子制御ユニット60,U1,U2,U3のそれぞれには、車載バッテリ90からの電力が、イグニッションキースイッチ91および電源配線回路92を介して、独立に供給されるようになっている。
【0020】
主操舵電子制御ユニットU1は、主操舵アクチュエータ51Mのための駆動回路(主操舵駆動回路)53Mと、この主操舵駆動回路53Mに制御信号を与えて主操舵アクチュエータ51Mを電流フィードバック制御するための主操舵制御部61Mとを備えている。主操舵制御部61Mは、CPU(中央処理装置)を含む。
副操舵電子制御ユニットU2は、副操舵アクチュエータ51Sのための駆動回路(副操舵駆動回路)53Sと、この副操舵駆動回路53Sに制御信号を与えて副操舵アクチュエータ51Sを電流フィードバック制御するための副操舵制御部61Sとを有している。副操舵制御部61Sは、CPUを含む。
【0021】
反力電子制御ユニットU3は、反力アクチュエータ40のための駆動回路(反力駆動回路)43と、この反力駆動回路43に制御信号を与えて反力アクチュエータ40を電流フィードバック制御するための反力制御部45とを備えている。反力制御部45は、CPUを含む。
主制御電子制御ユニット60は、CPUを含む主制御部80と、この主制御部80への電源の供給を制御するための電源制御回路81とを備えている。主制御部80は、上記センサ類41,42,52M,52S,15,70からの入力信号に基づいて、主操舵制御部61M、副操舵制御部61Sおよび反力制御部45における各電流フィードバック制御に必要な処理を行い、これらを統括制御する。電源制御回路81には、電源配線回路92からの電力が供給されていて、この電源制御回路81から主制御部80へと動作電力が供給されるようになっている。
【0022】
主制御部80における異常の発生は、主操舵制御部61M、副操舵制御部61Sおよび反力制御部45によって監視されるようになっている。そして、主操舵制御部61Mは、主制御部80における異常の発生を検出すると、電源制御回路81を制御して、主制御部80への電源の供給を遮断する。その直後は、主操舵制御部61Mは、異常発生直前の制御指令を主操舵駆動回路53Mに与えるなどして、主操舵アクチュエータ51Mの駆動制御を継続する。反力制御部45も同様に動作させればよい。なお、主制御部80の異常発生時には、その電源が遮断されるとともに、この主制御部80に入力されるセンサ信号は、主操舵電子制御ユニットU1等に与えられるようになっている。
【0023】
主操舵制御部61M、主操舵駆動回路53Mおよび主操舵アクチュエータ51Mを含む主操舵駆動系50Mに異常が生じたときには、このことが主制御部80によって検出され、この主制御部80による制御の下、副操舵制御部61Sによる副操舵アクチュエータ51Sの駆動制御が行われることになる。
以上のようにこの実施形態によれば、車載バッテリ90からの電力は、イグニッションキースイッチ91が導通されることによって、主制御電子制御ユニット60、主操舵電子制御ユニットU1、副操舵電子制御ユニットU2および反力電子制御ユニットU3に独立に供給される。したがって、主制御電子制御ユニット60内の主制御部80に異常が生じていたとしても、他の電子制御ユニットU1,U2,U3によって、アクチュエータ51M,51S,40の駆動制御を開始することができ、システムを始動させることができる。
【0024】
また、主制御部80における異常の有無が主操舵制御部61M、副操舵制御部61Sおよび反力制御部45によって監視されていて、主制御部80に異常が発生すると、主制御部80への電源供給が停止されるようになっているから、舵取り機構10が主制御部80の暴走等に起因する意図しない挙動を示すことがない。これにより、舵取り機構10の駆動制御を安定に行うことができる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、他の形態で実施することもできる。たとえば、上述の実施形態では、主制御部80の電源制御回路81の制御を主操舵制御部61Mによって行うこととしているが、同様の機能を副操舵制御部61Sまたは反力制御部45によって行うこととしてもよい。また、主制御部80における異常発生の有無の監視および電源制御回路81の制御を、主操舵制御部61M、副操舵制御部61Sおよび反力制御部45のうちの2つまたは3つによって並列的に行うようにしてもよい。
【0025】
また、上述の実施形態では、操作部材としてステアリングホイール30が用いられる例について説明したが、この他にも、レバーなどの他の操作部材が用いられてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る車両用操舵装置の構成を説明するための概念図である。
【図2】従来技術に係る車両用操舵装置の構成を説明するためのブロック図である。
【符号の説明】
10 舵取り機構
30 ステアリングホイール
40 反力アクチュエータ
43 反力駆動回路
45 反力制御部
50M 主操舵駆動系
50S 副操舵駆動系
51M 主操舵アクチュエータ
51S 副操舵アクチュエータ
53M 主操舵駆動回路
53S 副操舵駆動回路
60 主制御電子制御ユニット
61M 主操舵制御部
61S 副操舵制御部
80 主制御部
81 電源制御回路
90 車載バッテリ
91 イグニッションキースイッチ
92 電源配線回路
U1 主操舵電子制御ユニット
U2 副操舵電子制御ユニット
U3 反力電子制御ユニット
W 舵取り車輪
Claims (1)
- 車両の操向のための操作部材と、
この操作部材とは機械的に非連結状態で設けられて、舵取り車輪を転舵させるための舵取り機構と、
上記舵取り機構または操作部材に駆動力を与えるアクチュエータと、
このアクチュエータに駆動電流を与える駆動回路と、
この駆動回路に制御指令を与えることによって、上記アクチュエータを制御するためのアクチュエータ制御部と、
上記アクチュエータ制御部を統括制御するための主制御部と、
車両のイグニッションキースイッチの導通に応答して、上記主制御部およびアクチュエータ制御部に独立に電源を供給する電源供給回路と、
上記主制御部への電源の供給を制御する電源制御手段とを含み、
上記アクチュエータ制御部は、上記主制御部における異常発生に応答して、上記電源制御手段を制御して、上記主制御部への電源の供給を遮断するとともに、その直後は、当該異常発生直前の制御指令を上記駆動回路に与えるものである
ことを特徴とする車両用操舵装置。
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