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JP3836499B2 - 低硫黄改質法 - Google Patents

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Description

本発明の背景
本願発明は、1991年3月8日に出願された米国特許出願No.07/666,696(その内容は参考のためここに入れてある)のCIP出願に相当し、それと同時に出願された米国特許出願No.802,821[Attorney's Docket No. 005950-316]及び米国特許出願No.803,215[Attorney's Docket No. 005950-333](それらの内容は参考のためここに入れてある)に関する。
本発明は、改良された接触改質法、特に低硫黄条件、及び低硫黄・低含水条件での接触改質法に関する。詳しくは、本発明は、低硫黄及び低硫黄・低含水改質法にとって特に厳しい問題の発見及び抑制に関する。
接触改質法は石油工業でよく知られており、ナフサ留分を、芳香族の生成によりオクタン価を改良するように処理することが含まれている。改質操作中に起きる一層重要な炭化水素反応には、シクロヘキサンの芳香族への脱水素化、アルキルシクロペンタンの芳香族への脱水素異性化、及び非環式炭化水素の芳香族への脱水素環化が含まれる。アルキルベンゼンの脱アルキル化、パラフィンの異性化、及び軽いガス状炭化水素、例えば、メタン、エタン、プロパン及びブタンを生ずる水添分解反応を含めた数多くの他の反応も起きる。改質中水添分解反応を最小にすることが重要である。なぜなら、それらはガソリン沸点生成物及び水素の収率を減少させるからである。
高オクタン価ガソリンが要求されているので、改良された改質触媒及び接触改質法を開発することに膨大な研究が行われてきた。改質法を成功させる触媒は良好な選択性を持たなければならない。即ち、それらは高オクタン価芳香族炭化水素を高濃度で含むガソリン沸点範囲の液体生成物を高収率で生ずるのに有効であるべきである。同様に、軽いガソリン炭化水素の収率は低いのがよい。触媒は、或る量の生成物を生成させるための過度に高い温度をできるだけ少なくする良好な活性度を持つべきである。また、長い操作期間に亙って活性度及び選択性の特性を維持できるように触媒が良好な安定性を持つか、或は性能を低下することなく屡々再生することができるように充分再生可能であることが必要である。
接触改質は、化学工業で重要な方法でもある。合成繊維、殺虫剤、接着剤、洗剤、プラスチック、合成ゴム、医薬品、高オクタン価ガソリン、香料、乾性油、イオン交換樹脂、及びその他の当業者によく知られた種々の生成物の如き種々の化学製品を製造するための芳香族炭化水素に対する需要が益々大きくなってきている。
大気孔ゼオライト触媒の使用を含む重要な技術的進歩が最近接触改質法で現れてきた。これらの触媒はアルカリ又はアルカリ土類金属が存在することを更に特徴とし、一種類以上の第VIII族金属が付加されている。この種の触媒は、従来用いられていたものよりも大きな選択性及び長い触媒寿命を与える利点を有することが判明している。
許容可能な反復寿命を有する選択性触媒が発見されたことにより、商業化の成功は必然的なものと思われた。残念ながらその後、第VIII族金属を含む高度に選択性の大気孔ゼオライト触媒は、異常に硫黄被毒を受け易いことが発見された。米国特許第4,456,527号明細書参照。結局、この問題に効果的に対処するため、触媒について許容出来る安定性及び活性度が得られるようにするためには、炭化水素供給物中の硫黄が極端に低い水準、好ましくは100ppbより少なく、一層好ましくは50ppbよりも低くあるべきであることが判明した。
これらの新しい触媒に伴われる硫黄に対する感応性を認め、工程硫黄の必要且つ許容可能な水準が決定されてから、商業化に成功する見通しが再び見え始めてきた。しかし、結局、別の付随する問題の発生により消滅した。或る大気孔ゼオライト触媒は、典型的な反応条件下で水の存在により悪影響を受けることが見出された。特に、水は触媒の不活性化速度を著しく大きくすることが見出された。
水に対する感応性は、効果的に対処するのを困難にする重大な欠点であることが判明した。水は、触媒が水素により還元される場合、夫々の反応工程の開始と共に生成する。また、水は、水が改質器供給物中に漏れた時、又は供給物が酸素含有化合物で汚染されるようになった時の工程異常中に生成することがある。結局、触媒を水から保護する方法も開発された。
触媒寿命の長い高度に選択性の大気孔ゼオライト触媒を用いた接触改質のための種々の低硫黄、低含水装置の開発により、再び商業化が実際的になるように思えた。低硫黄・低含水装置は最初有効であるが、僅か数週間で反応器装置の停止が必要になることが発見された。一つの試験プラントの反応器装置は、そのような短期間の操作を行なっただけで規則的に閉塞するようになった。それらの閉塞はコークス化に伴われるものであることが見出された。しかし、触媒粒子内のコークス化は炭化水素処理では一般的な問題であるが、この特別な装置に伴われる触媒粒子の以外でのコークスによる閉塞形成の程度及び速度は、予想を遥かに超えたものであった。
発明の開示
従って、本発明の一つの目的は、低硫黄条件下での炭化水素改質法において、操作期間が短いと言うような低硫黄法に伴われて見出されている前述の問題を避けることができる方法を与えることである。
本発明の他の目的は、操作期間を長くすることができる。低硫黄条件下での炭化水素改質のための反応器装置を与えることである。
低硫黄反応器装置のコークス閉塞の詳細な分析及び研究により、それらが、数μまでの粒径範囲の金属の液滴及び粒子を含有することが驚いたことに見出された。この観察により、工程硫黄及び水の量が著しく高い慣用的改質法では問題にならない新しく極めて重大な問題が存在すると言う驚くべき認識に到達した。特に、その装置の効果的で経済的な操作性及び同様に装置の物理的一体性を危うくする問題が存在することが発見された。また、これらの問題は低硫黄条件であると言うことにより発生し、ある程度水の量が少ないことにより発生することが発見された。
最近の40年間、接触改質反応器装置は、通常の軟鋼(例えば、21/4Cr、1 Mo)から製造されていた。その後、経験からそれらの装置は物理的強度を大して失うことなく約20年間うまく作動できることが示されている。しかし、閉塞コークス中に金属の粒子及び液滴が発見されたことにより、結局反応器装置の物理的特性の研究が行われるようになった。全く驚いたことに、炉管、配管、反応器壁、及び鉄を含む触媒及び反応器中の金属網の如き他の周辺を含めた全反応器装置の潜在的なひどい物理的劣化を起こす原因になる条件が発見された。最終的に、この問題は工程炭素が金属中に注入されることにより鋼の脆弱化を起こす鋼の過度の炭素化(carburization)に伴われるものであることが発見された。恐らく、反応器系の破滅的物理的破壊を起こす結果になり得るものである。
慣用的改質法では、単なる炭素化は問題或は関心事になることではなく、現代の低硫黄/低含水装置で存在するとは思われないものであった。また、従来の工程設備も用いることができるであろうと想定された。しかし、慣用的装置中に存在する硫黄が効果的に炭素化を阻止することは明らかである。慣用的方法では、工程硫黄が炭素化反応を幾らか阻止する。しかし、極めて硫黄含有量の低い系では、この固有の保護はもはや存在しない。
第1A図は商業的改質器の軟鋼炉管の内部(処理側)の一部分の顕微鏡写真である。その管は約19年間慣用的改質条件に曝されてきた。この写真は、管の表面が高温で炭化水素に長く露出された後でも、管の組織が正常なままになっていて本質的に変化していないことを示している(写真の黒い部分は背景である)。
第1B図は、低硫黄/低含水試験プラントの反応器内部で僅か13週間入れておいた軟鋼試料片の一部分の顕微鏡写真である。この写真は、金属の顆粒化(dusting)が起きた試料の腐食した表面(黒い背景に対してコントラストが付いている)を示している。暗灰色状の脈状部分は鋼の周囲の炭素化を示し、それは深さ1mmよりも深い炭素化及び脆弱化を起こしている。
勿論、炭素化に伴う問題は、物理的装置の炭素化によって初めて発生する。鋼壁の炭素化により「金属顆粒化」、触媒活性粒子及び金属の腐食による金属の溶融液滴の遊離を起こす。
活性金属粒状物は装置中のコークス形成に対し付加的部位を与える。コークス化による触媒の不活性化は、一般に改質で対処されなければならない問題であるが、この新しい重要なコークス形成源は、コークスによる新しい閉塞問題を生じ、それが問題を甚だしく悪化している。実際、易動性の活性金属粒状物及びコークス粒子は一般に装置全体に亙ってコークス化を転移させことが判明ししいる。活性金属粒子物は実際にそれら自身の上及び装置中でのそれら粒子が蓄積する所は何処にでもコークスの形成を誘発し、コークスによる閉塞及び発熱脱メタン化(demethanation)反応の高熱領域を生ずる結果になる。その結果、反応器装置の制御できない早過ぎるコークス閉塞が起き、それが始動後数週間で装置を停止することになる。しかし、本発明の方法及び反応器装置を用いることにより、これらの問題を解決することができる。
従って、本発明の第一の態様は、低硫黄条件下、屡々低硫黄・低含水条件下で慣用的軟鋼反応器装置に対する改良になっている、炭素化及び金属顆粒化に対する抵抗性を有し、改質を行なった時のその抵抗性が、炭素化による脆弱化が約2.5mm/年より小さく、好ましくは1.5mm/年より小さく、一層好ましくは1mm/年より小さく、最も好ましくは0.1mm/年より小さいような抵抗性を有する反応器装置内で、アルカリ又はアルカリ土類金属を含み、一種類以上の第VIII族金属が付与された改質触媒、好ましくは大気孔ゼオライト触媒と炭化水素とを接触させることからなる炭化水素改質法に関する。そのような程度まで脆弱化を防ぐことは、反応器装置中での金属顆粒化及びコークス化を著しく減少させることにより、一層長い期間に亙って操作することを可能にするものであろう。
本発明の別の態様は、低硫黄条件下でアルカリ土類金属を含み、一種類以上の第VIII族金属が付与された大気孔ゼオライト触媒の如き改質触媒を用いて炭化水素を改質する方法で、慣用的軟鋼装置に対する改良になっている、炭素化及び金属顆粒化に対する抵抗性で、その抵抗性が、脆弱化が約2.5mm/年より小さく、好ましくは1.5mm/年より小さく、一層好ましくは1mm/年より小さく、最も好ましくは0.1mm/年より小さくなるような抵抗性を与える手段を含む反応器装置に関する。
多くの因子の中で、本発明は、低硫黄及び低硫黄・低含水改質法で、顕著な炭素化、金属顆粒化、及びコークス化問題が存在すると言う発見に基づいている。そのような問題は、一層高水準の硫黄が存在する慣用的改質法では重大になる程の問題ではない。この発見により、それらの問題を解決するための膨大な研究開発が行われ、その解決法は、低硫黄改質にとっては新規なものであり、低硫黄改質装置のための抵抗性のある材料の判定及び選択、それら抵抗性材料の効果的な利用及び適用法、炭素化、金属顆粒化及びコークス化を減少させるための添加物(硫黄以外)、及び上記問題に効果的に対処する種々の工程修正及び形態、及びそれらの組み合わせに関するものである。
特に、その発見により、慣用的改質装置では今まで不必要であった、低硫黄改質装置、好ましくは反応器壁、炉管及びその網のための抵抗性材料、例えば、ある種の合金及びステンレス鋼、アルミ化(aluminized)及びクロム化材料、及びある種のセラミックス材料の同定及び選択のための研究が行われるようになった。また、メッキ、クラッド、ペイント等として適用される他の特別な材料も効果的に抵抗性にすることができることが発見された。これらの材料には銅、錫、砒素、アンチモン、真鍮、鉛、ビスマス、クロム、それらの金属間化合物、それらの合金、同様にシリカ及び珪素系被覆が含まれる。本発明の好ましい一つの態様として、新規な抵抗性の錫含有ペイントが与えられる。
更に、上記発見により、必須のものとして、改質には新規なものである本質的に硫黄を含まない、好ましくは完全に硫黄を含まない炭素化防止及びコークス化防止剤として以下に言及する或る添加物を開発することになった。そのような添加物には、有機錫化合物、有機アンチモン化合物、有機ビスマス化合物、有機砒素化合物、及び有機鉛化合物が含まれる。
また、低硫黄改質に伴われる問題から、慣用的改質では今迄不必要であった或る工程修正及び形態の開発が行われた。これらには、或る温度制御法、反応器間の過熱水素の使用、一層頻繁な触媒再生、段階的加熱器及び管の使用、段階的温度領域の使用、過熱原料の使用、一層大きな直径の管及び(又は)一層大きな管速度の使用が含まれる。
【図面の簡単な説明】
上述の如く、第1A図は、約19年間使用した商業的改質器からの軟鋼炉管の内部(処理側)の一部分の顕微鏡写真であり、
第1B図は、同じく上述した如く、低硫黄/低含水試験プラントの反応器内部に13週間だけ入れた軟鋼試料片の一部の顕微鏡写真である。
第2図は本発明で使用するのに適した改質反応器装置の概略図である。
好ましい態様についての詳細な記述
ここで用いられる冶金学的用語は、「金属ハンドブック」(THE METALS HANDBOOK)(American Society of Metals)に記載されているようなそれらの一般的冶金学的意味を有するものである。例えば、「炭素鋼」とは、どのような合金用元素(一般に許容されている量のマンガン、珪素及び銅以外)について特定化された最少量をもたず、炭素、珪素、マンガン、銅、硫黄、及び燐以外のいかなる元素でも単に付随的な量でしか含まない鋼のことである。「軟鋼」は、最大約0.25%の炭素を含む炭素鋼のことである。合金鋼は、特定の量の合金用元素(炭素及び、一般に許容される量のマンガン、銅、珪素、硫黄及び燐以外)を構造合金鋼として認められた範囲内で、機械的又は物理的性質を変化させるために添加されて含有する鋼のことである。合金鋼は10%未満のクロムを含むであろう。ステンレス鋼は、原則的合金用元素として少なくとも10%、好ましくは12〜30%のクロムを含有する数種類の鋼のいずれでもよい。
従って、一般に、本発明の一つの目的は、アルカリ又はアルカリ土類金属を含み、硫黄感応性の第VIII族金属を一種類以上を付与した改質触媒、特に大気孔ゼオライト触媒を用いて、低硫黄条件下で炭化水素を改質する改良された方法を与えることである。勿論そのような方法は、慣用的低硫黄改質法よりも炭素化に対し一層大きな抵抗性を示すものでなければならない。
本発明が取り組む問題の一つの解決方法は、前述の硫黄感応性大気孔ゼオライト触媒の如き改質触媒を低硫黄条件下で用いて、改質中の炭素化及び金属顆粒化に対する抵抗性を改良するための種々の手段の一つ以上を含む新規な反応器装置を与えることである。
ここで用いる「反応器装置(reactor system)」とは、少なくとも一つの改質反応器及びそれに相当する炉機構及び配管を含むものとする。第2図は、本発明を実施するのに適した典型的な改質反応器装置を例示している。それは複数の改質反応器(10)、(20)及び(30)を含んでいてもよい。各反応器は触媒床を含んでいる。その装置は複数の炉(11)、(21)及び(31);熱交換器(12);及び分離器(13)も含んでいる。
本発明に伴われる研究によって、低硫黄改質についての上記問題は、処理中の炭化水素と接触する適当な反応器装置材料を選択することにより効果的に対処できることが発見された。典型的には、改質反応器装置は軟鋼又は典型的なクロム鋼の如き合金鋼から作られており、余り炭素化や顆粒化は起こさなかった。例えば、標準的改質条件では21/4 Cr炉管を20年間持続することができる。しかし、これらの鋼は低硫黄改質条件では不適切になることが判明した。それらは約1年以内で炭素化により急速に脆くなる。例えば、21/2 Cr 1 Mo鋼は1mm/年より速く炭素化し脆くなることが判明している。
更に、標準的冶金学的実施法ではコークス化及び炭素化に対し抵抗性があると考えられている材料は、必ずしも低硫黄改質条件下では抵抗性にはならないことが判明している。例えば、インコロイ(Incoloy)800及び525;インコネル(Inconel)600;マーセル(Marcel)及びヘイネス(Haynes)230の如きニッケルに富む合金は、過度のコークス化及び顆粒化を示すので許容出来ない。
しかし、300系列のステンレス鋼、好ましくは304、316、321及び347は、本発明による反応器装置の少なくとも炭化水素と接触する部分の材料としては許容出来る。それらは軟鋼及びニッケルに富む合金よりも大きな炭素化抵抗を有することが見出されている。
最初は、アロン・コーポレーション(Allon Corp.)から販売されているようなアルミ化材料〔「アロン化鋼」(Alonized Steel)〕は、本発明の改質反応器装置及び方法で炭素化に対する適切な保護は与えないであろうと考えられた。しかし、その後、改質反応器装置の金属表面に薄いアルミニウム又はアルミナの皮膜を適用するか、又は単に製造中にアロン化鋼を使用することにより、低硫黄改質条件下で炭素化及び金属顆粒化に対し充分抵抗性のある表面を与えることができることが発見された。しかし、そのような材料は比較的高価であり、炭素化及び金属顆粒化に対し抵抗性を有するが、亀裂を生ずる傾向があり、抗張力の実質的な減少を示す。亀裂は下の基礎金属を露出し、低硫黄改質条件下で炭素化及び金属顆粒化を受け易くする。
アルミ化材料はエチレン水蒸気クラッキング法での炭素化を防ぐために用いられてきたが、そのような方法は改質よりもかなり高い温度、炭素化が起きると予想される温度で操作される。単なる炭素化及び金属顆粒化は、従来の改質法では問題にはなっていなかった。
従って、炭素化及び金属顆粒化の問題に対する別の解決法は、反応器装置内の金属表面の少なくとも一部分として、薄いアルミニウム又はアルミナ皮膜を適用するか、又はアルミ化材料を用いることを含んでいる。実際、炭素化及び金属顆粒化を特に受け易い金属表面は、そのようなやり方で与えることができる。そのような金属表面には、反応器壁、炉管、及び炉裏打が含まれるが、それらに限定されるものではない。
アルミニウム又はアルミナ膜を適用する場合、改質中に起きる熱衝撃及び温度サイクルの繰り返しに耐えることができるように、それが適用される金属表面(例えば、軟鋼)の熱膨張係数と同様な熱膨張係数を持つのが好ましい。これによって、下の金属表面を炭素化誘発炭化水素環境に曝すことになる皮膜の亀裂又は剥離が防止される。
更に、皮膜は、改質反応器装置の製造で慣用的に用いられている金属の熱伝導度と同様か又はそれを超える熱伝導度を持つべきである。更に、アルミニウム又はアルミナ膜は、改質環境、又は触媒再生に伴われる酸化性環境内で劣化せず、反応器装置内の炭化水素の分解をもたらすものであってはならない。
軟鋼の如き金属表面にアルミニウム又はアルミナ膜を適用するのに適した方法には、よく知られた付着方法が含まれる。好ましい方法には、ペンシルバニア州テリタウンのアロン・プロセシング社(Alon Processing, Inc.)により商業化されている「アロン化」法の如き粉末及び蒸気拡散法が含まれる。
本質的には、「アロン化」は、例えば商業級軟鋼の如き処理される金属の表面中にアルミニウムを合金化する高温拡散法である。この方法では、金属(例えば、軟鋼)をレトルト内に入れ、混合アルミニウム粉末の混合物で取り囲む。次にそのレトルトを機密に密封し、雰囲気制御炉中に入れる。上昇させた温度でアルミニウムは処理される金属中に深く拡散し、合金を生ずる。炉を冷却した後、基体をレトルトから取り出し、過剰の粉末を除去する。次に、直線化、トリミング、面取り、及び他の二次的操作を、必要に応じ行うことができる。この方法により、処理された(アロン化された)金属を、本発明による低硫黄改質条件下での炭素化及び金属顆粒化に対し抵抗性のあるものにすることができる。
低硫黄改質条件下での炭素化及び金属類粒化に対し、表面を抵抗性のあるものにするため、反応器装置の金属表面に薄いクロム又は酸化クロムの膜を適用することもできる。アルミナ及びアルミニウム膜及びアルミ化材料を使用するのと同様に、クロム又は酸化クロム被覆金属表面は、低硫黄改質条件下での炭素化問題に対処するために用いられることはなかった。
クロム又は酸化クロムも、反応器壁、炉裏打、及び炉管の如き炭素化及び金属顆粒化を受け易い金属表面に適用することができる。しかし、低硫黄改質条件下で炭素化及び金属顆粒化の徴候を示す装置中のどの表面でも、クロム又は酸化クロムの薄膜を適用することにより利点を得るであろう。
クロム又は酸化クロムの膜を適用する場合、そのクロム又は酸化クロム膜は、それが適用される金属の熱膨張係数と同様な熱膨張係数を有するのが好ましい。更に、クロム又は酸化クロム膜は、改質中に一般に起きる熱衝撃及び温度サイクルの反復に耐えることができるべきである。これにより、下の金属表面を炭素化誘発環境に潜在的に曝すことになるクロム又は酸化クロム膜の亀裂又は剥離を防ぐことができる。更に、クロム又は酸化クロム膜は、効率的な熱移動を維持できるように、改質反応器装置で慣用的に用いられている材料(特に軟鋼)と同様又はそれを超える熱伝導度を持つべきである。クロム又は酸化クロム膜も、改質環境又は触媒再生に伴われる酸化性環境中で劣化すべきではなく、反応器装置内の炭化水素の分解を誘発すべきではない。
例えば、軟鋼の如き表面にクロム又は酸化クロム膜を適用するのに適した方法には、よく知られた付着方法が含まれる。好ましい方法には、デラウェア州ウィルミントンのアロイ・サーフェシズ社(Alloy Surfaces, Inc.)により商業化されている「クロム化」法の如き粉末パック及び蒸気拡散法が含まれる。
「クロム化」法は、本質的にクロムを金属表面に適用する蒸気拡散法(上記「アロン化法」と同様)である。その方法は、被覆すべき金属をクロムの粉末と接触させ、次に熱拡散工程を行うことを含んでいる。これによって処理された金属とクロムとの合金を実際に生じ、表面を低硫黄改質条件下での炭素化及び金属顆粒化に対して極めて抵抗性のものにする。
反応器装置の或る領域では、改質中、局部的温度が過度に高くなることがある(例えば、900〜1250°F)。これは特に炉管及び触媒床中で、通常発生するコークスボール内での発熱脱メタン化反応が起き、局部的高温領域を生ずる場合である。軟鋼及びニッケルに富む合金の方が依然として好ましいが、300系列のステンレス鋼は、約1000°Fで幾らかのコークス化及び顆粒化を示す。従って、300系列のステンレス鋼は、有用であるが、本発明で用いるのに最も好ましい材料ではない。
446及び430の如きクロムに富むステンレス鋼は、300系列のステンレス鋼よりも大きな炭素化に対する抵抗性を有する。しかし、これらの鋼は耐熱性については望ましいものではない(それらは脆くなる傾向がある)。
本発明で用いられる300系列のステンレス鋼よりも好ましい抵抗性材料には、銅、錫、砒素、アンチモン、ビスマス、クロム、及び真鍮、及びそれらの金属間化合物及び合金〔例えば、Cu-Sn合金、Cu-Sb合金、錫化物(stannide)、アンチモン化物(antimonide)、ビスマス化物(bismuthide)等〕が含まれる。鋼及びこれらの金属を含むニッケルに富む合金でさえも、炭素化の減少を示すことができる。好ましい態様として、これらの材料はメッキ、クラッド、ペイント(例えば、酸化物ペイント)、又は他の被覆として基礎構造材料に与えられる。これは特に有利である。なぜなら、軟鋼の如き慣用的構造材料は、依然として処理炭化水素と表面だけが接触するようにし使用することができるからである。これらの中で錫が特に好ましい。なぜなら、それは表面と反応して優れた高温炭素化抵抗を有し、被覆の剥離及び薄片化を起こしにくい被覆を与えるからである。また、錫含有層は1/10μ位の薄いものでもよく、それでも炭素化を防ぐことができると考えられている。
実際的には、それらの抵抗性材料はペイント状の配合物(以下「ペイント」と呼ぶ)として、新しい又は現存する反応器装置に適用するのが好ましい。そのようなペイントは軟鋼又はステンレス鋼の如き反応器装置表面に噴霧、刷毛塗り、注型等により適用することができる。そのようなペイントは、還元雰囲気中で加熱すると還元されて反応性錫になり、金属錫化物(例えば、錫化鉄及びニッケル/鉄錫化物)を形成する分解可能な反応性錫含有ペイントであるのが最も好ましい。
前述のペイントは少なくとも4種類の成分(又はそれらの機能的同等物)を含むのが最も好ましい;(i)水素分解性錫化合物、(ii)溶媒系、(iii)微粉砕錫金属、及び(iv)還元性スポンジ/分散/結合剤としての酸化錫。ペイントは沈降をできるだけ少なくするため微粉砕した固体を含むべきであり、反応器装置の表面と反応性錫との反応を妨げるような非反応性材料を含むべきではない。
水素分解性錫化合物として、オクタン酸錫が特に有用である。この化合物自体の商業的配合物を入手することができ、鋼表面上で部分的に乾燥すると、殆どチューインガム状の層になる。その層は亀裂及び(又は)分裂したりしない。この性質は、本発明で用いられるどのような被覆組成物にとっても必要である。なぜなら、被覆された材料は水素で処理される前に数カ月間保存されると考えられるからである。また、部品を組立る前に被覆した場合、それらは組立中欠けにくいものでなければならない。上述の如く、オクタン酸錫は市販されている。それは適切な値段を持ち、円滑に分解して反応性錫層になり、それは600°F位の低い温度で水素中で錫化鉄を形成する。
しかし、オクタン酸はペイント中単独では用いるべきではない。それは粘稠性が不充分である。そこから溶媒を蒸発しても、残りの液体は滴り落ち、被覆表面状で流れる。実際には、例えば、水平な炉管を被覆するためにそのようなものを用いた場合、管の底に溜まるであろう。
成分(iv)、酸化錫スポンジ/分散/結合剤は、多孔質錫含有化合物であり、それは有機金属錫化合物を吸収することができ、然も、依然として還元雰囲気中で還元されて活性錫になることができる。更に、酸化錫はコロイドミルによって処理し、急速には沈降しにくい非常に細かな粒子を生ずることができる。酸化錫の添加により、乾いた感触になって流動しにくくなるペイントを与える。
典型的なペイント濃化剤とは異なって、成分(iv)は、還元した時被覆の反応性部分になるように選択される。それは、処理後に非反応性表面被覆を残す典型的なペイント濃化剤である形成シリカのように不活性なものではない。
微粉砕錫金属、成分(iii)は、金属錫が被覆すべき表面と、非還元性雰囲気中でさえもできるだけ低い温度で反応するのに利用できるように添加される。錫の粒径は1〜5μであるのが好ましく、それによって、被覆すべき表面を錫金属で極めて良く覆うことができる。ペイントの乾燥及びパイプ接合部の溶接中に非還元性状態が生ずることがある。金属錫の存在により、被覆の一部分が完全には還元されていない時でも、錫金属が存在して反応し、希望の錫化物層を形成するのが確実になる。
溶媒は非毒性で希望に応じ、ペイントを噴霧可能で、広げることができるようにするのに有効であるのがよい。それはまた迅速に蒸発し、水素分解性錫化合物と両立できる溶媒性をもつべきである。イソプロピルアルコールが最も好ましいが、もし必要ならば、ヘキサン及びペンタンを用いることができる。しかし、アセトンは有機錫化合物を沈殿させる傾向がある。
一つの態様として、20%の錫テン・セム(Ten-Cem)(オクタン酸中にオクタン酸第一錫を入れたもの)、第二酸化錫、錫金属粉末及びイソプロピルアルコールの錫ペイントを用いることができる。
錫ペイントは多くの方法で適用することができる。例えば、反応器装置の炉管を個々に又はモジュール(module)として塗布することができる。本発明による改質反応器装置は、適当な幅、長さ及び高さ(例えば、約10フィートの長さ、約4フィートの幅、及び約40フィートの高さ)の種々の数の炉管モジュール(例えば、約24本の炉管モジュール)を含むことができる。典型的には、各モジュールは、適当な直径、好ましくは約2フィートの直径の二つのヘッダーを含み、それらを適当な長さ(例えば、約42フィートの長さ)の約4本〜10本のu字管によって結合する。従って、モジュール中の塗布すべき全表面積は非常に広く変化し、例えば、一つの態様として、それは約16,500ft2になることがある。
管を個々に塗布するよりもモジュールとして塗布する方が少なくとも4つの点で有利である;(i)個々の管よりもモジュールを塗布することにより、錫ペイントの熱破壊を回避することができる。なぜならモジュールの構成部材が製造中極端に上昇した温度で通常熱処理されるからである、;(ii)モジュールを塗布することは、管を個々に塗布するよりも一層速く、一層安価になり安い;(iii)モジュールを塗布することは、製造スケジュールを立てる際に一層効率的になる;及び(iv)モジュールの塗布は溶接部の塗布を可能にする。
しかし、モジュールを塗布することによっては、管を個々に塗布した場合のように管を完全にペイントで被覆することはできない。もし被覆が不充分ならば、管を個々に被覆することができる。
ペイントは管及びヘッダー中に噴霧するのが好ましい。管及びヘッダーを完全に被覆するのに充分なペイントを適用すべきである。モジュールを噴霧した後、約24時間それを放置して乾燥し、次に加熱窒素のゆっくりした流れを適用するのがよい(例えば、約150°Fで約24時間)。然る後、第二のペイント被覆を適用し、上述の手順によって同じく乾燥するのが好ましい。ペイントを適用した後、モジュールを僅かな窒素圧の下に維持するのが好ましく、設置する前に約200°Fを超える温度に曝すべきではなく、水添試験中を除き、それらを水に曝すべきではない。
鉄含有反応性ペイントも本発明で有用である。そのような鉄含有反応性ペイントは、Fe/Snが重量で1/3までの量で鉄が添加された種々の錫化合物を含むのが好ましいであろう。
例えば、鉄の添加はFe23の形で行うことができる。鉄を錫含有ペイントに添加することにより顕著な利点が与えられる;特に、(i)それは鉄錫化物を形成するペイントの反応を促進し、それによってフラックスとして働く;(ii)それは錫化物層中のニッケル濃度を希釈し、それによってコークス化に対する一層よい保護を与える;及び(iii)それは、下の表面が充分反応しない場合でも、鉄錫化物のコークス化防止保護を与えるペイントを与える結果になる。
低硫黄反応器装置中での炭素化、コークス化、金属顆粒化を防ぐための更に別の手段は、反応器装置に含まれるクロムに富む鋼に金属被覆又はクラッドを適用することからなる。これらの金属被覆又はクラッドは、錫、アンチモン、ビスマス又は砒素からなっていてもよい。錫が特に好ましい。これらの被覆又はクラッドは、電着、蒸着、及びクロムに富む鋼の溶融金属浴中への浸漬を含めた方法により適用することができる。
炭素化、コークス化、及び金属顆粒化が特に問題になる改質反応器装置中では、クロムに富むニッケル含有鋼を錫層で被覆することにより実際には二重保護層を生ずることが見出されている。それにより炭素化、コークス化及び金属顆粒化を起こしにくいクロムに富む内部層及び同じく炭素化、コークス化、及び金属顆粒化を起こしにくい外側錫層をもたらす。これが起きるのは、クロムに富む錫被覆鋼を典型的な改質温度、例えば、約1200°Fに曝した時、それが鋼と反応し、鉄ニッケル錫化物を形成するからである。それによってニッケルは鋼の表面から優先的に浸出し、クロムに富む鋼の層を残す。或る場合にはステンレス鋼から鉄ニッケル錫化物層を除去し、クロムに富む鋼層を露出することが望ましいことがある。
例えば、錫クラッドを304級ステンレス鋼に適用し、約1200°Fで加熱すると、約17%のクロムを含み、実質的にニッケルを含まない、430級ステンレス鋼に匹敵する、クロムに富む鋼層が得られる結果になることが判明している。
錫金属被覆又はクラッドをクロムに富む鋼に適用する場合、炭素化、コークス化、金属霧粒化に対する希望の抵抗性を達成するように金属被覆又はクラッドの厚さを変えることが望ましいであろう。これは、例えば、クロムに富む鋼を溶融錫浴中に浸漬する時間の長さを調節することにより行うことができる。このことによっても、得られるクロムに富む鋼層の厚さに影響を与えるであろう。生成するクロムに富む鋼層中のクロム濃度を調節するため、被覆されるクロムに富む鋼の組成を変化させるか、又は操作温度を変えることも望ましいであろう。
更に、錫被覆鋼を、薄い酸化物被覆、好ましくはCr23の如き酸化クロムを適用することを含めた後処理工程により、炭素化、金属顆粒化、及びコークス化から更に保護することができることが判明している。この被覆は数μm位の薄さの薄いものであろう。そのような酸化クロムの適用は、低硫黄改質条件下でのアロン化鋼の如き錫と同様アルミニウムを被覆した鋼を保護するであろう。
酸化クロム層は次のものを含めた種々の方法により適用することができる;クロム酸塩又は重クロム酸塩ペイントを適用し、次に還元工程を行う方法;有機クロム化合物による蒸気処理;又はクロム金属メッキを適用した後、得られたクロムメッキ鋼を酸化する方法。
実質的な時間、低硫黄改質条件にかけた錫電着鋼を調べると、酸化クロム層が錫化物層の表面上又は錫化物層の下に形成されている場合、その酸化クロム層は錫化物層の劣化を起こさないが、鋼を炭素化、コークス化、及び金属顆粒化に対し一層抵抗性のあるものにするように見えることが分かった。従って、錫又はアルミニウム被覆鋼に酸化クロム層を適用すると、低硫黄改質条件下での炭素化及びコークス化に対し一層抵抗性のある鋼を与える結果になる。この後処理工程は、長い間低硫黄改質条件に曝された後、修復を必要とする錫又はアルミニウム被覆鋼を処理するために特に適用されものである。
現在の低硫黄改質条件下で炭素化に対し抵抗性のあるアルミ化、例えば、「アロン化」された鋼は、そのアルミニウム被覆鋼を錫の被覆で後処理することにより更に抵抗性のあるものにすることができることが更に判明した。このことは一層炭素化しにくい鋼を与える結果になる。なぜなら、アルミニウム被覆と錫被覆との両方から炭素化抵抗の累積的効果が得られるからである。この後処理は、アルミニウム、例えば、アロン化被覆の欠陥或は亀裂を修復することになる点で付加的利点を与える。また、そのような後処理は、一層低いコストを与えることになるであろう。なぜなら、錫被覆で後処理される鋼表面には一層薄いアルミニウム被覆を適用すればよいからである。更に、この後処理は、アルミニウム層に亀裂を生じ、改質条件下で誘発される炭素化に鋼を曝すことになるアルミ化鋼の屈曲により露出された下の鋼層を保護することになるであろう。また、この後処理工程は、処理された鋼表面上でのコークス形成を防ぎ、アルミ化されているが更に錫では被覆されていない鋼に現れる亀裂の奥で起きるコークス形成を防ぐことにもなる。
一方の側に錫を塗布したアロン化鋼の試料は、低硫黄改質条件下で未処理側だけに黒色のコークス付着物を示すことが見出されている。アルミ化表面上に形成されたコークスは、酸性アルミナ部位上の亀裂から生じた良質のコークスである。それは付加的コークスの付着を誘発することができない。従って、アルミ化鋼に錫被覆を適用する後処理は、本発明による改質条件下で操作される反応器装置で起きる炭素化、コークス化及び金属顆粒化の問題を更に小さくすることができる。
理論によって拘束されたくはないが、本発明の種々の材料の安定性は、それらの炭素化雰囲気に対する応答性に従って選択及び分類できると考えられている。例えば、鉄、コバルト及びニッケルは、後で炭素化、コークス化、及び顆粒化する比較的不安定な炭化物を形成する。クロム、ニオブ、バナジウム、タングステン、モリブデン、タンタル及びジルコニウムの如き元素は、炭素化、コークス化及び顆粒化に対し一層抵抗性のある安定な炭化物を形成する。錫、アンチモン及びビスマスの如き元素は、炭化物或はコークスを形成しない。そしてこれらの化合物は、鉄、ニッケル及び銅の如き多くの金属と改質条件下で安定な化合物を形成することがある。錫化物、アンチモン化物、ビスマス化物、及び鉛、水銀、砒素、ゲルマニウム、インジウム、テルル、セレン、タリウム、硫黄及び酸素の化合物も抵抗性がある。材料の最後の範疇には、銀、銅、金、白金の如き元素、及びシリカ及びアルミナの如き耐火性酸化物が含まれる。これらの材料は抵抗性を持ち、炭化物を形成せず、改質条件下で炭素化雰囲気中で他の金属と反応しない。
上で述べたように、炭素化及び金属顆粒化に対し抵抗性のある適当な金属の選択、及び反応器装置の金属表面のための被覆材料としてそれらを用いることは、炭素化及び金属顆粒化問題を防ぐ一つの手段である。しかし、炭素化及び金属顆粒化は、極めて多種類の金属で広く起きることであり、炭素化しにくい金属は、改質反応器装置の製造で用いられている慣用的材料(例えば、軟鋼)よりも値段が高く或は特殊なものである。従って、本発明の反応器装置に、典型的な改質条件下で炭化物を形成せず、従って炭素化を受けにくいセラミック材料を反応器装置の金属表面の少なくとも一部分に対して用いるのが望ましい。例えば、炉管、炉裏打、又はそれらの両方の少なくとも一部分をセラミック材料で作ることができる。
本発明で用いるためのセラミック材料を選択する場合、そのセラミック材料が改質反応器装置の製造で慣用的に用いられている材料の熱伝導率又はそれより大きな熱伝導率を有するのが好ましい。更に、セラミック材料は、改質反応器装置内で起きる温度で充分な構造強度を持つべきである。更に、セラミック材料は反応器装置の操作中に起きる熱衝撃及び温度サイクルの反復に耐えることができるべきである。セラミック材料を炉裏打の製造に用いた場合、そのセラミック材料は、その裏打が密接に接触する金属外側表面の熱膨張係数とほぼ同じ熱膨張係数を持つべきである。これによって開始及び停止中に起きる温度サイクル中に接合部で起きる異常な応力を防ぐことができる。更に、セラミック表面は触媒再生中に起きる炭化水素環境又は酸化性環境中での劣化を受けないのがよい。選択されたセラミック材料は反応器装置内の炭化水素の劣化を促進すべきではない。
適当なセラミック材料には、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素及び、窒化アルミニウムの如き材料が含まれるが、それらに限定されるものではない。それらの中で炭化珪素及び窒化珪素が特に好ましい。なぜなら、それらは低硫黄改質条件下で反応器装置に対する完全な保護を与えることができるように見えるからである。
反応器装置の金属表面の少なくとも一部分を、珪素、又はシリカの膜で被覆することもできる。特に、被覆することができる金属表面には、反応器壁、炉管、炉裏打が含まれるが、それらに限定されるものではない。しかし、低硫黄改質条件下で炭素化及び金属顆粒化の徴候を示す反応器装置の金属表面は、珪素又はシリカの薄膜を適用することにより利点を得ることになるであろう。
珪素又はシリカ膜を金属表面に適用してそれを被覆するためには慣用的方法を用いることができる。シリカ又は珪素は、水蒸気キャリヤーガス中に入れたアルコキシシランの化学蒸着及び電着により適用することができる。珪素又はシリカの膜は、それが被覆される金属表面の熱膨張係数とほぼ同じ熱膨張係数を持つのが好ましい。更に、珪素又はシリカ膜は改質中に起きる熱衝撃及び温度サイクルの反復に耐えることができるべきである。これによって珪素又はシリカ膜の亀裂又は剥離を防ぎ、炭素化誘発炭化水素環境に対する下の金属表面の潜在的露出を防ぐ。また、シリカ或は珪素膜は、充分な熱移動を維持できるように、改質反応器装置で慣用的に用いられる金属の熱伝導度にほぼ等しいか又はそれより大きい熱伝導度を持つべきである。珪素又はシリカ膜は、改質環境又は触媒再生に伴われる酸化性環境中で劣化すべきではなく、それは炭化水素自身の分解も起こすべきではない。
本発明の反応器装置の異なった領域(例えば、炉中の異なった領域)は広い範囲の温度に曝されることがあるので、材料の選択は、装置中の最も高い温度を受ける領域には炭素化抵抗の一層大きな材料を用いるように段階的にしてもよい。
材料の選択に関し、鉄、ニッケル及びコバルトの如き第VIII族金属の酸化された表面は、それらの酸化されていないものよりもコークス化及び炭素化に対して一層活性であることが発見されている。例えば、347ステンレス鋼の空気焙焼試料は同じ鋼の酸化されていない試料よりも著しく活性であることが見出されている。このことは、非常に微細な粒子の鉄及び(又は)ニッケル金属を生ずる酸化鋼の再還元によるものと考えられる。そのような金属は特に炭素化及びコークス化に対して活性である。従って、接触改質で典型的に用いられている材料のようなそれら材料は、酸化性再生工程中できるだけ使用しないようにするのが望ましい。しかし、錫で被覆した300系列のステンレス鋼を空気焙焼したものは、同じ錫被覆をした300系列のステンレス鋼の未焙焼試料と同様なコークス化及び炭素化に対する抵抗性を与えることができることが判明している。
更に、触媒の硫黄に対する官能性が問題にならず、硫黄が金属表面を不動化するために用いられる装置では酸化が問題になることが認められている。もしそのような系での硫黄水準が不充分になると、金属表面上に形成されていた金属硫化物は、酸化及び還元後、微細な粒子の金属に還元される。この金属はコークス化及び炭素化に対し極めて反応性である。潜在的にこのことが冶金の破滅的失敗、或は大部分のコークス化問題を起こすことになる。
上で述べたように、コークスボール内の発熱脱メタン化反応が局部的高熱領域を生じた場合、過度に高い温度が触媒床中に生ずる。これらの高熱点も、慣用的改質反応器装置(同様に化学的及び石油化学的処理の他の領域)での問題を生ずる。
例えば、改質器の中心パイプ網は、局部的に老廃して穴が空き、最終的に触媒の移動を起こす結果になることが観察されている。慣用的改質方法では、コークスボール内での形成及び燃焼中の温度は、明らかにコークス化、炭素化、及び顆粒化を無力にする工程硫黄の能力を越えるのに充分な高い温度になる。従って、金属網(screen)は、再生中の粒子間酸化(一種の腐食)により炭素化し一層消耗を受け易くなる。網目は大きくなり、穴があく。
本発明の教示は、慣用的改質と同様、化学的及び石油化学的処理の別の領域にも適用することができる。例えば、前述のメッキ、クラッディング及び被覆を、中心パイプ網の製造で用い、過度の穴の発生及び触媒移動を防ぐようにすることができる。更に、それらの教示は、炭素化、コークス化、及び金属顆粒化を受ける。コークス炉中の炉管の如きどのような炉管にも適用することができる。
更に、ここに記載した技術は、過度に高い温度での炭素化、コークス化、及び金属顆粒化を制御するのに用いることができるので、それらは約1400〜約1700°Fで作動するクラッキング炉で用いることができる。例えば、これらの温度で作動するクラッキング炉中で起きる鋼の劣化を種々の金属被覆を適用することにより制御することができる。これらの金属被覆は溶融、電着、及び塗布によって適用することができる。塗布は特に好ましい。
例えば、鉄含有鋼に適用したアンチモンの被覆は、これらの鋼を、記載したクラッキング条件下での炭素化、コークス化、及び金属顆粒化から保護する。実際、鉄含有鋼に適用したアンチモンペイントは、1600°Fでの炭素化、コークス化、金属顆粒化に対する保護を与える。
ニッケルに富む鋼合金(例えば、インコネル600)に適用したビスマスの被覆は、クラッキング条件下での炭素化、コークス化、金属顆粒化に対しこれらの鋼を保護することができる。このことは1600°Fまでの温度で例示されている。
ビスマスの被覆も鉄含有鋼に適用し、クラッキング条件下での炭素化、金属顆粒化及びコークス化に対する保護を与えることができる。また、ビスマス、アンチモン及び(又は)錫の組合せからなる金属被覆を用いることができる。
再び低硫黄改質を見て、本発明により発見された問題に対処するため別の方法を用いることもできる。それらは、反応器装置のための適当な材料選択と共に用いることもでき、或はそれらを単独で用いることもできる。それら別の技術の中で好ましいのは、改質工程中に硫黄でない炭素化防止及びコークス化防止剤(一種又は多種)を添加することである。これらの薬剤は処理中連続的に添加してもよく、炭化水素と接触する反応器装置の表面と相互作用する働きをし、或はそれらは反応器装置に前処理として適用してもよい。
理論によって拘束はされたくはないが、これらの薬剤は分解によって反応器装置の表面と相互作用し、表面を侵食して錫化物、アンチモン化物、ビスマス化物、鉛化物(plumbide)、砒素化物等の如き鉄及び(又は)ニッケル金属間化合物を形成すると考えられている。そのような金属間化合物は、炭素化、コークス化、及び顆粒化に対し抵抗性を持ち、下の冶金部を保護することができる。
金属間化合物も、金属を不動化するのにH2Sを用いた装置中で形成される金属硫化物よりも一層安定であると考えられる。これらの化合物は、金属硫化物のように水素によって還元されることはない。その結果、それらは金属硫化物よりも装置から出にくい。従って、供給物と一緒に行われる炭素化防止剤の連続的添加を最小にすることができる。
好ましい非硫黄炭素化防止及びコークス化防止剤には、有機錫化合物、有機アンチモン化合物、有機ビスマス化合物、有機砒素化合物、及び有機鉛化合物の如き有機金属化合物が含まれる。適当な有機鉛化合物には、テトラエチル鉛及びテトラメチル鉛が含まれる。テトラブチル錫及びトリメチル錫水素化物の如き有機錫化合物が特に好ましい。
その他の特定の有機金属化合物には、ネオデカン酸ビスマス、クロムオクトエート(octoate)、ナフテン酸銅、カルボン酸マンガン、ネオデカン酸パラジウム、ネオデカン酸銀、テトラブチルゲルマニウム、トリブチルアンチモン、トリフェニルアンチモン、トリフェニルアルシン、及びジルコニウムオクトエートが含まれる。
これらの薬剤を反応器装置にどこでどのようにして添加するかは問題ではなく、主に特定の方法の設計特性に依存するであろう。例えば、それらは供給物と共に連続的に添加してもよく、或は不連続に添加してもよい。
しかし、それらの薬剤の供給物への添加は、反応器装置の最初の部分にそれらが蓄積する傾向があるので、好ましくない。これは、装置の他の領域での適切な保護を与えることにはならない。
それら薬剤は、製造前、開始前、或はその場で(即ち、現存する装置の場合)被覆として与えられるのが好ましい。もしその場で添加されるならば、触媒再生直後に行うのがよい。非常に薄い被覆を適用することができる。例えば、有機錫化合物を用いた場合は、0.1μ位の薄い鉄錫化物被覆でも有効であると考えられる。
現存する又は新しい反応器の表面、又は新しい又は現存する炉管上にそれら薬剤を被覆する好ましい方法は、約900°Fの温度で水素雰囲気中で有機金属化合物を分解する方法である。例えば、有機錫化合物の場合、これによって管表面に反応性金属錫が生成する。これらの温度ではその錫は更に表面金属と反応してそれを不動化する。
最適被覆温度は、特定の有機金属化合物に依存し、或は合金が望まれる場合にはそれら成分の混合物に依存するであろう。典型的には、過剰の有機金属被覆剤を、その被覆剤を霧状に装置全体に亙って運べるように、大きな水素流量で管中へパルス状に入れることができる。次にその流量を低下させ、被覆金属霧が炉管又は反応器表面を被覆し、それらと反応できるようにする。別法として、化合物を蒸気として導入し、それが還元雰囲気中で分解して管又は反応器の高熱壁と反応できるようにする。
上で述べた如く、炭素化、金属顆粒化、及びコークス化を受け易い改質反応器装置を、分解可能な有機金属錫化合物を含有する分解性被覆を、炭素化を最も受け易い反応器装置の領域に適用することにより処理することができる。そのような方法は、特に温度が制御された炉でうまく行われる。
しかし、そのような制御は必ずしも存在するものではない。反応器装置、特に炉管中で発生する「高熱点」が存在し、そこで有機金属化合物が分解して付着物を形成する。従って、本発明の別の態様は、温度が正確に制御できず、高温の高熱点の領域を示す改質反応器装置中でそのような付着を起こさない方法にある。
そのような方法は、反応器装置の全体を、水素ガスの高温流で750〜1150°F、好ましくは900〜1100°F、最も好ましくは約1050°Fの温度へ予熱することを含んでいる。予熱した後、気化した有機金属錫化合物及び水素ガスを含む、400〜800°F、好ましくは500〜700°F、最も好ましくは約550°Fの温度の冷たいガス流を予熱された反応器装置中に導入する。このガス混合物は上流に導入し、全反応器装置全体に亙って移動する分解「波(wave)」を与えることができる。
この方法は本質的に有効である。なぜなら、高温水素ガスが均一に加熱された表面を生じ、それが冷たい有機金属ガスを、それが反応器装置全体に亙って波として移動していく間に分解するからである。有機金属錫化合物を含有する冷たいガスは、高熱表面で分解し、その表面を被覆する。有機金属錫蒸気は、反応器装置の下流の一層熱い表面を処理する波として移動し続けるであろう。それによって、全反応器装置は有機金属錫化合物の均一な被覆を持つことができる。また、これら高−低温度サイクルを何回か行なって、全反応器装置が有機金属錫化合物で均一に被覆されるのを確実にすることが望ましいであろう。
本発明による改質反応器装置の操作では、ナフサが改質されて芳香族を形成する。ナフサ供給物は軽質炭化水素であり、好ましくは約70°F〜450°F、一層好ましくは約100〜350°Fの範囲で沸騰する炭化水素である。ナフサ供給物は脂肪族又はパラフィン系炭化水素を含んでいるであろう。これらの脂肪族は改質反応領域内で少なくとも部分的に転化して芳香族になる。
本発明の「低硫黄」系では、供給物の硫黄含有量は、好ましくは100ppb未満、一層好ましくは50ppb未満になるであろう。もし必要ならば、硫黄洗浄装置を用いて僅かに過剰の硫黄を除去することができる。
好ましい改質工程条件には、700〜1050°F、一層好ましくは850〜1025°Fの温度;及び0〜400psig、一層好ましくは15〜150psigの圧力;0.1〜20、一層好ましく0.5〜10の、改質反応領域への供給物に対する水素対炭化水素モル比を生ずるのに充分な再循環水素速度;及び0.1〜10、一層好ましくは0.5〜5の、改質触媒上への炭化水素供給物についての液体空間時速が含まれる。
適当な改質器温度を達成するため、屡々炉管を高い温度に加熱することが必要である。これらの温度は屡々600〜1800°F、通常850〜1250°F、一層頻繁には900〜1200°Fの範囲になる。
上で述べた如く、低硫黄系での炭素化、コークス化、及び金属顆粒化の問題は、反応器装置の過度に高い局部的工程温度に伴われたものであることが判明しており、特に高い温度が特徴である装置の炉管で特に顕著になる。高水準の硫黄が存在する慣用的改質法では、操作の終わりで1175°Fまでの炉管表面温度になるのが典型的である。しかし、過度の炭素化、コークス化、及び金属顆粒化は観察されていない。しかし、低硫黄系では、950°Fより高い温度のCrMo鋼及び1025°Fより高い温度でのステンレス鋼で、迅速で過度の炭素化、コークス化、及び金属顆粒化が起きることが発見されている。
従って、本発明の別の態様は、改質装置の炉管、移送配管及び(又は)反応器内部の金属表面の温度を、上述の水準より低く低下することである。例えば、温度は反応器装置内の種々の場所に取付けた熱電対を用いて検出監視することができる。炉管の場合、熱電対はその外側の壁、好ましくは炉の最も高温の点(通常炉の出口近く)の所に取付けることができる。必要ならば、処理操作中の調節は、温度を希望の水準に維持するために行うことができる。
同様に装置表面が望ましくない高温に露出されるのを少なくする別の方法が存在する。例えば、温度が通常最も高くなる最終段階で抵抗性(通常一層高価になる)管を用いた熱移動領域を使用することができる。
更に、過熱水素を、改質装置の反応器間に添加することができる。また、一層大きな触媒導入量を用いることができる。また、触媒を一層頻繁に再生してもよい。触媒再生の場合、それは、触媒を最終床から取り出し、再生し、第一床へ導入する移動床法を用いて最もよく達成することができる。
炭素化及び金属顆粒化は、本発明の低硫黄改質反応器装置で、或る他の新規な装置形態及び工程条件を用いて最も少なくすることができる。例えば、反応器装置は、段階的加熱器、及び(又は)管を用いて構成することができる。換言すれば、反応器装置内で最も極端な温度条件を受ける加熱器又は管は、改質反応器装置の製造で慣用的に用いられている材料よりも炭素化に対する抵抗性が一層大きな材料、上で述べたような材料から作ることができる。極端な温度にかけられることがない加熱器、又は管は、そのまま慣用的材料から作ってもよい。
反応器装置にそのような段階的設計を用いることにより、系の全体的コストを、低硫黄改質条件下で炭素化及び金属類粒化に対し充分抵抗性のある反応器装置を依然として与えながら、減少させることができる(なぜなら、炭素化抵抗性材料は一般に慣用的材料よりも値段が高いからである)。更に、このことは、現存する改質反応器装置を、それらが低硫黄操作条件下での炭素化及び金属顆粒化に対し抵抗性を持つようにして再適合化するのを促進するはずである。なぜなら、反応器装置の一層僅かな部分を段階的設計で置き換えるか、又は修正しさえすればよいからである。
反応器装置は、少なくとも二つの温度領域を用いて操作することができる。即ち、一層高い温度領域と、一層低い温度領域である。この方法は、金属顆粒化が最高及び最低温度を有し、それより上及び下では顆粒化が最も少なくなると言う観察に基づいている。従って、「一層高い」温度とは、それら温度が改質反応器装置で慣用的に用いられている温度より高く、顆粒化のための最高温度よりも高いことを意味している。「一層低い」温度とは、その温度が、改質工程が慣用的に行われる温度又はそれに近い所にあって、顆粒化が問題になる温度よりは低い所にあることを意味する。
異なった温度領域で反応器装置部分を操作することは、金属顆粒化を起こす温度にある反応器装置部分が少なくなるので、金属顆粒化を減少するはずである。また、そのような設計の別の利点には、その装置の或る部分の操作が一層高い温度で行われるため、熱移動効率及び装置規模減少能力が改良されることが含まれる。しかし、金属顆粒化を起こす水準より低い水準及び高い水準で反応器装置部分を操作することは、金属顆粒化が起きる温度範囲を小さくするだけで、完全に除けるわけではない。このことは避けられないことである。なぜなら、改質反応器装置の毎日の操作中に起きる温度変動のためであり、特に装置の停止及び開始時の変動、反復中の温度変動、及び反応器装置で工程流体が加熱される時に起きる温度変動が起きるためである。
金属顆粒化を最小にする別の方法は、過熱原料(例えば水素の如きもの)を用いて装置に熱を与え、それによって炉壁を通して炭化水素を加熱する必要性を最も少なくすることに関する。
更に別の工程設計法には、既に存在する改質反応器装置に一層大きな管直径及び(又は)一層大きな管速度を与えることが含まれる。一層大きな管直径及び(又は)一層大きな管速度を用いることにより、反応器装置中の加熱用表面の炭化水素への露出が最も少なくなる。
上で述べた如く、接触改質は石油化学でよく知られており、ナフサ留分を処理して芳香族の生成によりオクタン化を改良することを含んでいる。改質操作中に起きる一層重要な炭化水素反応には、シクロヘキサンから芳香族への脱水素化、アルキルシクロペンタンから芳香族への脱水素異性化、及び非環式炭化水素から芳香族への脱水素環化が含まれる。更に、数多くの他の反応器も起き、それらにはアルキルベンゼンの脱アルキル化、パラフィンの異性化、及び軽いガス状炭化水素、例えば、メタン、エタン、プロパン及びブタンを生ずる水添分解反応が含まれ、それら水添分解反応は、ガソリン沸点生成物及び水素の収率を減少させるので、改質中できるだけ少なくすべきである。従って、ここで用いる「改質」とは、芳香族に富む生成物(即ち、供給物中よりも芳香族含有量が多くなった生成物)を与えるために、一種類以上の芳香族生成反応を用いることによって炭化水素供給物を処理することを指す。
本発明は、主に接触改質に関するが、一般に低硫黄条件下で種々の炭化水素供給物から芳香族炭化水素を製造するのに有用であろう。即ち、接触改質とは典型的には、ナフサの転化を指すが、他の供給物を同様に芳香族に富む生成物を与えるように処理することができる。従って、ナフサの転化は好ましい態様であるが、本発明は、パラフィン炭化水素、オレフィン炭化水素、アセチレン炭化水素、環式パラフィン炭化水素、環式オレフィン炭化水素、及びそれらの混合物、特に飽和炭化水素の如き種々の供給原料の転化又は芳香族化に対しても有用である。
パラフィン炭化水素の例は、n-ヘキサン、メチルペンタン、n-ヘプタン、メチルヘキサン、ジメチルペンタン、及びn-オクタンの如き6〜10個の炭素原子を有するものである。アセチレン炭化水素の例は、ヘキシン、ヘプチン、及びオクチンの如き6〜10個の炭素原子を有するものである。非環式パラフィン炭化水素の例は、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、及びジメチルシクロヘキサンの如き6〜10個の炭素原子を有するものである。環式オレフィン炭化水素の典型的な例は、メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、及びジメチルシクロヘキセンの如き6〜10個の炭素原子を有するものである。
本発明は、種々の異なった改質触媒を用いた低硫黄条件下での改質にも有用である。そのような触媒には、耐火性無機酸化物上の第VIII族貴金属例えば、アルミナ上の白金、アルミナ上のPt/SN、及びアルミナ上のPt/Re;ゼオライト上の第VIII族貴金属、例えば、L−ゼオライト、ZSM−5、珪酸塩及びβの如きゼオライト上のPt、Pt/SN及びPt/Re;アルカリ及びアルカリ土類金属交換L−ゼオライト上の第VIII族貴金属が含まれるが、それらに限定されるものではない。
本発明の好ましい態様には、アルカリ又はアルカリ土類金属を含み、一種類以上の第VIII族金属が付加された大気孔ゼオライト触媒を使用することが含まれる。最も好ましいのは、そのような触媒をナフサ供給物を改質するのに用いた態様である。
用語「大気孔ゼオライト」は、一般に6〜15Åの有効気孔直径を有するゼオライトを指す。本発明で有用な好ましい大気孔結晶質ゼオライトには、L型ゼオライト、ゼオライトX、ゼオライトY及びフォージャサイトが含まれる。これらは7〜9Å程度の見かけの気孔孔径を有する。最も好ましいのは、ゼオライトで、L型ゼオライトである。
酸化物のモル比で表したL型ゼオライトの組成は、次の式で表すことができる:
(0.9-1.3)M2/nO:Al23(5.2-6.9)SiO2:yH2
上記式で、Mは陽イオンを表し、nはMの原子価を表し、yは0〜約9の値にすることができる。ゼオライトL、そのX線回折像、その性質、及びその製造方法は、例えば、米国特許第3,216,789号明細書(その内容は参考のためここに入れてある)に詳細に記載されている。結晶構造を変えなくても実際の式を変えることができる。例えば、珪素対アルミニウムのモル比(Si/Al)は1.0〜3.5の範囲で変えることができる。
酸化物のモル比で表したゼオライトYの化学式は次のように書くことができる:
(1.7-1.1)Na2O:Al23:xSiO2:yH2
上記式で、xは3より大きく約6までの値である。yは約9までの値である。ゼオライトYは、同定のために上記式と共に用いることができる特性粉末X線回折像を有する。ゼオライトYは米国特許第3,130,007号明細書(その内容は参考のためここに入れてある)に一層詳細に記載されている。
ゼオライトXは、次の式によって表すことができる合成結晶質ゼオライト分子篩である:
(1.7-1.1)M2/nO:Al23:(2.0-3.0)SiO2:yH2
上記式で、Mは金属、特にアルカリ及びアルカリ土類金属を示し、nはMの原子価であり、yはMの種類及び結晶質ゼオライトの水和度に依存して約8までの値を有する。ゼオライトX、そのX線回折像、その性質、及びその製造方法は、米国特許第2,882,244号明細書(その内容は参考のためここに入れてある)に詳細に記載されている。
大気孔ゼオライトには、アルカリ又はアルカリ土類金属が存在するのが好ましい。そのアルカリ土類金属は、バリウム、ストロンチウム又はカルシウムでもよいが、バリウムが好ましい。アルカリ土類金属は合成、含浸、又はイオン交換によりゼオライト中に配合することができる。バリウムは、幾らか酸性度の低い触媒を与える結果になるので、他のアルカリ土類金属よりも好ましい。強い酸性度は、亀裂を促進し、低い選択性をもたらすので、触媒には望ましくない。
別の態様として、アルカリ金属の少なくとも一部分を、ゼオライトで知られているイオン交換法を用いてバリウムと交換することができる。これは、過剰のBa++イオンを含有する溶液とゼオライトとを接触させることを含んでいる。この態様では、バリウムはゼオライトの重量で0.1%〜35%を構成するのが好ましい。
本発明で用いられる大気孔ゼオライト触媒は、一種類以上の第VIII族金属、例えば、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム又は白金が付加されている。好ましい第VIII族金属はイリジウム及び特に白金である。これらは脱水素環化に関して一層選択性であり、他の第VIII族金属よりも脱水素環化反応条件下で一層安定である。もし用いるならば、触媒中の白金の好ましい重量%は0.1%〜5%である。
第VII族金属は、合成、含浸、又は適当な塩の水溶液中での交換により大気孔ゼオライト中に導入される。二種類の第VIII族金属をゼオライト中に導入たい場合、操作は同時に又は連続的に行うことができる。
本発明を一層完全に理解できるように、本発明の或る態様を例示する実施例を次に記載する。しかし、本発明は、そこに記載する特定の条件に何等限定されるものではないことは理解されるべきである。
実施例1
改質反応器での炭素化に対する硫黄及び水の影響を示すための実験を行なった。
これらの試験では、長さ8in、外径1/4inの銅管を反応器として用いて、347ステンレス鋼ワイヤーの炭素化及び脆弱化を研究した。0.035inの直径を有する3本のこれらステンレス鋼ワイヤーを管中に挿入し、その管の4inの部分を炉により1250°Fの均一な温度に維持した。その系の圧力を50psigに維持した。ヘキサンを25μl/分(1.5ml/時)の流量で反応器中に導入し、水素流量を約25cc/分(H2対HCの比は5:1である)にした。流出生成物中のメタンを測定して、発熱メタン反応の存在を決定した。
硫黄含有量が0.2ppm未満の本質的に純粋なヘキサンを用いて対照実験が行われた。僅か3時間後に管は炭素で完全に満たされることが分かった。これは水素及びヘキサン供給物の流れを止めるのみならず、炭素の成長が実際に管を裂き、反応器中にふくらみを生じていた。流出生成物中のメタンは閉塞する前に60〜80重量%に近づいた。
10ppmの硫黄を添加したことを除き、本質的に同じ条件を用いて別の実験を行なった。その実験は50時間継続した後、ワイヤーを調べるため停止した。実験中メタンの増加は認められなかった。それは熱分解により約16重量%で一定のままであった。コークスによる閉塞は見出されず、鋼ワイヤーの炭素化は観察されなかった。
僅か1ppmの硫黄を添加した(前の実験の1/10にした)ことを除き、更に同様な実験を行なった。この実験は、48時間後、殆どメタンの形成或は閉塞を示さなかった。鋼ワイヤーを調べると、少量の表面炭素を示していたが、帯状の炭素は示していなかった。
1000ppmの水(0.1%)をメタノールとしてヘキサンに添加したことを除き、別の実験を行なった。硫黄は添加しなかった。実験は16時間続けたが、反応器中に閉塞は起きなかった。しかし、管を開いて見ると管の約50%が炭素で満たされていることが発見された。しかし、炭素の蓄積は対照実験程ひどいものではなかった。
実施例2
低硫黄改質反応器装置で用いるのに適した材料;低硫黄改質法で慣用的に用いられていた軟鋼よりも炭素化に対し一層よい抵抗性を示す材料を決定するため試験を行なった。
これらの試験では、リンドバーグ(Lindberg)アルミナ管状炉を含む装置を用い、温度は加熱領域中の管の外側においた熱電対で1度以内に制御した。炉管は5/8inの内径を持っていた。管の高熱領域
Figure 0003836499
内に吊した熱電対を用いて1200°Fの適用温度で幾つかの実験を行なった。内部熱電対により、外部熱電対よりも0〜10°F低い温度が一定して測定された。
軟鋼(C鋼及び21/4Cr)の試料及び300系列のステンレス鋼の試料を、1100°F、1150°F及び1200°Fで24時間試験し、1100°Fで90時間、低硫黄改質条件下で材料を露出させるのに類似させた条件下で試験した。種々の材料の試料を、炉管の高熱領域内の開放石英ボート中に入れた。それらボートは長さ1in、幅1/2inで、管の2inの高熱領域内によく適合するものであった。それらボートは、シリカガラス棒に取付けて夫々の出し入れを行なった。ボートが管の内部に入れられた時には、内部熱電対は用いなかった。
開始前に、管を数分間窒素でフラッシュした。水素中に7%のプロパンを入れた市販容器入り混合物である炭素化用ガスを、室温でトルエンの1lフラスコに気泡として通すことにより供給物ガス混合物中に約1%のトルエンを導入した。装置中、25〜30cc/分のガス流及び大気圧を維持した。試料を144°F/分の速度で操作温度へ持っていった。
希望の温度で希望の時間、材料を炭素化用ガスに曝した後、装置を管の外側に適用した空気流で急冷した。装置が充分冷たくなった時、炭化水素を窒素で追い出し、ボートを取り出して検査分析した。
開始前に、試験材料をそのまま肉眼観察するのに適した大きさ及び形に切断した。清浄化又は焙焼の如き前処理を行なった後、試料を秤量した。殆どの試料は300mgよりも少なかった。典型的には、各実験をボートの中に3〜5個の試料を入れて行なった。347ステンレス鋼の試料を各実験で内部標準として存在させた。
各実験が終わった時、ボート及び各材料の状態を注意深く観察した。典型的には、ボートの写真を取った。次に各試料を、適当な基体材料でコークス付着物を維持するように注意しながら秤量し、変化を決定した。次に試料をエポキシ樹脂に取付け、研磨して岩石学的分析及び走査電子顕微鏡分析のための試料を作り、各材料のコークス化、金属顆粒化、及び炭素化に対する変化を決定した。
必要に応じ、これらの試験で用いた炭素化用ガスの滞留時間を、典型的な商業的操作の場合よりもかなり長くした。従って、実験条件は商業的条件よりも厳しいものであったと考えられる。これらの試験で不良になった材料の幾つかは、実際には商業的には信頼性を持つものとされている。それにも拘わらず、この試験は材料のコークス化、炭素化及び金属顆粒化に対する相対的抵抗性を示す信頼性のある示標を与えている。
結果を下の表に記載する。
Figure 0003836499
勿論、上記結果は定量的であり、表面形態、即ち、金属の微視的粗さに依存する。炭素重量増加は、自触的である表面コークス化の示標になる。
実施例3
上で用いたのと同じ方法を再び用いて、1200°Fの温度で16時間材料の広範な分類選抜試験を行なった。結果を下に示す。各群は、同様な条件下で単一のボート中に並べて比較したものを示す。
Figure 0003836499
Figure 0003836499
実施例4
実施例2に記載した方法を再び用いて(別に記述しない限り)更に別の材料を試験した。
446ステンレス鋼及び347ステンレス鋼の試料を試料ボートに入れ、1100°Fの炭素化装置で合計2週間同時に試験した。446ステンレス鋼は薄いコークス被覆を持っていたが、他の変化は検出されなかった。一方347ステンレス鋼は、大きな局部的コークス付着物を持ち、4ミルより深い孔を有し、そこからコークス及び金属顆粒が噴き出していた。
錫、銀、銅、及びクロムを電気メッキした炭素鋼網の試料を試験した。試料は約0.5ミルの被覆を持っていた。1200°Fで16時間炭素化スクリーニング試験を行なった後、錫メッキ網及び及びクロムメッキ網にはコークスは形成されていなかった。銀メッキ網及び銅メッキ網にはコークスが形成されていたが、メッキが剥がれた所だけであった。メッキした網と同時に試験したメッキしていない炭素鋼網は、ひどいコークス化、炭素化及び金属顆粒化を示していた。304ステンレス鋼網の試料を試験した。各試料には錫、銀、銅、及びクロムの一種類を電気メッキした。それら試料は約0.5ミルの厚さの被覆を持っていた。1200°Fで16時間炭素化スクリーニング試験を行なった後、メッキした網のいずれにも、銅メッキ網のメッキが泡立って剥がれた局部的部分を除き、コークスは形成されていなかった。メッキした網と同時に試験した304ステンレス鋼のメッキしていない試料には薄いコークスの被覆が観察された。
304ステンレス鋼網の試料を試験した。各試料には錫及びクロムの一方を電着した。これらの試料は446ステンレス鋼の試料と共に1100°Fの炭素化試験で試験した。試料は5週間露出した。各週毎に、試料を室温に冷却し、観察及び写真撮影の記録を行なった。次にそれらを1100°Fに再び加熱した。錫メッキした網はコークスを持たなかった。クロムをメッキした網も、クロムメッキが剥がれた局部的部分を除き、コークスを持たなかった。446ステンレス鋼片はコークスで均一に被覆されていた。
未被覆インコネル600(75%Ni)及び錫被覆(電着)インコネル600(75%Ni)の試料を1200°Fで16時間試験した。錫メッキした試料はコークス化及び顆粒化を起こしたが、未被覆試料程ではなかった。
実施例5
低硫黄条件下で改質している間にコークスボールの形成及び燃焼により発生する発熱メタン化反応を研究するため、次の実験を行なった。更にメタン形成を減少させるための添加物として錫を研究した。
低硫黄改質反応器装置で、鉄の溶融粒子を含むコークス付着物が見出されている。900〜1200°Fの温度で改質している間に起きるこの溶融鉄の形成は、改質中に起きる非常に発熱的な反応によるものと考えられる。そのような温度を発生させる唯一の経路は非常に発熱的なメタン形成によるものと思われる。その高い温度は特に意外なものである。なぜなら、改質は一般に吸熱的性質を持ち、実際に反応器装置を冷却する傾向を持つからである。それらの高温は充分絶縁されたコークスボール内部で、内部触媒鉄粉末部位に水素が拡散し、そこでそれらがコークス及び水素からのメタン形成に触媒作用を及ぼすことにより発生する。
この実験では、微小パイロットプラントでメタン形成を研究するために鋼ウールを用いた。1/4inのステンレス鋼管に、0.14gの鋼ウールを充填し、1175°Fの管中に入れた。ヘキサンと水素をその鉄の上に送り、出てきた流れを供給物及び生成物について分析した。鋼ウールはヘキサンを導入する前に24時間水素中で予め処理した。次にヘキサンを反応器中に25μl/分の流量で導入し、水素の流量を約25cc/分とした。
最初はメタンの形成は低くかったが、実験が進むにつれて上昇し続け、最後に4.5%に到達した。次に2ccのヘキサンにテトラブチル錫0.1ccを溶解したものを鉄の前の純粋供給物流中に注入した。メタン形成は約1%に減少し、次の3時間で1%に留まり続けた。データーを下の表に要約する。
Figure 0003836499
上記結果から、鋼ウールに錫を添加するとメタン形成の促進が止まり、それを生成物中許容出来る水準まで低下することが分かる。
実施例6
予めテトラブチル錫を被覆した鋼ウールを用いて更に別の試験を行なった。特に、実施例5の場合のように、2ccのヘキサンに0.1ccのテトラブチル錫を溶解したものを、0.15gの鋼ウールの入った1/4inのステンレス鋼管中に3回注入した。溶液は900°Fの水素流中に入れて鋼ウールの上へ運んだ。
次に炭化水素供給物を25μl/分の炭化水素流量で1175°Fで導入し、水素の流量は約25cc/分にした。出てくるガスをメタンについて分析し、24時間1%より低く留まっていた。次に反応器を停止し、反応器管を切り開き、検査した。鋼ウールには非常に僅かな炭素化が起きていた。
これとは対照的にテトラブチル錫による前処理を行わない対照実験を行なった。それは上に記載したのと同じ条件下で1日間行なった。24時間後、管出口で検出された水素又は供給物はなかった。導入圧力は最初の50 lbから300 lbに上昇した。反応器管を切り開いて検査すると、コークスが完全に管に詰まっていたことが判明した。
従って、有機錫化合物は改質条件下で鋼ウールの炭素化を防ぐことができることが分かる。
実施例7
金メッキした反応器管中に錫を蒸着被覆したステンレス鋼ワイヤーに対する炭素化条件の影響を調べるため、実施例1の対照実験と同様な実験を更に行なった。その対照実験との唯一の相違点は、100ml/分の一層大きな水素流量を用いたことである。
実験は8時間行われたが閉塞又は過度のメタン形成は起きなかった。管を開いて分析すると、閉塞又は炭素の帯は観察されなかった。1本のワイヤーにただ一つの黒色の炭素の筋が見られただけである。これは恐らく不適切な被覆によるものである。
この実験は、錫が硫黄と同様なやり方でステンレス鋼を炭素から保護することができることを示している。しかし、硫黄とは違ってそれは供給物中に連続的に注入する必要はない。硫黄は、鋼上に硫化物表面を維持するのに充分な量で系中に硫化水素の分圧を維持するため、供給物中に連続的に注入しなければならない。供給原料から硫黄を除去すると、硫黄が反応器装置から追い出された後、炭素化の開始が起きる。これは通常硫黄停止後10時間以内に起きる。
本発明を好ましい態様に関して上で記述してきたが、当業者には認められるように、種々の変更及び修正を行うことができることは理解されるべきである。例えば、反応器装置中の鋼の部分をニオブ、ジルコニウム、シリカ、セラミック、タングステン或はクロム(クロム化)によって被覆することができるが、これらの技術は極めて実施或は使用しにくく、高価になり過ぎて利用できないであろう。或は、炭化水素を反応温度へ加熱するために使用する熱交換器をできるだけ少なくすることができる。熱は過熱した水素によって与えることもできる。或は加熱表面の炭化水素への露出を一層大きな管直径及び一層大きな管速度を用いることにより減少させることができる。従って、上記好ましい態様に対する多くの変更或は修正があり、それらは当業者によって容易に分かることであり、次の請求の範囲によって規定された本発明の範囲内に入るものと考えるべきである。

Claims (19)

  1. 改質反応器装置の少なくとも一部の炭素化及び金属顆粒化に対する抵抗性を増大させつつ芳香族に富む炭化水素流を製造するための炭化水素の接触改質方法において、炭化水素として50ppb未満の硫黄及び1000ppm未満の水分を有する炭化水素を用い、改質反応器装置内で改質触媒と接触させ、炭化水素と接触する改質反応器装置の少なくとも一部がその上に、金属クラッド、金属被覆又は金属ペイントであって、錫、金属間錫化合物、錫合金及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つを含む該金属クラッド、金属被覆又は金属ペイントを有し、該改質反応器装置における接触改質反応が700〜1050°F(371〜566℃)の間の温度において行われることを特徴とする、炭化水素の接触改質方法。
  2. 改質接触が、ゼオライト触媒を含有する、請求項1に記載の方法。
  3. 改質触媒が、アルカリ又はアルカリ土類金属及び第VIII族金属の少なくとも1種を含有する大気孔ゼオライトを含む、請求項1に記載の方法。
  4. 改質触媒が、さらに白金大気孔ゼオライトを含有する、請求項に記載の方法。
  5. 改質反応器装置が、複数の炉管を有する炉;及び触媒床を有する反応器を含み;該反応装置の一部が複数の炉管の少なくとも一つを有する、請求項に記載の方法。
  6. 炭素化及び金属顆粒化に対する抵抗性は、脆弱化が約2.5mm/年未満である、請求項1に記載の方法。
  7. 金属ペイントが還元可能な錫ペイントを含有し、還元可能な錫ペイントを還元条件下で加熱する工程をさらに有する、請求項1に記載の方法。
  8. 錫含有ペイントが、鉄錫化物を形成する、請求項1に記載の方法。
  9. 錫含有ペイントが、さらに、水素分解性の錫化合物、溶媒系、微粉砕された錫金属、及び酸化錫を含有する、請求項に記載の方法。
  10. 微粉砕された錫金属が約1〜5ミクロンの範囲の粒子サイズを有する、請求項に記載の方法。
  11. 錫含有ペイントが、錫含有化合物及び鉄化合物を含有し、鉄:錫の比が重量で約1:3未満である、請求項に記載の方法。
  12. 鉄化合物が、Fe 2 O 3 を含有する、請求項11に記載の方法。
  13. 金属ペイントが、錫酸化物ペイントを含有する、請求項に記載の方法。
  14. 金属クラッド、金属被覆又は金属ペイントがさらに、銅、ヒ素、アンチモン、真鍮、鉛、ビスマス、クロム、それら金属のいずれかの金属間化合物あるいは合金、銅−錫合金、又は銅−アンチモン合金からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項に記載の方法。
  15. 金属被覆がさらに、アルミニウム又は酸化クロムを含む層と組み合わせられる、請求項に記載の方法。
  16. 改質反応器装置の少なくとも一部が、シリカを含む、請求項に記載の方法。
  17. 金属クラッド、金属被覆又は金属ペイントが、金属錫化物を含有する、請求項に記載の方法。
  18. 改質反応器装置の少なくとも一部が、錫被覆した300ステンレス鋼を空気焙焼したものを含む、請求項に記載の方法。
  19. 少なくとも1つの第VIII族金属が担持された硫黄−感受性改質触媒を用いて、コークスをひどく詰まらせることなく、十分長い期間、炭化水素流を接触改質させて芳香族を製造する方法において、
    炭化水素流の硫黄濃度を50ppb未満に下げ、水分を1000ppm未満に下げて、低硫黄かつ低水分の炭化水素含有流を提供し、
    低硫黄かつ低水分の炭化水素含有流を、複数の炉管を有する炉の中の接触改質温度である700〜1050°F(371〜566℃)の間に加熱し、各々の炉管が低硫黄かつ低水分の炭化水素含有流と接触する部分を有し、該部分は、金属クラッド、金属被覆又は金属ペイントであって、錫、金属間錫化合物、錫合金及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも一つを含む該金属クラッド、金属被覆又は金属ペイントを有するものであり、
    低硫黄かつ低水分の炭化水素含有流を硫黄感受性改質触媒と接触させ、芳香族を製造する
    工程を含む、芳香族の製造方法。
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