JP3833413B2 - ショベル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電動機により油圧ポンプを駆動し、その油圧ポンプから吐出される圧油で油圧アクチュエータを作動させる油圧ショベルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般的な油圧ショベルは下部走行体(通常はクローラ)に上部旋回体を旋回自在に搭載し、この上部旋回体に、ブームとアームとバケットを備えた掘削アタッチメントを搭載し、上部旋回体に設置されたエンジンを動力源として主油圧ポンプを駆動させ、その主油圧ポンプから吐出される吐出油を各油圧アクチュエータ(下部走行体用の走行モータ、上部旋回体を旋回させるための旋回モータ、掘削アタッチメントを駆動させるための油圧シリンダ等)に供給して、走行、旋回、ブーム起伏、アーム作動、バケット作動等を行わせるように構成している。
【0003】
この種の油圧式ショベルは、エンジン負荷が急増した際に黒煙を発生して排気ガス公害を生じ、加えて燃費が悪くなるという問題を抱えている。そこで、例えば特開平8−60705号公報に示されているように、エンジンの負荷が所定値を超えた場合に、バッテリからの蓄電力を電動モータに供給しその電動モータで補助油圧ポンプを駆動させ、その補助油圧ポンプから吐出される圧油を上記主油圧ポンプから吐出される圧油に合流させて油圧アクチュエータに供給し、それによってエンジンの出力を支援する、所謂、ハイブリッド式の油圧ショベルが知られている。
【0004】
この種のハイブリッド式油圧ショベルによれば、エンジンに対し急激に負荷が増大しても排気ガス公害を発生することがなく、且つ燃費が改善されるようになっている。
【0005】
また、上記ハイブリッド式油圧ショベルでは主油圧ポンプを駆動させる主体はエンジンであり、補助油圧ポンプは主油圧ポンプをアシストするものである。これに対し、油圧ポンプの駆動源をエンジンから電動モータに代えた電動式油圧ショベルも検討されている。油圧ポンプを駆動させる主体が電動モータで構成されているこの種の電動式油圧ショベルは、一般的に、6TON以下の小型油圧ショベルに好適であるとされており、電動モータに供給する電力はエンジンで駆動する発電機から供給されることになる。上記電動式油圧ショベルでは排気ガス公害の問題をさらに改善することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記電動式油圧ショベルでは、油圧アクチュエータ等を駆動させる駆動モータの電力をすべて発電機から得ている。この構成において、例えばラジエータの目詰まり等のトラブルによってエンジン冷却水温度が上昇すると、オーバーヒートを避けるために直ちにエンジン回転数を落として作業を休止させなければならない。そうすると、発電機から出力される電力に依存している電動式油圧ショベルでは、作業を中断しなければならず、その結果、工程の遅れを生じることになる。
【0007】
本発明は上記した従来の油圧ショベルにおける課題を考慮してなされたものであり、エンジンの運転異常時にはエンジンによる発電を停止させ、バッテリからの電力供給に切り換えて作業の継続を可能にしたショベルを提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の本発明は、下部走行体上に上部旋回体が搭載され、この上部旋回体に作業アタッチメントが装備されたショベルにおいて、動力源としてのエンジンと、このエンジンによって駆動する発電機と、バッテリと、下部走行体、上部旋回体、作業アタッチメント等を駆動させる電動機と、エンジンの運転異常を検出する検出手段と、入力側に発電機とバッテリが接続され出力側に電動機が接続される切換制御手段とを備え、切換制御手段は、エンジンの運転状態が正常時にはエンジンで発電機を駆動させて電動機に電力を供給し、検出手段によってエンジン運転異常が検出された際に、発電機から電動機への電力供給を遮断してバッテリからの蓄電力供給に切り換えるように構成されているショベルである。
【0009】
請求項2の本発明は、切換制御手段が、エンジンの運転異常が解消された際に、発電機から電動機への電力供給を再開させるように構成されているショベルである。
【0010】
請求項3の本発明において、検出手段は、エンジン温度を検出するように構成することが好ましい。
【0011】
請求項4の本発明は、エンジン冷却水温度またはエンジンオイルの温度を検出する温度センサを有し、その温度センサから出力されるエンジン冷却水温度またはエンジンオイルの温度に基づいてエンジン温度を検出し、エンジン温度が所定温度を超えたときにエンジンの運転異常を検出するように構成されているショベルである。
【0012】
請求項5の本発明は、エンジンの運転異常が検出された際に、エンジン回転数を低アイドル回転数に設定し、エンジンの運転異常が解消された際に所定のアイドル回転数に復帰させるアイドル回転数調整手段を備えてなるショベルである。
【0013】
請求項6の本発明は、バッテリ残量を検出するバッテリセンサを有し、バッテリのみからの蓄電力供給によりバッテリ残量が所定電圧以下に低下した際に、電動機の回転数を一定回転数低下させ、エンジンの運転異常が解消された際に、電動機の回転数を一定回転数増加させる回転数調整手段を備えてなるショベルである。
【0014】
請求項7の本発明は、電動機によって油圧ポンプを駆動し、この油圧ポンプから吐出される圧油によって下部走行体、上部旋回体、作業アタッチメント駆動用の油圧アクチュエータを駆動させるショベルである。
【0015】
請求項1の本発明に従えば、検出手段によってエンジンの運転異常が検出されると、切換制御手段は、発電機から電動機への電力供給を遮断してバッテリの蓄電力を電動機に供給する。それにより、エンジンの負荷を略ゼロにして過負荷状態を回避することができる。この間、下部走行体、上部旋回体及び作業アタッチメント駆動用の電動機にはバッテリから蓄電力が供給されているため、作業を続行することができる。
【0016】
請求項2の本発明に従えば、エンジンの運転異常が解消されると、発電機から電動機への電力供給が自動的に再開される。
【0017】
請求項3及び4の本発明に従えば、エンジン冷却水またはエンジンオイルの油温を検出することによりエンジンの運転異常を検出することができる。
【0018】
請求項5の本発明に従えば、エンジンの運転異常が検出された際にエンジン回転数が低アイドル回転数に設定され、燃料の消費を低減させることができる。
【0019】
請求項6の本発明に従えば、バッテリの残量が低下すると電動機の回転数が低下し、それによって電力供給量が節約され作業時間を延長することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るショベルの一実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1は本発明のショベルの外観を示したものであり、1は下部走行体、2は上部旋回体、3は上部旋回体2の前部に装備された作業アタッチメントとしての掘削アタッチメントである。
【0022】
下部走行体1は左右のクローラフレーム4及びクローラ4a(いずれも片側のみ図示)を有し、両側クローラ4aは、後述する左右の走行用電動モータ5,6により個別に独立して回転駆動される。
【0023】
上部旋回体2は、旋回フレーム7aとキャビン7bを有し、この旋回フレーム7aに、動力源としてのエンジン8と、このエンジン8によって駆動される発電機9と、バッテリ10等が配設されている。
【0024】
掘削アタッチメント3は、ブーム11と、そのブーム11を起伏させるためのブームシリンダ12と、アーム13と、そのアーム13を回動させるためのアームシリンダ14と、バケット15と、そのバケット15を押し引きするためのバケットシリンダ16とを備えている。
【0025】
図2のブロック図は、上記ショベルにおける駆動系及び制御系の構成を示したものである。なお、同図において、実線矢印は電気駆動系、点線矢印は電動機の持つ運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、これをバッテリ10に送る電気回生系、一点鎖線矢印は油圧駆動系をそれぞれ示している。
【0026】
同図において、上記ブームシリンダ12に対しては、ブーム用電動モータ11aによって駆動されるブーム用油圧ポンプ11bから圧油が供給され、上記アームシリンダ14に対しては、アーム用電動モータ14aによって駆動されるアーム用油圧ポンプ14bから圧油が供給され、上記バケットシリンダ16に対しては、バケット用電動モータ16aによって駆動されるバケット用油圧ポンプ16bから圧油が供給される。なお、上記各電動モータ11a,14a,16aは電動機を構成する。
【0027】
また、下部走行体1に備えられた左走行用電動モータ5は減速機5aを介し、右走行用電動モータ6は減速機6aを介し、それぞれクローラ4aを周回移動させる。また、上部旋回体2に備えられた旋回用電動モータ17は減速機17aを介して上部旋回体2を旋回させる。なお、左走行用電動モータ5,右走行用電動モータ6,旋回用電動モータ17は電動機を構成する。
【0028】
上記した各電動モータ11a,14a,16a,5,6及び17はコントロールユニット18によって制御されるようになっている。コントロールユニット18はエンジン運転状態監視部18aとアイドル回転数調整部18bと供給電力切換部18cと電動機回転数調整部18dとを備えている。
【0029】
エンジン運転状態監視部18aの入力側には、エンジン冷却水温度を検出する検出手段としての温度センサ19とバッテリの残量を検出するバッテリセンサ20とが接続されており、出力側から出力される指令は供給電力切換部18cに与えられる。供給電力切換部18cは発電機9から出力される電力とバッテリ10から出力される蓄電力のいずれか一方を各電動モータに供給するようになっている。
【0030】
アイドル回転数調整部18bは、エンジン運転状態監視部18aから出力される指令を受けてエンジンアクセルモータ21を制御する。
【0031】
電動機回転数調整部18dは、バッテリ残量に応じてエンジン運転状態監視部18aから出力される指令を受けて各電動モータの回転数を一定数低下させ、また、低下させた回転数を復帰させる。
【0032】
上記エンジン運転状態監視部18aと供給電力切換部18cとによって切換制御手段が、エンジン運転状態監視部18aとアイドル回転数調整部18bとによってアイドル回転数調整手段が、エンジン運転状態監視部18aと電動機回転数調整部18dとによって電動機回転数調整手段がそれぞれ構成される。
【0033】
なお、軽負荷作業時において発電機9から発生した余剰交流電力は図示しないインバータにより直流に変換し、バッテリ10に蓄えるようになっている。
【0034】
次に、上記コントロールユニット18の制御動作を図3のフローチャートを参照しながら説明する。
【0035】
まず、運転状態監視部18aは温度センサ19から検出されるエンジン冷却水温度情報に基づきエンジン冷却水の温度が例えば100℃を超えているかどうかを判断する(ステップN1)。YESであれば次いでエンジン冷却水温度が90℃以下でないことを確認して(ステップN2)、発電機9から電動モータ11a,14a,16a,5,6,17への通電をすべて遮断する(ステップN3)。
【0036】
次いで、アイドル回転数調整部18bは、エンジン回転数を高アイドル回転数(例えば2300rpm)から低アイドル回転数(例えば900rpm)に低下させる。ただし、エンジン8を停止させてしまうと、冷却ファンによる冷却効果が得られなくなるため、低アイドル回転数で冷却ファンを回転させエンジン8を冷却する。また、それにより燃料の節約を図る。
【0037】
次いで、運転状態監視部18aは、供給電力切換部18cに指令してバッテリ10からの蓄電力を電動モータに供給するように電力供給を切り換える(ステップN5)。
【0038】
ここで、運転状態監視部18aはバッテリセンサ20から出力されるバッテリ残量情報に基づき、バッテリ残量がフル充電時の30%を下回ったかどうかを判断し(ステップN6)、YESであれば各電動モータの回転数を一定回転数低下させる。具体的には定格回転数の60%に低下させる(ステップN7)。すなわち、バッテリ残量が低下してくると、バッテリ10から各電動モータへの電力供給を抑制し、それにより作業可能時間を延長させる。このとき、油圧アクチュエータの動作は遅くなるが、作業を停止させるような事態は避けることができる。
【0039】
なお、ステップN6においてNO、すなわちバッテリ残量が十分確保されている場合にはステップN5に戻り、バッテリ10からの蓄電力供給を継続させることになる。
【0040】
バッテリ10のみから電力供給が行われているとき、エンジン8の負荷は略ゼロであるため、特別な故障でない限りはエンジン冷却水温度は時間の経過とともに下降する。その結果、エンジン冷却水温度が90℃以下になると、ステップN2においてYESと判断され、運転状態監視部18aは供給電力切換部18cに指令して発電機9から各電動モータへの電力供給を再開させる(ステップN8)。同時にバッテリ10からの蓄電力供給を停止する(ステップN9)。
【0041】
次いで、運転状態監視部18aはアイドル回転数調整部18bに指令して低アイドル回転に設定していたエンジン回転数を高アイドル回転に復帰させ(ステップN10)、60%に制限していた各電動モータの回転数を定格回転数に復帰させる(ステップN11)。次いでステップN1に戻り、エンジン冷却水温度の監視を行う。
【0042】
なお、本発明の作業アタッチメントは、上記実施形態では掘削アタッチメント3で構成したが、これに限らずバケット15に代えて他の作業工具(例えば排土板や破砕機等のオプション装置)を取り付けることもできる。
【0043】
また、上記実施形態ではエンジン冷却水温度に基づいてエンジン運転異常を検出したが、これに限らず、エンジン冷却水と温度が相関するエンジンオイルの油温を検出してエンジン運転異常を判断することもできる。
【0044】
また、本発明においてエンジンの運転異常とは、上記したようにオーバーヒートに限らず、例えば、燃料不足等のようにエンジンを停止せざるを得ないような状態を含む。なお、燃料不足によるエンジン運転異常を検出するための検出手段は燃料計で構成することができる。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、請求項1の本発明によれば、ラジエータの目詰まり等によってエンジン冷却水温度が上昇した場合、切換制御手段は発電機から電動機への電力供給を遮断してバッテリの蓄電力のみ電動機に供給する。それにより、オーバーヒート等のエンジン運転異常を防止しつつ作業を継続して行うことができる。
【0046】
請求項2の本発明によれば、エンジン冷却水温度が下降しエンジンの運転が正常に戻ると、バッテリから電動機への電力供給が遮断され、発電機から電動機への電力供給が自動的に再開される。従って、オペレータはエンジン冷却水の温度変化を監視しながら電力供給の切り換えのタイミングを図るという負担を強いられることなく作業を行うことができる。
【0047】
請求項3及び4の本発明によれば、エンジン冷却水温度またはエンジンオイル油温の温度上昇に基づいてエンジンの運転異常を判断するため、既存の構成に切換制御手段を追加するだけで電力供給の切換制御を実現することができる。
【0048】
請求項5の本発明によれば、エンジンの運転異常が検出された際にエンジン回転数が低アイドル回転数に設定されるため、燃料の消費を低減させることができる。
【0049】
請求項6の本発明によれば、バッテリからのみ蓄電力を供給することによってバッテリ残量が低下すると、電動機の回転数が一定回転数低下され、電力供給量を制限することができる。それにより、作業時間を延長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るショベルの外観図である。
【図2】本発明のショベルに搭載される電気・油圧制御の構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示すコントロールユニットの制御動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 下部走行体
2 上部旋回体
3 掘削アタッチメント(作業アタッチメント)
8 エンジン
9 発電機
10 バッテリ
11a,14a,16a,5,6,17 電動モータ(電動機)
18 コントロールユニット
19 温度センサ
20 バッテリセンサ
21 エンジンアクセルモータ
Claims (7)
- 下部走行体上に上部旋回体が搭載され、この上部旋回体に作業アタッチメントが装備されたショベルにおいて、
動力源としてのエンジンと、このエンジンによって駆動する発電機と、バッテリと、前記下部走行体、上部旋回体、作業アタッチメント等を駆動させる電動機と、前記エンジンの運転異常を検出する検出手段と、入力側に前記発電機と前記バッテリが接続され出力側に前記電動機が接続される切換制御手段とを備え、
前記切換制御手段は、前記エンジンの運転状態が正常時には前記エンジンで前記発電機を駆動させて前記電動機に電力を供給し、前記検出手段によってエンジン運転異常が検出された際に、前記発電機から前記電動機への電力供給を遮断して前記バッテリからの蓄電力供給に切り換えるように構成されていることを特徴とするショベル。 - 前記切換制御手段は、前記エンジンの運転異常が解消された際に、前記発電機から前記電動機への電力供給を再開させるように構成されている請求項1記載のショベル。
- 前記検出手段は、エンジン温度を検出するように構成されている請求項1または2に記載のショベル。
- エンジン冷却水温度またはエンジンオイルの温度を検出する温度センサを有し、その温度センサから出力されるエンジン冷却水温度またはエンジンオイルの温度に基づいて前記エンジン温度を検出し、エンジン温度が所定温度を超えたときにエンジンの運転異常を検出するように構成されている請求項3記載のショベル。
- エンジンの運転異常が検出された際に、エンジン回転数を低アイドル回転数に設定し、エンジンの運転異常が解消された際に所定のアイドル回転数に復帰させるアイドル回転数調整手段を備えてなる請求項1〜4のいずれかに記載のショベル。
- バッテリ残量を検出するバッテリセンサを有し、前記バッテリのみからの蓄電力供給によりバッテリ残量が所定電圧以下に低下した際に、前記電動機の回転数を一定回転数低下させ、エンジンの運転異常が解消された際に、前記電動機の回転数を一定回転数増加させる回転数調整手段を備えてなる請求項1〜5のいずれかに記載のショベル。
- 前記電動機によって油圧ポンプを駆動し、この油圧ポンプから吐出される圧油によって前記下部走行体、上部旋回体、作業アタッチメント駆動用の油圧アクチュエータを駆動させる請求項1〜6のいずれかに記載のショベル。
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