JP3831965B2 - 燃料ホースの製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の燃料配管に用いられる燃料ホースの製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の環境問題に関連して、大気中に放出されるガソリンの量を低減させる必要があるため、自動車等の燃料配管に用いられる燃料ホースについても、ガソリンの透過量に関する規制が厳しくなっている。そのため、従来から用いられている、アクリロニトリルブタジエン−ポリ塩化ビニルブレンドゴム(NBR−PVC)等の単層構造からなる燃料ホースでは、上記規制に対応しきれなくなっているのが現状である。特に最近では、自動車の排気ガスを清浄化する目的で、ガソリン中にアルコールを添加したアルコール混合ガソリンが用いられており、このアルコール混合ガソリンはアルコール無添加のガソリンに比べてガソリン透過性がより高いため、耐ガソリン透過性に一層優れた燃料ホースが待望されている。
【0003】
そこで、耐ガソリン透過性の向上を図るため、ゴムや樹脂から形成された種々の層を組み合わせた多層構造の燃料ホース、例えば、ゴム外層の内周面に、フッ素樹脂内層を形成した2層構造の燃料ホースが提案されている。例えば、特開平6−255004号公報には、ゴム外層の内周面にフッ素樹脂粉末を静電塗装した後、加熱冷却することにより、ゴム外層の内周面にフッ素樹脂内層を形成した2層構造の燃料ホースが開示されている。この手法によれば、シール性が要求されるゴム外層の端部にはフッ素樹脂内層を形成させずに、ゴム外層の内周面の所望の場所にのみフッ素樹脂内層を形成することが可能であるとともに、蛇腹形状等に加硫成形したゴム外層の内周面に対しても、フッ素樹脂内層を容易に形成することが可能である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平6−255004号公報に記載の燃料ホースでは、ゴム外層とフッ素樹脂内層との接着性の確保のため、ゴム外層の内周面に、ナトリウムエッチング処理、コロナ処理、低温プラズマ処理等の接着前処理を施す必要があり、製造工程が複雑になるという問題が生じる。
【0005】
一方、特公昭60−33662号公報および特公昭60−33663号公報には、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)あるいはエピクロルヒドリンゴムからなる未加硫ゴム外層に、カルボン酸の1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7塩を配合し、未加硫ゴム外層とフッ素ゴム内層との接着性の向上を図った燃料ホースが開示されている。しかしながら、これは未加硫ゴム外層とフッ素ゴム内層との接着を目的とするものであり、加硫ゴムとの接着を目的とするものではない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、接着前処理のような複雑な製造工程をとることなく、加硫ゴム外層とフッ素樹脂内層との接着性が向上し、ガソリン、特にアルコール混合ガソリン、サワーガソリン、ガソリン清浄剤等に対して優れた耐性をもつ信頼性の高い燃料ホースの製法の提供をその目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の燃料ホースの製法は、単層または多層からなる加硫ゴム管状体と、この加硫ゴム管状体の最内層の内周面に形成されたフッ素系樹脂層とを備えた燃料ホースの製法であって、アクリロニトリルブタジエン−ポリ塩化ビニルブレンドゴム,エピクロルヒドリンゴム,アクリロニトリルブタジエンゴム,およびフッ素ゴムからなる群から選ばれた少なくとも一つのゴムと、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7塩とを用いて、上記加硫ゴム管状体の少なくとも最内層を形成した後、上記最内層の内周面に下記のフッ素系樹脂粉末(A)を粉末塗装により溶融付着することにより、上記加硫ゴム管状体の最内層の内周面にフッ素系樹脂層を形成するという構成をとる。
(A)150〜250℃の範囲において、体積換算で15〜120cm3 /10minの範囲であるメルトインデックスを有するフッ素系樹脂粉末。
【0008】
すなわち、本発明者らは、上記従来のナトリウムエッチング処理、コロナ処理、低温プラズマ処理等の接着前処理といった複雑な製造工程をとらずに、加硫ゴム管状体とフッ素系樹脂層との接着性の向上を中心課題として鋭意研究を重ねた。その結果、加硫ゴム管状体の少なくとも最内層を特定の加硫ゴムで形成するとともに、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7塩(以下「DBU塩」という)を含有させ、この最内層の内周面に上記フッ素系樹脂粉末(A)の溶融接着体からなるフッ素系樹脂層を形成すると、従来のような煩雑な前処理を行うことなく、上記最内層の加硫ゴム管状体内周面とフッ素系樹脂層とは強固に接着して、両者の接着性の向上を図ることが可能となることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
また、上記フッ素系樹脂層を、150〜250℃の範囲において、体積換算で15〜120cm3 /10minのメルトインデックスを有するフッ素系樹脂粉末を用い、これを上記加硫ゴム管状体の最内層の内周面に粉末塗装により溶融付着して形成すると、加硫ゴム管状体内周面との接着性において特に優れたものが得られる。
【0010】
加えて、上記DBU塩が、カルボン酸のDBU塩およびフェノール樹脂のDBU塩の少なくとも一方であれば、フッ素系樹脂層との接着性において特に優れたものが得られ好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0012】
本発明の製法により得られる燃料ホースは、単層または多層からなる加硫ゴム管状体と、この加硫ゴム管状体の最内層の内周面に形成されたフッ素系樹脂層とを備えた構成をとる。しかも、上記加硫ゴム管状体の少なくとも最内層が、DBU塩を含有している。
【0013】
上記加硫ゴム管状体は、1層の加硫ゴム層のみからなる単層構造または2層以上の加硫ゴム層からなる多層構造のいずれであってもよい。そして、上記加硫ゴム管状体が単層構造である場合は、この加硫ゴム管状体が、加硫NBR−PVC、加硫エピクロルヒドリンゴム、加硫NBR、および加硫フッ素ゴムからなる群から選ばれた少なくとも一つの加硫ゴムで形成されており、また、上記加硫ゴム管状体が2層以上の多層構造である場合は、少なくとも上記加硫ゴム管状体の最内層が、加硫NBR−PVC、加硫エピクロルヒドリンゴム、加硫NBR、および加硫フッ素ゴムからなる群から選ばれた少なくとも一つの加硫ゴムで形成されている。また、上記加硫ゴム管状体が2層以上の多層構造である場合は、最内層以外の各加硫ゴム層の形成材料としては、上記加硫ゴムには限定されず、従来から燃料ホースの分野で一般的に使用されている各種ゴム材料を用いることができる。
【0014】
すなわち、上記加硫ゴム管状体のうち加硫ゴム管状体が1層の加硫ゴム層のみからなる単層構造の場合は、その加硫ゴム層、そして、加硫ゴム管状体が2層以上の加硫ゴム層からなる多層構造の場合は、複数の加硫ゴム層のうち少なくとも最内層に位置する加硫ゴム層を形成するゴム材料として、前述のように、フッ素系樹脂との良好な接着性の実現を図るという点から、加硫NBR−PVC、加硫エピクロルヒドリンゴム、加硫NBR、および加硫フッ素ゴムからなる群から選ばれた少なくとも一つの加硫ゴムが用いられる。
【0015】
上記NBR−PVCは、特に限定されるものではなく、燃料ホースの分野で一般的に使用されているものを用いることができるが、特に、結合アクリロニトリル量が、通常、25〜45%、好ましくは30〜40%で、かつ、PVCブレンド量が、通常、15〜40%、好ましくは25〜35%のものが好適である。
【0016】
上記エピクロルヒドリンゴムは、特に限定されるものではなく、燃料ホースの分野で一般的に使用されているものを用いることができるが、特に、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリンとエチレンオキシドとの共重合体(ECO)、あるいは上記各々に対してアリルグリシジルエーテルを共重合させたものが好ましい。
【0017】
上記NBRは、特に限定されるものではなく、燃料ホースの分野で一般的に使用されているものを用いることができるが、特に、結合アクリロニトリル量が、通常、15〜45%、好ましくは25〜40%のものが好適である。
【0018】
上記フッ素ゴムは、特に限定されるものではなく、燃料ホースの分野で一般的に使用されているものを用いることができるが、特に、フッ化ビニリデンと6−フッ化プロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンと4−フッ化エチレンと6−フッ化プロピレンとの三元共重合体、4−フッ化エチレンとプロピレンとの共重合体、ポリフッ化ビニリデンとアクリルゴムとのブレンド物等が好ましい。なお、これらフッ素ゴムは、ポリアミン、ポリオールおよびパーオキサイド等によって加硫化され、加硫フッ素ゴムとして用いられる。
【0019】
そして、上記加硫ゴム管状体が、2層以上の加硫ゴム層からなる多層構造の場合における、最内層に位置する加硫ゴム層以外の他の加硫ゴム層形成材料としては、特に限定するものではないが、上記NBR−PVC、エピクロルヒドリンゴム、NBR、フッ素ゴムおよびアクリルゴムの他に、例えば、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エチレン−プロピレンゴム等があげられる。
【0020】
上記加硫ゴム管状体は、その最内層が、DBU塩を含有することが必須である。このように、加硫ゴム管状体の最内層にDBU塩を含有させるのは、加硫ゴム管状体の最内層の内周面と、後述するフッ素系樹脂層との接着をさらに良好なものとし、上記加硫ゴム管状体の最内層の内周面にフッ素系樹脂層を形成しやすくするためである。
【0021】
上記DBU塩としては、フッ素系樹脂の活性化の点で、カルボン酸のDBU塩あるいはフェノール樹脂のDBU塩が好適に用いられる。上記カルボン酸のDBU塩としては、下記の一般式(1)で表されるナフトエ酸のDBU塩あるいはソルビン酸のDBU塩が好ましい。これらは、単独であるいは併用することが可能である。このようなカルボン酸成分がナフトエ酸あるいはソルビン酸のものを使用すると、加硫ゴム管状体の最内層に対する接着性がさらに優れるようになる。
【0022】
【化1】
【0023】
また、上記DBU塩の加硫ゴム管状体の最内層への配合割合は、加硫ゴム管状体の最内層のゴム形成材料100重量部(以下「部」と略す)に対し、0.5〜10部の範囲であり、好ましくは1〜7部の範囲である。すなわち、上記DBU塩の配合割合が0.5部未満であると、先に述べたようなDBU塩の効果が奏されず、フッ素系樹脂との接着性が充分なものとはならないからであり、逆に10部を超えて配合すると、加硫ゴム管状体の最内層の機械的強度が劣るからである。
【0024】
上記加硫ゴム管状体の最内層へのDBU塩の配合は、通常のゴム配合混合機を用いて行われ、特に、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いることが好ましい。
【0025】
上記加硫ゴム管状体の最内層の内周面に形成されるフッ素系樹脂層の形成材料であるフッ素系樹脂としては、特に制限されるものではなく、例えば、フッ化ビニリデンと4−フッ化エチレンとの共重合体、フッ化ビニリデンと6−フッ化プロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンと4−フッ化エチレンと6−フッ化プロピレンとの三元共重合体、フッ化ビニリデンと6−フッ化プロピレンとの共重合体にフッ化ビニリデンをグラフトした重合体、ポリフッ化ビニリデン、エチレンと4−フッ化エチレンとの共重合体等があげられ、なかでも、柔軟性が良好という点で、フッ化ビニリデンと4−フッ化エチレンとの共重合体、フッ化ビニリデンと6−フッ化プロピレンとの共重合体、フッ化ビニリデンと4−フッ化エチレンと6−フッ化プロピレンとの三元共重合体、フッ化ビニリデンと6−フッ化プロピレンとの共重合体にフッ化ビニリデンをグラフトした重合体等が特に好ましい。これらは、単独であるいは2種類以上併用することができる。
【0026】
上記加硫ゴムからなる加硫ゴム管状体内周面に形成されるフッ素系樹脂層の形成材料としては、150〜250℃の温度範囲内における少なくとも一点の温度(例えば、230℃)において、体積換算で15〜120cm3 /10minの範囲であるメルトインデックスを有するフッ素系樹脂粉末が用いられる。すなわち、メルトインデックスが15cm3 /10min未満であると、フッ素系樹脂粉末と、加硫ゴム管状体の最内層との接着性が得られないばかりでなく、上記加硫ゴム管状体の最内層の内周面に形成したフッ素系樹脂層の平滑性が悪くなるからである。つまり、フッ素系樹脂粉末の溶解粘度が高くなるため、フッ素系樹脂粉末と、加硫ゴム管状体の最内層とのなじみが悪くなり、加硫ゴム管状体の最内層の内周面に形成したフッ素系樹脂層は凹凸のある粗面状態となり、充分な膜物性が得られにくくなるからである。逆に、メルトインデックスが120cm3 /10minを超えると、フッ素系樹脂粉末と、加硫ゴム管状体の最内層との接着性は向上するものの、加硫ゴム管状体の最内層の内周面に形成したフッ素系樹脂層の厚みのばらつきが大きくなり、また、分子量が低くなるため、充分な膜物性が得られにくくなるからである。
【0027】
なお、上記フッ素系樹脂粉末の有するメルトインデックスは、JIS K 7210に準拠してつぎのようにして測定される。すなわち、測定機のシリンダーにフッ素系樹脂粉末を入れ、所定の温度(150〜250℃)にて5分間保持した後、2.16kgのおもりを載せたピストンにて直径2.1mm、長さ8.0mmのダイスよりフッ素系樹脂を押し出す。所定時間に押し出されるフッ素系樹脂の重量を測定し、10分間および体積に換算する。
【0028】
また、上記加硫ゴム管状体のゴム層形成材料およびフッ素系樹脂層の形成材料には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、酸化防止剤、造核剤、可塑剤、難燃剤等の他の添加剤を適宜必要に応じて添加することも可能である。
【0029】
つぎに、本発明の燃料ホースの製造工程を、燃料ホースの構成として、単層構造からなる加硫ゴム管状体と、この加硫ゴム管状体の内周面に形成されたフッ素系樹脂層とからなる燃料ホースを例に説明する。すなわち、加硫済みゴムからなる加硫ゴム管状体の内周面に、フッ素系樹脂粉末を溶融接着することにより製造することができる。より詳しく説明すると、すなわち、まず、NBR−PVC、エピクロルヒドリンゴム、NBR、およびフッ素ゴムからなる群から選ばれた少なくとも一つのゴムに、上記方法によりDBU塩を含有させたものを準備し、これを射出成形機により射出し加硫成形して、図1に示すような、両端部が円筒状を有し、略中央部が蛇腹形状に加硫成形された単層構造の加硫ゴム管状体1を作製する。つぎに、この加硫ゴム管状体1の内周面の所定部分(図1において、開口両端から一部内周面を除く)に、上記フッ素系樹脂粉末を粉末塗装により溶融付着する。具体的には、高電圧発生装置に接続されたスプレーガンにエア管、樹脂粉末の供給管を通じてエアとフッ素系樹脂粉末とを供給し、スプレーガンに取付けた長いノズルの噴出口から負または正に帯電させたフッ素系樹脂粉末を噴出して静電塗装する。さらに、フッ素系樹脂粉末を加熱溶融して、フッ素系樹脂粉末を薄膜化する。この加熱方法としては、例えば、内周面がフッ素系樹脂粉末で塗装された加硫ゴム管状体を加熱オーブンに入れて全体的に加熱する方法、あるいは加硫ゴム管状体の内側に棒状の加熱装置を挿入して内側から加熱する方法等を実施することができる。加熱条件は、使用するフッ素系樹脂粉末や、加硫ゴムの種類により適宜に設定されるが、通常、150〜250℃で2〜40分間であり、好ましくは170〜240℃で3〜35分間である。最後に、上記加熱によりフッ素系樹脂粉末が薄膜化した加硫ゴム管状体をオーブンから取り出し冷却することにより、図2(A)および(B)に示すように、加硫ゴム管状体1の内周面の所定部分に、フッ素系樹脂層2を形成した燃料ホース3を得ることができる。この燃料ホース3は、略中央域に位置する蛇腹部3aと、その両端に位置する円筒形状を有する端部3bとから構成されている。そして、使用時には、例えば、図3に示すように、一方の端部3bに相手側である金属製パイプ4を挿入し接続することにより燃料ホースとして使用される。
【0030】
上記製造工程においては、加硫ゴム管状体1の作製方法としては射出成形機による射出成形をあげているが、これに限定するものではなく、例えば、押出成形等の成形方法があげられる。
【0031】
上記燃料ホース3において、フッ素系樹脂層2の厚みは、通常、0.02〜1mmの範囲に、好ましくは0.05〜0.5mmの範囲に設定される。また、加硫ゴム管状体1のゴム層の厚みは、通常、2〜6mmの範囲に、好ましくは3〜5mmの範囲に設定される。
【0032】
なお、上記フッ素系樹脂層2は、上記加硫ゴム管状体1の内周面の所望の場所、例えば、上記のように、加硫ゴム管状体1内周面の両端部には形成させないようにする等、所望の場所のみ形成することができる。また、加硫ゴム管状体1は、図1に示すような中央域が蛇腹形状に限定されず、直管形状あるいは曲管形状であってもよい。さらに、加硫ゴム管状体1は、図1に示すような単層構造のものに限定されるものではなく、2層以上の加硫ゴム層からなる多層構造を採用することも可能である。
【0033】
上記加硫ゴム管状体1が2層以上の加硫ゴム層からなる多層構造は、加硫ゴム管状体1の外周に、加硫ゴム管状体1の形状に沿って、前述の他のゴム材料からなる加硫ゴム層を形成することにより作製される。この加硫ゴム層の形成方法としては、まず第1層目を射出成形した後、その外周に第2層目を射出成形する方法、多層構造を同時に押出成形する方法等があげられる。
【0034】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0035】
(1)まず、加硫ゴム管状体が、NBR−PVCからなる燃料ホースについて述べる。
【0036】
【実施例1〜7、比較例1〜4】
まず、下記の表1に示す配合のNBR−PVC材料、すなわちDBU塩を含有するNBR−PVC材料(A1〜A4)およびDBU塩を含有しないNBR−PVC材料(V)を準備し、これを先に述べたように射出成形機により160℃で5分間射出成形を行い、内径35mm、厚み4mm、長さ200mmの蛇腹形状に加硫成形した単層構造の加硫NBR−PVC管状体を作製した。つぎに、下記の表2に示すメルトインデックスを有するフッ素系樹脂粉末を準備し、これを上記加硫NBR−PVC管状体の内周面に、厚み0.2mmとなるように静電塗装した。この静電塗装は、60kV/10mAのコロナ放電(マイナス・チャージ)により行った。さらに、このフッ素系樹脂粉末を塗装した加硫NBR−PVC管状体をオーブンに入れて210℃で25分間、加熱溶融した後、オーブンから取り出して冷却し、上記加硫NBR−PVC管状体の内周面にフッ素系樹脂層を形成し、目的とする燃料ホース(2層構造)を得た。
【0037】
【従来例1】
下記の表1に示す配合のNBR−PVC材料(V)を用いて射出成形を行った。上記射出成形の条件は、上記実施例1と同条件に設定した。このようにして、内径35mm、厚み4mm、長さ200mmの蛇腹形状に加硫成形した単層構造の加硫NBR−PVC管状体からなる燃料ホースを作製した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
(2)つぎに、加硫ゴム管状体の内層が、エピクロルヒドリンゴムからなる燃料ホースについて述べる。
【0041】
【実施例8〜15、比較例5〜8】
下記の表3に示す配合のエピクロルヒドリンゴム材料、すなわちDBU塩を含有するエピクロルヒドリンゴム材料(B1〜B5)およびDBU塩を含有しないエピクロルヒドリンゴム材料(W)を用いて加硫エピクロルヒドリンゴム管状体を作製した。そして、上記実施例1と同様にして、加硫エピクロルヒドリンゴム管状体の内周面に、下記の表4に示すメルトインデックスを有するフッ素系樹脂粉末を用いてフッ素系樹脂層を形成し、目的とする燃料ホース(2層構造)を得た。
【0042】
【実施例16】
下記の表3に示す配合のエピクロルヒドリンゴム材料(B2)を準備し、これを先に述べたように射出成形機により160℃で5分間射出成形を行い、内径35mm、厚み1mm、長さ200mmの蛇腹形状に加硫成形した加硫エピクロルヒドリンゴム管状体を作製した。つぎに、この加硫エピクロルヒドリンゴム管状体を別の金型に設置し直し、上記表1に示す配合のNBR−PVC材料(V)を用いて射出成形を行った。上記射出成形の条件は、上記実施例1と同条件に設定した。このようにして、内径35mm、厚み4mm(加硫エピクロルヒドリンゴム内層の厚み1mm、加硫NBR−PVC外層の厚み3mm)、長さ200mmの2層構造の加硫ゴム管状体を作製した。そして、下記の表4に示すメルトインデックスを有するフッ素樹脂を用い、上記実施例1と同様にして、内層である加硫エピクロルヒドリンゴム管状体の内周面にフッ素系樹脂層を形成し、目的とする燃料ホース(3層構造)を得た。
【0043】
【従来例2】
下記の表3に示す配合のエピクロルヒドリンゴム材料(W)を用いて射出成形を行った。上記射出成形の条件は、上記実施例1と同条件に設定した。このようにして、内径35mm、厚み4mm、長さ200mmの蛇腹形状に加硫成形した単層構造の加硫エピクロルヒドリンゴム管状体からなる燃料ホースを作製した。
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
(3)さらに、加硫ゴム管状体の内層が、NBRからなる燃料ホースについて述べる。
【0047】
【実施例17〜23、比較例9〜12】
上記表1に示す配合のNBR−PVC材料(V)、および下記の表5に示す配合のNBR材料、すなわちDBU塩を含有するNBR材料(C1〜C4)およびDBU塩を含有しないNBR材料(X)を用いて射出成形を行った。上記射出成形の条件は、上記実施例16と同条件に設定した。このようにして、内径35mm、厚み4mm(加硫NBR内層の厚み1mm、加硫NBR−PVC外層の厚み3mm)、長さ200mmの2層構造の加硫ゴム管状体を作製した。そして、上記実施例16と同様にして、内層である加硫NBR管状体の内周面に、下記の表6に示すメルトインデックスを有するフッ素系樹脂層を形成し、目的とする燃料ホース(3層構造)を得た。
【0048】
【従来例3】
下記の表5に示す配合のNBR材料(C1)および上記表1に示す配合のNBR−PVC材料(V)用いて射出成形を行った。上記射出成形の条件は、上記実施例16と同条件に設定した。このようにして、内径35mm、厚み4mm(加硫NBR内層の厚み1mm、加硫NBR−PVC外層の厚み3mm)、長さ200mmの2層構造の加硫ゴム管状体からなる燃料ホースを作製した。
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
(4)つづいて、加硫ゴム管状体の内層が、フッ素ゴムからなる燃料ホースについて述べる。
【0052】
【実施例24〜29、比較例13〜16】
上記表1に示す配合のNBR−PVC材料(V)、および下記の表7に示す配合のフッ素ゴム材料、すなわちDBU塩を含有するフッ素ゴム材料(D1〜D4)およびDBU塩を含有しないフッ素ゴム材料(Y1、Y2)を用いて射出成形を行った。上記射出成形の条件は、上記実施例16と同条件に設定した。このようにして、内径35mm、厚み4mm(加硫フッ素ゴム内層の厚み1mm、加硫NBR−PVC外層の厚み3mm)、長さ200mmの2層構造の加硫ゴム管状体を作製した。そして、上記実施例16と同様にして、内層である加硫フッ素ゴム管状体の内周面に、下記の表8に示すメルトインデックスを有するフッ素系樹脂層を形成し、目的とする燃料ホース(3層構造)を得た。
【0053】
【従来例4】
下記の表7に示す配合のフッ素ゴム材料(D1)および上記表1に示す配合のNBR−PVC材料(V)用いて射出成形を行った。上記射出成形の条件は、上記実施例16と同条件に設定した。このようにして、内径35mm、厚み4mm(加硫フッ素ゴム内層の厚み1mm、加硫NBR−PVC外層の厚み3mm)、長さ200mmの2層構造の加硫ゴム管状体からなる燃料ホースを作製した。
【0054】
【表7】
【0055】
【表8】
【0056】
このようにして得られた実施例1〜29品、比較例1〜16品および従来例1〜4品の各燃料ホースについて、内層の加硫ゴム管状体とフッ素系樹脂層との接着性(従来品は測定評価不能)、燃料透過性、フッ素系樹脂層の引張り破断伸び(従来品は測定評価不能)の各特性について調べた。この結果を、下記の表9〜12に示す。なお、上記各特性は、下記の方法により調べた。
【0057】
〔内層の加硫ゴム管状体とフッ素系樹脂層との接着性〕
接着性の試験は、JIS K 6256に準じておこなった。すなわち、実施例品および比較例品の燃料ホースの端部を、燃料ホースの軸方向に幅25mmとなるようにリング状に切断し、さらに長手方向に切開して試験サンプルとした。ついで、この試験サンプルの切開面から、内層(加硫ゴム管状体)およびフッ素系樹脂層を剥離し、その剥離端を、引張試験機のつかみ治具に固定して、引張速度25mm/分で引張試験を行い、得られた荷重から上記二層間の剥離強度を求め、初期値とした。つぎに、燃料ホースの中にFuel Cを封入し、温度40℃で72時間放置した後、上記初期値の測定と同様にして剥離強度を求め、燃料封入後の値とした。そして、初期(燃料封入前)と燃料封入後における、内層の加硫ゴム管状体とフッ素系樹脂層との接着性を評価した。
【0058】
〔燃料透過性〕
まず、Fuel CおよびM15〔メタノール/Fuel C=15/85(体積混合比)〕の二種類の試験用ガソリンを準備した。そして、これら各ガソリンを燃料ホースに封入し、温度40℃で168時間放置した。ついで、新しいガソリンに入替えた後、さらに40℃で72時間放置して、放置前後の重量変化から一日当たりの燃料透過量を算出した。
【0059】
〔フッ素系樹脂層の引張り破断伸び〕
フッ素系樹脂層の引張り破断伸びは、ASTM D 638に準じて測定した。具体的には、各実施例品および比較例品の燃料ホースから周方向に短冊を切り取った後、この短冊をフッ素系樹脂層側から測定して厚み0.5mmになるようにスライスした。そして、スライスしたフッ素系樹脂層をダンベルで打ち抜き、これを引張り速度100mm/minで引張り、フッ素系樹脂層の破断する伸びを測定した。
【0060】
【表9】
【0061】
【表10】
【0062】
【表11】
【0063】
【表12】
【0064】
上記の表9〜12の結果から、全ての実施例品に関して、高い接着性を有し、しかも燃料透過性が低く耐燃料性に優れ、引張り破断伸びも高く強度的にも優れていることがわかる。なかでも、実施例品の燃料ホース、すなわち、230℃において、体積換算で15〜120cm3 /10minのメルトインデックスを有するフッ素系樹脂粉末を用いて形成されたフッ素系樹脂層を有する燃料ホースは、加硫ゴム管状体との接着性および引張り破断伸びに関して特に優れていることが明らかである。これに対して、比較例1〜16品は接着性に劣ることがわかる。
【0065】
【発明の効果】
以上のように、本発明の製法により得られる燃料ホースは、単層または多層からなる加硫ゴム管状体と、この加硫ゴム管状体の最内層の内周面に形成されたフッ素系樹脂層とからなり、少なくとも最内層が特定の加硫ゴムで形成されているとともに、DBU塩を含有し、かつ、上記フッ素系樹脂層が、フッ素系樹脂粉末の溶融接着体で形成されている。このため、従来のように、ナトリウムエッチング処理、コロナ処理、低温プラズマ処理等の接着前処理といった複雑な製造工程をとることなく、加硫ゴム管状体の最内層とフッ素系樹脂層との接着性が向上し、ガソリン、特にアルコール混合ガソリン、サワーガソリン、ガソリン清浄剤等に優れた耐性を奏する。
【0066】
また、上記フッ素系樹脂層を、150〜250℃の範囲において、体積換算で15〜120cm3 /10minのメルトインデックスを有するフッ素系樹脂粉末を用い、これを上記加硫ゴム管状体の最内層の内周面に粉末塗装により溶融付着して形成すると、加硫ゴム管状体内周面との接着性において特に優れたものが得られる。
【0067】
加えて、上記DBU塩が、カルボン酸のDBU塩およびフェノール樹脂のDBU塩の少なくとも一方であれば、フッ素系樹脂層との接着性において特に優れたものが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 加硫ゴム管状体の一例を示す斜視図である。
【図2】(A)は本発明の製法により得られる燃料ホースの一例を示す断面図であり、(B)はそのX−X線矢視断面図である。
【図3】 本発明の製法により得られる燃料ホースの使用用途を説明する断面図である。
【符号の説明】
1 加硫ゴム管状体
2 フッ素系樹脂層
3 燃料ホース
Claims (3)
- 単層または多層からなる加硫ゴム管状体と、この加硫ゴム管状体の最内層の内周面に形成されたフッ素系樹脂層とを備えた燃料ホースの製法であって、アクリロニトリルブタジエン−ポリ塩化ビニルブレンドゴム,エピクロルヒドリンゴム,アクリロニトリルブタジエンゴム,およびフッ素ゴムからなる群から選ばれた少なくとも一つのゴムと、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7塩とを用いて、上記加硫ゴム管状体の少なくとも最内層を形成した後、上記最内層の内周面に下記のフッ素系樹脂粉末(A)を粉末塗装により溶融付着することにより、上記加硫ゴム管状体の最内層の内周面にフッ素系樹脂層を形成することを特徴とする燃料ホースの製法。
(A)150〜250℃の範囲において、体積換算で15〜120cm3 /10minの範囲であるメルトインデックスを有するフッ素系樹脂粉末。 - 上記フッ素系樹脂粉末が、フッ化ビニリデンと4−フッ化エチレンとの共重合体,フッ化ビニリデンと6−フッ化プロピレンとの共重合体,フッ化ビニリデンと4−フッ化エチレンと6−フッ化プロピレンとの三元共重合体,およびフッ化ビニリデンと6−フッ化プロピレンとの共重合体にフッ化ビニリデンをグラフトした重合体からなる群から選ばれた少なくとも一つのフッ素系樹脂の粉末である請求項1記載の燃料ホースの製法。
- 上記1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7塩が、カルボン酸の1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7塩およびフェノール樹脂の1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7塩の少なくとも一方である請求項1または2記載の燃料ホースの製法。
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