電子写真方式等を利用してなる画像形成装置においては、記録媒体である感光体上に着色剤であるトナーにて所望の画像を形成し、これを適宜搬送されてくる転写材であるシートに転写するようにしている。そこで、トナーを複数色使用することで、カラー画像を得ることもできる。
近年、オフィスのカラー指向が強くなり、カラー画像形成装置が広く利用されるようになった。このカラー画像を形成する一つの方式としては、感光体上に一色毎にトナー像を形成し、これをシート上に順次重ねることで所望の色のカラー画像を得るものがある。この場合、シートは感光体と対向接触する位置に複数回繰り返し搬送される。そのため、カラー画像の形成においては、単色の場合に比べて、3色又は4色のトナーを利用して画像を形成するため3又は4倍もかかることになる。
そこで、それぞれの色に対応する感光体を備え、感光体上に形成されたトナー像を順次搬送経路に沿ってシートを搬送することで、単色による画像形成速度と同一の速度でカラー画像を得ることができる感光体ドラム3連又は4連タンデム方式がある。これは、例えば4本の感光体ドラムを一定間隔を隔てて並設し、それぞれの感光体ドラム上に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーを用いてトナー像を形成し、1枚のシートに順次形成したトナー像を、それぞれの転写位置において転写しカラー画像を得ている。
例えば4連タンデム方式では、搬送ベルト上にシートを保持し、各感光体ドラムの転写位置へと感光体に接するようにしてシートを送り込み、トナー像の転写を行っている。
また、カラー画像の形成以外には、例えばブラックトナーによる画像形成が望まれる。つまり、単色像の場合には、他の色のトナーによる画像に比べ、コントラスト等の面から非常に画像の認識が容易となるブラックトナーでの画像が望まれる。そのためこのような単色による画像形成時には、他のイエロー、マゼンタ及びシアンの3本の感光体ドラムにはトナー像が形成されず、ブラックにおるトナー像が形成されてシート上に転写され、黒色の画像を得ている。
上記単色による画像の形成においても、シートは4連の感光体ドラムの各転写位置と対向するように搬送ベルト上に保持された状態で搬送されることになる。そのため、搬送ベルトは、その表面が常にトナー等により汚れる問題を残している。
上記搬送ベルトの汚れは、シートの画像形成面と反対の裏面の汚染や、感光体ドラム表面からシート表面へトナー像を転写する時に、転写効率の低下をまねき転写ムラを生じることがある。この搬送ベルト表面の汚れは、ほとんどがトナー付着であり、大別すると搬送ベルトの上に感光体ドラムと対向配置される現像手段、つまり現像剤を収容した現像器から飛散したトナーが落ちて付着したものと、感光体ドラム表面に付着したトナーが搬送ベルト表面に転写付着したものとに分けられる。
上記搬送ベルト表面のトナー付着において、最も汚れが甚だしいのは、シート搬送不良が生じた際に、搬送ベルト上より搬送不良を起こしたシートを除去した後、感光体ドラム表面に残った未転写のトナー像が搬送ベルト表面に接して付着することである。
そこで、特開平3−288173号公報に記載の画像形成装置においては、黒色の画像形成時には、画像形成に関与しない残りの画像形成部の感光体ドラムより、搬送ベルトを離間させ、トナー汚れを防止するようにしている。この公報記載の構成について図7を参照して説明する。
図7はレーザビームプリンタによるカラー画像形成装置であって、感光体4連タンデム方式を採用したものである。この画像形成装置は、感光体ドラムの周囲に、現像装置等を対向配置した画像形成部が4個設けられ、その各画像形成部にて形成された感光体表面上のトナー画像が、各感光体ドラムに接触するようにして移動通過する無端状の搬送ベルト上に保持され搬送されるシートへと転写される構成となっている。
図において、マゼンタ、シアン、イエロー及びブラックの各色の画像を形成する各画像形成部Pm、Pc、Py及びPkには、それぞれ感光体ドラム101M,101C、101Y及び101Kが配置されており、各感光体ドラムは矢印方向に回転自在となっている。また、各感光体ドラム101M,101C,101Y及び101Kの周囲には、帯電器102M,102C,102Y及び102K、走査光学装置103M,103C,103Y及び103K、並びに現像装置104M,104C,104Y及び104K、そしてクリーナ105M,105C,105Y及び105Kが上記感光体ドラムの回転方向に沿って順次配置されている。さらに、各感光体ドラム101M,101C,101Y及び101Kの下方には、転写部106M,106C,106Y及び106Kが対向して配置されている。
上記各感光体ドラムと各転写部との間には無端状の搬送ベルト107が移動通過するように、感光体ドラム101Mから101Kの配置距離をカバーする間隔で配置されてる駆動ローラ108及び従動ローラ109間に張架されている。この搬送ベルト107は、駆動ローラ108の回転駆動により、矢印方向に走行駆動される。
搬送ベルト107の右側には、該搬送ベルト107へとシートPを送り込むための給紙カセット110が配置されている。そのため、画像形成動作が開始すれば、カラー画像形成を行う場合、最初のマゼンタの画像形成部Pmにより画像形成動作が実行され、この感光体ドラム101Mに形成されたマゼンタのトナー像が転写位置に達するタイミングに合わせて、給紙カセット110から給紙されたシートPは、上記搬送ベルト107上に保持されて、最初の転写位置である転写部106Mに送り込まれる。
そして、上記シートPは搬送ベルト107にて順次搬送され、画画像形成部Pc,Py,Pkの順に形成されていくトナー像がシート上に転写位置を通過する毎に重ねられていく。これらの全ての転写工程を通過したシートPは、搬送ベルト107より分離され、定着装置111へと案内ベルト112を介して送り込まれる。この定着装置111においては、シートP上に重ねられたトナー像を同時に熱定着するものであって、シート上に所望のカラー画像が形成される。
以上はフルカラー画像による画像形成動作であるが、単色、特に黒トナーによる画像形成を行う場合を説明すれば、搬送ベルト107は、支持台113上に設けられており、該支持台113は回転偏心カム114a及び114bにて支持されている。特に支持台113は、搬送ベルト107を走行駆動するための駆動ローラ108の回転軸又は従動ローラ109の回転軸を中心に回動可能に設けられている。
そこで、画像形成部Pkを用いて画像形成を行う場合、駆動ローラ108と反対側の偏心カム114bをQ方向に回転させることで、支持台112をR方向に回動させ、画像形成部Pk以外の感光体ドラムを搬送ベルト107より離間された状態で、黒トナーによる画像形成を行う。つまり、感光体ドラム101Kが搬送ベルト107と接する状態にし、形成されたトナー像が搬送ベルト107に保持された搬送されるシートP上に転写され、黒トナーによる画像を得ることができる。
特開平3−288173号公報(平成3年12月18日公開)
以下に本発明による実施形態において図面に従って詳細に説明する。図1は、本発明による画像形成装置全体の構成を示した断面図である。
まず図1においては、本発明にかかる画像形成装置について説明しておく。図1においてはレーザビームプリンタによる画像形成装置であるが、これらに本願発明は限定されるもではない。例えば、デジタルカラー複写機、通常のアナログカラー複写機においても適用できる。
図において、画像形成装置1内には、少なくとも4色に対応する画像形成部Pa,Pb,Pc,Pdが設けられている。該画像形成部は、本発明の以下に示す実施形態においては、4個になっているが、少なくとも2個以上を並設した場合において適用できる。
また、画像形成装置1の一方の側面、つまり右側には給紙装置2が設けられており、その反対側には転写材であるシートを排出する排出部3が設けられている。その排出部3に隣接、特にシート搬送方向の上流側にはシート上に転写された未定着のトナー像を加熱定着するための定着装置4が設けられている。
そして、上記給紙装置2と定着装置4との間には、給紙装置2より給紙されたシートPが上述した各画像形成部Pa,Pb,Pc,Pdのそれぞれの転写位置を通過するように、上記シートPを保持し搬送する搬送手段5が配置されている。
上記給紙装置2は、従来より周知の構成であり、その一例を示せば、画像形成装置1本体に着脱可能に設けられた給紙カセット20内に多数のシートPが収容されており、該給紙カセット20内のシートは、対向配置された給紙ローラ21にて1枚ずつ給紙される。給紙されたシートPは、給紙ローラと上記搬送手段5との間に配置されているレジストローラ22の位置で停止させ、画像形成動作と同期されるように搬送手段5を介して最初の画像形成部Paの転写位置へと送られる。
また、排出部3は、定着装置4を構成するローラ対に対応した排出口に設けられた排出ローラ30を備えており、その排出ローラ30を介して送られるシートPを受ける排出トレイ31を設けている。
定着装置4は、従来より周知であり、その構造を簡単に説明すれば、図示しないヒータにより、その表面が定着可能な温度に保持されているヒートローラ41と、該ヒートローラ41に適度の圧力にて圧接される加圧ローラ42とから構成されている。
一方、各画像形成部Pa,Pb,Pc及びPdは、実質的に同一構成を有しており、形成される画像の色のみが異なる。この画像形成部Pa,Pb,Pc及びPdは、例えばマゼンタ、シアン、イエロー及びブラックによるトナー像を形成する手段である。図において、同一部分を同一符号を付し、色による違いをa,b,c及びdにて区別させている。
そこで、画像形成部Paの構成を代表して説明すれば、この画像形成部Paは、矢印F方向に回転駆動される感光体ドラム10aを含み、この各感光体ドラムの周辺には、感光体ドラムの感光表面を均一に帯電する帯電器11a、感光体表面に形成された静電潜像を現像する現像装置12a、現像されたトナー像を先に説明したシートPに転写する転写部13a、転写後に感光体表面に残留するトナーを除去するクリーニング装置14aが、感光体ドラムの回転方向に順次対向配置されている。
また、感光体ドラム10aの上方には、結像レンズ15a及びレーザビームスキャナ16aが設けられている。レーザビームスキャナ16aは、従来より周知の構造を呈している。特にレーザビームスキャナ16aは、マゼンタによる画像を形成するためのもので、そのマゼンタに対応する画像データに応じて半導体レーザがON−OFF駆動制御され、回転ミラー(ポリゴンミラー)等を介して偏向され、さらにfθレンズ等を介して、感光体ドラム10a上を回転軸方向に走査するようになっている。
以上のような構成の画像形成部Pa,Pb,Pc,Pdにおいて、各現像装置12a,12b,12c及び12dは、それぞれマゼンタ、シアン、イエロー及びブラックのトナーが収容されており、各レーザビームスキャナ16a,16b,16c及び16dにて、それぞれの色の成分の画像、特に潜像が感光体上に形成され、これを現像する。
これに対し、画像形成部Pa,Pb,Pc,Pdにて形成されたトナー像を、シート上に転写するためのシート搬送手段5は、給紙装置2、特にレジストローラ22と定着装置4とに対応するようにして設けられた駆動ローラ50と従動ローラ51との間に張架された無端状のシート搬送ベルト52を設けて構成されている。シート搬送ベルト52の内部には、さらにベルトの搬送を安定させるための従動ローラ53及び矢印X方向に移動可能に設けられ、その方向にさらに付勢されベルト52に適度のテンション(張力)を付与させるように作用する圧縮スプリング55を備えるテンションローラ54を有している。
また、シート搬送ベルト52には、その表面上に給送されてくるシートPを保持して搬送するために、レジストローラ22を介して送られてくるシートが対向する従動ローラ51に対応する位置に、シート吸着用帯電器56が設けられる。そのため、搬送されてくるシートPは、吸着用帯電器56の作用により静電的にシート搬送ベルト52に吸着され搬送されることになる。
さらに、上記シート搬送ベルト52内には、上述した画像形成部Pa,Pb,Pc,Pdを構成する転写部13a,13b,13c及び13dが配置されるようになっており、これらの転写部は第1の回動部材である支持体57及び第2の回動部材である支持体58に設けられている。第1の支持体57は、特に転写部13a,13b,13cを支持しており、第2の支持体58は、転写部13dを支持している。
そして、上記第1の支持体57は、画像形成部Pcに対応する側、特にシートPが送り込まれてくる搬入側と反対側に設けられた回動軸59にて回動可能に軸支持されており、第2の支持体58は、画像形成部Pdに対応する側、特にシート画像形成部Pdより搬出される側が、回動軸60にて回動可能に軸支されている。また第1の支持体57は、支持した転写部とは反対側の面が回動軸59側とは反対位置で偏心カム61の周面(カム面)にて支えられるようになっている。また、第2の支持体58においても、同様に支持した転写部とは反対側の面が、回動軸60と反対位置で偏心カム62の周面(カム面)にて支えられるようになっている。
上記偏心カム61及び62は、回転軸からカム面までの距離が最長状態において、各転写部13a,13b,13c及び13dが各画像形成部Pa,Pb,Pc,Pdの感光体ドラム10a,10b,10c及び10dに一定の幅でシート搬送ベルト52を接触させるようにして、転写可能状態に位置決められるようになっている。
転写部13a,13b,13c及び13dにおいては、2本の円柱形状のローラにて構成され、該2本のローラに転写電圧を印加して転写を行う構成であってもよい。またローラは単にベルトを感光体ドラムに接触させるために設けられ、その間に図示していないコロナ放電を行う転写器を別途設ける構成であってもよい。
(画像形成動作の説明)
以上のように本発明による画像形成装置が構成されており、以下に画像形成動作について説明する。ブラックトナーを含めたフルカラー画像を形成する場合、偏心カム61及び62は図1の状態に維持されており、第1及び第2の支持体57,58に支持された転写部13a,13b,13c及び13dを転写位置へと位置付けている。
この状態で、画像形成動作の開始によりシートPが給紙ローラ21の回転により回転し、給紙カセット20より1枚給紙される。この給紙されたシート先端が図示しなしシート先端検知手段にて検知されれば、その信号により各画像形成部Pa,Pb,Pc,Pdの感光体ドラム10a,10b,10c及び10dが回転を開始する。給紙されたシートPは、その先端がレジストローラ22の位置で一旦待機し、停止される。
上記検知信号を受け、シート搬送手段5における駆動ローラ50も回転し、シート搬送ベルト52が矢印Z方向に走行される。これによりシート搬送ベルト52は、上記画像形成部Pa,Pb,Pc,Pdを順次通過することになる。そして、上記レジストローラ22の駆動基点、つまりシートPの搬送開始基点として所定のタイミングで、感光体ドラム10a,10b,10c及び10dに対する画像形成動作が順次開始される。まず、第1の画像形成部Paである感光体ドラム10aには、マゼンタのトナーによる画像が形成され、次に第2の画像形成部Pbの感光体ドラム10bに、シアンのトナーによる画像が、そして第3の画像形成部Pcの感光体ドラム10cに、イエローのトナーによる画像が、最後に第4の画像形成部Pdの感光体ドラム10dに、ブラックのトナーによる画像がそれぞれ分担されて時間をずらせて形成される。
ここで、上記各色の画像形成を行うタイミングのずれは、シート搬送ベルト52が転写部13aから次の転写部13bへと移動する時間に等しく設定されている。この場合、各転写部13a,13b,13c及び13dの間隔はそれぞれ等しい間隔で配置される。
そして、シートPはシート搬送ベルト52表面に吸着用帯電器56の作用により吸着されて第1の画像形成部Paへと送り込まれる。該シート先端が転写部13aと対向する転写位置へと送り込まれるタイミングで、感光体ドラム10aに形成されたマゼンタトナー画像の先端が達し、そのトナー画像の転写が開始される。以後同様にしてシート搬送ベルト52にて搬送されるシートPは、順次第2、第3及び第4の画像形成部Pb,Pc,Pdの転写部を通過することで、順次各色のトナー画像が転写され重畳されていく。そして、最終の第4の画像形成部Pdの転写部をシートPが通過することで、図示していない交流除電器にてシートシート搬送ベルト52より静電吸着状態が解除され、該ベルトより分離し定着装置4へと送り込まれる。
上記定着装置4へと送り込まれるシートPは、その上面に各色のトナー画像が順次重ね合わされて転写されており、それが加熱され定着され、カラー画像が合成される。この定着後のシートPは排出口の排出ローラ30を介して排出トレイ31へと送り出される。
(本発明の一実施形態による説明)
次に、本発明による上述のような構成による画像形成装置において、シート搬送ベルト52による画像形成部Pa,Pb,Pc及びPdの各感光体に対して接離させる機構の一実施形態における動作、つまり各画像形成部の感光体ドラム10a,10b,10c及び10dに対して接離させるため機構及びその動作を説明する。
シート搬送手段5を構成するシート搬送ベルト52は、両側に配置されている駆動ローラ50と従動ローラ51間に張架されている。さらに、従動ローラ53及びテンションローラ54により適度の張力が作用し、駆動ローラ50にて矢印Z方向に正常なる搬送、つまり走行駆動が行われる。
上記駆動ローラ50、従動ローラ51及び53は、図示しないが画像形成装置1本体に対して引き出し可能に設けられている支持台(図1には図示せず)に回転可能に支持されており、駆動ローラ50のみ画像形成装置1本体側の駆動部に連結可能に設けられている。そして、テンションローラ54は、支持台に対して矢印X方向に移動可能に支持されており、図示しない支持台側の固定部55−1とローラ54間に介在されている圧縮スプリング55にて常にY方向への付勢力が作用される。これによりシート搬送ベルト52に適度の張力を作用させ、駆動ローラ50との密着状態を良好に保っている。
一方、各画像形成部Pa,Pb,Pc,Pdの各転写部13a,13b,13c及び13dは、カラー転写用とブラック転写用とに区分され、それぞれが第1の支持体57と第2の支持体58とに区分されて保持されている。つまり第1の支持体57に保持されている転写部13a,13b,13cがカラー転写ユニットとして構成され、第2の支持体58に保持される転写部13dにてブラック転写ユニットが構成される。
上記カラー転写ユニットである第1の支持体57及びブラック転写ユニットである第2の支持体58の転写部保持面とは反対面には、シート搬送ベルト52の接離用の回転駆動される偏心カム61及び62が設けられている。従って、第1及び第2の支持体57,58は、軸部59,60にて回転可能に支持されているため、偏心カム61及び62の回転により回転軸からのカム面までの距離の違いにより回動されることになる。
通常ブラックトナーを含めたフルカラー画像形成モードにおいては、図1に示す状態に偏心カム61及び62の回転位置が維持されている。つまり、各偏心カム61及び62の回転軸から最長距離のカム面にて第1及び第2の支持体57、58が支持され位置決められている。これにより、転写部13a,13b,13c及び13dにてシート搬送ベルト52が一定の幅で、各画像形成部Pa,Pb,Pc,Pdの感光体ドラム10a,10b,10c及び10dに接触する。この状態において、フルカラー画像形成動作が行われる。
上述したカラー画像形成モードから、単色画像の形成モード、つまりブラックによる画像形成モードが選択された場合には、偏心カム61が矢印S方向に回転駆動され、回転軸より最小のカム面が第1の支持体57を支持する位置まで回転される。つまり、偏心カム61が180°回転駆動されて停止する。これにより図1に示すように第1の支持体57は矢印T方向に回動軸59を中心に回動され、図2に示すようにカラー転写ユニットである各転写部13a,13b,13cが感光体ドラム10a,10b,10cより離間する。そのため、シート搬送ベルト52は感光体ドラム10a,10b,10cより離間される。
この時、テンションローラ54は、圧縮スプリング55の作用により矢印X方向に移動され、シート搬送ベルト52に対してY方向の付勢力を付与し、テンション状態を良好に維持する。
この場合、圧縮スプリング55の一端を固定(係止)している固定部55−1は、図示しない支持台に固定して設けることなく、第1の支持体57側に設けるようにしておれば、同時に固定部55−1が回動され、これによりテンションローラ54によるシート搬送ベルト52をより良好なテンション状態、特にカラー画像形成モードの時のテンション状態を維持できる。
以上の動作によりカラー転写部ユニットが離間された状態において、単色、つまりブラックにおる画像形成動作が行われる。この場合、シートPは、不変の従動ローラ51に対向している吸着用帯電器56にてカラー画像形成動作と全く同一条件でシート搬送ベルト52に吸着され搬送されることになる。また、ブラックによる画像形成部Pdにおいては、その転写部13dが感光体ドラム10dに一定条件で接触した状態で維持されているため、全く条件が変化しない状態での安定した画像形成を行える。
次に、黒による単色画像形成モードとは別で、かつブラックを含むフルカラー画像形成モードとも異なるカラートナーによるカラー画像形成モードについて説明する。この場合、図1においてはカラーとしてマゼンタ、シアン、イエローの3色により形成するようにしているが、これに限らず、一色による単色カラー画像形成を行う場合、一色に対応するカラートナーによる画像形成部Pa,Pb,Pcの何れか一つが設けられる。
そこで、図1においてカラートナーのよる単色カラー画像を含むカラー画像形成においては、偏心カム62は矢印Q方向に180°回転駆動され、回転軸から最短のカム面にて第2の支持体58を支持する。これにより、第2の支持体58が矢印R方向に回動され、シート搬送ベルト52が画像形成部Pdの感光体ドラム10dより図3に示すように離間する。この離間におけるシート搬送ベルト52の弛みは、テンションローラ54にて緩和される。
従って、シート搬送ベルト52は、テンションローラ54の作用により、適度の張力で張架され、画像形成部Pa,Pb,Pcの感光体ドラム10a,10b,10cに接触し、必要な色の画像を形成できる状態になる。この場合においても、シート搬送ベルト52と感光体ドラム10a,10b,10c等との接触状態が一定に維持されているため、転写条件等が変化することはない。
上記テンションローラ54は、その圧縮スプリング55の一端の固定部55−1が第1の支持体57側に設けられている場合、その固定部分がX方向に移動するので、常に一定のテンション状態をシート搬送ベルト52に作用できない。しかし、黒トナーによる画像形成部Pdの感光体ドラム10dのみに対してシート搬送ベルト52を離間させた場合には、先のカラーユニットを離間させる場合に比べれば、シート搬送ベルト52の移動量が小さく、ベルトの張力状態があまり変化しない。そのため、スプリング55の位置が、回転カム62のQ方向へ回転され変化しなくても、シート搬送ベルト52は決められた範囲内での一定のテンション状態が作用する。
このシート搬送ベルト52のテンション状態については、別の実施形態の説明の項において詳細に説明する。
以上のようにして、カラートナーによる画像形成モードが設定されることで、黒トナーによる画像形成部Pdのみ非画像形成状態に設定され、何れかの色による単色カラー画像形成、2色による単色カラー画像形成、例えばマゼンタとイエローによる赤色の画像形成、シアンとイエローによる緑色の画像形成等が行われる。また、必要に応じて黒トナーを除外したカラー画像形成を行うこともできる。
最後に、画像形成装置の待機中、エージング中又はシートのジャムトラブルの発生時の動作、特にシート搬送ベルト52の感光体ドラムに対する離間状態について説明する。
この場合、回転カム61及び回転カム62はそれぞれ図1において矢印S及びQ方向に回転される。つまり、シート搬送ベルト52が各画像形成部Pa,Pb,Pc及びPdより離間するように回転される。これにより、第1及び第2の支持体57及び58が図3に示すように、回動されシート搬送ベルト52は、各感光体ドラム10a,10b,10c及び10dより離間される。
この状態において、補正エージングが行われ、シート搬送ベルト52の感光体ドラムからのトナー汚れは防止される。また、シートジャムトラブルにおいては、ベルト52が感光体ドラムより全て離間されているため、そのシート除去処理が簡単になり、シートの破損やシート搬送ベルトや感光体ドラム表面を傷付ける危険性が全くなくなる。
(テンション付与の別の実施形態)
次に、本発明にかかるテンション付与の別の実施形態について以下に説明する。この実施形態においては、シート搬送ベルト52のテンション状態を、それぞれの画像形成モードにおいて一定に維持できるようにしたものである。
先の実施形態において説明した事例においては、テンションローラ54のスプリング55の作用によってシート搬送ベルト52の緩みを軽減し、該ベルト52に一定のテンション状態を作用させるように維持されている。また、第1の支持体57側にスプリング55の一端の固定部を設け、第1の支持体57の回動に関連させて、固定部55−1を同様にX方向に移動させ、スプリング55の長さを一定にするようにし、テンション状態を一定に維持させていた。
これとは別に、図4に示すように、スプリング55の一端を固定した固定部55−1を、シート搬送ベルト52を支持してなる支持台(図4には図示せず)に対して、X方向に移動可能に設け、この固定部55−1を、回転偏心カム61の回転に連動させて図4(b)に示すように回転偏心カム61のカム面を利用してX方向への移動を行わせるようにしている。これにより、シート搬送ベルト52が画像形成部Pa,Pb,Pcより離間させた状態と、接触させた状態において、テンションローラ54と固定部55−1との間の圧縮スプリング55の長さが一定に保たれ、よってシート搬送ベルト52に作用するテンション状態を一定に維持できる。
また、回転偏心カム61のカム面を利用してスプリング55の固定部55−1を連動させて移動させるようにしているが、回転カム61の回転軸63に連動して回転する第2の回転偏心カム等を設けて、該第2の回転偏心カムの面にて固定部55−1をX方向に移動させるようにしてもよい。
このように構成した場合、第2の支持体58を支持する回転偏心カム62の回動において連動する第3の回転偏心カムを設け、該第3の回転偏心カムにおいても、上記固定部55−1をX方向に移動させることもできる。
また、回転カム62により回転において、シート搬送ベルト52が画像形成部Pdの感光体ドラム10dより離れる距離が短いため、回転カム62の回転に対して連動する第3のカムにて固定部55−1をX方向に移動させる距離は、短くなるように上記第3の回転偏心カムのカム面が形成される。このような構成において、カラー画像形成モードにおいても、シート搬送ベルト52の張力状態を一定に維持できる。
ここで、単色ユニット及びカラーユニットを各画像形成部Pa,Pb,Pc及びPdより離間させる場合、当然第2の回転偏心カムにて固定部55−1が移動されることになる。つまり第2の回転偏心カム及び第3の回転偏心カムがそれぞれ連動して回転するが、実質第2の回転カムによる固定部55−1を移動させる距離の方が大きいためである。この場合、画像形成には直接関係ないため、そのシート搬送ベルト52による張力状態が多少変化していても全く問題はなく、該シート搬送ベルト52は、適度の張力作用が維持されている。
(本発明にかかる実施形態)
次に、本発明にかかる実施形態、つまりシート搬送ベルト52を支持してなる支持台の引き出し機構について説明する。特に、シート搬送ベルト52全体の引き出しは、該シート搬送ベルト52が画像形成部Pa,Pb,Pc及びPdより離間されている場合においてのみ引き出し可能となり、何れかが接触状態においては引き出し不可能になるように構成されている。
そのため、図5に示すように回転カム61及び62の回転軸63及び64の奥側の一端に、引き出しロック用の係止部材65及び66を取り付けている。この係止部材65及び66に対応させるようにして、画像形成装置1本体側に設けられた固定板67及び68が設けられ、この係止部材及び固定板にてロック機構が構成されている。
上記係止部材65及び66と、固定板67及び68との位置関係は、図6に示すように引き出し方向Wの奥側に設けられている。図6は図5における不要部分を割愛した上面図であり、支持台69を簡略的に図示している。
この図において、回転偏心カム61及び62の回転軸63及び64は、支持台69上に回転可能に支持されており、この回転軸63及び64の一端に係止部材65及び66が取り付けられている。そして、固定板67及び68は、画像形成装置1の本体側に固定されている。さらに、係止部材65及び66と、固定板67及び68とは、シート搬送ベルト52が画像形成部Pa,Pb,Pc及びPdの各感光体ドラム10a,10b,10c及び10dに接している状態、つまい回転偏心カム61及び62のカム面までの最長距離が第1及び第2の支持体57及び58に接している状態において、それぞれ対向する係止(ロック)状態に位置している。
従って、シート搬送ベルト52が感光体ドラム10a,10b,10cと接触している状態、及び感光体ドラム10dと接触している状態においては、係止部材65及び66の両方又は何れか一方が固定板67及び68に対向しており、図6(a)及び(b)のようにロック状態が維持されている。そのため、シート搬送ベルト52を含む搬送手段全体を支持する支持台69は、矢印W方向に引き出すことができない。
つまり、図3に示したように、シート搬送ベルト52が、感光体ドラム10a,10b,10c及び10dより離間されている状態においては、係止部材65及び66が固定板67及び68と対向しておらず、これにより支持台69を矢印W方向に引き出すことができる。この場合、シート搬送ベルト52が感光体ドラム10a,10b,10c及び10dより離間しているため、引き出し動作に対して、何ら阻害されず、感光体ドラムやシート搬送ベルトの傷付け等の危険性はない。
なお、支持台69上には、搬送手段5を構成する部材が全て支持されてる。つまり、シート搬送ベルト52を張架するための駆動ローラ50、従動ローラ51及び53、テンションローラ54、スプリング55、固定部55−1、第1及び第2の支持体57及び58、回転カム61及び62等を回転可能、また移動可能、さらに固定状態等で支持されている。
以上説明したように、本発明によれば、シート搬送ベルト52を画像形成部Pa,Pb,Pc及びPdにおいて、任意に接離可能に設けており、該シート搬送ベルト52を支持している支持台69を含めて接離可能に設ける必要がないため、その機構、及び構成が非常に簡単になる。しかも、シート搬送ベルト52を接離可能に設けているが、その時のテンション状態を一定に維持できるようにテンションローラ54を設け、このテンションローラ54にテンションを付与するための圧縮スプリング55の距離を不変にするようにしており、これにより画像形成モードに関係なく一定状態に常に維持でき、特に転写条件が変化する等のことがなくなる。
なお、本発明において、シート搬送ベルト52を感光体ドラムより離間させるために、第1及び第2の支持体57及び58の回動軸59及び60を、それぞれ対向するように設けている。つまり、従動ローラ51又は駆動ローラ50側と反対側になるように、上記回動軸59及び60を設けている。このようにすることで、シートの搬入側、又搬出側に図3に示す通り、大きくスペースが形成されるため、シートの除去等がより簡単になる。つまり、回動軸59を従動ローラ51側に設けると、シートの搬入側でのスペースが大きく取れず、ジャムシートの除去が面倒になる。また、回動軸60を駆動ローラ50側に設けると、感光体ドラム10a,10b,10c及び10dとシート搬送ベルト52との離間する間隔が非常に短くなり、シート除去作業等が面倒になるだけでなく、感光体ドラムとの接触状態を完全に離間させることができず、トナーによる汚れ等の防止を行えなくなる。
このような不都合が、本発明の構成においては解消でき、例えば図3に示すようにシート搬送ベルト52は、シートの搬入側と搬出側に大きく開放されるため、シートの除去が非常に簡単になる。
ここで、第1及び第2の支持体57及び58の回動軸59及び60は、個別に設けているが、これらを同一軸にし、この軸上にそれぞれ第1及び第2の支持体57及び58を反対方向に回動できるように設けることができる。これは、回動軸59及び60を、従動ローラ51又は駆動ローラ50側と反対側に設けることにより採れる本発明の独特の構成ともいえる。
本発明による上述した目的を達成するための装置は、このような構成によれば、搬送ベルトが画像形成部の特に記録媒体と個別に接離する構成であるため、搬送ベルトを支持する全体を移動させる機構を設ける必要がないため、その構成が簡単である。また、全ての画像形成部に対して搬送ベルトを離間させることができるため、ジャムした転写材の除去操作が簡単になり、搬送ベルト等に傷を付ける惧れもなくなる。そして、上述した構成の画像形成装置においては、上記搬送ベルト及び該搬送ベルトを駆動するための機構を含めた搬送手段が、画像形成装置本体より引き出し可能に設けられた支持台上に支持され、上記第1及び第2の回動部材の回動に連動して、支持台の引き出しをロックする係止部材と、画像形成装置本体側に設けられ係止部材と対応し係止可能な固定板とを備えてロック機構を構成してなり、上記係止部材は第1及び第2の回動部材により搬送ベルトを各画像形成部より離間させた状態において、上記固定板との係止状態が解かれるようにすることができ、よってこれにより支持台を引き出すことができる。つまり、搬出ベルトが各画像形成部より離間した状態において、ロック状態が解かれ、搬送ベルト及びこれを駆動する機構を含む搬送手段を簡単に引き出し可能にできる。この場合、搬送ベルトが画像形成部に接触しないため、画像形成部側及び搬送ベルト側が損傷することがなくなる。