JP3818257B2 - ワイヤ放電加工装置 - Google Patents
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Description
この発明は、ワイヤ電極と被加工物間の放電により被加工物の加工を行うワイヤ放電加工装置の改良に関するものである。
背景技術
ワイヤ放電加工は、ワイヤ電極と被加工物との極間に放電エネルギを供給して放電を発生させ被加工物の加工を行うものであり、加工速度は供給された放電エネルギにほぼ比例する。加工速度を向上させるためにはワイヤ電極にできるだけ多くの放電エネルギを供給する必要があるが、あまり多くのエネルギを供給するとワイヤ電極の断線が発生し、ワイヤ電極を再結線する必要が生じるため、結果として加工生産性が著しく損なわれる。
従って、ワイヤ放電加工装置の加工生産性を向上させるためには、ワイヤ電極の断線が発生しない範囲で、できるだけ多くの放電エネルギを投入する必要がある。
第6図は、従来のワイヤ放電加工装置の構成を示す説明図であり、例えば日本国特開昭62−19322号公報に開示された構成と同様の構成を示している。第6図において、1はワイヤ電極、2は被加工物、3はワイヤボビン、4a及び4bは加工液ノズル、5はキャプスタンローラ、6はピンチローラ、7は被加工物2の水平方向(X方向)の駆動を行うためのXテーブル、8は被加工物2の水平方向(Y方向)の駆動を行うためのYテーブル、9はXテーブル7を駆動する図示しない駆動モータを制御するX軸サーボアンプ、10はYテーブル8を駆動する図示しない駆動モータを制御するY軸サーボアンプ、11は加工電源装置、12は放電発生検出手段、13はパルス制御手段、14は演算手段、15は比較手段、16は制御手段である。
次に動作について説明する。キャプスタンローラ5及びピンチローラ6によりワイヤ電極1を挟持して牽引しワイヤ電極1を走行させ、加工液ノズル4a及び4bによりワイヤ電極1と被加工物2との極間に加工液を供給しながら、前記極間に加工電源装置11により放電エネルギである加工電力を供給し、位置決め手段であるXテーブル7及びYテーブル8等によりワイヤ電極1と被加工物2とを相対移動させて被加工物2の加工を行う。前記位置決め手段によるワイヤ電極1と被加工物2との相対位置決め制御及びパルス制御手段13等による電気条件の制御等は制御手段16により統括される。
加工電源装置11は、パルス制御手段13からの制御に基づいてワイヤ電極1と被加工物2の間にパルス状の電圧を印加する。放電発生検出手段12は、ワイヤ電極1と被加工物2との間に放電が発生した時に検出信号をパルス制御手段13へ出力する。パルス制御手段13は、放電発生検出手段12から検出信号が入力されてから所定時間(パルス幅)が経過した後に、加工電源装置11によるワイヤ電極1への電流供給を停止させる。演算手段14は、パルス制御手段13からパルス幅に比例した信号が入力され、その2乗を計算して平均加工電流値とする。比較手段15は、この平均加工電流値をワイヤ電極1の断線が生じない範囲の最大の電流値として予め設定された限界電流値と比較し、平均加工電流値が限界電流値を超えた場合にパルス制御手段13を制御して平均加工電流値を限界電流値以下にする。
従来のワイヤ放電加工装置は以上のように構成され、ワイヤ電極1の断線が生じない範囲の最大の電流値として予め設定された限界電流値以上の加工電流の供給を抑制してワイヤ電極1の断線を防止するものである。
しかしながら、このような従来技術においては、限界電流値をどのように設定するべきかが問題となる。例えば、加工液ノズル4a及び4bが被加工物2に近接している場合の方が離れている場合よりも断線しにくいことは明らかであるが、従来のワイヤ放電加工装置はこのような加工液ノズルと被加工物との相対位置の違いに起因する限界電流値の相違には全く対応していない。
従って、加工液ノズルと被加工物との相対位置が全加工領域で同一と仮定して限界電流値を設定し、ワイヤ電極の断線回避制御を行わざるを得ない。このため、金型等によく見受けられる座ぐり形状等のように、部分的に加工液ノズルが被加工物と離れた状態で加工を行う場合には、加工液ノズルが被加工物と近接していると仮定して放電エネルギを供給すると加工液ノズルが被加工物と離れている部分の加工でワイヤ電極に断線が発生し、加工液ノズルが被加工物と離れていると仮定して放電エネルギを供給すると十分な加工速度が得られないという問題点があった。
また、被加工物の端面又は段差加工等では放電が断続して発生することが多く、被加工物の端面又は段差加工等以外の通常の加工よりも投入する放電エネルギを小さくする必要がある。前記のような従来技術においては限界電流値は加工前に予め設定された一定値であり、前記通常の加工状態を基準に限界電流値を設定すると被加工物の端面又は段差加工時にワイヤ電極の断線が発生しやすく、被加工物の端面又は段差加工等を基準に限界電流値を設定すると加工速度が著しく低下するという問題点があった。
発明の開示
この発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、加工液ノズルと被加工物との相対位置の違いがある場合又は被加工物の端面又は段差加工を行う場合等においても、加工生産性を大幅に向上することができるワイヤ放電加工装置を得ることを目的とする。
この発明に係るワイヤ放電加工装置は、ワイヤ電極と被加工物との極間に加工液ノズルにより加工液を供給しながら、前記極間に加工電源装置により放電エネルギを供給し、前記極間に放電を発生させて前記被加工物の加工を行うワイヤ放電加工装置において、前記極間の正常放電パルスを検出する正常放電パルス検出手段と、前記検出した正常放電パルスから正常放電パルスエネルギを演算する正常放電パルス演算手段と、様々な加工条件に対応して前記正常放電パルスエネルギと加工エネルギ設定値との関係から求めたワイヤ電極断線時の動作点から所定のマージンを確保したしきい値データを保存してなる記憶手段と、加工動作点を前記しきい値データに近づけるように前記加工エネルギ設定値を制御する制御手段とを備えたものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工装置は、前記制御手段により制御される前記加工エネルギ設定値を変化させるパラメータとして、休止時間及び極間サーボ電圧の指令値等の放電周波数を設定するパラメータの中の少なくとも一つを用い、このパラメータと前記正常放電パルスエネルギとの関係から前記しきい値データを設定するものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工装置は、前記制御手段により制御される前記加工エネルギ設定値を変化させるパラメータとして、ピーク電流設定値及びパルス幅等の1パルス当たりの放電エネルギを設定するパラメータの中の少なくとも一つを用い、このパラメータと前記正常放電パルスエネルギとの関係から前記しきい値データを設定するものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工装置は、ワイヤ電極と被加工物との極間に加工液ノズルにより加工液を供給しながら、前記極間に加工電源装置により放電エネルギを供給し、前記極間に放電を発生させて前記被加工物の加工を行うワイヤ放電加工装置において、前記極間の正常放電パルスを検出する正常放電パルス検出手段と、前記検出した正常放電パルスから正常放電パルス数を計数する正常放電パルス計数手段と、様々な加工条件に対応して前記正常放電パルス数と休止時間設定値との関係から求めたワイヤ電極断線時の動作点から所定のマージンを確保したしきい値データを保存してなる記憶手段と、加工動作点を前記しきい値データに近づけるように前記加工エネルギ設定値を制御する制御手段とを備えたものである。
また、この発明に係るワイヤ放電加工装置は、前記加工条件には前記加工液ノズルと前記被加工物との相対位置の違いを含むものである。
この発明に係るワイヤ放電加工装置は以上のように構成されているため、加工液ノズルと被加工物との相対位置の違いがある場合又は被加工物の端面又は段差加工を行う場合等においても、ワイヤ電極の断線限界ぎりぎりの放電エネルギを供給することができるため、加工生産性を大幅に向上することができるワイヤ放電加工装置を得ることができるという効果を奏する。
発明を実施するための最良の形態
実施の形態1.
第1図は、この発明の実施の形態1に係るワイヤ放電加工装置の構成を示す説明図であり、図において、1はワイヤ電極、2は被加工物、3はワイヤボビン、4a及び4bは加工液ノズル、5はキャプスタンローラ、6はピンチローラ、7は被加工物2の水平方向(X方向)の駆動を行うためのXテーブル、8は被加工物2の水平方向(Y方向)の駆動を行うためのYテーブル、9はXテーブル7を駆動する図示しない駆動モータを制御するX軸サーボアンプ、10はYテーブル8を駆動する図示しない駆動モータを制御するY軸サーボアンプ、11は加工電源装置、13はパルス制御手段、17は正常放電パルス検出手段、18は正常放電パルス演算手段、19は比較手段、20は制御手段である。
次に動作について説明する。キャプスタンローラ5及びピンチローラ6によりワイヤ電極1を挟持して牽引しワイヤ電極1を走行させ、加工液ノズル4a及び4bによりワイヤ電極1と被加工物2との極間に加工液を供給しながら、パルス制御手段13により制御された加工電源装置11により前記極間に放電エネルギであるパルス状の加工電力を供給し、位置決め手段であるXテーブル7及びYテーブル8等によりワイヤ電極1と被加工物2とを相対移動させて被加工物2の加工を行う。前記位置決め手段によるワイヤ電極1と被加工物2との相対位置決め制御及びパルス制御手段13等による電気条件の制御等は制御手段20により統括される。
また、正常放電パルスとは加工状態が良好な場合に多く発生する放電パルスのことであり、その特徴は電圧印加後に数百ns〜数μs程度以上の無負荷時間を経て放電が発生することにある。正常放電パルスは、例えば日本国特公平2−44648号公報に記載の技術のとおり、予め設定された時間内での放電発生の有無により検出できる。正常放電パルス検出手段17は、このような方法を用いた検出機能を有する。
また、正常放電パルスエネルギとは、正常放電パルスのみを抽出した際の加工エネルギのことであり、例えば単位時間当たりに正常放電パルス検出手段17により計測された正常放電パルス数をN、正常放電パルスのピーク電流をIpnとすれば、N・Ipn・Ipnの演算により求めることができる。正常放電パルス演算手段18は、このような演算を行う機能を有する。
第2図は、この発明の実施の形態1に係るワイヤ放電加工装置の加工エネルギ設定動作の説明図であり、制御手段20によりパルス制御手段13を介して加工電源装置11に設定された加工エネルギ設定値と発生した正常放電パルスエネルギの関係を示している。
ここで、加工エネルギ設定値とは、正常に加工が進行した際に投入される平均加工エネルギであり、例えば設定された休止時間及び極間電圧サーボの指令値から決定される平均放電周波数をf、ピーク電流値をIp、パルス幅をTonとすれば、f・Ip・Ip、f・Ip・Ton又はf・Ton・Ton等により決定される値である。
また、第2図はピーク電流値Ipを固定して平均放電周波数fを変化させた場合の例を示したものである。このような加工エネルギ設定値と正常放電パルスエネルギとの関係は、加工エネルギ設定値の所定区間内ではピーク電流値Ipを固定して平均放電周波数fを変化させ、別の区間では平均放電周波数fを固定としてピーク電流値Ipを変化させて求めることもできる。
第2図において、L11(実線)は加工液ノズル4a及び4bが被加工物2に近接して(例えば0.1mm)設置されている場合、L12(破線)は加工液ノズル4a又は4bが被加工物2から離れて(例えば5mm〜10mm)設置されている場合、L13(1点鎖線)は加工液ノズル4a及び4bが被加工物2から離れて(例えば5mm〜10mm)設置されている場合を示しており、図中の×印は断線時の動作点を示している。また、TH1(2点鎖線)は断線時の動作点から若干のマージンを確保して設定したしきい値曲線を示している。
発明者は、加工液ノズルと被加工物との相対位置を様々に変化させて多くの加工実験を行った結果、加工エネルギ設定値と測定される正常放電パルスエネルギの間に、加工液ノズルと被加工物との相対位置の違いにより第2図に示す特性が一般に存在することを見出した。即ち、制御手段20によりパルス制御手段13を介して加工電源装置11に設定された加工エネルギ設定値を横軸、測定される正常放電パルスエネルギを縦軸として第2図上に動作点を定義すると、この動作点は加工エネルギ設定値を高くするに伴って、L11、L12及びL13の加工液ノズルと被加工物との相対位置の違いに応じて、各軌跡L11、L12又はL13上を下から上へ移動し、各軌跡の上端の×印で示す点でワイヤ電極が断線することが分かった。
正常放電パルス以外の加工への寄与は非常に小さく、加工速度はほとんど正常放電パルスエネルギで支配されるから、第2図の断線に至る(断線時の動作点である×印)直前の動作点で加工すれば、加工液ノズルと被加工物との相対位置の違いに応じたワイヤ電極の断線限界ぎりぎりの加工速度設定が実現できる。
従って、断線時の動作点(×印)から若干のマージンを確保した第2図中のTH1のようなしきい値曲線を設定し、このしきい値曲線近傍に動作点を維持すれば、どのような加工液ノズルと被加工物との相対位置であっても、ワイヤ電極が断線しない範囲で放電エネルギを最大限供給できるため、加工生産性が大きく向上する。
加工液ノズルと被加工物との相対位置の違いの他にも、被加工物の板厚及び材質並びにワイヤ電極の直径及び材質等の加工条件によっても加工エネルギ設定値と正常放電パルスエネルギとの関係は変化するため、加工液ノズルと被加工物との相対位置を含めた前記の様々な加工条件に対応した加工エネルギ設定値と正常放電パルスエネルギとの関係及び断線時の動作点を実験により求めておき、この断線時の動作点から所定のマージンを確保したしきい値曲線データを例えば制御手段20内の記憶手段に保存しておけばよい。
第2図のようなしきい値曲線の例について説明すると、各加工条件毎の動作点がしきい値曲線TH1より上側にある場合は加工エネルギ設定値を大きくし、各加工条件毎の動作点がしきい値曲線TH1より下側にある場合は、加工エネルギ設定値を小さくするように制御を行う。即ち、正常放電パルス演算手段18により求めた正常放電パルスエネルギと制御手段20により設定される加工エネルギ設定値により動作点を求め、この動作点と制御手段20内に設定されたしきい値曲線データを比較手段19により比較し、この動作点がしきい値曲線より上側にある場合(即ち、動作点での正常放電パルスエネルギが動作点の加工エネルギ設定値に対応するしきい値曲線データの正常放電パルスエネルギよりも大きい場合、又は、動作点での正常放電パルスエネルギに対応するしきい値曲線データの加工エネルギ設定値が動作点での加工エネルギ設定値よりも大きい場合)は、加工エネルギ設定値を大きくするように制御手段20によりパルス制御手段13に指令を送り、この動作点がしきい値曲線より下側にある場合(即ち、動作点での正常放電パルスエネルギが動作点の加工エネルギ設定値に対応するしきい値曲線データの正常放電パルスエネルギよりも小さい場合、又は、動作点での正常放電パルスエネルギに対応するしきい値曲線データの加工エネルギ設定値が動作点での加工エネルギ設定値よりも小さい場合)は、加工エネルギ設定値を小さくするように制御手段20によりパルス制御手段13に指令を送る。
また、第2図からわかるように、しきい値曲線TH1は、加工エネルギ設定値が高いほど高く設定されている。従って、この発明のように動作点をしきい値曲線に近づけるように制御を行うと、放電が断続的に発生する場合には正常放電の発生数が少なくなるので加工エネルギが自動的に低く設定されるから、被加工物の端面加工等のように加工が不安定な領域でも適切に断線防止制御が行われる。
以上の説明においては、しきい値曲線を加工エネルギ設定値に対して連続関数として設定したが、適当な範囲で離散化しても差し支えない。即ち、加工エネルギ設定値を所定範囲ごとに分割して、この分割範囲内で正常放電パルスエネルギを一定とするように階段状に設定する等のようなしきい値曲線の設定方法を用いてもよい。
実施の形態2.
第3図は、この発明の実施の形態2に係るワイヤ放電加工装置の構成を示す説明図であり、図において、21は正常放電パルス計数手段である。また、第3図において第1図と同一符号は同一又は相当部分を示しており、ワイヤ放電加工装置としての基本的な動作は実施の形態1と同様である。
第4図は、この発明の実施の形態2に係るワイヤ放電加工装置の休止時間設定動作の説明図であり、制御手段20によりパルス制御手段13を介して加工電源装置11に設定された休止時間設定値と発生した正常放電パルス数の関係を示している。図において、L21(実線)は加工液ノズル4a及び4bが被加工物2に近接して(例えば0.1mm)設置されている場合、L22(破線)は加工液ノズル4a又は4bが被加工物から離れて(例えば5mm〜10mm)設置されている場合、L23(1点鎖線)は加工液ノズル4a及び4bが被加工物2から離れて(例えば5mm〜10mm)設置されている場合を示しており、図中の×印は断線時の動作点を示している。また、TH2(2点鎖線)は断線時の動作点から若干のマージンを確保して設定したしきい値曲線を示している。
第4図は実施の形態1の第2図における加工エネルギ設定値を変化させるパラメータとして休止時間のみを採用した場合であり、ピーク電流値は一定としており、正常放電パルスエネルギは正常放電パルス数に比例するため両者は置換可能である。従って、第4図においては休止時間設定値と正常放電パルス数との関係に着目している。
実施の形態1の第2図と同様に、断線時の動作点(×印)から若干のマージンを確保した第4図中のTH2のようなしきい値曲線を設定し、このしきい値曲線近傍に動作点を維持すれば、どのような加工液ノズルと被加工物との相対位置であっても、ワイヤ電極が断線しない範囲で放電エネルギを最大限供給できるため、実施の形態1と同様に加工生産性が大きく向上する。
しきい値曲線データは、実施の形態1と同様に、加工液ノズルと被加工物との相対位置を含めた様々な加工条件に対応した休止時間設定値と正常放電パルス数との関係及び断線時の動作点を実験により求めておき、この断線時の動作点から所定のマージンを確保して例えば制御手段20内の記憶手段に保存しておけばよい。
以上の説明においては、休止時間設定値と正常放電パルス数との関係からしきい値曲線を設定して、このしきい値曲線に動作点を近づけるように休止時間設定値を制御する例を説明したが、休止時間設定値の代わりに、例えば極間サーボ電圧の指令値等、放電周波数を設定する他のパラメータを制御してもよい。
実施の形態3.
第1図は、この発明の実施の形態3に係るワイヤ放電加工装置の構成でもあり、ワイヤ放電加工装置としての基本的な動作は実施の形態1と同様である。
第5図は、この発明の実施の形態3に係るワイヤ放電加工装置のピーク電流値設定動作の説明図であり、制御手段20によりパルス制御手段13を介して加工電源装置11に設定されたピーク電流設定値と発生した正常放電パルスエネルギの関係を示している。
第5図は実施の形態1の第2図における加工エネルギ設定値を変化させるパラメータとしてピーク電流のみを採用した場合であり、第5図においてはピーク電流設定値と正常放電パルスエネルギとの関係に着目している。
第5図において、L31(実線)は加工液ノズル4a及び4bが被加工物2に近接して(例えば0.1mm)設置されている場合、L32(破線)は加工液ノズル4a又は4bが被加工物2から離れて(例えば5mm〜10mm)設置されている場合、L33(1点鎖線)は加工液ノズル4a及び4bが被加工物2から離れて(例えば5mm〜10mm)設置されている場合を示しており、図中の×印は断線時の動作点を示している。また、TH3(2点鎖線)は断線時の動作点から若干のマージンを確保して設定したしきい値曲線を示している。
実施の形態1の第2図と同様に、断線時の動作点(×印)から若干のマージンを確保した第4図中のTH3のようなしきい値曲線を設定し、このしきい値曲線近傍に動作点を維持すれば、どのような加工液ノズルと被加工物との相対位置であっても、ワイヤ電極が断線しない範囲で放電エネルギを最大限供給できるため、実施の形態1と同様に加工生産性が大きく向上する。
しきい値曲線データは、実施の形態1と同様に、加工液ノズルと被加工物との相対位置を含めた様々な加工条件に対応したピーク電流設定値と正常放電パルスエネルギとの関係及び断線時の動作点を実験により求めておき、この断線時の動作点から所定のマージンを確保して例えば制御手段20内の記憶手段に保存しておけばよい。
以上の説明においては、ピーク電流設定値と正常放電パルスエネルギとの関係からしきい値曲線を設定して、このしきい値曲線に動作点を近づけるようにピーク電流設定値を制御する例を説明したが、ピーク電流設定値の代わりに、例えばパルス幅等、1パルス当たりの放電エネルギを設定する他のパラメータを制御してもよい。
産業上の利用可能性
以上のように、この発明に係るワイヤ放電加工装置は、放電加工作業に用いられるのに適している。
【図面の簡単な説明】
第1図は、この発明の実施の形態1に係るワイヤ放電加工装置の構成を示す説明図である。
第2図は、この発明の実施の形態1に係るワイヤ放電加工装置の加工エネルギ設定動作の説明図である。
第3図は、この発明の実施の形態2に係るワイヤ放電加工装置の構成を示す説明図である。
第4図は、この発明の実施の形態2に係るワイヤ放電加工装置の休止時間設定動作の説明図である。
第5図は、この発明の実施の形態3に係るワイヤ放電加工装置のピーク電流値設定動作の説明図である。
第6図は、従来のワイヤ放電加工装置の構成を示す説明図である。
Claims (5)
- ワイヤ電極と被加工物との極間に加工液ノズルにより加工液を供給しながら、前記極間に加工電源装置により放電エネルギを供給し、前記極間に放電を発生させて前記被加工物の加工を行うワイヤ放電加工装置において、
前記極間の正常放電パルスを検出する正常放電パルス検出手段と、
前記検出した正常放電パルスから正常放電パルスエネルギを演算する正常放電パルス演算手段と、
様々な加工条件に対応して前記正常放電パルスエネルギと加工エネルギ設定値との関係から求めたワイヤ電極断線時の動作点から所定のマージンを確保したしきい値データを保存してなる記憶手段と、
加工動作点を前記しきい値データに近づけるように前記加工エネルギ設定値を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするワイヤ放電加工装置。 - 請求の範囲1において、前記制御手段により制御される前記加工エネルギ設定値を変化させるパラメータとして、休止時間及び極間サーボ電圧の指令値等の放電周波数を設定するパラメータの中の少なくとも一つを用い、このパラメータと前記正常放電パルスエネルギとの関係から前記しきい値データを設定することを特徴とするワイヤ放電加工装置。
- 請求の範囲1において、前記制御手段により制御される前記加工エネルギ設定値を変化させるパラメータとして、ピーク電流設定値及びパルス幅等の1パルス当たりの放電エネルギを設定するパラメータの中の少なくとも一つを用い、このパラメータと前記正常放電パルスエネルギとの関係から前記しきい値データを設定することを特徴とするワイヤ放電加工装置。
- ワイヤ電極と被加工物との極間に加工液ノズルにより加工液を供給しながら、前記極間に加工電源装置により放電エネルギを供給し、前記極間に放電を発生させて前記被加工物の加工を行うワイヤ放電加工装置において、
前記極間の正常放電パルスを検出する正常放電パルス検出手段と、
前記検出した正常放電パルスから正常放電パルス数を計数する正常放電パルス計数手段と、
様々な加工条件に対応して前記正常放電パルス数と休止時間設定値との関係から求めたワイヤ電極断線時の動作点から所定のマージンを確保したしきい値データを保存してなる記憶手段と、
加工動作点を前記しきい値データに近づけるように前記加工エネルギ設定値を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするワイヤ放電加工装置。 - 請求の範囲1〜4のいずれかにおいて、前記加工条件には前記加工液ノズルと前記被加工物との相対位置の違いを含むことを特徴とするワイヤ放電加工装置。
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