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JP3803607B2 - 2次元エンコーダ - Google Patents

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JP3803607B2
JP3803607B2 JP2002112279A JP2002112279A JP3803607B2 JP 3803607 B2 JP3803607 B2 JP 3803607B2 JP 2002112279 A JP2002112279 A JP 2002112279A JP 2002112279 A JP2002112279 A JP 2002112279A JP 3803607 B2 JP3803607 B2 JP 3803607B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、相対する2物体の所定平面上におけるX方向およびY方向への相対変位量を測定する光学式の2次元エンコーダに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来よりテーブル等の正確な位置決めを必要とするフライス盤や旋盤のような各種機器には、その位置決めのために光学式のエンコーダが広く用いられており、特に、直線方向への相対変位量を測定する1次元(直線)エンコーダが広く用いられている。この従来の1次元エンコーダの構成および動作を以下に例示して説明する。
【0003】
この従来の1次元エンコーダは、平行光を発する光源と、光源からの光を所定の間隔で開口されているスリットにて透過するメインスケールと、このメインスケールに対向して設けられており、メインスケールからの光を同一方向へ同様に開口されているスリットにて透過するインデックススケールと、このインデックススケールからの光を検知して電気信号に変換する光検知器と、光検知器からの電気信号に対して所定の信号処理を行う信号処理部とを備える。この従来の1次元エンコーダのメインスケールは、測定対象である例えばテーブルと連動して、そのスリットの長手方向に対して垂直な方向へ移動する。また、インデックススケールは、テーブルと連動しない位置に固定されており、メインスケールの移動によりその相対位置が変化する。
【0004】
初期状態では、メインスケールおよびインデックススケールのそれぞれのスリットは、光源から見て互いに重なり合う位置にある。したがって、光源から発せられメインスケールのスリットにて透過された平行光は、すべてインデックススケールのスリットにて透過され、インデックススケールのスリット以外の部分に遮られることはない。また、メインスケールにおけるスリット以外の光を透過しない部分は、インデックススケールに影を形成するが、この影がインデックススケールのスリットにかかることもない。光検知器は、このような初期状態において最大値の電気信号を出力する。
【0005】
初期状態からメインスケールがスリット間隔以下の距離を移動すると、メインスケールおよびインデックススケールのそれぞれのスリットの一部は、光源から見て重なり合う。したがって、光源から発せられメインスケールのスリットにて透過された平行光のうち、その一部の光はインデックススケールのスリットにて透過され、残りの光はインデックススケールのスリット以外の部分に遮られる。また、メインスケールにおけるスリット以外の光を透過しない部分が形成する影は、インデックススケールのスリットにかかる。光検知器は、このような状態において最大値より小さい値の電気信号を出力する。
【0006】
さらにメインスケールがスリット間隔に等しい距離を移動すると、メインスケールおよびインデックススケールのそれぞれのスリットは、光源から見て互いに重なり合わなくなる。したがって、光源から発せられメインスケールのスリットにて透過された平行光は、全くインデックススケールのスリットにて透過されることなく、インデックススケールのスリット以外の部分に遮られる。また、メインスケールにおけるスリット以外の光を透過しない部分が形成する影は、全てインデックススケールのスリットにかかる。光検知器は、このような状態においてほぼ0である最小値の電気信号を出力する。
【0007】
このように、メインスケールがスリット間隔に等しい距離を移動する毎に、光検知器は、ピーク値から最小値まで値が周期的に変化する信号を出力する。信号処理部は、この周期信号のピーク数をカウントする。この数から、メインスケールがスリット間隔に等しい距離の何倍を移動したかが測定される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の1次元エンコーダにより2次元的な変位量を計測するには、例えばX軸用およびY軸用の2つの独立したテーブルを設け、それらのテーブル毎に1次元エンコーダを設置する必要がある。しかし、このようなテーブルを設ける構成を実現するには困難な場合があり、また例えば数mm四方の領域における位置決めを行う際には1つのテーブルの当該領域における2次元的な変位量を測定したい場合がある。これのような場合には、従来の1次元エンコーダにより2次元的な変位量を計測することができない。
【0009】
また、X軸用およびY軸用のインデックススケールのスリットを互いに直交するように配置し、初期状態におけるメインスケールのスリットの位置がこれらのインデックススケールのスリットの位置で光源から見て重なり合うように、メインスケールのスリットを格子状に配置する2次元エンコーダの構成も考えられる。しかし、このように構成すれば、X軸用のインデックススケールのスリットに対しては、これに直交するメインスケールのスリットにて透過される光(以下「バイアス光」と称する)が必ず透過されるという干渉が生じる。このことはY軸用のインデックススケールのスリットについても同様である。このことにより、各スリットにて透過される光量の最小値はバイアス光の光量まで増加するため、各スリットにて透過される光量の増減幅は、1次元エンコーダの構成の場合に比べて小さく(典型的には半分に)なり、光検知器から出力される信号のS/N(信号対雑音比)が大きく低下する。したがって、信号処理部の処理精度が低下し、エンコーダ自体の計測精度が下がることになる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、各軸用のインデックススケールのスリットに対して、これに直交するメインスケールのスリットにて透過されるバイアス光を低減して、光検知器から出力される信号のS/N(信号対雑音比)を向上させた高精度な2次元エンコーダを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
第1の発明は、相対する2物体の所定平面上における第1の方向であるX方向および第2の方向であるY方向への相対変位量を測定する2次元エンコーダであって、
所定の波長λのコヒーレントな光を発する光源と、
前記2物体の一方に設けられ、前記X方向へ第1の周期pで繰り返され前記Y方向へ前記第1の周期pとは異なる第2の周期qで繰り返される周期パターンにより前記光源が発する光を透過または反射するメインスケールと、
前記2物体の他方に設けられ、前記メインスケールが有する前記X方向へ繰り返される周期パターンが結像しかつ前記Y方向へ繰り返される周期パターンが結像しない第1の距離だけ前記メインスケールから離れており、前記メインスケールが透過または反射する光を前記X方向への相対変位量に応じた光量だけ透過または反射する第1のインデックススケールと、
前記2物体の他方に設けられ、前記メインスケールが有する前記X方向へ繰り返される周期パターンが結像せずかつ前記Y方向へ繰り返される周期パターンが結像する第2の距離だけ前記メインスケールから離れており、前記メインスケールが透過または反射する光を前記Y方向への相対変位量に応じた光量だけ透過または反射する第2のインデックススケールと、
前記第1のインデックススケールにより透過または反射された光を検知することにより第1の電気信号を出力する第1の受光素子と、
前記第2のインデックススケールにより透過または反射された光を検知することにより第2の電気信号を出力する第2の受光素子と、
前記第1および第2の受光素子から出力される前記第1および第2の電気信号に基づき、前記X方向および前記Y方向への相対変位量を示す信号を出力する信号処理手段と
を備えることを特徴とする。
【0012】
このような第1の発明によれば、第1のインデックススケールにはメインスケールが有するY方向へ繰り返される周期パターンが結像せず、第2のインデックススケールにはX方向へ繰り返される周期パターンが結像しないため、これらのインデックススケールに対して不要なバイアス光による影響を受けず、光検知器が受光する光量の増減幅が大きくなるため、光検知器から出力される信号のS/Nが向上した高精度な2次元エンコーダを提供することができる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、
前記第1の距離は、p2 ・λ・m/2(mは自然数)から選ばれる値に基づいて算出され、
前記第2の距離は、q2 ・λ・n/2(nは自然数)から選ばれる値に基づいて算出されることを特徴とする。
【0014】
このような第2の発明によれば、第1および第2のインデックススケールがメインスケールからタルボット距離またはフラクショナルタルボット距離だけ離れた距離に設けられる構成により、メインスケールと第1または第2のインデックススケールの距離が0である場合と同様に、メインスケールのパターンを第1または第2のインデックススケールに結像させることができる。
【0015】
第3の発明は、第1の発明において、
前記第1の周期pおよび第2の周期qは、2:3または3:2の比となる値から選ばれることを特徴とする。
【0016】
このような第3の発明によれば、信号処理手段において一般的な回路構成を有する4逓倍回路および6逓倍回路を用いることができるので、信号処理手段を簡易な構成にすることができる。
【0017】
第4の発明は、第1の発明において、
前記メインスケールに対して平行に設けられ、前記メインスケールからの光を透過する1より大きい屈折率aの基材をさらに備え、
前記第1のインデックススケールは、前記基材における所定の第1の面に形成され、
前記第2のインデックススケールは、前記基材における前記第1の面と平行な第2の面に形成されることを特徴とする。
【0018】
このような第4の発明によれば、第1および第2のインデックススケールが基材上に形成される構成である。この構成により、基材の位置を正確に調整すれば、各スケール間の距離を正確かつ容易に設定することができる。また、この構成により、基材に各インデックススケールが形成されない場合よりも光路長を変更することなく幾何学的な距離を短縮することができるので、装置全体をよりコンパクトに構成することができる。
【0019】
第5の発明は、第4の発明において、
前記第1の面と前記第2の面との距離である前記基材の厚さは、|p2 m−q2 n|λ/(2a)(m,nは自然数)から選ばれる値であることを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
<1.2次元エンコーダの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る2次元エンコーダの概略的な構成を示す側面図である。この2次元エンコーダは、波長λのコヒーレントな光を発するレーザ等の光源10と、光源10からの光を平行光にするコリメータレンズ20と、コリメータレンズ20からの平行光を反射して光路を変更する平面ミラー30と、平面ミラー30からの光を所定の間隔で配列されている格子状のパターンにて透過するメインスケール40と、メインスケール40からの光を透過する屈折率aの基材50と、メインスケール40に対向する基材50の所定面に形成されておりメインスケール40からの光を所定の間隔で平行に配列されているスリットにて透過するX軸用インデックススケール61と、メインスケール40に対向する基材50の所定面に平行な反対側の面に形成されておりメインスケール40からの光を上記X軸用インデックススケール61のスリットと異なる所定の間隔で直交する方向に平行に配列されているスリットにて透過するY軸用インデックススケール62と、X軸用インデックススケール61からの光を検知して電気信号Sxに変換するX軸用光検知器71と、Y軸用インデックススケール62からの光を検知して電気信号Syに変換するY軸用光検知器72と、電気信号Sx,Syが入力されて所定の信号処理を行いX軸方向およびY軸方向の変位量を示す信号を出力する信号処理部80とを備える。
【0021】
メインスケール40は、例えば薄いガラス基板上に光を反射しないマスクパターンを蒸着させて形成されており、位置決めが必要な測定対象である図示されないテーブルに固定されている。また、基材50にはその所定面上にX軸用インデックススケール61が、その反対側の平面ミラー30から見て重ならない面上にY軸用インデックススケール62がそれぞれ光を反射しないマスクパターンを蒸着させて形成されており、この基材50は上記テーブルの移動の影響を受けない位置に固定されている。メインスケール40がX軸方向およびY軸方向へ移動することにより、これらのX軸用インデックススケール61およびY軸用インデックススケール62とメインスケール40との相対位置が変化する。
【0022】
<2.メインスケールおよびインデックススケールの構成および作用>
図2は、X軸用インデックススケール61およびY軸用インデックススケール62のスリット構成を示す平面図であり、図3は、メインスケール40のパターン構成を示す平面図である。なお、X軸方向は図の左右方向であり、Y軸方向は図の上下方向である。また、光を透過しないマスクパターンに対応する部分には斜線が付されている。
【0023】
図2(a)に示すY軸用インデックススケール62のスリットは、X軸方向を長手方向としてY軸方向へ周期的に配列されており、隣接するスリットの中心線間の距離(以下「スリット間隔」または「周期」と称する)はqである。また、図2(b)に示すX軸用インデックススケール61のスリットは、Y軸方向を長手方向としてX軸方向へ周期的に配列されており、スリット間隔はpである。さらに、図3に示すメインスケール40は、X軸用インデックススケール61のスリットとY軸用インデックススケール62のスリットとが直交するように同一平面上において重ね合わせた場合に形成されるパターンと同一の形状を有する格子状の光透過部パターンを有している。したがって、メインスケール40には、X軸用インデックススケール61と同一のパターンと、Y軸用インデックススケール62と同一のパターンとが含まれることになる。そのことから、このメインスケール40におけるX軸方向へ周期的に配列された光透過部の間隔はpであり、Y軸方向へ周期的に配列された光透過部の間隔はqである。
【0024】
次に、このメインスケール40のパターンにより形成される像について説明する。平面ミラー30からの光の直進性のみを考慮する場合、メインスケール40が透過した光はどこまでも直進するので、メインスケール40の格子状パターンはどの位置であっても同じ形状で結像するはずである。しかし、光の回折ないし干渉を考慮する場合、コヒーレントな平行光を受けた周期構造を有するパターンは、周期構造の周期をd、光の波長をλ、自然数をnとするとき、タルボット距離z=d2 ・λ・nに結像することが知られている。この現象はタルボット(Talbot)効果と呼ばれる。このタルボット効果に関しては、例えば「Talbot効果」(O Plus E Vol.23,No.5,p603〜 2001年5月)などにおいて開示されており、詳しい説明は省略する。
【0025】
また、上記パターンは、上記タルボット距離zの分数倍の距離であるフラクショナル(fractional)タルボット距離にも結像することが知られている。この結像された像は、フラクショナルタルボット像と呼ばれる。このフラクショナルタルボット像は、通常、z・(2n−1)/2の距離に1/2の大きさで結像することが知られている。なお、上記パターンの形状によってはその他の距離(例えば3z/8や7z/24などの距離)にも弱い強度で結像することがある。これらについては、例えば「Talbotアレイイルミネータとその応用」(光アライアンス 1998年3月号 p12〜)などにおいて開示されており、詳しい説明は省略する。
【0026】
以上のように、光の回折ないし干渉を考慮する場合、コヒーレントな平行光を受けたメインスケール40の格子状パターンは、タルボット距離またはフラクショナルタルボット距離において結像する。もっとも、上記格子状パターンの光透過部は、図3に示すとおりX軸方向に周期pの周期構造を有し、Y軸方向に周期qの周期構造を有しているため、タルボット距離zx=p2 ・λ・m(mは自然数)にはメインスケール40に含まれるX軸用インデックススケール61と同一のパターンが結像し、タルボット距離zy=q2 ・λ・nにはメインスケール40に含まれるY軸用インデックススケール62と同一のパターンが結像することになる。また、フラクショナルタルボット距離zx’=p2 ・λ・(2m−1)/2およびフラクショナルタルボット距離zy’=q2 ・λ・(2n−1)/2にも結像するが、結像されたパターンはX軸用インデックススケール61およびY軸用インデックススケール62のそれぞれ1/2の大きさのパターンになるため、X軸用インデックススケール61およびY軸用インデックススケール62をそれぞれ1/2の大きさのパターンに変更する必要がある。
【0027】
したがって、X軸用インデックススケール61は、メインスケール40から上記タルボット距離zxまたはフラクショナルタルボット距離zx’だけ離れた距離、すなわちp2 ・λ・m/2だけ離れた距離に設けられ、Y軸用インデックススケール62は、メインスケール40から上記タルボット距離zyまたはフラクショナルタルボット距離zy’だけ離れた距離、すなわちq2 ・λ・n/2だけ離れた距離に設けられる構成により、メインスケール40と各インデックススケールの距離が0である場合と同様に、メインスケール40のパターンを各インデックススケールに結像させることができる。
【0028】
ここで、p2 ・λ・m/2とq2 ・λ・n/2とが等しくない場合、典型的には、mとnとが等しくかつpとqとが互いに素である数から選ばれる場合(例えば、p=2,q=3である場合)には、メインスケール40に含まれるX軸用インデックススケール61と同一のパターンがX軸用インデックススケール61に対して結像し、メインスケール40に含まれるY軸用インデックススケール62と同一のパターンがX軸用インデックススケール61に対して結像することがない。同様に、メインスケール40に含まれるY軸用インデックススケール62と同一のパターンがY軸用インデックススケール62に対して結像し、メインスケール40に含まれるX軸用インデックススケール61と同一のパターンがY軸用インデックススケール62に対して結像することがない。
【0029】
したがって、これらの条件を満たすタルボット距離にX軸用インデックススケール61を配置すれば、X軸用インデックススケール61のスリットに対して、直交するメインスケール40に含まれるX軸用インデックススケール61と同一のパターンにて透過される光(バイアス光)が低減され、当該スリットにて透過される光量の増減幅が大きくなるため、X軸用光検知器71から出力される信号のS/Nが向上する。同様に、これらの条件を満たすタルボット距離にY軸用インデックススケール62を配置すれば、Y軸用インデックススケール62のスリットに対して、直交するメインスケール40に含まれるY軸用インデックススケール62と同一のパターンにて透過される光(バイアス光)が低減され、当該スリットにて透過される光量の増減幅が大きくなるため、Y軸用光検知器72から出力される信号のS/Nが向上する。ここでは一例として、図2および図3に示すスリット間隔pおよびqは、2:3の比になる値から選ばれている。
【0030】
次に、X軸用インデックススケール61とY軸用インデックススケール62との間には、光を透過する屈折率aの基材50が介在している。ここで、屈折率aの媒体中を通る光の光路長は、真空中を通る光の光路長のa倍となることが知られている。すなわち、同じ光路長であれば、屈折率aの媒体中を通る光が進む幾何学的な距離は、真空中を通る光が進む幾何学的な距離の1/aとなる。したがって、X軸用インデックススケール61とY軸用インデックススケール62との幾何学的な距離、すなわち基材50の厚さは、X軸用インデックススケール61およびメインスケール40の幾何学的な距離とY軸用インデックススケール62およびメインスケール40の幾何学的な距離との差|p2 ・λ・m/2−q2 ・λ・n/2|の1/aとなるから、|p2 m−q2 n|λ/(2a)となる。よって、メインスケール40から基材50の底面(すなわちX軸用インデックススケール61)までの距離がp2 ・λ・m/2になるように、基材50が設置される位置を調整することにより、各スケール間全ての距離が適切に調整される。
【0031】
<3.2次元エンコーダの動作>
以下、本発明の一実施形態に係る2次元エンコーダのX方向およびY方向への相対変位量を測定する動作について説明する。
【0032】
初期状態では、メインスケール40の光透過部パターンとX軸用インデックススケール61のスリットとY軸用インデックススケール62のスリットとは、平面ミラー30から見て互いに重なり合う位置にある。したがって、メインスケール40の光透過部パターンを透過した光は、すべてX軸用インデックススケール61またはY軸用インデックススケール62のスリットにて透過され、スリット以外の部分に結像することはない。また、メインスケール40における光を透過しない部分(マスクパターン部分)も、X軸用インデックススケール61およびY軸用インデックススケール62に結像するが、この像がX軸用インデックススケール61およびY軸用インデックススケール62のスリットにかかることもない。X軸用光検知器71およびY軸用光検知器72は、このような初期状態において最大値の電気信号Sx,Syを出力する。
【0033】
初期状態からメインスケール40がスリット間隔以下の距離をX軸方向へ移動すると、メインスケール40に含まれるX軸用インデックススケール61と同一の形状を有する光透過部パターンの一部とX軸用インデックススケール61のスリットの一部とは、平面ミラー30から見て重なり合う。したがって、X軸用インデックススケール61には、メインスケール40に含まれるX軸用インデックススケール61と同一の形状を有する光透過部パターンが一部分だけ重なった状態で結像するため、メインスケール40の光透過部にて透過された光のうち、その一部の光はX軸用インデックススケール61のスリットにて透過される。また、メインスケール40に含まれるX軸用インデックススケール61と同一の形状を有する光を透過しない部分(マスクパターン部分の一部)が形成する影の一部は、X軸用インデックススケール61のスリット上に結像する。X軸用光検知器71は、このような状態において最大値より小さい値の電気信号Sxを出力する。なお、初期状態からY軸方向へスリット間隔以下の距離を移動する場合も同様に説明することができる。
【0034】
さらにメインスケール40がスリット間隔に等しい距離をX軸方向へ移動すると、メインスケール40に含まれるX軸用インデックススケール61と同一の形状を有する光透過部パターンの一部およびX軸用インデックススケール61のスリットは、平面ミラー30から見て互いに重なり合わなくなる。したがって、X軸用インデックススケール61には、メインスケール40に含まれるX軸用インデックススケール61と同一の形状を有する光透過部パターンが重ならない状態で結像するため、メインスケール40のスリットにて透過された光はX軸用インデックススケール61のスリット以外の光を透過しない部分に遮られる。また、メインスケール40に含まれるX軸用インデックススケール61と同一の形状を有する光を透過しない部分が形成する影は、X軸用インデックススケール61のスリット上に結像する。ここで、メインスケール40に含まれるY軸用インデックススケール62と同一の形状を有する光透過部パターンがX軸用インデックススケール61上に結像することがないことは前述の通りであるから、X軸用インデックススケール61のスリットにて前述のバイアス光が透過される量は小さくなる。X軸用光検知器71は、このような状態において最小値の電気信号Sxを出力する。なお、初期状態からY軸方向へスリット間隔に等しい距離を移動する場合も同様に説明することができる。
【0035】
このように、メインスケール40がスリット間隔に等しい距離をX方向へ移動する毎に、X軸用光検知器71は、値が上記最大値から上記最小値まで変化する周期的な電気信号Sxを出力する。同様に、メインスケール40がスリット間隔に等しい距離をY方向へ移動する毎に、Y軸用光検知器72は、値が周期的に変化する電気信号Syを出力する。これらの電気信号Sx,Syの波形は、上記最小値から上記最大値への直線的な値の変化と最大値から最小値への直線的な値の変化とに対応して、具体的にはやや鈍った三角波となる。
【0036】
信号処理部80は、これらの周期的に変化する電気信号Sx,Syを計測してそのピーク値の数をカウントする。具体的には、これらの信号を公知の波形整形回路によりパルス化し、公知のカウンタ回路によりそのパルス数をカウントする。ただし、X方向に配列されるスリットの間隔とY方向に配列されるスリットの間隔とは、p=2,q=3のときには2:3の関係にあるので、X方向およびY方向でそれぞれカウントされた数と距離との関係を整合させるために、信号の周波数を4倍にする4逓倍回路により電気信号Sxを4逓倍し、信号の周波数を6倍にする6逓倍回路により電気信号Syを6逓倍する。そうすれば、1パルスがカウントされる毎に、X軸方向およびY軸方向にそれぞれ2/4=3/6=0.5ずつ移動距離を測定することができる。そのため、逓倍しない場合に比べて分解能が向上するとともに、X軸方向およびY軸方向への移動距離がカウントされた数から同様に測定される。
【0037】
<4.効果>
本発明の一実施形態では、X軸用インデックススケール61およびY軸用インデックススケール62のスリット間隔(および対応するメインスケール40の光透過部パターンの間隔)p,qが典型的には互いに素である数(例えば、p=2,q=3)から選ばれており、メインスケール40とX軸用インデックススケール61およびY軸用インデックススケール62との距離がタルボット距離またはフラクショナルタルボット距離だけ離れるように構成される。この構成により、これらのインデックススケールのスリットに対して、直交するメインスケール40の光透過部パターンの部分にて透過される光(バイアス光)が透過される量が低減され、各スリットにて透過される光量の増減幅が大きくなるため、光検知器71,72から出力される信号のS/Nを向上させることができる。
【0038】
また、本発明の一実施形態では、p=2,q=3であることから、一般的に広く用いられる簡易な回路構成を有する4逓倍回路および6逓倍回路を信号処理部80において用いることができるので、信号処理部80を簡易に構成することができる。
【0039】
さらに、本発明の一実施形態では、X軸用インデックススケール61とY軸用インデックススケール62との幾何学的な距離、すなわち基材50の厚さが|p2 m−q2 n|λ/(2a)となるように構成される。この構成により、基材50の位置を正確に調整すれば、各スケール間の距離を正確かつ容易に設定することができる。また、この構成により、基材50に各インデックススケールが形成されない場合よりも光路長を変更することなく幾何学的な距離を短縮することができるので、装置全体をよりコンパクトに構成することができる。
【0040】
<5.変形例>
上記の実施形態では、メインスケール40、X軸用インデックススケール61、およびY軸用インデックススケール62は、光を透過するスリットが配列される構成である。しかし、メインスケール40、X軸用インデックススケール61、およびY軸用インデックススケール62のうちの1つ以上は、スリットと同様の形状であって光を反射する反射領域とそれ以外の非反射領域とを含む構成であってもよい。この構成では、光源10から発せられた平行でコヒーレントな光がメインスケール40へ入射され、メインスケール40にて透過または反射された光がX軸用インデックススケール61およびY軸用インデックススケール62へ入射され、X軸用インデックススケール61にて透過または反射された光がX軸用光検知器71に至り、Y軸用インデックススケール62にて透過または反射された光がY軸用光検知器72に至るように光路が設定され、各構成要素が配置される。
【0041】
また、上記の実施形態では、メインスケール40とX軸用インデックススケール61およびY軸用インデックススケール62との距離がタルボット距離zまたはフラクショナルタルボット距離だけ離れるように構成される。しかし、これらのインデックススケールのスリットに対して、直交するメインスケール40のスリットにて透過される光(バイアス光)が透過されなければ、100%の強度で結像しない距離(例えば3z/8や7z/24などの距離)だけ離れるように構成されてもよい。
【0042】
なお、上記の実施形態では、X軸用インデックススケール61およびY軸用インデックススケール62は、基材50の所定面上に形成される構成であるが、その構成上必ず基材50の所定面上に形成されなければならないわけではなく、基材50が省略される構成も可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る2次元エンコーダの概略的な構成を示す側面図である。
【図2】上記実施形態におけるX軸用インデックススケールおよびY軸用インデックススケールのスリット構成を示す平面図である。
【図3】上記実施形態におけるメインスケールのパターン構成を示す平面図である。
【符号の説明】
10 …光源
20 …コリメータレンズ
30 …平面ミラー
40 …メインスケール
50 …基材
61 …X軸用インデックススケール(第1のインデックススケール)
62 …Y軸用インデックススケール(第2のインデックススケール)
71 …X軸用光検知部(第1の受光素子)
72 …Y軸用光検知部(第2の受光素子)
80 …信号処理部(信号処理手段)
Sx,Sy …電気信号(第1および第2の電気信号)
p …X軸方向のスリット間隔
q …Y軸方向のスリット間隔

Claims (5)

  1. 相対する2物体の所定平面上における第1の方向であるX方向および第2の方向であるY方向への相対変位量を測定する2次元エンコーダであって、
    所定の波長λのコヒーレントな光を発する光源と、
    前記2物体の一方に設けられ、前記X方向へ第1の周期pで繰り返され前記Y方向へ前記第1の周期pとは異なる第2の周期qで繰り返される周期パターンにより前記光源が発する光を透過または反射するメインスケールと、
    前記2物体の他方に設けられ、前記メインスケールが有する前記X方向へ繰り返される周期パターンが結像しかつ前記Y方向へ繰り返される周期パターンが結像しない第1の距離だけ前記メインスケールから離れており、前記メインスケールが透過または反射する光を前記X方向への相対変位量に応じた光量だけ透過または反射する第1のインデックススケールと、
    前記2物体の他方に設けられ、前記メインスケールが有する前記X方向へ繰り返される周期パターンが結像せずかつ前記Y方向へ繰り返される周期パターンが結像する第2の距離だけ前記メインスケールから離れており、前記メインスケールが透過または反射する光を前記Y方向への相対変位量に応じた光量だけ透過または反射する第2のインデックススケールと、
    前記第1のインデックススケールにより透過または反射された光を検知することにより第1の電気信号を出力する第1の受光素子と、
    前記第2のインデックススケールにより透過または反射された光を検知することにより第2の電気信号を出力する第2の受光素子と、
    前記第1および第2の受光素子から出力される前記第1および第2の電気信号に基づき、前記X方向および前記Y方向への相対変位量を示す信号を出力する信号処理手段と
    を備える、2次元エンコーダ。
  2. 前記第1の距離は、p2 ・λ・m/2(mは自然数)から選ばれる値に基づいて算出され、
    前記第2の距離は、q2 ・λ・n/2(nは自然数)から選ばれる値に基づいて算出されることを特徴とする、請求項1に記載の2次元エンコーダ。
  3. 前記第1の周期pおよび第2の周期qは、2:3または3:2の比となる値から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の2次元エンコーダ。
  4. 前記メインスケールに対して平行に設けられ、前記メインスケールからの光を透過する1より大きい屈折率aの基材をさらに備え、
    前記第1のインデックススケールは、前記基材における所定の第1の面に形成され、
    前記第2のインデックススケールは、前記基材における前記第1の面と平行な第2の面に形成されることを特徴とする、請求項1に記載の2次元エンコーダ。
  5. 前記第1の面と前記第2の面との距離である前記基材の厚さは、|p2 m−q2 n|λ/(2a)(m,nは自然数)から選ばれる値であることを特徴とする、請求項4に記載の2次元エンコーダ。
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