JP3897086B2 - がん関連遺伝子発現観察アレイ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、抵悪性腫瘍薬等の作用機序を解明するためのDNAアレイ、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
悪性腫瘍の治療には、外科手術療法、放射線手術療法および化学療法がある。悪性腫瘍の化学療法は、抗腫瘍薬に対する正常細胞と悪性腫瘍細胞との感受性の違いを利用して、腫瘍細胞に対して選択毒性を示し、その発育や増殖を抑制することを目的とする。しかし抗悪性腫瘍薬は腫瘍細胞と正常細胞に対する影響に質的な差異が大きくないため正常細胞にも毒性を示す。そのため悪性腫瘍に対して効果の大きい薬剤ほど、正常細胞に対する影響が大きく重篤な副作用を現す可能性が大きい。しかし腫瘍細胞の耐性獲得(抗悪性腫瘍薬を連続投与していくことで、薬に抵抗性を有する腫瘍細胞が出現すること)に対抗するために、より強力で効果の大きい薬剤の開発は常に望まれている。また非小細胞肺がん、膵がん、悪性黒色腫、腎がんのように薬による治癒が困難ながんも数多く存在することも、より強力な抗悪性腫瘍薬の開発が待たれる理由である。
【0003】
良好な抗悪性腫瘍薬の開発には、その対腫瘍毒性の強さとともに、副作用の小さいことが望まれる。この相反する条件を満足するためには、薬剤が作用するメカニズム(作用機序)を把握した上で、創薬を行うことが必要である。このためには薬剤の作用機序を遺伝子レベルまで掘り下げて理解することが望ましい。
【0004】
DNA分子上の遺伝子に記述された遺伝情報は、メッセンジャーRNAに転写され、リボゾーム内でたんぱく質に翻訳される。このメッセンジャーRNAへの転写、たんぱく質への翻訳までの過程を遺伝子発現と呼ぶ。薬剤の作用機序を遺伝子レベルで理解するためには、薬剤が投与されてから、代謝され、実際の対腫瘍毒性を発揮するまでの過程で、どのような遺伝子やタンパク質が関与するかを、時間経過とともに追跡することが望ましい。この追跡により、遺伝子やタンパク質の相互作用、経路(遺伝子パスウェイ)が明らかになるためである。ひとたび、遺伝子パスウェイが明らかになれば、パスウェイ上の遺伝子に作用する他の薬剤を併用することで副作用を低減するなど、治療方針の改善を行える。また薬剤そのものを改良する指針が得られる。
【0005】
遺伝子パスウェイを明らかにするためには、(1)メッセンジャーRNAの量的変化を見る方法と(2)タンパク質の量的変化、空間分布の変化を見る方法がある。前者には、DNAアレイ(もしくはDNAチップ)、ノーザンハイブリダイゼーション、RT-PCR法がある。後者には、イーストツーハイブリッド(Yeast Two Hybrid)や、抗体染色法などがある。上記の方法のうち、薬剤の作用に関与するであろう数十から数百の遺伝子の変化を同時に見る技術としては、(1)のメッセンジャーRNAを見る方法、特にDNAアレイ法と呼ばれる技術が、簡便性、スループット、コストの見地から最も好適であり、現在盛んに研究されている。
【0006】
DNAアレイ法では数千から数万種類ものメッセンジャーRNAの量的差異を一度に測定可能である(Duggan, D.J.ら、Expression profiling using cDNA microarrays, Nature genetics supplement, vol.21, p10-14, 1999)。一般に、DNAアレイはガラススライドの上に、メッセンジャーRNAと相補的な配列を有する相補DNA(complementary DNAもしくはcDNA)をプローブとして固定化したものである(Lockhart, D.J.ら、Expression monitoring by hybridization to high-density oligonucleotide arrays, Nature biotechnology, vol.14, p.1675-1680, 1996)。実験者は、細胞や臓器等からメッセンジャーRNAを取り出した後、逆転写酵素と蛍光標識物質を用いて、メッセンジャーRNAから蛍光標識されたcDNAを合成する。その後、蛍光標識付cDNAを、DNAアレイ上にふりかける。続いて、DNAアレイを一定時間一定温度に保持して、蛍光標識付cDNAとDNAアレイとを相補結合(ハイブリダイズ)させる。その後、DNAアレイを洗浄し、非特異的に結合している蛍光標識付cDNAを洗い流す(非特異的に結合しているcDNAは、特異的に結合しているcDNAと比較して相補結合力が弱い。)最後に、DNAアレイ上に固定化された個々のプローブに対応する蛍光信号強度を測定する。メッセンジャーRNA量は対応するプローブとハイブリダイズした蛍光信号強度に比例する。こうして臓器や細胞内の種々の遺伝子に対応するメッセンジャーRNA量を測定することができる。例えば、薬剤投与後の経過時間ごとに細胞あるいは臓器からメッセンジャーRNAを取り出して、DNAアレイ法で測定することで、遺伝子ごとのメッセンジャーRNA量の時間変化を見ることができる。メッセンジャーRNA量が増加することは、DNA分子からの遺伝情報が活発に転写されることを意味し、遺伝子の働きが増加することに対応する。この遺伝子の働きの時間変化を解析することで、遺伝子パスウェイの情報が得られる。
【0007】
DNAアレイを用いて遺伝子パスウェイ情報を求める取り組みとして、近年、酵母の遺伝子のほぼ全てを1枚のアレイに固定化して、薬剤投与などの刺激を加えた場合のメッセンジャーRNAの量的変化を測定する試みが行われている(DeRisi, J. L.ら, Exploring the metabolic and genetic control of gene expression on a genomic scale, Science, vol.278, p.680-686, 1997, Roberts, C. J. ら、Signaling and circuitry of multiple MAPK pathways revealed by a matrix of global gene expression profiles, Science, vol.287, p.873-880, 2000)。また酵母の遺伝子の一部を破壊して、薬物投与後のメッセンジャーRNAの量的変化を観察することで、薬物投与と遺伝子パスウェイの関連も調べられている(Marton, M. J.ら、Drug target validation and identification of secondary drug target effects using DNA microarrays, Nature Medicine, vol.4, p.1293-1301、ないしはStoughton et al. Methods for identifying pathways of drug action, US patent 5965352)。しかし酵母における薬物の作用機序は、ヒトにおける薬物の作用機序と同一とは言えない。それは酵母とヒトとで、遺伝子の機能や数が異なるからである。特に酵母の遺伝子を破壊することによって、メッセンジャーRNA量の変化が起こるだけでなく、染色体数の変化までが併発されることが分かっている(Hughes, T. R.ら、Widespread aneupolidy revealed by DNA microarray expression profiling, Nature genetics, vol.25, p.333-337, 2000)。この染色体数の変化はヒトでは、例えばダウン症のような重篤な疾病を引き起こす原因であり、がん細胞を除いた正常細胞では、ほとんど皆無に近い現象である。この点からも酵母、特に特定の遺伝子を破壊した酵母から得られた知見を、ヒトに外挿する際には注意が必要である。酵母から得られた情報のみに頼るのではなく、ヒト細胞での知見も積み重ねていくことが望まれている。
【0008】
複数のヒトがん培養細胞を対象に、種々の抗悪性腫瘍薬を投与した場合と、投与しない場合とで、個々の遺伝子(約9700個)から転写されるメッセンジャーRNA量にどの程度の違いが現れるかを研究した例がある(Scherf, U.ら, A gene expression database fot the molecular pharmacology of canceRNAture genetics, vol.24, p.236-244, 2000)。この研究では、ある薬剤に対し、種々のヒトがん培養細胞のそれぞれでどの遺伝子のメッセンジャーRNA量が変化したのかのクラスター分析が行われた。また、あるヒトがん培養細胞に対し、種々の薬剤のそれぞれの投与時でどの遺伝子のメッセンジャーRNA量が変化したのかのクラスター分析も同時に行われたものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述のRNA量の相違について調べた結果について、本来、種々の薬剤への応答メカニズムが、各細胞で共通しているのであれば、両者のクラスター分析の結果は共通しなくてはならない。しかしながら、前述のScherfらの論文によると、細胞の種類とメッセンジャーRNA間のクラスター分析と、薬剤の種類とメッセンジャーRNA間のクラスター分析の結果は大変に異なっていた。結局、前述のScherfらの論文では遺伝子パスウェイに関する新たな情報は得られていない。注意すべきは、Scherfらの用いたDNAアレイにおいて、約9700個の遺伝子に対応するメッセンジャーRNA量の変化が、遺伝子ごとに高精度に分離されて測定されているか、検討されていない点である。後述のように、測定精度を確保するためのプローブ設計技術が適用されてはじめて、遺伝子ごとの高精度に分離した実験を行えると思われる。
【0010】
遺伝子数が数千から数万という既存のアレイは、後述のように、固定化する遺伝子数が多いため、各遺伝子ごとを高精度で分離することが難しくなる。このため遺伝子数が数千から数万というアレイは、探索用途(Gene Discovery)には適しているが、遺伝子パスウェイを観察するような解析用途(Analytical Use)には必ずしも好適とは言えない。
【0011】
【課題を解決するための手段】
抗悪性腫瘍薬等の作用機序を高精度に解析するためには、1種類の遺伝子とのみ相補的結合するはずのDNA断片が、他遺伝子とも結合すること(クロスハイブリダイゼーション)は避けなくてはならないことは自明である。これは1枚のアレイ上に固定化する遺伝子数が多くなるほど後述のように困難となる。従って、遺伝子数が数千から数万という探索用途のDNAアレイで各遺伝子間のクロスハイブリダイゼーションを皆無にすることも非常に困難である。この課題を解決するためには、DNAアレイを使用する目的が例えば抗悪性腫瘍薬等の作用機序の解明であれば、薬剤の作用機序に関連する遺伝子のみを可能なかぎり必要最小限(as small as reasonably achievable)集め、アレイ化することが望ましい。また、酵母を対象としたDNAアレイでは、その知見をヒトに直接反映させるには限度がある。これは、マウス、ラット等の実験動物を対象としたDNAアレイにおいても同様に問題である。この課題を解決するためには、ヒト遺伝子を用いたアレイとするのがよい。
【0012】
抗悪性腫瘍薬等の作用機序に関連する遺伝子のみを必要最小限集めるために、抗悪性腫瘍薬等の薬剤が体内に取り込まれた後の過程を考察する。体内に取り込まれた後、薬剤はほとんどの例外なく薬物代謝酵素により代謝される。また薬剤は代謝されて効力を失うもの、代謝されて初めて薬効を発揮するもの、代謝されることで好ましくない毒性を発揮するものがある。そこで、抗悪性腫瘍薬等の作用機序を遺伝子レベルで解析するためには、少なくとも薬剤代謝関連の遺伝子発現を解析する必要がある。
【0013】
また抗悪性腫瘍薬等の薬剤は、本来悪性腫瘍の殺傷、発生の抑制、浸潤の抑制、転移の抑制等の薬効を期待されている。この期待と相違する効果をもたらす場合が副作用であり、副作用は可能な限り低減しなくてはならない。このためがんに関連した遺伝子特に、がんの発生、浸潤、転移と関連した遺伝子の発現を解析する必要がある。
【0014】
すなわち、抗悪性腫瘍薬等の薬効を高精度に解析するには、(1)薬剤代謝関連遺伝子と(2)がん関連遺伝子のそれぞれを必要最小限、固定化したDNAアレイが最も適している。次にDNAアレイに固定化すべき薬物代謝関連遺伝子とがん関連遺伝子の選択理由を示す。
【0015】
(A)薬物代謝関連遺伝子の選択理由
体内摂取された薬物は必ずと言ってよいほど代謝される。この代謝には多様な代謝酵素が関与している。そして生体内代謝経路の関与している薬物代謝反応は、通常無秩序にはおこらない。またある特別の薬物代謝経路が、通常単独で機能することもない。1つの経路の活性は他の経路の活性に影響を与え、相互に代謝を制御しあっていることが分かっている。一説には、寄与の小さい(マイナー)なものを含めると約千個の遺伝子が薬物代謝に関与していると言われている。薬物代謝反応は一般に、第一相反応(官能基導入反応)および第二相反応(抱合反応)に分類される。第一相反応では酸化、還元、加水分解、水和、脱チオアセチル化、異性化などの化学反応が生じ、第二相反応では、グルクロン酸またはグルコース抱合反応、硫酸抱合、メチル抱合、アセチル抱合、アミノ酸抱合、グルタチオン抱合、脂肪酸抱合、縮合などの各化学反応が生じている。
【0016】
上記の多彩な薬物代謝関連酵素を全て網羅することは、DNA断片数の増加に帰着し、前述のようにクロスハイブリダイゼーションを無くして高精度の解析を実現することと背反する。そこで、第一相反応と第二相反応のうちで、寄与の大きい(メジャー)なものを選択する。ヒトでは、第一相反応に関連する遺伝子として、チトクローム450遺伝子(CYP)1A1、CYP1A2、CYP1B1、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1、CYP3A4、CYP3A5、CYP3A7および、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデハイドロゲナーゼ、ジヒドロキシピリミジンデヒドロゲナーゼ、NADPH-チトクロムP450レダクターゼ、DT−ジアホラーゼ、エステラーゼ、エポキシドヒドラーゼが代表的で、全体の薬剤代謝の9割以上が前記の遺伝子の働きによると言われている(Evans, W.E.とRelling, M.、Pharmacogenomics: Translating functional genomics into rational therapeutics, Science, vol.266, p.487-491, 1999)。また第二相反応に関連する遺伝子として、カテコールO-メチルトランスフェラーゼ、グルタチオーネS−トランスフェラーゼ、ヒスタミンメチルトランスフェラーゼ、N-アセチルトランスフェラーゼ、スルフォトランスフェラーゼ、チオプリンメチルトランスフェラーゼ、ウリジン5‘-トリホスフェートグルクロンシルトランスフェラーゼが、全体の8割以上の薬物代謝に関与しているとも言われている(Evans, W.E.とRelling, M.、同上)。そこで、少なくとも8割以上の薬物代謝に関して、上記の遺伝子群の遺伝子発現を見ることで、おおよその薬物代謝機構を解析することができる。
【0017】
(b)がん関連遺伝子の選択
通常細胞はその増殖が制御されているが、がん細胞は生体のコントロールを受けずに自律的に増殖するよう変異した細胞である。そのため、がん細胞では、細胞増殖や細胞周期を調整する遺伝子に異常が見られる場合が多い。例えば細胞増殖因子として、表皮増殖因子(EGF, epidermal growth factor)やその受容体(EGFレセプタ、EGFR)、血小板由来増殖因子(PDGF, platelet-derived growth factor) やその受容体(PDGFR)、インスリン様増殖因子(IGF, insulin-like growth factor)やその受容体(IGFR)、線維芽細胞増殖因子(FGF, fibroblast growth factor) やその受容体(FGFR)、血管内皮増殖因子(VEGF, vascular endotherial growth factor) やその受容体(VEGFR)、肝細胞増殖因子(HGF, hepatocyte growth factor) やその受容体(HGFR)、神経栄養因子(NT, neurotropin)、形質転換増殖因子β(TGFβ, transforming growth factor-β)ファミリー等に異常が見られる。そして各増殖因子に対応する受容体(receptor)遺伝子、例えばEGFに対してEGFレセプタ(EGFR)、に異常があることもある。また細胞の増殖と分化を誘導する因子として、リンパ球や血球細胞が分泌する生理活性ペプチドをサイトカイン(cytokines)と総称する。主なサイトカインとして、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF, granulocyte-colony stimulating factor)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF, macrohage-colony stimulating factor)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF, granulocyte-macrophage colony stimulating factor)、エリスロポエチン(erythropoietin)、トロンボポエチン(thrombopoietin)、幹細胞因子(SCF, stem cell factor)、インターロイキン(interleukin)1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12、腫瘍壊死因子(TNF, tumor necrosis factor)、インターフェロン(interferon)等に異常が見られる。細胞周期調節を司る遺伝子として、サイクリン(cyclin)とサイクリン依存性キナーゼ(CDK、cyclin-dependent kinase)、CDK阻害因子(CKI, CDK inhibitor)、例えばサイクリンA, サイクリンB, サイクリンD, サイクリンE、CDK1、CDK2、CDK4、CDK6、p16INK、p15、p21、p27、網膜芽細胞腫(RB, retinoblastoma)遺伝子等に異常がみられる。
【0018】
細胞死の機構に異常が生じても、その細胞はがん化する。生体においておこる細胞死はほとんどがアポトーシスと呼ばれる細胞死である。アポトーシスの起こる経路には、(a)カルシウム経路、(b)死のシグナル経路、(c)セラミド経路、(d)ミトコンドリア経路、(e)DNA障害経路がある。(a)カルシウム経路は、グルココルチコイドの作用により細胞内ホスファジルイノシトール3リン酸レセプターが活性化することにより発動する。(b)死のシグナル経路は、TNFアルファ、Fasリガンドが、細胞表面レセプター(TNFレセプタ、Fas)と結合することにより発動される。その後、レセプターの細胞内ドメインに会合するたんぱく質分子(TNFレセプタ1では、TRADD, FADD, RAIDD等、FasではFADD, RIP, RAIDDなど)が活性化する。それらたんぱく質の活性化によりカスパーゼ遺伝子(CASP)8,1、3などが活性化される。またカスパーゼ遺伝子の関連遺伝子、例えばTRAMP, TRAILなどがアポトーシスの抑制していることが知られている。(c)セラミド経路は、放射線、紫外線、熱、過酸化水素などの各種ストレスによって発動する。より詳細には、セラミド(ceramide)の増加とそれによるSAPK(stress-acivated protein kinase)/JNK(Jun terminal-N kinase)の活性化により、アポトーシスが誘導される。(d)ミトコンドリア経路は、放射線、紫外線、熱、過酸化水素などの種々の刺激により発動され、Bax2(Bcl-2 associated X protein)、Bcl-2, Bcl-xLの活性化、それに伴うカスパーゼ遺伝子の活性化がおこり、アポトーシスが誘導される。(e)DNA障害経路では、p53、p21、p51、p73、MDM2遺伝子等が関与している。がん細胞では前記アポトーシス関連遺伝子の異常が観察されている。
【0019】
その遺伝子に異常があることで、細胞のがん化を促すことが知られている遺伝子をがん遺伝子と呼ぶ。がん遺伝子をシグナル伝達の流れに沿って分類すると、(a)増殖因子群(例えばsis遺伝子)、(b)レセプター型チロシンキナーゼ群(例えばerbB, fms, ret遺伝子)、(c)非レセプター型チロシンキナーゼ群(例えばfes遺伝子)、(d)GTP/GDP結合たんぱく質(例えばras遺伝子)、(e)セリン/トレオニンキナーゼ群(例えばsrc、mos、raf遺伝子)、(f)核内たんぱく質群(例えば、myc, myb, fos, jun, erbA遺伝子)、(g)シグナル伝達アダプター分子(例えばcrk遺伝子)、融合遺伝子(例えばBcr-Abl遺伝子)がある。また主要なシグナル伝達系上の遺伝子もがん遺伝子として分類されることも多い。主要なシグナル伝達経路であるRas-MAPキナーゼ経路(例えばShc, Grb2, Sos, MEK, Rho, Rac遺伝子)、ホスホリパーゼCガンマ-プロテインキナーゼC経路(例えば、PLCγ、PKC遺伝子)、フォスファジルイノシトール3リン酸キナーゼ-Akt経路(例えば、PI3K、Akt, Bad遺伝子)、JAK-STAT経路(JAK、STAT)、GAP系経路(例えば、GAP, p180, p62)などががん遺伝子として知られている。また核内の転写因子では、Myc, Ear, Evi, Gli, Fos, Fra, jun, Maf, Ets, Myb, IRF1,IRF2, Rel, Nf-カッパB、AMLなどが発がん活性を有することが分かっている。
【0020】
細胞のがん化を抑制する遺伝子、がん抑制遺伝子の機能が失われることで細胞のがん化ステップが進行する。これまで発見された主ながん抑制遺伝子は、RB, p53, WT1, NF1, APC, VHL, NF2, CDKN/p16, BRCA1, BRCA2, TGFβRII, DPC4, PTCH, PTEN, MEN1, Eカドヘリン遺伝子、nm23などである。
【0021】
DNAが損傷した際、その細胞は時にはアポトーシスに向かうこともあれば、修復されることがある。このDNA修復の過程にエラーが入ることで、その遺伝子に突然変異(mutation)が生じる。突然変異は細胞のがん化を高確率で引き起こす。DNA修復遺伝子として、ヒトでは、MSH2, MSH3, MSH6, MLH1, PMS1, PMS2, PMS3, メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)等がある。
【0022】
がん転移に関連した転移関連遺伝子として、がん細胞で一般に過剰に産生されているのが、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)群である。MMPは細胞間基質の主成分であるコラーゲンを分解する。またMMPの阻害物質であるTIMP(tissue inhibitor of metalloprotease)の異常もがん細胞では散見される。また細胞同士を接着させるカドヘリンと、カドヘリンの細胞内領域としている、カテニン(αカテニン、βカテニン、γカテニン)や、ヒアルロン酸レセプターファミリ(CD44)、インテグリンファミリー、免疫グロブリンファミリー、セレクチンファミリー、シアロムチンファミリーなどの異常と、がんとの関連が指摘されている。
【0023】
前述のように、がん遺伝子(oncogenes, tumor-related genes)、がん抑制遺伝子(tumor suppressor genes)、増殖因子(growth factors)、転写因子(transcription factors)、サイトカイン(cytokines)、アポトーシス(apoptosis genes)、細胞周期調節(cell cycle regulators)、DNA修復遺伝子(DNA damage repair genes)、転写関連遺伝子等の細胞がん化の要となる遺伝子群の遺伝子発現を見ることで、抗悪性腫瘍剤作用機序の必要最小限の解析を行うことができる。
【0024】
またDNAアレイ上に固定化された各DNA断片と試料由来DNA断片間での、ハイブリダーゼーションを高精度(ないしは高ストリンジェント、highly stringent)に行うためには、ハイブリダイゼーション温度(Th, hybridization temperature)と固定化DNA断片の融解温度(Tm, melting temperature)の関係が重要である。なぜなら、DNA同士の配列相同性とTmには次の関係が知られているからである。それは、2つのDNA間での1%の塩基配列違い(ミスマッチ)により、両DNAのTmは1.4℃低下するという関係である。すなわち、固定化DNA断片のTmイコールThの時、固定化DNA断片の塩基配列と100%相同性(ホモロジー)を有する試料由来DNA断片がハイブリダイゼーションする。ThとTmが10℃異なるとき、
100%−(10℃/1.4℃)=92.9%
より、固定化DNA断片の塩基配列と約93%〜100%ホモロジーを有する試料由来DNA断片がハイブリダイゼーションする。同様にThとTmが20℃異なるときは85.7%〜100%ホモロジー、ThとTmが30℃異なるときは、78.6%〜100%ホモロジーのDNA同士がハイブリダイゼーションすることになる。高精度で分離を行う際は、少なくとも80%〜100%ホモロジーのみがハイブリダイズすることが望ましい。このため、固定化DNA断片の融解温度とハイブリダイゼーション温度との差異が30℃を超えないことが高精度で分離を行うために必要である。
【0025】
DNAアレイ上に固定化された各DNA断片と試料由来DNA断片間での、ハイブリダーゼーションを高精度に行うもう一つの重要な条件は、クロスハイブリダイゼーションを無くすことである。クロスハイブリダイゼーションは、DNA配列同士のホモロジーが高いために生じる。そこでクロスハイブリダイゼーションを防ぐためには、固定化DNA断片と、試料由来のDNA断片のうち固定化DNA断片と本来ハイブリダイズしないDNA断片との相同性が十分低いことが望まれる。この実現は、固定化されるDNA断片の種類(遺伝子数)が多いほど困難になる。表1に遺伝子数が増加した場合にどの程度クロスハイブリダイゼーションが増加するかを計算した結果をしめす。
【0026】
【表1】
【0027】
表1の計算ではまず、GENBANKから千種類の遺伝子配列を引用した。そのうち、無作為に20、200、400、1000種類の遺伝子配列セットを作成した。それら遺伝子配列セットからTmが72℃以上82℃以下となる300塩基対のDNA配列を、各遺伝子について1個無作為に抽出した。それらの無作為抽出DNA配列を遺伝子間で総当り的に互いに比較し、ブラストアルゴリズムに従ってホモロジーを計算した。なおブラストアルゴリズムは、Altschul, S. F.ら、Basic local alignment search tool, J. Mol. Biol. Vol.215, p.403-410, 1990に記載されていたものと同一とした。ブラストアルゴリズムで計算した統計的有意水準(p値)が10%以下の場合、比較された2種類のDNA配列のホモロジーは十分に高い(危険率10%以下)とし、クロスハイブリダイゼーションが生じたとした。例えば表1で示した200遺伝子の場合、200個の遺伝子からそれぞれ無作為に抽出したDNA断片同士を比較したところ、7組の遺伝子、すなわち14個の遺伝子同士でホモロジーが十分に高い(p値<10%)という結果がえられた。この200遺伝子中7組の遺伝子でクロスハイブリダイゼーションが生じたという結果を、クロスハイブリダイゼーションの生じた確率を7%(=14遺伝子/200遺伝子)として表1に記載した。以下同様に、20遺伝子ではクロスハイブリダイゼーションの確率はゼロ、400遺伝子では28%(=112遺伝子/400遺伝子)、1000遺伝子では68%(=680遺伝子/1000遺伝子)であった。類似機能を有する遺伝子同士やアイソフォーム同士でクロスハイブリダイゼーションが高頻度に見られた。表1示した計算の結果、遺伝子数が増加することでクロスハイブリダイゼーションが起こる確率が高くなることが裏付けられた。固定化する遺伝子の種類が増加することにより、クロスハイブリダイゼーションが避けられないことが分かる。遺伝子数が数千から数万に増加した場合、固定化DNA断片の配列決定をよほど慎重に行わなければ、抗悪性腫瘍薬等の作用機序を高精度に解析することはできない。クロスハイブリダイゼーションを皆無とし、かつ融解温度を一定の範囲にそろえてハイブリダイゼーションを高ストリンジェントに行うためには、解析目的に応じて必要最小限の遺伝子数のみをアレイ上に固定化することが望ましい。例えば抗悪性腫瘍薬等の作用機序の解明を目的とする場合、ヒトがんの発生、浸潤、転移の要となる遺伝子を記述するDNA分子と相補結合するDNA断片および、薬物代謝の要となる遺伝子を記述するDNA分子と相補結合するDNA断片のみを固定化したアレイが良い。
【0028】
ここで、図4を用いて固定化断片同士のp値とクロスハイブリダイセイションとの関係を説明する。固定化DNA断片同士の配列相同性が大きくなる(p値が小さくなる)につれ、クロスハイブリダイゼーションが顕著になることは予想がつく。このp値とクロスハイブリダイゼーションとの関係を知るために、以下のような実験を行った。表2に示した遺伝子のうち、IFI56に対応するDNA断片をガラス表面に固定化した。加えてPRSMに対応するDNA断片をガラス表面に固定化した。すなわち2種類の異なるDNA断片をガラス表面に並べて固定化した。一方、蛍光標識したIFI56遺伝子断片を、ガラス表面にふりかけて、ハイブリダイズさせた。IFI56遺伝子断片がIFI56に対応する固定化DNA断片とのみハイブリダイズし、PRSMに対応するDNA断片にはハイブリダイズしなければ、クロスハイブリダイゼーションは零である。すなわち、(PRSMに対応するDNA断片とのハイブリダイズに由来する蛍光強度)と(IFI56に対応するDNA断片とのハイブリダイズに由来する蛍光強度)の比率は零となる。以後、この比率を信号強度比と呼ぶ。またIFI56遺伝子断片が、IFI56に対応するDNA断片とPRSMに対応するDNA断片の両者とハイブリダイズする場合、信号強度比は1になる。すなわちクロスハイブリダイゼーションが頻繁に起こるほど、信号強度比は1に近づく。図4に信号強度比とp値との関係をしめした。p値が小さい(すなわち2種類の固定化DNA断片同士の相同性が大きい)ほど、信号強度比が高い(クロスハイブリダイゼーションが多い)ことが分かる。但しp値が10%を超えた時点で、信号強度比率は、0.01程度まで小さくなった。この結果から、固定化DNA断片同士のp値が10%を超えるようにすれば、クロスハイブリダイゼーションを防ぐことが十分可能となることが分かる。
【0029】
一方、DNA分子同士のハイブリダイゼーションは、1本鎖DNA同士で生じる現象である。1本鎖DNAは通常、溶液中ではその一部が折れ曲がって数個の相補的な塩基対を形成している。この構造はヘアピン構造と呼ばれる。このヘアピン構造のうち、異常に熱安定性が高いヘアピン構造が存在することが分かっている(平尾と三浦、1本鎖DNAの特殊構造 異常に熱安定性が高いミニヘアピン構造、蛋白質核酸酵素、vol.40, p.1583-1592,1995)。このミニヘアピン構造、もしくは特異な高次構造をとる短配列は、例えば、
GCGAAAGC(配列番号1)
GCGAAGC(配列番号2)
である。前者の(配列番号1)のTmは76℃にも達する。この76℃という温度は一般のハイブリダイゼーション温度(40℃から62℃)と比較して有意に高い。このため、前記配列番号1が固定化DNA断片中に含まれた場合、ハイブリダイゼーション時、その配列部分ないしはより広範囲の領域で相補結合を形成しない確率が非常に高い。相補結合を形成しない状態とは、ある意味でミスマッチの状態と同一である。前述のように、2つのDNA間でミスマッチがあれば、両DNAのTmが低下し、ハイブリダイゼーション精度が低下することになる。このため例えば配列番号1や配列番号2のようなミニヘアピン構造はできる限り、固定化DNA断片中に含まれない方がよい。このミニヘアピン構造を生じる可能性のある他の配列としては、短繰り返し配列、例えば、
GGGCGGCGGG(配列番号3)
TTTCATTATTGAAA(配列番号4)
等が考えられる。
【0030】
ヒトDNAにはヒト特有の、Alu配列と呼ばれる、反復配列を多く含む配列の存在が知られている。このAlu配列はヒトDNAに数多く含まれている。またAlu配列は、メッセンジャーRNA内、特に5‘非翻訳領域または3’非翻訳領域にも存在する。仮に、測定対象のメッセンジャーRNAサンプル中にDNA分子が混入していた場合、メッセンジャーRNAを鋳型として蛍光標識をする工程中、混入DNA内もAlu配列部分の存在により蛍光標識されてしまう可能性がある。そしてAlu配列部分を含む標識された混入DNAと、固定化DNA断片とが相補結合することも考えられる。本来メッセンジャーRNAのみを測定すべきが、DNAをも測定してしまう恐れがある。この混入DNAによる誤った解析を避けるためには、固定化DNA断片中にAlu配列と相同性が有意に高い部分が含まれないことが望ましい。またAlu配列には反復構造が多く含まれるので、溶液中で、高次構造をとる可能性があり、前記のミニヘアピン構造と同様にミスマッチを引き起こすことが十分に考えられる。この意味でも固定化DNA断片中にAlu配列と相同性が有意に高い部分が含まれないことが望ましい。例えば、Alu配列と固定化DNA断片とのホモロジーがブラストアルゴリズムで算出した統計的有意水準(p値)で10%を超えるようにすれば、配列相同性が有意に低くなると考えられる。
【0031】
ここで、 Alu配列と固定化DNA断片との配列相同性とノイズ、S/N比との関係について図5を用いて説明する。 Alu配列と固定化DNA断片との配列相同性(p値)が、測定結果に及ぼす影響を観察するために、以下のような実験を行った。まずガラス表面にIFI56に対応するDNA断片を固定化した。それに対して、表2に示した10種類の遺伝子を蛍光標識し、ガラス表面にふりかけてハイブリダイズさせた。最も好ましくは、IFI56に対応する蛍光信号のみが観察されて、それ以外の信号は観察されないのが望ましい。今、Alu配列とのp値が20%以上の配列(Alu配列とのホモロジーが十分低い)での蛍光強度を1に規格化する。Alu配列とのp値が、10%、5%、1%、0.01%以下の場合の、それぞれの蛍光強度(Alu配列とのp値が20%の値を1に規格化した値)を図5に示す。すると、p値が小さくなるにつれ、蛍光強度が増加することが分かった。この増加分は本来ハイブリダイズしないはずのDNA配列がハイブリダイズするために生じたものなので、ノイズである。ノイズ(すなわち、それぞれの蛍光強度から1を引いたもの)を図5に示す。p値10%でほぼ、ノイズは0.1であるが、p値が10%以下になると増加していく。また蛍光強度÷ノイズをSN比率(S/N)と定義する。それぞれのSN比率を計算したところ、p値が10%をきるにつれ、SN比が小さく(測定感度が悪く)なった。図5から、Alu配列とのp値が10%以下の固定化DNA断片では、繰り返し配列や、サンプル中に含まれるコンタミDNA由来のAlu配列の存在により、測定感度が有意に悪化することが分かった。Alu配列と固定化DNA断片とのp値は10%以上とすることで、測定感度の悪化を防ぐことができる。
【0032】
前記、(1)クロスハイブリダイゼーション、(2)特異な高次構造をとる短配列や短繰り返し配列、(3)Aluとの類似配列等の存在が実際のハイブリダイゼーションに及ぼす影響を調べるために、10種類の遺伝子を記述するメッセンジャーRNAの相補DNA(cDNA)配列を、ガラス表面に固定化した実験を行った。この固定化DNA断片(正確にはcDNA断片だが、以後DNA断片と呼ぶ)は、GENBANKの配列から無作為に300、600、900、1200、1500、2100塩基の領域を選択して合成したものである。測定サンプルは、ヒトすい臓ガン細胞(細胞名称CFPAC1)から抽出したメッセンジャーRNA群を鋳型とし、オリゴdTプライマーを用いた逆転写反応により合成されたcDNAとした。なお逆転写して合成されたcDNAは、逆転写反応時に蛍光標識(蛍光試薬名Cy3-dCTP)された。実験で用いた10種類の遺伝子の略号、GENBANKのアクセション番号、遺伝子名称を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
図1に、実験により得られた、固定化DNA断片の塩基長がハイブリダイゼーションに及ぼす影響を示す。図中の10個の折れ線グラフのそれぞれは表2で示した10遺伝子を用いた実験の結果である。折れ線グラフ中に遺伝子略号(表2に示す)を記した。折れ線グラフの横軸は固定化DNA断片の塩基長を示す。折れ線グラフの縦軸は蛍光強度を示す。但し縦軸の蛍光強度は300塩基長での蛍光強度を1として規格化した。蛍光強度は背景(バックグランド)の蛍光強度を差し引いた、正味の蛍光強度とした。ハイブリダイゼーション温度は62℃とした。蛍光強度が高いほど、信号強度比(SN比)が高い、すなわち検出感度が高いことに相当する。なお折れ線グラフ中の値は、3回の実験の平均値、エラーバーはその標準偏差である。また各折れ線グラフの下方の横線は、各長さのDNA断片の相対位置関係を示している。5‘末端を左に、3’末端を右にして示した。上から順番に塩基長の長いものから短いものとなっている。横線がオーバラップしているところは、それぞれのDNA断片で共通の配列部分である。
【0035】
図1の結果を見ると、IFI56, GSSの2遺伝子を対象とした場合、固定化DNA断片長が長いほど、緩やかではあるが、蛍光強度すなわち検出感度が高くなる傾向が見られた。またPRSM, UBE, AKT, ADPRT、SMRTの5遺伝子では、測定誤差(エラーバー)を考慮すると、固定化DNA断片長によらずほぼ一定の検出感度が得られた。前記のDNA断片長さが長いほど検出感度が増加する現象は、DNA分子の長さが長いほどDNA分子同士の結合力の安定性が上昇することで説明できる。DNA分子同士の結合力の安定性は、熱力学における自由エネルギー(ΔG)で見積もることができる。ΔGを計算すると塩基長が長いほど小さい値が得られる。ΔGが小さいほど熱力学的安定性が増加するのだ。なお、DNA分子同士のΔGの値は最近接塩基法により計算した(J. SantaLucia, Jr. A unified view of polymer, dumbbell, and oligonucleotide DNA nearest-neighbor thermodynamics, Porc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.95, p.1460-1465, 1998)。
【0036】
しかし、CASP, PLG, GEMの3遺伝子では、統計的有意にDNA分子の長さと蛍光強度、すなわち検出感度が線形相関していない。CASPでいうと600塩基、CASPでいうと600塩基、GEMでいうと600と1200塩基で、明らかに蛍光強度が低い。この結果は(マイナス要因1)クロスハイブリダイゼーション、(マイナス要因2)特異な高次構造をとる短配列や短繰り返し配列、(マイナス要因3)Aluとの類似配列等の存在といったマイナス要因となる塩基配列部分が、該当部分に含まれているためではないかと推察し、解析を行った。その結果、CASPの600塩基、GEMの600塩基と1200塩基の配列で、その他の配列と重複しない領域において、前記マイナス要因2が存在した。具体的にはCASPの600塩基ではGCGAAAGC(配列番号1)もしくはその相補、反転、相補反転配列のいずれかが存在し、GEMの600塩基と1200塩基ではGCGAAGC(配列番号2)もしくは相補配列、反転配列、相補反転配列のいずれかが存在した。なおGCGAAAGCの相補配列はCGCTTTCG、反転配列はCGAAAGCG、相補反転配列はGCTTTCGCである。但し、PLGについては(1)から(3)のいずれにも該当しなかった。このPLGの結果から、まだ知られていないマイナス要因が存在する可能性が示唆された。図1の結果からも改めて、特異な高次構造をとる短配列や短繰り返し配列の存在が好ましくないことが確認された。また、固定化DNA断片の熱力学における自由エネルギー(ΔG)を小さくすることは、少なくともマイナスにはならず、むしろプラスに作用することも確認された。例えば塩基長を300塩基とした場合、ΔGは、マイナス140からマイナス250程度が好ましい。但しΔGの値は塩基長が長くなるほど小さくなり、塩基配列によっても異なる値をとるので、明確なしきい値を設けることは難しい。
【0037】
図1の結果等を踏まえると、1枚のアレイ上に固定化するDNA断片は、DNA断片のTmがハイブリダイゼーションの温度から30℃を超えないこと、言いかえればある一定の範囲を超えないこと、そのTm条件を満たした上で自由エネルギー(ΔG)を出来る限り小さくすることが重要である。更に加えてクロスハイブリダイゼーションの原因配列の除外、特異な高次構造をとる短配列や短繰り返し配列(以後、有害短配列と呼ぶ)の除外、Aluとの類似配列の除外を行うことが好ましい。これらの条件を全て満足するためには、例えば図2に示した計算アルゴリズムで、固定化DNA断片の配列決定を行えばよい。図2をアルゴリズムの順に従って説明する。はじめにFASTA形式等で記述されたDNAもしくは、メッセンジャーRNAの配列ファイルを読み込み工程(1)、続いて塩濃度やハイブリダイゼーション温度といった実験条件を入力する工程(2)、そして固定化DNA断片の長さ範囲を入力する工程(3)を経て、固定化DNA断片の候補となる複数のDNA配列を選択し、リストにする。続いて、そのリスト中のDNA配列候補の一つ一つについてTmを計算し、そのTmがハイブリダイゼーション温度(Th)と比較してある一定の範囲、例えばTh−αからTh−β(但しα、βの値は正負のどちらの値でもよい)を外れているDNA配列を候補リストから除外する工程(4)、特異な高次構造をとる短配列や短繰り返し配列のあるDNA配列を候補リストから除外する工程(5)、Alu配列とのホモロジーの高いDNA配列を候補リストから除外する工程(6)、他遺伝子配列とのホモロジーの高いDNA配列を候補リストから除外する工程(7)を行う。そして工程4から工程7の全ての条件を満足する配列のいずれかを固定化DNA断片配列とする。複数の配列が工程4から工程7までを満足した際は、例えば自由エネルギー(ΔG)が最小の配列を固定化DNA断片配列とすればよい。
【0038】
工程5では例えば、文字列のパターンマッチングアルゴリズムを用いる。パターンマッチングの対象としては、有害短配列の相補配列、反転配列(GCGAAAGCであれば、CGAAAGCG)、相補反転配列について対象とすることが望ましい。計算速度を向上させるために文字列をいったん数字に変換しビットシフト計算等により比較してもよい。
【0039】
工程6と工程7では、ブラスト(blast)アルゴリズム、ファスタ(FASTA)アルゴリズムなどの探索的(heuristic)アルゴリズムを用いてもよいし、スミスウォータマン(Smith-Waterman)法などのローカルアライメント(local alignment)アルゴリズムや、隠れマルコフモデル(Hidden Markov model)を用いたアルゴリズムなどを用いても良い。計算速度を向上させるために文字列をいったん数字に変換しビットシフト計算等を行ってもよい。
【0040】
また工程7では、1枚のアレイ上に固定化する遺伝子配列同士のホモロジーを計算するのみならず、DNA配列とGENBANK等のヒト遺伝子配列とのホモロジーを計算してもよい。測定対象試料には、固定化DNA断片と本来ハイブリダイズする遺伝子以外にも、数多くの別遺伝子が含まれている。それら別遺伝子がハイブリダイズした場合、本来、個々の固定化DNA断片がハイブリダイズすべき遺伝子のみの測定ができなくなる。そこで、DNAアレイ上に固定化するDNA断片候補の配列と、測定対象試料に含まれている可能性のある遺伝子群のDNA配列とを比較して、ホモロジーが有意に高いDNA配列は、固定化DNA断片としては選択しないことが望ましい。GENBANK等の遺伝子配列データベースには現在までに知られているヒトないしはげっ歯類、酵母、大腸菌などの配列が全て格納されている。固定化DNA断片と、例えばGENBANK等のヒトなどの遺伝子配列とのDNA配列相同性が、ブラスト(Blast)アルゴリズムにより算出した統計的有意水準(p値)で10%を超えることとすれば、より高精度の測定が行える。
【0041】
なおDNA配列のTmの計算には、前述の最近接塩基法(J. SantaLucia, Jr. A unified view of polymer, dumbbell, and oligonucleotide DNA nearest-neighbor thermodynamics, Porc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.95, p.1460-1465, 1998)と、経験式に基づく方法(Wetmure, J.G., DNA probes: Applications of the principles of nucleic acid hybridization, Criti. Rev in Biochem. And Mol. Biol., vol.26, p.227-259, 1991)の2つがある。50塩基対以下のDNA配列については前者の最近接塩基法がよく合致し、50塩基対以上のDNA配列に対しては後者の経験式に基づく方法がよく合致するという報告もある。しかし前記J. SantaLucia, Jr.の論文によると、最近接塩基法も改良されており、配列長さによらず計算できることが示唆されている。そこで、DNA配列のTm計算には、塩基長さに応じて最近接塩基法もしくは経験式に基づく方法のいずれか片方をもちいる、あるいは両者の方法で計算して得られた値の例えば平均値などを用いれば良い。
【0042】
【発明の実施の形態】
本発明を例えば、抗悪性腫瘍剤等の薬剤の作用機序解明に用いる際の実施の形態について以下に記す。ガラス表面に固定化したヒトがんの発生、浸潤、転移の要となる遺伝子および、薬物代謝の要となる遺伝子のリストを表3から表18に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
【表6】
【0047】
【表7】
【0048】
【表8】
【0049】
【表9】
【0050】
【表10】
【0051】
【表11】
【0052】
【表12】
【0053】
【表13】
【0054】
【表14】
【0055】
【表15】
【0056】
【表16】
【0057】
【表17】
【0058】
【表18】
【0059】
続いて、図1のアルゴリズムを用いて計算した、表3から表18に示した遺伝子の一部に対応する固定化DNA断片配列リストを表19から表38に示す。
【0060】
【表19】
【0061】
【表20】
【0062】
【表21】
【0063】
【表22】
【0064】
【表23】
【0065】
【表24】
【0066】
【表25】
【0067】
【表26】
【0068】
【表27】
【0069】
【表28】
【0070】
【表29】
【0071】
【表30】
【0072】
【表31】
【0073】
【表32】
【0074】
【表33】
【0075】
【表34】
【0076】
【表35】
【0077】
【表36】
【0078】
【表37】
【0079】
【表38】
【0080】
最後に、表3から表18に示した遺伝子をガラス表面に固定化したDNAアレイを用いて、抗悪性腫瘍剤(薬品名:5−aza−2‘−deoxy−cytidine)に対するヒト培養細胞(細胞名:HT29)の遺伝子発現分布の測定結果を図3に示す。以下、順に従って説明する。
【0081】
(1)DNAアレイ上の遺伝子リスト
表3に、本願請求項2記載の基準に従って選択したヒトがんの発生、浸潤、転移の要となる遺伝子および、本願請求項3記載の基準に従って選択した薬物代謝の要となる遺伝子のリストを示す。それぞれの遺伝子配列に対応するGENBANKのアクセション番号と、遺伝子名を記載した。
【0082】
(2)遺伝子リストのうちの一部配列リスト
表4に、表3に示した遺伝子の一部に対応する固定化DNA断片配列のリストを示す。それぞれのDNA断片配列、DNA断片配列の塩基長(length)、DNA断片配列の自由エネルギー(dG),経験式に基づく方法で計算したDNA断片配列の融解温度(Tm1)、最近接塩基法で計算したDNA断片配列の融解温度(Tm2)を併記した。ここでは融解温度(Tm)は、Tm1とTm2の平均値とした。表4のDNA断片配列のTm(=0.5*(Tm1+Tm2))が72℃から82℃となるように設計した。
【0083】
(3)実験結果の一例
図3に、ヒト結腸癌培養細胞(名称:HT29細胞)に、5−aza−2‘−deoxy−cytidine(以下5−Aza−CdR)処理した場合に、処理しない場合と比較して増加したメッセンジャーRNA量の増加率を、遺伝子ごとに示す。5−Aza−CdR処理とは、500ナノモルの5−Aza−CdRに細胞をそれぞれ2、12、24時間さらすことを意味する。それぞれの時間さらされたHT29細胞から、すぐにメッセンジャーRNAを抽出した。同様に、薬剤処理をしないHT29細胞も同一の培養機中で培養し、それぞれの時間経過後、すぐにメッセンジャーRNAを抽出した。オリゴdTプライマーを用いた逆転写反応により、薬剤処理した細胞のメッセンジャーRNAについては、Cy5−dCTPを用いて蛍光標識されたcDNAを合成した。また薬剤処理しない細胞のメッセンジャーRNAについては、Cy3−dCTPを用いて蛍光標識されたcDNAを合成した。薬剤処理した細胞由来のcDNA(Cy5標識)と薬剤処理しない細胞由来のcDNA (Cy3標識)を混合して、同一のDNAアレイとハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション温度は62℃、ハイブリダイゼーション時間は12時間とした。ハイブリダイゼーション後、蛍光スキャナーによりCy5とCy3のそれぞれの蛍光強度を数値化した。
【0084】
薬剤処理した細胞由来の蛍光強度(Cy5蛍光強度)と薬剤処理しない細胞由来蛍光強度(Cy3蛍光強度)の比、すなわちCy5蛍光強度/Cy3蛍光強度を値を計算し、図3の縦軸の値、メッセンジャーRNA量の増加率としてプロットした。図3の横軸はアレイ上の遺伝子の通し番号である。この実験の結果、Cy5蛍光強度/Cy3蛍光強度が3倍以上であった遺伝子は、例えば2時間後で、SIAT4A、PRSM1、ribosomal protein S5、plasminogen、ETR103、OCTS3、integrin 4、GEM、RGS14、HsCds18、IFN-induced protein 56, INFα-inducible protein 27、INF-induced 17kDa protein, INF-induced protein IFI-6-16, INF-inducible protein 10などであった。そして2、12、24時間を通じて、常にCy5蛍光強度/Cy3蛍光強度が3倍以上であったのはインタフェロン(IFN)αに関連する遺伝子群、IFN-induced protein 56, INFα-inducible protein 27、INF-induced 17kDa protein, INF-induced protein IFI-6-16, INF-inducible protein 10などであった。この結果は、Karpfらの報告(Karpf, A.R.ら、Inhibition of DNA methyltransferase stimulates the expression of signal transducer and activator of transcription 1, 2, ad 3 genes in colon tumor cells, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.96, p.14007-14012, 1999)らの知見とも合致した。さらKarpfらの報告に対し、本発明では薬剤応答の時間依存の様子を再現性よく観察することができた。
【0085】
本発明を実施することで、抗悪性腫瘍剤の一種である5−Aza−CdRに対するヒト細胞の薬剤応答の様子の時間依存性を再現性良くかつ高精度で観察した。5−Aza−CdR以外の薬剤についても同様な結果を得ることができる。
【0086】
【発明の効果】
抵悪性腫瘍薬等の作用機序を高精度で解明するためのDNAアレイ、及びその製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】固定化DNA断片の塩基長がハイブリダイゼーションに及ぼす影響。
【図2】DNA断片配列決定計算アルゴリズム。
【図3】HT29細胞に、5−aza−2‘−deoxy−cytidine処理した場合に、処理しない場合と比較して増加したメッセンジャーRNA量の増加率。
【図4】固定化DNA断片同士の配列相同性とクロスハイブリダイゼーションとの関係を示す図。
【図5】Alu配列と固定化DNA断片との配列相同性と測定結果との関係を示す図。
【符号の説明】
1.遺伝子配列ファイルの読み込み工程、2.塩濃度、ハイブリダイゼーション等の実験条件の入力工程、3.固定化DNA断片の長さ範囲の入力工程、4. 固定化DNA断片の融解温度を計算し、その融解温度がある一定の範囲を外れているDNA断片を候補リストから除外する工程、5. 特異な高次構造をとる短配列や短繰り返し配列のあるDNA DNA断片を候補リストから除外する工程、6.Alu配列とのホモロジーの高いDNA断片を候補リストから除外する工程、7.他遺伝子配列とのホモロジーの高いDNA断片を候補リストから除外する工程。
Claims (3)
- ヒトがんの発生、浸潤、転移と関連した遺伝子を記述するDNA分子もしくはcDNA分子に対して相補結合するDNA断片および、薬物代謝関連遺伝子を記述するDNA分子もしくはcDNA分子に対して相補結合するDNA断片の両者を固体表面に固定化してなり、
前記DNA断片同士の配列相同性が相同検索(ホモロジーサーチ)アルゴリズムにより算出した統計的有意水準値(p値)で10%を超えること、かつ前記DNA断片のいずれもが、ヒトAlu配列との配列相同性統計的有意水準値(p値)で10%を超えること、かつ前記DNA断片の融解温度とハイブリダイゼーション温度との差異が30℃を超えないこと、かつ前記DNA断片が特異な高次構造をとるDNA短配列、短繰り返し配列を含まない前記DNA断片群を固定化したことを特徴としたDNAアレイ。 - 請求項1記載のヒトがんの発生、浸潤、転移と関連した遺伝子を、がん遺伝子(oncogenes, tumor−related genes)、がん抑制遺伝子(tumor suppressor genes)、増殖因子(growth factors)、転写因子(transcription factors)、サイトカイン(cytokines)、アポトーシス(appoptosis genes)、細胞周期調節(cell cycle regulators)、DNA修復遺伝子(DNA damage repairgenes)、転写関連遺伝子としたことを特徴とする請求項1記載のDNAアレイ。
- 請求項1記載の薬物代謝関連遺伝子を、薬物代謝酵素関連遺伝子、特にチトクロム450遺伝子(CYP)1A1、CYP1A2、CYP1B1、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1、CYP3A4、CYP3A5、CYP3A7および、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデハイドロゲナーゼ、ジヒドロキシピリミジンデヒドロゲナーゼ、NADPH-チトクロムP450レダクターゼ、DT-ジアホラーゼ、エステラーゼ、エポキシドヒドラーゼ等の第一相薬物代謝関連遺伝子や、カテコールO-メチルトランスフェラーゼ、グルタチオーネS-トランスフェラーゼ、ヒスタミンメチルトランスフェラーゼ、N-アセチルトランスフェラーゼ、スルフォトランスフェラーゼ、チオプリンメチルトランスフェラーゼ、ウリジン5‘-トリホスフェートグルクロンシルトランスフェラーゼ等の第二相薬物代謝関連遺伝子のうち1つ以上としたことを特徴とする請求項1記載のDNAアレイ。
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