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JP3893707B2 - 可変吐出量高圧ポンプ - Google Patents

可変吐出量高圧ポンプ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばディーゼル機関のコモンレール噴射システムにおいて、高圧流体を圧送供給するために用いられる可変吐出量高圧ポンプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼル機関に燃料を噴射するシステムの1つとして、コモンレール噴射システムが知られている。コモンレール噴射システムでは各気筒に連通する共通の蓄圧配管(コモンレール)が設けられ、ここに可変吐出量高圧ポンプによって必要な流量の高圧燃料を圧送供給することにより、蓄圧配管の燃料圧力を一定に保持している。蓄圧配管内の高圧燃料は所定のタイミングでインジェクタにより各気筒に噴射される(例えば、特開昭64−73166号公報等)。
【0003】
図14は、このような用途に用いられる従来の可変吐出量高圧ポンプの一例を示す中心軸に沿った要部の横断面図である。図14において、シリンダ91内には図示しないカムによって駆動されるプランジャ92が往復動自在に嵌挿され、シリンダ91の内装面とプランジャ92の上端面とで圧力室93を形成している。該圧力室93の上方には電磁弁94が取り付けられており、電磁弁94はその内部に形成された低圧流路95と圧力室93の間を開閉する弁体96を有している。
【0004】
弁体96は、コイル97に通電しない図示の状態で開弁位置にあり、燃料は、プランジャ92の下降時に、図略の低圧供給ポンプより低圧流路95、弁体96周りの間隙を経て圧力室93内に導入される。コイル97に通電すると弁体96は上方へ吸引され、その略円錐状の先端部がシート部98に着座して閉弁する。同時にプランジャ92の上昇によって、圧力室93内の燃料が加圧され、圧力室93の側壁に設けた流路99より蓄圧配管へ圧送される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、プランジャ92の上昇中は、圧力室93内の燃料圧により弁体96に閉弁方向の力が作用するため、弁体96は一度閉弁すると、コイル97への通電を停止しても開弁しない。このため、前記構成の可変吐出量高圧ポンプでは、蓄圧配管へ送る流量の制御を、閉弁時期を制御する、いわゆるプレストローク制御にて行っている。すなわち、プランジャ92が上昇行程に移った後、直ちに閉弁せず、圧力室93内の燃料が所定量となるまで開弁状態を保持して、余剰の燃料を低圧通路95側へ逃がし、しかる後、閉弁して加圧を開始することで、必要量の加圧流体を蓄圧配管へ圧送している。
【0006】
ところが、エンジンの回転数の上昇に伴い、ポンプの送油率が高くなると、弁体96が閉弁信号とは無関係に閉弁(自閉)するという問題が生ずる。これは、プランジャ92の上昇時、弁体96が下端面に圧力室93内の燃料の動圧を直接受けること、弁体96とシート部98の間の間隙より低圧流路95へ向けて流れる燃料の絞り効果により閉弁方向の力を受けること等によるもので、流量制御が適切になされないおそれがある。
【0007】
この対策としては、弁体96の作動ストロークを大きくするか、弁体96の復帰用スプリング力を大きくすることが考えられるが、いずれの場合も、閉弁応答性の低下につながる。閉弁応答性を維持するためにはコイルに通電する電力を多大にしたり、体格を大きくして電磁弁の吸引力を増加させる必要があり、電磁弁の電力コスト、製作コストの上昇を招くという問題があった。
【0008】
また、前記構成の可変吐出量高圧ポンプでは、圧力室93への流路の開閉を電磁弁94で行っており、閉弁信号に対し弁体96が着座して流路を閉鎖するまでに一定の時間を要することから、通常この作動応答時間を予め計算して閉弁タイミングを制御している。ところが、エンジンの回転数が上昇し、ポンプの送油率が高くなると、開閉動作が間に合わなくなり、十分な制御ができなくなるおそれがあった。
【0009】
図13は従来の可変吐出量高圧ポンプにかわり、本発明者らが提案してきた可変吐出量高圧ポンプに関するものであり、(A)は中心軸に沿った横断面図、(B)はカムリフトの様子、制御方法、プランジャやカムローラの作動、圧送量や駆動トルクの変化を示す作動説明図である。
そこで、本発明者らは、エンジンの回転数が上昇し、ポンプの送油率が高い状態でも、蓄圧配管へ圧送する流量制御が容易かつ確実にでき、しかも装置の大型化や電力の増大を伴わず、また、流路の開閉に電磁弁を用いることによる応答遅れ等の不具合を解消するため、図13に示す吸入調量式のポンプを提案してきた。
【0010】
ところが、図13(A)に示すような構成の吸入調量式ポンプの場合、(B)に示すように全量圧送時以外の通常の運転状態すなわち調量時においては、カムローラとカムとが衝突するため騒音問題や信頼性の問題があった。
また、圧送量が少ない調量時においても送油率は変わらないため、ポンプのピーク駆動トルクは全量圧送時と同じである。
【0011】
しかして、本発明は、エンジンの回転数が上昇し、ポンプの送油率が高い状態でも蓄圧配管へ圧送する流量制御が容易かつ確実にでき、しかも装置の大型化、電力の増大を伴わず、流量制御弁の応答遅れ等の問題も無く、かつ、前記のカムローラとカムの衝突も無いポンプを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は請求項1ないし請求項に記載の技術的手段を採用する。
請求項1に記載の発明によれば、圧力室と低圧流路との間に、低圧流路から圧力室へ向かう方向のみに流体を流す第1の逆止弁のみを設け、プランジャを往復運動させるカムに可変カムプロフィールを形成すると共に、カムの移動手段を備えているので、これまでに提案してきた吸入調量式ポンプのように圧力室と低圧流路との間には流量制御用の電磁弁等は設けておらず、常に全量吸入、全量圧送がなされ、その量は可変カムのカムリフト量によって制御するというものであるので、流量制御電磁弁の自閉、応答遅れ、また、カムとカムローラの衝突による騒音や信頼性の問題が無い。
【0013】
請求項1ないし請求項7に記載の発明によれば、低圧流路とカム背圧室との間に第1の絞りを設け、カム背圧室からカムの移動手段をなす流量制御弁を介してポンプまたはリターン流路に接続した。
これはカムの移動手段として、カム背圧室に流入する低圧流体の圧力により、カムを移動する(カムリフト量を変える)というもので、カム背圧室の圧力は、流量制御弁から流出する流量によって、カム背圧室の圧力を調整(低圧流路から第1の絞りを介して流入する量と、流量制御弁から流出する量とのバランスでカム背圧室の圧力を調整)し、カムを移動させて吸入量(圧送量)を制御するものである。
【0014】
よって、流量制御弁には高圧が作用しないため、小型で、低コストなものでよい。また、装置の大型化や電力の増大の必要が無い。
請求項に記載の発明によれば、低圧流路とカム背圧室との間にカムの移動手段をなす流量制御弁を設け、カム背圧室から第2の絞りを介してポンプまたはリターン流路に接続した。
【0015】
これも、カム背圧室に流入する低圧流体の圧力により、カムを移動する(カムリフト量を変える)というもので、カム背圧室の圧力は、流量制御弁から流入する流量によってカム背圧室の圧力を調整(低圧流路から流量制御弁を介して流入する量と第2の絞りを介して流出する量とのバランスでカム背圧室の圧力を調整)し、カムを移動させて吸入量(圧送量)を制御するものである。
【0016】
請求項に記載の発明によれば、カム背圧室の直前に低圧流路からカム背圧室へ向かう方向のみに流体を流す第2の逆止弁と、カム背圧室にポンプに連通する第3の絞りを設けた。これにより、圧送時のカムローラの反力によるカムの移動(すなわち、圧送量の変動)を抑制できる。
【0017】
請求項に記載の発明によれば、流量制御弁を電磁弁とした。流量制御弁には低圧のみで高圧が作用しないため、電磁弁は小型で低コストなもので良く、制御性が良い。また、装置の大型化や電力の増大の必要が無い。
請求項に記載の発明によれば、電磁弁の弁体の両端面を連通する連通孔を設けることにより弁体の両端面に作用する圧力差を解消した。
【0018】
これにより、電磁弁に流体圧が作用することを防止し、作動不良を防止することができる。
請求項に記載の発明によれば、流量制御弁を面積絞り弁とした。この流量制御弁にも低圧のみで高圧が作用しないため、小型で、低コストなものでよい。また、装置の大型化や電力の増大の必要が無い。
【0019】
請求項に記載の発明によれば、流量制御弁への通電を制御する制御手段をなす電子制御ユニットを有し、カム背圧室の圧力を制御する。
これにより、流量制御弁が電磁弁の場合は駆動周波数やデューティ比を制御することにより、流量制御弁が面積絞り弁(リニアソレノイドやステッピングモータにより作動)の場合は電流値や励磁パターン(通電パターン)を制御することにより、カム背圧室を所望の圧力に調整することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の可変吐出量高圧ポンプをディーゼルエンジンのコモンレール噴射システムに適用した第1実施形態を図面を参照して説明する。
図1ないし図8は本発明の第1実施形態に関するもので、図1は可変吐出量高圧ポンプの中心軸に沿った横断面図、図2は図1中のC−C断面図、図3は図1中のA−A断面図、B−B断面図、C−C断面図におけるカム13のカム面13aを重ね合わせて比較したカム13の横断面図である。
【0021】
図4は本発明の可変吐出量高圧ポンプPをディーゼルエンジンのコモンレール噴射システムに適用したシステム系統図である。
図5は電磁弁6の作動により圧送量を変える場合の可変吐出量高圧ポンプPの制御状況、カムリフトによるプランジャの作動、圧送量や駆動トルクの変化を示すタイムチャートである。
【0022】
図6は電磁弁6の作動によりカム13を図中左右方向に移動させることによって、カムローラ22とカム13のカム面との当接位置を変える場合の各部の作動を示す中心軸に沿った要部横断面図であり、(A)は燃料圧送量が全量の時であり、(B)は燃料圧送量が半分の時であり、(C)は燃料圧送量が少量の時であり、(D)は燃料圧送量がゼロの時を各々示す。
【0023】
図7は電子制御ユニットECUによる可変吐出量高圧ポンプの制御の一例を示すフローチャートである。
図8は電磁弁6の作動状態を示す中心軸に沿った横断面図であり、(A)は閉弁時の状態、(B)は開弁時の状態を各々示す。
図4のシステム系統図において、エンジンEには各気筒の燃焼室に対応する複数のインジェクタIが配設され、これらインジェクタIは各気筒共通の高圧蓄圧配管、いわゆるコモンレールRに接続されている。インジェクタIからエンジンEの各燃焼室への燃料の噴射は、噴射制御用電磁弁B1のON−OFFにより制御され、電磁弁B1が開弁している間、コモンレールR内の燃料がインジェクタIによりエンジンEに噴射される。従って、コモンレールRには連続的に燃料噴射圧に相当する高い所定圧の燃料が蓄圧される必要があり、そのために供給配管R1、吐出弁B2を経て、本発明の可変吐出量高圧ポンプPが接続される。
【0024】
この可変吐出量高圧ポンプPは、燃料タンクTから吸入される燃料を高圧に加圧し、コモンレールR内の燃料を高圧に制御するものである。コモンレールRには、コモンレール圧力を検出する圧力センサS1が配設されており、システムを制御する制御手段となる電子制御ユニットECUは、この圧力センサS1からの信号が予め設定した最適値となるように、可変吐出量高圧ポンプPの吐出量を決定して吐出制御装置P2に制御信号を出力する。電子制御ユニットECUには、さらに、エンジン回転数センサS2、TDC(上死点)センサS3、スロットルセンサS4、温度センサS5により、回転数、TDCの位置、アクセル開度、温度の情報が入力され、電子制御ユニットECUは、これらの信号により判別されるエンジン状態に応じて噴射量制御用電磁弁B1に制御信号を出力する。
【0025】
次に、図1及び図2により前記可変吐出量高圧ポンプPの詳細について説明する。図において、ポンプハウジング1内にはベアリングD2、ブッシュD1を介してドライブシャフトDが回転可能に支持されており、このドライブシャフトDには、燃料タンクT(図4)から燃料を吸い上げて低圧流路たるフィード流路11に圧送供給するベーン式のフィードポンプP1が連結されている。前記ドライブシャフトDの右端部には、軸方向に摺動自在なカム13が設けてあり、該カム13はキーWを介して前記ドライブシャフトDと共にエンジンの回転数の1/2の速度で回転するようになしてある。このカム13が回転すると、半月状の板P11を介して前記フィードポンプP1のロータP12が回転し、その回転により燃料タンクTから燃料が図示しないインレットバルブより図示しない流路を通って前記フィードポンプP1内空間(ロータP12とケーシングP13とカバーP14、P15とに囲まれた空間)に導入される。導入された燃料は、ロータP12の回転に伴いロータP12に配設されたベーンP16によって図示しない流路を経てフィード流路11に圧送される。
【0026】
フィード流路11内の低圧燃料(低圧流体)は、以下に示すようにコモンレールへの圧送用に使用されるだけでなく、絞り流路Sよりポンプ内に流入し、ポンプ内部の潤滑にも使用される。潤滑された燃料はバルブVから出て燃料タンクTに戻される。また、ポンプ内部の圧力はほとんど大気圧となるようにバルブVにより調整されている。
【0027】
ポンプハウジング1の右端開口にはヘッドHが嵌着されており、該ヘッドHは左端中央部が突出して前記カム13内に挿通位置している。このヘッドHの左端中央部には、複数のシリンダたる摺動孔2aが設けてあり(図2)、これら複数の摺動孔2a内にはそれぞれプランジャ21が往復動自在かつ摺動自在に支持されている。各プランジャ21の外側端部にはシュー21aが設けられ、各シュー21aにカムローラ22が回転自在に保持されている。シュー21aはガイド200により、半径方向のみに移動可能になっておりガイド200は図示しないボルトによりヘッドHに固定されている。
【0028】
前記カム13は、このカムローラ22の外周に摺接可能に配置されており、前記カム13の内周面には、等間隔で配置された複数のカム山を有するカム面13aが形成してある。カム面13aは図3に示すように位置によりカムリフトが変わるようになっている。各プランジャ21の内方側端面と各摺動孔2aの内壁面との間に形成される空間は、圧力室23となしてある。しかして、ドライブシャフトDと共にカム13が回転すると、プランジャ21が摺動孔2a内を往復動し、圧力室23内の燃料を加圧する。なお、図2はプランジャ21が最下降点にある状態を示している。
【0029】
加圧された燃料は、圧力室23に連通する吐出孔24(図1)より、ヘッドH壁に固定した図4中のB2に相当する吐出弁3を経て、高圧流路すなわち蓄圧配管であるコモンレールR(図4)に圧送される。吐出弁3は、弁体31とこれを閉弁方向に付勢するリターンスプリング32を有し、加圧燃料が所定圧を越えるとリターンスプリング32のスプリング力に抗して開弁し、高圧流路である吐出流路33に加圧燃料を吐出する。
【0030】
図1において、ドライブシャフトDとカム13の左端面により形成された空間はカム背圧室Cとしてあり、カム背圧室Cと低圧流路(フィード流路)11は、ハウジング1内の第1の絞りK1、空間1a、ブッシュD1の連通路D1a、ドライブシャフトDの溝Da、流路Db、Dcを介して連通している。また、カム背圧室Cと電磁弁6は前記の流路Db、Dc、溝Da、連通路D1a、空間1a、ハウジング内の流路1b、燃料溜まり1cを介して連通している。電磁弁のバルブ下面の流路1dは図示しない流路を通って、ポンプ室201をなすポンプ内部(大気圧)か、リターン流路202につながっている。
【0031】
カム13には、図1左方向に付勢するスプリングSPが設けてあり、カム13の移動は前記カム背圧室Cの圧力による図1右方向の力とスプリングSPのバネ力とのバランスで位置が決定される。つまり、カムローラ22とカム13の内周面の摺接する位置によりカムリフト量が変わるようになっている。
カム13の位置は、最大圧送時はドライブシャフトDの右端とカム13の左端が接した状態(図1の状態)であり、圧送量がゼロ(圧送しない)の時は、カム13の右端がガイド200の左端と接する時である(図6(D)参照)。 なお、図1の可変吐出量高圧ポンプは1回あたりの幾何学的最大圧送量は226mm3 /stで、プランジャ径は直径6mm、カムリフトは2mmである。
【0032】
図1において、ヘッドHの右端部には、ストッパ41、弁部材である第1の逆止弁4を介して、ロックアダプタ5のみが組み付けられ、低圧流路(フィード流路)11から圧力室23までは逆止弁4のみが存在する。
電磁弁6は、前記燃料溜まり1cを介してポンプ室201またはリターン流路202に連通する流路1dとカム背圧室Cとの間を開閉するように配設され、電磁弁6を通してカム背圧室Cから流出する量を制御している。そして、この流出量を前記低圧流路11から第1の絞りK1を通して流入する量のバランスで前記カム背圧室Cの圧力を調整することにより、カムの位置、すなわちカムリフト量を制御している。
【0033】
前記第1の逆止弁4は、図1に示すように、ハウジング42を左右方向に貫通する流路43と該流路43を開閉する弁体44を有する。前記流路43は、途中で圧力室23方向(図の左方)に拡径して円錐状のシート面45をなし、弁体44は、ストッパ41内に保持されるスプリング46によって右方に付勢されてシート面45に着座している。このように、第1の逆止弁4は図示の状態で閉弁しており、フィード流路11を経て圧力室23に流入する燃料の圧力で開弁するようになしてある。この時、逆止弁4のシート面45、ストッパ41内の流路を経て前記圧力室23へ燃料が流入する。前記弁体44は、前記圧力室23の加圧が開始されると閉弁し、燃料の圧送終了までこれを保持する。なお、弁体44は、外周面に軸方向に延びる溝を有し、この溝を介して燃料が流れるようになしてある。
【0034】
前記電磁弁6は、図8に示すようにコイル62を内蔵するハウジング61と、その左端部に嵌合固定されるバルブボディ71を有し、ハウジング61の外周に設けたフランジ63にてポンプハウジング1に固定されている。前記バルブボディ71内には、弁体たるニードル弁73が摺動可能に保持され、該ニードル弁73の左端部周りに設けた環状の流路72と前記ニードル弁73左方の流路74との間を開閉するようになしてある。前記環状の流路72は、図1に示すように前記バルブボディ71とポンプハウジング1の間に形成される燃料溜まり1c、ポンプハウジング1内の流路1b、1a、D1a、Da、Db、Dcを介して前記カム背圧室Cに連通しており、前記流路74は流路1dを介してポンプ内部またはリターン流路に連通している。前記流路74の右端部には略円錐状のシート面75が形成され、前記ニードル弁73の略円錐状の先端部が該シート面75に着座して、前記流路72、74間を閉鎖するようになしてある。
【0035】
ここで、ニードル弁73は、摺動部の径と、シートエッジ部(閉弁時のシート面75との当接端縁)の径とが等しくなるようにする。この時、ニードル弁73周りの流路72内に供給される燃料がニードル弁73を左方に押す力と右方に押す力とが釣り合うため、フィード燃料による油圧作用力は発生しない。また、流路72に至る燃料流路途中には、通常、フィルタを設けて、ニードル弁73とシート面75の間に異物が入って常時開弁状態になることを防止している。フィルタは、例えば金属メッシュよりなり、その目開きがニードル弁73の最大リフト時の流路面積よりも小さくなっていればよい。
【0036】
しかして、コイル62に通電しない図8(A)の状態では、前記ニードル弁73の先端部がバルブボディ71のシート面75に着座して、前記ポンプ内部またはリターン流路への連通路となる流路1dを閉鎖している。このように、電磁弁6を、非通電状態で閉弁する構成とすることで、コイルの破損時にカム13を最右部まで移動させてカムリフトをゼロとし(図6(D)参照)、燃料の圧送が行われないようにする効果がある。コイル62への通電により前記ニードル弁73の先端部がシート面75から離れると、電磁弁6のシート面75から燃料が流出し、カム背圧室Cの圧力が低下し、カム13が左方向へ移動してカムリフトが増加し、吸入、圧送が可能になる。
【0037】
この電磁弁6とカム13とで前記図4における吐出制御装置P2を構成している。
次に、前記構成の可変吐出量高圧ポンプPの作動について説明する。
前記可変吐出量高圧ポンプPはかカム13の1回転につき、4回の吸入、圧送をなすように構成され、圧送量は圧力室23への燃料の吸入量によって制御される。
【0038】
但し、吸入量の制御は可変カムプロフィールが形成されたカム13の移動により、カムリフト量を変化させて行うもので、吸入行程の角度は変わらない。
そして、カム13の移動はカム背圧室Cの圧力(大気圧からフィード圧まで)により行い、電磁弁6の駆動周波数やデューティ比を変えることによって調整でき、カム背圧室Cの圧力が高ければカムリフト量は小、すなわち吸入量及び圧送量は小となり、圧力が低ければカムリフト量は大、すなわち吸入量及び圧送量は大となる。
【0039】
図5のタイムチャートにおいて、圧送量が大の場合は、電磁弁6への通電期間を長くし、電磁弁6からの流出量を増加してカム背圧室Cの圧力を低くし、カム13を図中左方に移動させてカムリフト量を大きくする。反対に圧送量が小の場合は、電磁弁6への通電期間を短くし、電磁弁6からの流出量を少なくして、カム背圧室Cの圧力を高く(フィード圧に近く)して、カム13を右方に移動させ、カムリフト量を小さくする。
【0040】
吸入行程ではフィード圧によりプランジャ21は下降して燃料を吸入し、吸入が終了すると第1の逆止弁4は閉弁する。そして、圧送行程でプランジャ21が上昇し、圧力室23内の燃料が加圧され、高圧流路たる蓄圧配管(コモンレールR)に圧送される。
また、本構成の可変吐出量高圧ポンプPは図5にも示すように、常にカムローラがカムに摺接しているため、これまでに提案してきたような吸入調量式ポンプ(図13参照)におけるカムとカムローラとの衝突による騒音や信頼性の問題はない。
【0041】
また、圧送量の制御はカムリフト量の制御によって行うため、少量圧送時はカムリフトの傾斜、つまり送油率が下がり、可変吐出量高圧ポンプPのピークトルク及び平均トルクを低減できる効果もある。
このように、前記構成では圧送量の制御を、カムリフトを変化させることで行うものとした。つまり、低圧流路11(フィード流路)と圧力室23の間には燃料の吸入量を制御する流量制御弁はなく、第1の逆止弁4のみを設けて圧力室23に吸入された流体は全て圧送される。よって、従来のプレストローク制御弁のような自閉の問題や電磁弁応答性の問題は生じない。
【0042】
カムリフトを変える、すなわち、カム13を移動させる手段として、カム背圧室Cの圧力を制御するための電磁弁6には高圧は作用しないため、復帰用スプリング65は小さくてよく、吸引力を発生させるコイル62も小さくてよいため小型なものにできる。
従って、簡単な構成で高圧流路へ圧送する流量制御が容易かつ確実にでき、装置の大型化や電力の増大の必要はない。
【0043】
図7は電子制御ユニットECUによる制御の一例を示すフローチャートである。電子制御ユニットECUには、図4のシステム図に示したように各センサから種々の情報が、常時入力されるようになしてあり、エンジン回転数センサS2により検出されるNE信号からエンジン(ポンプ)回転数を、スロットルセンサS4により検出されるアクセル開度から目標コモンレール圧(CPTRG)及び噴射量(圧送量)を、予め入力された制御マップに基づいて算出する(ステップ(1)、ステップ(2))。続いて、ポンプ回転数、圧送量に応じた電磁弁6の駆動周波数およびデューティ比(通電期間)を算出し(ステップ(3))、電磁弁6に通電する。
【0044】
また、電子制御ユニットECUは、圧力センサS1によりコモンレールR圧力(CPACT)を常時検出するようになしてあり、この検出されたコモンレールR圧力(CPACT)と目標コモンレール圧(CPTRG)とを比較して(ステップ(4))、異なる場合には補正をする。補正方法としては、(CPACT−CPTRG)の計算を行って必要な圧送量増加分を算出し(ステップ(5))、この増加分に相当する駆動周波数およびデューティ比(通電期間)に変更する(ステップ(6))。次いで、再び、(CPACT=CPTRG)かどうかを判定し(ステップ(7))、(CPACT=CPTRG)でない場合には、ステップ(5)に戻って(CPACT=CPTRG)になるまで繰り返しフィードバック制御する。
【0045】
図9及び図10は本発明の第2実施形態に関するものであり、図9は可変吐出量高圧ポンプの中心軸に沿った横断面図であり、図10は図9で用いる電磁弁6に関するものであり、(A)は電磁弁6の中心軸に沿った横断面図を示し、(B)は(A)の電磁弁6の弁体73の中心軸に沿った横断面図を示す。
図9において低圧流路11(フィード流路)は図示しない流路によって電磁弁6の設置されている燃料溜まり1cにつながっている。
【0046】
低圧流路11とカム背圧室Cとの間に電磁弁6を配置し、カム背圧室Cとポンプ室201またはリターン流路202の間に第2の絞りK2を設けた。この場合第2の絞りK2はカムの中央に設けたが、必ずしもここにある必要は無い。
この構成では流量制御弁をなす電磁弁6からの流入量と、第2の絞りK2からの流出量のバランスで、カム背圧室Cの圧力を制御し、その圧力によりカム13を図9中で右方への力とスプリングSPの左方への力がつりあう位置に移動させる。
【0047】
そして、カムローラ22つまりプランジャ21のリフト量を変化させて吸入量すなわち圧送量を変える。
図10には(A)にこの構成の可変吐出量高圧ポンプPの電磁弁6の構成を示す。電磁弁6は、ノーマルオープンの構成となっており、従ってコイル62の断線時には常時開弁となって電磁弁6からの流入量を増し、カム背圧室Cの圧力を高くし、カム13を図9中の右方へいっぱいに移動させて、カムリフト量がゼロ、すなわち吸入も圧送もしない状態にすることができる。
【0048】
また、(B)に示すように弁体73内部には左右端面間を連通する連通孔76を有し、左右端面に加わる圧力差による作動不良を防止している。
図11は第3実施形態の可変吐出量高圧ポンプの中心軸に沿った横断面図である。
図11の第3実施形態においては、第1実施形態のポンプにおいて、カム背圧室Cの直前に第2の逆止弁G1を設け、またカム背圧室Cとポンプ室201またはリターン流路202の間に第3の絞りK3を設けた。
【0049】
圧送時、カム13によりカムローラ22やプランジャ21は上昇(ポンプ中心軸方向へ移動)するが、その時カムローラ22によりカム13は図11中の左方への反力を受け、カム13が左方に移動し、圧送量が変わるおそれがある。よって、この第2の逆止弁G1により、カム背圧室Cの燃料が電磁弁6の開弁時にそこから流出してカム13が図左方に移動することを防ぎ、圧送量が変わることを抑制するようにしてある。
【0050】
しかし、第2の逆止弁G1 の設置だけでは、圧送量を増加させたい時カム背圧室Cの燃料が第2の逆止弁G1により、電磁弁6を介して流出できないので、カム背圧室Cとポンプ内部の間に第3の絞りK3を設けて、圧送量増加時(カムを左方に移動させる時)には、第3の絞りK3を介してカム背圧室Cの燃料を流出させる。
【0051】
圧送時の反力によるカム13の移動を抑制する別の手段として、第2の逆止弁G1を設ける代わりに、図5のフローチャートに示すように、電磁弁6の通電をポンプの回転に同期させて、電磁弁6の開弁を吸入行程時のみで行い、圧送行程では閉弁しているように制御すれば、カム背圧室Cの燃料は流出しないので、圧送反力によるカムの移動を防止できる。
【0052】
なお、この制御方法に第2の逆止弁G1、絞りK3を設ければ、圧送時の反力によるカム13の移動を抑制することは更に確実となる。
図12は第4実施形態の可変吐出量高圧ポンプの中心軸に沿った横断面図である。
図12に示すようにカム背圧室Cの圧力を制御する流量制御弁として、アクチュエータとしてリニアソレノイド、ステッピングモータ等を用いた面積絞り弁Yを用いることもできる。
【0053】
なお、この場合も第3実施形態で用いた第2の逆止弁G1を設けてもよい。
また、前記の各実施形態ではインナーカム圧送式のポンプを例として示したが、これに限らず本発明をれつ型やアウタカム圧送式のポンプに適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に関するもので、可変吐出量高圧ポンプの中心軸に沿った横断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に関するもので、図1中のC−C断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に関するもので、図1中のA−A断面図、B−B断面図、C−C断面図におけるカム13のカム面13aを重ね合わせて比較したカム13の横断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に関するもので、本発明の可変吐出量高圧ポンプPをディーゼルエンジンのコモンレール噴射システムに適用したシステム系統図である。
【図5】本発明の第1実施形態に関するもので、電磁弁6の作動により圧送量を変える場合の可変吐出量高圧ポンプPの制御状況、カムリフトによるプランジャの作動、圧送量や駆動トルクの変化を示すタイムチャートである。
【図6】本発明の第1実施形態に関するもので、電磁弁6の作動によりカム13を図中左右方向に移動させることによって、カムローラ22とカム13のカム面との当接位置を変える場合の各部の作動を示す中心軸に沿った要部横断面図であり、(A)は燃料圧送量が全量の時であり、(B)は燃料圧送量が半分の時であり、(C)は燃料圧送量が少量の時であり、(D)は燃料圧送量がゼロの時を各々示す。
【図7】本発明の第1実施形態に関するもので、電子制御ユニットECUによる可変吐出量高圧ポンプの制御の一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1実施形態に関するもので、電磁弁6の作動状態を示す中心軸に沿った横断面図であり、(A)は閉弁時の状態、(B)は開弁時の状態を各々示す。
【図9】本発明の第2実施形態に関するものであり、可変吐出量高圧ポンプの中心軸に沿った横断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態に関するものであり、図9で用いる電磁弁6に関し、(A)は電磁弁6の中心軸に沿った横断面図を示し、(B)は(A)の電磁弁6の弁体73の中心軸に沿った横断面図を示す。
【図11】第3実施形態の可変吐出量高圧ポンプの中心軸に沿った横断面図である。
【図12】第4実施形態の可変吐出量高圧ポンプの中心軸に沿った横断面図である。
【図13】従来の可変吐出量高圧ポンプにかわり、本発明者らが提案してきた可変吐出量高圧ポンプに関するものであり、(A)は中心軸に沿った横断面図、(B)はカムリフトの様子、制御方法、プランジャやカムローラの作動、圧送量や駆動トルクの変化を示す作動説明図である。
【図14】従来の可変吐出量高圧ポンプの一例を示す中心軸に沿った要部の横断面図である。
【符号の説明】
2a シリンダ(摺動孔)
4 第1の逆止弁
6 流量制御弁
11 低圧流路
13 カム
21 プランジャ
23 圧力室
73 弁体
76 連通孔
201 ポンプ室
202 リターン流路
C カム背圧室
ECU 電子制御ユニット
G1 第2の逆止弁
K1 第1の絞り
K2 第2の絞り
K3 第3の絞り
P 可変吐出量高圧ポンプ
R 高圧流路(コモンレール)
Y 面積絞り弁

Claims (7)

  1. シリンダ内にプランジャを往復運動可能に嵌挿配設して、前記シリンダの内壁面と前記プランジャの端面とで圧力室を形成し、該圧力室に低圧流路から導入される低圧流体を、前記プランジャの往復運動によって加圧して高圧流路へ圧送するようになした可変吐出量高圧ポンプにおいて、前記圧力室と前記低圧流路との間に、該低圧流路から圧力室へ向かう方向のみに流体を流す第1の逆止弁のみを設け、前記プランジャを往復運動させるカムに可変カムプロフィールを形成すると共に該カムの移動手段を備え
    前記カムの移動は、カム背圧室の圧力により行い、
    前記低圧流路と前記カム背圧室との間に第1の絞りを設け、前記カム背圧室から前記カムの移動手段をなす流量制御弁を介してポンプ室またはリターン流路に接続したことを特徴とする可変吐出量高圧ポンプ。
  2. シリンダ内にプランジャを往復運動可能に嵌挿配設して、前記シリンダの内壁面と前記プランジャの端面とで圧力室を形成し、該圧力室に低圧流路から導入される低圧流体を、前記プランジャの往復運動によって加圧して高圧流路へ圧送するようになした可変吐出量高圧ポンプにおいて、前記圧力室と前記低圧流路との間に、該低圧流路から圧力室へ向かう方向のみに流体を流す第1の逆止弁のみを設け、前記プランジャを往復運動させるカムに可変カムプロフィールを形成すると共に該カムの移動手段を備え、
    前記カムの移動は、カム背圧室の圧力により行い、
    前記低圧流路と前記カム背圧室との間に前記カムの移動手段をなす流量制御弁を設け、前記カム背圧室から第2の絞りを介してポンプ室またはリターン流路に接続したことを特徴とする可変吐出量高圧ポンプ。
  3. 前記カム背圧室の直前に前記低圧流路から前記カム背圧室へ向かう方向のみに流体を流す第2の逆止弁と、カム背圧室にポンプ室に連通する第3の絞りを設けたことを特徴とする請求項1に記載の可変吐出量高圧ポンプ。
  4. 前記流量制御弁が電磁弁であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の可変吐出量高圧ポンプ。
  5. 前記電磁弁の弁体の両端面を連通する連通孔を設けることにより前記弁体の両端面に作用する圧力差を解消したことを特徴とする請求項4に記載の可変吐出量高圧ポンプ。
  6. 前記流量制御弁が面積絞り弁であることを特徴とする請求項1ないし5いずれかに記載の可変吐出量高圧ポンプ。
  7. 前記流量制御弁への通電を制御する制御手段をなす電子制御ユニットを有し、前記カム背圧室の圧力を制御する請求項4または請求項6のいずれかに記載の可変吐出量高圧ポンプ
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