JP3890147B2 - ガスバリア性フィルムとその製造方法およびガスバリア性フィルムを用いた積層材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はガスバリア性フィルム、特にアルミニウム層を備え優れたガスバリアー性を有するガスバリア性フィルムとその製造方法およびガスバリア性フィルムを用いた積層材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、アルミニウム層を備えたガスバリア性フィルムが食品や医薬品等の良好な保存適性を有する包装用材料として使用されている。このようなガスバリア性フィルムは、基材フィルムにアルミニウム薄膜を形成したものであり、アルミニウム薄膜は、巻き取り方式の真空蒸着装置、スパッタリング装置、イオンプレーティング装置等により形成できるが、装置構成が簡易で成膜速度が速い等の点から真空蒸着法が最も多く用いられている。
【0003】
一般に、アルミニウム等の金属材料は高い表面エネルギーをもっているが、通常は空気と接触することにより、最表面の数Åの厚みに表面エネルギーが低い酸化金属層が形成される。このため、金属薄膜を形成しても、高い表面エネルギーをもった金属層が表面に存在することはない。しかし、上記のアルミニウム層を備えたガスバリア性フィルムでは、基材フィルム上へのアルミニウム薄膜の成膜が真空チャンバー内で行われ、バッチ成膜終了後の大気開放まで、アルミニウム薄膜が空気に接触することがない。したがって、アルミニウム層の表面には酸化アルミニウム層が形成されず、高い表面エネルギーをもった状態となっている。この高い表面エネルギーをもったアルミニウム薄膜の表面が他の物質の表面と接触、例えば、巻き取り機構を構成する種々のロールに接触したり、巻き取りロール上で基材フィルム裏面に接触すると、非常に強い密着力を発現し、基材フィルム上に形成したアルミニウム薄膜に微細な剥離が生じることがある。このようにアルミニウム薄膜が剥離した場合、その箇所でのガスバリア性が失われ、ガスバリア性フィルム全体のガスバリア性を低下させる原因となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の問題を解消するために、基材フィルム上に成膜されたアルミニウム薄膜の表面に、真空チャンバ内で多官能アクリルモノマーを塗布し、電子線あるいは紫外線を照射して硬化させて樹脂薄膜を形成することにより、高い表面エネルギーをもつアルミニウム薄膜の表面を保護する方法が開発されている。
【0005】
しかしながら、上記の方法は、多官能アクリルモノマーを真空中で塗布する複雑な機構を必要とする上、多官能アクリルモノマーは高価であるとともに、食品安全性上好ましくない材料であり、実用上問題がある。
【0006】
また、表面エネルギーの低い酸化アルミニウム薄膜を、アルミニウム薄膜の代わりに形成するという方法もあるが、セラミックスである酸化アルミニウムは柔軟性が乏しく、軟包装材料としてガスバリア性フィルムを用いた場合、クラックを生じ、バリア性が低下するという問題点がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、優れたバリア性を有し、食品安全性上も問題のないガスバリア性フィルムと、このようなガスバリア性フィルムを簡便に製造する方法と、このようなガスバリア性フィルムを用いた積層材を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明のガスバリア性フィルムは、基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも一方の面に設けられたアルミニウム層と、該アルミニウム層上に設けられた酸化珪素薄膜層とを有し、該酸化珪素薄膜層は前記アルミニウム層が真空チャンバー内で他の部材に接触する前にスパッタリング法で形成した厚み10〜300Åの薄膜であるような構成とした。
【0010】
また、本発明のガスバリア性フィルムは、前記アルミニウム層が真空蒸着、イオンプレーティング、および、スパッタリングのいずれかにより形成したものであるような構成とした。
【0012】
本発明のガスバリア性フィルムの製造方法は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、および、スパッタリング法のいずれかにより、真空チャンバー内で基材フィルムの少なくとも一方の面にアルミニウム層を形成し、該アルミニウム層が真空チャンバー内で他の部材に接触する前に、該アルミニウム層上にスパッタリング法により厚み10〜300Åの酸化珪素薄膜層を形成するような構成とした。
【0013】
本発明の積層材は、上記のガスバリア性フィルムの少なくとも一方の面にヒートシール性樹脂層を設けたような構成とした。
【0014】
また、本発明の積層材は、上記のガスバリア性フィルムの酸化珪素薄膜層上にヒートシール性樹脂層を設けたような構成、酸化珪素薄膜層が形成されていない基材フィルム上に基材を積層して備えるような構成とし、さらに、基材上にヒートシール性樹脂層を備えるような構成とした。
【0015】
また、本発明の積層材は、酸化珪素薄膜層とヒートシール性樹脂層との間にアンカーコート剤層および/または接着剤層を有するような構成とした。
【0016】
このような本発明では、アルミニウム層上に設けられた酸化珪素薄膜層により、表面エネルギーの高いアルミニウム層が直接他の物質の表面と接触して剥離することが防止され、ガスバリア性フィルムに高いガスバリア性が付与され、このガスバリア性フィルムを用いた積層材は、上記の特性に加えてヒートシール性樹脂層による後加工適性が付与される。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
ガスバリア性フィルム
図1は本発明のガスバリア性フィルムの一実施形態を示す概略断面図である。図1においてガスバリア性フィルム1は基材フィルム2と、この基材フィルム2の一方の面に形成されたアルミニウム層3と、このアルミニウム層3上に形成された無機酸化物薄膜層4からなる。尚、本発明のガスバリア性フィルムは、基材フィルム2の両面にアルミニウム層3および無機酸化物薄膜層4を備えるものでもよい。
【0018】
本発明のガスバリア性フィルム1を構成する基材フィルム2は、アルミニウム層3を保持し得るフィルムであれば特に制限はなく、ガスバリア性フィルムの使用目的等から適宜選択することができる。具体的には、基材フィルム2としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、アセタール系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の延伸(一軸ないし二軸)または未延伸の可撓性樹脂フィルムを用いることができる。基材フィルム2の厚さとしては、5〜500μm、好ましくは10〜100μmの範囲内で適宜設定することができる。
【0019】
また、上記のような基材フィルム2は、必要に応じて、その表面にアンカーコート剤等をコーティングして表面平滑化処理等を施したものであってもよい。
【0020】
本発明のガスバリア性フィルム1を構成するアルミニウム層3は、バリア層として機能し、かつ、柔軟性を有しており、例えば、ガスバリア性フィルム1が軟包装材料として使用された場合にも、クラックが発生せず安定したガスバリア性を発現するための層である。このアルミニウム層3の厚みは、使用する基材フィルム2の種類、アルミニウム層3の成膜条件等によっても異なるが、例えば、50〜3000Å程度、好ましくは、100〜1000Å程度の範囲内で任意に選択して設定することができる。尚、このアルミニウム層3は、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ナトリウム、チタン、ジルコニウム、イットリウム等の金属や、炭素、ホウ素、窒素、フッ素等の非金属元素が含まれていても構わない。
【0021】
本発明のガスバリア性フィルム1を構成する無機酸化物薄膜層4は、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の薄膜であり、その厚みは、10〜500Å、好ましくは10〜300Åの範囲で設定することができる。無機酸化物薄膜層4の厚みが10Å未満であると、無機酸化物薄膜層4の強度が不十分であり、また、500Åを超えると、無機酸化物薄膜層4にクラックが生じ易くなり好ましくない。このような無機酸化物薄膜層4は、アルミニウム層3のもつ柔軟性を損なうことなく、高い表面エネルギーをもったアルミニウム層3の表面を保護するものである。
ガスバリア性フィルムの製造方法
次に、本発明のガスバリア性フィルムの製造方法について、上記の基材フィルム2上へのアルミニウム層3および無機酸化物薄膜層4の形成を例に説明する。
【0022】
アルミニウム層3の形成は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、および、スパッタリング法のいずれかにより行うことができる。
【0023】
真空蒸着法による基材フィルム2上へのアルミニウム層3の形成は、アルミニウムを原料として、これを真空チャンバー内で加熱蒸発させて基材フィルム2上に薄膜を形成しアルミニウム層3とすることができる。
【0024】
イオンプレーティング法による基材フィルム2上へのアルミニウム層3の形成は、アルミニウムを原料とし、これを真空チャンバー内で蒸発させイオン化して基材フィルム2上に激突させてアルミニウム層3とすることができる。
【0025】
また、スパッタリング法による基材フィルム2上へのアルミニウム層3の形成では、高周波スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法等の従来公知のスパッタリング法等を用いることができる。高周波スパッタリング法による基材フィルム2上へのアルミニウム層3の形成は、アルミニウムをターゲット物質として電極表面に設置し、アルゴンガス等の不活性ガスをチャンバー内に導入し、チャンバー内の圧力を0.1〜5Pa程度に維持し、上記電極に周波数が例えば13.56MHzの高周波で数百ボルトの電圧を印加することにより、チャンバー内で放電を生じさせてターゲット物質のスパッタリングを行い、これにより基材フィルム2上に薄膜を形成してアルミニウム層3とすることができる。また、マグネトロンスパッタリング法による基材フィルム2上へのアルミニウム層3の形成は、上記の高周波スパッタリング法において、ターゲット物質を設置する電極付近に永久磁石または電磁石を設置して磁界を形成し、これにより放電の電子密度を高めスパッタリングの効率を向上させてアルミニウムの薄膜を基材フィルム2上に形成するものである。
【0026】
アルミニウム層3上への無機酸化物薄膜層4は、アルミニウム層3を形成したチャンバー内において、アルミニウム層3が他の部材、例えば、搬送ロール、巻き取りロール上の基材フィルム裏面等に接触する前に、スパッタリング法および酸素プラズマ法のいずれかにより形成することができる。
【0027】
スパッタリング法による無機酸化物薄膜層4の形成は、ターゲット物質として酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の所望の無機酸化物を用いて、高周波スパッタリング法やマグネトロンスパッタリング法等により行うことができる。この場合、所定のスパッタリング装置を、アルミニウム層3の成膜位置から下流側に配設する。
【0028】
また、酸素プラズマ法による無機酸化物薄膜層4の形成は、アルミニウム層3に対向するように平板電極を配設し、周囲を遮蔽板で囲んで酸素ガスを閉じ込め、平板電極に高周波電力や直流電力を印加してプラズマを発生させる方法、ホローカソード型プラズマガンを利用する方法等がある。この場合も、チャンバー内において、酸素プラズマ処理装置をアルミニウム層3の成膜位置から下流側に配設する。
【0029】
図2は本発明のガスバリア性フィルムの製造方法に使用できる巻取り式の真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。図2において、真空蒸着装置11は、真空チャンバー12、このチャンバー12内に配設された供給ロール13a、巻取りロール13b、コーティングドラム14と、仕切り板19,19で真空チャンバー12と仕切られた蒸着チャンバー15、この蒸着チャンバー15に配設されたるつぼ16、蒸発源17、マスク18,18とを備えている。さらに、チャンバー12内のコーティングドラム14の下流側であって巻取りロール13bとの間には、無機酸化物薄膜形成手段21が配設されている。この真空蒸着装置11では、真空チャンバー12の中で、供給ロール13aから繰り出す基材フィルム2は、コーティングドラム14を通り、蒸着チャンバー15の中に入る。この蒸着チャンバー15内では、るつぼ16によって熱せられた蒸着源17からアルミニウムが蒸発し、この蒸発したアルミニウムは上記の冷却したコーティングドラム14上においてマスク18,18間に位置する基材フィルム2上に付着してアルミニウム層3を形成する。次いで、アルミニウム層3を形成した基材フィルム2を真空チャンバー12内に送り出し、上述のようにスパッタリング装置あるいはプラズマ型酸素イオンガンからなる無機酸化物薄膜形成手段21により、アルミニウム層3上に無機酸化物薄膜層4を形成し、その後、巻取りロール13bに巻き取ることによって、本発明のガスバリア性フィルム1を製造することができる。
積層材
次に、本発明の積層材について、上述の本発明のガスバリア性フィルム1を用いた例を挙げて説明する。
【0030】
図3は、本発明の積層材の実施形態を示す概略断面図である。図3において積層材31は、基材フィルム2の一方の面に形成されたアルミニウム層3と、このアルミニウム層3上に形成された無機酸化物薄膜層4を備えたガスバリア性フィルム1と、このガスバリア性フィルム1の無機酸化物薄膜層4上にアンカーコート剤層および/または接着剤層32を介して形成したヒートシール性樹脂層33とを備えている。
【0031】
積層材31を構成するアンカーコート剤層32は、例えば、アルキルチタネート等の有機チタン系アンカーコート剤、イソシアネート系アンカーコート剤、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤、ポリブタジエン系アンカーコート剤等を使用して形成することができる。アンカーコート剤層32の形成は、上記のようなアンカーコート剤を、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレイコート等の公知のコーティング法でコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去して行うことができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m2 (乾燥状態)程度が好ましい。
【0032】
また、積層材31を構成する接着剤層32は、例えば、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、エポキシ系、ポリ(メタ)アクリル系、ポリ酢酸ビニル系、ポリオレフィン系、カゼイン、ワックス、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリブタジエン系等のビヒクルを主成分とする溶剤型、水性型、無溶剤型、あるいは、熱溶融型等の各種のラミネ- ト用接着剤を使用して形成することができる。接着剤層32の形成は、上記のようなラミネート用接着剤を、例えば、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デッブコート、スプレイコート、その他のコーティング法でコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去して行うことができる。上記のラミネート用接着剤の塗布量としては0.1〜5g/m2 (乾燥状態)程度が好ましい。
【0033】
積層材31を構成するヒートシール性樹脂層33に用いるヒートシール性樹脂としては、熱によって溶融し相互に融着し得る樹脂を挙げることができる。具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレンーメタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ( メタ) アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等を使用することができる。ヒートシール性樹脂層33は、上述のようなヒートシール性樹脂を塗布して形成してもよく、また、上述のようなヒートシール性樹脂からなるフィルムないしシートをラミネートして形成してもよい。このようなヒートシール性樹脂層33の厚みは、5〜300μm、好ましくは10〜100μmの範囲内で設定することができる。
【0034】
図4は、本発明の積層材の他の実施形態を示す概略断面図である。図4において積層材41は、基材フィルム2の一方の面に形成されたアルミニウム層3と、このアルミニウム層3上に形成された無機酸化物薄膜層4を備えたガスバリア性フィルム1と、このガスバリア性フィルム1の無機酸化物薄膜層4上にアンカーコート剤層および/または接着剤層42を介して形成したヒートシール性樹脂層43と、ガスバリア性フィルム1の基材フィルム2の他方の面(無機酸化物薄膜層非形成面)に設けられた基材44とを備えている。
【0035】
積層材41を構成するアンカーコート剤層、接着剤層42およびヒートシール性樹脂層43は、上述の積層材31を構成するアンカーコート剤層、接着剤層32およびヒートシール性樹脂層33と同様とすることができ、ここでの説明は省略する。
【0036】
積層材41を構成する基材44としては、例えば、積層材41が包装用容器を構成する場合、基材44が基本素材となることから、機械的、物理的、化学的、その他等において優れた性質を有し、特に、強度を有して強靭であり、かつ耐熱性を有する樹脂のフィルムないしシートを使用することができる。具体的には、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂等の強籾な樹脂の延伸(一軸ないし二軸)または未延伸のフィルムないしシートを挙げることができる。この基材44の厚みは、5〜100μm、好ましくは10〜50μm程度が望ましい。
【0037】
また、本発明においては、基材44に、例えば、文字、図形、記号、絵柄、模様等の所望の印刷絵柄を通常の印刷法で表刷り印刷あるいは裏刷り印刷が施されていてもよい。
【0038】
さらに、本発明では、基材44として、例えば、紙層を構成する各種の紙基材を使用することができる。具体的には、賦形性、耐屈曲性、剛性等をもたせた紙基材であり、例えば、強サイズ性の晒または未晒の紙基材、あるいは純白ロール紙、クラフト紙、板紙、加工紙等の紙基材を使用することができる。このような紙基材としては、坪量約80〜600g/m2 程度のもの、好ましくは、坪量約100〜450g/m2 程度のものを使用することが望ましい。
【0039】
また、本発明では、基材44として、上述の樹脂のフィルムないしシートと上述の紙基材とを併用して使用することもできる。
【0040】
図5は、本発明の積層材の他の実施形態を示す概略断面図である。図5において積層材51は、基材フィルム2の一方の面に形成されたアルミニウム層3と、このアルミニウム層3上に形成された無機酸化物薄膜層4を備えたガスバリア性フィルム1と、このガスバリア性フィルム1の無機酸化物薄膜層4上にアンカーコート剤層および/または接着剤層52を介して形成したヒートシール性樹脂層53と、ガスバリア性フィルム1の基材フィルム2の他方の面(無機酸化物薄膜層非形成面)に設けられた基材54と、この基材54上に形成したヒートシール性樹脂層55とを備えている。
【0041】
積層材51を構成するアンカーコート剤層、接着剤層52およびヒートシール性樹脂層53,55は、上述の積層材31を構成するアンカーコート剤層、接着剤層32およびヒートシール性樹脂層33と同様とすることができ、また、積層材51を構成する基材54は、上述の積層材41を構成する基材44と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0042】
尚、本発明の積層材には、さらに、例えば、水蒸気、水等のバリア性を有する低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等の樹脂のフィルムないしシート、あるいは、酸素、水蒸気等に対するバリア性を有するポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物等の樹脂のフィルムないしシート等を使用することができる。
【0043】
これらの材料は、一種または2種以上を組み合わせて使用することができ、厚みは任意であるが、通常、5〜300μm、好ましくは10〜100μm程度である。
【0044】
さらに、包装用容器の用途に本発明の積層材が使用される場合、通常、包装用容器は物理的にも化学的にも過酷な条件におかれることから、積層材にも厳しい包装適性が要求される。具体的には、変形防止強度、落下衝撃強度、耐ピンホール性、耐熱性、密封性、品質保全性、作業性、衛生性、その他等の種々の条件が要求され、このため、本発明の積層材には、上記のような諸条件を充足する材料を任意に選択して、基材フィルム1、基材44,54、あるいは、他の構成部材として使用することができる。具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマ一樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS系樹脂)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化物、フッ素系樹脂、ジエン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ニトロセルロース等の公知の樹脂のフィルムないしシートから任意に選択して使用することができる。その他、例えば、セロハン等のフィルム、合成紙等も使用することができる。
【0045】
上記のフィルムないしシートは、未延伸、一軸ないし二軸方向に延伸されたもの等のいずれも使用することができる。また、その厚さは、任意であるが、数μmから300μm程度の範囲から選択して使用することができ、積層位置は特に制限はない。また、本発明においては、フィルムないしシートは、押し出し成膜、インフレーション成膜、コーティング膜等のいずれの性状の膜でもよい。
【0046】
上述の積層材31,41,51のような本発明の積層材は、通常の包装材料をラミネートする方法、例えば、ウエットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤型ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法、Tダイ押し出し成形法、共押し出しラミネーション法、インフレーション法、共押し出しインフレーション法等を用いて製造することができる。
【0047】
尚、上記の積層を行う際に、必要ならば、例えば、コロナ処理、オゾン処理等の前処理をフィルムに施すことができ、また、例えば、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、有機チタン系等のアンカーコーティング剤、あるいはポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系等のラミネート用接着剤等の公知の接着剤等を使用することができる。
【0048】
【実施例】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)
基材フィルムとしてロール状の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製ルミラーP−60、厚み12μm、幅660mm、長さ5000m)を準備し、これを図2に示されるような巻取り式の真空蒸着装置の真空チャンバー内に装着した。この真空蒸着装置は、無機酸化物薄膜形成手段として、酸素プラズマ処理装置をコーティングドラムの成膜部と巻き取りロールの間で、他の部材と接触する前に表面処理可能な位置に備えるものである。次に、真空蒸着装置のチャンバー内を、油回転ポンプおよび油拡散ポンプにより、到達真空度1.0×10-5Torr(1.3×10-3Pa)まで減圧した。また、原料(蒸発源)としてアルミニウム微粒子(高純度化学研究所(株)製)を準備し、銅製のるつぼ内に載置した。
【0049】
次に、電子線加熱装置で銅製るつぼ内のアルミニウム微粒子を加熱して蒸発させ、コーティングドラム上を走行する基材フィルム上にアルミニウムの薄膜を形成し、次いで、コーティングドラムの下流に配設した酸素プラズマ処理装置により、アルミニウム層がチャンバー内で他の部材と接触する前にアルミニウム層の表面に酸素プラズマ処理を施して酸化アルミニウム層(厚み100Å)を形成した。これにより、本発明のガスバリア性フィルム(試料1)を得た。
【0050】
尚、上記の電子線加熱装置の出力は10kWとし、基材フィルムの走行速度は、アルミニウム層厚が500Åとなるように300m/分に設定した。また、酸素プラズマ処理装置としては、ドラムに対向する平板電極(長さ100mm、幅660mm)と酸素ガスを閉じ込める遮蔽板を有するもので、平板電極に対して、13.56MHz、2.5kWの高周波電力を印加した。酸素ガスの流量は200sccmとし、これによりプラズマ処理部の圧力を10mTorrとした。また、アルミニウム層厚および酸化アルミニウム層は、蛍光X線分析装置(理学電気(株)製RIX−3100)、および、断面の電子顕微鏡観察を用いて測定した。
(実施例2)
基材フィルムとしてロール状の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製ルミラーP−60、厚み12μm、幅660mm、長さ5000m)を準備し、これを図2に示されるような巻取り式の真空蒸着装置の真空チャンバー内に装着した。この真空蒸着装置は、無機酸化物薄膜形成手段として、高周波スパッタリング装置をコーティングドラムの成膜部と巻き取りロールの間で、他の部材と接触する前に表面処理可能な位置に備えるものである。次に、真空蒸着装置のチャンバー内を、油回転ポンプおよび油拡散ポンプにより、到達真空度1.0×10-5Torr(1.3×10-3Pa)まで減圧した。また、原料(蒸発源)としてアルミニウム微粒子(高純度化学研究所(株)製)を準備し、銅製のるつぼ内に載置した。さらに、高周波スパッタリング装置の電極表面には、二酸化珪素燒結体(長さ100mm、幅660mm、大宮化成(株)製)を載置した。
【0051】
次に、電子線加熱装置で銅製るつぼ内のアルミニウム微粒子を加熱して蒸発させ、コーティングドラム上を走行する基材フィルム上にアルミニウムの薄膜を形成した。同時に、コーティングドラムの下流に配設した高周波スパッタリング装置において、電極に周波数13.56MHz、電力5kWの高周波電力を印加することにより、チャンバー内で放電を生じさせてターゲット物質(二酸化珪素)のスパッタリングを行い、これによりアルミニウム層の表面に酸化珪素薄膜層(厚み200Å)を形成た。基材フィルムの走行速度は、アルミニウム層厚が500Åとなるように300m/分に設定した。これにより、本発明のガスバリア性フィルム(試料2)を得た。
【0052】
尚、アルミニウム層厚および酸化アルミニウム層は、蛍光X線分析装置(理学電気(株)製RIX−3100)、および、断面の電子顕微鏡観察を用いて測定した。
(比較例1)
酸素プラズマ処理による酸化アルミニウム層の形成を行わない他は、実施例1と同様にして、ガスバリア性フィルム(比較試料1)を得た。
(評価)
上記のようにして作製した各ガスバリア性フィルム(試料1、2および比較試料1)の酸素透過率を、酸素ガス透過率測定装置(モダンコントロール社製OXTRAN2/20)を用いて、温度23℃、湿度50%RHで測定した。その結果、下記に示すように、本発明のガスバリア性フィルム(試料1、2)は、いずれも高い酸素バリア性を示した。しかし、比較のガスバリア性フィルム(比較試料1)は、製造工程中でのアルミニウム層の剥離脱落に起因すると思われる酸素バリア性の低下がみられた。
【0053】
酸素透過率の測定結果
試料1 :0.5(cc/cm2・day・atm)
試料2 :0.7(cc/cm2・day・atm)
比較試料1:2.5(cc/cm2・day・atm)
【0054】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば基材フィルムの少なくとも一方の面にアルミニウム層と無機酸化物薄膜層を積層してガスバリア性フィルムとし、上記のアルミニウム層は真空蒸着法、イオンプレーティング法、および、スパッタリング法のいずれかにより、真空チャンバー内で基材フィルム上に形成され、その後、このアルミニウム層が真空チャンバー内で他の部材に接触する前に、スパッタリング法および酸素プラズマ法のいずれかによりアルミニウム層上に無機酸化物薄膜層を形成するので、無機酸化物薄膜層によって表面エネルギーの高いアルミニウム層が直接他の物質の表面と接触して密着することが防止され、アルミニウム層の剥離脱落がなく優れたガスバリア性を備えたガスバリア性フィルムが可能であり、かつ、無機酸化物薄膜層は食品安全性上の問題がないとともに、アルミニウム層と無機酸化物薄膜層との積層は柔軟性がありクラックが生じないので、ガスバリア性フィルムは軟包装材料としての用途にも適しており、さらに、アルミニウム層上への無機酸化物薄膜層の形成には、真空中での塗布機構等の複雑な機構を必要としないので、従来のアルミニウム層を備えたガスバリア性フィルムの製造設備を使用できるという効果が奏される。また、このガスバリア性フィルムを用いた積層材は、上記の各特性に加え、ヒートシール性樹脂層による後加工適性を備えるものであり、このような積層材を使用して製袋または製函した包装容器は内容物の充填包装適性に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガスバリア性フィルムの一実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明のガスバリア性フィルムの製造方法に使用する真空蒸着装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明のガスバリア性フィルムを用いた積層材の一実施形態を示す概略断面図である。
【図4】本発明のガスバリア性フィルムを用いた積層材の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図5】本発明のガスバリア性フィルムを用いた積層材の他の実施形態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1…ガスバリア性フィルム
2…基材フィルム
3…アルミニウム層
4…無機酸化物薄膜層
11…真空蒸着装置
12…真空チャンバー
14…コーティングドラム
15…蒸着チャンバー
17…原料
21…無機酸化物薄膜層形成手段
31,41,51…積層材
32,42,52…アンカーコート剤層、接着剤層
33,43,53…ヒートシール性樹脂層
44,54…基材
55…ヒートシール性樹脂層
Claims (8)
- 基材フィルムと、該基材フィルムの少なくとも一方の面に設けられたアルミニウム層と、該アルミニウム層上に設けられた酸化珪素薄膜層とを有し、該酸化珪素薄膜層は前記アルミニウム層が真空チャンバー内で他の部材に接触する前にスパッタリング法で形成した厚み10〜300Åの薄膜であることを特徴とするガスバリア性フィルム。
- 前記アルミニウム層は、真空蒸着、イオンプレーティング、および、スパッタリングのいずれかにより形成したものであることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
- 真空蒸着法、イオンプレーティング法、および、スパッタリング法のいずれかにより、真空チャンバー内で基材フィルムの少なくとも一方の面にアルミニウム層を形成し、該アルミニウム層が真空チャンバー内で他の部材に接触する前に、該アルミニウム層上にスパッタリング法により厚み10〜300Åの酸化珪素薄膜層を形成することを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
- 請求項1または請求項2に記載のガスバリア性フィルムの少なくとも一方の面にヒートシール性樹脂層を設けたことを特徴とする積層材。
- 請求項1または請求項2に記載のガスバリア性フィルムの酸化珪素薄膜層上にヒートシール性樹脂層を設けたことを特徴とする積層材。
- 酸化珪素薄膜層が形成されていない基材フィルム上に基材を積層して備えることを特徴とする請求項5に記載の積層材。
- 基材上にヒートシール性樹脂層を備えることを特徴とする請求項6に記載の積層材。
- 酸化珪素薄膜層とヒートシール性樹脂層との間にアンカーコート剤層および/または接着剤層を有することを特徴とする請求項4乃至請求項7のいずれかに記載の積層材。
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