JP3888535B2 - 鞍乗型車両における急発進防止装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、車両を走行面に自立させ、駆動装置により後車輪を遊転駆動させた状態から車両を直ちに発進させるとき、上記駆動装置の駆動に伴う後車輪の回転速度がどの程度であるかをライダーが聴覚的に知らないまま、この車両を無意図的に急発進させてしまう、ということを防止するようにした鞍乗型車両における急発進防止装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鞍乗型車両である自動二輪車は、一般に、次のように構成されている。
【0003】
即ち、自動二輪車は、その車体に支承される前、後車輪と、上記車体に対し上下に回動自在となるよう枢支され下方に回動させられた状態での回動端部が走行面上に接地可能とされるメインスタンドと、外部からの操作力を入力して上記駆動装置から上記後車輪に出力される駆動力をその操作量に応じて増減可能とさせるアクセル操作部と、上記車体に支持されて上記後車輪を走行駆動可能とさせる駆動装置と、上記駆動装置を制御する制御装置とを備え、下方に回動させられた状態での上記メインスタンドの回動端部と上記前車輪との接地で、上記車体が走行面上に自立可能とされ、つまり、車両が自立可能とされている。
【0004】
上記車両を駐車させる場合には、一般に、上記メインスタンドを下方回動させてその回動端部と、上記前車輪とを接地させる一方、上記後車輪を走行面から離反させて、上記車体を走行面上に自立させる。
【0005】
また、上記車体を自立させた状態から、車両を直ちに発進させて走行させようとする場合には、例えば、次のような発進操作が多用されている。
【0006】
即ち、上記したように、車体を走行面上に自立させた状態のままで、この車体にライダーが跨るように乗車し、上記アクセル操作部への操作により上記駆動装置の駆動力を上記後車輪に伝達することにより、この後車輪を遊転駆動させる。この状態から、ライダーが車体を少し前方に押動させて、上記メインスタンドを上方に自動的に回動させることにより、このメインスタンドの接地を解除して上記後車輪を接地させる。すると、この後車輪の走行駆動により、上記車両はその自立状態から直ちに発進させられることとなる。
【0007】
その後は、ライダーが上記アクセル操作部を操作して、その操作量を増減操作すれば、この操作量に応じた値の駆動力が上記駆動装置から後車輪に出力され、もって、車両が所望の車速など、所望の運転状態で走行面上を走行させられる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記自動二輪車の発進時において、特に、上記駆動装置の主体が電動機である場合には、この電動機の駆動音は小さいことから、この電動機から駆動力を受けた後車輪の回転速度が、どの程度であるかを聴覚的に知ることは困難である。
【0009】
このため、上記駆動装置が後車輪に大きい駆動力を出力していて、この後車輪の遊転駆動における回転速度が高速である場合において、これを知らずに、ライダーが車両を発進させようとして、上記メインスタンドの接地を解除させ、後車輪を接地させたとすると、この後車輪の高速での遊転駆動により上記車両が無意図的に急発進するおそれがあり、この場合には、上記駆動装置に対し無用に過大な衝撃力を与えるおそれがあり、これは駆動装置の寿命上好ましくない。
【0010】
また、上記構成の車両において、従来、特開平11−205902号公報で示されたものがある。
【0011】
上記公報のものによれば、上記メインスタンドの上方回動状態(収納状態)を検出するセンサーが設けられ、上記メインスタンドを下方回動させた車体の自立状態では、上記センサーの検出信号により、上記駆動装置の駆動を停止させて、後車輪の遊転駆動ができないようにしたものがあり、これによれば、車両が、その自立状態から無意図的に急発進するということは未然に防止される。
【0012】
しかし、上記従来の技術では、車両を、その自立状態から直ちに発進させる、という一般的に多用されている上記した発進操作そのものができなくなるという不都合がある。
【0013】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、車両が備える前車輪とメインスタンドとを接地させる一方、後車輪を走行面から離反させて車両を走行面上に自立させた状態から、上記後車輪を駆動装置により遊転駆動させ、次に、上記メインスタンドの接地を解除して上記後車輪を接地させることにより車両を直ちに発進させる、という発進操作をするとき、上記駆動装置の駆動に伴う後車輪の回転速度がどの程度であるかをライダーが知らないまま、この車両を無意図的に急発進させてしまう、ということを防止して、上記駆動装置に対し無用に過大な衝撃力が与えられないようにすることを課題とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の鞍乗型車両における急発進防止装置は、次の如くである。なお、この項において各用語に付記した符号は、本発明の技術的範囲を後述の「発明の実施の形態」の項の内容に限定解釈するものではない。
【0015】
請求項1の発明は、車体2に支承される前、後車輪5,10と、上記車体2に対し上下に回動自在となるよう枢支され下方に回動させられた状態での回動端部が走行面11上に接地可能とされるメインスタンド20と、上記車体2に支持されて上記後車輪10を走行駆動可能とさせる駆動装置25と、上記駆動装置25を制御する制御装置35とを備え、下方に回動させられた状態での上記メインスタンド20の回動端部と上記前車輪5との接地で、上記車体2が走行面11上に自立可能となるようにした鞍乗型車両において、
【0016】
上記前車輪5の回転速度VFが第1所定値V1以下であって(VF<V1)、上記後車輪10の回転速度VRが上記第1所定値V1よりも大きい値の第2所定値V2以上であれば(VR≧V2>V1)、この後車輪10の回転速度VRを上記制御装置35により減速させるようにしたものである。
【0017】
請求項2の発明は、車体2に支承される前、後車輪5,10と、上記車体2に対し上下に回動自在となるよう枢支され下方に回動させられた状態での回動端部が走行面11上に接地可能とされるメインスタンド20と、上記車体2に支持されて上記後車輪10を走行駆動可能とさせる駆動装置25と、上記駆動装置25を制御する制御装置35とを備え、下方に回動させられた状態での上記メインスタンド20の回動端部と上記前車輪5との接地で、上記車体2が走行面11上に自立可能となるようにした鞍乗型車両において、
【0018】
上記メインスタンド20が下方に回動させられた状態であり、かつ、上記後車輪10の回転速度VRが所定値V2以上であれば、この後車輪10の回転速度VRを上記制御装置35により減速させるようにしたものである。
【0019】
請求項3の発明は、車体2に支承される前、後車輪5,10と、上記車体2に対し上下に回動自在となるよう枢支され下方に回動させられた状態での回動端部が走行面11上に接地可能とされるメインスタンド20と、外部からの操作力を入力しその被操作量に応じて上記駆動装置25から上記後車輪10に出力される駆動力を増減可能とさせるアクセル操作部30と、上記車体2に支持されて上記後車輪10を走行駆動可能とさせる駆動装置25と、上記駆動装置25を制御する制御装置35とを備え、下方に回動させられた状態での上記メインスタンド20の回動端部と上記前車輪5との接地で、上記車体2が走行面11上に自立可能となるようにした鞍乗型車両において、
【0020】
上記メインスタンド20が下方に回動させられた状態であり、上記アクセル操作部30の被操作量が所定値以上であれば、上記後車輪10の回転速度VRを上記制御装置35により減速させるようにしたものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面により説明する。
【0022】
図1,2において、符号1は鞍乗型車両であって、具体的には,電動式自動二輪車である。また,図中矢印Frは、この車両1の前方を示している。
【0023】
上記車両1の車体2は,この車体2を主構成する車体フレーム3と,この車体フレーム3の前上端部に操向自在に支承され緩衝機能を備えるフロントフォーク4と、このフロントフォーク4の下端部に支承される前車輪5と、上記フロントフォーク4の上端部に取り付けられるハンドル6と、上記車体フレーム3の後下端部に枢支軸7により上下に揺動自在となるよう枢支されるリヤアーム8と、上記車体フレーム3とリヤアーム8とに架設される緩衝器9と、上記リヤアーム8の揺動端部に支承される後車輪10とを備えている。上記車体2は上記前、後車輪5,10によって走行面11上に支持可能とされている(図1中実線)。
【0024】
また、上記車体2は、上記車体フレーム3の後上端部に支持されてライダー14が跨るように着座可能とされるシート15と、上記シート15の前下方における上記車体フレーム3の下端部に支持されて上記シート15に着座したライダー14の足を載置可能とさせる左右一対のフートレスト16とを備えている。上記シート15は、その後部側が上方に向って往復回動自在となるようその前端部が上記車体フレーム3の後上端部に枢支軸17により枢支されている。
【0025】
また、上記車体2は、この車体2のリヤアーム8の下方に配置されるメインスタンド20を備えている。このメインスタンド20はその後部側が上下に回動自在となるよう前端部が上記リヤアーム8に枢支軸21により枢支されている。また、上記メインスタンド20を、図1中実線で示す上方に回動させた状態の横臥姿勢(以下、これを「収納状態」という)と、図1中一点鎖線で示す下方に回動させた状態の起立姿勢(以下、これを「使用状態」という)との何れか一方の状態に選択的に弾性的に保持するばね22が設けられている。
【0026】
上記メインスタンド20が「収納状態」とされたときには、上記前、後車輪5,10が共に走行面11に接地させられて、通常の走行可能状態とされる。一方、上記メインスタンド20が「使用状態」とされたときには、図1中一点鎖線で示すように、上記メインスタンド20の回動端部と、上記前車輪5とが上記走行面11に接地する一方、上記後車輪10は走行面11から上方に離反させられて上記車体2が走行面11上に自立可能とされ、これにより、車両1は自立可能とされて駐車状態とされる。
【0027】
上記車両1は、上記車体2のリヤアーム8の揺動端部に支持されて上記後車輪10を走行駆動可能とさせる駆動装置25を備えている。この駆動装置25は、上記後車輪10を走行駆動させるよう駆動力を出力可能とする電動機26と、この電動機26に上記後車輪10を連動連結させる遊星歯車式の減速機27とを備え、これら後車輪10、電動機26、および減速機27は同一の軸心28上に配置されている。
【0028】
上記車両1は、外部であるライダーからの操作力を入力しその被操作量に応じて上記駆動装置25の電動機26から上記後車輪10に出力される駆動力を増減可能とさせるアクセル操作部30を備えている。このアクセル操作部30はライダーが把持する上記ハンドル6のグリップ部で構成され、ライダーの操作によりこのグリップ部が回動させられる。
【0029】
上記車両1は、上記シート15の下方で上記車体フレーム3に着脱自在に支持される上記電動機26の電源であってこの電動機26に駆動力を出力させるよう電力を供給可能とするバッテリー32と、このバッテリー32に他の電源から電力を供給可能とさせる充電器33と、上記バッテリー32からメインスイッチ34を介し電力が供給されて上記駆動装置25の電動機26を電子的に制御する制御装置35と、上記ハンドル6に取り付けられ上記車両1の運転状態を表示するメータ36とを備えている。
【0030】
上記制御装置35は、上記メインスイッチ34を介し上記バッテリー32から電力を入力するマイコンである中央処理装置39と、上記バッテリー32の直流電流を交流電流に変換して上記電動機26に供給可能とするインバータ40とを備えている。また、外部からの操作による上記アクセル操作部30の被操作量に基づき上記中央処理装置39から信号が出力されるようになっており、上記インバータ40は、上記中央処理装置39から出力される信号をゲートドライブ41を介し入力するパワーモジュール42を備えている。このパワーモジュール42は、上記中央処理装置39から出力される信号に基づいて上記アクセル操作部30の被操作量に応じた値の上記バッテリー32からの電力を、上記電動機26に供給可能とするスイッチング素子45を備え、上記電動機26は上記バッテリー32からこの電動機26に供給される電力の増減に応じて、その出力する駆動力が増減させられる。
【0031】
上記中央処理装置39と、インバータ40のゲートドライブ41およびパワーモジュール42のスイッチング素子45とは共通のプリント基板46上に設けられ、この基板46は上記リヤアーム8に支持されている。
【0032】
上記車両1は、上記メータ36に内有され上記前車輪5の回転速度VFを検出してその検出信号を車速計に表示させる前車輪回転速度センサー50と、上記後車輪10の回転速度VRを検出する後車輪回転速度センサー51とを備えている。上記各回転速度VF,VRは各車輪の外周面の周速であるが、これは車輪の回転数という車速の算出根拠となる間接的な概念を含むものである。また、特に、上記後車輪回転速度センサー51による後車輪10の回転速度VRの検出位置は、後車輪10の車軸の他、電動機26や減速機27の回転部分の回転数に基づいてもよい。
【0033】
また、上記車両1は、上記シート15にライダー14が着座しているか否かを検出するシートセンサー52と、上記フートレスト16上にライダー14の足が載置されているか否かを検出するフートレストセンサー53と、上記メインスタンドセンサー54が「使用状態」であるか否(「収納状態」)かを検出するメインスタンドセンサー54と、上記アクセル操作部30の被操作量を検出するアクセル操作部センサー55と、上記パワーモジュール42の温度を検出する温度センサー56とを備え、上記各センサー50〜56はいずれも上記制御装置35の中央処理装置39に電気的に接続されて、その各検出信号が上記中央処理装置39に入力されるようになっている。
【0034】
図3は、上記制御装置35のプログラムのフローチャートを示し、符号Sは上記プログラムの各ステップを示している。
【0035】
図3中、S2において、上記前車輪回転速度センサー50の検出信号による前車輪5の回転速度VFが上記中央処理装置39に予め設定されていて0を含む第1所定値V1を越えていると判断されれば(VF>V1)、上記車両1は、その車体2が前車輪5と「使用状態」のメインスタンド20との接地によって走行面11上に自立させられている駐車状態にあるのではなく、走行状態にあると判断されて、上記駆動装置25は制御装置35により通常の制御がなされ(S3)、車両1は通常の運転状態となるよう制御される。
【0036】
一方、上記S2において、前車輪5の回転速度VFが第1所定値V1以下の小さい値であると判断されれば(VF≦V1)、S4が実行される。このS4において、上記後車輪回転速度センサー51の検出信号による後車輪10の回転速度VRが上記第1所定値V1よりも大きい値であって、上記中央処理装置39に予め設定されている第2所定値V2未満であると判断されれば(VR<V2>V1)、上記S3が実行されて、上記駆動装置25は制御装置35により通常の制御がなされる。
【0037】
上記S4において、上記後車輪10の回転速度VRが上記第2所定値V2以上であると判断されれば(VR≧V2>V1)、これと、上記S2でのVF≦V1という判断とからみれば、上記前車輪5の回転速度VFは小さい値であるのに対し、上記後車輪10の回転速度VRはかなり大きい値であり、このため、上記車両1は、その車体2が前車輪5とメインスタンド20とにより上記走行面11上に自立させられて駐車状態にある、と上記制御装置35により判断される。そして、この状態から車両1を発進させようとするには、上記後車輪10の回転速度VRは過高速であると判断されて、次に、S5が実行される。
【0038】
上記S5において、上記メインスタンドセンサー54の検出信号によりこのメインスタンド20は下方に回動させられた状態でなく、つまり、「使用状態」ではないと判断されれば、上記車両1の車体2は前、後車輪5,10で走行面11上に支持されていて、走行状態であると判断され、上記S3が実行されて、上記駆動装置25は制御装置35により通常の制御がなされる。
【0039】
上記S5において、上記メインスタンド20が下方に回動させられた状態であり、つまり、「使用状態」であると判断されれば、上記車体2が自立状態であって、車両1が駐車状態にあることがより確実であると判断されて、S6が実行される。
【0040】
上記S6において、上記アクセル操作部センサー55の検出信号によりアクセル操作部30の被操作量が所定値未満であり、この操作量に応じての上記バッテリー32から駆動装置25の電動機26への電力の供給量が少ないと判断され、つまり、上記後車輪10の回転速度VRは過高速ではないと判断されれば、上記S3が実行されて、上記駆動装置25は制御装置35により通常の制御がなされる。
【0041】
上記S6において、上記アクセル操作部センサー55の検出信号によりアクセル操作部30の被操作量が上記所定値以上であると判断されれば、S7が実行されて、上記後車輪10の回転速度VRが上記制御装置35の制御により減速させられる。より具体的には、上記アクセル操作部センサー55の検出信号に基づく上記制御装置35のインバータ40のパワーモジュール42の制御により、バッテリー32から電動機26への電力の供給量が減少させられて、この電動機26により駆動される上記後車輪10が減速させられる。
【0042】
このため、上記車両1の前車輪5と、下方に回動させられた状態である「使用状態」のメインスタンド20の回動端部との接地によって車体2が走行面11上に自立させられている状態から、上記メインスタンド20の接地を解除させて遊転駆動中の後車輪10を接地させることにより、この車両1を直ちに発進させようとする発進操作をしようとするとき、上記したように、S6において、上記後車輪10の回転速度VRは減速させられていて過高速が回避されていることから、上記駆動装置25の駆動に伴う後車輪10の回転速度VRがどの程度であるかをライダー14が知らないまま、上記車両1が無意図的に急発進するということは防止される。
【0043】
よって、上記した車両1の発進操作において、上記衝撃力により上記駆動装置25の特に減速機27に対し無用に過大な衝撃力が与えられる、ということは防止され、これは上記駆動装置25の減速機27の寿命上好ましい。
【0044】
上記の場合、車両1の車速を検出して表示するためのメータ36に予め設けられている前車輪回転速度センサー50が、上記前車輪5の回転速度VFの検出のために利用されており、よって、この利用の分、上記車両1の急発進の防止が簡単な構成によって達成される。
【0045】
なお、以上は図示の例によるが、車両1は自動三輪車であってもい。また、上記駆動装置25は内燃機関であってもよく、この場合、電動機26は内燃機関本体と、この内燃機関本体の吸気系に設けられるスロットル弁とに相当し、アクセル操作部30はスロットル開度操作部に相当する。
【0046】
また、図3の上記制御装置35におけるフローチャートは、S1、S2、S3、S4、およびS7の第1の組み合わせであってもよく、また、S1、S3、S4、S5、およびS7の第2の組み合わせであってもよく、また、S1、S3、S5、S6、およびS7の第3の組み合わせであってもよく、これら各ステップを任意に組み合せたり、上記第1〜第3の組み合わせを並列に設けてもよい。この場合、上記第1の組み合わせにおける第2所定値V2と、第2の組み合わせにおける第2所定値V2とは値が異なっていてもよい。
【0047】
【発明の効果】
本発明による効果は、次の如くである。
【0048】
請求項1の発明は、車体に支承される前、後車輪と、上記車体に対し上下に回動自在となるよう枢支され下方に回動させられた状態での回動端部が走行面上に接地可能とされるメインスタンドと、上記車体に支持されて上記後車輪を走行駆動可能とさせる駆動装置と、上記駆動装置を制御する制御装置とを備え、下方に回動させられた状態での上記メインスタンドの回動端部と上記前車輪との接地で、上記車体が走行面上に自立可能となるようにした鞍乗型車両において、
【0049】
上記前車輪の回転速度が第1所定値以下であって、上記後車輪の回転速度が上記第1所定値よりも大きい値の第2所定値以上であれば、この後車輪の回転速度を上記制御装置により減速させるようにしてある。
【0050】
ここで、上記したように、前車輪の回転速度が第1所定値以下であって、上記後車輪の回転速度が上記第1所定値よりも大きい値の第2所定値以上である場合には、前車輪の回転速度は小さい値であるのに対し、上記後車輪の回転速度はかなり大きい値であることから、上記車体は、その前車輪とメインスタンドとにより走行面上に自立させられた自立状態にあると判断される。
【0051】
そこで、上記したように、後車輪の回転速度を減速させるようにしたのであり、このため、上記車体の自立状態から、上記メインスタンドの接地を解除させて遊転駆動中の後車輪を接地させることにより、この車両を直ちに発進させようとする発進操作をしようとするとき、上記したように、後車輪の回転速度は減速させられていて過高速が回避されていることから、上記駆動装置の駆動に伴う後車輪の回転速度がどの程度であるかをライダーが知らないまま、上記車両が無意図的に急発進するということは防止される。
【0052】
よって、上記した車両の発進操作において、上記衝撃力により上記駆動装置に対し無用に過大な衝撃力が与えられる、ということは防止され、これは上記駆動装置の減速機の寿命上好ましい。
【0053】
また、上記発明によれば、車体が自立状態にある、という判断をする上で、センサーは不要であるため、その分、上記した車両の急発進の防止は簡単な構成で達成される。
【0054】
請求項2の発明は、車体に支承される前、後車輪と、上記車体に対し上下に回動自在となるよう枢支され下方に回動させられた状態での回動端部が走行面上に接地可能とされるメインスタンドと、上記車体に支持されて上記後車輪を走行駆動可能とさせる駆動装置と、上記駆動装置を制御する制御装置とを備え、下方に回動させられた状態での上記メインスタンドの回動端部と上記前車輪との接地で、上記車体が走行面上に自立可能となるようにした鞍乗型車両において、
【0055】
上記メインスタンドが下方に回動させられた状態であり、かつ、上記後車輪の回転速度が所定値以上であれば、この後車輪の回転速度を上記制御装置により減速させるようにしてある。
【0056】
ここで、上記したように、メインスタンドが下方に回動させられた状態である場合には、車体は、その前車輪とメインスタンドとにより走行面上に自立させられた自立状態にあるということが、より正確に判断される。
【0057】
そこで、上記したように、後車輪の回転速度を減速させるようにしたのであり、このため、上記車体の自立状態から、上記メインスタンドの接地を解除させて遊転駆動中の後車輪を接地させることにより、この車両を直ちに発進させようとする発進操作をしようとするとき、上記したように、後車輪の回転速度は減速させられていて過高速が回避されていることから、上記駆動装置の駆動に伴う後車輪の回転速度がどの程度であるかをライダーが知らないまま、上記車両が無意図的に急発進するということは防止される。
【0058】
よって、上記した車両の発進操作において、上記衝撃力により上記駆動装置に対し無用に過大な衝撃力が与えられる、ということは防止され、これは上記駆動装置の減速機の寿命上好ましい。
【0059】
請求項3の発明は、車体に支承される前、後車輪と、上記車体に対し上下に回動自在となるよう枢支され下方に回動させられた状態での回動端部が走行面上に接地可能とされるメインスタンドと、外部からの操作力を入力しその被操作量に応じて上記駆動装置から上記後車輪に出力される駆動力を増減可能とさせるアクセル操作部と、上記車体に支持されて上記後車輪を走行駆動可能とさせる駆動装置と、上記駆動装置を制御する制御装置とを備え、下方に回動させられた状態での上記メインスタンドの回動端部と上記前車輪との接地で、上記車体が走行面上に自立可能となるようにした鞍乗型車両において、
【0060】
上記メインスタンドが下方に回動させられた状態であり、上記アクセル操作部の被操作量が所定値以上であれば、上記後車輪の回転速度を上記制御装置により減速させるようにしてある。
【0061】
この発明の効果は、前記請求項2の発明と同様であるが、次の効果も生じる。
【0062】
即ち、上記したように、アクセル操作部の被操作量が所定値以上であれば、仮にそのときの上記後車輪の回転速度の値は過大でないとしても、近い将来に過大になるおそれがあるのであり、このような場合を含めて、上記後車輪の回転速度を減速させるようにしたことから、上記車両の無意図的な急発進はより確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】車両の全体側面図である。
【図2】車両における電気配線図である。
【図3】制御装置のフローチャート図である。
【符号の説明】
1 車両
2 車体
3 車体フレーム
4 フロントフォーク
5 前車輪
10 後車輪
11 走行面
14 ライダー
20 メインスタンド
21 枢支軸
22 ばね
25 駆動装置
26 電動機
30 アクセル操作部
35 制御装置
36 メータ
50 前車輪回転速度センサー
51 後車輪回転速度センサー
54 メインスタンドセンサー
55 アクセル操作部センサー
VF 回転速度
VR 回転速度
V1 第1所定値
V2 第2所定値
Claims (3)
- 車体に支承される前、後車輪と、上記車体に対し上下に回動自在となるよう枢支され下方に回動させられた状態での回動端部が走行面上に接地可能とされるメインスタンドと、上記車体に支持されて上記後車輪を走行駆動可能とさせる駆動装置と、上記駆動装置を制御する制御装置とを備え、下方に回動させられた状態での上記メインスタンドの回動端部と上記前車輪との接地で、上記車体が走行面上に自立可能となるようにした鞍乗型車両において、
上記前車輪の回転速度が第1所定値以下であって、上記後車輪の回転速度が上記第1所定値よりも大きい値の第2所定値以上であれば、この後車輪の回転速度を上記制御装置により減速させるようにした鞍乗型車両における急発進防止装置。 - 車体に支承される前、後車輪と、上記車体に対し上下に回動自在となるよう枢支され下方に回動させられた状態での回動端部が走行面上に接地可能とされるメインスタンドと、上記車体に支持されて上記後車輪を走行駆動可能とさせる駆動装置と、上記駆動装置を制御する制御装置とを備え、下方に回動させられた状態での上記メインスタンドの回動端部と上記前車輪との接地で、上記車体が走行面上に自立可能となるようにした鞍乗型車両において、
上記メインスタンドが下方に回動させられた状態であり、かつ、上記後車輪の回転速度が所定値以上であれば、この後車輪の回転速度を上記制御装置により減速させるようにした鞍乗型車両における急発進防止装置。 - 車体に支承される前、後車輪と、上記車体に対し上下に回動自在となるよう枢支され下方に回動させられた状態での回動端部が走行面上に接地可能とされるメインスタンドと、外部からの操作力を入力しその被操作量に応じて上記駆動装置から上記後車輪に出力される駆動力を増減可能とさせるアクセル操作部と、上記車体に支持されて上記後車輪を走行駆動可能とさせる駆動装置と、上記駆動装置を制御する制御装置とを備え、下方に回動させられた状態での上記メインスタンドの回動端部と上記前車輪との接地で、上記車体が走行面上に自立可能となるようにした鞍乗型車両において、
上記メインスタンドが下方に回動させられた状態であり、上記アクセル操作部の被操作量が所定値以上であれば、上記後車輪の回転速度を上記制御装置により減速させるようにした鞍乗型車両における急発進防止装置。
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