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JP3888320B2 - 紡績機 - Google Patents

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JP3888320B2
JP3888320B2 JP2003072680A JP2003072680A JP3888320B2 JP 3888320 B2 JP3888320 B2 JP 3888320B2 JP 2003072680 A JP2003072680 A JP 2003072680A JP 2003072680 A JP2003072680 A JP 2003072680A JP 3888320 B2 JP3888320 B2 JP 3888320B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、弛み取りローラを備える紡績機に関し、弛み取りローラの回転動作を適切にすることを目的とする。
【0002】
【従来の技術】
スライバ(繊維束)を原料として紡績糸を生成し、所定のパッケージに巻き取る紡績機(例えば空気式紡績機など)にあっては、糸欠陥を検出したならば、糸欠陥箇所をカッターで切断し除去した後、紡績装置から次々に送られてくる糸の先端とパッケージ側の糸端とを、糸継ぎ装置で糸継ぎするようになっている。糸継ぎ作業は糸の巻取を停止した状態で行うから、紡績装置から次々に送給される糸の弛みを取り除くため、例えば特許文献1に記載されるような、スラックチューブと呼ばれる吸引管で余剰の糸を吸引する手段を採用する場合もある。しかるに、近年の紡績速度の高速化による糸弛み量の増大に伴い、前記吸引管方式では増量した糸の弛み取りに対応するのが困難になりつつある。しかも吸引管方式には、負圧による吸引空気のみによる引っ張りのため、糸弛み取り時に糸に十分な張力を与えるのが難しいという問題がある。
【0003】
そこで吸引管方式に代わる手段として、特許文献2に記載されるような、紡績装置から送給される糸を、貯蔵ローラ(弛み取りローラ)に一時的に巻き付けることによって糸弛みを解消するローラ式糸貯蔵装置(糸弛み取り装置)が提案されている。この糸貯蔵装置は、紡績機に沿って走行可能な保守装置(作業台車)に、糸結合装置(糸継ぎ装置)と共に積載されている。また、上記糸貯蔵装置には、貯蔵ローラと共に、糸戻しリングからなる戻し素子が設けられている。この戻し素子は、糸継ぎ時に糸を貯蔵ローラに巻き付かせる際に糸の導入を案内し、パッケージへの巻取再開後、糸を貯蔵ローラから解舒する際には、ある程度の解舒張力を付与しつつ糸を巻取パッケージへ案内する機能を有するものである。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−159039号公報
【特許文献2】
特公平4−13272号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献2に記載の技術において、貯蔵ローラによる糸の弛み取り作業中に、貯蔵ローラから解舒されパッケージに巻き取られる糸の張力を適切にするためには、紡績装置から紡出される糸の送り速度(紡出速度)と、巻取装置の巻取速度とに対し、貯蔵ローラの回転速度を適切に設定する必要があるが、特許文献2には、この点に関して全く開示するところがなかった。それ故、紡出速度に対し弛み取りローラの回転速度が速すぎると、紡績装置から弛み取りローラまでの区間で張り切れが生じたり、逆に弛み取りローラの回転速度が遅すぎると、上記区間で糸の弛みが発生してしまう問題があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記従来技術の問題点を解決できる手段を提供するものであって、その特徴とするところは、繊維束から糸を生成し紡出する紡績装置と、紡出された糸をパッケージに巻き取る巻取装置と、上記紡績装置と巻取装置との間の糸を巻き取って巻取張力変動を吸収する弛み取りローラを有する糸弛み取り装置とを備える紡績機において、紡出速度の値、及び、紡出速度と弛み取りローラの回転速度との関係を予め設定する入力部と、該入力部への入力値に基づき、弛み取りローラの回転速度を演算する演算部を設け、紡出速度に対する弛み取りローラにおける糸の巻取速度の比率を0.98〜1.02の範囲内となるように設定したことである。かかる構成によれば、紡出速度の入力値から所定の関係に基づき弛み取りローラの回転速度を適切に制御するから、紡績装置と糸弛み取り装置との間で、糸の張り切れや弛みが発生するのを防止できる。
【0007】
前記紡績機において、紡績装置の直ぐ下流側に糸送り装置を設け、紡出速度の設定に基づき、糸送り装置の糸送り速度が設定されるようにした場合は、紡出速度の入力によって、紡出速度の実質値である糸送り装置の糸送り速度が決定されるので、これと弛み取りローラの回転速度との関係を適切に設定することで、前記糸の張り切れや糸弛みの発生防止を確実に出来る。
【0008】
なお弛み取りローラの回転軸を、回転駆動手段の駆動軸に固定することによって、モータ等回転駆動手段の回転状態が、弛み取りローラへ直接に伝達されるから、演算部等から出力される回転制御指令を弛み取りローラに忠実に反映させることが可能である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る紡績機の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本明細書において「上流・下流」とは、紡績時における糸の走行方向を基準として上流・下流を指し、具体的には、紡績装置側を上流、巻取装置側を下流とする。
【0010】
図1は本発明が適用される紡績機1の一例を示す正面図、図2は同紡績機1における一部分の内部構造を概略的に示す拡大図である。例えば空気紡績機等から成る紡績機1は、制御部1A、多数の紡績ユニット2が並設された紡績部1B、ブロアー部1C、及び、糸継ぎ装置を備え紡績ユニット2間をレールRに沿って走行自在になされた作業台車3を主要構成部材としている。
【0011】
制御部1Aは、紡績部1Bを構成する全部の紡績ユニット2に共通して駆動力を与える駆動シャフト41・42・43の駆動用モータ31・32・33、紡績ユニット2ごとに設けられているモータ34・35、及び、巻取装置12等の動作を制御するものである。本実施形態では、入力部aに入力される各種設定値(紡出速度、紡出速度と巻取ローラ速度との比率など)に基づき、演算部bがモータ31〜34に対し、インバータc又はドライバ基板30を介して、紡出速度情報を出力する。また糸弛み取り装置10のモータ35に対し、ドライバ基板40を介して、弛み取りローラ(後述)の回転速度情報を出力するようになされている。
【0012】
紡績部1Bは、多数の紡績ユニット2が並設されたものであって、各紡績ユニット2はそれぞれ独立に制御できるように構成されている。また本発明に係る紡績機1は、紡績装置5及び巻取装置12と共に、糸弛み取り装置10が、紡績ユニット2ごとに備えられている点に特徴を有している。なお、紡績ユニット2の構造の詳細については、後ほど説明する。
【0013】
ブロアー部1Cは、紡績ユニット2に対し、エアーダクトを通じて、所要箇所に負圧(吸引圧)を付与する負圧供給手段を収納するものであって、糸吸引装置7等に負圧を作用させる。
【0014】
作業台車3は、糸継ぎを必要とする任意の紡績ユニット2から発信される糸継ぎ要求信号に基づき、レールR上を走行して該当する紡績ユニット2位置へ移動し停止できるようになっているものであって、紡績部1B部分の構成を概略的に表した側面断面図である図3に示す如く、ノッターやスプライサー等の糸継ぎ装置17、紡績装置5で形成された糸の端部を吸引して糸継ぎ装置17へ導くサクションパイプ18、巻取装置12に支持されたパッケージ16の糸端を吸引して糸継ぎ装置17へ導くサクションマウス19、必要時に糸Yに接触して(図12参照)糸張力を付与するテンションアーム20を備えている。
【0015】
なお、各紡績ユニット2ごとに、糸継ぎ装置17、サクションパイプ18、サクションマウス19を設ける例も考えられるが、紡績ユニット2の並設方向に沿って走行する作業台車3に、糸継ぎ装置17、サクションパイプ18及びサクションマウス19を積載することで、これら一組だけで全部の紡績ユニット2に対する糸継ぎ作業を行うことができるから、紡績機1の構造を簡単にすることができる。
【0016】
前記作業台車3に備えられている糸継ぎ用のサクションパイプ18は、紡績側糸端の吸引部材として機能するものであって、先端に吸引口18aを備えると共に、枢支部18bを中心に回動自在になされている。糸継ぎ作業の際には、図6中に二点鎖線で示す如く上方へ回動して、吸引口18aを紡績装置5の糸排出口付近に位置させ、紡出されてくる糸Yの糸端を吸引したのち、吸引状態のまま同図に実線で示す初期位置まで下方へ回動することにより、紡績側の糸Y1を糸継ぎ装置17へ導く。他方、サクションマウス19は、巻取り側糸端の吸引部材として機能するものであって、先端に吸引口19aを備えると共に、枢支部19bを中心に回動自在に成されている。そして糸継ぎ作業の際には、パッケージ16を回転停止させた後、このパッケージ16を通常とは逆方向に回転させ、糸端を下方へ回動させたサクションマウス19先端の吸引口19aで吸引・捕捉して糸出しを行ったのち、吸引状態のまま同図中に実線で示す初期位置まで上方へ回動することにより、パッケージ16側の糸Y2を糸継ぎ装置17へ導く。
【0017】
次に、前記紡績部1Bに複数配設される紡績ユニット2について説明する。紡績ユニット2は原料の繊維束Sから糸Yを製造する一つの単位であって、図3に示すように、糸道Eの上流側から下流側に沿って順に配置された、ドラフト装置4、紡績装置5、糸送り装置6、糸吸引装置7、カッター8、糸欠陥検出器9、糸弛み取り装置10、ワキシング装置11、巻取装置12から構成されている。
【0018】
ドラフト装置4は、例えば、上流側からバックローラ4a・サードローラ4b・エプロン4cが張設されたセカンドローラ4d・フロントローラ4eからなる4線式のものが適用される。紡績装置5は、例えば、旋回気流を利用して繊維束Sから紡績糸Y(以下、単に「糸Y」と言う。)を生成する空気式のもので、紡出速度が数百m/分の高速紡績が可能なものが採用される。そのほか紡績装置5は、空気紡績ノズルと加撚ローラ対とにより糸Yを生成するものや、ロータ回転により糸Yを生成するオープンエンド紡績機など、他の構造のものに置換することが可能である。糸送り装置6は、ニップローラ6aとデリベリローラ6bとから成り、両ローラ6a,6b間に糸Yを挟持して下流側へ送給するものである。糸吸引装置7は、常時、吸引状態にあり、糸欠陥検出器9が糸Yの欠陥を検出したときにカッター8が切断した糸Yの断片を吸引除去する。
【0019】
巻取装置12は、クレードルアーム14に保持したボビン15に糸Yを巻き付けてパッケージ16を形成するためのものであって、ボビン15又はパッケージ16に接触して回転する回転ドラム13を備えており、クレードルアーム14は、回転ドラム13に対し、ボビン15又はパッケージ16を離接させることができるよう回動可能に構成されている。
【0020】
各紡績ユニット2に設けられる糸弛み取り装置10は、図3乃至5に示すように、弛み糸Yを外周面21a(図17参照)に巻き付け貯留する弛み取りローラ21と、条件に応じて弛み取りローラ21と同期して又は独立に同心回転する解舒張力付与部材22と、弛み取りローラ21のやや上流側に配置される上流側ガイド23と、弛み取りローラ21を回転駆動するステッピングモータ等の駆動手段35と、該駆動手段35を制御するドライバ基板40(図2参照)と、弛み取りローラ21の下流位置に設けられスリット36aを有する下流側ガイド36とを備えており、これらは、ブラケット37などによって紡績ユニット2に固定されている。
【0021】
弛み取りローラ21は、図16〜18に示すように、駆動手段35の駆動軸35aに固着され該駆動軸35aと一体的に回転する。従って、演算部bにより設定される回転速度に忠実に従った弛み取りローラ21の回転制御が可能となっている。また、解舒張力付与部材22を有する側を先端P、駆動手段35に接続される側を基端Qとすると、外周面21aには、基端Q側及び先端P側それぞれに端面へ向かって拡径するテーパ部21b、21dが形成され、これらの中間部は同一径の円筒部21cとなっている。そして糸継ぎ時に、紡績装置5から紡出されてくる糸Yを基端Q側から外周面21aに巻き付け、しかるのち先端P側から巻取装置12側へ向かって解舒するようになされている(図9〜11参照)。基端Q側のテーパ部21bは、供給され巻き付いた糸Yを、大径部分21b−1から小径部分21b−2へ円滑に移動させて中間の円筒部21cへ到達させることにより、糸Yを円筒部21c表面に規則正しく巻き付かせる機能を有する。また先端P側のテーパ部21dは、解舒の際に、巻き付かせた糸Yが一度に抜け出る輪抜け現象を抑止すると同時に、糸Yを小径部分21d−2から大径部分21d−1へ順送りに巻き付け糸層を送り出して、糸Yの円滑な引き出しを確保する機能を有している。
【0022】
弛み取りローラ21の先端P側に設けられる解舒張力付与部材22は、図18に示す如く、フライヤー22aを伝達力調節機構によりローラ21に対し同心回転可能に取り付けて成るものであって、上記伝達力調節機構の構成は次の如くである。すなわち、ローラ21の中央部に突設した軸部21eに、ベアリング等の軸受部材22cを介してホイール部材22bを回転自在に装着し、このホイール部材22bにフライヤー22aの基部を取着する。そして、このホイール部材22bを、上記軸部21e先端のボルト部分に螺合させた例えばナット部材22dや押さえ部材22e等から成る伝達力調整操作部22gで、例えばバネ等の付勢手段から成る伝達力付与部材22fを抜け止めすることにより、取り付けている。従って本実施形態の伝達力調節機構は、軸部21eに螺合する伝達力調整操作部22gの締め付け操作により、伝達力付与部材22fの押圧力(摩擦力)を無段階に調整可能としている。
【0023】
本実施例の伝達力調節機構は、軸部21eに螺合するナット部材22d等の伝達力調整操作部22gの締め付け操作により、伝達力付与部材22fの押圧力(摩擦力)を無段階に調整可能としているが、これに限らず、軸部21eに代えて、長手方向の所定間隔ごとに押さえ部材22eを段階的に位置決めする位置規制部を施した軸部を設け、該軸部に対する押さえ部材22eの装着位置を段階的に変更可能とするものでもよい。また、軸部の長手方向での長さが異なる押さえ部材22eを複数種用意し、軸部に取着する押さえ部材22eを条件によって適宜取り替え可能とするものであってもよい。さらに、これら摩擦式調整機構以外にも、非接触式調節機構として、例えば、電磁石を用いた電磁クラッチ方式とし、磁石の磁気的吸引力を変更することにより、伝達力の大きさを調整し得るものも考えられる。
【0024】
なお本実施形態のように、上記伝達力調節機構を弛み取りローラ21と解舒張力付与部材22との接続部分に設け、伝達力調整操作部22gを、弛み取りローラ21の先端P側に露出させるよう構成することにより、作業者による伝達力調整作業が容易に行える。また伝達力調節機構が、円滑な糸解舒の障害とならないようにするため、弛み取りローラ21から解舒される糸Yの軌跡が形成する面と伝達力調節機構とが干渉しないよう構成することが望ましい。本実施形態では図示するように、軸部21eの先端を、ローラ先端Pよりもローラ21の奥側へ入り込む構造としたので、弛み取りローラ21から解舒される糸Yの糸道に軸部21eや伝達力調整操作部22gが干渉することが全くなく、円滑な糸解舒を妨げるおそれがない。
【0025】
前記伝達力調節機構は、フライヤー22aの弛み取りローラ21に対する回転抵抗の大きさを調節可能にするものである。すなわち、上記押さえ部材22eの締め付け度合いを弱くすれば、ホイール部材22bに対する伝達力付与部材22fの押圧力(あるいは摩擦力)が弱まるようになっており、わずかな負荷を与えるだけでフライヤー22aがスリップし、弛み取りローラ21の回転とは独立に回動することができるようになる。反対に、上記押さえ部材22eの締め付け度合いを強くすれば、ホイール部材22bに対する伝達力付与部材22fの押圧力が強まるようになっており、フライヤー22aは非常に大きな負荷が作用しない限りスリップせず、弛み取りローラ21に従動して一体に回転する。
【0026】
従って、本実施形態の解舒張力付与部材22は、押さえ部材22eの締め付け度合いを適当に調節することで、弛み取りローラ21とは独立に回転し得るフライヤー22aの挙動を、弛み取りローラ21から解舒される糸Yの張力に関連させて調節することが可能である。すなわち、糸種や番手等の紡績条件によって異なる弛み取りローラ21からの糸Yの解舒張力を、上記伝達力調節機構により予め調節可能である。フライヤー22aの挙動は、伝達力付与部材22fを介して弛み取りローラ21から伝達される回転力と、弛み取りローラ21から解舒する糸Yの張力との相互作用で決まる。逆に言えば、上記伝達力調節機構によりフライヤー22aの挙動をあらかじめ調節しておけば、フライヤー22aが弛み取りローラ21から解舒される糸Yに与える抵抗力の大きさを前もって設定できることになる。すなわち、上記伝達力調節機構は、フライヤー22aが糸Yに付与する解舒張力の調節機構として機能する。
【0027】
本実施形態のフライヤー22aは、糸Yを弛み取りローラ21の外周面21aに確実に巻き付かせるため、以下に述べるような特徴的な形状を採用している。すなわち、フライヤー22aは、ホイール部材22bに取着される基部から、弛み取りローラ21の先端Pよりもわずかに基端Qとは回転方向と反対の半径方向外方へ突出する位置まで伸び、さらに内方から順にm,l,kの3箇所で屈曲して、先端部jが弛み取りローラ21の半径よりも外方に位置するよう設定されている。上記3箇所の屈曲箇所のうち、2箇所の屈曲箇所k,lはローラ半径外に在り、1箇所の屈曲箇所mはローラ21における大径部分21d−1の半径内に位置している。そして内方の屈曲箇所mにおいて、フライヤー22aは弛み取りローラ21の糸巻き付け時の回転方向とは反対の半径方向外方へ折れ曲がり、次の屈曲箇所lにおいて弛み取りローラ21の基端Q側へ折れ曲がり、最後に外方の屈曲箇所kにおいて弛み取りローラ21の回転方向へ折れ曲がるよう形成されている。従ってフライヤー22aには、先端部j・屈曲箇所k・屈曲箇所lによって、弛み取りローラ21の回転方向外方に向かって開く角度を有する糸係合部Rが形成され、この糸係合部Rは、弛み取りローラ21の先端Pと基端Qとの間において、ローラ外周面21aに対して所定距離を保ちつつ、外周面21aに対向することとなる。かかる形態のフライヤー22aは、弛み取り時に係合した糸Yを、弛み取りローラ21と共に回転することによって、弛み取りローラ外周面21a上の所定位置へ安定して巻き付かせるうえで好ましい形状となっている。更に、弛み取りローラ21とフライヤー22aとの間の隙間に糸Yがはまり込むのを確実に防止する、という作用を営む。
【0028】
作業台車3には、上流側ガイド23を進退駆動するためのエアーシリンダ等から成る進退手段24と、これを制御するための制御手段(図示せず)とが設けられている。すなわち、上流側ガイド23は糸移動手段、進退手段24はその駆動手段となっている。エアーシリンダ等の進退手段24により前進・後退駆動される上流側ガイド23は、前進位置(図4,5参照)にあるとき、糸Yが糸弛み取り装置10とは係合することのない位置に糸道を保持し、後退位置(図7,8参照)にあるときは、糸Yが糸弛み取り装置10のフライヤー22aと係合して弛み取りローラ21に巻き取られる位置まで、糸道を移動させるように設定されている。なおフライヤー22aは、後退位置の上流側ガイド23と下流側ガイド36とを最短距離で結ぶ糸道上で、糸Yと係合し得るように配置されている。すなわち、弛み取りローラ21と共に回転するフライヤー22aの回転面が、上記糸道と交叉するように設定される。
【0029】
前述の如く構成された紡績機1の運転状況を次に説明する。作業台車3が停止していない状態の紡績ユニット2で通常の運転を行っている時、図8に示す如く、糸弛み取り装置10の上流側ガイド23は、図示しないバネ等の引っ張り部材により強制的に引っ張られて後退位置に在る。通常紡績時(巻取時)において糸Yを弛み取りローラ21に巻き取らない状態のとき、この時点では、当該紡績ユニット2から糸継ぎ要求信号が出されておらず、その場合、ドライバ基板40を介して駆動用モータ35には回転指令が出力されないよう設定されている。しかも、後述する制御により、フライヤー22aは糸道とは接触することのない離間位置に停止される(図8の二点鎖線及び図15(C)(D)参照)。さらに例え弛み取りローラ21が回転しており糸Yが糸弛み取り装置10と係合し得る糸道を走行したとしても、糸Yには一定以上の張力が作用しているため、これらにより糸Yが弛み取りローラ21に巻き付けられるおそれはない。紡績機1の各紡績ユニット2は、繊維束Sをドラフト装置4で紡績装置5へ送り込み、紡績装置5において紡績され生成された糸Yを、糸送り装置6で下流側へ送給し、糸吸引装置7及び糸欠陥検出器9の直前を通過させたのち、上流側ガイド23・下流側ガイド36・ワキシング装置11を経て、巻取装置12へ送り出し、該巻取装置12で糸Yをボビン15に巻き取り、パッケージ16を形成する。
【0030】
いずれかの紡績ユニット2の糸欠陥検出器9が糸Yにスラブ等の欠陥を検出すると、当該紡績ユニット2において、カッター8が糸Yを切断すると同時に、ドラフト装置4のバックローラ4aとサードローラ4bとが回転を停止させ、巻取装置12についてはクレードルアーム14が回動して、パッケージ16を回転ドラム13から離反させる(図6参照)。しかるのちパッケージ16は回転を自然停止させるか、または、状況により強制停止させる。なお、セカンドローラ4dとフロントローラ4eについては、回転駆動が持続している。
【0031】
カッター8により切断された糸Yの巻取装置12側の部分Y2は、惰性で回転を続けるパッケージ16に巻き取られる。他方、紡績装置5側部分の糸Y1については、ドラフト装置4のバックローラ4aとサードローラ4bとが回転を停止することにより、停止させたサードローラ4bと回転を続行しているセカンドローラ4dとの間で繊維束Sが引っ張られ切断される。この切断位置から前記カッター8位置までの糸断片は、回転を続行しているセカンドローラ4d及びフロントローラ4eにより送り出され、紡績装置5を経て、糸吸引装置7により吸引除去される。
【0032】
紡績ユニット2が前記動作を行う間に出力される糸継ぎ要求信号に基づき、作業台車3が走行して糸継ぎを必要とする紡績ユニット2の位置へ移動する。作業台車3が所定位置に到着すると、まず図4に示すように、作業台車3の進退手段24により、上流側ガイド23が前進位置へ移動させられ、糸道が糸弛み取り装置10と係合するおそれのない位置へ変更させられる。次に、出力される到着検知信号に基づき、該当紡績ユニット2は、ドライバ基板40を介して駆動用モータ35に回転指令を出力し、適宜のタイミングで糸弛み取り装置10の弛み取りローラ21の回転を開始させる。
【0033】
引き続き、作業台車3により以下の糸継ぎ作業が実行される。図6に二点鎖線で示す如く、サクションパイプ18を上方へ回動させて、紡績装置5の糸排出口付近に吸引口18aを位置させる。これに合わせて、紡績ユニット2が、停止させていたバックローラ4aとサードローラ4bを再起動させてドラフト装置4を駆動状態とし、繊維束Sを紡績装置5へ送り込んで紡績を再開する。サクションパイプ18は、紡績装置5から連続的に紡出される糸Y1の糸端を吸引捕捉した後、同図に実線で示す初期位置まで下方へ回動し、糸Y1を糸継ぎ装置17へ導く。また、糸Y1の糸送り装置6内への導入は、ニップローラ6aの側方からなされる。サクションパイプ18は、後続の糸継ぎ作業が開始されるまで、紡績装置5から生成され送り出される糸Y1を連続的に吸引する。
【0034】
上記サクションパイプ18の回動と同時に(又は多少の時間前後して)、サクションマウス19を、図6に二点鎖線で示す位置まで下方へ回動させ、先端の吸引口19aで、通常の巻取時とは逆方向に回転しているパッケージ16から糸Y2の糸端を吸引・捕捉し糸の引き出しを行う。次いで吸引状態を維持したまま、サクションマウス19を同図に実線で示す初期位置まで上方へ回動させ、巻取装置12側の糸Y2を糸継ぎ装置17付近へ配置する。
【0035】
引き続き、糸継ぎ装置17による糸継ぎ作業が開始される。前述のようにして紡績装置5側の糸Y1及び巻取装置12側の糸Y2が糸継ぎ装置17の近傍に配置されたならば、糸継ぎ装置17に備えられる糸寄せレバー(図示略)が、両糸Y1,Y2をクランプして糸継ぎ装置17の作業実行部内へ取り込み、糸継ぎ作業を実行する。この糸継ぎ作業の開始前、依然として糸弛み取り装置10の上流側ガイド23は前進位置にあって、糸道を解舒張力付与部材22と係合することのない位置に保持している。
【0036】
糸継ぎ装置17が糸Y1,Y2をクランプすると、サクションパイプ18による糸Y1の吸引・回収ができなくなるため、そのままでは糸継ぎ装置17の上流側に紡績装置5から送り出される糸Y1が溜まることとなる。そこで、糸継ぎ作業の開始直前、具体的には糸寄せレバーによる糸Y1,Y2のクランプ直前に、進退手段24を作動させて再び上流側ガイド23を図7,8に示す如く後退させる。糸Y1が解舒張力付与部材22のフライヤー22aと係合し得る位置に糸道を変更する。これにより、弛み取りローラ21と共に回転するフライヤー22aが、図9,10,11に示すように、紡績装置5から送給される糸Y1を捕捉して弛み取りローラ21の巻き付け面としての円筒部21cに導入して巻き付かせるので、糸継ぎ作業中に紡績装置5と糸継ぎ装置17との間で生じ得る糸Y1の弛みを解消することができる。
【0037】
前述したようにフライヤー22aは、弛み取りローラ21とは独立に回転可能であるが、前記伝達力調節機構による伝達力調節により、一定値以上の負荷が作用しない限り、弛み取りローラ21と一体に回転する。糸弛み取り作業時は、下流側(巻取側)の巻取速度がほぼゼロの低い状態であり、フライヤー22aにかかる負荷は小さいから、フライヤー22aは弛み取りローラ21と一体回転する。
【0038】
なお、フライヤー22aの形態を前記の如く形成したことにより、糸Yとの係合が確実になると共に、巻取中にローラ21とフライヤー22aとの隙間に糸Yが嵌り込むこともなくなる。また、上流側ガイド23の後退は、糸道の経路長さを短縮して(前記最短距離にして)糸張力を減少させる方向の動作であるから、糸Y1がフライヤー22aと係合する際の糸張力上昇が緩和され、糸切れの発生が防止される。特許文献2に開示されるのは、糸掛けガイドの回動によって糸を屈曲させ、ローラ中心へ向けて押し込む構成であり、糸の張り切れを生じさせ易いものであった。これに対し本発明は、特許文献2のような糸屈曲による引っ張りがないから、糸の張り切れを生じさせるおそれがない。
【0039】
弛み取りローラ21の回転速度は、紡績装置5における糸Yの紡出速度(実質的には糸送り装置6の糸送り速度)と、入力部aに入力される巻取速度の入力値情報とに基づき、演算部bが演算し、糸張力が適切になるよう設定される。これは例えば、上記紡出速度に対する弛み取りローラ21における糸の巻取速度の比率が、約0.98〜1.02倍の範囲内となるように設定することが望ましい。
【0040】
また、上流側ガイド23の後退位置への移動時期は、糸Y1の紡出速度を勘案して決定され、糸継ぎ装置17による糸Y1,Y2のクランプ時を基準として、これよりわずかに前に設定される。移動時期が遅れると、紡績装置5から次々に紡出されてくる糸Y1に弛みが生じ、弛み取りローラ21が糸Y1の捕捉を失敗する可能性がある。反対に、糸Y1,Y2のクランプ時よりも過度に早いと、糸継ぎ装置17に配置されている糸Y1が弛み取りローラ21に巻き取られて糸継ぎが失敗したり、例え糸継ぎ装置17での糸継ぎが成功したとしても、弛み取りローラ21に巻き付く糸量が過剰になって弛み取りローラ21が巻き取れる貯留許容量を超えれば、弛み取りローラ21上での糸の重なり状態が異常になることにより糸Yの解舒が円滑に進行せず、糸切れを起こす等、糸継ぎ作業が不完全になる可能性がある。
【0041】
糸継ぎ装置17による糸継ぎが終了したならば、クレードルアーム14を復帰方向へ回動させてパッケージ16を回転ドラム13に接触させ、糸Yの巻取作業を再開させる。但し、糸継ぎ完了直後の糸弛み取り装置10から巻取装置12に至るまでの糸Yは張力が低い状態であるから、パッケージ16を回転ドラム13へ急に接触させると、糸張力の急激な変動が生じて、糸Yの張り切れを招くおそれがある。そこで本実施形態では上記問題に対処するため、図12に示すように、糸Yに対し張力を付与する進退可能なテンションアーム20と、クレードルアーム14の回動速度を調整するための復帰速度制限機構26とを設けた。テンションアーム20は、例えば図示するようなレバー構造であって、パッケージ16の回転ドラム13への接触完了直前に、糸Yに干渉して屈曲させ糸張力を予め増大させておくことにより、巻取再開時における糸張力の変動幅を小さく抑えるためのものである。速度制限機構26は、例えば図示しない駆動源により回転可能なカム26aやリンク26bなどを利用して構成され、クレードルアーム14に設けた接続部26cに連結して、パッケージ16が回転ドラム13に接触する直前のクレードルアーム14の回動速度を制限するようになされている。
【0042】
前記テンションアーム20とクレードルアーム14とは、例えば図13のタイムチャートの如き動作を行う。すなわち、テンションアーム20と、接続部26c及びクレードルアーム14とは、速度制限機構26のカム26aの回転駆動によりリンク26bを介して共通して駆動されることにより、互いに適切なタイミングで動作するよう設定されている。糸継ぎ完了後(時間T0)、まずクレードルアーム14が復帰方向への回動を開始する(時間T1)。速度制限機構26は、クレードルアーム14の回動速度(=角速度)が所定値(ω)を越えないように制御する。そして、パッケージ16が回転ドラム13表面のごく近傍に達したならば、クレードルアーム14の角速度を一定値まで減少させ(時間T2)、パッケージ16の回転ドラム13に対する接触が完了する(時間T4)まで、この小さい角速度を維持する。なお、上記の小さい角速度でのクレードルアーム14の駆動を、滑り接触駆動と称する。かかる角速度制御により、パッケージ16は回転ドラム13の表面に対し滑り接触するようになるから、接触時における張力急上昇を緩和することができる。
【0043】
他方、テンションアーム20は、クレードルアーム14の上記滑り接触駆動を開始(時間T2)した後であって、パッケージ16が回転ドラム13に滑り接触する(時間T4)前に前進させ(時間T3)、糸Yに張力を付与する。糸継ぎ終了直後の糸Yは低張力であり、パッケージ16と回転ドラム13とが接触して正規の巻取作業が再開されるときに、糸張力が急激に増大する。従って本実施形態の如く、パッケージ16の回転ドラム13に対する接触前、糸張力を急上昇させないように、テンションアーム20であらかじめ糸張力を若干増加させておくことにより、正規の巻取作業再開時における糸張力の変動幅を小さく抑えて、糸の張り切れを防止することができる。しかるのち第2段階として、上記滑り接触させ、さらに糸張力の変動幅を小さく抑え、パッケージ16が回転ドラム13に完全に接触して正規の巻取作業が再開されたならば、テンションアーム20を後退させて糸Yから引き離す。(時間T5)
【0044】
糸継ぎ作業が終了し巻取作業が再開されたならば、作業台車3は、糸Yとの係合関係が無くなるので、糸継ぎ作業を行った紡績ユニット2から自由に移動することが可能となる。それ故、別の紡績ユニットから糸継ぎ要求信号が出力されたときに、巻取作業の再開後、弛み取りローラ21からの糸解舒を待つことなく、直ちに目的の紡績ユニット位置へ移動することができる。従って、本発明の紡績機1は、糸継ぎ作業のために、作業台車3が一つの紡績ユニット2に留まる必要時間が短くて済むから、従来よりも速く他の糸継ぎ要求ユニットへ作業台車3を移動させることができると共に、他の糸継ぎ要求ユニットが紡績停止している時間を短くでき、結果として、稼働効率を向上させることができる。
【0045】
前述した糸継ぎ作業から、巻取作業再開までの間、紡績装置5で生成され送り出される糸Yは、回転を継続している弛み取りローラ21に巻き取られる。しかし、巻取作業が再開されると、紡出速度に対する巻取速度の比は糸に適度の張力を付与するように設定されているため、糸弛み取り装置10と巻取装置12との間の巻取速度が一定値よりも増大して、巻取装置12への引っ張り力を糸Yに付与しようとする。その結果、前記伝達力調節機構で設定される値に基づき、糸弛み取り装置10と巻取装置12との間の糸張力によりフライヤー22aに所定の大きさの負荷が作用しようとすると、フライヤー22aが巻取方向に回転を続けている弛み取りローラ21の伝達力に抗して独立した挙動を示すようになり、弛み取りローラ21に巻き取られて貯留している糸Yが、しだいに弛み取りローラ21から下流側ガイド36を経て引き出され解舒される。このとき解舒張力付与部材22のフライヤー22a及びローラ大径部21d−1は、糸Yの輪抜けを防止して、弛み取りローラ21から糸Yが平均的に巻き出されるように案内する。そしてフライヤー22aは、フライヤー22aが糸Yを解舒するために回転する回転方向とは逆に回転している弛み取りローラ21及び伝達力付与部材22fから回転力が伝達されることにより、弛み取りローラ21から解舒されようとする糸Yの巻取装置12への引っ張り力に抗した抵抗力を糸Yに作用させるため、糸Yに適度の張力を付与する。これにより、弛み取りローラ21から解舒される糸Yの解舒張力を正規の巻取張力に実質的に合致させ、パッケージ16の巻取状態を、正規の巻取中であっても弛み取り中であっても均一化する機能を有している。これら本発明の効果は、近年、紡出速度の高速化が進められているが、紡出速度が高速であるほど糸弛み量が増大する傾向にあるため、特に顕著に現れる。
【0046】
ここで下流側ガイド36は、図7、図18に示すように、弛み取りローラ21における軸部21eのローラ先端P側への延長線上、いわゆるアキシャル方向に位置させることが必要である。その理由は、もし仮に、弛み取りローラ21から糸Yを解舒する際、下流側ガイド36が軸部21eの延長線上からずれた位置にあると、糸Yが弛み取りローラ21から離脱する位置によって、当該離脱位置と下流側ガイド36との距離が変化し、解舒張力が変化するからである。さらに、下流側ガイド36の位置が極端に軸部21e延長線上からずれている場合、パッケージ16に巻き取られようとする糸Yを、弛み取りローラ21の回転力によって、逆に弛み取りローラ21に巻き付けようとする力が働いてしまうおそれがあるからである。
【0047】
本実施形態の解舒張力付与部材22は、前述のように、一つの部材が、糸継ぎ作業の開始直前に糸Y1を弛み取りローラ21へ導入する糸掛部材としての機能と、弛み取りローラ21に巻き付いた糸を解舒するにあたり、当該糸に所定の解舒張力を付与する解舒張力付与機能とを兼備している。依って、糸弛み取り装置10を構成する部品点数の削減を図れる、という効果がもたらされる。
【0048】
巻取作業が再開して弛み取りローラ21からの糸Yの解舒が終了すると、フライヤー22aは、弛み取りローラ21から受ける回転力と走行する糸の張力とが均衡することによって、図14及び図15(A)(B)に示す位置で糸Yと係合した状態に保持される。通常紡績時において、糸Yを弛み取りローラ21に巻き付けない状態では、そのまま放置すると、糸Yはフライヤー22aに接触しつつ走行してパッケージ16に巻き取られるから、フライヤー22aとの摩擦で糸品質ひいてはパッケージ16の品質に悪影響を及ぼすおそれがある。そこで本実施形態では、弛み取りローラ21から糸Yが巻き出されたならば、図8の二点鎖線、図15(C)(D)に示すように、弛み取りローラ21をほぼ180°逆回転させて、フライヤー22aを糸Yと接触しない離間位置へ位置転換させ、しかるのち弛み取りローラ21を当該離間位置に停止させるように設定した。これにより、糸Yの品質低下を回避することが可能である。
【0049】
弛み取りローラ21を逆回転させるタイミング調節は、例えばタイマー制御によることができる。すなわち、糸弛み取り装置10における糸弛み取り動作を開始してから、弛み取りローラ10の回転時間が所定時間に達したならば、自動的に弛み取りローラ21を逆転・停止させるように設定すればよい。あるいは、弛み取りローラ21の上流又は下流の適所に張力センサを配置して解舒中の糸張力を監視し、張力値が一定の条件に達したならば、糸Yが完全に弛み取りローラ21から解舒されたとみなして、弛み取りローラ21を逆転・停止させるように構成することも可能である。
【0050】
本発明の実施形態は以上説明した態様に限定されない。前記は、通常紡績時には、弛み取りローラ21に糸Yを巻き付けない仕様の紡績機に本発明を適用したものであるが、本発明は、通常紡績時においても巻取速度を適宜調整して弛みを生じさせ、弛み取りローラ21に糸Yを常時巻き付かせる仕様の紡績機を構成するのに利用することも可能である。そのような例としては、コーン巻きパッケージを形成する際に、大径側と小径側とで生じる巻取速度の差による巻取張力差を吸収するために弛み取りローラ21に糸Yを常時巻き付けるもの等が挙げられる。また、糸弛み取り装置10については、フライヤー22aが弛み取りローラ21に対し、所定値以上の力が作用すると独立回転するようにできればよいから、前記伝達力調節機構は必ずしも必要ではない。その他、本発明の具体的な構成や形状は、状況に応じ適宜変更することを妨げない。
【0051】
【発明の効果】
請求項1に係る本発明紡績機によれば、紡出速度と弛み取りローラの回転速度との関係を予め設定し、紡出速度の入力値に基づき、弛み取りローラの回転速度が自動的に決定されるので、紡績装置と糸弛み取り装置との間で糸の張り切れや糸弛みが発生するのを防止できる。
【0052】
また請求項2に記載する如く、紡績装置の直ぐ下流側に設けた糸送り装置の糸送り速度を、紡出速度の設定に基づき設定することにより、糸の張り切れや糸弛みの発生の防止がより確実である。
【0053】
なお弛み取りローラの回転軸を、回転駆動手段の駆動軸に固定する構成を採用した場合は、回転駆動手段の回転状態を弛み取りローラへ直接に伝達して、回転制御を弛み取りローラに忠実に反映させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る糸弛み取り装置を備えた紡績機の一実施形態を示す正面図である。
【図2】上記実施形態に関するものであって、要部の構造を概略的に示す正面断面図である。
【図3】上記実施形態に関するものであって、通常紡績時における紡績ユニットと作業台車の概略構成を示す側面図である。
【図4】上記実施形態に関するものであって、通常紡績時における糸弛み取り装置部分の概略構成を拡大して示す側面図である。
【図5】上記実施形態に関するものであって、通常紡績時における糸弛み取り装置部分の概略構成を拡大して示す正面図である。
【図6】上記実施形態に関するものであって、糸継ぎ作業の開始直前における紡績ユニットと作業台車の概略構成を示す側面図である。
【図7】上記実施形態に関するものであって、糸継ぎ作業開始時における紡績ユニットと作業台車の概略構成を示す側面図である。
【図8】上記実施形態に関するものであって、糸継ぎ作業開始時における糸弛み取り装置部分の概略構成を拡大して示す側面図である。
【図9】上記実施形態に関するものであって、糸継ぎ作業中における紡績ユニットと作業台車の概略構成を示す側面図である。
【図10】上記実施形態に関するものであって、糸継ぎ作業中における糸弛み取り装置部分の概略構成を拡大して示す側面図である。
【図11】上記実施形態に関するものであって、糸継ぎ作業開始時における糸弛み取り装置部分の概略構成を拡大して示す正面図である。
【図12】上記実施形態に関するものであって、糸継ぎ終了後、巻取作業の再開直前における紡績ユニットと作業台車の概略構成を示す側面図である。
【図13】上記実施形態に関するものであって、糸継ぎ終了後、巻取作業を再開させるまでにおけるテンションアームとクレードルアームの動作を示すタイムチャートである。
【図14】上記実施形態に関するものであって、巻取再開後の状態における紡績ユニットと作業台車の概略構成を示す側面図である。
【図15】上記実施形態に関するものであって、図(A)は巻取作業の再開後のローラから糸が解舒された直後における糸弛み取り装置の概略構成を拡大して示す側面図、図(B)は同状態の弛み取りローラを示す先端側から見た正面図、図(C)は上記(A)(B)の後であって、弛み取りローラを逆転させて糸との係合を回避した状態における糸弛み取り装置の概略構成を拡大して示す側面図、図(D)は同状態の弛み取りローラを示す先端側から見た正面図である。
【図16】上記実施形態に係る糸弛み取り装置に利用する弛み取りローラの一例を示す先端側から見た斜視図である。
【図17】上記実施形態に係る糸弛み取り装置に利用する弛み取りローラの一例を示すものであって、図(A)は先端側から見た正面図、図(B)は平面図である。
【図18】上記実施形態に係る糸弛み取り装置に利用する弛み取りローラの一例を示す側面断面図である。
【符号の説明】
1…紡績機 2…紡績ユニット 3…作業台車 5…紡績装置 10…糸弛み取り装置 12…巻取装置 13…回転ドラム 14…クレードルアーム 15…ボビン 16…パッケージ 17…糸継ぎ装置 18…サクションパイプ 19…サンションマウス 20…テンションアーム 21…弛み取りローラ 22…解舒張力付与部材 22a…フライヤー 23…上流側ガイド 24…進退手段 26…速度制限機構 35…駆動用モータ(糸弛み取り装置用) 36…下流側ガイド E…糸道 R…糸係合部 S…繊維束 Y…糸(紡績糸) Y1…紡績装置側の糸 Y2…巻取装置側の糸

Claims (3)

  1. 繊維束から糸を生成し紡出する紡績装置と、紡出された糸をパッケージに巻き取る巻取装置と、上記紡績装置と巻取装置との間の糸を巻き取って巻取張力変動を吸収する弛み取りローラを有する糸弛み取り装置とを備える紡績機において、紡出速度の値、及び、紡出速度と弛み取りローラの回転速度との関係を予め設定する入力部と、該入力部への入力値に基づき、弛み取りローラの回転速度を演算する演算部を設け、紡出速度に対する弛み取りローラにおける糸の巻取速度の比率を0.98〜1.02の範囲内となるように設定したことを特徴とする紡績機。
  2. 紡績装置の直ぐ下流側に糸送り装置を設け、紡出速度の設定に基づき、糸送り装置の糸送り速度が設定される請求項1に記載する紡績機。
  3. 弛み取りローラを回転駆動する回転駆動手段を設け、該駆動手段の駆動軸に弛み取りローラの回転軸を固定した請求項1又は2に記載する紡績機。
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