JP3878402B2 - 金属の高純度化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、複数回の電解工程において製造する電極及び電解液を有効に利用し、かつ電解液の流れを系内で再利用する一次電解及び二次電解、さらに必要に応じて三次電解することによる金属の高純度化方法に関する。 なお、明細書中で使用する%、ppm、ppbは全てwt%、wtppm、wtppbを示す。
【0002】
【従来の技術】
従来、4N又は5N(それぞれ99.99wt%、99.999wt%を意味する。)レベルの高純度金属を製造する場合に、多くは電解精製法を用いて製造されているが、目的とする金属を電解する場合、近似する元素が不純物となって残存するケースが多い。例えば遷移金属である鉄のような場合には、同じく遷移金属であるニッケル、コバルト等の多数の元素が不純物として含まれる。
これらの3Nレベルの粗金属を精製する場合、高純度の液を製造して電解を実施している。
【0003】
このような電解において、純度の高い金属を得るためには、不純物の少ない電解液を製造できるイオン交換あるいは溶媒抽出の方法を用いることが必要である。
このように、電解液の製造は、電解の前に予め精製することが普通であり、このための作業はコスト高になる欠点を有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、複数回の電解工程において製造する電極及び電解液を有効に利用し、かつ電解液の流れを系内で再利用することにより、効率的に高純度金属を製造することができる電解方法を提供することを目的としたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するため、一次電解工程により得た一次電析金属をアノードとして電解した電解液を二次電解に使用することにより、電解液の調合を簡素化し、より純度の高い金属を複数回の電解工程により得ることができるとの知見を得た。
この知見に基づき、本発明は
1.一次電解により粗金属原料を電解して一次電析金属を得る工程、上記一次電解工程により得た一次電析金属をアノードとして電解あるいは一次電析金属を酸溶解し、二次電解用の純度の高い電解液を得る工程、および該純度の高い電解液を用いかつ前記一次電析金属をアノードとしてさらに二次電解する工程からなることを特徴とする金属の高純度化方法
2.粗金属が3N以下の純度、一次電析金属が3N〜4Nの純度、さらに二次電解によってえられる高純度金属が4N〜5N以上の純度をもつことを特徴とする上記1記載の金属の高純度化方法
3.粗金属が4N以下の純度、一次電析金属が4N〜5Nの純度、さらに二次電解によってえられる高純度金属が5N〜6N(99.9999%)以上の純度をもつことを特徴とする上記1記載の金属の高純度化方法
4.二次電解工程後の電解液を一次電解液の電解液として循環使用することを特徴とする上記1〜3のそれぞれに記載の金属の高純度化方法
5.一次電解後の電解液は系外に排出するかあるいは液の精製を行って再利用することを特徴とする上記1〜4のそれぞれに記載の金属の高純度化方法
6.二次電解工程により得た二次電析金属をアノードとして電解あるいは二次電析金属を酸溶解し三次電解用の高純度の電解液を得る工程および該高純度の電解液を用いかつ前記二次電析金属をアノードとして三次電解する工程からなることを特徴とする上記1〜5のそれぞれに記載の金属の高純度化方法
を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明を図1に基づいて説明する。図1に一次電解工程及び二次電解工程と二次電解用電解液の製造の概要を示す。
図1に示すように、一次電解槽1においてアノードバスケット2に金属スクラップ等の粗原料(3N以下又は4N以下の)金属3を入れ、粗金属原料を電解してカソード4に一次電析金属を析出させる。この場合、最初の電解液は、事前に調合する。この一次電解による一次電析金属の純度は3N〜4N又は4N〜5Nのものが得られる。
【0007】
次に、このカソード4に析出した一次電析金属をアノード5として、電解槽6において電解し、カソード7に二次電析金属を得る。
この場合の電解液8は、二次電解液製造槽9において前記一次電析金属をアノード10とし、電解することによって製造する。この二次電解液製造槽9におけるカソード11はアノード10からの金属が析出しないように、陰イオン交換膜を用いて遮断する。また、別の容器で一次電析金属を酸溶解し、pH調整を行っても良い。
図1に示すように、このようにして製造した電解液8を二次電解において使用する。これによって、比較的容易に高純度(4Nレベル又は5Nレベル)の電解液を製造することができ、著しい製造コストを低減できる。また、二次電解槽6で使用済みの電解液は、一次電解槽1に戻し、一次電解液として使用できる。
二次電解槽6でカソード11に析出した金属は5Nレベル又は6Nレベルの純度のものが得られる。
【0008】
さらに純度を高める、あるいは上記二次電解による電解精製で目的とする純度が得られない場合、三次電解を行うことができる。
この工程は前記二次電解の場合と同様であり、二次電解でカソードに析出した二次電析金属を三次電解槽(図示せず)のアノードとし、また二次電析金属をアノードとして得た三次電解液を製造し、この三次電解液を三次電解槽の電解液として三次電解槽のカソードに三次電析金属を析出させる。このようにして、逐次電析金属の純度と向上させていく。
同様に、使用済みの三次電解液は、二次電解槽又は一次電解槽の電解液として使用することができる。
本発明の電解精製は、鉄、カドミウム、亜鉛、銅、マンガン、コバルト、ニッケル、クロム、銀、金、鉛、錫、インジウム、ビスマス、ガリウム等の金属元素の電解精製に適用できる。
【0009】
【実施例及び比較例】
次に、本発明の実施例について説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例に制限されるものではない。すなわち、本発明の技術思想の範囲内で、実施例以外の態様あるいは変形を全て包含するものである。
【0010】
(実施例1)
図1に示すような電解槽を用い、3Nレベルの塊状の鉄をアノードとし、カソードに4Nレベルの鉄を使用して電解を行った。
浴温は50°C、塩酸系電解液でpH2、鉄濃度50g/L、電流密度1A/dm2で電解を実施した。これにより、電流効率90%で純度4Nレベルの電解鉄(カソードに析出)を得た。
次に、この電解鉄を塩酸と過酸化水素水の混合溶液で溶解し、アンモニアでpHを調整し二次電解用の電解液とした。また、前記カソードに析出した4Nレベルの一次電解鉄をアノードとして2回目の電解(二次電解)を実施した。
電解条件は、一次電解の電解条件と同一の条件である、浴温50°C、塩酸系電解液でpH2、鉄濃度50g/Lで電解を実施した。この結果、電流効率92%で純度5Nレベルの電解鉄を得た。
一次電解鉄及び二次電解鉄の分析結果を表1に示す。一次電解鉄では、Al:2ppm、As:3ppm、Co:7ppm、Ni:5ppm、Cu:1ppm、Al:2ppmが不純物として存在するが、二次電解ではCo:2ppm存在することを除き、全て1ppm未満となった。また、使用済みの二次電解液は、一次電解液に戻して使用することができた。
以上に示すように、高純度(5N)の鉄が2回の電解精製により製造することができ、また電解液の製造が容易であるという優れた結果が得られた。
【0011】
【表1】
【0012】
(実施例2)
上記実施例1と同様に図1に示すような電解槽を用い、3Nレベルの塊状のカドミウムをアノードとし、カソードにチタンを使用して電解を行った。
浴温は30°C、硫酸80g/L、カドミウム濃度70g/L、電流密度1A/dm2で電解を実施した。これにより、電流効率85%で純度4Nレベルの電解カドミウム(カソードに析出)を得た。
次に、この電解カドミウムを硫酸浴で電解し二次電解用の電解液とした。また、前記カソードに析出した4Nレベルの一次電解カドミウムをアノードとして2回目の電解(二次電解)を実施した。
電解条件は、一次電解の電解条件と同一の条件である、浴温30°C、硫酸80g/L、カドミウム濃度70g/L、電流密度1A/dm2で電解を実施した。この結果、電流効率92%で純度5Nレベルの電解カドミウムを得た。
一次電解カドミウム及び二次電解カドミウムの分析結果を表2に示す。一次電解カドミウムでは、Ag:2ppm、Pb:10ppm、Cu:1ppm、Fe:20ppmが不純物として存在するが、二次電解ではPb:2ppm、Fe:3ppmが不純物存在することを除き、全て1ppm未満となった。
また、実施例1と同様に、使用済みの二次電解液は、一次電解液に戻して使用することができた。
以上に示すように、高純度(5N)のカドミウムが2回の電解精製により製造することができ、また電解液の製造が容易であるという優れた結果が得られた。
【0013】
【表2】
【0014】
(実施例3)
上記実施例1と同様に図1に示すような電解槽を用い、3Nレベルの塊状のコバルトをアノードとし、カソードに4Nレベルのコバルトを使用して電解を行った。
浴温は40°C、塩酸系電解液でpH2、コバルト濃度100g/L、電流密度1A/dm2、電解時間40hr実施した。これにより、電流効率90%で電解コバルト(カソードに析出)約1kgを得た。純度は4Nを達成した。
次に、この電解コバルトを塩酸で溶解し、アンモニアでpH2に調整し二次電解用の電解液とした。また、前記カソードに析出した4Nレベルの一次電解コバルトをアノードとして2回目の電解(二次電解)を実施した。
電解条件は、一次電解の電解条件と同一の条件である浴温40°C、塩酸系電解液でpH2、コバルト濃度100g/Lで電解を実施した。この結果、電流効率92%で純度5Nレベルの電解コバルトを得た。
一次電解コバルト及び二次電解コバルトの分析結果を表3に示す。原料コバルトでは、Na:10ppm、K:1ppm、Fe:10ppm、Ni:500ppm、Cu:2.0ppm、Al:3.0ppm、Cr0.1ppm、S:1ppm、U:0.2ppb、Th:0.1ppbが不純物として存在するが、一次電解ではFe:5ppm、Ni:50ppmが残存することを除き、全て0.1ppm以下となった。
そして、二次電解ではFe:2ppm、Ni:3ppmが残存するだけとなり、全て0.1ppm未満となり不純物が大きく減少した。使用済みの二次電解液は、一次電解液に戻して使用することができた。
以上に示すように、高純度(5N)のコバルトが2回の電解精製により製造することができ、また電解液の製造が容易であるという優れた結果が得られた。
【0015】
【表3】
【0016】
(実施例4)
上記実施例1と同様に図1に示すような電解槽を用い、4Nレベルの塊状のニッケルをアノードとし、カソードに4Nレベルのニッケルを使用して電解を行った。
浴温は40°C、硫酸系電解液でpH2、ニッケル濃度50g/L、電流密度1A/dm2、電解時間40hr実施した。これにより、電流効率90%で電解ニッケル(カソードに析出)約1kgを得た。純度は5Nを達成した。
次に、この電解ニッケルを硫酸で溶解し、アンモニアでpH2に調整し二次電解用の電解液とした。また、前記カソードに析出した5Nレベルの一次電解ニッケルをアノードとして2回目の電解(二次電解)を実施した。
電解条件は、一次電解の電解条件と同一の条件である浴温40°C、硫酸系電解液でpH2、ニッケル濃度50g/Lで電解を実施した。この結果、電流効率92%で純度6Nレベルの電解ニッケルを得た。
一次電解ニッケル及び二次電解ニッケルの分析結果を表4に示す。原料ニッケルでは、Na:16ppm、K:0.6ppm、Fe:7ppm、Co:0.55ppm、Cu:0.62ppm、Al:0.04ppm、Cr0.01ppm、S:1ppm、U:0.2ppb、Th:0.1ppbが不純物として存在するが、一次電解ではFe:2ppm、Co:0.2ppmが残存することを除き、全て0.1ppm以下となった。
そして、二次電解ではFe:0.2ppmが残存するだけとなり、全て0.1ppm未満となり不純物が大きく減少した。使用済みの二次電解液は、一次電解液に戻して使用することができた。
以上に示すように、高純度(6N)のニッケルが2回の電解精製により製造することができ、また電解液の製造が容易であるという優れた結果が得られた。
【0017】
【表4】
【0018】
【発明の効果】
以上に示すように、一次電析金属をアノードとして電解することによって二次電解液を製造し、また該一次電析金属を二次電解アノードとして使用することによって、5N〜6Nレベルの高純度の電解精製を可能とするとともに、4N〜5Nレベルの二次電解液の製造コストを低減できるという優れた特徴を有する。また、二次電解槽で使用済みの電解液は一次電解槽に戻し、一次電解液として使用できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】一次電解工程及び二次電解工程と二次電解用電解液の製造工程の概要を示す図である。
【符号の説明】
1 一次電解槽
2 アノードバスケット
3 粗原料金属
4 一次電解槽のカソード
5 一次電析金属アノード
6 二次電解槽
7 二次電解槽のカソード
8 二次電解液製造槽において製造した電解液
9 二次電解液製造槽
10 二次電解液製造槽におけるアノード
11 二次電解液製造槽におけるカソード
Claims (6)
- 一次電解により粗金属原料を電解して一次電析金属を得る工程、前記一次電解工程により得た一次電析金属をアノードとして電解あるいは一次電析金属を酸溶解し、二次電解用の純度の高い電解液を得る工程、および該純度の高い電解液を用いかつ前記一次電析金属をアノードとしてさらに二次電解する工程からなることを特徴とする金属の高純度化方法。
- 粗金属が3N以下の純度、一次電析金属が3N〜4Nの純度、さらに二次電解によってえられる高純度金属が4N以上の純度をもつことを特徴とする請求項1記載の金属の高純度化方法。
- 粗金属が4N以下の純度、一次電析金属が4N〜5Nの純度、さらに二次電解によってえられる高純度金属が5N以上の純度をもつことを特徴とする請求項1記載の金属の高純度化方法。
- 二次電解工程後の電解液を一次電解液の電解液として循環使用することを特徴とする請求項1〜3のそれぞれに記載の金属の高純度化方法。
- 一次電解後の電解液は、系外に排出するかあるいは液の精製を行って再利用することを特徴とする請求項1〜4のそれぞれに記載の金属の高純度化方法。
- 二次電解工程により得た二次電析金属をアノードとして電解あるいは二次電析金属を酸溶解し三次電解用の高純度の電解液を得る工程および該三次電解用の高純度の電解液を用いかつ前記二次電析金属をアノードとして三次電解する工程からなることを特徴とする請求項1〜5記載の金属の高純度化方法。
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