JP3876933B2 - 硫酸水素エステルの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は農・医薬その他工業薬品の製造原料等として有用な硫酸水素エステルの工業的に有利な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
硫酸水素エステル〔II〕は該当するアミノアルコール〔I〕と硫酸、クロロスルホン酸あるいは無水硫酸等との反応により合成されている。その中でも特に硫酸との脱水反応による合成が一般的な方法として広く行われている。(J. Org. Chem. 30, 491、495 (1965)等)
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこれらの方法は例えば硫酸水溶液に溶解したのち、水を留去し反応を完結させるため反応物を高温・真空で乾固させている。また単に一般に共沸脱水溶媒として使用されるトルエン、メチルイソブチルケトン等を用いた場合においては、反応途中において、粘性の高いアメ状になり攪拌が困難になる事がある。小スケールでの製造であれば大きな問題とはならないが、大量に生産する場合、特に工業的規模での生産に適しているとは言えない。また、クロロスルホン酸、無水硫酸を用いた場合は使用可能な溶媒は塩素系溶媒か或いは酢酸等に限られ、また硫酸に比べて高価であることから有利な方法とは言えない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような状況下、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明は 式〔I〕
【化3】
(式中、R1 〜R4 は同一または相異なって水素原子またはアルキル基を示す。)で表されるアミノアルコールと硫酸を芳香族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒又はエステル系溶媒とグリコールエーテル類との混合溶媒中、共沸脱水により反応させることを特徴とする式〔II〕
【化4】
(式中、R1 〜R4 は同一または相異なって水素原子またはアルキル基を示す。)で表わされる硫酸水素エステルの製造方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
R1 〜R4 のアルキル基としては炭素数1〜5の直鎖、分岐または環状アルキル基が挙げられ、更にその置換基として、フェニル基、炭素数1−5の直鎖又は分岐したアルコキシル基で置換されていてもよい。
【0007】
反応は芳香族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒又はエステル系媒とグリコールエーテル類との混合溶媒中に該当するアミノアルコールを加え、次に硫酸を滴下し、または先に硫酸を加えた後、アミノアルコールを滴下し、或いはアミノアルコールと硫酸を同時に滴下してもよく、次に還流下に、反応の進行とともに生成する水を共沸により分離除去する事により行われる。反応終了後は冷却後、濾過により単離でき、また水または水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液で水層に抽出し、そのまま次の工程の原料として供することもできる。
芳香族炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等が、ケトン系溶媒としては、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル正ブチルケトン等が、エステル系溶媒としては、エステル残基が炭素数1−5の直鎖もしくは枝分かれのアルキル基である酢酸エステル、プロピオン酸エステル等が挙げられる。グリコールエーテルとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびプロピレングリコールのモノエーテルまたはジエーテルが挙げられ、エーテル残基としては炭素数1〜10の直鎖または枝分かれのアルキル基が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒またはエステル系溶媒とグリコールエーテルとの混合割合は、組み合わせる溶媒の種類により異なるが、グリコールエーテル:他の溶媒=1:9〜2:1(容量比)である。混合溶媒の使用量は原料のアミノアルコールの種類、混合溶媒の種類、比率によっても異なるが、アミノアルコール〔I〕に対し2ー50倍量である。
硫酸のモル比はアミノアルコール〔I〕に対し、80ー150mol%,好ましくは100−120mol%である。
反応時間は反応スケール、装置により異なるが、通常1ー30時間である。
得られた硫酸水素エステルはNMR,IRにより確認した。
【0008】
【実施例】
次に実施例を挙げ本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1
硫酸水素−2−アミノ−2−メチルプロピルの製造
【化5】
2−アミノ−2−メチル−プロパノール(以下化合物〔I〕という)の90%水溶液99.0gをトルエン200mlとブチルセロソルブ100mの混合溶媒に加え、室温にて濃硫酸110.1gを滴下した。滴下とともに内温が上昇するため、水冷により90℃を越えない程度に冷却した。硫酸滴下後、反応液を加熱・還流した。共沸により留出した水は油水分離器(ディーンスタークの装置)により分離し、トルエンは反応液中に戻した。攪拌状況は順調であり、3時間脱水留去を続けた後、反応液を冷却し、結晶を濾過し、乾燥して白色結晶165.3gを得た。
この白色結晶はは、NMR,IRより標記化合物であることを確認した。
【0009】
実施例2
硫酸水素−2−アミノ−2−メチルプロピルの製造
【化6】
化合物〔I〕の90%水溶液9.9gをトルエン90mlとジエチレングリコールジエチルエーテル10mlの混合溶媒に加え、濃硫酸11.2gを室温にて滴下した。実施例1と同様に水を留去しながら反応・後処理して白色結晶17gを得た。
一時白色のオイルが器壁に付着したが攪拌はスムーズで、反応の進行とともに良好なスラリーとなった。
【0010】
実施例3
硫酸水素−2−アミノ−2−メチルプロピルの製造
【化7】
化合物〔I〕の90%水溶液9.9gをメチルイソブチルケトン90mlとブチルセロソルブ10mlの混合溶媒に加え、濃硫酸11.2gを室温にて滴下した。実施例1と同様に水を留去しながら反応・後処理して白色結晶16.5gを得た。
一時白色のオイルが器壁に付着したが攪拌はスムーズであった。
【0011】
比較例
硫酸水素−2−アミノ−2−メチルプロピルの製造
【化8】
化合物〔I〕の90%水溶液118.9gをトルエン1200mlに加え、濃硫酸134.8gを冷却下に滴下した。硫酸滴下途中、及び加熱時に粘性の高いオイルが多量析出し、極めて攪拌しずらい状況であった。反応の進行とともに攪拌状況は改善されてきたが反応終了後冷却すると、析出したオイルが固まり、攪拌が全くできない状態となった。
【0012】
参考例
4、4−ジメチルチアゾリジン−2−チオンの製造
【化9】
実施例1と同様に反応・冷却後、濾過せずに水112g,28wt%苛性ソーダ水溶液314.3gを冷却下に加え、生成した硫酸水素−2−アミノ−2−メチルプロピルを水層に抽出した。この水層に二硫化炭素114.2g,メタノール750mlを加えた後、60℃に昇温しそのまま6時間攪拌を続けた。反応終了後、水200g,35%塩酸12.5gを加えて中和し、減圧下にメタノールを留去した。水1500mlを加えて析出した結晶を濾過し、水洗、乾燥して白色結晶128gを得た。融点120−2℃。
【0013】
【発明の効果】
本発明の製造方法は農・医薬その他工業薬品の製造原料等として有用な硫酸水素エステルの工業的に通常の反応釜で攪拌を容易にし、安全かつ高収率で生産できる製法である。
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