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JP3873420B2 - 液晶性樹脂組成物およびそれからなる精密成形品 - Google Patents

液晶性樹脂組成物およびそれからなる精密成形品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気・電子部品、OA・AV部品、自動車部品、機械部品、ハウジング部品などとして有用な薄肉流動性と機械物性に優れた液晶性樹脂組成物およびそれからなる精密成形品に関するものである。中でも制振性を必要とし、かつ、表面平滑性を必要とする精密成形品を安定して生産できる液晶性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年プラスチックの高性能化に対する要求がますます高まり、種々の新規性能を有するポリマーが数多く開発されているが、中でも分子鎖の平行な配列を特徴とする溶融時に光学異方性を示す液晶性樹脂が優れた流動性と機械物性を有する点で注目されている。しかしながら、精密な金属部品を代替するには液晶性樹脂単独の機械物性では十分でなく、高い機械物性を有する充填剤を配合することによりさらに優れた機械物性を有する液晶性樹脂組成物の開発が必要になってきている。
【0003】
その中で、高い機械物性を有する充填剤としてホウ酸アルミニウムウイスカーを配合する技術が知られている(例えば、特開平3−59067号公報、特開平4−96965号公報、特開平4−198256号公報、特開平6−220249号公報)。しかしながら、これまでに知られたホウ酸アルミニウムウイスカーでは、光ピックアップ部品などの精密な成形品を成形すると期待するほどの高い機械物性が得られないために、十分な制振性が得られず、しかも、物性ばらつきが大きく、十分な物性の出ない不良品の発生率が高くなってしまうという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述の問題を解決し、薄肉流動性と機械物性に優れ、高い制振性を有し、かつ、表面が平滑であり、成形品の物性ばらつきの少ない液晶性樹脂組成物およびそれからなる精密成形品を得ることを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
【0006】
即ち、本発明は(1)(A)液晶性ポリエステルおよび/または液晶性ポリエステルアミドからなる液晶性樹脂100重量部に(B)レーザー回折により求められた粒径分布において相対粒子量90%のときの粒径をD90(μm)、相対粒子量10%のときの粒径をD10(μm)としたとき、8.1≦D90/D10≦17であるホウ酸アルミニウムウイスカー1〜300重量部を配合してなる液晶性樹脂組成物、(2)(A)液晶性ポリエステルおよび/または液晶性ポリエステルアミドからなる液晶性樹脂100重量部に(B)ホウ酸アルミニウムウイスカー1〜300重量部を含有してなる液晶性樹脂組成物において、組成物中のホウ酸アルミニウムウイスカーのレーザー回折により求められた粒径分布において相対粒子量90%のときの粒径をD90(μm)、相対粒子量10%のときの粒径をD10(μm)としたとき、
7.3≦D90/D10≦15.3であることを特徴とする液晶性樹脂組成物、(3)液晶性樹脂(A)がエチレンジオキシド単位を必須成分として含有する液晶性ポリエステルおよび/または液晶性ポリエステルアミドからなる液晶性樹脂である上記(1)または(2)のいずれか記載の液晶性樹脂組成物、(4)液晶性樹脂(A)が下記構造単位(I) 、(II)、(III) および(IV)からなる液晶性ポリエステルである上記(1)〜(3)のいずれか記載の液晶性樹脂組成物。
【化5】
Figure 0003873420
(ただし式中のR1
【化6】
Figure 0003873420
から選ばれた1種以上の基を示し、R2
【化7】
Figure 0003873420
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)、(5)ホウ酸アルミニウムウイスカー(B)がレーザー回折により求められた粒径分布において8.1≦D90/D10≦14であるホウ酸アルミニウムウイスカーである上記(1)、(3)、(4)のいずれか記載の液晶性樹脂組成物、(6)ホウ酸アルミニウムウイスカー(B)がレーザー回折により求められた粒径分布において1.0μm<D10≦2.0μmであるホウ酸アルミニウムウイスカーである上記(1)、(3)〜(5)のいずれか記載の液晶性樹脂組成物、(7)ホウ酸アルミニウムウイスカー(B)がレーザー回折により求められた粒径分布において8.0μm<D90≦18μmであるホウ酸アルミニウムウイスカーである上記(1)、(3)〜(6)のいずれか記載の液晶性樹脂組成物、(8)液晶性樹脂(A)100重量部に対して、さらに有機臭素化物0.5〜60重量部を含有せしめてなる上記(1)〜(7)のいずれかに記載の液晶性樹脂組成物、(9)有機臭素化物が臭素化スチレンモノマーから製造した下記構造単位の1種以上を主構成単位とし、重量平均分子量が1×103 〜120×104のポリ臭素化スチレンである請求項記載の液晶性樹脂組成物。
【化8】
Figure 0003873420
(10)液晶性樹脂(A)100重量部に対して、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンおよび/またはプロピレンと炭素数が4以上のα−オレフィンからなる共重合体およびエチレンおよび/またはプロピレンと炭素数が4以上のα−オレフィンおよび非共役ジエンからなる共重合体から選ばれた1種以上のオレフィン系重合体0.01〜10重量部をさらに配合してなる上記(1)〜(9)のいずれか記載の液晶性樹脂組成物、(11)溶融状態の(A)液晶性樹脂に(B)レーザー回折により求められた粒径分布において相対粒子量90%のときの粒径をD90(μm)、相対粒子量10%のときの粒径をD10(μm)としたとき、8.1≦D90/D10≦17であるホウ酸アルミニウムウイスカーを添加配合することにより上記(1)〜(10)のいずれか記載の液晶性樹脂組成物を製造することを特徴とする液晶性樹脂組成物の製造方法、(12)(A)液晶性ポリエステルおよび/または液晶性ポリエステルアミドからなる液晶性樹脂100重量部に(B)ホウ酸アルミニウムウイスカー1〜300重量部を含有してなる液晶性樹脂組成物成形品において、成形品中のホウ酸アルミニウムウイスカーのレーザー回折により求められた粒径分布において相対粒子量90%のときの粒径をD90(μm)、相対粒子量10%のときの粒径をD10(μm)としたとき、6.3≦D90/D10≦13であることを特徴とする液晶性樹脂成形品、(13)上記(1)〜(10)いずれか1項記載の液晶性樹脂組成物を成形してなる精密成形品、(14)上記(12)記載の液晶性樹脂成形品からなる精密成形品、(15)精密成形品が制振性が必要とされる部材用である上記(13)または(14)記載の精密成形品、(16)上記(1)〜(10)いずれか1項記載の液晶性樹脂組成物を成形してなる光ピックアップ部品である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる液晶性樹脂(A)とは、液晶性ポリエステルおよび/または液晶性ポリエステルアミドからなるものである。
【0008】
上記液晶性ポリエステルとしては、芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、エチレンジオキシ単位などの一種以上から選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成するポリエステルを挙げることができ、液晶性ポリエステルアミドとしては、上記構造単位と芳香族イミノカルボニル単位、芳香族ジイミノ単位、芳香族イミノオキシ単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成するポリエステルアミドを挙げることができる。
【0009】
本発明に好ましく使用できる液晶性ポリエステルはエチレンジオキシ単位を必須成分とする液晶性ポリエステルであり、さらに好ましくは下記構造単位(I) 、(III) 、(IV)あるいは(I) 、(II)、(III) 、(IV)の構造単位からなるポリエステルであり、最も好ましいのは(I) 、(II)、(III) 、(IV)の構造単位からなるポリエステルである。
【0010】
【化9】
Figure 0003873420
(ただし式中のR1
【化10】
Figure 0003873420
から選ばれた一種以上の基を示し、R2
【化11】
Figure 0003873420
から選ばれた一種以上の基を示す。また、式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
なお、構造単位(II)および(III) の合計と構造単位(IV)は実質的に等モルであることが好ましい。
【0011】
上記構造単位(I) はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4´−ジヒドロキシビフェニル、3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた1種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III) はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた1種以上の芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。これらのうちR1
【化12】
Figure 0003873420
であり、R2
【化13】
Figure 0003873420
であるものが特に好ましい。
【0012】
本発明に好ましく使用できる液晶性ポリエステルは、上記構造単位(I) 、(III) 、(IV)または(I) 、(II)、(III) 、(IV)からなる共重合体であり、上記構造単位(I) 、(II)、(III) および(IV)の共重合量は任意である。しかし、流動性の点から次の共重合量であることが好ましい。
【0013】
すなわち、上記構造単位(I) 、(III) 、(IV)からなる共重合体の場合は、上記構造単位(I) は構造単位(I) および(III) の合計に対して、30〜95モル%が好ましく、40〜95モル%がより好ましい。また、構造単位(IV)は構造単位(III) と実質的に等モルであることが好ましい。
【0014】
一方、上記構造単位(I) 、(II)、(III) 、(IV)からなる共重合体の場合は、耐熱性、難燃性および機械的特性の点から上記構造単位(I) および(II)の合計は構造単位(I) 、(II)および(III) の合計に対して60〜95モル%が好ましく、80〜92モル%がより好ましい。また、構造単位(III) は構造単位(I) 、(II)および(III) の合計に対して40〜5モル%が好ましく、20〜8モル%がより好ましい。また、構造単位(I) と(II)のモル比[(I) /(II)]は耐熱性と流動性のバランスの点から好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)および(III) の合計と実質的に等モルであることが好ましい。
【0015】
また液晶性ポリエステルアミドとしては、上記構造単位(I) 〜(IV)以外にp−アミノフェノ−ルから生成したp−イミノフェノキシ単位を含有した異方性溶融相を形成するポリエステルアミドが好ましい。
【0016】
上記好ましく用いることができる液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドは、上記構造単位(I) 〜(IV)を構成する成分以外に3,3´−ジフェニルジカルボン酸、2,2´−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4´−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4´−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを液晶性を損なわない程度の割合の範囲でさらに共重合せしめることができる。
【0017】
本発明における液晶性樹脂の製造方法は特に制限はなく、例えば液晶性ポリエステルあるいは液晶性ポリエステルアミドの製造方法は、公知のポリエステルあるいはポリエステルアミドの重縮合法に準じて製造できる。
【0018】
例えば、上記好ましく用いられる液晶性ポリエステルの製造において、次の製造方法が好ましく挙げられる。
【0019】
(1)p−アセトキシ安息香酸、4,4´−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物とテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸およびポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマ、オリゴマまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルから脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
【0020】
(2)p−ヒドロキシ安息香酸、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、無水酢酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、ポリエチレンテレフタレ―トなどのポリエステルのポリマ、オリゴマまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルとを脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
【0021】
(3)(1)または(2)の製造方法において出発原料の一部に特開平3−59024号公報のように1,2−ビス(4−ヒドロキシベンゾイル)エタンを用いる方法。
【0022】
重縮合反応に使用する触媒としては、液晶性樹脂の重縮合触媒として公知のものを使用することができる。
【0023】
本発明において用いられる液晶性樹脂は、ペンタフルオロフェノール中で対数粘度を測定することが可能なものもあり、その際には0.1g/dlの濃度で60℃で測定した値で0.3以上が好ましく、構造単位(III) を含む場合は0.5〜3.0dl/g、構造単位(III) を含まない場合は1.0〜15.0dl/gが特に好ましい。
【0024】
また、本発明における液晶性樹脂の溶融粘度は10〜20,000ポイズが好ましく、特に20〜10,000ポイズがより好ましい。
【0025】
本発明で用いられるホウ酸アルミニウムウイスカー(B)は、9Al2 3 ・2B2 3 または2Al2 3 ・B2 3 の化学組成で示された針状形状を有するものを指す。これらのホウ酸アルミニウムウイスカーは、例えば、Al2 3 またはAl2 3 を発生する原料とB2 3 またはB2 3 を発生する原料にアルカリ金属塩の存在下800〜1200℃の温度に加熱して反応し、ウイスカーを成長させることにより得られる。
【0026】
本発明で用いられるホウ酸アルミニウムウイスカー(B)は、その表面をシラン化合物、チタネート化合物、アルミニウム化合物などのカップリング剤で処理してもよい。このようなシラン化合物としては、アミノシラン、エポキシシラン、ビニルシラン、メルカプトシランが挙げられる。例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビニルアセトキシシラン、イソプロピルトリスイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなどが挙げられる。
【0027】
本発明で用いられるホウ酸アルミニウムウイスカー(B)は、レーザー回折により求められた粒径分布において相対粒子量90%のときの粒径をD90(μm)、相対粒子量10%のときの粒径をD10(μm)としたとき、
8.1≦D90/D10≦17
である。D90/D10が上記範囲である場合に、機械的強度、表面平滑性が良好で、組成物の物性ばらつきが小さく、安定した特性の成形品が得られる。
【0028】
本発明で用いられるホウ酸アルミニウムウイスカー(B)のレーザー回折により求められた粒径分布において1.0μm<D10≦2.0μmであることが、高弾性率、優れた制振性、表面平滑性を有する組成物、成形品をが得られる点で好ましい。
【0029】
本発明で用いられるホウ酸アルミニウムウイスカー(B)のレーザー回折により求められた粒径分布において8.0μm<D90≦18μmであることが、高強度で、表面平滑性に優れ、物性ばらつきのない安定した特性の成形品が得られる点から好ましい。
【0030】
本発明のホウ酸アルミニウムウイスカー(B)の粒径分布は、一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。粒度分布測定装置には、湿式法と乾式法があるが、いずれを用いてもかまわない。湿式法の場合は、ホウ酸アルミニウムウイスカーの分散媒として、水を使用することができる。そのとき、アルコールや中性洗剤によりウイスカーの表面処理を行ってもよい。また、分散剤として、ヘキサメタリン酸ナトリウムやピロリン酸ナトリウムなどのリン酸塩を使用することも可能である。また、分散装置として超音波バスを使用することも可能である。粒度分布の測定範囲は、装置の性能にもよるが最低0.1μmから最大500μmの範囲を測定することが望ましい。更に望ましくは最低0.05μmから最大700μmの範囲を測定する。レーザー回折式粒度分布測定装置により解析した粒度累積分布データより最小粒子径から10%の相対粒子量のときの粒子径D10(μm)と90%の相対粒子量のときの粒子径D90(μm)を求めることができる。
【0031】
本発明に用いられるホウ酸アルミニウムウイスカー(B)の配合量は、液晶性樹脂(A)100重量部に対して、1〜300重量部であり、好ましくは10〜200重量部、より好ましくは25〜100重量部である。
【0032】
また、本発明の液晶性樹脂組成物に対して他の充填材を併用することも可能である。他の充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維、チタン酸カリウム繊維、石膏繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、セラミック繊維、ボロンウィスカー繊維、アスベスト繊維、グラファイト、マイカ、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、ワラステナイト、酸化チタン、二硫化モリブデン等の繊維状、粉状、粒状あるいは板状の無機フィラーが挙げられる。これらの充填剤についてはシラン系、チタネート系などのカップリング剤、その他の表面処理剤で処理されたものを用いてもよい。
【0033】
本発明においては、さらに有機臭素化物を配合することができ、かかる有機臭素化物としては、通常難燃剤として使用される有機臭素化合物を含み、特に臭素含量20重量%以上のものが好ましい。具体例としてはヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、ヘキサブロモシクロデカン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレン−ビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールAなどの低分子量有機臭素化合物、臭素化ポリカーボネート(例えば臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマーあるいはそのビスフェノールAとの共重合物)、臭素化エポキシ化合物(例えば臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物や臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物)、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノールA、塩化シアヌルおよび臭素化フェノールの縮合物、臭素化ポリスチレン、架橋臭素化ポリスチレン、架橋臭素化ポリα−メチルスチレンなどのハロゲン化されたポリマーやオリゴマーあるいは、これらの混合物が挙げられ、なかでもエチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、臭素化エポキシオリゴマーまたはポリマー、臭素化ポリスチレン、架橋臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテルおよび臭素化ポリカーボネートが好ましく、臭素化ポリスチレンが最も好ましく使用できる。
【0034】
上記の好ましい有機臭素化物についてさらに詳しく述べると、臭素化エポキシポリマーとしては下記一般式(i)で表わされるものが好ましい。
【0035】
【化14】
Figure 0003873420
上記一般式(i)中の重合度nは好ましくは15以上、さらに好ましくは50〜80である。
【0036】
本発明に用いる臭素化ポリスチレンとしてはラジカル重合またはアニオン重合によって得られたポリスチレンを臭素化することによって製造された臭素化ポリスチレンおよび架橋臭素化ポリスチレン、あるいは臭素化スチレンモノマをラジカル重合またはアニオン重合、好ましくはラジカル重合によって製造された(ii)および/又は(iii)式で表わされる臭素化スチレン単位を有するポリ臭素化スチレンなどが挙げられるが、とりわけ臭素化スチレンモノマーから製造した下記(ii)および/又は(iii)式で示される構造単位を主要構成成分とする重量平均分子量が1×103 〜120×104 のポリ臭素化スチレンが好ましい。
【0037】
【化15】
Figure 0003873420
ここでいう臭素化スチレンモノマーとはスチレンモノマー1個あたり、その芳香環に2〜3個の臭素原子が置換反応により導入されたものが好ましく、二臭素化スチレンおよび/又は三臭素化スチレンの他に一臭素化スチレンなどを含んでいてもよい。
【0038】
上記ポリ臭素化スチレンは二臭素化スチレンおよび/又は三臭素化スチレン単位を60重量%以上含有しているものが好ましく、70重量%以上含有しているものがより好ましい。二臭素化スチレンおよび/又は三臭素化スチレン以外に一臭素化スチレンを40重量%以下、好ましくは30重量%以下共重合したポリ臭素化スチレンであってもよい。このポリ臭素化スチレンの重量平均分子量は1×104 〜15×104 がより好ましい。なお、この重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフを用いて測定した値であり、ポリスチレン分子量基準の相対値である。
【0039】
架橋臭素化ポリスチレンとしては、ジビニルベンゼンで架橋された多孔質ポリスチレンを臭素化したポリスチレンが好ましい。
【0040】
臭素化ポリカーボネートとしては、下記一般式(iv)で表わされるものが好ましい。
【0041】
【化16】
Figure 0003873420
(R4 、R5 は置換あるいは無置換のアリール基を示し、p−t−ブチルフェニル基が最も好ましい。)
上記一般式(iv)中の重合度nとしては4以上のものが好ましく、8以上のもの、とりわけ8〜25がより好ましく使用できる。
【0042】
これらの有機臭素化物の配合量は、液晶性樹脂(A)100重量部当り、0.5〜60重量部、特に1〜30重量部が好適である。
【0043】
また、本発明の液晶性樹脂組成物において有機臭素化物は組成物中に平均径2.5μm以下で分散していることが好ましく、2.0μm以下で分散していることがより好ましい。
【0044】
また、本発明においては、オレフィン系重合体を配合することができ、かかるオレフィン系重合体としては特に制限はないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンおよび/またはプロピレンと炭素数が4以上のα−オレフィンからなる共重合体、エチレンおよび/またはプロピレンと炭素数が4以上のα−オレフィンおよび非共役ジエンからなる共重合体などが、好ましく挙げられ、1種または2種以上で用いることができる。
【0045】
炭素数が4以上のα−オレフィンとしては、好ましくはブテン−1、ペンテン−1、3−メチルペンテン−1、オクテン−1などであり、ブテン−1がさらに好ましく、これらは2種以上併用して使用できる。
【0046】
非共役ジエンとしては、好ましくは5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン等が使用できる。
【0047】
エチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンからなる共重合体におけるエチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンの共重合比は、好ましくは、40/60〜99/1(モル比)、特に好ましくは70/30〜95/5(モル比)である。
【0048】
エチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンおよび非共役ジエンからなる共重合体におけるエチレンの共重合量は、好ましくは5〜96.9モル%、特に好ましくは30〜84.5モル%であり、炭素数が3以上のα−オレフィンの共重合量は、好ましくは3〜80モル%、特に好ましくは15〜60モル%であり、非共役ジエンの共重合量は、好ましくは0.1〜15モル%、特に好ましくは0.5〜10モル%である。また、プロピレンと炭素数が4以上のα−オレフィンおよび非共役ジエンからなる共重合体におけるプロピレンの共重合量は、好ましくは5〜96.9モル%、特に好ましくは30〜84.5モル%であり、炭素数が4以上のα−オレフィンの共重合量は、好ましくは3〜80モル%、特に好ましくは15〜60モル%であり、非共役ジエンの共重合量は、好ましくは0.1〜15モル%、特に好ましくは0.5〜10モル%である。
【0049】
これらの共重合体の具体例としてはエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/ペンテン−1共重合体、エチレン/プロピレン/ブテン−1共重合体、プロピレン/ペンテン−1共重合体、プロピレン/ブテン−1共重合体、エチレン/プロピレン/5−エチリデン−2ーノルボルネン共重合体、エチレン/プロピレン/1,4−ヘキサジエン共重合体、プロピレン/ブテン−1/1,4−ヘキサジエン共重合体、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン共重合体などであり、なかでもエチレン/プロピレン共重合体およびエチレン/ブテン−1共重合体が耐熱性に優れ、より好ましい。
【0050】
上記オレフィン系重合体は2種以上併用することもできる。
【0051】
また、これらのオレフィン系重合体は、エポキシ基、カルボン酸基などを含有する単量体が共重合されていない場合には、流動性に優れた組成物が得られる点で好ましい。
【0052】
上記オレフィン系重合体の重量平均分子量は特に制限はないが離型効果、ウエルド強度、成形品外観および流動性の点から10,000〜600,000、好ましくは30,000〜500,000、さらに好ましくは100,000〜450,000の範囲にあることが望ましい。
【0053】
上記オレフィン系重合体の添加量は特に制限はないが、離型性、ウエルド強度の点から液晶性樹脂(A)100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部が特に好ましい。
【0054】
本発明の液晶性樹脂組成物は物性向上のためにさらにエポキシ化合物を配合することができる。その構造は必ずしも限定されるものではない。これらエポキシ化合物のエポキシ基の数は2つ以上であることが好ましく、2つであることが最も好ましい。このエポキシ化合物とは、グリシジルエーテル類、グリシジルエステル・エーテル類、グリシジルエステル類、エポキシ化イミド化合物、エポキシ基含有共重合体、エポキシシラン類などであり、これらのエポキシ化合物は、一種だけでなく二種以上を併用してもよい。
【0055】
更に、本発明の液晶性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない程度の範囲で、酸化防止剤および熱安定剤(例えば、ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(たとえばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、ポリエチレンおよびポリエチレンワックスなど)、染料(たとえばニトロシンなど)および顔料(たとえば硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラックなど)を含む着色剤、可塑剤、帯電防止剤、結晶核剤、難燃剤などの通常の添加剤を添加して、所定の特性を付与することができる。
【0056】
本発明の液晶性樹脂組成物を製造する方法は特に制限はなく、各配合成分を溶融混練する方法が挙げられる。
【0057】
液晶性樹脂(A)とホウ酸アルミニウムウイスカー(B)、および、併用する充填材を配合する方法は溶融混練することが好ましく、溶融混練には公知の方法を用いることができる。たとえば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用い、溶融混練して組成物とすることができる。
【0058】
好ましい方法としては、溶融状態の液晶性樹脂(A)にホウ酸アルミニウムウイスカー(B)を添加配合する方法が挙げられ、具体的には二軸押出機を使用し、液晶性樹脂(A)を元込めにして溶融させたところに、ホウ酸アルミニウムウイスカー(B)をサイドフィーダーにより供給し、混練する方法が挙げられる。二軸押出機のスクリューアレンジとしては、ホウ酸アルミニウムウイスカー(B)をできるだけ折損しないようにサイドフィーダー供給部以降の練りはあまり強くしないことが望ましい。
【0059】
その他の添加剤を添加する方法に特に制限はなく、溶融混練することが好ましい。溶融混練には公知の方法を用いることができ、たとえば、上記好ましい方法において、あらかじめ添加剤を添加した液晶性樹脂を用いる方法、(B)成分とともに、あるいはそれとは別の任意の位置で添加する方法などが挙げられる。
【0060】
本発明において、液晶性樹脂組成物は、組成物中のホウ酸アルミニウムウイスカー(B)の粒径分布が
7.3≦D90/D10≦15.3
である場合に、機械的強度、表面平滑性が良好で物性のばらつきが小さく、安定した特性の成形品が得られ、好ましい。
【0061】
このような粒径分布を有する液晶性樹脂組成物を製造するための好ましい方法としては、具体的には二軸押出機を使用し、液晶性樹脂(A)を元込めにして溶融させたところに、前述した粒径分布を有するホウ酸アルミニウムウイスカー(B)をサイドフィーダーにより供給し、混練する方法が挙げられる。二軸押出機のスクリューアレンジとしては、ホウ酸アルミニウムウイスカー(B)をできるだけ折損しないようにサイドフィーダー供給部以降の練りはあまり強くしないことが望ましい。
【0062】
その他の添加剤を添加する方法に特に制限はなく、溶融混練することが好ましい。溶融混練には公知の方法を用いることができ、たとえば、上記好ましい方法において、あらかじめ添加剤を添加した液晶性樹脂を用いる方法、(B)成分とともに、あるいはそれとは別の任意の位置で添加する方法などが挙げられる。
【0063】
かくしてなる本発明の液晶性樹脂組成物は、優れた成形性を有し、通常の成形方法(射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、インジェクションプレス成形など)により、三次元成形品、シート、容器パイプなどに加工することができ、特に射出成形により得られた精密成形品に有効である。
【0064】
本発明において、液晶性樹脂成形品は、成形品中のホウ酸アルミニウムウイスカー(B)の粒径分布が
6.3≦D90/D10≦13
である場合に、機械的強度、表面平滑性が良好で物性のばらつきが小さく、安定した特性の成形品が得られ、好ましい。
【0065】
かかる成形品を製造する方法としては、液晶性樹脂(A)と特定の粒径分布を有するホウ酸アルミニウムウィスカー(B)を用いて溶融混練した液晶性樹脂組成物を成形する方法が好ましく挙げられ、なかでも組成物中のホウ酸アルミニウムウィスカーの粒径分布が上述した範囲にある液晶性樹脂組成物を成形する方法が特に好ましく挙げられる。成形方法としては射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、インジェクションプレス成形などいずれでもよいが、特に射出成形が好ましい。とりわけ射出成形により得られた精密成形品に有効である。
【0066】
本発明の液晶性樹脂組成物は各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケーススイッチコイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品、その他各種用途に有用である。本発明の液晶性樹脂組成物は高い弾性率を有しており、精密成形品、とりわけ制振性が必要とされる部材用の精密成形品に特に有用である。中でもCD(コンパクトディスク)やCD−ROM、DVD、MO、PDなどの光学系駆動装置である光ピックアップ部品は、優れた振動特性が必要とされるため、有用である。
【0067】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳述するが、本発明の骨子は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0068】
参考例1(A−1)
p−ヒドロキシ安息香酸995重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート216重量部及び無水酢酸960重量部を撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重合を行った。液晶開始温度293℃、対数粘度は1.49dl/g、重量平均分子量は約21,000の液晶性樹脂が得られた。
【0069】
参考例2(A−2)
p−ヒドロキシ安息香酸907重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル117重量部、ハイドロキノン30重量部、テレフタル酸150重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート294重量部及び無水酢酸940重量部を攪拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重合を行った。液晶開始温度291℃、対数粘度は1.28dl/g、重量平均分子量は約18,000の液晶性樹脂を得た。
【0070】
参考例3(A−3)
p−ヒドロキシ安息香酸870重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル251重量部、ヒドロキノン149重量部、2,6−ナフタレンジカルボン酸195重量部、テレフタル酸299重量部及び無水酢酸1314重量部を攪拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重合を行った。液晶開始温度317℃、対数粘度6.12dl/g、重量平均分子量約30,000の液晶性樹脂を得た。
【0071】
参考例4(A−4)
特開昭54−77691号公報に従って、p−アセトキシ安息香酸1265重量部と6−アセトキシ−2−ナフトエ酸456重量部を留出管を備えた反応容器に仕込み重縮合を行った。液晶開始温度293℃、対数粘度5.24dl/g、重量平均分子量約35,000の液晶性樹脂を得た。
【0072】
本発明に用いたホウ酸アルミニウムウイスカー(B)のD90/D10の値を次に示す。
【0073】
ホウ酸アルミニウムウィスカー(B)の粒径分布は、(株)堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−700により測定した。測定サンプルは、分散媒として純水を使用し、超音波バスを使用して分散させ、透過率が約80%となるように調整した。なお、粒度累積分布は体積基準で解析した。
【0074】
組成物、および、成形品のホウ酸アルミニウムウイスカー(B)の粒径分布は、組成物(ペレット)および成形品を550℃の電気炉中で5時間加熱し、樹脂分を焼却した後、その残さを測定した。
【0075】
B−1は、市販のホウ酸アルミニウムウイスカー(商品名:アルボレックス、四国化成工業(株)製、化学組成:9Al2 3 ・2B2 3 、繊維径0.5〜1.0μm、繊維長10〜30μm)であり、B−2〜B−7は、市販品を分級し、使用した。
【0076】
B−1:D90/D10= 5.8(D90=10.5,D10=1.8)
B−2:D90/D10= 8.1(D90=13.0,D10=1.6)
B−3:D90/D10= 9.5(D90= 9.5,D10=1.0)
B−4:D90/D10=12.6(D90=17.6,D10=1.4)
B−5:D90/D10=17.0(D90=17.0,D10=1.0)
B−6:D90/D10=25.0(D90=20.0,D10=0.8)
B−7:D90/D10= 3.0(D90= 7.5,D10=2.5)
本発明に用いた有機臭素化物は、二臭素化スチレン80重量%、一臭素化スチレン15重量%および二臭素化スチレン5重量%を含有するモノマ混合物を重合して得たポリ臭素化スチレン(臭素含有量59重量%)、(重量平均分子量30×104)共重合体(FR−1と称する)である。
【0077】
実施例1〜10、比較例1〜6
参考例で得た液晶性樹脂(A)100重量部と表2に示すホウ酸アルミニウムウイスカー(B)をL/D=45の30mmφ2軸押出機を用いて290〜330℃で種々の条件で溶融混練してペレットとした。なお、液晶性樹脂(A)は2軸押出機の元込め位置から供給し、ホウ酸アルミニウムウイスカー(B)は液晶性樹脂が溶融した位置からサイドフィーダーにより供給した。熱風乾燥後、このペレットを住友ネスタ−ル射出成形機プロマット40/25(住友重機械工業(株)製)に供し、シリンダー温度290〜350℃、金型温度90℃に設定し、以下に示す測定用テストピースを射出成形して得た。測定方法を以下に示す。
【0078】
(1)曲げ特性
上記の成形機を用いて、3.2mm厚×12.7mm巾×127mm長のテストピースを成形し、ASTM D790に従って測定し、10本の曲げ強度および曲げ弾性率の最小値、最大値、最大値と最小値の差、平均値を求めた。
【0079】
(2)表面平滑性
上記曲げ特性用テストピースのJIS(B0651)十点平均粗さ(Rz)を測定し、表面平滑性を求めた。
【0080】
(3)薄肉流動性
上記の成形機を用いて、シリンダー温度融点+10℃、金型温度120℃、射出速度99%、射出圧力500kgf/cm2 の条件で0.5mm厚×12.7mm巾の1.0mmφピンゲートの試験片の棒流動長を測定した。
【0081】
結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
Figure 0003873420
表1の結果から液晶性樹脂(A)と特定のD90/D10のホウ酸アルミニウムウイスカー(B)を配合した特定の液晶性樹脂組成物の場合に限って優れた曲げ強度、曲げ弾性率を有し、そのばらつきが小さく、また、表面平滑性に優れていることがわかる。また、精密成形品に有用な薄肉流動性にも優れていることがわかる。
【0083】
実施例11
実施例3においてホウ酸アルミニウムウイスカー(B−4)としてアミノシランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン)にて処理したものを使用した以外は実施例3と同様にして組成物のペレットを製造した。
【0084】
実施例12
実施例3において更に前述の有機臭素化物(FR−1)を液晶性樹脂組成物100重量部に対し表2に示した割合で液晶性樹脂と共に2軸押出機の元込め位置から供給し配合した以外は実施例3と同様にして組成物のペレットを製造した。このペレットを住友ネスタール射出成形機プロマット40/25(住友重機械工業(株)製)に供し、シリンダー温度を融点+10℃、金型温度を90℃の条件にて0.5mm(厚み)×12.7mm×127mmの燃焼試験片を成形し、該燃焼試験片を用いてUL94規格に従い垂直型燃焼テストを実施し、難燃性を評価した以外は実施例3と同様に行った。
【0085】
これらの結果を表2に示した。
【0086】
【表2】
Figure 0003873420
液晶性樹脂組成物の薄肉流動性、曲げ特性や表面平滑性を低下させることなく、難燃性を付与した。
【0087】
実施例13〜17
実施例3において更に表3に示したオレフィン系重合体を液晶性樹脂組成物100重量部に対し表3に示した割合で液晶性樹脂と共に2軸押出機の元込め位置から供給し配合した以外は実施例3と同様にして組成物のペレットを製造した。このペレットを東芝IS55EPN射出成形機(東芝機械プラスチックエンジニアリング(株)製)に供し、シリンダー温度を融点+10℃、金型温度90℃の条件で、サイズが幅8mm×高さ10mm×長さ100mmで厚さが1mmの箱型であって、厚さ0.8mmの隔壁を等間隔に4か所設けた成形品を成形し、成形品を金型から突き出すときの突き出し力を測定し、離型性の評価を行った。
【0088】
また成形品の外観を観察し、ガス焼けの有無についても評価した。
【0089】
【表3】
Figure 0003873420
液晶性樹脂組成物の機械特性や表面平滑性を低下させることなく、また表面外観を損なうことなく金型離型性を付与した。
【0090】
実施例18
実施例12において更に表4に示したオレフィン系重合体を液晶性樹脂組成物100重量部に対し表4に示した割合で液晶性樹脂と共に2軸押出機の元込め位置から供給し配合した以外は実施例12と同様にして組成物のペレットを製造した。このペレットを東芝IS55EPN射出成形機(東芝機械プラスチックエンジニアリング(株)製)に供し、シリンダー温度を融点+10℃、金型温度90℃の条件で、サイズが幅8mm×高さ10mm×長さ100mmで厚さが1mmの箱型であって、厚さ0.8mmの隔壁を等間隔に4か所設けた成形品を成形し、成形品を金型から突き出すときの突き出し力を測定し、離型性の評価を行った。
【0091】
また成形品の外観を観察し、ガス焼けの有無についても評価した。また、このペレットを住友ネスタール射出成形機プロマット40/25(住友重機械工業(株)製)に供し、シリンダー温度を融点+10℃、金型温度を90℃の条件にて0.5mm(厚み)×12.7mm×127mmの燃焼試験片を成形し、該燃焼試験片を用いてUL94規格に従い垂直型燃焼テストを実施し、難燃性を評価した。
【0092】
【表4】
Figure 0003873420
【0093】
【発明の効果】
本発明の液晶性樹脂組成物は、薄肉流動性と機械的特性および表面平滑性に優れ、とりわけ機械特性のばらつきが少なく、安定した優れた特性が得られることから、これらの特徴を有する電機・電子関連機器、精密機械関連機器、事務用機器、自動車などその他各種用途に好適な材料である。特に、ばらつきが少なく、高い弾性率を有していることから制振性に優れており、光ピックアップ部品、例えばレンズホルダーのように、小型で精密な部品で制振特性の必要な部品に有用である。

Claims (16)

  1. (A)液晶性ポリエステルおよび/または液晶性ポリエステルアミドからなる液晶性樹脂100重量部に(B)レーザー回折により求められた粒径分布において相対粒子量90%のときの粒径をD90(μm)、相対粒子量10%のときの粒径をD10(μm)としたとき、8.1≦D90/D10≦17であるホウ酸アルミニウムウイスカー1〜300重量部を配合してなる液晶性樹脂組成物。
  2. (A)液晶性ポリエステルおよび/または液晶性ポリエステルアミドからなる液晶性樹脂100重量部に(B)ホウ酸アルミニウムウイスカー1〜300重量部を含有してなる液晶性樹脂組成物において、組成物中のホウ酸アルミニウムウイスカーのレーザー回折により求められた粒径分布において相対粒子量90%のときの粒径をD90(μm)、相対粒子量10%のときの粒径をD10(μm)としたとき、
    7.3≦D90/D10≦15.3であることを特徴とする液晶性樹脂組成物。
  3. 液晶性樹脂(A)がエチレンジオキシド単位を必須成分として含有する液晶性ポリエステルおよび/または液晶性ポリエステルアミドからなる液晶性樹脂である請求項1または2のいずれか記載の液晶性樹脂組成物。
  4. 液晶性樹脂(A)が下記構造単位(I) 、(II)、(III) および(IV)からなる液晶性ポリエステルである請求項1〜のいずれか記載の液晶性樹脂組成物。
    Figure 0003873420
    (ただし式中のR1
    Figure 0003873420
    から選ばれた1種以上の基を示し、R2
    Figure 0003873420
    から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
  5. ホウ酸アルミニウムウイスカー(B)がレーザー回折により求められた粒径分布において8.1≦D90/D10≦14であるホウ酸アルミニウムウイスカーである請求項1、3、4のいずれか記載の液晶性樹脂組成物。
  6. ホウ酸アルミニウムウイスカー(B)がレーザー回折により求められた粒径分布において1.0μm<D10≦2.0μmであるホウ酸アルミニウムウイスカーである請求項1、3〜のいずれか記載の液晶性樹脂組成物。
  7. ホウ酸アルミニウムウイスカー(B)がレーザー回折により求められた粒径分布において8.0μm<D90≦18μmであるホウ酸アルミニウムウイスカーである請求項1、3〜のいずれか記載の液晶性樹脂組成物。
  8. 液晶性樹脂(A)100重量部に対して、さらに有機臭素化物0.5〜60重量部を含有せしめてなる請求項1〜のいずれかに記載の液晶性樹脂組成物。
  9. 有機臭素化物が臭素化スチレンモノマーから製造した下記構造単位の1種以上を主構成単位とし、重量平均分子量が1×103 〜120×104のポリ臭素化スチレンである請求項記載の液晶性樹脂組成物。
    Figure 0003873420
  10. 液晶性樹脂(A)100重量部に対して、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンおよび/またはプロピレンと炭素数が4以上のα−オレフィンからなる共重合体およびエチレンおよび/またはプロピレンと炭素数が4以上のα−オレフィンおよび非共役ジエンからなる共重合体から選ばれた1種以上のオレフィン系重合体0.01〜10重量部をさらに配合してなる請求項1〜のいずれか記載の液晶性樹脂組成物。
  11. 溶融状態の(A)液晶性樹脂に(B)レーザー回折により求められた粒径分布において相対粒子量90%のときの粒径をD90(μm)、相対粒子量10%のときの粒径をD10(μm)としたとき、8.1≦D90/D10≦17であるホウ酸アルミニウムウイスカーを添加配合することにより請求項1〜10のいずれか記載の液晶性樹脂組成物を製造することを特徴とする液晶性樹脂組成物の製造方法。
  12. (A)液晶性ポリエステルおよび/または液晶性ポリエステルアミドからなる液晶性樹脂100重量部に(B)ホウ酸アルミニウムウイスカー1〜300重量部を含有してなる液晶性樹脂組成物成形品において、成形品中のホウ酸アルミニウムウイスカーのレーザー回折により求められた粒径分布において相対粒子量90%のときの粒径をD90(μm)、相対粒子量10%のときの粒径をD10(μm)としたとき、6.3≦D90/D10≦13であることを特徴とする液晶性樹脂成形品。
  13. 請求項1〜10いずれか1項記載の液晶性樹脂組成物を成形してなる精密成形品。
  14. 請求項12記載の液晶性樹脂成形品からなる精密成形品。
  15. 精密成形品が制振性が必要とされる部材用である請求項13または14記載の精密成形品。
  16. 請求項1〜10いずれか1項記載の液晶性樹脂組成物を成形してなる光ピックアップ部品。
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