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JP3870514B2 - 一回拍出量検出装置および心機能診断装置 - Google Patents

一回拍出量検出装置および心機能診断装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は一回拍出量を日常生活や運動中に連続して検出するのに好適な一回拍出量とこれを用いた心機能診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
心臓は、主として心筋組織からなる筋肉性の器官であって、一定のリズムで収縮して血液を大動脈に送り出す。心臓は上部の心房と下部の心室にわかれ、心房と心室は心房中隔および心室中隔によって、左右にわかれている。心房も心室も規則正しく収縮・拡張を繰り返しているが、その時期は少しずれている。心房が収縮するときには、心室が拡張し、心房の血液が房室弁を押し開いて心室に流れ込む。この時、動脈弁は閉じており大動脈の血液が心室に流れ込むのを防ぐ。
【0003】
逆に、心房が拡張して静脈から血液を吸い込んでいるときには心室は収縮して、血液を大動脈に送り出す。この時、房室弁は心室側から押し上げられるが、房室弁と心室壁との間に形成される腱索が張った状態になり、弁が反転しないようになっている。心室が収縮すると、動脈弁は動脈壁に押しつけられて血液を通す。この時、大動脈は拡張して、心室から押し出されてきた血液の一部を蓄える。次に、心室が拡張している間、大動脈は次第に収縮して、蓄えていた血液を末梢に向かって送り出す。このため、心室から血液が送り出されていない間も、大動脈には常に血液が流れる。
【0004】
このようして心臓は、血液を大動脈に送り出すが、その一回の収縮によって送り出される血液量は一回拍出量SVと呼ばれる。その単位はリットルである。また、一回拍出量SVと心拍数HR(回/分)の積は、心拍出量COと呼ばれる。心拍出量COは、心臓から送り出される1分間当たりの血液量を示しており、その単位はリットル/分である。
【0005】
心臓に疾患があると、心筋組織の機能が低下して血液を大量に送り出すことができなくなるので、一回拍出量SVが低下する。一方、運動選手のようにトレーニングを積んでいる者は、運動強度が大きくなると一回拍出量SVが増大する。このように一回拍出量SVは、心機能の良否を反映するから、心機能を評価する際に指標として用いられることが多い。
【0006】
また、本願発明者の一人である上馬場和夫医師は、心臓移植者と健常者とが、それぞれ着座姿勢、仰向姿勢、直立姿勢をとった場合における心拍数HR、一回拍出量SVについて実測した。図35は、この測定結果を示したものである。
【0007】
この図に示すように、健常者の心拍数HRは、各姿勢の負荷に対応したものとなっており、最も負荷の高い直立姿勢において最高値となっている。上述したように、心拍数HRは、心臓から送り出すべき血液流に応じて変化するから、その時点において心筋に要求される収縮力の指標とも言える。
【0008】
しかしながら、図に示すように心臓移植者の心拍数HRは、各姿勢によらずほぼ一定となっている。また、この現象は、高齢などにより心機能が極めて低下し、心拍をペースメーカに頼らざるを得ない者も同様である。このように、心臓から送り出すべき血液量に応じて心臓の拍数を制御できないものにとっては、当然のことながら、拍数は、心筋に要求される収縮力に足り得るものではなくなる。
【0009】
これに対して、一回拍出量SVは、健常者にとっては勿論のこと、心臓移植者においても、健常者の心拍数HRと同様な変化特性を有している。このため、健常者のみならず、心臓移植者のような心拍数HRを制御できない者においても、心機能を評価する指標として極めて有用であることが判る。
【0010】
一回拍出量SVを計測する手法としては、心臓カテーテルによって、心臓の内圧を測定し、その測定結果から一回拍出量SVを算出するものがある。
また、他の方法としては、上腕部にカフ帯を装着して、動脈の血圧を測定し、その脈波波形から一回拍出量SVを算出する収縮期面積法がある。図36は、一般的な脈波波形を示したものである。脈波波形は、心臓の収縮・拡張によって生じる血液流の脈動を末梢部で測定したものであるから、その波形形状には、心臓の動きが反映されている。図中のEDは駆出期間と呼ばれ、1回の心拍中に心臓から血液が流れ出る時間に対応する。収縮期面積法にあっては、駆出期間EDとこの期間に対応する脈波波形の血圧値を積分して面積Sを算出し、これに係数Ksvを乗じることによって、一回拍出量SVを算出する。この場合、心拍出量COは以下の式で算出される。
CO=S*Ksv*HR
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一回拍出量SVは、上述したように心機能の評価指標として用いられるから、ランニング等の運動中に一回拍出量SVを知ることができれば、科学的なトレーニングを行うことが可能となる。また、心臓病を患っている患者は、日常の労作中に心機能が低下して、危険な状態に陥る場合もある。このような場合には、一回拍出量SVが減少するため、一回拍出量SVを労作中に知ることができれば患者の健康管理に役立てることができる。また、人の精神状態と神経とは密接な関係があり、精神がリラックスして落ち着いた状態にあると、自律神経の作用により、心筋が規則正しく働くようになる。この場合、一回拍出量SVの変動は、人の精神状態を表しているといえる。
【0012】
しかしながら、心臓カテーテルによって心臓の内圧を測定する方法にあっては、被験者が安静な状態にあることが前提であり、運動中や日常生活において連続的に一回拍出量SVを計測することはできない。
【0013】
また、カフ帯を用いる場合には、上腕部を大掛かり覆う必要があり、被験者に負担を強いることになる。さらに、運動中や日常生活において、被験者が腕を動かすと、その体動によって血液流が影響を受け、脈波波形に体動成分が重畳してしまう。このため、運動中や日常生活において連続的に一回拍出量SVを計測するこてができない。
【0014】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、運動中や日常生活において連続的に一回拍出量SVを検出する一回拍出量検出装置を提供することを目的とする。また、他の目的は、一回拍出量検出装置によって得られた一回拍出量SVに基づいて、心機能を評価する心機能診断装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明にあっては、生体の検出部位から脈波波形を検出する脈波検出手段と、前記生体の体動を示す体動波形を検出する体動検出手段と、前記体動波形に基づいて前記脈波波形中の体動成分を生成し、前記脈波波形から前記体動成分を除去して体動除去脈波波形を生成する体動除去手段と、前記体動除去脈波波形に基づいて、心臓の駆出期間を検出する駆出期間検出手段と、前記体動除去脈波波形に基づいて、心拍期間を算出する心拍期間算出手段と、前記心臓の駆出期間と前記心拍期間とに基づいて、一回拍出量を算出する一回拍出量算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
また、請求項2に記載の発明にあっては、生体の検出部位から脈波波形を検出する脈波検出手段と、前記生体の体動を示す体動波形を検出する体動検出手段と、前記体動波形に基づいて前記脈波波形中の体動成分を生成し、前記脈波波形から前記体動成分を除去して体動除去脈波波形を生成する体動除去手段と、前記体動除去脈波波形に基づいて、心臓の駆出期間を検出する駆出期間検出手段と、前記心臓の駆出期間における前記体動除去脈波波形に基づいて、一回拍出量を算出する一回拍出量算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】
また、請求項3に記載の発明にあっては、前記体動検出手段によって検出された体動波形に基づいて、前記生体の体動の有無を判定する判定手段を備え、前記体動除去手段は、前記判定手段の判定結果が体動無しを示す場合には、体動除去動作を停止し、前記体動除去脈波波形の替わりに、前記脈波波形を出力することを特徴とする。
【0018】
また、請求項4に記載の発明にあっては、前記駆出期間検出手段は、前記体動除去脈波波形の各ピークを検出し、最大ピークから第1番目または第2番目に現れる負のピークと最小ピークを特定することによって前記駆出期間を検出することを特徴とする。
【0019】
また、請求項5に記載の発明にあっては、生体の検出部位から脈波波形を検出する脈波検出手段と、前記生体の体動を示す体動波形を検出する体動検出手段と、前記体動波形に基づいて前記脈波波形中の体動成分を生成し、前記脈波波形から前記体動成分を除去して体動除去脈波波形を生成する体動除去手段と、前記体動除去脈波波形にウエーブレット変換を施して、各周波数領域毎に体動を除去した体動除去脈波解析データを生成するウエーブレット変換手段と、前記体動除去脈波解析データに基づいて、心臓の駆出期間を検出する駆出期間検出手段と、前記心臓の駆出期間における前記体動除去脈波波形に基づいて、一回拍出量を算出する一回拍出量算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0020】
また、請求項6に記載の発明にあっては、生体の検出部位から脈波波形を検出する脈波検出手段と、前記生体の体動を示す体動波形を検出する体動検出手段と、前記体動波形に基づいて前記脈波波形中の体動成分を生成し、前記脈波波形から前記体動成分を除去して体動除去脈波波形を生成する体動除去手段と、前記体動除去脈波波形にウエーブレット変換を施して、各周波数領域毎に体動を除去した体動除去脈波解析データを生成する体動除去手段と、対応する各周波数に基づいて、体動除去脈波解析データに周波数当たりのパワーを正規化するように補正を施して補正脈波データを生成する周波数補正手段と、前記補正脈波データに基づいて、心臓の駆出期間を検出する駆出期間検出手段と、前記心臓の駆出期間における前記体動除去脈波波形に基づいて、一回拍出量を算出する一回拍出量算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0021】
また、請求項7に記載の発明にあっては、生体の検出部位から脈波波形を検出する脈波検出手段と、前記脈波波形にウエーブレット変換を施して各周波数領域毎に脈波解析データを生成する第1のウエーブレット変換手段と、前記生体の体動を示す体動波形を検出する体動検出手段と、前記体動波形にウエーブレット変換を施して各周波数領域毎に体動解析データを生成する第2のウエーブレット変換手段と、前記脈波解析データから前記体動解析データを減算して、体動を除去した体動除去脈波解析データを生成する体動除去手段と、前記体動除去脈波解析データに基づいて、心臓の駆出期間を検出する駆出期間検出手段と、前記心臓の駆出期間における各周波数領域の前記体動除去脈波解析データを加算した結果に基づいて、一回拍出量を算出する一回拍出量算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0022】
また、請求項8に記載の発明にあっては、生体の検出部位から脈波波形を検出する脈波検出手段と、前記脈波波形にウエーブレット変換を施して各周波数領域毎に脈波解析データを生成する第1のウエーブレット変換手段と、対応する各周波数に基づいて、脈波解析データに周波数当たりのパワーを正規化するように補正を施して補正脈波解析データを生成する第1の周波数補正手段と、前記生体の体動を示す体動波形を検出する体動検出手段と、前記体動波形にウエーブレット変換を施して各周波数領域毎に体動解析データを生成する第2のウエーブレット変換手段と、対応する各周波数に基づいて、体動解析データに周波数当たりのパワーを正規化するように補正を施して補正体動解析データを生成する第2の周波数補正手段と、前記補正脈波解析データから前記補正体動解析データを減算して、体動を除去した体動除去脈波解析データを生成する体動除去手段と、前記体動除去脈波解析データに基づいて、心臓の駆出期間を検出する駆出期間検出手段と、前記心臓の駆出期間における各周波数領域の前記体動除去脈波解析データを加算した結果に基づいて、一回拍出量を算出する一回拍出量算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0023】
また、請求項9に記載の発明にあっては、前記第1のウエーブレット変換手段と前記第2のウエーブレット変換手段は、同期してウエーブレット変換を行うことを特徴とする。
【0024】
また、請求項10に記載の発明にあっては、生体の検出部位から脈波波形を検出する脈波検出手段と、前記脈波検出手段によって検出された前記脈波波形にウエーブレット変換を施して、各周波数領域毎に脈波解析データを生成するウエーブレット変換手段と、前記脈波解析データのうち、予め定められた体動に対応する周波数成分を除去して、体動除去脈波解析データを生成する体動除去手段と、前記体動除去脈波解析データに基づいて、心臓の駆出期間を検出する駆出期間検出手段と、前記心臓の駆出期間における各周波数領域の前記体動除去脈波解析データを加算した結果に基づいて、一回拍出量を算出する一回拍出量算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0025】
また、請求項11に記載の発明にあっては、生体の検出部位から脈波波形を検出する脈波検出手段と、前記脈波検出手段によって検出された前記脈波波形にウエーブレット変換を施して、各周波数領域毎に脈波解析データを生成するウエーブレット変換手段と、前記脈波解析データのうち、予め定められた体動に対応する周波数成分を除去して、体動除去脈波解析データを生成する体動除去手段と、対応する各周波数に基づいて、体動除去脈波解析データに周波数当たりのパワーを正規化するように補正を施して補正脈波解析データを生成する周波数補正手段と、前記補正脈波解析データに基づいて、心臓の駆出期間を検出する駆出期間検出手段と、前記心臓の駆出期間における各周波数領域の前記補正脈波解析データを加算した結果に基づいて、一回拍出量を算出する一回拍出量算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0026】
また、請求項12に記載の発明にあっては、生体の検出部位から脈波波形を検出する脈波検出手段と、前記脈波検出手段によって検出された前記脈波波形にウエーブレット変換を施して、各周波数領域毎に脈波解析データを生成するウエーブレット変換手段と、前記脈波解析データのうち、予め定められた体動に対応する周波数成分を除去して、体動除去脈波解析データを生成する体動除去手段と、前記体動除去解析脈波データに逆ウエーブレット変換を施して体動除去脈波波形を生成する逆ウエーブレット変換手段と、前記体動除去脈波波形に基づいて、心臓の駆出期間を検出する駆出期間検出手段と、前記心臓の駆出期間における前記体動除去脈波波形に基づいて、一回拍出量を算出する一回拍出量算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0027】
また、請求項13に記載の発明にあっては、前記一回拍出量算出手段は、前記心臓の駆出期間における体動除去脈波波形を積分することによって当該期間に対応する前記体動除去脈波波形の面積を演算し、当該面積に基づいて前記一回拍出量を演算することを特徴とする。
【0028】
また、請求項14に記載の発明にあっては、前記一回拍出量算出手段は、前記心臓の駆出期間における体動除去脈波波形の各ピーク値に基づいて当該期間に対応する前記体動除去脈波波形の面積を演算し、当該面積に基づいて前記一回拍出量を演算することを特徴とする。
【0031】
また、請求項15に記載の発明にあっては、基準装置によって測定された基準一回拍出量と前記一回拍出量算出手段によって測定された前記一回拍出量との比を補正係数として算出する補正係数算出手段と、前記補正係数を前記生体の心拍数と対応付けて記憶する記憶手段と、前記生体の心拍数に応じた前記補正係数を前記記憶手段から読み出し、読み出した前記補正係数と前記一回拍出量算出手段によって算出された前記一回拍出量とを乗算し、この乗算結果を一回拍出量として出力する乗算手段とを備えたことを特徴とする。
【0032】
また、請求項16に記載の発明にあっては、前記一回拍出量検出装置を備えた心機能診断装置であって、前記一回拍出量検出装置によって検出された一回拍出量を告知する告知手段を備えたことを特徴とする。
【0033】
また、請求項17に記載の発明にあっては、前記一回拍出量検出装置を備えた心機能診断装置であって、前記一回拍出量検出装置によって検出された一回拍出量を各閾値と比較して、評価指標を生成する評価手段と、前記評価手段によって生成された評価指標を告知する告知手段とを備えたことを特徴とする。
【0034】
また、請求項18に記載の発明にあっては、前記一回拍出量検出装置を備えた心機能診断装置であって、前記一回拍出量の変化率を算出する変化率算出手段と、前記一回拍出量の変化率を各閾値と比較して、評価指標を生成する評価手段と、前記評価手段によって生成された評価指標を告知する告知手段とを備えたことを特徴とする。
【0035】
また、請求項19に記載の発明にあっては、前記評価手段は、前記生体の心拍数に応じて前記各閾値を変更する変更部を備えたことを特徴とする。
【0036】
また、請求項20に記載の発明にあっては、前記評価手段は、被験者の体表面積を算出するためのパラメータを入力する入力部と、入力された前記パラメータに基づいて体表面積を演算する演算部と、演算された前記体表面積に基づいて前記各閾値を変更する変更部とを備えることを特徴とする。
【0037】
【発明の実施の形態】
A.機能構成
まず、本発明の一実施形態に係わる心機能診断装置の機能を図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係わる心機能診断装置の機能ブロック図である。図において、f1は脈波検出手段であって、脈波波形を検出する。脈波波形は、例えば、指尖部や指の根本等の末梢部の血液流を光学式センサで検出することによって得られる。f2は体動検出手段であって、体動を検出して体動波形を出力する。これにより、人が動いたことが検知される。
【0038】
次に、f3は体動除去手段であって、体動波形に基づいて脈波波形中の体動成分を生成し、脈波波形から前記体動成分を除去して体動除去脈波波形を生成する。これにより、運動中であっても、体動の影響を受けない脈波波形を生成することが可能となる。
【0039】
次に、f4は判定手段であって、体動波形のレベル変化に基づいて、体動の有無を判定し、体動が無い場合には、体動除去手段f3の動作を停止させるように制御する。これにより、体動除去処理に伴う演算を低減することができる。
【0040】
次に、f5は駆出期間検出手段であって、体動除去脈波波形に基づいて、心臓の駆出期間を検出する。駆出期間とは、心臓が1回の収縮で血液を大動脈に送り出している期間をいう。ここで、駆出期間についてより詳細に説明する。
【0041】
図2は心臓の周期を示したものである。図において、SWは心電波形であり、MH1は心臓から流出する直後の大動脈血圧波形、MH2は末梢部(橈骨動脈)の一般的な脈波波形である。この図において、血液の流動に伴う時間遅れは無視してある。駆出期間EDは、厳密な意味においては、大動脈血圧波形MH1における大動脈弁開放時刻t1と大動脈弁閉鎖時刻t2の時間間隔となり、安静時において、280ms程度である。大動脈弁の閉鎖は心室の収縮によって起こるので、この時間間隔は、心室収縮期の時間(Sysolic Time)とほぼ一致する。ところで、末梢部の脈波波形MH2におけるノッチN2は、ディクローティブノッチN2と呼ばれ、大動脈弁閉鎖によって生じるものである。このため、脈波波形MH2における最小ピークP0からピークP4までの時間間隔は、駆出期間EDに相当する。
【0042】
また、脈波波形には個人差があり、また同一個人においても波形形状が体調等によって変化することが知られている。このため、末梢部の脈波波形MH2は、MH3に示すようにピークP1とピークP3が重なり、ノッチN1が生じない場合がある。この場合にも駆出期間EDは、最小ピークP0からピークP4までの時間間隔となる。
【0043】
ところで、脈波波形MH2における最小ピークP0からノッチN1のピークP2までの期間は、見積の収縮時間(Estimated Sysolic Time)と呼ばれ、この時間間隔を駆出期間EDと考える学説もある。いずれにしても、これらの期間が、心臓の収縮期間を代表する値であることについては、見解の相違はない。
【0044】
これらのことから、この明細書で用いる駆出期間EDは、厳密な意味での駆出時間(Ejection Duration)のみならず、心室収縮期の時間(Sysolic Time)および見積の収縮時間(Estimated Sysolic Time)を含むものとして、以下の説明を進める。具体的には、駆出期間EDは、最小ピークから、最大ピークP1の後に発生する第1番目または第2番目に生じる負のピークP2,P4までの期間として把握される。
【0045】
次に、f6は、一回拍出量検出手段であって、駆出期間中の体動除去脈波波形に基づいて1回拍出量SVを算出する。
【0046】
次に、f7は評価手段であって、心拍出量に基づいて、心機能の状態を評価する。すなわち、心機能の評価は、心臓から送り出される1分間当たりの血液量によって評価される。また、f8は告知手段であって、評価結果を告知する。これにより、被験者や第三者である医師は、被験者の心機能を知ることができる。
【0047】
B.第1実施形態
1.第1実施形態の構成
本発明の一実施形態に係わる心機能診断装置の構成を図面を参照しつつ説明する。
1−1:第1実施形態の外観構成
図3は第1実施形態に係わる心機能診断装置の外観構成を示す斜視図である。この図に示すように、心機能診断装置1には、腕時計構造を有する装置本体110に一対のバンド144,144が設けられており、その一方の締着具145の締め付け側には、脈波検出用センサユニット130が設けられている。
【0048】
また、使用時においては、図33(b)に示すように、締着具145に設けられた脈波検出用センサユニット130が橈骨動脈143の近傍に位置するべく、腕時計146が被験者の左腕147に巻回される。このため、脈波を恒常的に検出することが可能となる。なお、この巻回については通常の腕時計の使用状態と何等変わることがない。
【0049】
また、装置本体110は、樹脂製の時計ケース200(本体ケース)を備えており、この時計ケース200の表面側には、現在時刻や日付に加えて、走行時や歩行時のピッチ、および脈拍数などの脈波情報などを表示するELバックライト付きの液晶表示装置210が構成されている。また、液晶表示装置210には一回拍出量SVに代表される心機能の状態が表示されるようになっている。液晶表示装置210には、セグメント表示領域の他、ドット表示領域が構成されており、ドット表示領域では、各種の情報をグラフィック表示可能である。
【0050】
また、時計ケース200の内部には、加速度センサが130’が組み込まれており、これによって、ランニング中の腕の振りや、体の上下動によって生じる体動が検出される。また、その内部には、脈波検出用センサユニット130が計測した脈波波形MHに基づいて一回拍出量SVの変化などを求めるとともに、それを液晶表示装置210に表示するために、各種の制御やデータ処理を行うマイクロコンピュータなどからなる制御部が構成されている。制御部には計時回路も構成されており、通常時刻、ラップタイム、スプリットタイムなども液晶表示装置210に表示できるようになっている。また、時計ケース200の外周部には、時刻合わせや表示モードの切換などの外部操作を行うためのボタンスイッチ111,112が構成されている。
【0051】
次に、脈波検出用センサユニット130は、図4に示すようにLED32、フォトトランジスタ33などから構成される。スイッチSWがon状態となり、電源電圧が印加されると、LED32から光が照射され、血管や組織によって反射された後に、フォトトランジスタ33によって受光され、脈波信号Mが検出される。ここで、LEDの発光波長は、血液中のヘモグロビンの吸収波長ピーク付近に選ばれる。このため、受光レベルは血流量に応じて変化する。したがって、受光レベルを検出することによって、脈波波形を検出できる。
また、LED32としては、InGaN系(インジウム−ガリウム−窒素系)の青色LEDが好適である。青色LEDの発光スペクトルは、例えば450nmに発光ピークを有し、その発光波長域は、350nmから600nmまでの範囲にある。この場合には、かかる発光特性を有するLEDに対応させてフォトトランジスタ33として、GaAsP系(ガリウム−砒素−リン系)のフォトトランジスタを用いればよい。このフォトトランジスタ33の受光波長領域は、例えば、主要感度領域が300nmから600nmまでの範囲にあって、300nm以下にも感度領域がある。このような青色LEDとフォトトランジスタ33とを組み合わせると、その重なり領域である300nmから600nmまでの波長領域において、脈波が検出される。この場合には、以下の利点がある。
【0052】
まず、外光に含まれる光のうち、波長領域が700nm以下の光は、指の組織を透過しにくい傾向があるため、外光がセンサ固定用バンドで覆われていない指の部分に照射されても、指の組織を介してフォトトランジスタ33まで到達せず、検出に影響を与えない波長領域の光のみがフォトトランジスタ33に達する。一方、300nmより低波長領域の光は、皮膚表面でほとんど吸収されるので、受光波長領域を700nm以下としても、実質的な受光波長領域は、300nm〜700nmとなる。したがって、指を大掛かりに覆わなくとも、外光の影響を抑圧することができる。また、血液中のヘモグロビンは、波長が300nmから700nmまでの光に対する吸光係数が大きく、波長が880nmの光に対する吸光係数に比して数倍〜約100倍以上大きい。したがって、この例のように、ヘモグロビンの吸光特性に合わせて、吸光特性が大きい波長領域(300nmから700nm)の光を検出光として用いると、その検出値は、血量変化に応じて感度よく変化するので、血量変化に基づく脈波波形MHのS/N比を高めることができる。
【0053】
1−2:第1実施形態の電気的構成
次に、心機能診断装置の電気的構成を図5を参照して説明する。図5は心機能診断装置の電気的構成を示すブロック図である。
心機能診断装置1は、以下の部分から構成される。脈波検出用センサユニット130は脈波波形MHを検出し、体動除去部11に出力する。加速度センサ130’は、体動を加速度として検出して体動波形THを生成する。波形処理部10は、体動除去部11において体動成分を正確に除去するため、体動波形THに対して波形処理を施す。
【0054】
ここで、脈波波形MH中の体動成分をMHt、真の脈波成分(体動除去脈波波形)をMH’で表すこととすれば、MH=MHt+MH’となる。体動波形THは、腕の振りの加速度そのものとして検出されるが、血流は血管や組織の影響を受けるので、体動成分MHtは体動波形THを鈍らせたものになる。このため、波形処理部10は、ローパスフィルタで構成されている。なお、ローパスフィルタの形式や定数は、実際に測定したデータから定められる。
【0055】
次に、体動除去部11は、脈波波形MHから波形処理部10の出力波形MHtを減算して、体動除去脈波波形MH’を生成する。体動除去脈波波形MH’は、図示せぬA/D変換器を介してデジタル信号に変換され、心拍数検出部12と駆出期間検出部13に供給される。
【0056】
ところで、体動がないにも拘わらず、体動除去部11を動作させ体動除去を行うと、加速度センサ130’のノイズにより、体動除去部11の出力信号のSN比が劣化してしまい、また、体動除去動作のために電力を消費してしまう。このため、本実施形態にあっては、判定部11’を設けている。判定部11’は、体動波形THに基づいて、体動の有無を判定し制御信号Cを生成する。具体的には、閾値と体動波形THを比較することによって、判定する。この閾値は、加速度センサ130’のノイズレベルを考慮して、体動の有無が判定できるように予め定められる。そして、制御信号Cが体動無しを示す場合には、波形処理部10と体動除去部11の動作が停止される。この場合には、脈波波形MHが体動除去部11から直接出力される。これにより、体動除去部11の出力信号のSN比を改善することができ、また、装置の消費電力を低減することができる。
【0057】
次に、心拍数検出部12と駆出期間検出部13は、体動除去脈波波形MH’に基づいて、心拍数HRと駆出期間EDを検出する。本実施形態にあっては、体動除去脈波波形MH’の振幅レベルを解析することによって、心拍数HRと駆出期間EDを求めている。
心拍数検出部12と駆出期間検出部13は、体動除去脈波波形MH’の形状を特定する波形パラメータを抽出する。ここで、1拍分の体動除去脈波波形MH’が図6に示すごとき形状をしているとすれば、波形パラメータを以下のように定義する。なお、図6において縦軸は血圧であり、横軸は時間である。
▲1▼1拍に対応した脈波が立ち上がってから(以下、この立ち上がり時刻を脈波開始時刻という)次の拍に対応した脈波が立ち上がりを開始するまでの時間t6
▲2▼脈波内に順次現れる極大点P1,極小点P2,極大点P3,極小点P4および極大点P5の血圧値y1〜y5
▲3▼脈波開始時刻以後、上記各点P1〜P5が現れるまでの経過時間t1〜t5
【0058】
心拍数検出部12と駆出期間検出部13は、波形パラメータを算出するために、上記極大点或いは極小点について、これら各点に関連した「ピーク情報」と呼ばれる情報を抽出する。なお、ピーク情報の詳細についてはその内容が脈象判定部の構成,動作に関連するため、回路の構成を説明した時点でピーク情報の詳細に言及する。
【0059】
図7は心拍数検出部12と駆出期間検出部13の構成を示すブロック図である。図において181はマイクロコンピュータであって、各構成部分を制御する。184はRAMによって構成される波形メモリであり、体動除去脈波波形MH’の波形値Wを順次記憶する。191は波形値アドレスカウンタであり、マイクロコンピュータ181から波形採取指示STARTが出力されている期間、サンプリングクロックφをカウントし、そのカウント結果を波形値Wを書き込むべき波形値アドレスADR1として出力する。この波形値アドレスADR1はマイクロコンピュータ181により監視される。
【0060】
192はセレクタであり、マイクロコンピュータ181からセレクト信号S1が出力されていない場合、波形値アドレスカウンタ191が出力する波形値アドレスADR1を選択して波形メモリ184のアドレス入力端へ供給する。一方、マイクロコンピュータ181からセレクト信号S1が出力されている場合、マイクロコンピュータ181が出力する読み出しアドレスADR4を選択して波形メモリ184のアドレス入力端へ供給する。
また、体動除去脈波波形MH’は、A/D変換器182とローパスフィルタ183を介して波形メモリ183に取り込まれる。
【0061】
201は微分回路であり、ローパスフィルタ183から順次出力される波形値Wの時間微分を演算して出力する。
202は零クロス検出回路であり、波形値Wが極大値または極小値となることにより波形値Wの時間微分が0となった場合に零クロス検出パルスZを出力する。さらに詳述すると、零クロス検出回路202は、図6に例示する脈波の波形においてピーク点P0,P1,P2,…,を検出するために設けられた回路であり、これらのピーク点に対応した波形値Wが入力された場合に零クロス検出パルスZを出力する。
【0062】
203はピークアドレスカウンタであり、マイクロコンピュータ181から波形採取指示STARTが出力されている期間、零クロス検出パルスZをカウントし、そのカウント結果をピークアドレスADR2として出力する。
204は移動平均算出回路であり、現時点までに微分回路201から出力された過去所定個数分の波形値Wの時間微分値の平均値を算出し、その結果を現時点に至るまでの脈波の傾斜を表す傾斜情報SLPとして出力する。
【0063】
205は次に述べるピーク情報を記憶するために設けられたピーク情報メモリである。ここで、以下にピーク情報の詳細について説明する。すなわち、図9に示すピーク情報の内容の詳細は以下に列挙する通りである。
▲1▼波形値アドレスADR1
ローパスフィルタ183から出力される波形値Wが極大値または極小値となった時点で波形値アドレスカウンタ191から出力されている書き込みアドレスである。換言すれば、極大値または極小値に相当する波形値Wの波形メモリ184における書き込みアドレスである。
▲2▼ピーク種別B/T
上記波形値アドレスADR1に書き込まれた波形値Wが極大値T(Top)であるか極小値B(Bottom)であるかを示す情報である。
▲3▼波形値W
上記極大値または極小値に相当する波形値である。
▲4▼ストローク情報STRK
直前のピーク値から当該ピーク値に至るまでの波形値の変化分である。
▲5▼傾斜情報SLP
当該ピーク値に至るまでの過去所定個数分の波形値の時間微分の平均値である。
【0064】
次に、マイクロコンピュータ181の制御下における心拍数検出部12と駆出期間検出部13の動作を説明する。
【0065】
(a)波形およびそのピーク情報の採取
マイクロコンピュータ181により波形採取指示STARTが出力されると、波形値アドレスカウンタ191およびピークアドレスカウンタ203のリセットが解除される。
この結果、波形値アドレスカウンタ191によりサンプリングクロックφのカウントが開始され、そのカウント値が波形値アドレスADR1としてセレクタ192を介して波形メモリ184に供給される。そして、人体から検出された脈波信号がA/D変換器182に入力され、サンプリングクロックφに従ってデジタル信号に順次変換され、ローパスフィルタ183を介し波形値Wとして順次出力される。このようにして出力された波形値Wは、波形メモリ184に順次供給され、その時点において波形値アドレスADR1によって指定される記憶領域に書込まれる。以上の動作により、図8に例示する脈波波形に対応した一連の波形値Wが波形メモリ184に蓄積される。
【0066】
一方、上記動作と並行して、ピーク情報の検出およびピーク情報メモリ205への書込みが、以下に説明するようにして行われる。
まず、体動除去脈波波形MH’の波形値Wの時間微分が微分回路201によって演算され、この時間微分が零クロス検出回路202および移動平均算出回路204に入力される。移動平均算出回路204は、このようにして波形値Wの時間微分値が供給される毎に過去所定個数の時間微分値の平均値(すなわち、移動平均値)を演算し、演算結果を傾斜情報SLPとして出力する。ここで、波形値Wが上昇中もしくは上昇を終えて極大状態となっている場合は傾斜情報SLPとして正の値が出力され、下降中もしくは下降を終えて極小状態となっている場合は傾斜情報SLPとして負の値が出力される。
【0067】
そして、例えば図8に示す極大点P1に対応した波形値Wがローパスフィルタ183から出力されると、時間微分として0が微分回路201から出力され、零クロス検出回路202から零クロス検出パルスZが出力される。
この結果、マイクロコンピュータ181により、その時点における波形値アドレスカウンタ191のカウント値である波形アドレスADR1,波形値W,ピークアドレスカウンタのカウント値であるピークアドレスADR2(この場合、ADR2=0)および傾斜情報SLPが取り込まれる。また、零クロス検出パルスZが出力されることによってピークアドレスカウンタ203のカウント値ADR2が1になる。
【0068】
一方、マイクロコンピュータ181は、取り込んだ傾斜情報SLPの符号に基づいてピーク種別B/Tを作成する。この場合のように極大値P1の波形値Wが出力されている時にはその時点において正の傾斜情報が出力されているので、マイクロコンピュータ181はピーク情報B/Tの値を極大値に対応したものとする。そしてマイクロコンピュータ181は、ピークアドレスカウンタ203から取り込んだピークアドレスADR2(この場合、ADR2=0)をそのまま書込アドレスADR3として指定し、波形値W,この波形値Wに対応した波形アドレスADR1,ピーク種別B/T,傾斜情報SLPを第1回目のピーク情報としてピーク情報メモリ205に書き込む。なお、第1回目のピーク情報の書き込みの場合は、直前のピーク情報がないためストローク情報STRKの作成および書き込みは行わない。
【0069】
その後、図8に示す極小点P2に対応した波形値Wがローパスフィルタ183から出力されると、上述と同様に零クロス検出パルスZが出力され、書込アドレスADR1,波形値W,ピークアドレスADR2(=1),傾斜情報SLP(<0)がマイクロコンピュータ181により取り込まれる。
そして、上記と同様、マイクロコンピュータ181により、傾斜情報SLPに基づいてピーク種別B/T(この場合、”B”)が決定される。また、マイクロコンピュータ181によりピークアドレスADR2よりも1だけ小さいアドレスが読み出しアドレスADR3としてピーク情報メモリ205に供給され、第1回目に書き込まれた波形値Wが読み出される。そして、マイクロコンピュータ181により、ローパスフィルタ183から今回取り込んだ波形値Wとピーク情報メモリ205から読み出した第1回目の波形値Wとの差分が演算され、ストローク情報STRKが求められる。このようにして求められたピーク種別B/T,ストローク情報STRKが他の情報,すなわち波形値アドレスADR1,波形値W,傾斜情報SLP,と共に第2回目のピーク情報としてピーク情報メモリ205のピークアドレスADR3=1に対応した記憶領域に書き込まれる。以後、ピーク点P3,P4,…,が検出された場合も同様の動作が行われる。
そして所定のタイミングで、マイクロコンピュータ181により波形採取指示STARTの出力が停止され、波形値Wおよびピーク情報の採取が終了する。
【0070】
(b)脈波波形の分割処理
ピーク情報メモリ205に記憶された各種情報のうち、波形パラメータの採取を行う1拍分の波形に対応した情報を特定するための処理がマイクロコンピュータ181により行われる。
まず、ピーク情報メモリ205から各ピーク点P0,P1,P2,…,に対応した傾斜情報SLPおよびストローク情報STRKが順次読み出される。次いで、各ストローク情報STRKの中から正の傾斜に対応したストローク情報(すなわち、対応する傾斜情報SLPが正の値となっているもの)が選択され、これらのストローク情報の中からさらに値の大きなもの上位所定個数が選択される。そして、選択されたストローク情報STRKの中から中央値に相当するものが選択され、波形パラメータの抽出を行うべき1拍分の脈波の立ち上がり部(例えば図27において符号STRKMによって示した立ち上がり部)のストローク情報が求められる。そして、当該ストローク情報のピークアドレスよりも1だけ前のピークアドレス(すなわち、波形パラメータの抽出を行うべき1拍分の脈波の開始点P6のピークアドレス)が求められる。
このようにして一拍分の波形が特定されると、図6に示す時間t6が算出される。
【0071】
(c)波形パラメータの抽出
マイクロコンピュータ181は、ピーク情報メモリ205に記憶された上記1拍分の脈波に対応した各ピーク情報を参照して各波形パラメータを算出する。この処理は例えば次のようにして求められる。
▲1▼血圧値y1〜y5
ピーク点P6〜P11に対応する波形値をそれぞれy0〜y5とする。
▲2▼時間t1
ピーク点P7に対応する波形アドレスからピーク点P6に対応する波形アドレスを差し引き、その結果に対してサンプリングクロックφの周期を乗じてt1 を算出する。
▲3▼時間t2〜t6
上記t1と同様、対応する各ピーク点間の波形アドレス差に基づいて演算する。そして、以上のようにして得られた各波形パラメータはマイクロコンピュータ181内部のバッファメモリに蓄積される。
【0072】
(d)波形パラメータに基づく拍数の算出
時間t6は一拍分の時間である。マイクロコンピュータ181は、時間t6に基づいて60/t6を算出し、心拍数HRを求める。
【0073】
(e)波形パラメータに基づく駆出期間の算出
マイクロコンピュータ181は、その内部のバッファメモリにアクセスし、波形パラメータに基づいて1心拍中の最小ピークPminと最大ピークPmaxを特定する。例えば、図6に示す波形にあっては、P0が最小ピークPminとしてP1が最大ピークPmaxとして特定される。
次に、最大ピークPmaxの後、第1番目または第2番目に現れる負のピーク(ノッチ)を特定する。この例では、第2番目に現れる負のピークを特定するものとすれば、例えば、図6に示す波形にあっては、P4が負のピークとして特定される。そして、最小ピークPminから負のピークP4までの期間を駆出期間EDとして算出する。例えば、図6に示す波形にあっては、期間t4が駆出期間EDとして出力される。
このようにして、心拍数HRと駆出期間EDが算出される。
【0074】
次に、図5に示す一回拍出量算出部14は、体動除去脈波波形MH’と駆出期間EDに基づいて、駆出期間ED中の体動除去脈波波形MH’を特定し、その面積Sを算出する。具体的には、駆出期間ED中の各サンプルにおける体動除去脈波波形MH’を順次加算することによって、体動除去脈波波形MH’を積分して面積Sを算出している。そして、面積Sに係数係数Ksvを乗じることによって、一回拍出量SVを算出する。すなわち、一回心拍出量SVは以下の式で算出される。
SV=Ksv*S
【0075】
次に、変化率算出部15は、平均値算出部151と比較部152から構成されており、一回拍出量SVの変化率SV’を算出する。平均値算出部151は、一回拍出量SVの平均値SVaを算出する。例えば、n番目に検出された一回拍出量をSVnで表すものとすれば、一回拍出量SVnを検出したタイミングにおける平均値SVaは、計測開始からの全ての平均値であってもよいし、あるいは、次式で与えられる移動平均であってもよい。
SVa=(SVn-m+1+SVn-m+2+…+SVn-1+SVn)/m
例えば、m=60とすることで、略1分間の平均を算出することができる。
【0076】
次に、比較部152は、SV/SVaを演算して、一回拍出量変化率SV’を算出する。ところで、1心拍あたりの呼吸数は、通常、4回以内であり、また、一回拍出量SVは呼吸に同期して変動することが知られている。したがって、呼吸による変動をキャンセルするために、一回拍出量SVをk回加算平均して、この平均値とSVaから一回拍出量変化率SV’を算出するようにしてもよい。この場合には、m>k≧4に選べばよい。
【0077】
次に、評価部16は、メモリと比較器(図示せず)から構成され、変化率SV’に基づいて、心機能を評価して評価指標Xを生成する。メモリには、変化率Sのデレーディングに用いられる閾値が心拍数HRと対応付けられて格納されている。検出時の心拍数HRに応じた閾値をメモリから読み出すことができる。閾値は、グレーディングの数に応じて設定されるが、この例では、閾値としてR1,R2を設定する。この閾値R1,R2は、製品の出荷時に予め記憶されているものであっても良いし、あるいは、医師やトレーナーがトレーニングの開始前に適宜設定したものであっても良い。
【0078】
また、比較器は、一回拍出量変化率SV’と閾値R1,R2とを比較して、評価指標Xを生成する。この例にあっては、SV<R1で評価指標X1を生成し、R1≦SV<R2で評価指標X2が生成され、R2≦SVで評価指標X3が生成される。ここで、評価指標X1〜X3は、この心機能診断装置1の用いられ方によって、その意味するところが異なる。例えば、運動トレーニングに用いる場合には、適切な運動強度を維持するための尺度となるし、心疾患のリハビリテーションにおいて心機能を監視する場合には、回復の程度を示す尺度となる。
【0079】
次に、表示部17は、上述した液晶表示装置210等から構成され、そこには一回拍出量SV、評価指標X、あるいは評価指標Xと対応付けられたメッセージ等が表示される。なお、表示の態様としては、フェイスチャート、文字、記号等がある。これにより、心機能の評価結果を被験者に告知することができる。
例えば、ランニングにおいてこの心機能診断装置1を用いる場合には、トレーナーが閾値R1,R2を設定することによって、適切な心拍出量COを保つように被験者に告知することが可能となる。この場合には、評価指標X1で「ペースを上げましょう。」、評価指標X2で「ペースを維持しましょう。」、評価指標X3で「ペースを下げましょう。」といったメッセージ文を表示部17に表示させればよい。
【0080】
ところで、自立訓練法は集中的自己弛緩法とも呼ばれ、緊張を取り除くことによって、健康増進と健康の回復に役立つことが知られている。そこでは、精神をリラックスした状態に置くことが課題とされる。しかし、リラックスしようと意識しても、そのことに捕らわれるあまり、却って緊張してしまうこともある。
このような場合に自己の精神状態を知ることができれば、訓練を効果的に行うことができる。ここで、上述した一回拍出量変化率SV’は、リラックスの程度を示す指標となる。すなわち、一回拍出量変化率SV’が小さくなれば、精神が安定してリラックスした状態に近づいていることになる。
【0081】
そこで、閾値R1,R2をリラックスの程度が判別できるように設定しても良い。例えば、自立訓練法医師においては、医師が閾値R1,R2を設定することによって、被験者の精神状態を告知することが可能となる。この場合には、評価指標X1で「とてもリラックスしています。」、評価指標X2で「この状態を維持しましょう。」、評価指標X3で「緊張をほぐし、ゆったりとした感じをイメージしましょう。」といったメッセージ文を表示させればよい。
【0082】
C.第2実施形態
次に第2実施形態に係わる心機能診断装置を説明する。
1.第2実施形態の構成
図10は、第2実施形態に係わる心機能診断装置1のブロック図である。第2実施形態は、第1実施形態と同様に加速度センサ130’と波形処理部10を用いて体動成分MHtを検出するが、第1実施形態で説明した体動除去と、心拍数および駆出期間の検出をウエーブレット変換を用いて行う点で相違する。なお、第2実施形態の外観構成は、図3に示す第1実施形態の外観構成と同一である。
【0083】
1−1.第1,第2のウエーブレット変換部および第1,第2の周波数補正部
図10において、20は第1のウエーブレット変換部であって、脈波検出用センサユニット130から出力される脈波波形MHに対して周知のウエーブレット変換を施して、脈波解析データMKDを生成する。また、22は第2のウエーブレット変換部であって、加速度センサ130’から出力される体動波形MHtに対して周知のウエーブレット変換を施して、体動解析データTKDを生成する。
【0084】
一般に、信号を時間と周波数の両面から同時に捉える時間周波数解析において、ウエーブレットは信号の部分を切り出す単位となる。ウエーブレット変換は、この単位で切り出した信号各部の大きさを表している。ウエーブレット変換を定義するために基底関数として、時間的にも周波数的にも局在化した関数ψ(x)をマザー・ウエーブレットとして導入する。ここで、関数f(x)のマザー・ウエーブレットψ(x)によるウエーブレット変換は次のように定義される。
【数1】
Figure 0003870514
【0085】
数1においてbは、マザー・ウエーブレットψ(x)をトランスレート(平行移動)する際に用いるパラメータであり、一方、aはスケール(伸縮)する際のパラメータである。したがって、数1においてウエーブレットψ((x−b)/a)は、マザー・ウエーブレットψ(x)をbだけ平行移動し、aだけ伸縮したものである。この場合、スケールパラメータaに対応してマザー・ウエーブレットψ(x)の幅は伸長されるので、1/aは周波数に対応するものとなる。なお、詳細な構成については後述する。
【0086】
次に、21は第1の周波数補正部であって脈波解析データMKDに対して周波数補正を行う。上記した数1には周波数に対応する「1/a1/2」の項があるが、異なる周波数領域間でデータを比較する場合には、この項の影響を補正する必要がある。第1の周波数補正部21はこのために設けられたものであり、ウエーブレットデータWDに係数a1/2を乗算して、脈波補正データMKD’を生成する。これにより、対応する各周波数に基づいて、周波数当たりのパワー密度が一定になるように補正を施すことができる。また、23は第2の周波数補正部であって、第1の周波数補正部21と同様に、周波数補正を施し、体動解析データTKDから体動補正データTKD’を生成する。
【0087】
ここで、第1のウエーブレット変換部20の構成を図11を用いて詳細に説明する。なお、第2のウエーブレット変換部22は第1のウエーブレット変換部20と同様に構成されているので、説明を省略する。
脈波波形MHは、A/D変換器によって脈波データMDに変換され、第1のウエーブレット変換部20に供給されるようになっている。
この第1のウエーブレット変換部20は、上記した数1の演算処理を行う構成であって、クロックCKが供給され、クロック周期で演算処理が行われるようになっており、マザー・ウエーブレットψ(x)を記憶する基底関数記憶部W1、スケールパラメータaを変換するスケール変換部W2、バッファメモリW3、トランスレートを行う平行移動部W4および乗算部W5から構成される。なお、基底関数記憶部W1に記憶するマザー・ウエーブレットψ(x)としては、ガボールウエーブレットの他、メキシカンハット、Haarウエーブレット、Meyerウエーブレット、Shannonウエーブレット等が適用できる。
【0088】
まず、基底関数記憶部W1からマザー・ウエーブレットψ(x)が読み出されると、スケール変換部W2はスケールパラメータaの変換を行う。ここで、スケールパラメータaは周期に対応するものであるから、aが大きくなると、マザー・ウエーブレットψ(x)は時間軸上で伸長される。この場合、基底関数記憶部W1に記憶されるマザー・ウエーブレットψ(x)のデータ量は一定であるので、aが大きくなると単位時間当たりのデータ量が減少してしまう。スケール変換部W2は、これを補うように補間処理を行うとともに、aが小さくなると間引き処理を行って、関数ψ(x/a)を生成する。このデータはバッファメモリW3に一旦格納される。
【0089】
次に、平行移動部W4はバッファメモリW3からトランスレートパラメータbに応じたタイミングで関数ψ(x/a)を読み出すことにより、関数ψ(x/a)の平行移動を行い関数ψ(x−b/a)を生成する。
【0090】
次に、乗算部W4は、変数1/a1/2、関数ψ(x−b/a)および脈波データMDを乗算して心拍単位でウエーブレット変換を行い、脈波解析データMKDを生成する。この例において、脈波解析データMKDは、0Hz〜0.5Hz、0.5Hz〜1.0Hz、1.0Hz〜1.5Hz、1.5Hz〜2.0Hz、2.0Hz〜2.5Hz、2.5Hz〜3.0Hz、3.0Hz〜3.5Hz、3.5Hz〜4.0Hzといった周波数領域に分割されて出力される。
図12は、脈波波形MHの一部の期間について、脈波解析データMKDを示したものである。この図において、期間TはピークP4の近傍にあり、脈波解析データMKDは、期間Tを8分割した時間間隔で得られる。ところで、ウエーブレット変換においては、周波数分解能と時間分解能はトレードオフの関係にあるので、周波数分解能を犠牲にすれば、より短い時間間隔で脈波解析データを得ることもできる。
このようにして、生成された脈波解析データMKDと体動解析データTKDは、第1,第2の周波数補正部21,23によって周波数補正が施され、脈波補正データMKD’、体動補正データTKD’として出力される。
【0091】
1−2.体動除去部
次に、体動除去部11は、脈波補正データMKD’から体動補正データTKD’を減算して体動除去脈波データMKD’’を生成する。この点について、具体的に説明する。なお、以下の説明では、使用者が手でコップを持ち上げた後、これを元の位置に戻した場合を想定する。この場合、図13(a)に示す脈波波形MHが脈波検出用センサユニット130によって検出され、また、同時に図13(b)に示す体動波形MHtが波形処理部10によって検出されたものとする。
【0092】
ここで、体動波形MHtは、時刻T1から増加しはじめ、時刻T2で正のピークとなり、その後、次第に減少して時刻T2でレベル0を通過し、時刻T3で負のピークに達し、時刻T4でレベル0に戻っている。ところで、体動波形THは加速度センサ21によって検出されるため、時刻T3は使用者がコップを最大に持ち上げた時刻に対応し、時刻T1は持上開始時刻に対応し、また、時刻T4は持上終了時刻に対応する。したがって、時刻T1から時刻T4までの期間が体動が存在する期間となる。なお、図13(c)は仮に体動がなかったとした場合の脈波波形MH’である。また、この例において、脈波波形MHの基本波周波数は、1.3Hzとなっている。
【0093】
ここで、図14に期間Tc(図13参照)における脈波補正データMKD’を示し、図15に期間Tcにおける体動補正データTKD’を示す。この図から、体動波形THには、0.0Hz〜1.0Hzの周波数領域において比較的大きなレベルの周波数成分が存在していることが判る。脈波補正データMKD’と体動補正データTKD’が、体動除去部11に供給されると、体動除去部11は、脈波補正データMKD’から体動補正データTKD’を減算して、図16に示す体動成分が除去された体動除去脈波データMKD''を生成する。これにより、体動がある場合でもその影響をキャンセルすることが可能となる。
【0094】
1−3.判定部
次に、判定部11’は、体動波形THを予め定められた閾値と比較して、体動の有無を示す制御信号Cを生成し、これを波形処理部10、第2のウエーブレット変換部22および第2の周波数補正部23に供給する。これによって、体動が無い場合には、波形処理部10、第2のウエーブレット変換部22および第2の周波数補正部23の各動作が停止され、演算処理時間の低減、消費電力の低減、およびSN比の向上が図られる。
【0095】
1−4.心拍数検出部
次に、心拍数検出部12は、体動除去脈波データMKD''に基づいて心拍数を算出する。この場合、心拍数検出部12は、体動除去脈波データMKD''に基づいて1拍中の最大ピークPmaxを特定する。脈波波形MH’の最大ピークPmaxでは、高域周波数成分が大きくなるので、予め高域周波数成分に対応する閾値を定めておき、体動除去脈波データMKD''と閾値を比較して最大ピークPmaxを特定する。そして、ある最大ピークPmaxと次の最大ピークPmax間の時間間隔Tを求め、60/Tから心拍数HRを算出する。
【0096】
1−5.駆出期間検出部
次に、駆出期間検出部13は、第1実施形態と同様に構成してもよいが、この例にあっては、体動除去脈波データMKD''に基づいて、最小ピークPminを特定するとともに、最大ピークPmaxの後、第2番目に現れる負のピークP4(ノッチ)を特定する。この場合には、最小ピークPminに対応する周波数成分とピークP4に対応する周波数成分を閾値として予め記憶しておき、これらの閾値と体動除去脈波データMKD''を比較することによって、最小ピークPminとピークP4を特定し、それらの間の時間間隔を駆出期間EDとして算出する。
【0097】
1−6.一回拍出量算出部
次に、一回拍出量算出部14は、駆出期間EDにおける各周波数領域の体動除去脈波データMKD''を加算して、当該期間におけるエネルギー量Eを求め、これに基づいて収縮期面積Sを演算する。
【0098】
ところで、最小ピークPminからピークP4までの脈波波形は、比較的急峻な山状の波形であることから、そこに含まれる周波数成分は高周波領域のものがほとんどである。したがって、低域周波数領域(例えば0Hz〜1Hz)の体動除去脈波データMKD''は、ノイズ成分であると考えることができる。そこで、駆出期間EDにおける全ての周波数領域の体動除去脈波データMKD''を加算するのではなく、その一部を加算してエネルギー量Eを求めるようにしてもよい。
【0099】
例えば、図17に示すように、体動除去脈波データMKD''が得られたとすると、0Hz〜1Hzの周波数領域にはノイズ成分が多いので、1Hz〜4Hzの周波数領域にある体動除去脈波データMKD''を加算すればよい。各周波数領域の体動除去脈波データMKD''をMnmで表すものとすれば、この場合のエネルギー量Eは次式で与えられる。
【数2】
Figure 0003870514
【0100】
次に、一回拍出量SVは次式で算出される。
Figure 0003870514
ただし、Keはエネルギ量Eと面積Sとの間の変換係数である。
【0101】
このように第2実施形態にあっては、ウエーブレット変換を用いて、収縮期面積Sを算出したので、脈波波形のノイズ成分を除去しつつ、正確な一回拍出量SVを求めることができる。
【0102】
D.第3実施形態
上述した第2実施形態は、ウエーブレット変換によって周波数解析を行うために、第1のウエーブレット変換部20、第1の周波数補正部21、第2のウエーブレット変換部22、第2の周波数補正部23を用いた。これに対して、第3実施形態は、第2のウエーブレット変換部22、第2の周波数補正部23を省略する点で、第2実施形態と相違する。
【0103】
第3実施形態に係わる心機能診断装置の外観構成は、図3に示す第1実施形態の外観構成と同様であるのでここでは説明を省略し、その電気的構成について説明する。図18は、第3実施形態に係わる心機能診断装置のブロック図である。図において、体動除去部11によって体動成分が除去された体動除去脈波波形MH’を生成すると、第1のウエーブレット変換部20は、体動除去脈波波形MH’にウエーブレット変換を施す。第1の周波数補正部21は第1のウエーブレット変換部16の出力に周波数補正を施して、体動除去脈波データMKD''を生成する。
【0104】
この場合、第1の周波数補正部21の出力は、図10に示す体動除去部11の出力と等価である。すなわち、ウエーブレット変換は線形であるから、処理の順番を入れ替えても良いため、体動除去をアナログ信号で行った後にウエーブレット変換することと(第3実施形態)、ウエーブレット変換された脈波補正データMKD’と体動補正データTKD’に基づいて体動除去を行うことは(第2実施形態)、等価だからである。
なお、判定部11’は、第1実施形態と同様であり、また、心拍数検出部12、駆出期間検出部13、一回拍出量算出部14、心拍出量算出部15、評価部16および表示部17は、第2実施形態と同様であるから、説明を省略する。
【0105】
このように、第3実施形態にあっては、第2のウエーブレット変換部22、第2の周波数補正部23を省略しても、一回拍出量SVや一回拍出量変化率SV’を算出することができるので、より簡易な構成で心機能の状態を診断することができる。
【0106】
E.第4実施形態
第1〜第3実施形態においては、加速度センサ130によって体動波形THを検出し、脈波波形MHと体動波形THとを比較して、脈波波形MHの周波数成分に含まれている体動成分をキャンセルして、心拍数HRと駆出期間EDを算出し、これらに基づいて心機能の状態を診断した。しかし、加速度センサ130および波形処理部10等が必要になるので、構成が複雑なる。第4実施形態は、この点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、体動があっても正確に心機能の状態を診断することができる心機能診断装置を提供するものである。
【0107】
第4実施形態に係わる心機能診断装置の外観構成は、図3に示す第1実施形態の外観構成と同様であるのでここでは説明を省略し、その電気的構成について説明する。図19は第4実施形態に係わる心機能診断装置のブロック図であり、加速度センサ130、波形処理部10、第2のウエーブレット変換部22、および第2の周波数補正部23が省略されている点および体動除去部11の内部構成を除いて、図11に示す第2実施形態に係わる心機能診断装置1と同じである。以下、相違点について説明する。
体動除去部11は、脈波補正データMKD’から体動成分を分離除去して体動分離脈波データTBDを生成する。ここで、体動除去部11は、以下に述べる体動の性質を利用している。
【0108】
体動は、腕の上下動や走行時の腕の振り等によって生じるが、日常生活においては、人体を瞬間的に動かすことはほとんどない。このため、日常生活では、体動波形THの周波数成分はそれほど高くなく、0Hz〜1Hzの範囲にあるのが通常である。この場合、脈波波形MHの基本波周波数は、1Hz〜2Hzの範囲にあることが多い。したがって、日常生活において、体動波形THの周波数成分は脈波波形MHの基本波周波数よりも低い周波数領域にある。
【0109】
一方、ジョギング等のスポーツ中にあっては、腕の振り等の影響があるため、体動波形THの周波数成分が幾分高くなるが、運動量に応じて心拍数が増加するため、脈波波形MHの基本波周波数も同時に高くなる。このため、スポーツ中においても、体動波形THの周波数成分は脈波波形MHの基本波周波数よりも低い周波数領域にあるのが通常である。
【0110】
体動除去部11は、この点に着目して体動成分を分離するものであり、脈波波形MHの基本波成分よりも低い周波数領域を無視するように構成されている。この場合には、脈波波形MHの基本波成分より高い周波数領域に体動成分が存在すると心機能の検出精度が低下する。しかしながら、上述したように体動成分は脈波波形MHの基本波成分よりも低い周波数領域にある確率が高いので、高い精度で心機能の状態を診断することができる。
【0111】
図20は、体動除去部11の詳細なブロック図である。波形整形部301は脈波波形MHに波形整形を施して、脈波波形MHと同期したリセットパルスを生成する。カウンタ302は図示せぬクロックパルスを計数し、前記リセットパルスによってカウント値がリセットされるようになっている。また、平均値算出回路303は、カウンタ302のカウント値の平均値を算出する。この場合、平均値算出回路303によって算出される平均値は、脈波波形MHの平均周期に対応する。したがって、平均値を参照すれば、脈波波形MHの基本波周波数を検知できる。
【0112】
次に、置換回路304は、前記平均値に基づいて、脈波波形MHの基本波周波数を含む周波数領域を特定する。例えば、前記平均値が0.71秒を示す場合には、基本波周波数は1.4Hzとなるので、特定される周波数領域は1Hz〜1.5Hzとなる。この後、置換回路304は、特定周波数領域未満の周波数領域について、脈波補正データMKD’を「0」に置換して体動分離脈波データTBDを生成する。これにより、脈波波形MHの基本波周波数より低い周波数領域の成分は、無視される。この場合、体動成分とともに脈波成分も「0」に置換されてしまうが、脈波波形MHの特徴的な部分は基本波周波数よりも高域の周波数領域に存在するため、「0」に置換しても脈波波形には影響をほとんど与えない。
【0113】
例えば、脈波検出用センサユニット130によって、図13(a)に示す脈波波形MH(基本波周波数1.3Hz)が検出されたものとすれば、期間Tcの脈波補正データMKD’は、図14に示すものとなる。
この場合、置換回路194によって特定される周波数領域は1.0Hz〜1.5Hzとなるので、置換の対象となる周波数領域は、0.5Hz〜1.0Hzに対応するMa12〜Ma82と0Hz〜0.5Hzに対応するMa11〜Ma81となる。したがって、脈波補正データMKD’のデータMa12〜Ma82,Ma11〜Ma81は「0」に置換され、図21に示す体動除去脈波データMKD’’が生成される。
こうして生成された体動除去脈波データMKD’’に基づいて、図19に示す心拍数検出部12と駆出期間検出部13は心拍数HRと駆出期間EDを各々検出する。
【0114】
このように第4実施形態によれば、体動成分は脈波波形MHの基本波周波数成分よりも低い周波数領域に存在することが確率的に高いという体動の性質を巧みに利用して体動成分を除去した。このため、第1〜第3実施形態で必要とされた加速度センサ130や波形処理部10といった構成を省略することができ、しかも体動がある場合でも正確に心機能の状態を診断することが可能となる。
【0115】
F.第5実施形態
第5実施形態は、第1実施形態で説明した一回拍出量算出部14の変形例に係わるものであり、他の構成部分は、第1実施形態と同様である。第5実施形態の一回拍出量算出部14には以下の態様がある。
【0116】
1.第1の態様
まず、第1の態様では、駆出期間EDにおける体動除去脈波波形MH’の各ピークP1〜P4の血圧値とそれらの発生時刻から一回拍出量SVを算出する。体動除去脈波波形MH’が図6に示すものであり、P0からP4までの期間を駆出期間EDとするならば、一回拍出量SVは次式で算出される。
Figure 0003870514
この例は直線近似によって収縮期面積Sを算出し、これに基づいて一回拍出量SVを算出する。
したがって、駆出期間EDの全てのサンプルについて、体動除去脈波波形MH’を加算して面積Sを算出する方法と比較して、演算量を削減することができる。
【0117】
2.第2の態様
次に、第2の態様では、収縮期血圧Pmax、拡張期血圧Pminおよび駆出期間EDに基づいて一回拍出量SVを算出する。
まず、第2の態様の前提となる駆出時間EDと脈波波形MHの関係について、説明する。この点については医学的な研究が各種なされているが、’Disparities Between Aortic and Peripheral Pulse Pressures Induced by Upright Exercise and Vasomotor Changes in Man. Circulation,VOL XXVII,June 1968’には心疾患のある人の運動強度と橈骨動脈波形の関係について、図22に示す記載がある。同図において、運動強度が大きくなると、(a)→(b)→(c)→(d)の順に橈骨動脈の脈波波形が変化していく。この図から、運動強度が大きくなると、収縮期血圧Pmaxが次第に大きくなるとともに、駆出時間EDが短くなることが判る。一方、拡張期血圧Pminは、運動強度が増加してもさほど変動しないことが判る。すなわち、運動強度に応じて、脈波波形の形状が動的に変化しており、これに伴って、一回拍出量SVが変動するのである。
ここで、図22に示す橈骨動脈の脈波波形の形状を模式的に図23に示す。図23(a)は安静状態にある人の脈波波形MHの典型例であり、その波形形状は、いわゆる平脈と呼ばれるものであって、重搏前波(タイダルウエーブ)が明瞭に現れている点に特徴がある。この重搏前波は、心臓から送り出される血液により大動脈が弾性拡大することと末梢反射波の相互関係によって生じる。
【0118】
平脈の人が運動を行うと、脈波波形の形状は同図(a)→同図(b)→同図(c)に示すように変化していく。すなわち、運動強度が増加するにつれ、重搏前波の明瞭さが次第に失われていき、滑脈と呼ばれる波形形状に変化していく。換言すれば、運動強度の変化に応じて脈波波形の波形形状が変化し、これに伴い、収縮期面積Sが変化するのである。
【0119】
また、同図(a)〜(c)から、駆出時間EDは、運動強度の増加に伴なって波形形状が変化すると、、ED1→ED2→ED3といったように減少していることが判る。これは、運動強度が増加すると、大動脈弁開放から閉鎖までの時間間隔が次第に短くかくなり、主波と末梢反射波が近接するようになって重搏前波が消失することに起因している。したがって、駆出時間EDは心臓が収縮・拡張する動作と密接に関係しており、脈波波形の形状を特定する指標となり得るものである。
【0120】
このように駆出時間EDは、脈波波形の形状を特定する基礎になるものであるが、同図(a)〜(c)に示す収縮期血圧Pmaxと拡張期血圧Pminの差も各脈波波形MH1〜MH3の大きさを表す指標となり得る。また、収縮期面積Sは、図36に示すように、交流分に相当する面積S1(以下、交流面積と称する)と直流分に相当する面積S2(以下、直流面積と称する)との和で表すことができる。ここで、直流面積S2は、Pmin×EDとなり、一方、交流面積S1は、Pmax−PminとEDに応じて定まる。
そこで、第2の態様にあっては、収縮期血圧Pmax、拡張期血圧Pminおよび駆出期間EDに基づいて、収縮期面積Sを算出し、その算出結果から一回拍出量SVを求めている。
【0121】
図24は、第2の態様に係わる一回拍出量検出部14のブロック図である。141は減算器であって、収縮期血圧Pmaxから拡張期血圧Pminを減算する。ここで、収縮期血圧Pmaxは体動除去脈波波形のピークP1の血圧データであり、拡張期血圧Pminは体動除去脈波波形のピークP0の血圧データである。また、142は、収縮期面積テーブルであって、そこには、心臓の駆出期間EDとPmax−Pminとに対応付けて交流面積S1が格納されている。この収縮期面積テーブル142は、Pmax−Pminに応じて設けられた複数のテーブルTB1,TB2,…TBnから構成されており、各テーブルTB1,TB2,…TBnには、駆出期間EDに対応付けた交流面積S1が格納されている。なお、これらのテーブル内容は、多数の実測データによって生成される。
【0122】
また、143は乗算器であって、駆出時間EDと拡張期血圧Pminとを乗算して、直流面積S2を出力する。また、144は加算器であって、交流面積S1と直流面積S2とを加算して収縮期面積Sを生成する。また、145は乗算器であって、係数Ksvと収縮期面積Sとを乗算して一回拍出量SVを算出する。
【0123】
以上の構成により、駆出期間EDとPmax−Pminが、収縮期面積テーブル141に供給されると、Pmax−Pminに対応する1枚のテーブルTBが特定される。この後、当該テーブルTBから、駆出期間EDに対応する交流面積S1が読み出されると、加算器144において、交流面積S1と直流面積S2の和が演算され、その演算結果に応じて一回拍出量SVが生成される。
【0124】
このように、第2の態様にあっては、収縮期血圧Pmax、拡張期血圧Pminおよび駆出期間EDに基づいて、一回拍出量SVを求めているので、簡易な構成で短時間のうちに一回拍出量SVを求めることができる。
【0125】
なお、上述した各テーブルTB1,TB2,…TBnは、Pmax−Pminの値に応じて複数設けたが、代表的なものを一つ設け、そこから得られる交流面積S1をPmax−Pminで補正して、収縮期面積テーブル142の出力としてもよい。
【0126】
3.第3の態様
次に、第3の態様に係わる一回拍出量検出部14について説明する。図25は、第3の態様に係わる一回拍出量検出部14のブロック図であり、血圧メモリ146が設けられた点を除いて、図24に示す第2の態様の一回拍出量検出部14と同様である。ここで、血圧メモリ146には、心拍数HRに応じた収縮期血圧Pmaxと拡張期血圧Pminが予め格納されている。血圧メモリ146にデータを格納する際には、心機能診断装置を予備モードに設定し、被験者が心拍数HRが変化するような適当な運動を行う。すると、運動強度に応じて被験者の心拍数HRが変化するとともに、これ応じて収縮期血圧Pmaxと拡張期血圧Pminが変化する。血圧メモリ146は、この際に得られる収縮期血圧Pmaxと拡張期血圧Pminとを、心拍数HRに対応付けて格納する。
【0127】
一方、一回拍出量SVの測定モードにおいて、計測された心拍数HRが血圧メモリ146に供給されると、収縮期血圧Pmaxと拡張期血圧Pminが出力されるようになっている。
したがって、この例における一回拍出量検出部14には心拍数HRを供給すれば、収縮期血圧Pmaxと拡張期血圧Pminを求めることができる。そして、上述した第2の態様と同様に、これらの値と駆出時間EDに基づいて、一回拍出量SVが演算される。
【0128】
4.第4の態様
上述した第3の態様においては、心拍数HRと、収縮期血圧Pmaxおよび拡張期血圧Pminを対応付け、一回拍出量検出部14の入力を心拍数HRと駆出時間EDとした。これは、一回拍出量SVは、心拍数HRと駆出時間EDを変数とする関数で表すことができることを意味する。第4の態様は、この点に鑑みてなされたものであり、より簡易な構成で一回拍出量SVを算出することを目的とする。
【0129】
図26は、第4の態様に係わる一回拍出量検出部14のブロック図である。147は一回拍出量テーブルであって、そこには、心臓の駆出期間EDと心拍数HRとに対応付けて収縮期面積Sが格納されている。この一回拍出量テーブル147は、心拍数HR毎に設けられた複数のテーブルTB1,TB2,…TBnから構成されており、各テーブルTB1,TB2,…TBnには、駆出期間EDに対応付けた収縮期面積Sが格納されている。なお、これらのテーブル内容は、多数の実測データによって生成される。
また、141は一回拍出量テーブル140の後段に設けられた乗算器であって、係数Ksvと収縮期面積Sとを乗算して一回拍出量SVを算出する。
【0130】
以上の構成により、駆出期間EDと心拍数HRが、一回拍出量テーブル147に供給されると、一回拍出量検出部147は、心拍数HRに対応する1枚のテーブルTBを特定する。この後、このテーブルTBから、駆出期間EDに対応する収縮期面積Sが読み出されると、乗算器145は一回拍出量SVを演算する。
【0131】
このように、第4の態様にあっては、駆出期間EDと心拍数HRのみから一回拍出量SVを算出することができるので、簡易な構成で短時間のうちに一回拍出量SVを求めることができる。
【0132】
なお、上述した各テーブルTB1,TB2,…TBnに、駆出期間EDに対応付けた一回拍出量SVを格納しておけば、乗算器141を省略することができる。この場合には、収縮期面積Sの替わりにS*Ksvを各テーブルTB1,TB2,…TBnに格納しておけばよい。
【0133】
G.第6実施形態
上述した第1〜第5実施形態の心機能診断装置1は、収縮期面積法を適用して、駆出期間EDにおける脈波波形の面積Sにある係数Ksvを乗じて一回拍出量SVを算出した。ここで、係数Ksvは、各被験者によって厳密には異なるものである。このため、正確な一回拍出量SVを算出するには、収縮期面積法で得られた一回拍出量SVを補正することが望ましい。
そこで、第6実施形態では、図5、10、18および19に示す第1〜第5実施形態の一回拍出量算出部14と変化率算出部15との間に、一回拍出量補正部24を設けて、一回拍出量SVの補正を行っている。
【0134】
図27は、本実施形態に係わる一回拍出量補正部24のブロック図である。図に示すように一回拍出量補正部24は、補正係数KHを算出する補正係数算出部240、補正係数KHを記憶する補正係数メモリ241、および乗算部242から構成されている。
【0135】
補正係数算出部240には、熱色素希釈法等によって精密に計測される基準一回拍出量SVrが外部機器から供給されるとともに、一回拍出量算出部14によって算出された一回拍出量SVが供給されるようになっている。補正係数算出部240は、除算器で構成され、被験者が操作ボタンを操作して校正モードにすると、SVr/SVを補正係数KHとして算出する。算出された補正係数KHは補正係数メモリ241に記憶され、通常の測定モードにおいてそこから読み出され、使用される。乗算器242は、一回拍出量SVと補正係数KHを乗算して、補正済一回拍出量SVhを生成する。
【0136】
このように本実施形態によれば、校正モードにおいて補正係数KHを算出し、通常の測定モードにおいて補正係数KHを用いて補正済一回拍出量SVhを算出したので、より正確に心機能を評価することができる。
【0137】
また、本実施形態の心機能診断装置1は、例えば、病院内の健康管理や、リラビリ中の健康管理に好適である。より具体的には、心疾患等の手術後に熱色素希釈法によって正確な基準一回拍出量SVrを計測すると同時に、携帯型の心機能診断装置1で一回拍出量SVを計測する。そして、これらの計測結果から算出される補正係数KHを記憶しておき、通常の測定モードにおいて補正係数KHを用いて精密な一回拍出量SVを求める。これにより、患者はリハビリテーションによって健常に戻っていく過程で正確な一回拍出量SVに基づく心機能の診断を受けることができる。
【0138】
H.第7実施形態
第7実施形態は、評価指標Xの基準となる閾値を体表面積に応じて可変するものであり、評価部16の構成を除いて、第1〜第6実施形態の構成と同様である。以下、相違点である評価部16について説明する。
図28は、第7実施形態に係わる評価部16のブロック図である。160は体表面積算出部であって、そこには体重W(kg)と身長H(cm)が入力されるようになっており、これらに基づいて体表面積TSが算出されるようになっている。この例では、体表面積TSをデュボイス式と呼ばれる周知の実験式によって算出している。実験式を以下に示す。
TS=W0.425×H0.725×71.84
【0139】
次に、161は閾値テーブルであって、そこには、体表面積TSと心拍数HRに対応付けられて、評価指標Xを生成するための閾値R1,R2が格納されている。この閾値テーブル161は、複数のテーブルTB1’,TB2’,…TBnから構成されており、各テーブルには、心拍数HRに対応付けられて閾値R1,R2が格納されている。そして、体表面積TSが供給されると、各テーブルの中から、体表面積TSに応じた1枚のテーブルが選択されるようになっている。したがって、この閾値テーブル161を参照すれば、体表面積TSと心拍数HRに応じた閾値R1,R2を得ることができる。
【0140】
次に、162は、比較部であって、閾値R1,R2と一回拍出量変化率SV’とを比較して、評価指標Xを生成する。
【0141】
上述したように、体表面積TSによって閾値R1,R2を可変するようにしたのは、以下の理由による。一般に、体表面積TSが大きい人は、体が大型で心拍出量COが多いが、逆に、体表面積TSが小さい人は、体が小型で心拍出量COが少なくなる傾向にある。このため、両者の一回拍出量変化率SV’を同一の閾値R1,R2で評価しても、個々人に応じた心機能の評価を行うのが難しく、体表面積TSに応じた評価指標Xを用いることによって、個々人の体型に応じた心機能の評価を行うことができるからである。
【0142】
また、心拍数HRに応じて閾値R1,R2を可変するようにしたのは、以下の理由による。ランニング等の運動を行うと、骨格筋で大量の酸素が消費されるため、一回拍出量変化率SV’が変動する。換言すれば、運動強度に応じて心拍数HRと一回拍出量変化率SV’は、変動するのである。したがって、心拍数HRに応じた評価指標Xを用いることによって、被験者の運動強度が変化する際にも連続して心機能を評価することができるからである。
【0143】
したがって、本実施形態の心機能診断装置1を使用すれば、被験者の体型や動的に変化する心拍数HRに応じて、閾値R1,R2を自動的に変更することができ、これにより、日常生活において、心機能を連続的に評価することが可能となる。
【0144】
I.変形例
本発明は、上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、例えば、以下に述べる各種の変形が可能である。
(1)上述した第2〜第4実施形態では、第1の周波数補正部21あるいは第2の周波数補正部23を、異なる周波数領域でエネルギーを比較するために用い、補正結果を閾値と比較して最大ピークPmax等を求めた。この場合、閾値自体を周波数補正を考慮したものにして、各周波数補正部を省略するようにしてもよい。
【0145】
(2)上述した第2〜第4実施形態で行ったウエーブレット変換はフィルタバンクを用いて行ってもよい。フィルタバンクの構成例を図29に示す。図において、フィルタバンクは3段で構成されており、その基本単位は、高域フィルタ1Aおよびデシメーションフィルタ1Cと、低域フィルタ1Bおよびデシメーションフィルタ1Cである。高域フィルタ1Aと低域フィルタ1Bは、所定の周波数帯域を分割して、高域周波数成分と低域周波数成分を各々出力するようになっている。この例にあっては脈波データMDの周波数帯域として0Hz〜4Hzを想定しているので、一段目の高域フィルタ1Aの通過帯域は2Hz〜4Hzに設定され、一方、一段目の低域フィルタ1Bの通過帯域は0Hz〜2Hzに設定される。また、デシメーションフィルタ1Cは、1サンプルおきにデータを間引く。
こうして生成されたデータが次段に供給されると、周波数帯域の分割とデータの間引きが繰り返され、最終的には、0Hz〜4Hzの周波数帯域を8分割したデータM1〜M8が得られる。
【0146】
また、高域フィルタ1Aと低域フィルタ1Bとは、その内部に遅延素子(Dフリップフロップ)を含むトランスバーサルフィルタで構成すればよい。ところで、人の脈拍数は40〜200の範囲にあり、脈波波形MHの基本波周波数は、生体の状態に応じて刻々と変動する。この場合、基本波周波数に同期して、分割する帯域を可変することができれば、動的な生体の状態に追従した情報を得ることができる。そこで、トランスバーサルフィルタに供給するクロックを脈波波形MHとさせることによって、分割する帯域を適応的に可変してもよい。
【0147】
また、脈波解析データMKDのうち、脈波波形MHの特徴を表す代表的な周波数成分は、基本波、第2高調波および第3高調波の各周波数成分である。したがって、フィルタバンクの出力データM*1〜M*8のうち一部を用いて脈象を判定するようにしてもよい。この場合、上述したようにフィルタバンクを脈波波形MHに同期するように構成すれば、高域フィルタ1A、低域フィルタ1Bおよびデシメーションフィルタ1Cの一部を省略して、構成を簡易なものにすることができる。
【0148】
(3)上述した第1実施形態における体動除去部11を第4実施形態で説明したウエーブレット変換で行ってもよい。この場合は、体動が除去されたウエーブレットに数3に示す逆ウエーブレットを施して波形の再合成を行い、再合成された脈波波形に基づいて、心拍数HRと駆出期間EDを算出すればよい。
【数3】
Figure 0003870514
【0149】
また、逆ウエーブレットは逆フィルタバンクを用いて構成すればよい。この場合、逆ウエーブレット変換部は、図30に示すフィルタバンクで構成してもよい。図において、フィルタバンクは3段で構成されており、その基本単位は、高域フィルタ2Aおよび補間フィルタ2Cと、低域フィルタ1Bおよび補間フィルタ2Cと、加算器2Dである。高域フィルタ2Aと低域フィルタ2Bは、所定の周波数帯域を分割して、高域周波数成分と低域周波数成分を各々出力するようになっている。また、補間フィルタ2Cは、2サンプル毎に1サンプルを内挿補間する。
【0150】
ここで、波形を再現するためには、図29に示すフィルタバンクと図30に示すフィルタバンクに完全再構成フィルタバンクを用いる必要がある。この場合、高域フィルタ1A,2Aおよび低域フィルタ1B,2Bの特性は、以下の関係があることが必要である。
H0(-Z)F0(Z)+H1(-Z)F1(Z)=0
H0(Z)F0(Z)+H1(-Z)F1(Z)=2Z-L
【0151】
また、高域フィルタ2Aと低域フィルタ2Bとは、その内部に遅延素子(Dフリップフロップ)を含むトランスバーサルフィルタで構成すればよい。なお、ウエーブレット変換部10で使用するフィルタバンクを、脈波波形MHの基本波周波数に同期して、分割する帯域を可変するため、供給するクロックを脈波波形MHと同期させた場合には、このクロックを高域フィルタ2Aと低域フィルタ2Bに供給してもよい。
【0152】
(4)また、上述した各実施形態においては、表示部17を告知手段f8の一例として説明したが、装置から人間に対して告知をするための手段としては以下説明するようなものが挙げられる。これら手段は五感を基準に分類するのが適当かと考えられる。なお、これらの手段は、単独で使用するのみならず複数の手段を組み合わせても良いことは勿論である。そして、以下説明するように、例えば視覚以外に訴える手段を用いれば、視覚障害者であっても告知内容を理解することができ、同様に、聴覚以外に訴える手段を用いれば聴覚障害者に対して告知を行うことができ、障害を持つ使用者にも優しい装置を構成できる。
【0153】
まず、聴覚に訴える告知手段としては、心機能の分析・診断結果などを知らせるための目的、あるいは警告の目的でなされるものなどがある。例えば、ブザーの他、圧電素子、スピーカが該当する。また、特殊な例として、告知の対象となる人間に携帯用無線呼出受信機を持たせ、告知を行う場合にはこの携帯用無線呼出受信機を装置側から呼び出すようにすることが考えられる。また、これらの機器を用いて告知を行うにあたっては、単に告知するだけではなく、何らかの情報を一緒に伝達したい場合も多々ある。そうした場合、伝えたい情報の内容に応じて、以下に示す音量等の情報のレベルを変えれば良い。例えば、音高、音量、音色、音声、音楽の種類(曲目など)である。
【0154】
次に、視覚に訴える告知手段が用いられるのは、装置から各種メッセージ,測定結果を知らせる目的であったり、警告をするためであったりする。そのための手段として以下のような機器が考えられる。例えば、ディスプレイ装置、CRT(陰極線管表示装置),LCD(液晶表示ディスプレ)、プリンタ、X−Yプロッタ、ランプなどがある。なお、特殊な表示装置として眼鏡型のプロジェクターがある。また、告知にあたっては以下に示すようなバリエーションが考えられる。例えば、数値の告知におけるデジタル表示,アナログ表示の別、グラフによる表示、表示色の濃淡、数値そのまま或いは数値をグレード付けして告知する場合の棒グラフ表示、円グラフ、フェイスチャート等である。フェイスチャートとしては、例えば、図30に示すものがある。
【0155】
次に、触覚に訴える告知手段は、警告の目的で使用されることがあると考えられる。そのための手段として以下のようなものがある。まず、腕時計等の携帯機器の裏面から突出する形状記憶合金を設け、この形状記憶合金に通電するようにする電気的刺激がある。また、腕時計等の携帯機器の裏から突起物(例えばあまり尖っていない針など)を出し入れ可能な構造としてこの突起物によって刺激を与える機械的刺激がある。
【0156】
次に、嗅覚に訴える告知手段は、装置に香料等の吐出機構を設けるようにして、告知する内容と香りとを対応させておき、告知内容に応じた香料を吐出するように構成しても良い。ちなみに、香料等の吐出機構には、マイクロポンプなどが最適である。
【0157】
(5)上述した各実施形態においては、脈波検出手段f1の一例として脈波検出用センサユニット130を取りあげ説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、脈動を検出できるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0158】
例えば、脈波検出用センサユニット130は反射光を利用したものであったが、透過光を利用したものであってもよい。ところで、波長領域が700nm以下の光は、指の組織を透過しにくい傾向がある。このため、透過光を利用する場合は、発光部から波長が600nm〜1000nmの光を照射し、照射光を組織→血管→組織の順に透過させ、この透過光の光量変化を検出する。透過光は血液中のヘモグロビンの吸収を受けるので、透過光の光量変化を検出することによって、脈波波形を検出することができる。
【0159】
この場合、発光部には、InGaAs系(インジウム−ガリウム−砒素)やGaAs系(ガリウム−砒素)のレーザー発光ダイオードが好適である。ところで、波長が600nm〜1000nmの外光は組織を透過し易いので、受光部に外光が入射すると脈波信号のS/Nが劣化してしまう。そこで、発光部から偏光したレーザー光を照射し、透過光を偏光フィルタを介して受光部で受光するようにしてもよい。これにより、外光の影響を受けることなく、脈波信号を良好なS/N比で検出することができる。
【0160】
この場合には、図32(a)に示すように、発光部400を締着具145の締め付け側に設け、時計本体側には受光部401を設けている。この場合、発光部200から照射された光は、血管143を透過した後、橈骨402と尺骨403の間を通って、受光部201に達する。なお、透過光を用いる場合には、照射光は組織を透過する必要があるため、組織の吸収を考慮すると、その波長は600nm〜1000nmであることが望ましい。
【0161】
また、同図(b)は検出部位を耳朶とする例である。把持部材404と把持部材405は、バネ407で付勢され、軸406を中心に回動できるようになっている。また、把持部材404と把持部材405には、発光部400と受光部401が設けられている。この脈波検出部を用いる場合には、耳朶を把持部材404と把持部材405で把持して脈波を検出する。なお、反射光を用いる場合には、同図(c)に示すように指尖部から脈波波形MHを検出するようにしてもよい。
【0162】
次に、光電式脈波センサを眼鏡と組み合わせた使用態様を説明する。なお、この眼鏡の形態では、使用者に対する告知手段としての表示装置も一緒に組み込まれた構造になっている。したがって、脈波検出部として以外に表示装置としての機能についても併せて説明する。
図33は、脈波検出部が接続された装置を眼鏡に取り付けた様子を表わす斜視図である。図のように、装置本体は本体75aと本体75bに分かれ、それぞれ別々に眼鏡の蔓76に取り付けられており、これら本体が蔓76内部に埋め込まれたリード線を介して互いに電気的に接続されている。
【0163】
本体75aは表示制御回路を内蔵しており、この本体75aのレンズ77側の側面には全面に液晶パネル78が取り付けられ、また、該側面の一端には鏡79が所定の角度で固定されている。さらに本体75aには、光源(図示略)を含む液晶パネル78の駆動回路と、表示データを作成するための回路が組み込まれている。この光源から発射された光は、液晶パネル78を介して鏡79で反射されて、眼鏡のレンズ77に投射される。また、本体75bには、装置の主要部が組み込まれており、その上面には各種のボタンが設けられている。なお、これらボタン80,81の機能は装置毎に異なる。また。光電式脈波センサを構成するLED32およびフォトトランジスタ33(図4を参照)はパッド82,83に内蔵されると共に、パッド82,83を耳朶へ固定するようになっている。これらのパッド82,83は、本体75bから引き出されたリード線84,84によって電気的に接続されている。
【0164】
次に、指元で脈波波形を検出する例を説明する。図34において、本例の心機能診断装置1は、腕時計構造を有する装置本体110と、この装置本体110に接続されるケーブル120と、このケーブル120の先端側に設けられた脈波検出用センサユニット130とから大略構成されている。ケーブル120の先端側にはコネクタピース80が構成されており、このコネクタピース80は、装置本体10の6時の側に構成されているコネクタ部70に対して着脱自在である。装置本体10には、腕時計における12時方向から腕に巻きついてその6時方向で固定されるリストバンド60が設けられ、このリストバンド60によって、装置本体110は、腕に着脱自在である。脈波検出用センサユニット130は、センサ固定用バンド140によって遮光されながら人差し指の根本に装着される。このように、脈波検出用センサユニット130を指の根本に装着すると、ケーブル120が短くて済むので、ケーブル120は、ランニング中に邪魔にならない。また、掌から指先までの体温の分布を計測すると、寒いときには、指先の温度が著しく低下するのに対し、指の根本の温度は比較的低下しない。従って、指の根本に脈波検出用センサユニット130を装着すれば、寒い日に屋外でランニングしたときでも、脈拍数や一回拍出量SVなどを正確に計測できる。
また、装置本体110は、樹脂製の時計ケース200(本体ケース)を備えており、この時計ケース200の表面側には、現在時刻や日付に加えて、走行時や歩行時のピッチ、および脈拍数などの脈波情報などを表示するELバックライト付きの液晶表示装置210が構成されている。また、液晶表示装置210には一回拍出量SVに代表される心機能の状態が表示されるようになっている。液晶表示装置210には、セグメント表示領域の他、ドット表示領域が構成されており、ドット表示領域では、各種の情報をグラフィック表示可能である。
また、時計ケース200の内部には、加速度センサが130’が組み込まれており、これによって、ランニング中の腕の振りや、体の上下動によって生じる体動が検出される。また、その内部には、脈波検出用センサユニット130が計測した脈波波形MHに基づいて一回拍出量SVの変化などを求めるとともに、それを液晶表示装置210に表示するために、各種の制御やデータ処理を行うマイクロコンピュータなどからなる制御部が構成されている。制御部には計時回路も構成されており、通常時刻、ラップタイム、スプリットタイムなども液晶表示装置210に表示できるようになっている。また、時計ケース200の外周部には、時刻合わせや表示モードの切換などの外部操作を行うためのボタンスイッチ111〜115が構成されている。
【0165】
(6)上述した第1実施形態においてFFTを用いて心拍数HRを求めるようにしてもよい。この場合、心拍数HRは、基本周波数fを測定し、f・60を算出すればよい。
【0166】
(7)上述した各実施形態において、心拍数HRに対応して心拍出量COを格納する個人データベースを設けるようにしてもよい。この場合、個人データベースに一回拍出量SVを自動的に格納するにしておき、操作ボタンを操作すると過去の一回拍出量SVが表示部17に表示されるにしておけば、被験者は心拍出量COのトレンドを知ることができる。例えば、ランニング等のトレーニングを行う場合には、トレーニングの効果をこのトレンドによって知ることができる。また、心疾患のリハビリテーションの場合には、心機能の回復の程度をトレンドによって知ることができる。
【0167】
(8)上述した各実施形態において、安静時に心拍出量を算出する装置にあっては、体動がないので、体動波形を検出する加速度センサ130’(体動検出手段)と、脈波波形MHから体動成分を除去して体動除去脈波波形MH’を生成する体動除去部11を用いなくてもよい。この場合、第5実施形態に記載された一回拍出量算出部14を用いると、演算ステップを減少させることができるので、処理時間の短縮と消費電力の低減を図ることができる。
【0168】
(9)上述した各実施形態では、心機能診断装置1を説明したが、心機能診断装置1は、脈波検出用センサユニット130から一回拍出量算出部14までの構成によって、一回拍出量SVが算出されるので、これらの構成を一回拍出量検出装置として把握できることは勿論である。
【0169】
(10)上述した第6実施形態においては、精密に計測された基準一回拍出量SVrと、一回拍出量算出部14によって算出された一回拍出量SVとに基づいて、補正係数KHが算出しこれが補正係数メモリ241に記憶されるが、この補正係数THを心拍数HRに対応付けて補正係数メモリ241に記憶するようにしてもよい。この場合には、通常の測定モードにおいて心拍数HRに応じた補正係数THを読み出すことにより、より精密な一回拍出量SVを算出することができる。
【0170】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の発明特定事項によれば、簡易な構成で運動中や日常生活において連続的に一回拍出量を検出することができる。また、一回拍出量の変化率に基づいて、心機能を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係わる心機能診断装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図2】 心臓の周期を示した図である。
【図3】 第1実施形態に係わる心機能診断装置の外観構成を示す斜視図である。
【図4】 同実施形態に係わる脈波検出用センサユニット130の回路図である。
【図5】 同実施形態に係わる心機能診断装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】 同実施形態に係わる1拍分の体動除去脈波波形MH’の一例を示す図である。
【図7】 同実施形態に係わる拍数検出部と駆出期間検出部の具体的な構成を示す回路図である。
【図8】 同実施形態に係わる脈波波形の一例を示す図である。
【図9】 同実施形態に係わるピーク情報の内容を示す図である。
【図10】 第2実施形態に係わる心機能診断装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図11】 同実施形態に係わる第1のウエーブレット変換部の構成を示すブロック図である。
【図12】 同実施形態に係わる脈波波形の一部の期間について、脈波解析データを示したものである。
【図13】 同実施形態に係わる体動除去部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図14】 同実施形態において、期間Tcにおける脈波補正データMKD’を示す図である。
【図15】 同実施形態において、期間Tcにおける体動補正データTKD’を示す図である。
【図16】 同実施形態において、体動成分が除去された脈波補正データMKD''を示す図である。
【図17】 同実施形態における、一回拍出量算出部の動作を説明するための図である。
【図18】 第3実施形態に係わる心機能診断装置のブロック図である。
【図19】 第4実施形態に係わる心機能診断装置のブロック図である。
【図20】 同実施形態に係わる体動除去部11の詳細なブロック図である。
【図21】 同実施形態に係わる体動除去脈波データMKD’’の一例を示す図である。
【図22】 運動強度に応じた脈波波形の波形形状を示す図である。
【図23】 運動強度に応じた脈波波形の波形形状を模式的に示す図である。
【図24】 第5実施形態の第2の態様に係わる一回拍出量算出部の構成を示すブロック図である。
【図25】 同実施形態の第3の態様に係わる一回拍出量算出部の構成を示すブロック図である。
【図26】 同実施形態の第4の態様に係わる一回拍出量算出部の構成を示すブロック図である。
【図27】 第6実施形態に係わる一回拍出量補正部24のブロック図である。
【図28】 第7実施形態に係わる評価部15のブロック図である。
【図29】 変形例においてウエーブレット変換をフィルタバンクで構成した場合の例を示すブロック図である。
【図30】 変形例において逆ウエーブレット変換をフィルタバンクで構成した場合の例を示すブロック図である。
【図31】 変形例において告知手段の一態様としてのフェイスチャートを示す図である。
【図32】 変形例に係わる光電式脈波センサの例を示す図である。
【図33】 変形例において光電式脈波センサを眼鏡に応用した例を示す図である。
【図34】 変形例において指元を脈波の検出部位とした場合における心機能診断装置の外観構成を示す斜視図である。
【図35】 心臓移植者と健常者について、姿勢の変更に伴う一回拍手量の変化を示す図である。
【図36】 収縮期面積法を説明する図である。
【符号の説明】
130 脈波検出用センサユニット(脈波検出手段)
130’加速度センサ(体動検出手段)
11 体動除去部(体動除去手段)
12 心拍数検出部(心拍数検出手段)
13 駆出期間検出部(駆出期間検出手段)
17 表示部(告知手段)
20 第1のウエーブレット変換部(第1のウエーブレット変換手段)
21 第1の周波数補正部(第1の周波数補正手段)
22 第2のウエーブレット変換部(第2のウエーブレット変換手段)
23 第2の周波数補正部(第2の周波数補正手段)

Claims (20)

  1. 生体の検出部位から脈波波形を検出する脈波検出手段と、
    前記生体の体動を示す体動波形を検出する体動検出手段と、
    前記体動波形に基づいて前記脈波波形中の体動成分を生成し、前記脈波波形から前記体動成分を除去して体動除去脈波波形を生成する体動除去手段と、
    前記体動除去脈波波形に基づいて、心臓の駆出期間を検出する駆出期間検出手段と、
    前記体動除去脈波波形に基づいて、心拍期間を算出する心拍期間算出手段と、前記心臓の駆出期間と前記心拍期間とに基づいて、一回拍出量を算出する一回拍出量算出手段と
    を備えたことを特徴とする一回拍出量検出装置。
  2. 生体の検出部位から脈波波形を検出する脈波検出手段と、
    前記生体の体動を示す体動波形を検出する体動検出手段と、
    前記体動波形に基づいて前記脈波波形中の体動成分を生成し、前記脈波波形から前記体動成分を除去して体動除去脈波波形を生成する体動除去手段と、
    前記体動除去脈波波形に基づいて、心臓の駆出期間を検出する駆出期間検出手段と、
    前記心臓の駆出期間における前記体動除去脈波波形に基づいて、一回拍出量を算出する一回拍出量算出手段と
    を備えたことを特徴とする一回拍出量検出装置。
  3. 前記体動検出手段によって検出された体動波形に基づいて、前記生体の体動の有無を判定する判定手段を備え、
    前記体動除去手段は、前記判定手段の判定結果が体動無しを示す場合には、体動除去動作を停止し、前記体動除去脈波波形の替わりに、前記脈波波形を出力することを特徴とする請求項1または2に記載の一回拍出量検出装置。
  4. 前記駆出期間検出手段は、前記体動除去脈波波形の各ピークを検出し、最大ピークから第1番目または第2番目に現れる負のピークと最小ピークを特定することによって前記駆出期間を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の一回拍出量検出装置。
  5. 生体の検出部位から脈波波形を検出する脈波検出手段と、
    前記生体の体動を示す体動波形を検出する体動検出手段と、
    前記体動波形に基づいて前記脈波波形中の体動成分を生成し、前記脈波波形から前記体動成分を除去して体動除去脈波波形を生成する体動除去手段と、
    前記体動除去脈波波形にウエーブレット変換を施して、各周波数領域毎に体動を除去した体動除去脈波解析データを生成するウエーブレット変換手段と、
    前記体動除去脈波解析データに基づいて、心臓の駆出期間を検出する駆出期間検出手段と、
    前記心臓の駆出期間における前記体動除去脈波波形に基づいて、一回拍出量を算出する一回拍出量算出手段と
    を備えたことを特徴とする一回拍出量検出装置。
  6. 生体の検出部位から脈波波形を検出する脈波検出手段と、
    前記生体の体動を示す体動波形を検出する体動検出手段と、
    前記体動波形に基づいて前記脈波波形中の体動成分を生成し、前記脈波波形から前記体動成分を除去して体動除去脈波波形を生成する体動除去手段と、
    前記体動除去脈波波形にウエーブレット変換を施して、各周波数領域毎に体動を除去した体動除去脈波解析データを生成する体動除去手段と、
    対応する各周波数に基づいて、体動除去脈波解析データに周波数当たりのパワーを正規化するように補正を施して補正脈波データを生成する周波数補正手段と、
    前記補正脈波データに基づいて、心臓の駆出期間を検出する駆出期間検出手段と、
    前記心臓の駆出期間における前記体動除去脈波波形に基づいて、一回拍出量を算出する一回拍出量算出手段と
    を備えたことを特徴とする一回拍出量検出装置。
  7. 生体の検出部位から脈波波形を検出する脈波検出手段と、
    前記脈波波形にウエーブレット変換を施して各周波数領域毎に脈波解析データを生成する第1のウエーブレット変換手段と、
    前記生体の体動を示す体動波形を検出する体動検出手段と、
    前記体動波形にウエーブレット変換を施して各周波数領域毎に体動解析データを生成する第2のウエーブレット変換手段と、
    前記脈波解析データから前記体動解析データを減算して、体動を除去した体動除去脈波解析データを生成する体動除去手段と、
    前記体動除去脈波解析データに基づいて、心臓の駆出期間を検出する駆出期間検出手段と、
    前記心臓の駆出期間における各周波数領域の前記体動除去脈波解析データを加算した結果に基づいて、一回拍出量を算出する一回拍出量算出手段と
    を備えたことを特徴とする一回拍出量検出装置。
  8. 生体の検出部位から脈波波形を検出する脈波検出手段と、
    前記脈波波形にウエーブレット変換を施して各周波数領域毎に脈波解析データを生成する第1のウエーブレット変換手段と、
    対応する各周波数に基づいて、脈波解析データに周波数当たりのパワーを正規化するように補正を施して補正脈波解析データを生成する第1の周波数補正手段と、
    前記生体の体動を示す体動波形を検出する体動検出手段と、
    前記体動波形にウエーブレット変換を施して各周波数領域毎に体動解析データを生成する第2のウエーブレット変換手段と、
    対応する各周波数に基づいて、体動解析データに周波数当たりのパワーを正規化するように補正を施して補正体動解析データを生成する第2の周波数補正手段と、
    前記補正脈波解析データから前記補正体動解析データを減算して、体動を除去した体動除去脈波解析データを生成する体動除去手段と、
    前記体動除去脈波解析データに基づいて、心臓の駆出期間を検出する駆出期間検出手段と、
    前記心臓の駆出期間における各周波数領域の前記体動除去脈波解析データを加算した結果に基づいて、一回拍出量を算出する一回拍出量算出手段と
    を備えたことを特徴とする一回拍出量検出装置。
  9. 前記第1のウエーブレット変換手段と前記第2のウエーブレット変換手段は、同期してウエーブレット変換を行うことを特徴とする請求項7または8に記載の一回拍出量検出装置。
  10. 生体の検出部位から脈波波形を検出する脈波検出手段と、
    前記脈波検出手段によって検出された前記脈波波形にウエーブレット変換を施して、各周波数領域毎に脈波解析データを生成するウエーブレット変換手段と、
    前記脈波解析データのうち、予め定められた体動に対応する周波数成分を除去して、体動除去脈波解析データを生成する体動除去手段と、
    前記体動除去脈波解析データに基づいて、心臓の駆出期間を検出する駆出期間検出手段と、
    前記心臓の駆出期間における各周波数領域の前記体動除去脈波解析データを加算した結果に基づいて、一回拍出量を算出する一回拍出量算出手段と
    を備えたことを特徴とする一回拍出量検出装置。
  11. 生体の検出部位から脈波波形を検出する脈波検出手段と、
    前記脈波検出手段によって検出された前記脈波波形にウエーブレット変換を施して、各周波数領域毎に脈波解析データを生成するウエーブレット変換手段と、
    前記脈波解析データのうち、予め定められた体動に対応する周波数成分を除去して、体動除去脈波解析データを生成する体動除去手段と、
    対応する各周波数に基づいて、体動除去脈波解析データに周波数当たりのパワーを正規化するように補正を施して補正脈波解析データを生成する周波数補正手段と、
    前記補正脈波解析データに基づいて、心臓の駆出期間を検出する駆出期間検出手段と、
    前記心臓の駆出期間における各周波数領域の前記補正脈波解析データを加算した結果に基づいて、一回拍出量を算出する一回拍出量算出手段と
    を備えたことを特徴とする一回拍出量検出装置。
  12. 生体の検出部位から脈波波形を検出する脈波検出手段と、
    前記脈波検出手段によって検出された前記脈波波形にウエーブレット変換を施して、各周波数領域毎に脈波解析データを生成するウエーブレット変換手段と、
    前記脈波解析データのうち、予め定められた体動に対応する周波数成分を除去して、体動除去脈波解析データを生成する体動除去手段と、
    前記体動除去解析脈波データに逆ウエーブレット変換を施して体動除去脈波波形を生成する逆ウエーブレット変換手段と、
    前記体動除去脈波波形に基づいて、心臓の駆出期間を検出する駆出期間検出手段と、
    前記心臓の駆出期間における前記体動除去脈波波形に基づいて、一回拍出量を算出する一回拍出量算出手段と
    を備えたことを特徴とする一回拍出量検出装置。
  13. 前記一回拍出量算出手段は、前記心臓の駆出期間における体動除去脈波波形を積分することによって当該期間に対応する前記体動除去脈波波形の面積を演算し、当該面積に基づいて前記一回拍出量を演算することを特徴とする請求項1乃至4または12のうちいずれか1項に記載の一回拍出量検出装置。
  14. 前記一回拍出量算出手段は、前記心臓の駆出期間における体動除去脈波波形の各ピーク値に基づいて当該期間に対応する前記体動除去脈波波形の面積を演算し、当該面積に基づいて前記一回拍出量を演算することを特徴とする請求項1乃至4または12のうちいずれか1項に記載の一回拍出量検出装置。
  15. 基準装置によって測定された基準一回拍出量と前記一回拍出量算出手段によって測定された前記一回拍出量との比を補正係数として算出する補正係数算出手段と、
    前記補正係数を前記生体の心拍数と対応付けて記憶する記憶手段と、
    前記生体の心拍数に応じた前記補正係数を前記記憶手段から読み出し、読み出した前記補正係数と前記一回拍出量算出手段によって算出された前記一回拍出量とを乗算し、この乗算結果を一回拍出量として出力する乗算手段と
    を備えたことを特徴とする請求項1乃至14のうちいずれか1項に記載の一回拍出量検出装置。
  16. 請求項1乃至15のうちいずれか1項に記載した一回拍出量検出装置を備えた心機能診断装置であって、
    前記一回拍出量検出装置によって検出された一回拍出量を告知する告知手段を備えたことを特徴とする心機能診断装置。
  17. 請求項1乃至15のうちいずれか1項に記載した一回拍出量検出装置を備えた心機能診断装置であって、
    前記一回拍出量検出装置によって検出された一回拍出量を各閾値と比較して、評価指標を生成する評価手段と、
    前記評価手段によって生成された評価指標を告知する告知手段と
    を備えたことを特徴とする心機能診断装置。
  18. 請求項1乃至15のうちいずれか1項に記載した一回拍出量検出装置を備えた心機能診断装置であって、
    前記一回拍出量の変化率を算出する変化率算出手段と、
    前記一回拍出量の変化率を各閾値と比較して、評価指標を生成する評価手段と、
    前記評価手段によって生成された評価指標を告知する告知手段と
    を備えたことを特徴とする心機能診断装置。
  19. 前記評価手段は、前記生体の心拍数に応じて前記各閾値を変更する変更部を備えたことを特徴とする請求項17または18に記載の心機能診断装置。
  20. 前記評価手段は、
    被験者の体表面積を算出するためのパラメータを入力する入力部と、
    入力された前記パラメータに基づいて体表面積を演算する演算部と、
    演算された前記体表面積に基づいて前記各閾値を変更する変更部と
    を備えることを特徴とする請求項17または18に記載の心機能診断装置。
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