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JP3869494B2 - トリイソシアネートの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、脂環式及び脂肪族(以下、「(環状)脂肪族」と言う。)トリイソシアネートの気相製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
以前から、アミンとホスゲンとを気相にて反応させて有機イソシアネートを製造する方法が知られている(Siefken, Justus Liebigs Ann. Chem. 562, 108(1949))。このような方法は、モノイソシアネート類(Ullmanns Encyclopaedie dertechnischen Chemie, 4th ed. Vol. 13, page 353)、(環状)脂肪族ジイソシアネート類(EP-A-0,289,840 及びドイツ特許出願P4412327.2)、又は芳香族ジイソシアネート類(DE-OS 4,217,019)のみに関して推奨されてきた。
(環状)脂肪族トリイソシアネートに関しても文献には記載されているが、このようなトリイソシアネートは工業的規模では入手できない。実際に、これらのトリイソシアネートは、対応するトリアミンをホスゲン化する従来の方法では工業的な収率で得ることは出来ないのである。これは、粗生成物の収率が低いことと、この方法を実施する際の技術的な問題に依るものである。
従来の1,8−ジアミノ−4−アミノメチルオクタンの液相におけるホスゲン化では使用したアミンに対して74%の収率で所望のトリイソシアネートが得られた(DE-C-3,109,276)。この方法には低収率と技術的な問題という二つの問題点がある。この技術的な問題というのは、反応混合物を信頼性良く攪拌することが非常に難しいこと、又は、ホスゲン化の間、溶媒による非常に高い希釈が必要とされることである。これらの問題点は、日本特許出願公開公報第60-233043及び60-233044の開示によれば、トリアミンを芳香族及び脂肪族ジアミンと混合してホスゲン化することによって、部分的には低減されることがある。しかしながら、これらの方法には、得られる2種類のポリイソシアネートを蒸留して分離しなければならないことと、特定のジイソシアネートが必ず生成されてしまうという、欠点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、実質的に高い収率の(環状)脂肪族トリイソシアネート類の製造方法を提供することである。
更に、本発明の目的は、大量の溶媒を使用すること無く、従来のホスゲン化に見られた技術的な問題のない、(環状)脂肪族トリイソシアネート類の製造方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、200℃ないし600℃の蒸気相中で対応するトリアミンを,いかなる運動部分もない円筒反応室内で流速を少なくとも3m/sに維持し、ホスゲン化することで達成される。
即ち、本発明は、(環状)脂肪族トリイソシアネート類の製造方法に関する。
トリアミンのホスゲン化及びその後の反応混合物の処理はEP-A-0,289,840に記載された方法に類似の方法で実施される。従来公知のトリイソシアネート製造方法に見られた収率の低さはホスゲン化反応の際に生起する副反応に起因するものであるので、本発明によって達成された収率の実質的改善は予想外のものであった。これら副反応は出発アミンの高官能性に原因がある。従って、気相ホスゲン化に於いてこの副反応が有意義な程度には起こらない、ということを予見することはできなかった。
【0005】
本発明は、一般式:
【化3】
Figure 0003869494
(式中、Rは1ないし22個の炭素原子を有する(環状)脂肪族炭化水素を表す。)
で示されるトリイソシアネートの製造方法であって、
a)(1) 一般式:
【化4】
Figure 0003869494
(式中、Rは1ないし22個の炭素原子を有する(環状)脂肪族炭化水素を表す。)
で示されるトリアミンをホスゲン化する方法に係わる。この方法は、適宜、不活性気体又は不活性溶媒の蒸気で希釈された、蒸気形態で存在するトリアミンを使用して実施される。トリアミン及び希釈剤は、200℃ないし600℃の温度に加熱され、ホスゲンも同様に200℃ないし600℃の温度に加熱される。このように加熱されたアミン及びホスゲンを、200℃ないし600℃の温度に加熱された、いかなる運動部分もない円筒反応室内で、該反応室内の流速を少なくとも3m/sに維持し、連続的に反応させる。
該反応室から連続的に去る気体混合物を、トリアミンに対応するカルバミン酸クロライドの分解温度より高い温度に維持された不活性の液体溶媒で冷却し、この溶媒のトリイソシアネート溶液を回収する。該不活性溶媒に溶解したトリイソシアネートを蒸留による処理にかける。
【0006】
【発明の実施の形態】
好適なトリアミンは、上記Rが4ないし22個、より好ましくは6ないし15個、最も好ましくは7ないし11個の炭素原子を有する飽和(環状)脂肪族炭化水素であって、この中で少なくとも2個の炭素原子が各2個のアミノ基の間に位置しているものである。
「(環状)脂肪族」という用語は、開鎖の脂肪族炭化水素基、及び脂環式構造単位が存在し、その中にアミノ基が脂肪族及び/又は脂環式結合してもよい炭化水素を包含するものと理解されたい。
本発明を実施するに好適なトリアミンの例としては、1,8−ジアミノ−4−(アミノメチル)−オクタン、1,6,11−ウンデカントリアミン、1,7−ジアミノ−4−(3−アミノプロピル)−ヘプタン、1,6−ジアミノ−3−(アミノメチル)−ヘキサン及び1,3,5−トリス(アミノメチル)−シクロヘキサンを挙げることができる。
しかしながら、基本的には、本発明方法の温度条件下で安定であり、蒸気形態に変換できるものであれば、1ない22個の炭素原子を有するいかなる(環状)脂肪族トリアミンも出発原料として使用することができる。適用な出発原料としてはトリアミノシクロヘキサン類、トリス−(アミノメチル)−シクロヘキサン類、トリアミノ−メチルシクロヘキサン類及び同様なトリアミン類も挙げることが出来る。
【0007】
トリアミン出発原料は、ホスゲン化の前に蒸発させ、200℃ないし600℃の温度範囲、好ましくは、300℃ないし500℃の温度範囲に加熱する。加熱されたトリアミン蒸気はそのままの状態で本発明に使用するか、又は、不活性気体又は不活性溶媒の蒸気で希釈された形態で使用する。このトリアミン蒸気と不活性気体との混合は、例えば、トリアミンを不活性気体又は不活性溶媒の蒸気中に蒸発させることで行うことができる。該不活性気体は好ましくは窒素である。その蒸気がトリアミンを希釈するのに使用しうるその他の適当な不活性溶媒には、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、キシレン、クロロナフタレン、デカヒドロナフタレン及びこれらの混合物がある。
不活性気体又は不活性溶媒の蒸気の使用量は重要ではない。不活性気体又は不活性溶媒の蒸気はアミンの蒸発温度を下げることにも使用される。
ホスゲン化に使用されるホスゲンはトリアミンに対して過剰に用いられる。一般的には、理論量の150ないし300%に相当するホスゲンの量で充分である。
本発明方法に使用される前に、ホスゲンを蒸気を200℃ないし600℃の温度範囲、好ましくは、300℃ないし500℃の温度範囲に加熱する。
【0008】
本発明方法に於いて、予加熱されたトリアミン蒸気又はトリアミン/不活性気体混合物、及びホスゲンは連続的に円筒反応室内を通過し、そこでそれらは互いに混合される。
適当な円筒反応室は、バッフル及びその他の運動部分を該反応室中に有していない管状反応器である。該管状反応器は、一般的に、鋼、ガラス、合金、又はエナメル鋼から出来ており、本発明条件下で、トリアミンとホスゲンとの反応を完全に行うことが可能なように充分な長さを有している。ガス流は一般に、一方の端から管状反応器に導入される。この導入は、該管状反応器の一端に装着されたノズルを介して、又は、ノズル及び該ノズルと混合管との間の環状ギャップとの組み合わせを介して行われる。該混合管もまた200℃ないし600℃の温度範囲、好ましくは、300℃ないし500℃の温度範囲に維持する。この温度は該反応管を加熱することによって、一定に維持するのが好ましい。
本発明を実施するに際して、反応室への供給パイプの圧力は、約200から約3000ミリバールであり、反応室からの出口の圧力は約150から約2000ミリバールである。該反応室内の流速を少なくとも3m/s、好ましくは少なくとも6m/s、最も好ましくは約10ないし120m/sにすることに留意しなければならない。これは適当な圧力差を維持することで達成される。該反応室内では一般に乱流特性が支配する。
【0009】
本発明に従ってホスゲン化により生成したトリイソシアネートは、該反応室から連続的に去る気体混合物から除去される。これは、例えば、トリアミンに対応するカルバミン酸クロライドの分解温度より高い温度であって、トリイソシアネートそして好ましくは蒸気の形態で希釈剤として適宜使用した溶媒の凝縮温度よりも低い温度に維持された不活性の液体溶媒を使用することによって行う。トリイソシアネート及び補助溶媒はこの溶媒中に溶解するか又は凝縮し、一方、過剰のホスゲン、塩化水素及び希釈剤として適宜使用した不活性の気体はこの凝縮段階または気体状の溶媒を通過する。気体混合物からトリイソシアネートを選択的に回収するには、120℃ないし200℃の温度範囲、好ましくは、120℃ないし170℃の温度範囲に維持した上記の溶媒(特に実験用品質のジクロロベンゼン)が非常に適切である。この型の溶媒を使用して気体混合物からトリイソシアネートを選択的に凝縮することができる方法の例として、該溶媒内を該気体混合物を通過させるか、又は、溶媒(の霧)を該気体流に噴霧することが挙げられる。
過剰なホスゲンは、トリイソシアネートの回収の為の凝縮段階を通過した気体混合物から任意の公知方法で除去することができる。これは、冷トラップ、−10℃ないし8℃の温度範囲に維持した不活性溶媒(例えば、クロロベンゼン又はジクロロベンゼン)への吸収又は活性炭への吸着及び加水分解によっておこなうことが出来る。このホスゲン回収段階を通過した塩化水素はホスゲンを合成するために必要な塩素を回収する目的で公知の方法で循環することができる。
本発明方法で製造されたトリイソシアネートは、凝縮に使用した溶媒中のトリイソシアネート溶液を蒸留することによって精製することができる。
【0010】
以下の実施例に則して本発明を詳細に説明する。実施例中の%は全て重量%である。
【0011】
【実施例】
この方法に使用した装置は、直径2.5mm長さ17.5mmの混合管(510℃に加熱)であり、その下流にトリイソシアネート凝縮段階、及びこれに続いて活性炭が充填されたホスゲン吸着塔を備えたものであった。該混合管から突出したノズルを通して、上流の熱交換器で460℃に予め加熱したホスゲンを圧力950ミリバール、流速8mol/時で連続的に流した。該ノズルと混合管との間の環状ギャップを介して、410℃に予め加熱した4−アミノメチル−1,8−オクタンジアミン(0.4mol/時)及び希釈剤である窒素(0.1mol/時)を混合管内に同時に導入した。混合管内の流速は100m/sであった。トリイソシアネート凝縮段階の端を真空状態にすることで、約350ミリバールの圧力を混合管内に維持した。凝縮段階に於いて、混合管から出てきた熱い気体反応混合物を150℃ないし160℃の温度範囲に維持したジクロロベンゼン内を通過させた。生成したトリイソシアネートがこれによって選択的に凝縮した。洗浄段階を通過した、主に窒素、塩化水素及び過剰のホスゲンから成る混合物はついで吸着塔に導入され、ホスゲンが除去された。洗浄溶液から蒸留により純粋なトリイソシアネートが得られた。この純粋なトリイソシアネートの収率は理論値の92%であった。
DE-C-3,109,276の実施例2によれば、これと同じトリイソシアネートの収率は理論値のたった74%であった。

Claims (6)

  1. 一般式:
    Figure 0003869494
    (式中、Rは1ないし22個の炭素原子を有する(環状)脂肪族炭化水素を表す。)
    で示されるトリイソシアネートの製造方法であって、
    a)(1) 一般式:
    Figure 0003869494
    (式中、Rは1ないし22個の炭素原子を有する(環状)脂肪族炭化水素を表す。)
    で示され、蒸気形態で存在し、200℃ないし600℃の温度に加熱されたトリアミンを,(2) 200℃ないし600℃の温度に加熱されたホスゲンと,
    200℃ないし600℃の温度に加熱された、いかなる運動部分もない円筒反応室内で、該反応室内の流速を少なくとも3m/sに維持し、連続的に反応させてホスゲン化し、
    b)該反応室から連続的に去る気体混合物を、トリアミンに対応するカルバミン酸クロライドの分解温度より高い温度に維持された不活性の液体溶媒で冷却して該溶媒のトリイソシアネート溶液を回収し、
    c)該不活性溶媒に溶解したトリイソシアネートを回収することから成る、前記方法。
  2. トリアミンが1,8−ジアミノ−4−(アミノメチル)−オクタン、1,6,11−ウンデカントリアミン、1,7−ジアミノ−4−(3−アミノプロピル)−ヘプタン、1,6−ジアミノ−3−(アミノメチル)−ヘキサン及び1,3,5−トリス(アミノメチル)−シクロヘキサンから成る群から選択される、請求項1記載の方法。
  3. 反応室が約300℃ないし500℃の温度に維持された請求項1記載の方法。
  4. トリアミンが不活性な気体又は不活性溶媒の蒸気によって希釈される請求項1記載の方法。
  5. 窒素がトリアミン蒸気を希釈するのに使用される請求項4記載の方法。
  6. トリイソシアネートがc)に於いて、蒸留によって回収される、請求項1記載の方法。
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