JP3858280B2 - 磁気特性に優れる一方向性けい素鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、圧延方向に優れた磁気特性を有する、一方向性けい素鋼板の製造方法に関し、特に熱間圧延段階にて工夫を加えることにより、優れた磁気特性をそなえる一方向性けい素鋼板を有利に製造することのできる方法を提案しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
一方向性けい素鋼板は、主として変圧器その他の電気機器の鉄心材料として使用されるものであり、磁束密度及び鉄損値等で示される磁気特性に優れることが基本的に重要である。そのため、一方向性けい素鋼板を製造するに当たって特に重要なことは、いわゆる仕上焼鈍工程で一次再結晶粒を{110}〈001〉方位いわゆるゴス方位の結晶粒に高度に揃えるように二次再結晶させることである。
【0003】
このような二次再結晶を効果的に促進させるためには、第1に一次再結晶粒の成長を抑制するインビビターと呼ばれる分散相を、均一かつ適正なサイズで分散させることが重要である。かかるインヒビターとして代表的なものはMnS 、MnSe、AlN 及びVNのような硫化物や窒化物であり、鋼中への溶解度が極めて小さい物質が用いられている。このため、従来から熱間圧延前にはスラブを高温加熱してインヒビター成分を完全に固溶させる方法が採られ、熱間圧延工程以降、二次再結晶までの工程でインヒビターの析出状態を制御している。なお、Sb、Sn、As、Pb、Ce、Cu及びMo等の粒界偏析型元素もインヒビターとして使用されている。
【0004】
また、二次再結晶を効果的に促進させるための第2の要件として、1回又は2回以上の冷間圧延及び1回又は2回以上の焼鈍によって得られる一次再結晶粒組織を、板厚全体にわたって適当な大きさの結晶粒でしかも均一な分布とすることが重要である。かかる2つの条件を満足することが重要であることは周知のとおりである。
【0005】
それゆえ従来から一方向性けい素鋼板を製造するには、厚み100 〜300 mmのスラブを1250℃以上の温度で加熱し、インヒビター成分を完全に固溶させたのち、熱延板とし、次いでこの熱延板を1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷延圧延によって最終板厚とし、脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布してから二次再結晶及び純化を目的とする最終仕上焼鈍を行うことが一般的である。
【0006】
ところで最近、省エネルギー化の要請により、さらなる高磁束密度、低鉄損の一方向性電磁鋼板が求められるようになってきた。かかる要求に応えるべく、冷延圧下率を高めることでより高度に先鋭化した集合組織を形成し、二次再結晶後のゴス方位集積率を高めて高磁束密度化を図り、かつ製品板厚を薄くすることに加えて磁区細分化処理を施す等の低鉄損化が図られるようになった。また、2種以上のインヒビターを複合して添加し、粒成長抑制力を高めることも行われている。さらには、冷間圧延工程において板温を高めたいわゆる温間圧延が行われている。これらの技術の積み重ねにより、極めて良好な磁気特性を有する製品が得られるようになった。
【0007】
しかしながら、かような技術を実際の製造に適用した場合には、なお十分に満足できる製品が得られない場合があった。これは、前述したとおり最終仕上焼鈍において良好な二次再結晶組織を得るためには、熱間圧延以降の各工程で、インヒビターの析出形態を厳しく制御することが必要であるのに、実際の製造においては熱間圧延段階などでかかる制御が十分ではないためだと考えられる。
【0008】
また、一方向性けい素鋼板には、磁気特性のみならず外観すなわち表面性状においても優れた製品が強く要求されるようになってきており、かかる要求を満足させながら極めて良好な磁気特性の製品を得るには、当然のことながら工程条件の許容範囲は著しく制限されるものになる。
【0009】
したがって、工業的に生産するに当たって優れた磁気特性をコイルの全長、全幅にわたって安定して実現し、生産歩留まりをも確保することは容易ではなく、一方向性電磁鋼板の生産、研究開発において重要な課題となっている。
【0010】
一方向性電磁鋼板の熱延工程における制御、なかでも仕上圧延での温度に関する技術については、これまでも数多く開示されている。例えば、特開平4−301035号公報、特開平4−341518号公報、特開昭60−197819号公報、特開昭57−114614号公報、特開昭55−62124号公報などに記載された技術が公知である。
【0011】
上記従来技術のうち、まず特開平4−301035号公報では、熱間圧延工程における仕上圧延温度の調整を、熱間仕上圧延機前段までの冷却手段によって行うことが示されている。しかし、この手法では、長手方向の特性を均一化することは可能であるが、良好なインヒビター析出状態を得るための最適な温度条件については何ら示されていない。
【0012】
また、前掲特開平4−341518号公報には、スラブを高温加熱後、熱間圧延するに際し、仕上前面温度を1150〜1250℃、仕上後面温度を950 〜1100℃、及び巻き取り温度を400 〜600 ℃としてホットコイルを得、このホットコイルを冷延率83%以上の一回冷延工程を含む所定の製造工程により製品板厚0.23mm以下の極薄手高磁束密度一方向性電磁鋼板を製造する方法に関して、上記スラブを高温加熱を電気式雰囲気加熱炉で1300〜1450℃に均一加熱し上記熱間圧延後のホットコイルの板厚を1.9 mm以下とする方法が示されている。これに類似の方法は、前掲特開昭60−197819号公報等にも示されている。かかる従来技術から明らかなように従来技術では、仕上圧延については仕上前面温度と仕上後面温度とによって制御を行うことが一般的であった。しかし、このように仕上スタンド前面及び後面の温度を単に制御したとしても、特性の優れた製品を安定して製造するには至らなかった。
【0013】
さらに、前掲特開昭57−114614号公報には、熱延開始から材料温度が950 ℃になるまでの時間は10分以内のできるだけ短い時間で圧延したり、連続仕上圧延機の後段のスタンド間で強制的に水冷しながら圧延する含Al一方向性けい素鋼板の製造方法が示されている。しかしながら、この技術における対象物は、インヒビターとしてAlN のみを使用する一方向性けい素鋼板であり、AlN に加えてMnSeもしくはMnS を複合して用いる場合には効果が得られない。
【0014】
また、前掲特開昭55−62124号公報には、仕上圧延開始温度と仕上圧延終了温度との差を220 ℃以内にする一方向性けい素鋼板の熱間圧延方法が示されている。この従来技術では、目的とする熱延板の耳割れの低減は達成できるものの、仕上圧延における最適なインヒビターの析出状態を得るには至らず、仕上焼鈍後の製品板において二次再結晶不良の発生頻度が高い。
【0015】
結局のところ、上記したいずれの従来技術においても、仕上圧延段階では仕上前面温度と後面温度とについてのみ注目しており、インヒビターの析出が開始しかつ進行する各仕上スタンド内の温度に注目しインヒビターの析出状態を制御する方法は全くなかった。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記の問題を有利に解決するもので、インヒビターとしてMnSe及び/又はMnS とAlN とを複合して用いる一方向性けい素鋼板を製造する方法に関し、熱延仕上圧延の温度を最適制御することで、製品の二次再結晶不良率を低減し、高磁束密度かつ低鉄損である優れた磁気特性を有する一方向性けい素鋼板の製造方法を提案することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、工業生産用仕上げ熱延スタンド内の板温を詳細に調べたところ、通常、仕上げ熱間圧延をタンデム式の連続圧延で行う場合には、加工発熱等によって板温の上昇が見られることを知見した。この温度上昇傾向は、板厚が厚い場合の圧下すなわち仕上げスタンド前段で特に顕著であることも明らかになった。また、インヒビターは仕上げスタンド第1パスで歪を加えられたのち、その転位を析出サイトとして、仕上げ圧延の前段を通過中に析出するために、スタンド内の板温は、インヒビターの析出形態、ひいては製品の磁気特性に影響を及ぼすことを知得した。
【0018】
かかる知見に基づいて、発明者らはインヒビターとしてAlN とMnSe及び/又はMnS とを複合して用いる一方向性電磁鋼板の製造するにあたって、仕上げ熱延でのスタンド内温度を制御することによって製品の二次再結晶不良率を低減し、高磁束密度かつ低鉄損の製品を得ることができることを見出した。
【0019】
この発明は、上記の知見に立脚するものである。すなわちこの発明は、
C:0.01〜0.10wt%、
Si:2.5 〜4.5 wt%、
Mn:0.02〜0.12wt%、
Se、Sの少なくとも1種:0.005 〜0.06wt%、
Al:0.01〜0.05wt%及び
N:0.004 〜0.015 wt%
を含むけい素鋼スラブを、加熱してから熱間粗圧延及び仕上圧延を施し、次いで熱延板焼鈍をした後、1回又は中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げたのち、脱炭焼鈍を施し、その後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上焼鈍を施す一連の工程によって一方向性けい素鋼板を製造するにあたり、
熱間仕上圧延をタンデム圧延機を用いて行い、その仕上第1パス圧延入側の鋼板表面温度(以下、単に「鋼板温度」という。)FETを1000〜1200℃とし、
この仕上第1パス圧延の圧下率を60%以下とし、かつ
仕上第2パス圧延入側の鋼板表面温度(以下、単に「鋼板温度」という。)F2ETを、前記仕上第1パス圧延入側の鋼板温度FETよりも低くすることを特徴とする磁気特性に優れる一方向性けい素鋼板の製造方法である。
【0020】
以下にこの発明の基礎となった実験結果について具体的に説明する。
実験1
表1に示す成分組成になる鋼を真空溶解法により溶製し、鋳込み後1200℃に再加熱してから厚み40mmまで熱間粗圧延を施した。
【0021】
【表1】
【0022】
熱間粗圧延後の鋼板から厚み40mm、幅300 mm、長さ400 mmの試料を採取して、この試料を1400℃に加熱してインヒビター成分を溶体化したのち、仕上げ板厚を2.3 mmとする仕上げ圧延を種々の条件で行った。この熱延終了後は、引き続き巻き取りを模擬するため500 ℃の炉中に1時間保持した後、室温まで冷却した。
【0023】
得られた熱延板を熱延板焼鈍したのち、一次冷間圧延、次いで中間焼鈍を施してから二次冷間圧延を行って0.23mmの最終板厚に仕上げた。その後、湿水素雰囲気中で850 ℃、2分間の脱炭焼鈍を施し、MgO を主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、水素雰囲気中で1200℃、10時間の最終仕上げ焼鈍を施した。かくして得られた製品の仕上げ熱延条件と二次再結晶不良率との関係について調査した結果を図1に示す。
【0024】
図1より、仕上げ圧延開始温度が1000〜1200℃であり、かつ2パス目入側の温度が仕上げ圧延開始温度を超えない場合に、二次再結晶不良の発生が少ないことが判る。
【0025】
実験2
上記した実験1の結果を基に、工業用生産設備における実機実験を行った。
表2に示す成分の鋼180 t を転炉及び真空脱ガス処理して溶製し、連続鋳造により厚み220 mm、幅1000mmのスラブとした。
【0026】
【表2】
【0027】
これらのスラブをガス燃焼炉で加熱し、引き続き誘導加熱炉で1400℃に加熱してインヒビター成分の溶体化を行った後、熱間粗圧延を行って板厚45mmのシートバーとし、引き続いて仕上げ熱間圧延を種々の条件で行い板温制御しつつ2.4 mmの熱延板とした。なお、スタンド間の板温制御については、あらかじめ冷却水量、圧下率、圧延速度及びロール材質等を考慮したシミュレーションにより計算予測し、この予測の基に制御を行った。この仕上げスタンド間の板温を放射温度計により測定した結果を、仕上げ第1スタンドの圧下率とともに表3に示す。また、図2には、仕上げスタンド内の板温の推移のシミュレーション計算結果の一例を示す。
【0028】
【表3】
【0029】
これらの熱延板を熱延板焼鈍したのち、一次冷間圧延、次いで中間焼鈍を施してから二次冷間圧延を行って0.23mmの最終板厚に仕上げた。その後、湿水素雰囲気中で850 ℃、2分の脱炭焼鈍を施し、次いでMgO を主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから水素雰囲気中で1200℃、10時間の最終仕上げ焼鈍を施した。
【0030】
かくして得られた製品について二次再結晶不良率を製造最終ラインに設置された計測器により調査した結果及び製品の各3か所より抽出したサンプルより磁気特性を調査した結果を表3に併記した。ここで、二次再結晶不良率というのは、仕上げ焼鈍後の製品板において、二次再結晶粒以外の直径2mm以下の細粒で構成された領域が板面に占める面積率のことをいう。
【0031】
以上の実験結果より、二次再結晶不良率が低く、製品磁気特性が良好になる仕上げ熱間圧延の条件は、仕上第1パス圧延入側の鋼板温度FETと仕上第2パス圧延入側の鋼板温度F2ETとの関係について
1000≦FET≦1200 (℃)、かつ
F2ET<FET (℃)
であることがわかる。
【0032】
【作用】
仕上第1パス圧延入側の鋼板温度FETが1000℃を下回る低温の場合には、仕上げスタンドでの圧下前にインヒビターが粗大析出を開始してしまい、インヒビターの抑制力が低下するため、また、1200℃を上回る高温の場合には、仕上げ第1パス圧延の変形中の動的回復、動的再結晶によりインヒビターの析出サイトとなる転位の密度が極端に低下するため、やはりインヒビターが粗大析出し抑制力が低下すると考えられる。したがって、この発明では、仕上第1パス圧延前の鋼板温度FETは1000〜1200℃の範囲とする。
【0033】
また、仕上げ第1スタンドにおける圧下率が60%を上回る場合には、変形後の回復が速くなり、変形組織は極めて速やかにサブグレインを形成する。このサブグレインバウンダリーに析出するMnSe、MnS は、粗大かつ不均一となり、そのためインヒビターとしての抑制力が弱くなると考えられる。そのため、この発明では仕上げ第1パス圧延の圧下率を60%以下とする。
【0034】
さらに仕上第2パス圧延入側の鋼板温度F2ETが、前記仕上第1パス圧延入側の鋼板温度FETと同じかそれ以上になると、インヒビターの抑制力が不足し、良好な磁気特性の製品が得られない。そこでこの発明では、仕上第2パス圧延入側の鋼板温度F2ETを、仕上第1パス圧延入側の鋼板温度FETよりも低くする。このように仕上第2パス圧延入側の鋼板温度F2ETを、前記仕上第1パス圧延入側の鋼板温度FETよりも低くすることよって初めて、良好な磁気特性が得られるのである。かかる効果が得られる理由については、必ずしも明らかではないが、およそ以下のように考えられる。
【0035】
MnSe、MnS は、比較的高温から析出を開始し、熱延終了時には析出を完了しているのに対して、AlN は析出しにくく、熱延終了から巻き取りまでの間で析出する。したがって、この発明で対象とするようなAlN とMnSe及び/又はMnS とを複合して用いる一方向性けい素鋼の場合には、両者の析出状況をいずれも良好なものとする必要があるが、熱延後に鋼中に生ずる析出物(AlN )は、MnSeやMnS とは無関係に析出するのではなく、複合析出物の形態を取る。このことは、先行して析出した析出物の状態が、後に析出する析出物の分散状態に影響を与えることを示している。
【0036】
この先行して析出するMnSeやMnS は、仕上げ熱間圧延中に導入された転位をサイトとして析出する。したがって、転位密度が析出程度を左右しているのであり、このため、熱間圧延中の温度が重要となってくる。また析出は、圧延による歪が導入された直後から開始されるのではなく、実際には数秒以上の潜伏期間を経た後に開始する。そして工業的に使用される仕上げ熱間圧延機においては、通常1〜2パス目圧延には数秒以上を要する。したがって、析出進行時の温度は1パス目の温度よりも2パス目の温度で良く表され、析出形態との相関も顕著である。
【0037】
この熱間圧延時の析出についてより詳しく述べると、熱間圧延の場合の再結晶過程としては変形と同時進行する動的再結晶と、変形後に進行する静的再結晶との2つがある。そしてインヒビターの均一かつ微細な析出は、1パス目の変形で動的再結晶しなかった変形粒中で起こる。この変形粒中の転位密度は歪導入温度により異なり、歪導入温度が低いほうが変形粒中の転位密度は高くなる。また、回復による転位の消滅速度は温度のみならず、転位密度にも依存する。
【0038】
その結果として歪の導入後に歪導入時以上の温度になる条件、すなわち、FET<F2ETの条件では、変形粒中の転位は急速に回復消滅し、サブグレインを形成すると考えられる。サブグレインバウンダリーに析出するMnSe、MnS は粗大かつ不均一な分散となる。このような状態において、引き続き熱延終了後に起こるAlN の析出は、先行した析出物をサイトとするため、MnSe、MnS の分布に影響されて良好な分布にはならないことから、結果的にMnSe、MnS が粗く分布している場合にはインヒビターの抑制力が不足し良好な磁気特性の製品を得られなかったものと考えられる。
【0039】
なお、この発明に従う熱間圧延を行うにあたっては、仕上第2パス圧延入側の鋼板温度F2ETが、あまりに仕上第1パス圧延入側の鋼板温度FETよりも低い温度になる場合には、表面割れが発生するため、F2ETの下限は、FET−80℃程度に制御するのが望ましい。
【0040】
仕上げ熱間圧延後の巻き取り温度については、700 ℃を超える高温では巻き取り後の自己焼鈍により生ずる不均一な脱炭が特性の不安定要因となるため、700 ℃以下とするのが望ましい。また、熱間圧延前のスラブ加熱温度は、インヒビターとして複合して使用するAlN とMnSe、MnS とを共に十分に固溶させるために、1280℃以上とすることが望ましい。
【0041】
この発明で対象とする含けい素鋼としては、AlN とMnSe、MnS とをインヒビターとして複合添加したものが適合する。代表組成を挙げると次のとおりである。
【0042】
C:0.01〜0.10wt%
Cは、熱間圧延、冷間圧延中の組成の均一微細化のみならず、ゴス方位の発達に有用な成分であり、少なくとも0.01wt%は含有させることが好ましい。しかしながら、0.10wt%を超えて含有させた場合には、脱炭が困難となり、却ってゴス方位に乱れが生じるので上限は0.1 wt%とすることが好ましい。
【0043】
Si:2.5 〜4.5 wt%
Siは、鋼板の比抵抗を高め鉄損の低減に有効に寄与するが、4.5 wt%を上回る含有量では冷延性が損なわれ、一方2.5 wt%に満たないと比抵抗が低下するだけでなく二次再結晶、純化のために行われる最終焼鈍中にα−γ変態によって結晶方位のランダム化を生じ、十分な鉄損改善効果が得られないので、Si量は、2.5 〜4.5 wt%程度とするのが好ましい。
【0044】
Mn:0.02〜0.12wt%
Mnは、熱間ぜい化を防止するためには少なくとも0.02wt%程度を必要とするが、あまりに多すぎると磁気特性を劣化させるので上限は0.12wt%程度とするのが好ましい。
【0045】
この発明では、インヒビターとしてMnSeとMnS のうち少なくとも一種と、AlN とを併せ含む素材を対象としている。
MnS 、MnSeの形成成分としては、
S、Seのうちから選ばれる少なくとも一種:0.005 〜0.06wt%
S、Seは、いずれも一方向性けい素鋼板の二次再結晶を制御するインヒビターとして有力な成分である。かかる抑制力の観点からは、少なくとも0.005 wt%程度を必要とするが、0.06wt%を超える含有量でとその効果が損なわれる。したがって、その下限、上限は、それぞれ0.005 wt%、0.06wt%程度とするのが好ましい。
【0046】
AlN 形成成分としては、
Al:0.005 〜0.10wt%、N:0.004 〜0.015 wt%
Al及びNの範囲についても上述のMnS 、MnSeの場合と同様の理由により上記の範囲に定める。
【0047】
なおインヒビター成分としては、上記したS、Se、Alの他に、Cu、Sn、Sb、Mo、Ti及びBi等も有利に作用するのでこれらの成分を必要に応じてそれぞれ少量を併せて含有させることもできる。これらの成分の好適添加範囲は、それぞれ、Cu、Sn:0.01〜0.015 wt%、Sb、Mo、Ti、Bi:0.005 〜0.1 wt%であり、これらの各インヒビター成分についても、一種もくしはそれ以上での複合使用が可能である。
【0048】
また、この発明で熱間圧延後は、熱延板焼鈍をした後、1回又は中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げたのち、脱炭焼鈍を施し、その後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上焼鈍を施して製品とすればよい。
【0049】
【実施例】
表4に示す成分になる鋼180 t を、転炉及び真空脱ガス処理して溶製し、連続鋳造により厚み220 mm、幅1100mmのスラブとした。
【0050】
【表4】
【0051】
かかるスラブをガス燃焼炉で加熱し、引き続き誘導加熱炉で1400℃に加熱してインヒビター成分の溶体化を行った後、熱間粗圧延を行って板厚45mmのシートバーとし、引き続いて仕上熱間圧延を、第1パス目の圧下率を40%とし、板温制御をしつつ行って板厚2.4 mmの熱延板に仕上げた。スタンド間の温度制御については予め冷却水量、圧下量、圧延速度及びロール材質等を考慮したシミュレーションより計算予測して制御を行った。この仕上スタンド間の温度を放射温度計により測定した結果を表5に示す。
【0052】
これらの熱延板を1000℃、1分間の熱延板焼鈍をしたのち、一次冷間圧延、次いで1100℃、1分間の中間焼鈍を施したのち、二次冷間圧延により0.23mmの最終板厚に仕上げた。その後、湿水素雰囲気中で850 ℃、2分間の脱炭焼鈍を施し、次いでMgO を主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、水素雰囲気中で1200℃、10時間の最終仕上焼鈍を施した。
【0053】
かくして得られた製品について、二次再結晶不良率を製造最終ラインに設けた計測器により調査した結果及び製品の各2箇所より抽出したサンプルにより磁気特性を測定した結果も表5に示す。
【0054】
【表5】
【0055】
表5に示された結果から明らかなように、この発明に従う適合例については、2次再結晶不良率が低く、磁束密度、鉄損とも良好であった。
【0056】
【発明の効果】
かくしてこの発明によれば、インヒビターとしてAlN とMnSe、MnS とを複合して用いる一方向性けい素鋼板の製造に関して、製品の二次再結晶不良率を低減でき、高磁束密度でかつ低鉄損である、優れた磁気特性を有する製品を安定して生産することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】仕上げ1パス圧延入側温度、仕上げ2パス圧延入側温度と二次再結晶不良率との関係を示すグラフである。
【図2】仕上げスタンド内の板温の推移のシミュレーション計算結果の一例を示すグラフである。
Claims (1)
- C:0.01〜0.10wt%、
Si:2.5 〜4.5 wt%、
Mn:0.02〜0.12wt%、
Se、Sの少なくとも1種:0.005 〜0.06wt%、
Al:0.01〜0.05wt%及び
N:0.004 〜0.015 wt%
を含むけい素鋼スラブを、加熱してから熱間粗圧延及び仕上圧延を施し、次いで熱延板焼鈍をした後、1回又は中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げたのち、脱炭焼鈍を施し、その後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上焼鈍を施す一連の工程によって一方向性けい素鋼板を製造するにあたり、
熱間仕上圧延をタンデム圧延機を用いて行い、その仕上第1パス圧延入側の鋼板表面温度FETを1000〜1200℃とし、
この仕上第1パス圧延の圧下率を60%以下とし、かつ
仕上第2パス圧延入側の鋼板表面温度F2ETを、前記仕上第1パス圧延入側の鋼板表面温度FETよりも低くすることを特徴とする一方向性けい素鋼板の製造方法。
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